特許第6262110号(P6262110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262110スチレン−メタクリル酸系樹脂シート、樹脂成形品、及び、容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262110
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】スチレン−メタクリル酸系樹脂シート、樹脂成形品、及び、容器
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20180104BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20180104BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20180104BHJP
   B29C 44/20 20060101ALI20180104BHJP
   B29C 51/00 20060101ALI20180104BHJP
   B29C 47/00 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 25/14 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20180104BHJP
   B29K 25/00 20060101ALN20180104BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   C08J9/14CET
   C08J9/04 101
   B29C44/00 E
   B29C44/20
   B29C51/00
   B29C47/00
   C08L25/14
   C08L53/02
   B29K25:00
   B29L7:00
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-196761(P2014-196761)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-193784(P2015-193784A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-69958(P2014-69958)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】岩井 健太
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−136257(JP,A)
【文献】 特開平03−109441(JP,A)
【文献】 特開2012−031344(JP,A)
【文献】 特開平11−012418(JP,A)
【文献】 特開平11−012382(JP,A)
【文献】 特表2008−530267(JP,A)
【文献】 特開平11−293073(JP,A)
【文献】 特開平07−041586(JP,A)
【文献】 特開平10−087929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B29C 44/00−51/46
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン成分とメタクリル酸成分とを有する共重合体樹脂を含むスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物からなり、押出法によって作製されたスチレン−メタクリル酸系樹脂シートであって、
前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物にはポリブタジエンがさらに含有され、該ポリブタジエンを含むドメインが前記スチレン成分と前記メタクリル酸成分とを含むマトリックス中に分散されたマトリックス−ドメイン構造を有し、シート押出方向における前記ドメインの平均長さ(LMD)と、シート厚み方向における前記ドメインの平均長さ(LVD)との比率(LMD/LVD)が1.1以上5.0以下であり、
前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物は、
前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物の全樹脂を100質量%とした際に前記ポリブタジエンを0.1質量%以上5.5質量%以下含み、
メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂の状態で前記ポリブタジエンを含み、且つ、
該ポリブタジエンがシス1,4結合及び1,2ビニル結合よりもトランス1,4結合を多く含んでいることを特徴とするスチレン−メタクリル酸系樹脂シート。
【請求項2】
前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物が押出発泡されてなる発泡シートであり、厚み0.5mm以上10mm以下、発泡倍率2倍以上20倍以下の発泡シートである請求項1記載のスチレン−メタクリル酸系樹脂シート。
【請求項3】
前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物が押出発泡されてなる発泡層と、該発泡層に直接的、又は、間接的に積層された非発泡層とを有する積層発泡シートである請求項1記載のスチレン−メタクリル酸系樹脂シート。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートが熱成形されてなる樹脂成形品。
【請求項5】
底面部を有する容器であって、
前記底面部がスチレン成分とメタクリル酸成分とを有する共重合体樹脂、及び、ポリブタジエンを含むスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物によって形成され、該スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物は、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物の全樹脂を100質量%とした際に前記ポリブタジエンを0.1質量%以上5.5質量%以下含み、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂の状態で前記ポリブタジエンを含み、該ポリブタジエンがシス1,4結合及び1,2ビニル結合よりもトランス1,4結合を多く含んでおり、
前記底面部は、マトリックス−ドメイン構造を有し、前記マトリックスが前記スチレン成分とメタクリル酸成分とを含み且つ前記ドメインがポリブタジエンを含んでおり、平面方向における前記ドメインの平均長さ(L)と、平均幅(L)との比率(L/L)が1.1以上4.0以下であることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン−メタクリル酸系樹脂シート、及び、このようなスチレン−メタクリル酸系樹脂シートが熱成形されてなる樹脂成形品などに関し、より詳しくは、押出法によって作製されたスチレン−メタクリル酸系樹脂シート、及び、該スチレン−メタクリル酸系樹脂シートが熱成形されてなる樹脂成形品などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材質、厚み、層構造などにおいて種々のバリエーションを有する熱可塑性樹脂シートが熱成形によって樹脂成形品を製造する際の原材料シートとして用いられている。
例えば、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)を押出発泡させてなるポリスチレン系樹脂発泡シート(PSP)、該ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層した積層発泡シート、ポリエチレンテレフタレート樹脂非発泡シート(PETフィルム)などは、トレー容器、丼容器、カップ容器、フードパックといった食品収容用の樹脂成形品を製造するための原材料シートとして広く用いられている。
【0003】
近年、上記のような樹脂製の食品収容用容器は、内部に収容した食品を別の容器に移し替えることなく、そのまま電子レンジで加熱する目的で用いられるようになってきている。
しかし、前記PSPや前記PETフィルムなどでは耐熱性の観点から上記のようにして利用される樹脂成形品を形成させることは難しい。
【0004】
このことからGPPSなどに比べて耐熱性の高い共重合体樹脂(例えば、メタクリル酸成分やメタクリル酸メチル成分と、スチレン成分とを有する共重合体樹脂、以下「スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂」ともいう)を主成分とする樹脂組成物で形成された樹脂シートを食品収容用容器の原材料シートとして利用することが試みられている(下記特許文献1参照)。
【0005】
しかし、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂は、脆性に改善の余地があり、従来、耐熱性と靱性とに優れた成形品を熱成形によって作製するのに適した原材料シートを得ることが困難な状況となっている。
なお、靱性の向上は、熱成形に利用される原材料シートにのみ要望されているわけではなく、スチレン−メタクリル酸系樹脂シートにおいて広く求められている事柄である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−277442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、耐熱性と靱性とに優れたスチレン−メタクリル酸系樹脂シートを提供し、ひいては、耐熱性と靱性とに優れた樹脂成形品を提供することを課題としている。
また、本発明は、耐熱性と靱性とに優れた容器の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、スチレン−メタクリル酸系樹脂シート中にポリブタジエンを導入するとともに、当該ポリブタジエンを所定の状態で存在させることでスチレン−メタクリル酸系樹脂シートの脆性改善に大きな効果が得られることを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
即ち、上記課題を解決するためのスチレン−メタクリル酸系樹脂シートに係る本発明は、スチレン成分とメタクリル酸成分とを有する共重合体樹脂を含むスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物からなり、押出法によって作製されたスチレン−メタクリル酸系樹脂シートであって、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物にはポリブタジエンがさらに含有され、該ポリブタジエンを含むドメインが前記スチレン成分と前記メタクリル酸成分とを含むマトリックス中に分散されたマトリックス−ドメイン構造を有し、シート押出方向における前記ドメインの平均長さ(LMD)と、シート厚み方向における前記ドメインの平均長さ(LVD)との比率(LMD/LVD)が1.1以上5.0以下であることを特徴としている。
【0010】
また、樹脂成形品に係る本発明は、上記のようなスチレン−メタクリル酸系樹脂シートが熱成形されてなることを特徴としている。
【0011】
さらに、容器に係る本発明は、底面部を有する容器であって、前記底面部がスチレン成分とメタクリル酸成分とを有する共重合体樹脂、及び、ポリブタジエンを含むスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物によって形成され、前記底面部は、マトリックス−ドメイン構造を有し、前記マトリックスが前記スチレン成分と前記メタクリル酸成分とを含み且つ前記ドメインが前記ポリブタジエンを含んでおり、平面方向における前記ドメインの平均長さ(L)と平均幅(L)との比率(L/L)が1.1以上4.0以下であることを特徴としている。
なお、ドメインの「平均長さ(L)」や「平均幅(L)」は、後段において記載の方法によって求められる値を意味する。
【発明の効果】
【0012】
従来、スチレン−メタクリル酸系樹脂シートは、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂やスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂といったベース樹脂自体が比較的靱性に乏しいことを原因として優れた靱性を発揮させるのが困難な状況となっている。
本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートは、これらのスチレン−メタクリル酸系の樹脂に比べると軟質で靱性に富んだポリブタジエンを含んでいる。
しかも、本発明においては、このポリブタジエンを所定形状のドメインとして分散させていることからスチレン−メタクリル酸系樹脂シートに対して優れた靱性が発揮され得る。
【0013】
従って、本発明によれば、靱性や耐熱性に優れた樹脂成形品の形成に適したスチレン−メタクリル酸系樹脂シート及び容器が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ドメインの形状測定方法を示した概略図。
図2】容器におけるドメイン形状測定方法を示した概略図。
図3】実施例1の発泡シートの透過型電子顕微鏡写真。
図4】比較例4の発泡シートの透過型電子顕微鏡写真。
図5】容器の底面部の透過型電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートは、例えば、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂およびスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂のうちの少なくとも一方を含み、さらにポリブタジエンを含んだスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物からなる非発泡なシート、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物を発泡させてなる発泡シート、前記非発泡シートや前記発泡シートと他の非発泡シートや発泡シートとを積層した積層シートなどとすることができる。
【0016】
本実施形態においては、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物を発泡させてなる発泡シートと他の非発泡シートとが積層されてなる積層シート(以下、「積層発泡シート」ともいう)を例示して本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートについて説明する。
【0017】
本実施形態における積層発泡シートは、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物を押出発泡させてなる発泡シートに非発泡シートが積層されたものであり、前記発泡シートからなる発泡層と前記非発泡シートからなる非発泡層とを備えた2層構造となっている。
【0018】
前記発泡層の形成には、スチレン成分とメタクリル酸成分とを有するスチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂を主成分とするスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物が用いられている。
なお、本実施形態のスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物には、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂(A)としてスチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(A1)及びスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(A2)の何れか一方が含有されている。
さらに、本実施形態のスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物には、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂(A)としてメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂(A3)が含有されている。
即ち、本実施形態においては、前記ポリブタジエンがメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂の状態で含有されている。
【0019】
本実施形態の前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物には、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂(A3)以外にもポリブタジエンを含有させてもよく、該ポリブタジエンをスチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B)の形で含有させてもよい。
また、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物には、例えば、前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B)として、ポリブタジエンブロックにシス1,4結合及び1,2ビニル結合よりもトランス1,4結合を多く含んだトランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B1)や、ポリブタジエンブロックにトランス1,4結合及び1,2ビニル結合よりもシス1,4結合を多く含んだシス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B2)を含有させることができる。
【0020】
前記ポリブタジエンは、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物中にミクロ相分離構造を形成させるための成分であり、本実施形態の前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物には、マトリックス−ドメイン構造が形成されている。
そして、本実施形態の前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物は、前記マトリックスが前記スチレン成分と前記メタクリル酸成分とを含み、前記ドメインがポリブタジエンを含んでいる。
より詳しくは、本実施形態の前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物は、前記マトリックスがスチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(A1)及びスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(A2)の何れか一方を含んでいる。
【0021】
(A)スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂
(A1)スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂
本実施形態における、前記スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂は、好ましくはスチレン単量体、及び、メタクリル酸単量体の合計含有量を100質量%としたときに、例えば、スチレン単量体の含有量が85〜99質量%、メタクリル酸単量体の含有量が1〜15質量%であるものを採用することができる。
【0022】
(A2)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂
本実施形態における、前記スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂は、スチレン単量体、メタクリル酸単量体、及びメタクリル酸メチル単量体の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体の含有量が69〜92質量%、メタクリル酸単量体の含有量が6〜16質量%、及びメタクリル酸メチル単量体の含有量が2〜15質量%であるものを採用することが好ましい。
なお、本実施形態において、上記のようなスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂が好ましいのは、スチレン単量体を69質量%以上含有させることでスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂の熱溶融時における流動性を良好なものとさせ得るためである。
また、スチレン単量体を92質量%以下の含有量とさせるのが好ましいのは、メタクリル酸単量体及びメタクリル酸メチル単量体の含有による耐熱性に係る優れた特性をスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂により確実に発揮させ得るためである。
このような点において、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂におけるスチレン単量体の含有量は、78〜90質量%であることがより好ましく、80〜88質量%であることが特に好ましい。
【0023】
また、メタクリル酸単量体の含有量が6質量%以上であることが好ましいのは、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂に優れた耐熱性をより確実に発揮させるためであり、メタクリル酸単量体の含有量が16質量%以下であることが好ましいのは、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂の流動性、及び、機械的強度を良好なものとさせ得るためである。
このような点において、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂におけるメタクリル酸単量体の含有量は、7〜15質量%であることがより好ましく、8〜13質量%であることが特に好ましい。
【0024】
さらに、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂におけるメタクリル酸メチル単量体の含有量が2質量%以上であることが好ましいのは、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂に優れた機械的強度を発揮させ得るためであり、メタクリル酸メチル単量体の含有量が15質量%以下であることが好ましいのは、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂の流動性を良好なものとさせ得るためである。
このような点において、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂におけるメタクリル酸メチル単量体の含有量は、3〜10質量%であることがより好ましく、4〜7質量%であることが特に好ましい。
【0025】
(A3)メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂
メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂(以下、「MBS樹脂」ともいう)としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体にメチルメタクリレート、スチレン及び、或いはブチルアクリレート、アクリロニトリルをグラフト重合してなる共重合体樹脂やポリブタジエンゴムにメチルメタクリレート、スチレン及び、或いはブチルアクリレート、アクリロニトリルをグラフト重合してなる共重合体樹脂などが採用可能である。
該メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂(A3)としては、ポリブタジエンブロックにシス1,4結合及び1,2ビニル結合よりもトランス1,4結合を多く含んだものが好ましく、ポリブタジエンブロックの90質量%以上がトランス型構造(トランス1,4結合)となっていることが好ましい。
【0026】
(A4)その他のスチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂
本実施形態におけるスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物には、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂など、その他のスチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂を含有させうる。
なお、本実施形態における前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に前記スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂を含有させる場合には、当該スチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂の含有量を100質量部としたときに、例えば、0.1〜1.5質量部となる割合で脂肪酸アミドを添加することができる。
【0027】
本実施形態においては、上記のようなスチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂(A)は、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に含まれる全樹脂に占める割合が75質量%以上95質量%以下となるようにスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に含有されることが好ましい。
【0028】
なお、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(A)の内、前記スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(A1)は、発泡層に優れた耐熱性を発揮させる上において有効となる成分であり、前記スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(A2)は、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物をより耐熱性に優れたものとする上において有効な成分である。
また、(A3)MBS樹脂は、ポリブタジエンを含むドメインをスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物中に良好な状態で分散させるのに有効な成分である。
即ち、(A3)MBS樹脂は、ポリブタジエンドメインによってスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に優れた靱性を発揮させるのに有用な成分である。
【0029】
(B)ポリブタジエン
(B1)トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂
本実施形態における前記トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂は、シス1,4結合及び1,2ビニル結合よりもトランス1,4結合が多く含まれているスチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂である。
本実施形態における前記トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂は、ブタジエン単量体によって構成されているポリブタジエンブロックの80質量%以上がトランス型構造(トランス1,4結合)となっていることが好ましい。
【0030】
(B2)シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂
本実施形態における前記シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂は、トランス1,4結合及び1,2ビニル結合よりもシス1,4結合が多く含まれているスチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂である。
本実施形態における前記シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂は、スチレン単量体、及び、ブタジエン単量体の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体の含有量が85〜90質量%、ブタジエン単量体の含有量が10〜15質量%であるものが好ましい。
また、本実施形態における前記シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂は、ブタジエン単量体によって構成されているポリブタジエンブロックの80質量%以上がシス型構造(シス1,4結合)となっていることが好ましい。
【0031】
この2種類のスチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B1、B2)の内、トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B1)は、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に優れた強度を発揮させるのに特に有用な成分である。
また、前記シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B2)も、前記トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B1)と併用されてスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に優れた強度を発揮させるものである。
なお、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂と、前記シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂とを混合した混合樹脂(A,B2)は、通常、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂(A)に比べて僅かに耐熱性(耐熱変形性)が低下する傾向を示すものの優れた機械的強度を発揮する。
この混合樹脂(A,B2)に比べ、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂と、トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂とを混合した混合樹脂(A,B1)は、靱性において優れている。
そして、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂と、前記の2種類のスチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂とを混合した混合樹脂(A,B1,B2)は、通常、トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂を含んでいない混合樹脂(A,B2)に比べて格段に優れた靱性を発揮する。
即ち、本実施形態においては、上記のような作用によってスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に優れた耐熱性と強度とが発揮されている。
【0032】
この点に関してより詳しく説明すると、シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂だけをスチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂(A)に混合した前記混合樹脂(A,B2)においては、シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B2)を含むドメインとスチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂(A)などを含むマトリックスとのマトリックス−ドメイン構造が前記混合樹脂中に形成され、前記ドメインによって混合樹脂に補強効果が発揮されることが期待される。
しかし、この混合樹脂(A,B2)は、ドメインとマトリックスとの界面における親和性が乏しいために、ドメインによる補強効果が顕著化されないおそれを有する。
ここでトランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B1)は、シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(B2)に比べてスチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂との親和性が高いことから、スチレン−メタクリル酸系共重合体樹脂と混合された際に、ドメインとマトリックスとの相溶化剤的に機能し、前記ドメインによる補強効果を顕著化させ得る。
【0033】
ここでドメインがアスペクト比の高い線形状で、且つ、このドメインがその長さ方向を一方向に揃えているような場合には、このドメインの長さ方向が折り目となるような形での折り曲げ力が発泡層に採用した際に当該発泡層に高い靱性を発揮させることが難しくなる。
そこで、本実施形態においては、前記発泡層を形成するための発泡シートを押出発泡させる際のシート押出方向における前記ドメインの平均長さを(LMD)、シート厚みにおける前記ドメインの平均長さを(LVD)としたときに、前記ドメインが、該厚み方向の前記平均長さに対する押出方向における前記平均長さの比率(LMD/LVD)を1.1以上5.0以下とすることを重要な要件としており、前記比率(LMD/LVD)は、1.1以上3.0以下であることが好ましい。
【0034】
なお、前記比率(LMD/LVD)は、積層発泡シートを熱成形するなどして得られる成形品においても上記のような範囲内であることが好ましい。
本実施形態においては、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物によって熱成形に利用されるような積層発泡シートを形成させる場合を例示しているが、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物は、例えば、射出成形品などの形成にも有用なものであり、その場合にポリブタジエンを含むドメインの形状が所定の状態になっていることで優れた靱性が当該射出成形品に発揮される点については積層発泡シートなどと同じである。
例えば、底面部と、該底面部の周囲から立ち上がる側壁部とを有する容器を積層発泡シートの熱成形や、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物を射出成形するなどして形成させた場合、耐衝撃性等の観点から、当該容器は、前記底面部が所定のドメイン形状を有していることが好ましい。
より具体的には、前記底面部は、その平面方向における前記ドメインの平均長さ(L)と平均幅(L)との比率(L/L)が1.1以上5.0以下であることが好ましく、前記比率が1.1以上4.0以下であることがより好ましく、1.1以上3.0以下であることが特に好ましい。
【0035】
なお、ドメインが上記のような平均長さに係る要件を満たしているかどうかについては、電子顕微鏡などによってドメインの大きさを計測することによって確認することができる。
より具体的には、発泡層を形成するための発泡シートについて上記の点を確認する場合であれば、図1に示すように、発泡シートから測定用試料FSを切り出し、この測定用試料FSを、シート押出方向MDに平行し且つシート厚み方向VDに平行する平面Aに沿ってスライスして作製した薄片試料を透過型電子顕微鏡で観察し、無作為に選択した150以上のドメインに対し、シート押出方向における最も長い部分の寸法とシート厚み方向における最も長い部分の寸法とをそれぞれ求め、これらの比を算術平均し、該算術平均値が1.1以上5.0以下となっているかどうかを確認すればよい。
【0036】
また、容器の底面部におけるドメインの平均長さ(L)と平均幅(L)との比率についても容器の底面部をこの底面部の平面方向に沿ってスライスして薄片試料を作製し、該薄片試料を顕微鏡観察して確認することができる。
例えば、顕微鏡観察した画像において、図2に示したようなマトリックス(M)−ドメイン(D)ミクロ層分離構造が確認される場合、このドメインDの輪郭線(マトリックスMとの境界線)の上の異なる2点を結ぶ線分の内の最も長い線分(A1)を求め、この長さをこのドメインの長さ(lp)とする。
そして、この第1の線分A1の両側に、第2の線分A2と第3の線分A3とをそれぞれが第1の線分A1と平行するように設定する。
また、第2の線分A2及び第3の線分A3は、少なくとも1点においてドメインDの輪郭線に接し且つ第1の線分A1から最も離れた位置に設定する。
そして、この第2の線分A2と第3の線分A3との間の距離をドメインDの幅(lt)とする。
即ち、ドメインDの幅(lt)とは、ドメインの長さ方向に直交する方向における幅を意味する。
ドメインの平均長さ(L)及び平均幅(L)は、この長さ(lp)と幅(lt)とを無作為に選択した150以上のドメインに対して実施して算術平均することで求めることができ、そして、これらから前記比率(L/L)を確認することができる。
【0037】
そして、本実施形態においては、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に上記のような粘性をより確実に発揮させ得る点において、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物におけるトランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂と、シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂との含有量は、それぞれのスチレンブロックが所定の割合となるように調整されることが好ましい。
具体的には、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物の全樹脂を100質量%とした際に、前記トランス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂は、ポリブタジエンブロックの総量が0.1質量%以上5.5質量%以下の含有量となるようにスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に含有されることが好ましい。
さらに、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物の全樹脂を100質量%とした際に、シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂は、ポリブタジエンブロックの総量が0.5質量%以上1.5質量%以下の含有量となるようにスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に含有されることが好ましい。
【0038】
前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物における前記スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(A2)やMBS樹脂(A3)は、メタクリル酸メチルが全樹脂の0.3質量%以上2.0質量%以下(好ましくは1.0質量%以下)となるようにスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に含有されることが好ましい。
このスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物においてスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂やMBS樹脂を構成しているメタクリル酸メチルは、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物の全樹脂に占める割合が0.3質量%以上とされることで発泡層を耐熱性に優れたものとすることができる。
また、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物においてスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂やMBS樹脂を構成しているメタクリル酸メチルは、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物の全樹脂に占める割合が2.0質量%以下とされることで発泡層を非発泡層との接着性に優れたものとすることができ、1.0質量%以下とされることで発泡層を非発泡層との接着性に特に優れたものとすることができる。
さらには、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物は、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂やMBS樹脂を構成しているメタクリル酸メチルが、全樹脂の0.3質量%以上2.0質量%以下(好ましくは1.0質量%以下)とされることで、発泡層を靱性に優れたものとすることができる。
【0039】
前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物には、要すれば、上記以外の樹脂成分を含有させても良いが、通常、その含有量は5質量%以下とされる。
また、上記以外の成分として、各種添加剤や押出発泡において適度な発泡を生じさせるための成分を前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物に含有させても良い。
【0040】
前記添加剤としては、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、防曇剤、帯電防止剤といった機能性薬剤、顔料、香料などといったものが挙げられる。
【0041】
押出発泡に際して発泡を調整するための成分としては、気泡調整剤などが挙げられる。
該気泡調整剤としては、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機化合物からなる粉末を採用させ得る。
【0042】
本実施形態において前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物を発泡状態にさせて前記発泡層を形成させる際には、一般的な押出発泡において用いられている発泡剤を利用することができる。
該発泡剤としては、物理発泡剤と化学発泡剤とに大別でき、前記物理発泡剤としては、例えば、窒素、炭酸ガス、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソヘプタン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、ジメチルエーテル、水等が挙げられる。
これらの物理発泡剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記化学発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素化ナトリウム等の無機系化学発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびジアゾアミノベンゼンなどのアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテトラミンおよびN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドおよびp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジドトリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート、クエン酸などが挙げられる。
【0044】
本実施形態においては、前記発泡層を靱性に優れたものとする上において当該発泡層にブタンを所定量含有させることが好ましい。
このブタンは、発泡層を靱性に優れたものとする目的からすると、例えば、スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物をブタン以外の発泡剤によってシート状に押出発泡させて発泡シートを形成させた後に該発泡シートに後からブタン含浸させてもよいが、前記押出発泡における発泡剤として採用して発泡シートに含有させる方が合理的であるといえる。
なお、発泡層におけるブタン含有量は、押出発泡に際しての樹脂に対して配合する量、用いるブタンの種類(ノルマルブタン、イソブタン)や割合、押出発泡の条件等により適宜調整可能である。
【0045】
このような発泡層とともに本実施形態の積層発泡シートを形成させる非発泡層は、特にその材質等が限定されるものではなく、例えば、発泡層と同様のスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物で形成された非発泡シートや、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)からなる非発泡シート、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)からなる非発泡シートなどによって形成可能である。
また、ポリオレフィン系樹脂フィルムに接着剤を介してポリスチレン樹脂フィルムがドライラミネートされてなる非発泡シートも前記非発泡層の形成に利用可能である。
この非発泡層は、非発泡シートを押出ラミネート、熱ラミネート、共押出法などによって発泡シートに直接積層させて形成させることが可能である他に、接着剤層などを介して非発泡シートを間接的に発泡シートに積層させて形成させることも可能である。
【0046】
なお、このような積層発泡シートを熱成形による樹脂成形品の原材料シートとする場合、成形性の観点から前記発泡層は厚み0.5mm以上3.0mm以下、発泡倍率2倍以上20倍以下であることが好ましく、前記非発泡層は5μm以上200μm以下の厚みとすることが好ましい。
【0047】
本実施形態においては、スチレン−メタクリル酸系樹脂シートとして上記のような積層発泡シートを例示しているが、本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートは、非発泡層を備えていない発泡シート単体であっても良く、非発泡なシート単体であっても良い。
また、本実施形態においては、発泡層をスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物によって形成させるとともに当該発泡層に所定のマトリックス−ドメイン構造を形成させた場合を例示しているが、例えば、非発泡層をスチレン−メタクリル酸系樹脂組成物によって形成させるとともに当該非発泡層に所定のマトリックス−ドメイン構造を形成させ、発泡層をGPPSやHIPSによる発泡シートなどで形成させる場合も本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートとして意図する範囲のものである。
【0048】
また、本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートは、非発泡層を備えていない
発泡シート単体のものであっても良い。
本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートが発泡シート単体である場合、その厚みは0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、発泡倍率が2倍以上20倍以下であることが好ましい。該発泡シートは、これを熱成形による樹脂成形品の原材料シートとするのであれば、成形性の観点からその厚みが0.5mm以上3.0mm以下、発泡倍率が2倍以上20倍以下とされることが好ましい点においては積層発泡シートと共通している。
また、前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物からなる非発泡なシートを熱成形による樹脂成形品の原材料シートとする場合、その厚みは、例えば、5μm以上200μm以下とされ得る。
【0049】
このように前記スチレン−メタクリル酸系樹脂組成物が発泡シートではなく非発泡なシートの形成に用いられている場合において、この非発泡なシートに特定のマトリックス−ドメイン構造が形成されている場合に優れた靭性が発揮される点については本実施形態の積層発泡シートと同じである。
【0050】
また、本実施形態のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートが樹脂成形品の原材料シートとされた場合、この樹脂成形品に優れた靱性を発揮させる上において特定のマトリックス−ドメイン構造が当該樹脂成形品においても維持されていることが好ましい。
【0051】
また、本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートは、熱成形用の原材料シート以外においても利用可能であることは説明するまでも無く当然の事柄である。
さらに、本発明のスチレン−メタクリル酸系樹脂シートは、上記例示のない事項でもその用途に応じて従来公知の技術事項を適宜採用可能であることも説明するまでも無く当然の事柄である。
【実施例】
【0052】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
まず、スチレン−メタクリル酸系樹脂シート(発泡シート)を作製するための原材料として以下のようなものを用意した。

(A1)スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂:
PSジャパン社製 商品名「ML195」
成分:スチレン単量体含有量92質量%、メタクリル酸単量体含有量8質量%

(A2)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂:
PSジャパン社製 商品名「MM290」
成分:スチレン単量体含有量84質量%、メタクリル酸単量体含有量11質量%、メタクリル酸メチル単量体含有量:5質量%

(A1/A3)スチレン−メタクリル酸共重合体とMBS樹脂(トランス型ブタジエンブロック含有品)とのブレンド品:
PSジャパン社製 商品名「AMM11」
成分:スチレン単量体含有量62.8質量%、メタクリル酸単量体含有量6.3質量%、メタクリル酸メチル単量体含有量6.4質量%、ポリブタジエンブロック含有量24.6質量%

(A2/A3)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体とMBS樹脂(トランス型ブタジエンブロック含有品)とのブレンド品:
PSジャパン社製 商品名「AMM10」
成分:スチレン単量体含有量56.4質量%、メタクリル酸単量体含有量8.4質量%、メタクリル酸メチル単量体含有量9.4質量%、ポリブタジエンブロック含有量25.7質量%


(A4+α)スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂に脂肪酸アミドが添加されたもの:
PSジャパン社製 商品名「MA100」
成分:スチレン単量体含有量96質量%、メタクリル酸単量体含有量4質量%、脂肪酸アミド系添加剤1.5質量部

(B2)シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂:
PSジャパン社製 商品名「H8117」
成分:ポリスチレンブロック含有量88質量%、ポリブタジエンブロック含有量12質量%

(X)気泡調整剤:
東洋スチレン社製 商品名「TM401A」(タルクを配合した配合樹脂)
【0054】
(実施例1)
(発泡シートの作製)
まず、第一押出機(L/D:32、口径φ:50mm)の先端に接続配管を介して第二押出機(L/D:30、口径:65mm)が接続されてなるタンデム型押出機を用意した。
そして、下記配合内容となるように調製した発泡シート用の原料をタンデム型押出機の第一押出機に供給し該押出機内で溶融混練を実施した。

(A1)スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂:80質量%
PSジャパン社製 商品名「ML195」
成分:スチレン単量体含有量92質量%、メタクリル酸単量体含有量8質量%

(A1/A3)スチレン−メタクリル酸共重合体とMBS樹脂(トランス型ブタジエンブロック含有品)とのブレンド品:11質量%
PSジャパン社製 商品名「AMM11」
成分:スチレン単量体含有量62.8質量%、メタクリル酸単量体含有量6.3質量%、メタクリル酸メチル単量体含有量6.4質量%、ポリブタジエンブロック含有量24.6質量%

(B2)シス型スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂:9質量%
PSジャパン社製 商品名「H8117」
成分:ポリスチレンブロック含有量88質量%、ポリブタジエンブロック含有量12質量%

(X)気泡調整剤:「ML195」、「AMM11」、及び、「H8117」の合計100質量部に対して0.3質量部

東洋スチレン社製 商品名「TM401A」(タルクを配合した配合樹脂)
【0055】
次に、第一押出機の途中から発泡剤としてブタンを圧入し、上記溶融混練物に対して前記ブタンを加えた上で更なる溶融混練を行った。
そして、溶融混練物中にブタンを均一に分散させた上で、この発泡剤を含む溶融混練物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練を継続しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。
その後、第二押出機の先端に取り付けたスリット口径70mmのサーキュラーダイから該溶融混練物を押出発泡させ、水冷されているマンドレル上にダイスリットから押出発泡された筒状の発泡体を沿わせて内側から冷却するとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却し、カッターにより切開して、平坦シート状のスチレン−メタクリル酸系樹脂シート(発泡シート)を作製した。
この発泡シートの作製に際しては、坪量が140g/mで厚みが1.65mm、発泡倍率12.4倍となるように引取り速度およびブタンガス注入量を調整した。
【0056】
(実施例2)
気泡調整剤を増量するとともに坪量を220g/m、厚みが1.11mm、発泡倍率5.3倍となるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に積層発泡シート作製用の樹脂発泡シートを作製した。
【0057】
(実施例3)
配合内容を、下記表に示すように

「ML195」/「AMM11」/「H8117」/「TM401A」=78/13/9/0.3

の質量割合とし、坪量を130g/m、厚みが1.59mm、発泡倍率12.8倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0058】
(実施例4)
配合内容を、下記表に示すように

「ML195」/「AMM11」/「TM401A」=85/15/0.3

の質量割合とし、坪量を140g/m、厚みが1.64mm、発泡倍率12.3倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0059】
(実施例5)
配合内容を、下記表に示すように

「ML195」/「AMM10」/「H8117」/「TM401A」=80/11/9/0.3

の質量割合とし、坪量を140g/m、厚みが1.63mm、発泡倍率12.2倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0060】
(実施例6)
配合内容を、下記表に示すように

「MM290」/「MA100」/「AMM10」/「H8117」/「TM401A」=60/15/10/15/0.2

の質量割合とし、坪量を133g/m、厚みが1.6mm、発泡倍率12.6倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0061】
次に、前記のような材料に加え、以下のような原材料をも用いて発泡シートを作製した。

(B1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(SBS):
旭化成ケミカルズ社製 商品名「タフプレン125」
スチレンブロック含有量40質量%、トランスブタジエンブロック含有量60質量%

(C1)水添スチレン系熱可塑性エラストマー
旭化成ケミカルズ社製 商品名「タフテックH1043」
スチレンブロック含有量67%、エチレン−ブチレンブロック含有量33%

(C2)水添スチレン系熱可塑性エラストマー
旭化成ケミカルズ社製 商品名「タフテックH1041」
スチレンブロック含有量30%、エチレン−ブチレンブロック含有量70%

(A1)スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂:
東洋スチレン社製 商品名「T080」
成分:スチレン単量体含有量92質量%、メタクリル酸単量体含有量8質量%

(A4)架僑型スチレン−メタクリル酸系共重合樹脂:
東洋スチレン社製 商品名「CM140」

(Z)超低密度ポリエチレン(VLDPE)
東ソー社製 商品名「LUMITAC12−1」

(A1)スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂:
PSジャパン社製 商品名「G9001」
成分:スチレン単量体含有量92質量%、メタクリル酸単量体含有量8質量%
【0062】
(比較例1)
配合内容を、下記表に示すように

「ML195」/「タフプレン125」/「H8117」/「TM401A」=86/5/9/0.3

の質量割合とし、坪量を180g/m、厚みが1.86mm、発泡倍率10.8倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0063】
(比較例2)
配合内容を、下記表に示すように

「ML195」/「タフテックH1043」/「H8117」/「TM401A」=83/8/9/2.0

の質量割合とし、坪量を177g/m、厚みが1.83mm、発泡倍率10.9倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0064】
(比較例3)
配合内容を、下記表に示すように

「ML195」/「タフテックH1041」/「H8117」/「TM401A」=87/4/9/2.0

の質量割合とし、坪量を181g/m、厚みが1.80mm、発泡倍率10.4倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0065】
(比較例4)
配合内容を、下記表に示すように

「T080」/「タフプレン125」/「CM140」/「TM401A」=95/5/3/2.0

の質量割合とし、坪量を179g/m、厚みが1.89mm、発泡倍率11.1倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0066】
(参考例1)
配合内容を、下記表に示すように

「G9001」/「VLDPE」/「タフテックH1043」/「タフプレン125」/「TM401A」=85/5/5/5/2.0

の質量割合とし、坪量を130g/m、厚みが1.61mm、発泡倍率13.0倍になるように引取り速度、ブタンガス注入量を変更し発泡シートを作製した。
【0067】
なお、それぞれの配合における各主成分については、下記の測定方法にて定量することができ、一部の結果を下記表に示す。
【0068】
(樹脂中メタクリル酸含有量の測定方法)
樹脂の吸光度比A=D1697/D1600を次の要領で測定する。
まず、樹脂適量を乳鉢中にKBr(臭化カリウム)粉末とともに入れて良く混ぜ合わせ、得た混合粉末を錠剤成形機にてプレス成形してKBr錠剤を作製後、赤外分光分析を下記条件にて実施して赤外吸収スペクトルを得る。
この際、吸光度が1Absorbanceを越えないような試料量とする。
なお、赤外吸収スペクトルの測定(吸光度D1697およびD1600の測定)は、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック株式会社から商品名「iS10」で販売されているフーリエ変換赤外分光分析装置を使用して実施する。
・測定法:透過法
・測定波数領域:4000cm−1〜400cm−1
・測定深度の波数依存性:補正せず
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター
・分解能:4cm−1
・積算回数:32回(バックグランド測定時も同様)
得られた赤外吸収スペクトルの吸光度比A=D1697/D1600を計算し、予めメタクリル酸量既知の樹脂とポリスチレン樹脂を一定割合で混合した標準試料を用いて作成した検量線から、メタクリル酸量を算出する。
D1697とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1560cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1780cm−1±5cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとした、波数1697cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。
また、D1600とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1560cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1780cm−1±5cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとした、波数1600cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。
なお、上記においては、カルボキシル基に由来する1697cm−1の吸収ピークと芳香族型炭素−炭素結合に由来する1600cm−1の吸収ピークとを対比してスチレンに対するメタクリル酸の量を求めている。
【0069】
(樹脂中メタクリル酸メチル含有量の測定方法)
試料を約0.1〜0.5mg精秤し、キューリー点が590℃の強磁性金属体(パイロホイル:日本分析工業(株)製)に圧着するように包み、キューリーポイントパイロライザーJPS−700型(日本分析工(株)製)装置にて分解させて生成したメタクリル酸メチルをガスクロマトグラフ[GC7820(アジレント・テクノロジー(株)製)、検出器(FID)]を用いて測定し、メタクリル酸メチルに由来するピークの面積を使用して予め準備した検量線より算出する。
具体的な条件は下記の通り。
<測定条件>
・加熱(590℃−5sec)
・オーブン温度(300℃)
・ニードル温度(300℃)
・カラム(InterCap5(φ0.25mm×30m(膜厚0.25μm):ジーエルサイエンス(株)製)
<カラム温度条件>
・温度条件(50℃で0.5分保持後、200℃まで10℃/分で昇温し、さらに320℃まで20℃/分で昇温し、320℃にて0.5分保持)
・キャリアーガス(He)
・He流量(25ml/分)
・注入口圧力(100kPa)
・カラム入口圧力(100kPa)
・注入口温度(300℃)
・検出器温度(300℃)
・スプリット比(1/50)
検量線作成標準試料は、積水化成品工業(株)製の懸濁重合PMMA微粒子(商品名「MB−8」)を使用する。
【0070】
(樹脂中全ブタジエンゴム量測定方法)
試料を0.1〜0.5mg精秤し、キューリー点が590℃の強磁性金属体(パイロホイル:日本分析工業(株)製)に圧着するように包み、キューリーポイントパイロライザーJPS−700型(日本分析工業製)装置にて分解させて生成したブタジエンモノマーと4−ビニルシクロヘキサンとをガスクロマトグラフ[GC7820(アジレント・テクノロジー(株)製)、(検出器:FID)]を用いて測定し、ブタジエンモノマー由来のピークと4−ビニルシクロヘキセン由来のピークの合計面積を使用して予め準備した検量線より算出する。
具体的な条件は下記の通り。
<測定条件>
・加熱(590℃−5sec)
・オーブン温度(300℃)
・ニードル温度(300℃)
・カラム(InterCap5(φ0.25mm×30m(膜厚0.25μm):ジーエルサイエンス(株)製)
<カラム温度条件>
・温度条件(50℃で0.5分保持後、200℃まで10℃/分で昇温し、さらに320℃まで20℃/分で昇温し、320℃にて0.5分保持)
・キャリアーガス(He)
・He流量(25ml/分)
・注入口圧力(100kPa)
・カラム入口圧力(100kPa)
・注入口温度(300℃)
・検出器温度(300℃)
・スプリット比(1/30)
検量線作成用標準試料は、POLYSCIENCES.INC製スチレン/ブタジエン=85/15(CAT#07073)樹脂を使用する。
【0071】
(樹脂中1,4−トランスブタジエンゴム含有量の測定方法)
樹脂の吸光度比A=D965/D1600を次の要領で測定する。
まず、樹脂約0.1gを良溶媒約20mLで溶解し、溶解液半分程度を利用してガラスプレート上でフィルム化を行う。得られたフィルムの赤外分光分析を下記条件にて実施し、赤外吸収スペクトルを得る。
赤外吸収スペクトルの測定(吸光度D965およびD1600の測定)は、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック株式会社から商品名「iS10」で販売されているフーリエ変換赤外分光分析装置を使用して実施する。
・測定法:透過法
・測定波数領域:4000cm−1〜400cm−1
・測定深度の波数依存性:補正せず
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター
・分解能:4cm−1
・積算回数:32回(バックグランド測定時も同様)
得られた赤外吸収スペクトルの吸光度比A=D965/D1600を計算し、予め1,4−トランスブタジエンゴム量既知の樹脂とポリスチレン樹脂を一定割合で混合した標準試料を用いて作成した検量線から、1,4−トランスブタジエンゴム量を算出した。
D965とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数925cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1045cm−1±5cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとして、波数965cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。
また、D1600とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1560cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1640cm−1±10cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとして、波数1600cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。
なお、上記においては、スチレンに対するトランス型ブタジエンゴムの量を求めている。
また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂に1,2−ブタジエンが含有されている場合は、1,2−ブタジエンに由来する赤外吸収ピークが911cm−1付近に観測されることから、トランス型ブタジエンゴムの量と同様に吸光度を使ってスチレンに対する1,2−ブタジエンの量を求めることができる。
なお、シス型ブタジエンゴム量は、上記の熱分解ガスクロマトグラフによる全ブタジエンゴム量測定方法によって定量された全ブタジエンゴム量から、トランス型ブタジエンゴム量と1,2−ブタジエンゴム量とを減じた値をシス型ブタジエンゴムの含有量と判断することができる。
【0072】
(ドメインの形状:シート)
発泡シートを押出方向に対して平行かつシート厚みに対して平行な面(図1「平面A」)が観察できるよう切片を採取する。
その後、切り出した切片をエポキシ樹脂中に包埋後、60℃の温度で24時間かけて前記エポキシ樹脂を硬化させ、ウルトラミクロトーム(例えば、ライカマイクロシステムズ社製、型名「LEICA ULTRACUT UCT」、DiATOME社 Ultra)を用いて超薄切片(例えば、厚み70nm)を作製する。
切片の切削方向は、厚み方向(VD方向)とし、染色剤は四酸化オスミウムを用いる。
次いで、透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製、型名「H−7600」、AMT社製 カメラシステム ER−B)にて写真撮影を行う。
上記条件により撮影して得られた写真を印刷し、ドメイン寸法と写真上のスケールバー長さを株式会社ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、スケールバー実測値とスケールバーの表示値から前記長さ(LMD)及び前記幅(LVD)について算出する。
なお、測定範囲は発泡層表面から厚み方向(VD)に2〜10μmまでとし、範囲内に分散しているゴム粒子の中からMD方向の長径200nm以上のものにつき測定する。
該ゴム粒子の寸法はMD方向に最も長い場所を測定し、その平均値を長さ(LMD)とする。
同様に厚み方向にドメイン粒子が最も長い場所の寸法を測定し、その平均値を幅(LVD)とする。
計測するドメイン粒子数が約150個程度になるまで撮影を行い、全てのドメイン粒子を計測する。
そして、求められたMD方向の長さ(LMD)をVD方向の長さ(LVD)で除することにより前記比率(LMD/LVD)を算出する。
【0073】
(ドメインの形状:容器)
積層発泡シートを熱成形して作製した容器の底面部を、該底面部の平面方向に対して平行な面(図1「平面C」に相当)が観察できるよう切片を採取する。
その後、切り出した切片をエポキシ樹脂中に包埋後、60℃の温度で24時間かけて前記エポキシ樹脂を硬化させ、ウルトラミクロトーム(例えば、ライカマイクロシステムズ社製、型名「LEICA ULTRACUT UCT」、DiATOME社 Ultra)を用いて超薄切片(例えば、厚み70nm)を作製する。
切片の切削方向は、平面C方向とし、染色剤は四酸化オスミウムを用いる。
次いで、透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製、型名「H−7600」、AMT社製 カメラシステム ER−B)にて写真撮影を行う。
上記条件により撮影して得られた写真を印刷し、ドメイン寸法と写真上のスケールバー長さを株式会社ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、スケールバー実測値とスケールバーの表示値から前記長さ(L)について算出する。
なお、測定は発泡層表面から厚み方向(VD)に2〜10μmまでとし、範囲内に分散しているゴム粒子(ドメイン)の中から長径200nm以上のものにつき測定する。
該ドメインの寸法は平面方向に最も長い場所を測定し、その平均値を長さ(l)とする。
また、この長さの方向に直交する方向におけるドメインの幅(l)を求める。
この長さ(l)と幅(l)とを約150個のドメインに対して実施し、求められた平面方向の平均長さ(L)を平均幅(L)で除して前記比率(L/L)を算出する。
【0074】
なお、実施例1、比較例4の発泡シートについて撮影したTEM写真を図3(実施例1)、図4(比較例4)に示す。
この図において矢印で示した濃点がポリブタジエンを含むドメインDであり、その周囲の淡色部分がスチレン−メタクリル酸共重合体樹脂やスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体樹脂を含むマトリックスMである。
【0075】
(強度評価:シート)
各実施例、比較例の発泡シートに対してフィルムインパクトテスター(安田精機製作所社製 商品名「No.181フィルムインパクトテスター」)による強度評価を実施した。
評価に際しては、発泡シートからそれぞれ100mm×90mmの評価試料を採取し、温度22℃、相対湿度40%となるように調整された環境下で衝撃球サイズ12.7mmR、振子角度90度での各試料の打抜必要エネルギー(単位:J)を求めた。
具体的には、打抜必要エネルギーを求める試料を試料板と試料押さえとの間にセットし、指針を3.0Jの線上に置き、振り子止めハンドルを倒して振り子を落下させた。
そして、これにより試料が破れて振り子が指針を押して示した目盛りを読み取った。
以上の操作を発泡シートの表裏5回ずつ行い、その平均値を求めた。
各発泡シートの厚み、及び、発泡倍率とともに打抜必要エネルギーを求めた結果を下記表に示す。
【0076】
(強度評価:容器)
各実施例、比較例の発泡シートに対してトレー容器形状の備えられた片側真空タイプのマッチモールド型(容器開口部外寸法:115mm×185mm、底部外寸法:70mm×115mm、容器深さ外寸法:30mm)を型内雰囲気温度165℃、雄型温度165℃、及び、雌型温度50℃に設定し、前記熱成形用樹脂発泡シートを型内で15秒予熱した後にマッチモールド成形して発泡成形品(トレー容器)を作製した。
上記トレー容器底面からそれぞれ100mm×60mmの評価試料を採取し、上記と同様の手法で打抜必要エネルギーを求めた。
測定は表裏5回ずつ行い、その平均値を求めた。
【0077】
(耐熱性評価:容器)
前記の強度評価用に作製したトレー容器と同じ形状のトレー容器を同じ条件で作製した。
このトレー容器に130℃に加熱したサラダオイルをトレー深さの約70%まで注ぎ、30秒後にサラダオイルを除いて表面状態を目視にてチェックした。
そして、表面状態がオイル注入前とほとんど変化なければ耐油性良好「○」とし、泡の発生や破れが発生すればNG「×」とした。
【0078】
(シート脆性評価)
前記打抜必要エネルギーと熱成形用樹脂発泡シートの坪量から総合的に判定し、靭性に優れ実用上問題がないと考えられる場合「○」判定とし、靭性に劣り問題があると考えられる場合を「×」判定とし、どちらとも言い切れない場合を「△」判定とした。
【0079】
(容器脆性評価)
前記打抜必要エネルギーとトレー容器底面の坪量から総合的に判定し、靭性に優れ実用上問題がないと考えられる場合「○」判定とし、靭性に劣り問題があると考えられる場合を「×」判定とし、どちらとも言い切れない場合を「△」判定とした。
【0080】
【表1】
【0081】
この表からも本発明によれば、耐熱性と靱性とに優れたスチレン−メタクリル酸系樹脂シート及び容器が得られることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5