特許第6262057号(P6262057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6262057-散気装置、散気方法及び散気板 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262057
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】散気装置、散気方法及び散気板
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/20 20060101AFI20180104BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20180104BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20180104BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C02F3/20 D
   B01F3/04 A
   B01F5/06
   B01F15/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-73167(P2014-73167)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-192975(P2015-192975A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年6月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−038198(JP,A)
【文献】 特開2006−075771(JP,A)
【文献】 特開2002−273467(JP,A)
【文献】 実開昭54−171268(JP,U)
【文献】 米国特許第04865778(US,A)
【文献】 実開昭59−016374(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12、20
B01F 1/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散気板(弾性多孔体と支持体からなる散気板を除く。)と、
ホルダと、
前記散気板を前記ホルダに固定する固定手段と、
前記散気板と前記ホルダの間にシール手段と、
を備え、
前記散気板は、2以上に分割された空気室を形成し、
前記固定手段は前記空気室を貫通しないことを特徴とする散気装置。
【請求項2】
前記シール手段は、前記空気室よりも小さい空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の散気装置を用いることを特徴とする散気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に微細な気泡を分散させるための散気装置、その散気装置を用いる散気方法、及び、その散気装置に用いる散気板に関するものである。さらに詳しくは、排水等を生物学的水処理するための曝気槽に用いる散気装置、その散気装置を用いる散気方法、及び、その散気装置に用いる散気板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水や汚水等の排水を処理する方法として、活性汚泥を用いた方法が知られている。この方法では、排水処理装置に曝気槽を設け、この曝気槽内に散気装置を設置し、この散気装置により空気を微細な気泡として排水中に分散して微生物の生育環境を調整するものである。
【0003】
従来の散気装置10は、図3に示すように、角型の散気板20、ホルダ3、パッキン60、抑え金具4及び固定ボルト5を備えたものである。ホルダ3の上には、パッキン60及び散気板20が載置され、抑え金具4及び固定ボルト5で固定されている。
ホルダ3の内部は空洞となっており、上部には空気供給孔33が形成されている。また、ホルダの内部空洞は、空気通路31、ホルダ空気配管32と連通しており、ホルダ空気配管32により供給された空気は、空気通路31を介してホルダ3の内部空洞に送気され、空気供給孔33より上部に排出される。
パッキン60は、散気板20の外周と略同一形状となるように角型に形成され、一定の厚みを有している。パッキン60は、ホルダ3の空気供給孔33を囲むように配置される。空気供給孔33から排出された空気は、パッキン60、散気板20により形成された空気室の全域に拡散する。
散気板20は、多孔質樹脂又は多孔質セラミックにより形成された板状部材であり、前記空気室に拡散した空気を微細な気泡として排水中に分散するものである。
【0004】
この散気装置では、空気室に空気圧が掛かった際に、角型のパッキン60の各辺に作用し、辺の中央に最大の撓みをもたらす等分布荷重が加わる。この荷重によりパッキンに膨らみが生じ、この部分から空気が漏れるという恐れがあった。
【0005】
特許文献1では、この問題に対して、パッキンの隣り合う辺をたすきで連結することにより、パッキンの膨らみを防止した散気板用パッキンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−155484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パッキンは、密着性に優れたゴム製のものが使用されているが、ゴム材料は、劣化しやすいために、長期間使用すると空気室に掛かる空気圧に耐えられなくなり、パッキン部分から空気が漏れるという問題が生じる事があった。そのため、空気が漏れてしまう状態になったパッキンは交換する必要があった。
また、散気装置は、曝気槽の底部に設置されているため、設置作業中に作業者が踏んでしまうことがあり、局所的に強い力がかかると、パッキンに歪みが生じ、散気板が割れてしまうという課題もある(図3(b)参照。)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、散気板の内部に空気室を設けることにより、パッキンで空気室の周壁を構成する必要がなくなるため、パッキンの劣化による空気漏れや、上からの局所的な力により散気板が破損するという問題を解決できることを見出して本発明を完成させた。
具体的には、本発明は、以下の散気装置、その散気装置を用いた散気方法、その散気装置に用いる散気板を提供するものである。
【0009】
(本願第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明は、散気板と、ホルダと、前記散気板を前記ホルダに固定する固定手段と、を備え、前記散気板は空気室を有し、前記固定手段は前記空気室を貫通しないことを特徴とする散気装置である。
(本願第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明は、前記散気板と前記ホルダの間にシール手段を更に備えたことを特徴とする本願第1発明に記載の散気装置である。
(本願第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明は、前記シール手段は、前記空気室よりも小さい空間を形成することを特徴とする本願第2発明に記載の散気装置である。
(本願第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明は、前記空気室は2以上に分割されていることを特徴とする本願第1〜第3発明に記載の散気装置である。
(本願第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明は、本願第1〜第4発明のいずれかの散気装置を用いることを特徴とする散気方法である。
(本願第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明は、空気が供給される空気室を有し、当該空気室にはホルダに固定するための貫通孔を有さないことを特徴とする散気板である。
【発明の効果】
【0010】
本願第1発明の散気装置によれば、散気板に設けられた空気室により空気を拡散することができるため、パッキンで空気室の周壁を形成する必要がなく、散気板用の特殊な構造のパッキンを使用しなくてよいという効果がある。
また、パッキンにより空気室を形成しないため、パッキンの劣化により空気が漏れるという問題が生じない。さらに、上から局所的な力が掛かった際に、パッキンが歪んで散気板が破損するという恐れもない。
さらには、パッキンの劣化により空気が漏れるという問題が減るため、パッキンを交換する必要もなくなる。
また、散気板をホルダに固定するための固定手段としては、多様な構造があるものの、本発明の散気装置によれば、空気室を貫通しないものを適用することにより、散気板の強度を高めることができる。さらには、固定手段が空気室の外壁に孔を設ける必要がないため、当該孔の構造より空気漏れを生じる恐れもない。
【0011】
本願第2、3発明の散気装置によれば、散気板の空気室を完全に密閉することができるため、散気板とホルダの間から空気が漏れないという効果がある。
【0012】
本願第4発明の散気装置によれば、空気室を設けることにより薄くなった散気板の強度を高めることができるため、局所的な力がかかった際に散気板が破損する危険性が低いという効果がある。
【0013】
本願第5発明の散気方法によれば、パッキンの劣化による空気漏れがないため、定期的に曝気槽の排水を抜いてパッキンを交換する必要がなくなるという効果がある。
【0014】
本願第6発明の散気板によれば、従来の散気装置の散気板を取り換えることにより、本願発明の散気装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施例の散気装置の構成を示す概略説明図である。(a)本発明の第1の実施例の散気装置の分解図である。(b)本発明の第1の実施例の散気装置の組立図である。
図2】本発明の散気装置に使用する散気板の他の態様を示す概略説明図である。(a)本発明の第2の実施例の散気板を示す概略説明図である。(b)本発明の第3の実施例の散気板を示す概略説明図である。
図3】従来の散気装置の構成を示す概略説明図である。(a)従来の散気装置の分解図である。(b)従来の散気装置の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施例では、本発明の散気装置、その散気装置を用いた散気方法、その散気装置に用いる散気板について説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施例の散気装置の構成を示す概略説明図である。(a)本発明の第1の実施例の散気装置の分解図である。(b)本発明の第1の実施例の散気装置の組立図である。
【0018】
本発明の第1の実施例の散気装置1は、内部に空気室21が形成された散気板2、ホルダ3、パッキン6、抑え金具4及び固定ボルト5を有するものである。
従来の散気装置と同様に、ホルダ3の上に、パッキン6及び散気板2が載置され、抑え金具4及び固定ボルト5で固定されている。
【0019】
(ホルダ)
ホルダ3は、従来の散気装置と同様に、ホルダ空気通路31及びホルダ空気配管32と連通した内部空洞を有し、上部に内部空洞を開放する空気供給孔33を備えている。
これらの材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼のような金属材料や、コンクリートなどが挙げられる。大型の曝気槽の底部にコンクリートでホルダを形成すると、部品が少なくなり、組み付け作業が簡易なものとなるため好ましい。また、金属材料を用いる場合には、耐腐食性の観点からステンレス鋼で形成されたものが好ましい。
【0020】
(散気板)
散気板2は、空気を通過する微細孔を有した板状部材であり、その内部に空気室21を有している。空気室21は、散気板2の下面においてのみ開放し、散気板2の全体に広がるように形成されている。下面の開放部は、散気板全体に広がって形成されてもよいし、ホルダ3の空気供給孔33と同程度の大きさの穴を形成して内部の空気室21に連通するように構成してもよい。図1に図示するように、下面の開放部が散気板全体に広がって形成された散気板2は、簡素な形状であるので容易に成形加工することができる。
散気板2は、空気室21がホルダ3の内部空洞と空気供給孔33を介して連通するように固定される。その際、空気供給孔33から流出した空気が散気装置の外に漏れないように、空気供給孔33の全体を覆うように散気板2を載置する。このようにして、空気供給孔33から流出した空気は、散気板2の空気室21内の全体に拡散することができる。
【0021】
散気板2の形状は、どのようなものでもよく、角型、丸型でもよい。角型は、曝気槽の底部に隙間なく配置することができるという利点がある。一方、丸型は、空気供給孔33から空気室に流入した空気を散気板全体に均等な空気圧で拡散することができるという利点がある。
【0022】
散気板2の材質は、特に限定されないが、例えば、ABS等の合成樹脂製のものやセラミック製のものがある。
ABS等の合成樹脂の散気板は、軽量であり散気板の組み立てが容易であることや、軟らかくて割れにくいという利点がある。
一方、セラミック製の散気板は、排水処理により有機物が微細孔に詰まった際に、焼成して再生することができるという利点がある。
【0023】
(シール手段)
本発明の第1の実施例の散気装置では、ホルダ3と散気板2の間にパッキン6を備えている。このパッキン6は、従来の散気装置10のように空気室を形成する必要がない。すなわち、パッキン6はホルダ3と散気板2の間から空気が漏れないようにするための単なるシール手段である。
【0024】
シール手段としては、クロロプレン、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム材料で形成されたパッキンのほか、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリウレタン系の樹脂等のコーキング剤や、エポキシパテ、ポリエステルパテ、石膏パテ、炭酸カルシウムパテ等の粘土状のパテでもよい。
【0025】
シール手段としてパッキンを設ける場合、パッキンの厚みは、空気漏れを防止することができれば、極めて薄くすることができる。また、その設置位置は、散気板2とホルダ3の空気供給孔33の態様に合わせて適宜設定することができる。そのため、散気板2の外周に合わせる必要がなく、空気供給孔33の外周に合わせて設置してもよい。すなわち、散気板、ホルダ及びシール手段により形成される空間は、散気板の空気室より小さい空間であることが好ましい。
このように、本発明の散気装置では、パッキンを薄く、かつ、小さくすることができるため、材料費を格段に抑えることができる。
また、薄く小さいパッキンは、耐久性が高く、交換する頻度が極めて低くなる。そのため、パッキンの交換部品の費用、交換作業費用等も抑えることができる。
【0026】
シール手段として、コーキング剤やパテを使用する場合は、散気板2の下面とホルダ3の上面との間に挟むように充填したり、散気板2の下面の周囲を囲むように散気板2とホルダ3の隙間を塞いでもよい。
【0027】
なお、本発明の散気装置においてシール手段は必須の構成ではなく、ホルダ3と散気板2の密着性が高く、空気漏れが無い場合には、シール手段を設けなくてもよい。
【0028】
(固定手段)
本発明の実施例1の散気装置では、ホルダ3の上面に散気板2を固定するための固定手段として、2組の押え金具4及び固定ボルト5を備えている。
押え金具4は、固定ボルトが貫通するための孔を有する板状の小片部材であり、散気板2を上面から押さえ付けるものである。固定ボルト5は、ホルダ3とネジ止めして前記押え金具4を固定するものである。
押え金具4及び固定ボルト5の材質は、特に限定されないが、耐腐食性の観点から、ステンレス鋼であることが好ましい。
実施例1の散気装置では、2組の固定手段を角型の散気板の対向する2辺において固定しているが、固定手段の組数は、装置のサイズ等に応じて適宜設定される。
【0029】
本発明の固定手段は、空気室21を貫通しないように固定することを特徴とする。空気室21にボルト等を貫通して固定すると、その部分の強度が弱くなるため、局所的な力がかかったときに割れやすくなり、本発明の課題を解決することができない。また、空気室を貫通する部分より、空気漏れを生じる恐れもない。
【0030】
その他の固定手段としては、空気室を貫通しないものであればどのような手段でもよい。例えば、接着剤により固定する手段等が挙げられる。また、ホルダ3の内部空洞の上面にボルトが貫通する孔を設け、散気板2の下面(空気室21の外周壁の下面)にボルトを直接ネジ止めする手段としてもよい。さらに、ホルダ3と散気板2を一体として成形加工してもよい。
【0031】
図2は、本発明の散気装置に使用する散気板の他の態様を示す概略説明図である。(a)本発明の第2の実施例の散気板を示す概略説明図である。(b)本発明の第3の実施例の散気板を示す概略説明図である。
【0032】
第2の実施例の散気板2Aは、空気室21を空気室21a及び21bに2分割する分割壁22が形成されている。分割壁22を設けることにより、散気板2Aの強度が高まるため、局所的な力がかかった際にも割れにくいという効果を奏する。
【0033】
散気板2Aをホルダ3上に設置する際には、空気室21a及び21bの各空気室と、ホルダ3の内部空洞が、空気供給孔33を介して連通するように固定される。このように設置することにより、空気供給孔33より流出する空気が各空気室に流れ込み、散気板2Aの全体に拡散する。
【0034】
第3の実施例の散気板2Bは、空気室21を空気室21c、21d、21e及び21fに4分割するように分割壁を形成したものである。分割壁を増加することにより、より強度の高い散気板とすることができる。
また、第2の実施例同様、各空気室とホルダ3の内部空洞は、空気供給孔33を介して連通する。
【0035】
なお、本発明の第2の実施例及び第3の実施例では、分割された各空気室がホルダ3の内部空洞と直接連通するように構成されているが、分割壁に連通口を設けて各空気室を連通させ、この連通口を介して各空気室とホルダ3の内部空洞を間接的に連通させてもよい。分割壁に設ける連通口は、各空気室を連通すればどのような形状でもよく、例えば、複数の孔を設けた分割壁が挙げられる。また、分割壁の高さが空気室より低く、分割壁の上部又は下部において、隣接する空気室同士が連通している態様としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の散気装置、散気方法及び散気板は、下水処理場等の有機性汚泥や、食品工場や医薬品工場等の有機性排水の好気性微生物処理槽及びその処理方法に使用することができる。
【0037】
また、本発明の散気板は、従来の散気装置を本発明の散気装置に改変するための交換部品として利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1,10 散気装置、2,2A,2B,20 散気板、21,21a,21b,21c,21d,21e,21f 空気室、22 分割壁、3 ホルダ、31 ホルダ空気通路、32 ホルダ空気配管、33 空気供給孔、4 抑え金具、5 固定ボルト、6,60 パッキン
図1
図2
図3