(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0019】
<便器装置>
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る便器装置1の部分断面側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る便器装置1は、便器100と、排出装置110と、洗浄装置120と、地下等に設けられた図示しない汲み取り式の便槽と、を備える簡易水洗式の便器装置である。なお、
図1に示す便器装置1では、後述する排出装置110のフラッパ弁112が閉じている状態を示している。
【0020】
図1に示すように、便器100は、便器本体101と、便鉢102と、を備える。この便器100は、衛生陶器により形成される。
【0021】
便器本体101は、上面に開口が形成されており、前方周壁部101aと、後方周壁部101bと、を備える。
前方周壁部101aは、前方側の上面周縁から下方に向かうに従い、内側に湾曲して形成される。前方周壁部101aの下端は、床FLに当接している。この前方周壁部101aの内側には、後述する便鉢102が配置される。
後方周壁部101bは、後方側の上面周縁から略鉛直下方に延びた後、内側に湾曲して形成される。後方周壁部101bの下端は、床FLに当接している。この後方周壁部101bの内側には、後述する排出装置110の移動機構117が配置される。
【0022】
便鉢102は、上述したように前方周壁部101aの内側に配置される。便鉢102は、前方傾斜部102aと、後方傾斜部102bと、図示しない右側傾斜部及び左側傾斜部と、リム通水路102cと、排出口102dと、を備える。
前方傾斜部102a、後方傾斜部102b、右側傾斜部及び左側傾斜部は、それぞれ中央側に向かうに従い下方に傾斜している。隣接する傾斜部同士は、なだらかな曲面状に接続される。
【0023】
リム通水路102cは、便鉢102の上部周縁に形成される。より詳しくは、リム通水路102cは、便鉢102の上端周縁から内側に延びて下方に垂下するリム105と、各傾斜部の上端部とに挟まれて形成される。このリム通水路102cには、後述する洗浄装置120の洗浄水供給管123から吐出される洗浄水が流通する。リム通水路102cに洗浄水が流通する際には、リム105によって洗浄水が外側に飛散するのが回避される。
【0024】
排出口102dは、便鉢102の下端部において、鉛直下方に開口して形成される。排出口102dは、後述する排出装置110の排出管111に接続されている。汚物及び使用後の溜水Wは、後述する洗浄装置120から供給された洗浄水とともに、この排出口102dを介して排出される。
【0025】
また
図1に示すように、便器100には、便座130及び便蓋140が取り付けられている。便座130及び便蓋140は、便器本体101の後方側上面に、軸支部150を介して回動自在に軸支される。これにより、便座130及び便蓋140はそれぞれ独立して、便器本体101上に倒伏した倒伏状態と、便器本体101に対して略垂直方向に起立した起立状態と、を取り得る。
【0026】
排出装置110は、排出管111と、フラッパ弁112と、フラッパ弁回動軸113と、固定リンク114と、第1磁性部材115と、第2磁性部材116と、移動機構117と、を備える。
ここで、
図2は、排出装置110の部分断面側面図である。また、
図3は、排出装置110のフラッパ弁112が閉じているときの状態を示す斜視図であり、
図4は、排出装置110のフラッパ弁112が開いているときの状態を示す斜視図である。以下、排出装置110の各構成について、
図2〜
図4を参照して説明する。
【0027】
排出管111は、円筒状に形成され、便鉢102の下端部の周縁に接続される。汚物及び使用後の溜水Wは、洗浄装置120から供給される洗浄水とともにこの排出管111を介して排出される。排出管111は、下方に延びて形成され、床FL内に形成されて汲み取り式の便槽に連通された排出路160に接続される。
【0028】
フラッパ弁112は、便鉢102の排出口102dに配置され、排出口102dを開閉する。フラッパ弁112は、受け部112aと、基端部112bとを含んで構成される。
受け部112aは、円形皿状に形成される。受け部112aは、排出口102dの開口縁に当接することで、排出口102dを塞ぐ。なお、
図2に示すように、排出口102dの開口外縁にはゴム製のシール部材Sが全周に亘って設けられており、これにより、フラッパ弁112が閉弁状態のときに排出口102dからの溜水Wの漏れが防止される。
基端部112bは、受け部112aの後方側から延出して形成される。基端部112bには、後述するフラッパ弁回動軸113が挿通されて固定される。
【0029】
フラッパ弁回動軸113は、略水平方向(
図2〜
図4では便器100の左右方向)に延びて形成され、排出管111の後方側部分に軸支される。これにより、フラッパ弁112の基端部112bに挿通されて固定されたフラッパ弁回動軸113は、フラッパ弁112を略鉛直方向に回動させる。
【0030】
固定リンク114は、長尺円柱状のリンク部材で構成される。固定リンク114は、一端側がフラッパ弁回動軸113の一端側に連結されて固定される。より詳しくは、固定リンク114は、その一端側がフラッパ弁回動軸113の一端側に挿通されて固定される。これら固定リンク114とフラッパ弁回動軸113は、互いに略直交して連結されている。また、固定リンク114は、他端側が後述する第1磁性部材115に連結されて固定される。固定リンク114の他端部は、フラッパ弁112の回動に必要な力として、後述する第1磁性部材115と第2磁性部材116との間に発生する磁気吸引力が付加される力点部114aとして作用する。力点部114aに付加された磁気吸引力は、固定リンク114を介してフラッパ弁回動軸113に伝達されることで、フラッパ弁112が回動する。
【0031】
第1磁性部材115は、上述した通り、固定リンク114の他端側の力点部114aに連結されて固定される。また、第1磁性部材115は、
図2に示すように、力点部114aにおけるフラッパ弁回動軸113を中心とした回動円Cの接線L方向(
図2では鉛直方向)に配置される。より詳しくは、第1磁性部材115の中心軸方向が、接線L方向に一致している。
この第1磁性部材115は、円柱状で中空のケース115aと、ケース115a内に収容された円柱状の磁石115bと、を含んで構成される。この第1磁性部材115は、フラッパ弁112が閉じた状態において、上側がN極で下側がS極となるように配置される。
【0032】
第2磁性部材116は、フラッパ弁112が閉じた状態において、
図2に示す力点部114aにおけるフラッパ弁回動軸113を中心とした回動円Cの接線L方向において、第1磁性部材115に対向して配置される。即ち、フラッパ弁112が閉じた状態において、第2磁性部材116の中心軸方向が、接線L方向及び第1磁性部材115の中心軸方向と一致しており、第1磁性部材115と第2磁性部材116との間には、接線L方向に作用する磁気力が発生する。
この第2磁性部材116は、第1磁性部材115と同様に、円柱状のケース116aと、ケース116a内に収容された円柱状の磁石116bと、を含んで構成される。この第2磁性部材116は、フラッパ弁112が閉じた状態において、上側がN極で下側がS極となるように配置される。
【0033】
したがって、第1磁性部材115と第2磁性部材116は、フラッパ弁112が閉じた状態において、互いに異極同士が対向するように配置され、磁気吸引力が発生している。即ち、第1磁性部材115と第2磁性部材116は、互いに磁気吸引力が作用する範囲内で、所定の距離、離隔して対向配置されている。これにより、両磁性部材間で磁気吸引力が発生し、当該磁気吸引力によりフラッパ弁112が閉方向に付勢される。
【0034】
以上の構成を備えることで、本実施形態のフラッパ弁112は、第1磁性部材115と第2磁性部材116の間に発生する磁気吸引力が作用する方向に回動する。即ち、フラッパ弁112が開弁する際には、磁気吸引力に抗してフラッパ弁112が回動するため、不要であるにもかかわらずフラッパ弁112が容易に回動して開弁してしまうのが回避される。
【0035】
移動機構117は、スライドレール117aと、第2磁性部材支持板117bと、ワイヤ117cと、複数のガイド117dと、を備える。
【0036】
スライドレール117aは、排出管111の後方側の下端部に固定されて配置される。スライドレール117aは、第1磁性部材115と第2磁性部材116との間に発生する磁気吸引力の方向(本実施形態では略鉛直方向)に対して略直交する略水平方向、具体的には便器100の左右方向に延びて形成される。
【0037】
第2磁性部材支持板117bは、第2磁性部材116を固定支持する。第2磁性部材支持板117bは、矩形板状部材で構成され、スライドレール117aに沿ってスライド移動する。即ち、第2磁性部材116を支持した第2磁性部材支持板117bは、第1磁性部材115と第2磁性部材116との間に発生する磁気吸引力の方向(本実施形態では略鉛直方向)に対して略直交する略水平方向、具体的には便器100の左右方向にスライド移動する。これにより、第2磁性部材116が第1磁性部材115との間で磁気吸引力が作用する領域を出入りすることが可能となっている。
【0038】
ワイヤ117cは、後述する洗浄装置120の洗浄操作レバー125と、第2磁性部材支持板117bとを連結する。ワイヤ117cは、複数のガイド117dにより案内されている。これにより、ワイヤ117cは、洗浄操作レバー125の回動に連動して洗浄装置120側に引っ張られることで、第2磁性部材116を支持した第2磁性部材支持板117bをスライド移動させる。
したがって、用便終了後や便鉢102の洗浄時等において、洗浄操作レバー125を回動すると、それに連動して、第2磁性部材116が第1磁性部材115との間で磁気吸引力が作用する領域外までスライド移動する。すると、フラッパ弁112を閉方向に付勢していた磁気吸引力が解放され、便鉢102内の汚物や溜水Wの他、洗浄装置120から供給される洗浄水の重量によってフラッパ弁112が開方向に回動し、便鉢102内の汚物が排出される。
【0039】
ここで、フラッパ弁112の開閉に必要な操作荷重について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、従来のフラッパ弁の操作荷重を示す図である。
図6は、本実施形態に係る便器装置1が備える排出装置110のフラッパ弁112の操作荷重を示す図である。
【0040】
上述した通り従来では、
図5に示すように、磁気吸引力Fが作用する方向とは反対方向に磁性部材を移動させることで、フラッパ弁を開弁する。このとき、各磁性部材を点電荷Q1と点電荷Q2とみなすと、磁性部材間(距離D
0)に発生する磁気吸引力Fは、クーロンの法則により(Q1Q2)/4πμD
02と算出される。したがって、磁気吸引力Fが作用する方向とは反対方向に磁性部材を移動させるのに必要な操作荷重Fcは、(Q1Q2)/4πμD
02よりも大きい値である。
【0041】
これに対して本実施形態では、
図6に示すように、磁気吸引力Fが作用する方向に対して直交する方向に磁性部材を移動させる(
図6では距離t移動させる)ことで、フラッパ弁112を開弁する。このとき、磁性部材を移動させた後の磁性部材間(距離D)に発生する磁気吸引力Fmは、クーロンの法則により(Q1Q2)/4πμD
2と算出される。したがって、磁気吸引力Fm×sinθが作用する方向とは反対方向に磁性部材を移動させるのに必要な操作荷重Fpは、(Q1Q2sinθ)/4πμD
2よりも大きい値である。
以上の結果から、本実施形態のフラッパ弁112の操作荷重Fp=(Q1Q2sinθ)/4πμD
2は、従来のフラッパ弁の操作荷重Fc=(Q1Q2)/4πμD
02よりも、小さいことが分かる。
【0042】
図1に戻って、洗浄装置120は、洗浄タンク121と、洗浄水供給弁122と、洗浄水供給管123と、洗浄ワイヤ124と、洗浄操作レバー125と、を備える。
【0043】
洗浄タンク121は、便器本体101の後方上面に設置される。洗浄タンク121は、便鉢102内を洗浄するとともに、用便後の汚物を排出するための洗浄水を貯留する。洗浄タンク121には、図示しない給水管が接続される。
【0044】
洗浄水供給弁122は、洗浄タンク121内の下面に配置される。洗浄水供給弁122は、洗浄タンク121内の下面に形成された供給口を開閉する。
【0045】
洗浄水供給管123は、洗浄水供給弁122により開閉される供給口と、便鉢102内のリム通水路102cを連通するように設けられる。洗浄水供給管123は、洗浄タンク121内の洗浄水を、リム通水路102cに向けて吐出する。
【0046】
洗浄ワイヤ124は、洗浄水供給弁122と、後述する洗浄操作レバー125を連結する。これにより、洗浄水供給弁122は、洗浄操作レバー125の回動に連動して開閉する。
【0047】
洗浄操作レバー125は、洗浄タンク121の側面に配置される。洗浄操作レバー125は、便器100の前後方向に回動可能となっている。洗浄操作レバー125は、上述の通り洗浄ワイヤ124により洗浄水供給弁122と連結される。これにより、洗浄操作レバー125を回動させると、洗浄ワイヤ124が上方に引っ張られて洗浄水供給弁122が開くことで、洗浄タンク121内の洗浄水が洗浄水供給管123を介して便鉢102内のリム通水路102cに供給される。なお、本実施形態の洗浄装置120は、例えば、1回の洗浄におよそ300cc程度の極少量の洗浄水を供給する。
また、上述した通り洗浄操作レバー125は、ワイヤ117cにより第2磁性部材支持板117bと連結される。したがって、洗浄操作レバー125を回動させることで、洗浄水の供給操作とともに、フラッパ弁112の開閉操作が可能となっている。
【0048】
以上の構成を備える便器装置1の洗浄時の動作について、
図7及び
図8を参照して説明する。
ここで、
図7は、便器装置1の洗浄操作レバー125を回動したときの状態を示す部分断面側面図である。
図8は、便器装置1のフラッパ弁112が開いたときの状態を示す部分断面側面図である。
【0049】
図7に示すように、用便終了後や便鉢102の洗浄時等において、洗浄操作レバー125を回動すると、先ず、洗浄ワイヤ124が上方に引っ張られて洗浄水供給弁122が開弁する。すると、洗浄タンク121内の洗浄水(例えば300cc程度の極少量)が、洗浄水供給管123を介して便鉢102内のリム通水路102cに吐出される。これにより、便鉢102内の各傾斜部が洗浄されるとともに、溜水Wの水量が増加する。
【0050】
なお、このとき、洗浄操作レバー125の回動に連動してワイヤ117cが上方に引っ張られることで、第2磁性部材116を支持した第2磁性部材支持板117bがスライドレール117aに沿ってスライド移動する。より具体的には、第1磁性部材115と第2磁性部材116との間に発生する磁気吸引力の方向(本実施形態では略鉛直方向)に対して略直交する略水平方向(本実施形態では便器100の左右方向、
図7では紙面奥方向)にスライド移動する。ただし、
図7に示す状態では、第2磁性部材116はまだ第1磁性部材115との間で磁気吸引力が作用する領域内に存在する。そのため、残存する磁気吸引力によって、フラッパ弁112は閉方向に付勢されたままである。
【0051】
次いで、洗浄操作レバー125をさらに回動し、第2磁性部材116を支持した第2磁性部材支持板117bがさらにスライド移動すると、第2磁性部材116が、第1磁性部材115との間で磁気吸引力が作用する領域外までスライド移動する。すると、
図8に示すように、フラッパ弁112を閉方向に付勢していた磁気吸引力が解放され、便鉢102内の汚物や溜水Wの重みによって、フラッパ弁112が開方向に回動する。これにより、便鉢102内の汚物や溜水W等が排出管111及び排出路160を介して排出される。
【0052】
次いで、便鉢102内の汚物や溜水Wの排出が完了し、使用者が洗浄操作レバー125から手を離すと、第1磁性部材115の重みによってフラッパ弁112が閉方向に回動する。すると、第2磁性部材支持板117bが元の位置までスライド移動し、ワイヤ117cが排出装置110側に引っ張られることで、洗浄操作レバー125が元の位置まで戻る。これにより、洗浄水供給弁122が閉弁し、便器100の洗浄が完了する。
【0053】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態に係る便器装置1では、フラッパ弁回動軸113に連結された力点部114aに第1磁性部材115を連結し、力点部114aにおけるフラッパ弁回動軸113を中心とした回動円Cの接線L方向に第1磁性部材115を配置した。また、フラッパ弁112が閉じた状態において、接線L方向(本実施形態では第1磁性部材115の下方)において第1磁性部材115に対向する位置に、第1磁性部材115との間に接線L方向に発生する磁気吸引力によりフラッパ弁112を閉方向に付勢する第2磁性部材116を配置した。そして、第2磁性部材116を接線L方向に対して略直交する略水平方向(本実施形態では便器100の左右方向)に移動させる移動機構117を設けた。
これにより本実施形態によれば、第1磁性部材115と第2磁性部材116との間に発生する磁気吸引力が作用する方向に対して略直交する方向に第2磁性部材116をスライド移動させるため、小さい操作荷重でフラッパ弁112を回動させて便鉢102内の汚物等を排出できる。
また、従来のように磁気吸引力が作用する方向に磁性部材を移動させる場合と比べて、より小さな操作ストロークにより、操作後において磁性部材間に磁気吸引力が残存することを回避でき、便鉢102内の汚物等をより確実に排出できる。
また本実施形態によれば、磁気吸引力が作用する方向にフラッパ弁112が回動するため、不要であるにもかかわらずフラッパ弁112が容易に回動して開弁してしまうのを回避できる。そのため、フラッパ弁112の固着を回避しつつ、溜水Wの水量を多く確保でき、便鉢102内の汚物の付着をより抑制できる。
【0054】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係る便器装置2の部分断面側面図である。
図9に示すように、第2実施形態に係る便器装置2は、排出装置210の構成が相違する以外は、第1実施形態に係る便器装置1と同様の構成である。具体的には、本実施形態の排出装置210は、排出管211の後方側上部211aが便器100の後方に突出しており、排出管211の後方側下部211bに左右方向に延びる溝が形成されている点が第1実施形態と相違する。
【0055】
また、排出管211の後方側上部211aの内部に第1磁性部材115が収容され、第2磁性部材116が排出管211の後方側下部211bの溝内に配置されている点が、第1実施形態と相違する。即ち、本実施形態では、第1磁性部材115と第2磁性部材116との間に発生する磁気吸引力が、排出管211の壁面を介して作用する。
なお、排出管211内に収容される第1磁性部材115は、腐食を防止するため、樹脂や陶器等の腐食防止材により被覆されていることが好ましい。
【0056】
本実施形態に係る便器装置2によれば、第1実施形態に係る便器装置1と同様に動作し、同様の効果が奏される。
【0057】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係る便器装置3が備える排出装置310のフラッパ弁112が閉じているときの状態を示す斜視図である。また
図11は、本発明の第3実施形態に係る便器装置3が備える排出装置310のフラッパ弁112が開いているときの状態を示す斜視図である。
図10及び
図11に示すように、第3実施形態に係る便器装置3は、排出装置310の構成が相違する以外は、第1実施形態に係る便器装置1と同様の構成である。具体的には、本実施形態の排出装置310は、第1磁性部材315と第2磁性部材316との間に磁気反発力が発生するように構成され、かかる磁気反発力によりフラッパ弁112が閉方向に付勢される点が第1実施形態と相違する。
【0058】
本実施形態では、第1磁性部材315と第2磁性部材316は、フラッパ弁112が閉じた状態において、互いに同極同士が対向するように配置される。これにより、両磁性部材間で磁気反発力が発生し、当該磁気反発力によりフラッパ弁112が閉方向に付勢される。
具体的には本実施形態では、第2磁性部材316が第1磁性部材315の上方に配置されるとともに、スライドレール317aと第2磁性部材支持板317bが第1実施形態と比べて上下反転して配置される。
【0059】
本実施形態に係る便器装置3によれば、第1実施形態の磁気吸引力が磁気反発力に置換されただけであるため、第1実施形態に係る便器装置1と同様に動作し、同様の効果が奏される。
【0060】
<汚物搬送システム>
[第4実施形態]
次に、本発明の汚物搬送システムについて説明する。
ここで、
図12は、本発明の第4実施形態に係る汚物搬送システム4の構成を示す図である。
図12に示すように、本実施形態の汚物搬送システム4は、少量の洗浄水で洗浄する簡易水洗便器が設定された集合住宅8に好ましく適用される。
汚物搬送システム4は、便器装置1Aと、立て管80と、高置上水槽81と、給水管82と、排出管41と、横管42と、セプティックタンク43と、搬送ポンプ44と、搬送管45と、分岐搬送管46と、を備える。
【0061】
便器装置1Aは、上述の第1実施形態に係る便器装置1と比べて、洗浄装置120Aの洗浄タンク121の位置が便器100から離隔している以外は同様の構成である。なお、汚物搬送システム4では、第1〜第3実施形態に係る便器装置1〜3のいずれも用いることができる(後述する第5〜第7実施形態に係る汚物搬送システム5〜7においても同様)。
【0062】
立て管80は、上下に1本延びて設けられる。立て管80には、複数の便器装置1Aの排出装置110に接続される複数の排出管41が接続される。即ち、立て管80は、複数の便器装置1Aから排出された汚物や洗浄水が流れ込む。
【0063】
高置上水槽81は、集合住宅8の屋上等に配置される。高置上水槽81は、上下に延びる給水管82を介して、複数の便器装置1Aの洗浄装置120Aが備える洗浄タンク121に上水を供給する。
【0064】
排出管41は、各便器装置1Aに対応して複数設けられる。複数の排出管41は、その上端が各便器装置1Aの排出装置110に接続され、比較的緩やかに下方に傾斜して、その下端が立て管80に接続される。
【0065】
横管42は、立て管80の下端に接続され、比較的緩やかに下方に傾斜して、後述するセプティックタンク43に接続される。
【0066】
セプティックタンク43は、排出管41、立て管80及び横管42を介して排出された汚物等を浄化する便槽である。セプティックタンク43は、一次処理槽431と、二次処理槽432とを含んで構成される。二次処理槽432には、浄化により得られた水分を搬送するための搬送ポンプ44が配置される。
【0067】
搬送管45は、その下端が搬送ポンプ44に接続される。搬送管45は、上下に延びるとともに、各便器装置1Aに延びる複数の分岐搬送管46に分岐される。複数の分岐搬送管46は、それぞれ、排出管41の最上流部に接続される。これにより、搬送ポンプ44によって搬送管45及び分岐搬送管46を介して搬送された搬送水が、各排出管41の最上流部に供給される。
【0068】
以上の構成を備える本実施形態に係る汚物搬送システム4の動作について説明する。
用便後、便器装置1Aから汚物等が排出されると、緩やかに傾斜した排出管41に、汚物が洗浄装置120Aから供給された洗浄水とともに流れ込む。このとき、便器装置1Aでは極少量(例えば、300cc)の洗浄水しか供給されないため、緩やかに傾斜した排出管41の途中で、汚物等が流れずに滞留する。
【0069】
そこで、搬送ポンプ44を間欠的に一定時間作動(例えば、15分おきに10秒作動)させ、二次処理槽432中の水分を所定量、搬送管45及び分岐搬送管46を介して排出管41の最上流部に供給する。これにより、排出管41内における汚物の滞留を回避でき、汚物等を速やかにセプティックタンク43まで排出できる。
【0070】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、便器装置1Aの排出装置110(具体的には排出口102d)に接続される排出管41に、汚物を搬送するための搬送水を直接供給するように、汚物搬送システム4を構成した。
これにより本実施形態によれば、極少量の洗浄水しか使用しない簡易水洗便器装置としての便器装置1Aを備える汚物搬送システム4において、複数の排出管41の詰まりを確実に回避できる。
【0071】
[第5実施形態]
図13は、本発明の第5実施形態に係る汚物搬送システム5の構成を示す図である。
本実施形態に係る汚物搬送システム5は、上述の第4実施形態と比べて、集合住宅9の造りの違いに起因して、排出管51の傾斜角度が急である。そのため、排出管51の最上流部に搬送水を搬送するための搬送管等は設けられていない点が相違する。
またその代わりに、一端が搬送ポンプ54に接続され、他端が横管52の最上流部に接続された搬送管55が設けられている点が相違する。その他の構成は第4実施形態と同様である。
【0072】
本実施形態によれば、比較的傾斜が緩やかな横管52の最上流部に、汚物を搬送するための搬送水を直接供給することで、横管52の詰まりを確実に回避できる。
【0073】
[第6実施形態]
図14は、本発明の第6実施形態に係る汚物搬送システム6の構成を示す図である。
本実施形態に係る汚物搬送システム6は、上述の第5実施形態と比べて、搬送ポンプ54及び搬送管55が設けられていない点が相違する。
またその代わりに、上流端が高置上水槽91に接続されるとともに、下流端が横管52に最上流部に接続された搬送管62と、この搬送管62の途中に設けられた開閉弁61とを備える点が相違する。その他の構成は第5実施形態と同様である。
【0074】
本実施形態によれば、開閉弁61を間欠的に一定時間、開弁することで、高置上水槽91内の上水を、搬送管62を介して横管52に最上流部に直接供給できるため、横管52の詰まりを確実に回避できる。
【0075】
[第7実施形態]
図15は、本発明の第7実施形態に係る汚物搬送システム7の構成を示す図である。
本実施形態に係る汚物搬送システム7は、上述の第6実施形態と比べて、集合住宅9の屋上等に配置された雨水受けパン71と、この雨水受けパン71により取得された雨水を高置上水槽91に供給する雨水供給管72とを備える点が相違する。その他の構成は第6実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態によれば、雨水受けパン71で取得した雨水を、雨水供給管72を介して高置上水槽91に供給することで、雨水を有効利用できる。
【0077】
[第8実施形態]
図16は、本発明の第8実施形態に係る汚物搬送システム10の構成を示す図である。
本実施形態に係る汚物搬送システム10は、上述の第5実施形態と比べて、横管52に延出部52Xが設けられている点と、搬送ポンプ54及び搬送管55が設けられていない点が相違する。また、搬送水タンク21と、搬送管22と、搬送弁23と、搬送水供給口24と、を備える点が相違する。その他の構成は第5実施形態と同様である。
【0078】
搬送水タンク21内には、所定量の搬送水が貯留される。
搬送管22は、上流側が搬送水タンク21に接続され、下流側が後述する搬送水供給口24に接続される。この搬送管22には、後述する搬送弁が開くことで、搬送水が流通する。
搬送弁23は、搬送管22の途中に設けられる。搬送弁23は、間欠的に一定時間、開弁するように設定される。この搬送弁23が開くことで、搬送水タンク21内の搬送水が横管52の最上流部に供給される。また、この搬送弁23が閉じることで、搬送水の供給が停止される。
搬送水供給口24は、横管52の最上流部に設けられる。搬送水供給口24は、無底円錐台形状を有し、下流側、即ち横管52側ほど小径となるように配置される。この搬送水供給口24には上述の搬送管22が接続され、この搬送水供給口24を介して、搬送水が横管52の最上流部に供給される。
【0079】
本実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果が奏される。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば上記実施形態では、第1磁性部材115,315及び第2磁性部材116,316としていずれも磁石を用いたが、これに限定されない。これらのうち少なくとも一方が自発的に磁気を発する磁石であればよく、他方は磁性体を用いてもよい。