特許第6262061号(P6262061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262061
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   B41J15/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-77844(P2014-77844)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-199212(P2015-199212A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信浩
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−221948(JP,A)
【文献】 特開2013−248816(JP,A)
【文献】 特開2011−000807(JP,A)
【文献】 特開2013−215899(JP,A)
【文献】 特開2013−075484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J15/04−15/14
B41J11/00−11/70
B41J2/315−2/345
B41J2/42−2/425
B41J2/475−2/48
B65C1/00−11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベル用紙の表面に印刷を行うプリンタであって、上記ラベル用紙をその裏面側から支持するプラテンローラと該プラテンローラに対峙した印字ヘッドとで該ラベル用紙を挟持し、該プラテンローラの正転により上記ラベル用紙を搬送してその搬送過程で上記印字ヘッドにより印刷を行い、上記プラテンローラの逆転により上記ラベル用紙をバックフィードさせるプリンタにおいて、
上記プラテンローラの上流側に、該プラテンローラの軸線と平行な軸線を中心に回転自在で且つ上記ラベル用紙をその裏面側から支承可能な支承ローラを設け、該支承ローラを、その頂点が、上記プラテンローラの正転時に張力が付与されて搬送されるラベル用紙の搬送経路よりも下位に位置するように設け、該支承ローラの近傍に、上記プラテンローラの軸線と平行な軸線を中心に回転自在で且つ上記プラテンローラの正転時に上記ラベル用紙の表面側を転動して該ラベル用紙に張力を付与する押えローラを設けたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
上記支承ローラの外周面と上記押えローラの外周面との最短の間隔Yを、0.8mm≦Y≦1.5mmに設定したことを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
上記プラテンローラの直径をD1、上記支承ローラの直径をD2、上記押えローラの直径をD3としたとき、D2<(1/2)D1,D3<(1/2)D1にしたことを特徴とする請求項1または2記載のプリンタ。
【請求項4】
上記支承ローラを、円周方向に沿って形成された溝を軸方向に所定間隔で複数備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のプリンタ。
【請求項5】
上記押えローラを、円周方向に沿って形成された溝を軸方向に所定間隔で複数備えて構成したことを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベル用紙に印刷を行うプリンタに係り、特に、ラベル用紙を所要量バックフィードさせるプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種のプリンタとしては、例えば、特許文献1(特開2013−248816号公報)に掲載されたものが知られている。図8に示すように、このプリンタSaは、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベル用紙Lの表面に印刷を行うもので、図示外のリールから繰り出されるラベル用紙Lをその裏面側から支持するプラテンローラ100とこのプラテンローラ100に対峙した印字ヘッド101とでラベル用紙Lを挟持し、ラベル用紙の所定位置に印字を行うために、先ず、プラテンローラ100を逆転(Rb方向)させてラベル用紙Lを所要量バックフィードさせて位置決めし、それから、プラテンローラ100を正転(Ra方向)させてラベル用紙Lを搬送してその搬送過程で印字ヘッド101により印刷を行い、その後、カッタ102で切断してラベルを発行している。また、次のラベルを発行するときは、再び、プラテンローラ100を逆転させてバックフィードを行ってから、プラテンローラ100の正転によりラベル用紙Lを搬送して印字ヘッド101により印刷を行い、このようにして、順次連続的にラベルの発行を行う。
【0003】
この従来のプリンタSaにおいては、プラテンローラ100より上流側に、ラベル用紙Lを挾持しプラテンローラ100の逆回転によるラベル用紙Lのバックフィードを補助する一対の補助ローラ103,103を設けている。各補助ローラ103は夫々一方向クラッチ(図示せず)を介して回転軸104に接続され、プラテンローラ100が正転してラベル用紙Lを搬送するときは回転軸104に対して例えば遊転し、プラテンローラ100が逆転してラベル用紙Lをバックフィードするときは、回転軸104に対してクラッチ接続され、プラテンローラ100と同期駆動されるベルト伝動機構105により、同期して回転できるようにしている。これにより、ラベル用紙Lのバックフィードの際には、補助ローラ103もプラテンローラ100とともに回転駆動されて、強制的にラベル用紙Lを上流方向に引っ張るので、安定したバックフィードを行うことができるようにしている。バックフィードした際のラベル用紙Lの後退する所要長さ分は補助ローラ103の上流側に撓むことにより吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−248816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のプリンタSaおいては、ラベル用紙Lのバックフィードの際には、補助ローラ103をプラテンローラ100とともに同期駆動して、強制的にラベル用紙Lを上流方向に引っ張るので、比較的安定したバックフィードが行われるが、ベルト伝動機構105のような駆動機構を設けるので、それだけ、機構が複雑になり、大型化してしまうという問題があった。
一方、これを解消するために、例えば、図9(a)に示すように、プラテンローラ100の上流側に、回転自在なラベル用紙Lの支承ローラ110を備え、バックフィードのとき、ラベル用紙Lを支承ローラ110に支承するようにし、バックフィードした際にラベル用紙Lの後退する所要長さ分を支承ローラ110よりも上流側に撓ませて吸収するようにし、機構を簡略化することも考えられる。
【0006】
しかしながら、図9(b)に示すように、プラテンローラ100に対する印字ヘッド101の設置角の関係で、バックフィードの際は、ラベル用紙Lが上側に膨らむことがあり、その場合には、他に引っ掛かったり、折れ癖が付いたりするという問題があるとともに、ラベル用紙Lの姿勢が不安定になり、次のプラテンローラの正転時にラベル用紙Lの引っ掛かりが生じ、例えば、プラテンローラ100においてジャムが生じる等の不具合があるという問題がある。その場合には、人手でラベル用紙Lを再セッティングする調整が必要になってしまい、煩雑になる。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、バックフィード時にラベル用紙が上側に膨らまないように後退して、この後退する所要長さ分が上流側で一定の姿勢で撓むようにし、ラベル用紙の姿勢を安定させてその引っ掛かりを抑止しつつ、機構の簡略化を図ったプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のプリンタは、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベル用紙の表面に印刷を行うプリンタであって、上記ラベル用紙をその裏面側から支持するプラテンローラと該プラテンローラに対峙した印字ヘッドとで該ラベル用紙を挟持し、該プラテンローラの正転により上記ラベル用紙を搬送してその搬送過程で上記印字ヘッドにより印刷を行い、上記プラテンローラの逆転により上記ラベル用紙をバックフィードさせるプリンタにおいて、
上記プラテンローラの上流側に、該プラテンローラの軸線と平行な軸線を中心に回転自在で且つ上記ラベル用紙をその裏面側から支承可能な支承ローラを設け、該支承ローラを、その頂点が、上記プラテンローラの正転時に張力が付与されて搬送されるラベル用紙の搬送経路よりも下位に位置するように設け、該支承ローラの近傍に、上記プラテンローラの軸線と平行な軸線を中心に回転自在で且つ上記プラテンローラの正転時に上記ラベル用紙の表面側を転動して該ラベル用紙に張力を付与する押えローラを設けた構成としている。
【0009】
これにより、プラテンローラが逆転してラベル用紙をバックフィードさせる際には、ラベル用紙が後退し、支承ローラの頂点がラベル用紙の搬送経路よりも下位に位置しているので、ラベル用紙が支承ローラに支承され、ラベル用紙は、支承ローラ上を滑って、あるいは、支承ローラは回転自在なので、このラベル用紙との摩擦抵抗により支承ローラが回転し、バックフィードした際のラベル用紙の後退する所要長さ分が、支承ローラよりも上流側にU字状に下側に撓んで吸収される。
この場合、ラベル用紙が上側に膨らんで撓もうとしても、押えローラが支承ローラの近傍に設けられているので、この押えローラにラベル用紙が当接してラベル用紙の上側への移動が規制され、そのため、膨らんで引っ掛かったり、折れ癖が付いたりする事態が防止される。即ち、バックフィードによるラベル用紙の後退する所要長さ分を意図した箇所に誘い込むことができ、台紙なしラベル用紙のバックフィードを安定して行わせることができる。
【0010】
その後、プラテンローラが正転すると、ラベル用紙はプラテンローラによって搬送される。この場合、支承ローラの頂点がラベル用紙の搬送経路よりも下位に位置するので、ラベル用紙は上側に引っ張られることからラベル用紙は支承ローラから離間する。また、支承ローラから離れたラベル用紙は押えローラに当接するので、張力が生じ、搬送経路に沿って搬送され、印字ヘッドにより所要の印字が行われる。そのため、ラベル用紙の搬送時に、支承ローラがラベル用紙にくっついて抵抗になることがなく、それだけ、ラベル用紙の搬送を円滑に行わせることができる。この場合、バックフィードにより後退した所要長さ分が上流側で一定の姿勢で撓むので、ラベル用紙の姿勢が安定していることから、他に引っ掛かる事態が防止され、例えばプラテンローラでジャムが生じる等の事態が防止される。
即ち、回転自在な支承ローラと押さえローラとを備えた簡単な構造なので、機構の簡略化を図ることができるとともに、従来のように駆動装置を用いなくても、バックフィードにより後退する所要長さ分を上流側で一定の姿勢で撓むようにし、ラベル用紙の姿勢を安定させてその引っ掛かりを抑止することができる。
【0011】
そして、必要に応じ、上記支承ローラの外周面と上記押えローラの外周面との最短の間隔Yを、0.8mm≦Y≦1.5mmに設定した構成としている。
この範囲で上記の作用を円滑かつ確実に行わせることができる。
【0012】
また、必要に応じ、上記プラテンローラの直径をD1、上記支承ローラの直径をD2、上記押えローラの直径をD3としたとき、D2<(1/2)D1,D3<(1/2)D1にした構成にしている。
これにより、支承ローラ及び押えローラがプラテンローラより大幅に小さくなることから、それだけ、装置を小型化することができる。
【0013】
また、必要に応じ、上記支承ローラを、円周方向に沿って形成された溝を軸方向に所定間隔で複数備えて構成している。所謂溝付きローラにしたことから、ラベル用紙の裏面との接触面積が少なくなることから、支承ローラに対するラベル用紙の移動や引き剥がしを円滑に行うことができる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記押えローラを、円周方向に沿って形成された溝を軸方向に所定間隔で複数備えて構成している。所謂溝付きローラにしたことから、ラベル用紙の表面との接触面積が少なくなることから、ラベル用紙の移動を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転自在な支承ローラと押えローラとを備えた簡単な構造にしたので、機構を簡略化することができるとともに、このように機構を簡略化しても、バックフィード時にラベル用紙が上側に膨らまないように後退させて、この後退する所要長さ分が一定の姿勢で撓むようにし、ラベル用紙の姿勢を安定させてその引っ掛かりを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの構成を示す要部図である。
図2】本発明の実施の形態に係るプリンタの構成を示す要部斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るプリンタの構成を示す要部拡大図である。
図4】本発明の実施の形態に係るプリンタの作用を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係るプリンタの別の作用(バックフィード時)を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係るプリンタの別の作用(バックフィード時)を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係るプリンタの別の作用(搬送時)を示す図である。
図8】従来のプリンタの一例を示す要部図である。
図9】本発明の開発過程で提案されたプンタの欠点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るプリンタについて説明する。図1乃至図7に示すように、本発明の実施の形態に係るプリンタSは、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベル用紙Lの表面に印刷を行うものである。この台紙なしラベル用紙Lは、ライナレスラベル,ノンセパ(登録商標)等と言われ、例えば、ミシン目を境にして複数のラベルLaを列設したものである。帯状のラベル用紙Lは、一般に、ロール状に巻回された図示外のラベルロールの形態で流通する。
【0018】
プリンタSは、機台1を備えている。機台1には、ラベルロールが装着されラベル用紙Lを繰り出す図示外のリールが設けられている。また、機台1には、リールから繰り出されるラベル用紙Lをその裏面側から支持するプラテンローラ2と、プラテンローラ2に対峙した印字ヘッド3とを備えており、このプラテンローラ2及び印字ヘッド3でラベル用紙Lを挟持し、ラベル用紙Lの所定位置に印字を行うために、先ず、プラテンローラ2を逆転(Rb方向)させてラベル用紙Lを所要量バックフィードさせて位置決めし、それから、プラテンローラ2を正転(Ra方向)させてラベル用紙Lを搬送してその搬送過程で印字ヘッド3により印刷を行い、その後、プラテンローラ2よりも下流側にある図示外のカッタでラベルをミシン目から切断してラベルを発行する。尚、カッタを備えないで、人手で切り取るようになっていても良い。
【0019】
プラテンローラ2は、機台1に設けた固定部材4に取付けられている。印字ヘッド3は固定部材4に対して開閉可能に設けられた可動部材5(図2)に取付けられており、閉時にプラテンローラ2に押圧され、開示にプラテンローラ2から離間可能になっている。図1図4乃至図7中、符号6は、搬送されるラベル用紙L上の例えばミシン目等の目印を検知するセンサである。プラテンローラ2は、このセンサ6の検知に基づいて正転,停止,逆転させられ、ラベル用紙Lを移送位置決めする。符号7は、センサ6の下流側に設けられ、ラベル用紙Lの表面に接してガイドするガイドプレートである。
【0020】
プラテンローラ2の上流側において、固定部材4には、プラテンローラ2の軸線と平行な軸線を中心に回転自在で且つラベル用紙Lをその裏面側から支承可能な支承ローラ10が設けられている。この支承ローラ10は、図2に示すように、円周方向に沿って形成された溝11を軸方向に所定間隔で複数備えた所謂溝付きローラで構成されている。この支承ローラ10は、図3に示すように、その頂点10aが、プラテンローラ2の正転時に張力が付与されて搬送されるラベル用紙Lの搬送経路Kよりも下位に位置するように設けられている。
【0021】
また、プラテンローラ2と上記支承ローラ10との間おいて、固定部材4には、プラテンローラ2の軸線と平行な軸線を有しラベル用紙Lの裏面が粘着可能な固定(非回転)のロッド12が設けられている。このロッド12は、例えば、ステンレス等の金属製であり、その表面が、ラベル用紙Lの裏面が粘着可能な平面若しくは曲面で構成されている。実施の形態では、断面円形の円柱状の棒材であり、表面が曲面で構成されている。そして、このロッド12は、プラテンローラ2との間に所要の間隔を形成するとともに、図3に示すように、ロッド12の頂点12aが、プラテンローラ2の正転時に張力が付与されて搬送されるラベル用紙Lの搬送経路Kよりも下位であって、且つ、支承ローラ10の頂点10aよりも寸法eだけ下位に位置するように設けられている。
【0022】
詳しくは、図3に示すように、プラテンローラ2の外周面とロッド12の外周面との最短の間隔X1を、3.0mm≦X1≦5.5mmに設定し、ロッド12の外周面と支承ローラ10の外周面との最短の間隔X2を、0.5mm≦X2≦3.0mmに設定している。実施の形態では、X1=4.0mm、X2=1.0mmに設定している。
【0023】
また、プラテンローラ2の直径をD1、支承ローラ10の直径をD2、ロッド12の最大径をDaとしたとき、Da≦D2<(1/2)D1にしている。実施の形態では、Da<D2にしてあり、支承ローラ10の軸心とロッド12の軸心とを、搬送経路Kと略平行な水平線上に配置させている。これにより、ロッド12の頂点12aを支承ローラ10の頂点10aよりも下位に位置させることができるので、支承ローラ10及びロッド12の配置を容易にすることができる。実施の形態では、D1=φ16.3mm、D2=φ5.0mm、Da=φ3.0mmに設定している。
これにより、支承ローラ10及びロッド12がプラテンローラ2より大幅に小さくなることから、それだけ、装置を小型化することができる。
【0024】
そしてまた、支承ローラ10の上流側近傍において、可動部材5には、プラテンローラ2の軸線と平行な軸線を中心に回転自在で、且つ、プラテンローラ2の正転時にラベル用紙Lの表面側を転動してラベル用紙Lに張力を付与する押えローラ20が設けられている。押えローラ20は、図2に示すように、円周方向に沿って形成された溝21を軸方向に所定間隔で複数備えた所謂溝付きローラで構成されている。
【0025】
また、図3に示すように、支承ローラ10の外周面と押えローラ20の外周面との最短の間隔Yを、0.8mm≦Y≦1.5mmに設定している。実施の形態では、Y=1.0mmに設定している。
更に、押えローラ20の直径をD3としたとき、D3<(1/2)D1にしている。実施の形態では、D2=D3にしてあり、従って、D3=φ5.0mmに設定している。
これにより、支承ローラ10とともに押えローラ20もプラテンローラ2より大幅に小さくなることから、それだけ、装置を小型化することができる。
【0026】
従って、実施の形態に係るプリンタSにより、ラベル用紙Lに印刷を行うときは以下のようになる。
先ず、図4に示すように、プラテンローラ2を逆転させてラベル用紙Lを所要量バックフィードさせて位置決めする際には、通常は、ラベル用紙Lが後退し、支承ローラ10の頂点10aがラベル用紙Lの搬送経路Kよりも下位に位置しているので、ラベル用紙Lが支承ローラ10に支承され、ラベル用紙Lは、支承ローラ10上を滑って、あるいは、支承ローラ10は回転自在なので、このラベル用紙Lとの摩擦抵抗により支承ローラ10が回転し、バックフィードした際のラベル用紙Lの後退する所要長さ分が、支承ローラ10よりも上流側にU字状に下側に撓んで吸収される。この場合、支承ローラ10は、所謂溝付きローラなので、ラベル用紙Lの裏面との接触面積が少なくなることから、支承ローラ10に対するラベル用紙Lの移動を円滑に行うことができる。
【0027】
この場合、もしラベル用紙Lが上側に膨らんで撓もうとしても、押えローラ20が支承ローラ10の近傍に設けられているので、この押えローラ20にラベル用紙Lが当接してラベル用紙Lの上側への移動が規制され、そのため、膨らんで引っ掛かったり、折れ癖が付いたりする事態が防止される。即ち、バックフィードによるラベル用紙Lの後退する所要長さ分を意図した箇所に誘い込むことができ、台紙なしラベル用紙Lのバックフィードを安定して行わせることができる。
【0028】
それから、図1に示すように、プラテンローラ2を正転させてラベル用紙Lを搬送してその搬送過程で印字ヘッド3により印刷を行いラベルLaを発行する。この場合、支承ローラ10の頂点10aがラベル用紙Lの搬送経路Kよりも下位に位置するので、ラベル用紙Lは上側に引っ張られることからラベル用紙Lは支承ローラ10から離間する。また、支承ローラ10は、所謂溝付きローラなので、ラベル用紙Lの裏面との接触面積が少なくなることから、支承ローラ10に対するラベル用紙Lの引き剥がしが円滑に行われる。
【0029】
そして、図1及び図3に示すように、支承ローラ10から離れたラベル用紙Lは、押えローラ20に当接するので、張力が生じ、搬送経路Kに沿って搬送され、印字ヘッド3により所要の印字が行われる。この場合、押えローラ20は所謂溝付きローラなので、ラベル用紙Lの表面との接触面積が少なくなることから、ラベル用紙Lの移動を円滑に行うことができる。また、ラベル用紙Lの搬送時においては、ラベル用紙Lは支承ローラ10から離間しているので、支承ローラ10がラベル用紙Lにくっついて抵抗になることがなく、それだけ、ラベル用紙Lの搬送を円滑に行わせることができる。更に、この場合、バックフィードにより後退した所要長さ分が上流側で一定の姿勢で撓むので、ラベル用紙Lの姿勢が安定していることから、他に引っ掛かる事態が防止され、例えばプラテンローラ2でジャムが生じる等の事態が防止される。発行されたラベルLaは、備え付けのカッタあるいは人手で切り取られる。
【0030】
ところで、上記の通り、連続的にラベルを発行しているときはほとんど生じないが、プリンタSを停止して、その時間が、例えば一昼夜を越えるような長時間になると、プラテンローラ2に対する印字ヘッド3の接点部分でラベル用紙Lがプラテンに着接して剥がれにくくなり、始動時において、バックフィードが行われてもプラテンローラ2にくっついたままになることがしばしば生じ、この場合には、図5に示すように、プラテンローラ2が逆転してラベル用紙Lをバックフィードさせる際に、ラベル用紙Lがプラテンローラ2にくっついたままになることから、このラベル用紙Lの着接部分Aがプラテンローラ2と同動してプラテンローラ2に巻き付いていく。しかしながら、プラテンローラ2と支承ローラ10との間には固定のロッド12があるので、ラベル用紙Lは、このロッド12に粘着し、更に、プラテンローラ2が逆転してラベル用紙LがU字状に撓んでプラテンローラ2とロッド12との間に入り込もうとしても、ラベル用紙Lはロッド12から上向きの反力Fを受けるので、そのため、図6に示すように、プラテンローラ2に着接したラベル用紙Lの着接部分Aが引き剥がされ、下側に引き込まれる事態が防止される。この場合、ロッド12の表面が粘着可能な曲面で構成されているので、ラベル用紙Lのロッド12に対する粘着を確実に行わせることができる。
【0031】
そして、図7に示すように、この状態からプラテンローラ2が正転すると、ラベル用紙Lはプラテンローラ2によって搬送される。この場合、ラベル用紙Lには張力が生じるので、また、ロッド12の頂点10aが、ラベル用紙Lの搬送経路Kよりも下位に位置するので、ラベル用紙Lは上側に引っ張られることからラベル用紙Lはロッド12から引き剥がされる。そして、図1に示すように、搬送経路Kに沿って搬送され、印字ヘッド3により所要の印字が行われる。また、ロッド12により、ラベル用紙Lは、プラテンローラ2から引き剥がされているので、ラベル用紙Lの先端がプラテンローラ2に巻き込まれる事態も防止される。
【0032】
このように、本プリンタSにおいては、回転自在な支承ローラ10,固定のロッド12及び回転自在な押えローラ20を備えた簡単な構造なので、機構の簡略化を図ることができるとともに、従来のように駆動装置を用いなくても、バックフィードにより後退する所要長さ分を上流側で一定の姿勢で撓むようにし、ラベル用紙Lの姿勢を安定させてその引っ掛かりを抑止することができる。また、長時間経過するなどしてプラテンローラ2にラベル用紙Lが着接することに対して、バックフィード時にこれを剥がすことができ、ラベル用紙Lがプラテンローラ2に着接して巻き付くのを防止することができるのである。
【0033】
尚、上記実施の形態では、ロッド12を円柱状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、断面多角形状に形成するなど、どのような形状に形成してもよく適宜変更して差支えない。また、その材質も、金属のみならずプラスチックを用いるなど適宜変更してよい。更に、支承ローラ10や押えローラ20の形状も所謂溝付きローラに限定されないことは勿論である。
尚また、上記実施の形態において、押えローラ20を、支承ローラ10の上流側近傍に設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、支承ローラ10の真上、あるいは、上流側近傍に設けても良く、適宜変更して差支えない。
【符号の説明】
【0034】
S プリンタ
L ラベル用紙
La ラベル
1 機台
2 プラテンローラ
3 印字ヘッド
4 固定部材
5 可動部材
6 センサ
7 ガイドプレート
10 支承ローラ
10a 頂点
12 ロッド
12a 頂点
20 押えローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9