(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ライトシートに照らされることで、相対的に移動する検査対象面上に形成された、一方向に略沿って延びた線状の光の画像を、前記ライトシートと交叉した方向から撮像する撮像部と、
複数の線状の光の画像について、当該線状の光の画像の前記一方向に沿った各点での基準位置からのずれに応じて当該各点での高さに応じた輝度値を決定し、当該各点に対応した線状の光の画像の位置の経時変化に基づいて前記ずれ、前記高さ、または前記輝度値を補正して、前記検査対象面の前記一方向および当該一方向と直交する他方向の二次元の疑似画像データを生成する疑似画像データ生成部と、
前記疑似画像データの画像処理によって検査対象面における異常領域を決定する異常領域決定部と、
を備えた、外観検査装置。
前記疑似画像データ生成部は、検査対象面の移動方向一方側への前記代表位置の閾値を超えた経時変化が生じた後、検査対象面の移動方向他方側への前記代表位置の閾値を超えた経時変化が生じた場合に、前記補正を実行する、請求項2に記載の外観検査装置。
前記疑似画像データ生成部は、前記移動方向他方側への前記代表位置の閾値を超えた経時変化が、前記移動方向一方側への前記代表位置の閾値を超えた経時変化が生じてから、検査対象面の移動速度に応じた所定時間経過後の時刻を含む第一の時間範囲内に生じた場合に、前記補正を実行する請求項3に記載の外観検査装置。
前記疑似画像データ生成部は、前記代表位置の経時変化の大きさが閾値を超えてから前記代表位置の経時変化の大きさが閾値を超えるまでの第二の時間範囲内の各時刻での、前記ずれ、前記高さ、または前記輝度値の補正を、前記第二の時間範囲の前および後の少なくとも一方の前記ずれに基づいて実行する、請求項3または4に記載の外観検査装置。
前記疑似画像データ生成部は、前記線状の光の画像の、検査対象面の移動方向上流側の端部の位置の、経時変化の大きさが、対応する閾値を超えた後、前記線状の光の画像の、検査対象面の移動方向下流側の端部の位置の、経時変化の大きさが、対応する閾値を超えた場合に、前記補正を実行する請求項1に記載の外観検査装置。
前記疑似画像データ生成部は、前記移動方向一方側への前記移動方向上流側の端部の位置の閾値を超えた経時変化が生じた後、前記移動方向他方側への前記移動方向下流側の端部の位置の閾値を超えた経時変化が生じた場合に、前記補正を実行する請求項6に記載の外観検査装置。
前記疑似画像データ生成部は、前記移動方向他方側への前記移動方向下流側の端部の位置の対応する閾値を超えた経時変化が、前記移動方向一方側への前記移動方向上流側の端部の位置の対応する閾値を超えた経時変化が生じてから、検査対象面の移動速度に応じた所定時間経過後の時刻を含む第一の時間範囲内に生じた場合に、前記補正を実行する請求項7に記載の外観検査装置。
前記疑似画像データ生成部は、前記線状の光の画像の、検査対象面の移動方向上流側の端部の位置の経時変化が、対応する閾値を超えてから、前記線状の光の画像の、移動方向下流側の端部の位置の経時変化が、対応する閾値を超えるまでの第二の時間範囲内の各時刻での、前記ずれ、前記高さ、または前記輝度値の補正を、前記第二の時間範囲の前および後の少なくとも一方の前記ずれに基づいて実行する、請求項6〜8のうちいずれか一つに記載の外観検査装置。
ライトシートに照らされることで、相対的に移動する検査対象面上に形成された、一方向に略沿って延びた線状の光の画像を、前記ライトシートと交叉した方向から撮像する撮像部と、
複数の線状の光の画像について、当該線状の光の画像の前記一方向に沿った各点での基準位置からのずれに応じて当該各点での高さに応じた輝度値を決定し、当該各点に対応した線状の光の画像の位置の、副走査方向の単位長さあたりの変化量に基づいて前記ずれ、前記高さ、または前記輝度値を補正して、前記検査対象面の前記一方向および当該一方向と直交する他方向の二次元の疑似画像データを生成する疑似画像データ生成部と、
前記疑似画像データの画像処理によって検査対象面における異常領域を決定する異常領域決定部と、
を備えた、外観検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成や制御、ならびに当該構成や制御によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成や制御以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成や制御によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)を得ることが可能である。
【0010】
本実施形態では、一例として、
図1〜4に示される外観検査装置1は、検査対象物100を撮像した画像に基づいて、当該検査対象物100の検査対象面101の検査を行う。
図3に示されるように、外観検査装置1は、光源2や、撮像部3、制御部40、搬送装置5(搬送部)、表示装置6(表示部)、入力装置7(入力部)、搬送状態センサ8(速度センサ)等を備える。
【0011】
図1,2に示されるように、光源2は、ライトシートLS(シート状の光、平坦なカーテン状の光、スリット光)を出射し、検査対象面101に線状の光Lを照射する。光源2は、例えば、輝線照射用のレーザ光源等である。ライトシートLSは、例えば、レーザーライトシートである。撮像部3は、ライトシートLSと交叉する方向から検査対象領域Aを含む検査対象面101上の二次元領域を撮像する。
【0012】
図1に示されるように、光源2は、検査対象面101の法線方向(
図1中のZ方向)と線状の光L(検査対象領域A)の幅方向(
図1,2中のY方向、主走査方向)との間の斜め方向(斜め上方向)から、線状の検査対象領域Aを照らしている。検査対象面101が平面であった場合、検査対象面101上の光L(輝線)は直線状である。しかしながら、検査対象面101が凸部を有していた場合、検査対象面101が平面であった場合の光Lを基準線R(直線、基準位置)とすると、当該凸部に当たった光Lは、基準線Rから光源2側(光源2に近い側)にずれる。また、逆に、検査対象面101が凹部を有していた場合、当該凹部に当たった光Lは、基準線Rから光源2とは反対側(光源2から遠い側)にずれる。すなわち、撮像部3で撮像した画像中の光Lの位置(形状、基準線Rからのずれ)によって、検査対象面101の凹凸ならびに当該凹凸の程度(凸部の高さ、凹部の深さ、法線方向における位置)を判別することができる。なお、ライトシートLSの出射方向ならびに撮像部3による撮像方向は、種々に設定することが可能である。
【0013】
撮像部3は、ライトシートLSと交叉した方向であり、かつ検査対象面101の上方(本実施形態では、一例として法線方向に離れた位置)から、少なくとも検査対象領域Aにおける光Lの画像を撮像する。撮像部3は、例えば、二次元に配列された光電変換素子(光電変換部)を有したエリアセンサ(固体撮像素子、例えば、CCD(charge coupled device)イメージセンサや、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサ等)である。
【0014】
搬送装置5は、検査対象物100を光L(検査対象領域A)の幅方向(検査対象物100の長手方向、
図1,2中のX方向、副走査方向)に搬送し、検査対象面101における検査対象領域Aを移動させる。これにより、検査対象面101の二次元領域について、データが取得される。なお、検査対象物100が固定され、光源2や撮像部3等が検査対象面101に沿って移動する構成(搬送装置5によって動かされる構成)であってもよい。
【0015】
また、外観検査装置1は、
図3に示されるように、制御部40(例えばCPU(central processing unit)等)や、ROM41(read only memory)、RAM42(random access memory)、補助記憶装置43、コントローラ44〜49等を備えることができる。補助記憶装置43は、例えばHDD(hard disk drive)や、SSD(solid state drive)、フラッシュメモリ等である。コントローラ44は、制御部40からの制御信号に基づいて、光源2の発光(オン、オフ)等を制御する。コントローラ45は、制御部40からの制御信号に基づいて、撮像部3による撮像を制御する。コントローラ46は、制御部40から受けた制御信号に基づいて、搬送装置5を制御し、検査対象物100の搬送(開始、停止、速度等)を制御する。コントローラ47は、制御部40からの制御信号に基づいて、表示装置6(例えば、LCD(liquid crystal display)、OELD(organic electroluminescent display)等)を制御する。コントローラ48は、入力装置7(例えば、キーボードや、つまみ、操作ボタン、タッチパネル等)での入力操作に応じたデータを、制御部40に送る。コントローラ49は、搬送状態センサ8(例えば、搬送装置5の回転源の回転部分に設けられたロータリエンコーダ)からの信号(例えば、パルス信号)やデータを、制御部40に送る。
【0016】
また、制御部40は、不揮発性の記憶部としてのROM41や補助記憶装置43等にインストールされたプログラム(アプリケーション)を読み出して実行する。RAM42は、制御部40がプログラムを実行して種々の演算処理を実行する際に用いられる各種データを一時的に記憶する。なお、
図3に示されるハードウエアの構成はあくまで一例であって、例えばチップやパッケージにする等、種々に変形して実施することが可能である。また、各種演算処理は、並列処理することが可能であり、制御部40等は、並列処理が可能なハードウエア構成とすることが可能である。
【0017】
また、本実施形態では、一例として、制御部40は、ハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働によって、外観検査装置1の少なくとも一部として機能(動作)する。すなわち、
図4に示されるように、制御部40は、光照射制御部40aや、撮像制御部40b、搬送制御部40c、画像処理部40d、可変設定部40e、表示制御部40f等として機能する。プログラムには、
図4に示される各部に対応したモジュールが含まれる。
【0018】
画像処理部40dは、線状画像取得部40gや、エッジ検出部40h、画素ずれ量算出部40i、経時変化量算出部40j、記憶制御部40k、開始終了検出部40m、疑似画像データ生成部40n、補正部40p、異常領域決定部40r等を含む。光照射制御部40aは、コントローラ44を制御し、ひいては、光源2を制御する。撮像制御部40bは、コントローラ45を制御し、ひいては、撮像部3を制御する。搬送制御部40cは、コントローラ46を制御し、ひいては、搬送装置5を制御する。画像処理部40dは、撮像部3が取得した画像データを画像処理する。また、表示制御部40fは、コントローラ47を制御し、ひいては、表示装置6を制御する。
【0019】
画像処理部40dの疑似画像データ生成部40nは、複数の検査対象領域A(
図1,2参照)の各点(検査対象領域Aの長手方向(Y方向)の各点)に対応した光Lの画像の基準線R(基準位置)からのずれに応じて、当該各点での輝度値を決定することにより、二次元の疑似画像データを生成する。輝度値は、検査対象領域Aの各点の高さに応じた値となる。一例として、疑似画像データ生成部40nは、各位置での基準線Rから光源2に近い側(
図1の左上側)へのずれが大きいほど輝度値を高く設定し(画素(点)を明るくし)、光源2から遠い側(
図1の右下側)へのずれが大きいほど輝度値を低く設定する(画素を暗くする)。これにより、疑似画像は、検査対象領域Aの二次元の外観に近い画像となる。表示制御部40fは、疑似画像が表示されるよう、表示装置6を制御することができる。疑似画像は、検査対象面101の凹凸の状態(大きさや、位置等)を視覚的に判断しやすいという利点も有している。
【0020】
発明者らの鋭意研究により、検査対象面101の表面性状(色、材質、面粗さ等)によって線状の光Lの画像の領域(幅)が変化し、これに伴って、従来の方法では、検査対象面101の高さの誤検知が生じる場合があることが判明した。この現象の一例が、
図6が参照されつつ説明される。
図6には、平らな(凹凸の無い)検査対象面101に、黒色領域と白色領域とがあり、検査対象物100の搬送(移動)によって、線状の光Lならびに検査対象領域Aが黒色領域から白色領域に移動する場合の、検査対象領域A内のY方向の1点(例えば、
図2中の位置P)における、線状の光Lの画像ILのX方向の領域(幅)の経時変化が例示されている。
図6では、横軸は時刻(t)、縦軸は各画素の基準線Rに対する搬送方向(移動方向、
図1のX方向)の位置(x)であり、
図6の右側に向かうほど時刻(タイミング)が遅く、
図6の下側に向かうほど画素の位置が搬送方向下流側である。
図6では、各時刻tにおける線状の光Lの画像ILの領域(幅、範囲、区間)が、ドットパターンで示されている。なお、
図6では、各画素の輝度値が、閾値に対する大小(高低)によって、二値化されている。ドットパターン内は、輝度値が閾値以上である画素の領域である。また、
図6において、線状の光Lの画像ILの上端xlは搬送方向上流側の端部(エッジ)であり、線状の光Lの画像ILの下端xtは搬送方向下流側の端部(エッジ)である。検査対象面101の搬送によって、まずは、線状の光Lの搬送方向上流側の端部が、黒色領域から出て白色領域に入る。黒色領域は光の反射率が低く、白色領域は光の反射率が高い。このため、白色領域では黒色領域に比べて線状の光Lの領域(幅)が拡大する。よって、
図6に示されるように、まずは時刻t1からt2にかけて、線状の光Lの画像ILの搬送方向上流側の端部xlが、搬送方向上流側に向けて拡大する。ただし、線状の光Lが白色領域に進入した当初の状態では、線状の光Lの搬送方向下流側の端部は、白色領域には進入していない。よって、
図6に示されるように、線状の光Lの画像ILの搬送方向下流側の端部xtの位置は、変化しない。その後、時刻t3からt4にかけて、線状の光Lの搬送方向下流側の端部(近傍の領域、手前の領域)が、黒色領域から出て白色領域へ入る。これに伴って、線状の光Lの画像ILの搬送方向下流側の端部xtが、搬送方向下流側に向けて拡大する。時刻t4(+α)以降は、線状の光Lの全域が白色領域内に入るため、線状の光Lの画像ILにおける搬送方向上流側の端部xlならびに搬送方向下流側の端部xtの双方の位置が変化しない。すなわち、線状の光Lの画像ILについては、まずは時刻t1からt2にかけて、搬送方向上流側の端部xlが搬送方向上流側に移動するとともに、搬送方向の幅W1が幅W2へ広がる。時刻t2からt3にかけては、端部xl,xtの位置ならびに幅W2は変化しない。時刻t3からt4にかけては、搬送方向下流側の端部xtが搬送方向下流側に移動するとともに、搬送方向の幅W2が幅W3に広がる。従来は、画像処理によって線状の光Lの画像ILの中心の位置Cが算出され、この位置Cの基準位置Rからのずれに応じて高さが算出されていた。このため、
図6に示されるように、時刻t1から時刻t4にかけて、線状の光Lの画像ILの中心の位置Cの、基準位置Rからのずれが生じ、本来は高さの変化が無い期間であるにも拘わらず、高さが変化しているかのような結果(高さ、ひいては凹凸についての誤った検出結果)が得られていた。
【0021】
そこで、本実施形態では、一例として、画像処理部40d(制御部40)は、線状画像取得部40gや、エッジ検出部40h、画素ずれ量算出部40i、経時変化量算出部40j、記憶制御部40k、開始終了検出部40m、補正部40p等を有している。以下、
図5が参照されて、検査対象面101の表面性状が変化する遷移期間Tt(
図6参照、第二の時間範囲)における誤検知を抑制する画像処理部40d(制御部40)の演算処理の一例が説明される。
【0022】
まず、制御部40は、線状画像取得部40gとして機能し、線状の光Lの画像ILを取得する(S10)。次に、制御部40は、エッジ検出部40hとして機能し、線状の光Lの画像ILのY方向の各位置(各点)におけるX方向のエッジ(端部)を検出する(S11)。このS11で、画像ILの搬送方向(移動方向、X方向、検査対象領域Aの幅方向)の上流側の端部xlならびに下流側の端部xtの各位置が取得される。次に、制御部40は、画素ずれ量算出部40iとして機能し、上流側の端部xlの位置ならびに下流側の端部xtの位置から代表位置(例えば中点)を取得し、当該代表位置における基準位置Rからの画素ずれ量(一例としては、
図6の中点Cの基準位置Rからのずれ量、X方向の位置座標)を算出する(S12)。
【0023】
次に、制御部40は、経時変化量算出部40jとして機能し、画素ずれ量の経時変化を算出する(S13)。S13での算出にあたり、記憶部50には、過去の一定期間における画素ずれ量が記憶されている。記憶部50は、不揮発性の書き換え可能な記憶部であって、例えば、補助記憶装置43である。S13では、画素ずれ量の時間微分(単位時間あたりの変化率)を算出する。時間微分は、現時刻(最新時刻)での画素ずれ量と一つ前の時刻での画素ずれ量との差分として算出されうるし、あるいは、現時刻での画素ずれ量と現時刻より前の複数の時刻での画素ずれ量とを用いた差分として算出されうる。次に、制御部40は、記憶制御部40k(ライト処理部、書込部、書換部、更新処理部)として機能し、記憶部50に記憶されるデータ(情報)を更新する(書き換える)(S14)。記憶部50には、例えば、Y方向の各位置での各時刻における、画素ずれ量や、上流側の端部xlの位置座標、下流側の端部xtの位置座標、画素ずれ量の経時変化量等が、記憶されうる。
【0024】
次に、制御部40は、開始終了検出部40m(遷移期間検出部)として機能し、検査対象面101の表面状態が変化する遷移期間(遷移区間)が開始されたことあるいは終了されたことを検出する(S15)。S15において、開始終了検出部40mは、遷移期間の開始あるいは終了を、以下に例示される手法で検出されうる。
【0025】
<1.線状の光の画像の代表位置の経時変化>
図6からわかるように、遷移期間Ttにおいて、代表位置(例えば、線状の光Lの画像ILの搬送方向上流側の端部xlと搬送方向下流側の端部xtとの中点CのX方向の位置)は、時間の経過に応じて比較的急に変化する。したがって、代表位置の経時変化(時間微分、単位時間あたりの代表位置の変化量、代表位置の時間変化率、
図6のグラフにおける中点Cの傾き)に対応した閾値が設定され、代表位置の経時変化が閾値と同じかあるいは超えた場合に、遷移期間Ttの開始を検出することができる。
また、代表位置(例えば、中点Cの位置)は、遷移期間Ttの開始時には、搬送方向一方側(
図6の例では、搬送方向上流側、
図6の上側)に移動し、遷移期間Ttの終了時には、搬送方向他方側(
図6の例では、搬送方向下流側、
図6の下側)に移動する。このように、遷移期間Ttの開始時と遷移期間Ttの終了時とで、代表位置の移動方向が異なる(相反する)。なお、図示されないが、線状の光Lが検査対象面101の白色領域から黒色領域に移動した場合にあっては、遷移期間Ttの開始時には代表位置は搬送方向下流側へ移動し、遷移期間Ttの終了時には代表位置は搬送方向上流側へ移動する。したがって、代表位置の搬送方向の一方側への経時変化が閾値と同じかあるいは超えた後、代表位置の搬送方向の他方側への経時変化が閾値と同じかあるいは超えた場合に、前者を遷移期間Ttの開始、後者を遷移期間Ttの終了として検出することができる。開始時の閾値と終了時の閾値とは、一例としては、同じ値を用いることができる。
さらに、遷移期間Ttの開始時において閾値を超える代表位置の経時変化が生じた時刻(例えば、開始時の経時変化が終了した時刻t2)と、遷移期間Ttの終了時において閾値を超える代表位置の経時変化が生じた時刻(例えば、終了時の経時変化が終了した時刻t4)との間の時間δt(所定時間)は、線状の光Lの幅と、検査対象面101の搬送速度とで、定まる。したがって、例えば、画像ILの幅W1と、搬送速度Vとから、時間δtは、
δt≒W1/V ・・・ (1)
の式から、算出することができる。ここで、幅W1の値は、例えば、拡散率が低い状態での値等が用いられるが、これには限定されない。式(1)を用いて、例えば、遷移期間Ttの終了時における経時変化が、遷移期間Ttの開始時における経時変化が生じてから、移動速度Vに応じた所定期間δt経過後を含む所定時間範囲Tm(第一の時間範囲)内に生じた場合、すなわち、
図6の場合、例えば、時刻t4と時刻t2との時間差が、所定期間δtに対して許容範囲(所定時間範囲Tm)内であるとして、
δt−Tm/2≦t4−t2≦δt+Tm/2 ・・・(2)
が満たされることを条件として、時刻t2で終わる開始時の経時変化と、時刻t4で終わる終了時の経時変化とが生じたことが検出されてもよい。
なお、凹部や凸部によって、偶々、表面性状の変化の場合と同一の中点Cの経時変化が生じる可能性は低い。また、表面性状による経時変化の態様が予め把握されている状況であれば、表面性状による経時変化と凹部や凸部による経時変化とを所要の精度で識別することは可能である。
【0026】
<2.線状の光の画像の端部の位置の経時変化>
図6からわかるように、遷移期間Ttにおいて、線状の光Lの画像ILの搬送方向上流側の端部xlと搬送方向下流側の端部xtの位置(X方向の位置)は、時間の経過に応じて比較的急に変化する。したがって、端部xl,xtの位置の経時変化に対応した閾値が設定され、端部xl,xtの位置の経時変化(時間微分、単位時間あたりの位置の変化量、位置の時間変化率、
図6のグラフにおける端部xl,xtの傾き)が閾値と同じかあるいは超えた場合に、遷移期間Ttの開始を検出することができる。
また、遷移期間Ttの開始時には、搬送方向上流側(
図6の上側)の端部xlが搬送方向の一方側へ移動し、遷移期間Ttの終了時には、搬送方向他方側(
図6の例では、搬送方向下流側、
図6の下側)の端部xtが搬送方向の他方側へ移動する。このように、遷移期間Ttの開始時と遷移期間Ttの終了時とで、移動する端部xl,xtとその移動方向とが異なる(相反する)。したがって、搬送方向上流側の端部xlの位置の搬送方向の一方側への経時変化が閾値と同じかあるいは超えた後、搬送方向下流側の端部xtの位置の搬送方向の他方側への経時変化が閾値と同じかあるいは超えた場合に、前者を遷移期間Ttの開始、後者を遷移期間Ttの終了として検出することができる。開始時の閾値と終了時の閾値とは、一例としては、同じ値を用いることができる。
さらに、搬送方向上流側の端部xlの位置の搬送方向の一方側への閾値を超える経時変化が生じてから、搬送方向下流側の端部xtの位置の搬送方向の他方側への閾値を超える経時変化が生じるまでの経過時間も、上記代表位置の場合と同様である。したがって、端部xl,xtの位置についても、式(1)および式(2)を用いた開始および終了の検出が可能である。
なお、上述した遷移期間の開始および終了の検出、ならびに後述する補正の演算処理は、検査対象領域A上のY方向の各点(全点)で実行可能である。
【0027】
次に、制御部40は、記憶制御部40kとして機能し、遷移期間Ttの開始あるいは終了が検出された場合に、検出された遷移期間Ttの開始時刻t1、終了時刻t4を記憶するとともに、ステータス情報を更新する(S16)。ステータス情報は、遷移期間Ttの開始が検出されたこと、遷移期間Ttの終了が検出されたこと、あるいは遷移期間Tt外であることを識別可能な情報である。具体的には、ステータス情報は、例えば、2ビットのデータ(フラグ)であることができる。ステータス情報は、例えば、RAM42や、補助記憶装置43等に記憶されうる。以降のS17やS19での判断は、このステータス情報に基づいて実行されうる。
【0028】
遷移期間Tt外である場合(S17でYes)、制御部40は、疑似画像データ生成部40nとして機能し、各点(検査対象領域Aの長手方向(Y方向)の各点)に対応した線状の光Lの代表位置(例えば中点C)の基準線R(基準位置)からのずれに応じて、当該各点での輝度値を決定することにより、疑似画像データを生成する(S18)。S17でNoの場合、S19へ進む。
【0029】
遷移期間Tt終了後、所定時間(例えば、
図6のT2)が経過した時点で(S19でYes)、制御部40は、補正部40pとして機能し、遷移期間Tt内のデータを補正する(S20)。S20で、補正部40pは、遷移期間Tt内における各時刻tでの中点Cm(代表値)の値を、例えば、遷移期間Tt外の中点C(例えば、遷移期間Ttに隣接した期間T1内の複数の中点Cならびに期間T2内の複数の中点C)の値の内挿によって算出する。内挿は、具体的には、線形補間やスプライン補間等で行われうる。これにより、
図6の例では、遷移期間Ttで上下変動していた中点Cの値が、変化しない一定の中点Cmの値に補正される。
図6は、高さの変動が無く、検査対象面101の色だけが変化した場合が例示されており、妥当な補正結果となる。一方、
図7には、検査対象面101の色が変化するとともに、当該色の変化によって線状の光Lの画像ILが変化する遷移期間Ttにおいて、検査対象面101の高さが漸増する(検査対象面101が傾斜している)例が示されている。この場合も、補正部40pは、遷移期間Tt外(例えば、期間T1,T2)の中点Cの値の内挿(例えば、スプライン補間)によって、遷移期間Tt内の中点Cmの値を算出することができる。
【0030】
次に、制御部40は、疑似画像データ生成部40nとして機能し、遷移期間Ttでの補正されたデータに基づいて、当該遷移期間Ttにおける疑似画像データを生成する(S21)。
【0031】
異常領域決定部40rは、得られた疑似画像データの画像処理によって、異常領域を検出する。異常領域決定部40rは、公知の手法により、参照データとのパターンマッチングによって一致しない領域や、所定の閾値以上の大きさ(高さや広さ)の凸部(突出部、突起)や凹部(開口部、穴)等の領域を、異常領域として検出する。表示制御部40fは、検出された異常領域を示す画像が表示されるよう、コントローラ47ひいては表示装置6を制御する。この際、表示制御部40fは、異常領域を示す画像が、疑似画像データとともに表示装置6に表示されるよう、制御することができる。
【0032】
なお、以上の制御部40による演算処理は、「時刻」を「副走査方向(検査対象面の移動方向)の位置(疑似画像データの座標)」に、「時間」を「副走査方向の区間(長さ)」に、また「経時変化(量)」を「副走査方向の単位長さあたりの変化量」にそれぞれ置き換えて、実行することができる。
【0033】
また、可変設定部40eは、例えば、表示装置6での表示にしたがったオペレータによる入力装置7での操作に応じて、閾値や、時間等の各種パラメータを可変設定することができる。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態では、一例として、補正部40pは、線状の光Lの画像ILの一方向に沿った各点に対応した、線状の光Lの画像ILの位置の経時変化に基づいて、ずれ、高さ、または輝度値を補正する。よって、本実施形態によれば、一例としては、検査対象面101の高さとは異なる要因で画像ILが変化した場合に、当該画像ILに基づくずれ、高さ、または輝度値を補正することができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、高さの算出における不都合な事象が減りやすい。また、検査対象面101の性状に起因する誤検出が抑制されやすい。なお、上記実施形態では、検査対象面101の色が異なる部分の境界での補正が例示されたが、本発明によれば、色以外の表面性状(例えば、面粗度、材質、塗装の有無、反射率、吸収率等)に基づく画像ILの差を反映して、補正が実行されうる。
【0035】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、線状の光Lの画像ILの代表位置(例えば、中点Cの位置)の経時変化の大きさが閾値を超えた場合に、補正を実行してもよい。この場合には、一例としては、高さとは異なる要因で代表位置の変化が生じて補正の実行が望ましい場合(状態、遷移期間Tt)が、より容易にあるいはより精度良く検出されやすい。
【0036】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、検査対象面101の移動方向一方側への代表位置の閾値を超えた経時変化が生じた後、検査対象面101の移動方向他方側への代表位置の閾値を超えた経時変化が生じた場合に、補正を実行してもよい。この場合には、一例としては、検査対象面101の表面性状の変化によって画像ILの幅が変化する場合が、実際の変化の仕方に応じて、より容易にあるいはより精度良く検出されやすい。
【0037】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、移動方向他方側への代表位置の閾値を超えた経時変化が、移動方向一方側への代表位置の閾値を超えた経時変化が生じてから(時刻t2後)、検査対象面101の移動速度に応じた所定時間δt経過後の時刻t4を含む時間範囲Tm内に生じた場合に、補正を実行してもよい。この場合には、一例としては、画像ILの幅が変化する場合が、搬送速度(移動速度)に応じて、より一層容易にあるいはより一層精度良く検出されやすい。
【0038】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、代表位置の経時変化の大きさが閾値を超えてから代表位置の経時変化の大きさが次に閾値を超えまでの時間範囲(遷移期間Tt)内の各時刻での、ずれ、高さ、または輝度値の補正を、時間範囲の前および後の少なくとも一方のずれに基づいて実行してもよい。この場合には、一例としては、ずれ、高さ、または輝度値の補正が、より精度よく実行されやすい。
【0039】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、線状の光Lの画像ILの、検査対象面101の移動方向上流側の端部xlの位置の、経時変化の大きさが、対応する閾値を超えた後、線状の光Lの画像ILの、検査対象面101の移動方向下流側の端部xtの位置の、経時変化の大きさが、対応する閾値を超えた場合に、補正を実行してもよい。この場合には、補正が必要な場合(状態、遷移期間Tt)が、より容易にあるいはより精度良く検出されやすい。
【0040】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、移動方向一方側への移動方向上流側の端部xlの位置の閾値を超えた経時変化が生じた後、移動方向他方側への移動方向下流側の端部xtの位置の閾値を超えた経時変化が生じた場合に、補正を実行してもよい。この場合には、検査対象面101の表面性状の変化によって画像ILの幅が変化する場合が、実際の変化の仕方に応じて、より容易にあるいはより精度良く検出されやすい。
【0041】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、移動方向他方側への移動方向下流側の端部xtの位置の閾値を超えた経時変化が、移動方向一方側への移動方向上流側の端部xlの位置の閾値を超えた経時変化が生じてから(時刻t2後)、検査対象面101の移動速度に応じた所定時間δt経過後の時刻t4を含む時間範囲Tm内に生じた場合に、補正を実行してもよい。この場合には、一例としては、画像ILの幅が変化する場合が、搬送速度(移動速度)に応じて、より一層容易にあるいはより一層精度良く検出されやすい。
【0042】
また、本実施形態では、一例として、補正部40pは、線状の光Lの画像ILの、検査対象面101の移動方向上流側の端部xlの位置の、経時変化の大きさが、対応する閾値を超えてから、線状の光Lの画像ILの、移動方向下流側の端部xtの位置の、経時変化の大きさが、次に対応する閾値を超えるまでの時間範囲(遷移期間Tt)内の各時刻での、ずれ、高さ、または輝度値の補正を、時間範囲の前および後の少なくとも一方のずれに基づいて実行してもよい。この場合には、一例としては、ずれ、高さ、または輝度値の補正が、より精度よく実行されやすい。
【0043】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例である。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、実施形態の構成や形状は、部分的に他の構成や形状と入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、角度、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。例えば、検査対象物は、例えば、円環状のもの(例えば、タイヤ等)など、帯状以外の物であってもよい。また、代表位置は中点以外であってもよい。また、代表位置は、二値化されていない輝度値のデータの重心であってもよい。