特許第6262236号(P6262236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262236モバイルデバイスに近接した構造物の推定及び予測
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262236
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】モバイルデバイスに近接した構造物の推定及び予測
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/28 20100101AFI20180104BHJP
   G01S 19/25 20100101ALI20180104BHJP
【FI】
   G01S19/28
   G01S19/25
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-531214(P2015-531214)
(86)(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公表番号】特表2015-531479(P2015-531479A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】US2013058350
(87)【国際公開番号】WO2014039737
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】13/606,029
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン,リン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スィーデュー,グルシャラン
(72)【発明者】
【氏名】プリヤンタ,ニッサンカ・アラチュチゲ・ボーディ
(72)【発明者】
【氏名】アガルワル,シャラド
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−242212(JP,A)
【文献】 特開2008−026134(JP,A)
【文献】 特開2007−248321(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139607(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/085876(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S 19/00−19/55
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルデバイスによって受信された実際の全地球航法衛星システム(GNSS)データに関連する最新の正確なGNSS測定値に少なくとも基づいて前記モバイルデバイスの位置を近似するステップであって、前記実際のGNSSデータは、予め決められたデフォルト設定に従って検知される、ステップと、
前記最新の正確なGNSS測定値とエフェメリス情報に少なくとも基づいて、前記モバイルデバイスに対して見通し線上にあるはずの一組のGNSS衛星から、期待されるGNSSデータを識別するステップと、
前記期待されるGNSSデータと前記モバイルデバイスによって受信された前記実際のGNSSデータとの差を検出するステップと、
前記差を用いて少なくとも1つの障害物に遮られていないGNSS衛星と少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星とを区別するステップであって、前記少なくとも1つの障害物に遮られていないGNSS衛星は、前記期待されるGNSSデータと一致する対応する実際のGNSSデータを有し、前記少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星は、前記期待されるGNSSデータと一致しない関連する実際のGNSSデータを有する、ステップと、
地理的構造が前記モバイルデバイスに近接していること及び前記地理的構造が前記少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星の方向に位置していることを認識するステップと、
その後の時間における前記地理的構造の前記モバイルデバイスに対する影響を予測するステップと、
前記地理的構造の前記予測された影響に少なくとも部分的に基づいて、前記予め決められたデフォルト設定よりも高い頻度で前記実際のGNSSデータを検知するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記識別するステップは、前記エフェメリス情報を前記一組のGNSS衛星から取得するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記期待されるGNSSデータと前記実際のGNSSデータとの前記差に少なくとも基づいて、前記モバイルデバイスは前記地理的構造によって作られた半影領域にあると判定するステップを更に含み、前記半影領域は、いくつかのGNSS衛星からの信号はブロックされるが、その領域にあるモバイルデバイスがGNSS位置特定手法を用いてその位置を精度良く決定することを可能にするのに十分なGNSS衛星から信号が受信される領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出するステップは、前記実際のGNSSデータの信号強度を信号強度閾値と比較するステップを含み、前記少なくとも1つの障害物に遮られていないGNSS衛星に対する前記対応する実際のGNSSデータは前記信号強度閾値を上回り、前記少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星に対する前記関連する実際のGNSSデータは前記信号強度閾値を下回る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モバイルデバイスは通りの別の側よりも相対的に前記地理的構造に近い、前記通りの特定の側にあると判定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予測するステップは、前記モバイルデバイスが前記地理的構造によって作られた本影領域に入るか否かを予測するステップを含み、前記本影領域は、多くのGNSS衛星がブロックされるので、モバイルデバイスはGNSS位置特定手法を用いてその位置を精度良く決定することが不可能な領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記予測するステップは、前記モバイルデバイスが前記地理的構造に向かって動いているか、前記地理的構造から遠ざかって動いているか、又は前記地理的構造に平行に動いているかを判定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記地理的構造の前記予測された影響に少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイス上でデッドレコニング機能を起動するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予測するステップは、前記モバイルデバイスが前記地理的構造に向かって動いている場合、前記モバイルデバイスが前記地理的構造を通り越して前記モバイルデバイスのその後の位置を正確に決定することができるようになる時間を予測するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記地理的構造の大きさ及び相対位置、並びに前記モバイルデバイスの方向及び速度を決定するステップを更に含み、
前記時間は、前記大きさ、前記相対位置、前記方向、及び前記速度に少なくとも基づいて予測される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
なくとも1つの場合、前記位置から前記モバイルデバイスの経路を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
モバイルデバイスであって、
プロセッサーと、
命令を格納したハードウェア記憶装置と、
を備え、
前記命令は、前記プロセッサーによって実行された時に、前記プロセッサーに、
前記モバイルデバイスによって周期的設定に従って受信された実際の全地球航法衛星システム(GNSS)データに関連する最新の正確なGNSS測定値に少なくとも基づいて前記モバイルデバイスの位置を近似するステップと、
前記最新の正確なGNSS測定値に少なくとも基づいて、前記モバイルデバイスに対して見通し線上にあると期待される一組のGNSS衛星から、期待されるGNSSデータを識別するステップと、
前記期待されるGNSSデータと前記モバイルデバイスによって受信された前記実際のGNSSデータとの差を検出して、前記期待されるGNSSデータと一致しない関連する実際のGNSSデータを有する少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星を識別するステップと、
地理的構造が前記モバイルデバイスに近接していること及び前記地理的構造が前記少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星の方向に位置していることを認識するステップと、
前記地理的構造が前記モバイルデバイスに近接していることを認識することに応答して、前記周期的設定よりも高い頻度で前記実際のGNSSデータを受信するステップと、
を実施させる、モバイルデバイス。
【請求項13】
前記命令は、前記プロセッサーによって実行された時に、前記プロセッサーに、前記最新の正確なGNSS測定値を用いて近似された前記位置よりも相対的に前記地理的構造に近い、前記モバイルデバイスの改善された位置を決定するステップを実施させる、請求項12に記載のモバイルデバイス。
【請求項14】
記命令は、前記プロセッサーによって実行された時に、前記プロセッサーに、前記少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星が前記モバイルデバイスの北にあることを認識することに応答して、前記改善された位置が前記最新の正確なGNSS測定値を用いて近似された前記位置の北にあるように前記改善された位置を決定するステップを実施させる、請求項13に記載のモバイルデバイス。
【請求項15】
前記命令は、前記プロセッサーによって実行された時に、前記プロセッサーに、前記地理的構造が前記モバイルデバイスに近接していることを認識することに応答して、前記モバイルデバイス上でデッドレコニングメカニズムを起動することによって前記モバイルデバイスを制御するステップを実施させる、請求項12に記載のモバイルデバイス。
【請求項16】
プロセッサーと、
命令を格納したハードウェア記憶装置と、
を備えるシステムであって、
前記命令は、前記プロセッサーによって実行された時に、前記プロセッサーに、
モバイルデバイスによって予め決められた設定に従って受信された実際の全地球航法衛星システム(GNSS)データに関連する最新の正確なGNSS測定値に少なくとも基づいて前記モバイルデバイスの位置を近似するステップと、
前記最新の正確なGNSS測定値に少なくとも基づいて、前記モバイルデバイスに対して見通し線上にあるはずの一組のGNSS衛星から、期待されるGNSSデータを識別するステップと、
前記期待されるGNSSデータと前記モバイルデバイスによって受信された前記実際のGNSSデータとの差を検出するステップと、
前記期待されるGNSSデータと前記実際のGNSSデータとの前記検出された差に少なくとも基づいて、前記モバイルデバイスの位置に少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星が存在することを決定するステップと、
前記モバイルデバイスの位置に少なくとも1つの障害物に遮られているGNSS衛星が存在することを決定することに応答して、前記モバイルデバイスに前記予め決められた設定よりも高い頻度で前記実際のGNSSデータを受信させるステップと、
を実施させる、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 多くのモバイルデバイスは、そのモバイルデバイスの位置を決定するための全地球航法衛星システム(GNSS)技術を含んでいる。最も広く用いられているGNSSは全地球測位システム(GPS)である。現在のGPS技術は、上空のGPS衛星へのダイレクトな見通し線を与える比較的障害物の少ない環境において、うまく機能する。しかしながら、高層建築物のある都市環境においては、モバイルデバイスは、不完全な衛星視認性のせいで位置を導出するのに失敗することがある。あるいはまた、たとえモバイルデバイスが位置を決定するとしても、位置の誤差は非常に大きくなりがちである。こうした大きな精度誤差は、様々な用途に対する位置の有用性を減じることが多い。
【発明の概要】
【0002】
[0002] 説明される実装例は、モバイルデバイスの位置特定に関し、より具体的には、モバイルデバイスの位置、及び/又はモバイルデバイスに近接している障害物の存在を決定することに関する。一例は、モバイルデバイスの見通し線上にあると期待される全地球航法衛星システム(GNSS)衛星を識別することが可能である。この例は、受信されたGNSSデータ信号と前記期待されるGNSS衛星からの期待されるGNSSデータ信号との差を検出することが可能である。本例はまた、前記検出された差の少なくともいくつかを生じさせている障害物の前記モバイルデバイスからの方向を決定することが可能である。
【0003】
[0003] 別の例は、モバイルデバイスに対して相対的に障害物を検出するように構成された障害物検出モジュールを含むことが可能である。この例はまた、前記障害物の位置と前記モバイルデバイスの移動方向とに少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスに対する前記障害物の将来の影響を予測するように構成された予測モジュールを含むことが可能である。
【0004】
[0004] 上に列挙された例は、読者を補助するためのクイックリファレンスを提供するように意図されており、本明細書で説明される概念の範囲を規定するようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
[0005] 添付図面は、本願において伝えられる概念の実装例を示す。図示された実装例の特徴は、添付図面と併せて考慮される以下の説明を参照することによって、一層容易に理解されることが可能である。同様の要素を指し示すのに適している場合はいつでも、様々な図面において同様の符号が用いられる。更に、各符号の一番左の数字は、その符号が最初に紹介された図とそれに関連する議論を伝えている。
【0006】
図1図1は、いくつかの実装例による本モバイルデバイス位置特定概念が利用されることが可能な例示的シナリオ又は環境を示す。
図2図2は、いくつかの実装例による本モバイルデバイス位置特定概念を実現することが可能な例示的システムを示す。
図3図3は、いくつかの実装例による本モバイルデバイス位置特定概念が利用されることが可能な例示的シナリオ又は環境を示す。
図4図4は、いくつかの実装例による本モバイルデバイス位置特定概念が利用されることが可能な例示的シナリオ又は環境を示す。
図5図5は、いくつかの実装例による本モバイルデバイス位置特定概念が利用されることが可能な例示的シナリオ又は環境を示す。
図6図6は、いくつかの実装例による本モバイルデバイス位置特定概念が利用されることが可能な例示的シナリオ又は環境を示す。
図7図7は、本概念のいくつかの実装例によるモバイルデバイス位置特定方法の例のフローチャートである。
図8図8は、本概念のいくつかの実装例によるモバイルデバイス位置特定方法の例のフローチャートである。
図9図9は、本概念のいくつかの実装例によるモバイルデバイス位置特定方法の例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<概観>
[0010] この特許は、モバイルデバイス、及びモバイルデバイスに近接している障害物に対するモバイルデバイスの位置を精度良く決定することに関する。本概念は、期待される全地球航法衛星システム(GNSS)データ信号をモバイルデバイスにより受信された実際のGNSS信号と比較して、モバイルデバイスに近接した環境にある特徴物を識別することが可能である。期待されるGNSSデータ信号と受信されたGNSS信号との差が、モバイルデバイスに近接している障害物、及びモバイルデバイスに対するその障害物の位置を識別するのに利用されることが可能である。モバイルデバイスと障害物の位置は様々な用途に利用されることが可能である。例えば、モバイルデバイス及び/又は障害物の位置は、モバイルデバイスの位置情報を強化するのに利用されることが可能である。別の例では、モバイルデバイスと障害物の位置は、モバイルデバイスによって受信される将来のGNSS信号の品質を予測するのに利用されることが可能である。モバイルデバイスはその予測に基づいて制御されることが可能である。
【0008】
[0011] 説明の目的のために、本概念が使用されることが可能な環境100の導入的な図1を考慮されたい。環境100は、複数の全地球航法衛星システム(GNSS)衛星102、ユーザー104、及び建築物106の形態の障害物を含んでいる。図面縮尺のために視認できないが、ユーザーはモバイルデバイスを持っており経路Pに沿って進んでいると想定されたい。経路Pに沿った位置Aでは、モバイルデバイスは頭上のGNSS衛星の全てからGNSS信号を受信することが可能である。そのような場合には、期待されるGNSS信号は受信されたGNSS信号と一致することが多いであろう。
【0009】
[0012] 経路Pに沿った位置Bでは、モバイルデバイスはGNSS信号を邪魔している建築物106のせいで、GNSS衛星のうちのいくつかからGNSS信号を受信しない。この場合、頭上のGNSS衛星のうちのいくつかからのGNSS信号がブロックされるから、受信されたGNSS信号は期待されるGNSS信号とは一致しない。別の言い方をすれば、既知の衛星飛行情報が、期待されるGNSS信号の基礎として利用されることが可能である。期待されるGNSS信号と受信信号との差分は、障害物により引き起こされた信号ロスを表すことが可能である。位置Bにおける信号ロスにもかかわらず、モバイルデバイスがその位置を精度良く決定することを可能にするのに十分なGNSS衛星から、GNSS信号が受信される。位置Bは、いくつかのGNSS衛星からの信号はブロックされるが、その領域にあるモバイルデバイスがGNSS位置特定手法を用いてその位置を精度良く決定することを可能にするのに十分なGNSS衛星から信号が受信される、半影領域108の中の一地点とみなされることが可能である。
【0010】
[0013] その後の位置、即ち経路Pに沿った位置Cは、本影領域110の中にあることが可能である。本影領域では、多くのGNSS衛星がブロックされるので、モバイルデバイスはGNSS位置特定手法を用いてその位置を精度良く決定することが不可能である。経路Pに沿った位置Dでは、ユーザーは半影領域108及び本影領域110から外へ出て、受信されたGNSS信号は期待されるGNSS信号と再び一致する。
【0011】
[0014] 本実装例は、半影領域108及び/又は本影領域110を認識することが可能である。これらの領域の認識は、様々な方法で利用されることが可能である。例えば、半影領域108及び/又は本影領域110の検出によって、モバイルデバイス及び/又は障害物の相対位置が決定されるようにすることが可能である。別の例では、半影領域108及び/又は本影領域110の検出は、他のやり方をすればそうなるであろう実状よりも効果的な形でモバイルデバイスを制御するのに、利用されることが可能である。これらの態様は以下でより詳細に説明される。
【0012】
<例示的システム>
[0015] 図2は、モバイルコンピューティングデバイス(モバイルデバイス)202、リモートコンピューティングデバイス又はリモートコンピューター204、ネットワーク206、データ記憶装置208、及び全地球測位システム(GPS)衛星210を含む例示的システム200を示す。GPSは、広範に使用されているGNSSの一形態である。したがって本文書の残りの大部分はGPS技術に言及するが、他のGNSS技術にも等しく適用可能である。
【0013】
[0016] モバイルデバイス202は、アプリケーション層212、オペレーティングシステム(O/S)層214、及びハードウェア層216を含む。
【0014】
[0017] この構成において、アプリケーション層212は位置認識コンポーネント218を含む。位置認識コンポーネントは、障害物検出モジュール220と予測モジュール222を含むことが可能である。
【0015】
[0018] ハードウェア層216は、プロセッサー224、記憶装置226、アンテナ228、クロック230、GPSハードウェア232、携帯電話ハードウェア234、Wi−Fiハードウェア236、ジャイロスコープ238、加速度計240、及び磁力計242を含むことが可能である。
【0016】
[0019] GPSハードウェア232は、地球上又は地球の上方におけるモバイルデバイス202の絶対位置を決定することが可能な絶対位置特定メカニズムとして機能することが可能である。
【0017】
[0020] 携帯電話ハードウェア234、Wi−Fiハードウェア236、ジャイロスコープ238、加速度計240、及び磁力計242は、絶対位置に対する位置及び/又は移動データを与える相対位置特定メカニズムとして機能することが可能である。例えば、ジャイロスコープ238、加速度計240、及び磁力計242は、GPSハードウェア232によって決定された絶対位置からのモバイルデバイスの移動を検知することが可能である。同様に、Wi−Fiハードウェアは、1又は複数の無線アクセスポイントを検出することが可能である。無線アクセスポイントの位置がデータ記憶装置208から取得されて、最新の絶対位置が得られてからのモバイルデバイスの移動を推定することができる。
【0018】
[0021] 要約すると、障害物検出モジュール220は、モバイルデバイスに対して相対的に障害物を検出するように構成されている。障害物検出モジュール220は、GPSの軌道を活用して、モバイルデバイスが通り(及び/又は建築物)のどちら側に位置しているかを正確に推測することが可能である。いくつかの場合には、障害物検出モジュール220は、(1)位置特定サービスから報告された最近の位置軌道、(2)各衛星の信号捕捉時間又は捕捉失敗時間、及び/又は(3)データ記憶装置208からの各衛星の天体暦(ephemeral)情報を結合することが可能である。1つの基本原理は、通りの両側の建築物が都市峡谷を作り出すことがあり、この都市峡谷が、異なる衛星の組をその通りの異なる側又は個々の建築物の異なる側にあるモバイルデバイスから見えるようにする、ということである。当然ながら、他の人工及び/又は自然障害物、例えば峡谷、トンネル、スタジアム、崖、丘等が検出されることが可能である。
【0019】
[0022] 障害物検出モジュール220はまた、利用可能である場合、Wi−Fiアクセスポイント(AP)の情報(又は他の無線プロトコルの情報)を活用することも可能である。そのような場合、通り(又は建築物)の異なる側にあるモバイルデバイスは、おそらく、建築物に設置された異なるWi−Fi APの組を臨むことになろう。もしWi−Fi APのデータベースが利用可能であれば、視認可能な衛星の組と同様の方法でWi−Fi APの組が用いられて、モバイルデバイスが通り(又は建築物)のどちら側に位置しているかを推測することが可能である。
【0020】
[0023] 簡潔に言えば、GPS手法による位置の決定は、GPS衛星から「GPSデータ信号」、あるいは簡略には「GPS信号」として送信される2種類のデータを必要とし得る。この2種類のデータは、時間に関係したデータ即ちタイムスタンプと、軌道データである。軌道データは、エフェメリス(ephemeris;天体暦)データとGPS衛星の軌道を含む。エフェメリスデータは衛星によってブロードキャストされるか、又はインターネットから(例えばNASAを通じて)データ記憶装置208などに取得されることが可能である。モバイルデバイスの大まかな位置を携帯電話基地局ID、Wi−Fiのシグネチャ及び/又は信号強度、又は最近のGPS位置から知得することによって、障害物検出モジュール220は、もし何も障害物がなかったとしたら衛星のどの組が視認できるはずであるか(例えば利用可能な衛星)を推測することが可能である。障害物検出モジュール220はまた、GPSハードウェア232における信号強度とCDMA相関ピークを検査することも可能である。障害物検出モジュール220は更に、どの衛星が実際には視認できないかを推測することが可能である。視認できない(例えば見失った又は遮られた)衛星は、障害物が存在すること及びその障害物の方向を示すことが可能である。例えば、エフェメリスデータによれば北の上空にある全ての衛星がもし視認できない(例えばGPS信号が受信されない、又は閾値レベルより低く受信される)のであれば、障害物はモバイルデバイスの北に存在する。
【0021】
[0024] 別の言い方をすれば、障害物検出モジュール220は、建築物などの障害物に対するモバイルデバイス202の相対位置を、3種類の情報に基づいて推測することが可能である。第1に、障害物検出モジュールは、モバイルデバイスにおける各GPS衛星の生のGPS信号品質を利用することが可能である。例えば、1又は複数の利用可能な衛星からの信号強度が閾値レベルより下がった時に、障害物の存在が推測されることが可能である。例えば、もしある衛星の組から強い(例えば閾値より高い)信号が受信され、そして数秒後にそれら衛星のうちの1又は複数の信号強度が閾値より下がったならば、障害物がその原因であるかもしれない。第2に、障害物検出モジュールは、権限のある機関によって公表された一般に利用可能な衛星エフェメリスを活用して、視認できるであろう(例えば利用可能な)GPS衛星の位置を利用することが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、障害物検出モジュールは、データ記憶装置208に格納された3D都市建築物モデルを利用することが可能である。
【0022】
[0025] いくつかの構成では、障害物検出モジュール220は、3D都市建築物モデルを生成することに寄与することが可能である。例えば、障害物検出モジュール220は、半影及び本影領域を作成するためのクラウドソーシングのアプローチに寄与することが可能である。そのような構成では、モバイルデバイスが、建築物又は他の障害物に対する当該モバイルデバイスの相対位置に関する軌跡を提供することが可能である。この軌跡データは、建築物の「本影」及び「半影」のモデルを構築して、その結果を慣性航法などの代替的な位置追跡方法と共に利用するのに用いられることが可能である。この情報はデータ記憶装置208に格納され、その後その位置の近くにあるモバイルデバイスによってアクセスされることが可能である。当然ながら、ユーザーのプライバシーは、クラウドソーシングの実装例などの如何なるモバイルデバイスのシナリオにおいても対処されることが可能である。例えば、ユーザーは、任意のデータ収集に加入し、又は任意のデータ収集から脱退することを通知及び許可されることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、そのようなデータは、個々のユーザー又は個々のモバイルデバイスに相関付けることのできない方法で収集されることが可能である(例えば、ある不特定のデバイスが「 」という位置に存在して、「 」という位置関連情報を報告された)。
【0023】
[0026] 要約すると、いくつかの実装例では、位置認識コンポーネント218は、障害物の位置を推定し、モバイルデバイス202に対するそれらの影響をGPSデータ又はモバイルデバイスにより収集された情報のみに基づいて予測することが可能である。他の構成では、位置認識コンポーネント218は、この自己収集情報を、同じ位置付近にある他のモバイルデバイスによって収集された情報で拡張又は交換することが可能である。
【0024】
[0027] ある場合には、障害物検出モジュール220は、クラウドソーシングのデータベースにアクセスして、モバイルデバイス202の位置に近接している障害物についての付加的な情報を取得するように構成されることが可能である。予測モジュール222は、クラウドソーシングデータベースからのこの付加的な情報を利用して、当該障害物に関係する将来の影響を予測するように構成されることが可能である。障害物検出モジュール220はまた、障害物の周りの半影及び本影区域情報(例えば自己収集された情報)などの障害物関連情報をクラウドソーシングデータベースへ提供するように構成されることも可能である。このように、個々のモバイルデバイスは、クラウドソースモデルに対して寄与することが可能であると共に、クラウドソースモデルから便益を受けることが可能である。
【0025】
[0028] いくつかの実装例では、障害物検出モジュール220は、衛星信号のマルチパス伝搬に対処するための様々な手法を採用することが可能である。いくつかの場合、個々のGPS衛星からの信号は、高層建築物などの近くの物体から反射されることがある。この反射信号はその後、モバイルデバイス202によって受信され得る。障害物検出モジュールによって利用されることが可能な一手法は、受信されたGPS信号を予め定義された(又は動的に決定される)値の信号閾値と比較することである。例えば、受信されたGPS信号が、予め定義された閾値と比較されることが可能である。その閾値より低い任意のGPS信号は除去されることが可能であり、それ以上は分析されない。そのような構成は、障害物に遮られていない見通し線上のGPS衛星を、障害物に遮られたGPS衛星から分離することが可能である。障害物に遮られたGPS衛星のこのような比較的弱い信号は除去され、視認可能な組から除外されることが可能である。別の観点からすると、予め定義された閾値より下がったGPS信号は、可能性のある障害物の指標とみなされることが可能である。この指標は次いで、受信されたGPS信号に対して更なる分析を実施するためのトリガーとして用いられて、障害物を識別及び/又は探し出し、及び/又はモバイルデバイスの位置を改善することが可能である。
【0026】
[0029] 予測モジュール222は、モバイルデバイス202に対する障害物の将来の影響を、当該障害物の位置及び当該モバイルデバイスの移動方向に少なくとも部分的に基づいて予測するように構成されている。例えば、予測モジュールは、特定の経路を与えられると、いつモバイルデバイスが本影領域に入り、及び/又は本影領域から出るのか、あるいは、モバイルデバイスが本影領域に入るかどうか、及び/又は本影領域から出るかどうかを予測することが可能である。予測モジュールはまた、もしユーザー(例えばモバイルデバイス)が経路を変更したら、予測を更新することも可能である。この態様は以下でより詳細に論じられる。予測モジュールは、経路の変更(例えば方向の変化及び/又は速度の変化)に関連する情報を、ジャイロスコープ238、加速度計240、及び/又は磁力計242のいずれかから受け取ることが可能である。
【0027】
[0030] モバイルデバイス202及びリモートコンピューター204は、ある程度の処理能力及び/又は記憶能力を有した任意の種類のデバイスであると定義されるところのコンピューター又はコンピューティングデバイスとみなされることが可能である。処理能力は、ある機能性を提供するためのコンピューター可読命令の形のデータを実行することのできる、1又は複数のプロセッサーによって提供されることが可能である。コンピューター可読命令などのデータは、記憶装置/メモリに格納されることが可能である。記憶装置/メモリは、コンピューターの内部及び/又は外部に存在することが可能である。記憶装置/メモリは、数ある中でも、揮発性若しくは不揮発性メモリ、ハードドライブ、フラッシュ記憶デバイス、及び/又は光学記憶デバイス(例えばCD、DVD等)のうちの任意の1又は複数を含むことが可能である。本明細書で用いられる際、「コンピューター可読媒体」という用語は信号を含むことが可能である。これに対し、「コンピューター可読記憶媒体」という用語は信号を除く。コンピューター可読記憶媒体は、「コンピューター可読記憶デバイス」を含むことが可能である。コンピューター可読記憶デバイスの例は、RAMなどの揮発性記憶媒体と、数ある中でもハードドライブ、光ディスク、及びフラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体とを含む。
【0028】
[0031] 例示される実装では、モバイルデバイス202及びリモートコンピューター204は、汎用プロセッサーと記憶装置/メモリにより構成される。いくつかの構成では、そのようなデバイスは、システムオンチップ(SOC)タイプの設計を含むことが可能である。そのような場合、単一のSOC又は複数の結合されたSOC上に機能性が統合されることが可能である。そのような一例では、コンピューティングデバイスは共有リソースと専用リソースを含むことが可能である。インターフェイスが、共有リソースと専用リソース間の通信を容易化することが可能である。その名前が示唆するように、専用リソースは、固有の機能性を達成することを専門とする個別部分を含むものとみなされることが可能である。例えば、この例では、専用リソースは、GPSハードウェア232、携帯電話ハードウェア234、Wi−Fiハードウェア236、ジャイロスコープ238、加速度計240、及び/又は磁力計242のうちの任意のものを含むことが可能である。
【0029】
[0032] 共有リソースは、複数の機能性によって用いられることが可能な記憶装置、処理装置等であり得る。この例では、共有リソースはプロセッサー及び/又は記憶装置/メモリを含むことが可能である。ある場合には、位置認識コンポーネント218は専用リソースとして実装されることが可能である。他の構成では、このコンポーネントは共有リソース上に実装されることが可能であり、及び/又は、プロセッサーは専用リソース上に実装されることが可能である。
【0030】
[0033] いくつかの構成では、位置認識コンポーネント218は、モバイルデバイス202の製造中に、又はエンドユーザーへの販売のためにモバイルデバイスを用意する仲介者によって、インストールされることが可能である。他の例では、エンドユーザーが、数ある中でも例えば、ダウンロード可能なアプリケーションの形態の、又はUSBサムドライブからの、位置認識コンポーネントをインストールしてもよい。
【0031】
[0034] 例示された構成では、位置認識コンポーネント218はモバイルデバイス202上に現れている。他の構成では、位置認識コンポーネントは、別のデバイス上に代替的又は付加的に現れることが可能である。例えば、位置認識コンポーネントは、リモートコンピューター204上に現れることが可能であろう。そのような場合、位置関連データは、モバイルデバイスからリモートコンピューターへ処理のために送られることが可能である。リモートコンピューターは次いで、処理された位置関連データをモバイルデバイスへ戻すことが可能である。
【0032】
[0035] 更に別の構成では、位置認識コンポーネントによって提供される機能性の一部がモバイルデバイス上で実施されることが可能である一方、別の一部がリモートコンピューター上で実施されることが可能である。例えば、障害物検出モジュールがモバイルデバイス上に位置付けられることが可能であり、予測モジュールがリモートコンピューター上に位置付けられることが可能であろう。そのような構成では、GPS信号データがモバイルデバイス上で処理されて、位置情報及び任意の関連する障害物情報を生成することが可能である。これらの情報は、当該情報を更に処理することのできるリモートコンピューターへ送られることが可能である。リモートコンピューターは、3D地図情報などの付加的な情報を利用して、モバイルデバイスが障害物によってどのように影響を受けるかを予測することができる。リモートコンピューターは、その予測をモバイルデバイスへ送ることが可能である。モバイルデバイスは次いで、更なる制御を当該予測に基づかせることが可能である。更に、モバイルデバイスは、より良好な信号の受信をもたらし得る移動の方向をユーザーへ提案することができる。例えば、モバイルデバイスは、「信号受信不良−より良好な受信のためには100フィート西へ移動」と記されたGUIを表示することができる。
【0033】
<例示的シナリオ>
[0036] 図3−6は、本モバイルデバイス位置特定の概念が採用されることが可能な例示的シナリオを全体として示す。図3−6は、ユーザー104と6個のGPS衛星210(1)−210(6)を含む。この場合において、ユーザー104は(図2のモバイルデバイス202などの)モバイルデバイスを持っていると想定されたい。モバイルデバイスは見えないので、以降の説明のいくらかは図2のモバイルデバイス202を参照するだろう。当業者は、他のモバイルデバイス及び/又は他のコンピューターが、説明される動作を実施することが可能であるということを認識すべきである。
【0034】
[0037] 簡潔さのために6個のGPS衛星210(1)−210(6)が示されているが、特定の時間における任意の所与の位置にわたって、一般には8個又は9個のGPS衛星が存在する。(6個のGPS衛星の使用は限定的であるようには意図されておらず、本概念は6個より少ない又は6個より多い衛星を含んだシナリオに当てはまる。)更に、位置を決定しようと試みることは電力を消費し、それはモバイルデバイスにおける貴重な資源であることが多いということを留意されたい。よって、モバイルデバイスは、電力消費を低減するために、常時ではなく定期的に位置を決定しようと試みることが多い。
【0035】
[0038] 図3では、ユーザー104は6個のGPS衛星210(1)−210(6)全ての見通し線上にいる。即ち、ユーザーのモバイルデバイスは、各GPS衛星から、ユーザーの位置を決定するのに有用であるような信号品質の信号を受信することが可能である。この場合、GPS信号は6個の利用可能なGPS衛星のそれぞれから受信されることが可能であり、当該信号は障害物に遮られたり又は品質が低下したりしないので、受信された信号は期待される信号と一致することが可能である。簡潔に言えば、モバイルデバイスは、GPS衛星信号と衛星の位置についてのエフェメリス情報とを用いて、当該デバイスの位置を決定することが可能である。現在の多くのGPS技術は、モバイルデバイスの位置を精度良く決定するのに少なくとも4個のGPS衛星からの信号を必要とすることが多い、ということを留意されたい。したがって、図3のシナリオでは、モバイルデバイスは、6個の衛星からGPS信号を容易に受信することが可能であり、これらのGPS信号を用いて、ユーザー(例えばモバイルデバイス)の位置を精度良く決定することが可能である。
【0036】
[0039] 説明の目的のために、図3に示された地点において、モバイルデバイスは、デフォルトの周期的なモバイルデバイスの設定に従って信号を受信する(例えば、モバイルデバイスは、1分間に1回のように周期的にGPS信号を受信しようと試みる)と想定されたい。この場合、モバイルデバイスは、6個の衛星から信号を受信して、当該信号からモバイルデバイスの位置を決定する。決定された位置はいずれの方向においても+/−10メートル以内の精度を有する、と更に想定されたい。モバイルデバイスは、この位置情報から、ユーザーがA通りにいると判定することが可能である。しかしながら、モバイルデバイスは、ユーザーがA通りの北側にいるのかA通りの南側にいるのかを正確に判定することができないかもしれない。
【0037】
[0040] GPSハードウェア232は、頭上のGPS衛星210(1)−210(6)から送信されたデジタル通信信号(例えばGPS信号)を受信し処理することによってモバイルデバイス202の位置を決定することが可能である。現在、それぞれ1日におよそ2回のサイクルで地球を周回している(宇宙飛行体(space vehicle)即ちSVとも呼ばれる)32個のGPS衛星がある。1組の地上局がこれらの衛星の軌道と健康状態(health)を監視して、衛星軌道パラメーターを衛星へ送信する。特に、2種類の軌道情報が存在する:粗い軌道及び状態情報を含んだアルマナック(almanac;暦)と、衛星軌道の精密な情報を含んだエフェメリスである。GPS衛星は、数ナノ秒以内に時間同期されている。
【0038】
[0041] GPS衛星は、時間情報と軌道情報を、地球へ向けて1.575GHzの符号分割多元接続CDMA信号で同時且つ連続的にブロードキャストする。(CDMAは通信プロトコル及び方法である。)伝送データ速度は50bpsである。各GPS衛星はこの信号を、1023kbpsで長さ1023チップの衛星固有C/Aコードを用いて符号化する(CDMA符号化)。よって、C/Aコードはミリ秒毎に繰り返して、送信される各データビットの間にC/Aコードは20回の繰り返しを生じることになる。
【0039】
[0042] GPS衛星のブロードキャストからのフルデータパケットは30秒の長さであり、6秒の長さの5個のフレームを含んでいる。フレームは、テレメトリワード(TLM)と呼ばれるプリアンブルと、ハンドオーバーワード(HOW)と呼ばれるタイムスタンプとを有する。各データパケットには、送信を行うGPS衛星のエフェメリスと全てのGPS衛星のアルマナックが含まれている。換言すれば、6秒毎に精密なタイムスタンプが復号されることが可能であり、30秒毎に高精度な衛星軌道が復号されることが可能である。エフェメリス情報は地上局によって常時更新される。理論的には、SVのブロードキャストに含まれているエフェメリスデータは、30分間のみ有効である。全ての情報は衛星信号から受信され復号されなければならないため、これらのデータ速度は、なぜスタンドアロンのGPSが位置決定を得るのにおよそ30秒以上かかるのかの理由を明らかにする。モバイルデバイスでは、粒度の粗い衛星軌道パラメーターはデータ記憶装置208などのサーバー又は他のリソースからダウンロードされることが多い。よって、精度の低い初回測位時間(TTFF:time to first fix)は6秒まで短縮されることが可能である。
【0040】
[0043] モバイルデバイスの位置を決定するのに3つの情報が利用されることが可能である。これらの情報は、1)タイムスタンプ、2)その時刻におけるGPS衛星の軌道、及び3)その時刻における各GPS衛星からモバイルデバイスまでの近似距離(擬似距離と呼ばれる)を含むことが可能である。これらの中で、いくつかの実装例では、鍵は擬似距離を得ることであり、この擬似距離は、各GPS衛星からGPSハードウェアまでのRF信号の飛行時間から計算される。RF信号は、衛星から地球の表面まで64乃至89ミリ秒で進む。光は300km/msで進むことを留意されたい。よって正確な位置を得るために、GPSハードウェアはマイクロ秒のレベルまで時間を追跡する。伝搬時間のミリ秒部分(NMS)とサブミリ秒部分(サブMS)は、非常に異なる方法で検出される。NMSはパケットフレームから復号されるが、サブMSの伝搬時間は相関を用いてC/Aコードのレベルで検出される。
【0041】
[0044] GPSハードウェア232が起動すると、捕捉ステージが動作する。捕捉フェーズの目的は、GPS衛星の周波数に正確にロックすることによって、GPS受信機に視認可能なSVにより送信されたデータの受信を開始することである。捕捉フェーズはまた、副産物として符号位相(code phase)値を測定する。所与の衛星からのデータを復号するために、3つの未知数(unknown)が推定される。ドップラー周波数シフト及びGPSハードウェア232とGPS衛星間の非同期クロックのために、捕捉プロセスは、可能性のある周波数と符号位相の空間にわたってサーチする。
【0042】
[0045] GPS衛星の信号が捕捉されると、GPSハードウェア232は比較的コストのかからない追跡ステージに入る。このステージは、位相ロックと遅延ロックを調整し、受信機内の符号位相をGPS衛星からのものと同期するよう維持するための、フィードバックループを保持する。連続モードでは、追跡ループはミリ秒毎に動作する。
【0043】
[0046] 正確な追跡がなされれば、GPSハードウェア232はSVによって送信されたパケットを復号することが可能である。一般に、補助情報がないと、GPSハードウェア232はSVのエフェメリスを30分(有効時間スパン)毎に、タイムスタンプを6秒毎に復号することが多い。復号処理は、全てのビットを受信するためにパケットの持続時間にわたって連続的に追跡処理を動作させるので、エネルギー消費が多い。A−GPSの場合、モバイルデバイスのGPSハードウェア232はエフェメリスを復号することを必要とされないが、少なくともいくつかの実装例では、依然としてHOWを復号しなければならない。
【0044】
[0047] 符号位相及びHOWから得られるエフェメリスと伝搬遅延が与えられると、GPSハードウェア232は、最小二乗最小化などの制約最適化手法を用いて位置計算を実施する。これは通常プロセッサー224上で行われる。受信された緯度、経度、高度、及び精密な時間を用いて、GPSハードウェア232は、視野にある最低4個のSVを少なくともいくつかの位置識別手法によって利用する。
【0045】
[0048] GPSハードウェア232がGPS衛星にロックし符号位相(即ちサブNMS)を推定する鍵は、少なくともいくつかの実装例では、受信信号とC/Aコードのテンプレートとの間で相関分析を実施することである。相関器が強い出力を与える場合、GPSハードウェアは更に続けてパケットを復号することが可能である。
【0046】
[0049] 第1に、障害物検出モジュール220は、所与のGPS衛星がGPSハードウェア232に視認可能であるか否かを判定することが可能である。所与のGPS衛星の存在は、そのC/Aコードの存在を受信されたGPS信号において検出することによって判定されることが可能である。第2に、GPS衛星の送信は1.575GHzの搬送波周波数に中心が置かれるが、GPSハードウェアで受信される異なるGPS衛星からの信号は、個々のGPS衛星210とモバイルデバイス202との相対運動によって引き起こされるドップラー周波数シフトのために、この周波数から逸脱し得る。これらのドップラーシフトは、所与のGPS衛星からのデータを復号するのに用いられることが可能である。第3に、衛星信号は1023ビットのC/Aコードで符号化されているので、受信信号は、正しい時間インスタンスにおける対応するGPS衛星のC/Aコードを当該受信信号に乗じることによって、復号されることが可能である(CDMA復号)。C/Aコードは周知であるが、いつ信号が乗算されるべきであるかの正確なタイミングは未知であり、それはユーザー(例えばモバイルデバイス)の位置に依存する。C/Aコードは1ms毎に繰り返すので、この未知であるミリ秒の何分の1かの時間は、対応する衛星の符号位相を表す。
【0047】
[0050] もし障害物検出モジュール220が現時点における上空のSVの配置と精密な時間についての何らの知見も有していなければ、障害物検出モジュールは、可能性のあるあらゆるC/Aコード、ドップラー周波数シフト、及び/又は符号位相を検索することが可能である。
【0048】
[0051] 正確に言うと、sが、GPSハードウェア232のフロントエンドによって8MHzでサンプリングされた1msの生のGPS信号であると想定されたい。即ち、sは長さ8×1023=8184のベクトルである。衛星vが視認可能であるかどうか調べるために、障害物検出モジュール220は、衛星vに対応するC/AコードCvを用いて周波数及び符号位相空間内を検索することが可能である。そのようにするために、障害物検出モジュール220は、まずCvを可能性のあるドップラー周波数によって調整し、次いで上記ベクトルを巡回シフト(Cvの末尾からシフトアウトした値が再度先頭に挿入されることを意味する)して新たなCv(fi,k)を得ることが可能である。その後、障害物検出モジュール220は、Ji,k=sT×Cv(fi,k)を計算することが可能である。
【0049】
[0052] これは、周波数及びシフトされたテンプレートに対して生の信号がどのくらい相関しているかの指標である。
【0050】
[0053] 図4は、モバイルデバイスがデフォルトの周期的設定に従って利用可能な(例えば頭上の)GPS衛星210(1)−210(6)から信号を受信しようと再び試みるまでのしばらくの間、ユーザー104がA通りを東へ進んだ後続の時点を示す。このインスタンスでは、モバイルデバイスはGPS衛星210(1)−210(5)から信号を取得するが、6番目の衛星の信号は、信号品質が品質閾値(例えば、上で導入された、動的に定義された閾値又は予め定義された閾値)より下がるような程度にまで障害物(例えば建築物106)によってブロックされて、利用されない。しかしながら、モバイルデバイスはその位置を、障害物に遮られていない5個の衛星を用いて精度良く決定することが可能である。
【0051】
[0054] モバイルデバイスはまた、(図4に示されている)この位置を図3の前回位置と比較して、ユーザーが所与の経路に沿ってA通りを東へ進んでいると判定することが可能である。更にまた、モバイルデバイスは、遮られた衛星を活用して、障害物が存在すること、並びにその障害物の相対方向及び/又は相対位置を推測することが可能である。エフェメリスデータは6個の衛星が存在することとそれらの位置とを示す、ということを思い出されたい。この場合には、遮られている衛星は一番北の衛星である。モバイルデバイスは、障害物がユーザーの北にありそうだと推測することが可能である。更に、モバイルデバイスは、障害物の相対位置についてのこの情報を用いて、ユーザーの位置の精度を更に改善することが可能である。例えば、所与の幾何学的形状の障害物は、ユーザーがその障害物に近ければ近いほど、衛星信号をブロックする可能性がより高い傾向にある。
【0052】
[0055] 本シナリオでは、建築物106による衛星210(6)の障害物は、ユーザーが通りに対しその障害物と同じ側にいる可能性をより大きくする。この情報から、モバイルデバイスは、ユーザーがA通りの南側よりも北側にいる可能性が高いと判定することが可能である。更にまた、モバイルデバイスは、図3の受信されたGPS信号と図4の受信されたGPS信号との比較を利用して、様々な予測を行うことが可能である。例えば、モバイルデバイスは、図4の受信信号に対する図3の受信信号の比較を、ユーザーが障害物に接近しつつあることを示すものとして用いることが可能である。何故なら、以前利用可能な衛星(例えば衛星210(6))が現在は利用不可能であり、したがって障害物に遮られているようだからである。
【0053】
[0056] ユーザーが障害物に接近しつつあるので、モバイルデバイスは、更なるGPS衛星210からの信号が見失われるかもしれないと予測することが可能である。したがって、モバイルデバイスは、この情報に基づいて制御されることが可能である。例えば、モバイルデバイスは、5個のGPS衛星だけが障害物に遮られていないこと、及び、ユーザーが障害物の方へ進み続けるにつれて、GPS衛星の数が、正確な位置決定のために利用される要件である4を下回るかもしれないことを、認識することができる。したがって、モバイルデバイスは、正確な位置データができるだけ長い間(ユーザーの行程における潜在的にできるだけ遠くの地点まで)取得されるように、デフォルトの周期的設定よりも頻繁に衛星信号を受信し始めることができる。更に、モバイルフォンは、相対位置特定メカニズムを起動し始めることができる。これらの相対位置特定メカニズムは、最後の正確なGPSベースの位置に対する移動を決定することが可能である。例えば、相対位置特定メカニズムは、ユーザーが最後の正確なGPSベースの位置から直線的に進み続けているかどうか、立ち止ったかどうか、向きを変えたかどうか等を決定することが可能である。
【0054】
[0057] 半影領域の境界を決定するために、実装例のいくつかは、GPS信号捕捉の第1ステージを活用して、モバイルデバイスがGPS信号を見失おうとしているか否かを推定することが可能である。特に、いくつかの手法は、様々なGPS衛星から計算された相関結果の品質に依存することが可能である。
【0055】
[0058] モバイルデバイスは継続的及び/又は周期的に、GPS衛星信号を受信することが可能であり、またこの経路に沿った様々な地点において信号捕捉及び位相決定を実施することが可能である、ということを思い出されたい。個々の測定地点において、様々な量:デバイスに視認可能な衛星の数Ns、受信信号の信号強度Rs、各衛星の受信信号に対する相関ピークの品質Qs、が検査されることが可能である。
【0056】
[0059] 図に示されるように、GPSシステムによって完全に照らされているエリアでは通常、Ns≧Nmin個の衛星が視認可能であるだろう。これらの場所では、GPS機能が単独で、位置決定を与えることが可能であるだろう。
【0057】
[0060] やがてモバイルデバイスの軌跡が不感帯(例えば半影領域及び本影領域)の中へ経路に沿って移動するにつれて、ある地点Xuにおいて、視認可能な衛星の数は、位置決定をするには不十分である、より小さい数(Ns<Nmin)へ減少することがあり得る。この地点では、モバイルデバイスは、不感帯の本影領域内にある。やがてモバイルデバイスが不感帯の中へ深く運ばれるにつれて、視認可能な衛星の数はゼロ(Ns=0)まで下がることがあり得る。
【0058】
[0061] しかしながら、たとえNs≧Nminであっても、衛星から受信される信号の品質は様々な要因によって低下するかもしれない。よって位置決定の品質/精度は同様に低下するだろう。説明される手法のいくつかは、各衛星信号について得られた相関ピークの性質を検査することに依存する。上述されたように、各GPS信号は、対応するGPS衛星がブロックされているか否かを判定するために閾値と比較されることが可能である。いくつかの実装例は、信号ピークの忠実度を記述するのに係数Qsを利用することが可能である。例えば、Qsは、1番高いピークとそのピーク近傍の2番目に高い値との比によって計算されることが可能である。Qsはピークがどのくらい「鋭い」かを表すことが可能である。ピークが鋭ければ鋭いほど、信号はより良好にC/Aコードのテンプレートと相関することが多い。
【0059】
[0062] モバイルデバイス202が半影区域に入ると、視認可能な衛星と地上近傍障害物の角度に応じて、信号は弱くなり、ピークは拡大及び不鮮明化/平坦化してより不明瞭になる。したがって、Ns≧Nminである地点に沿って、忠実度係数が予め決定された閾値Qminと比較されることが可能である。Nmin個未満の衛星が鋭いピーク(Qs>Qmin)を示す地点は、不感帯の半影内部にあると考えられる。この手法は、不感帯の半影の近似的境界を識別する地点Xpを特定することが可能である。
【0060】
[0063] 視認可能な衛星の信号の相関品質を計算するために、モバイルデバイスは、位置計算モード―低エネルギー支援測位(LEAP:Low−Energy Assisted Positioning)として知られる技術―のように、衛星パケットを完全に復号する必要はない、ということを留意されたい。したがってそれはエネルギー効率の良い方法で達成されることが可能である。例えば、ある場合には、モバイルデバイスの受信機は、相関分析を実施するのに十分なデータを収集するために、2msの間オンにされるだけでよい。
【0061】
[0064] LEAPはエネルギー効率が良いため、半影のすぐ外側の軌跡における稠密な測定により、位置Xpの良好な近似が取得されることが可能である。この位置決定の精度は、この軌跡部分において高頻度のLEAP測定を用いることによって向上させることが可能である。LEAP手法はこれらの位置をリアルタイムで実際に計算することを必要としないので、LEAP測定の頻度は、デバイスのバッテリに対する悪影響なしに高いレベルで持続されることが可能である。
【0062】
[0065] 上で言及されたように、いくつかの実装例はクラウドソーシングの測定値を利用することが可能である。デバイスの軌跡に沿った様々な地点におけるNsと{Qs}のクラウドソーシング測定値は、これらの軌跡に対して地点Xpを近似的に特定するのに活用されることが可能である。次いで、増加するデータの集まりが、地図上に重ね合わされた半影不感帯の外縁の輪郭を徐々に改善するために用いられることが可能である。この処理の細部は、不感帯地図の最大の使用に依存する。例えば、屋内測位の目的のためのクラウドソーシングのビーコン観測のある応用は、許容し難いGPS測位の結果となるであろう全エリアの和集合を利用することが可能である。
【0063】
[0066] 本手法は、上述された観測のそれぞれの位置を決定する。LEAP法に関連してどこかで説明されるように、Ns≧Nminであり衛星信号がQs>Qminを有する部分では、位相の差分を観測の時間と共に記録することが、クラウドソーシングサービスで対応する位置のオフライン計算を実行するのに十分であるだろう。
【0064】
[0067] 図5は、ユーザーがA通りを東へ進み続けた後続のシナリオを示す。図3−4に関連する議論において上で言及されたように、モバイルデバイスは、GPS衛星210から信号を受信することを頻繁に、及び/又は連続的に試みることが可能である。図5では、障害物(建築物106)が今や最北の2つの衛星(210(5)及び210(6))からの信号をブロックしている。モバイルデバイスは、0個のブロックされた衛星から1個のブロックされた衛星へ、2個のブロックされた衛星へというこの進行を、ユーザーが障害物、そしてそれにより潜在的には本影領域に接近しつつあることを更に示すものとして解釈することが可能である。モバイルデバイスは、ユーザーがA通りの南側ではなく北側にいるという確信を更に高めることが可能である。何故なら、ブロックされたGPS衛星の両方がそちら(例えば北)側にあるからである。
【0065】
[0068] 上で言及されたように、図4−5で受信された(及び/又はブロックされた)GPS信号に基づいて、モバイルデバイスは、ユーザーの位置を精度良く決定するために、GPS衛星からGPS信号を受信することを頻繁に及び/又は連続的に試みることが可能である。障害物がいくつかの衛星のGPS信号をブロックしているが、ユーザーの位置を精度良く決定するのに十分な数のGPS信号が取得されることが可能なこの領域は、「半影領域」と呼ばれることができるということを思い出されたい。
【0066】
[0069] 上述されたように、モバイルデバイスは、例えば衛星信号をより頻繁に受信しようと試みることによって、及び/又は相対位置特定メカニズムなどの他の位置特定メカニズムを起動することによって、半影領域に入ることを説明するように制御されることが可能である。この変更した機能性により、図5においてモバイルデバイスは、障害物があまりに多くのGPS衛星をブロックする前の基本的に最後の見込み位置において、正確なGPSベースの位置を取得することが可能である。
【0067】
[0070] 図6は、GPS手法を通じてユーザーの位置を精度良く決定することが容易には可能でないほど多くのGPS衛星がブロックされた領域にユーザーが入った、後続のインスタンスを示す。図1に関連して上で言及されたように、この領域は「本影領域」と呼ばれることが可能である。この場合、モバイルデバイスは、モバイルデバイスを制御するための更なる予測を行うことが可能である。当該予測は、図1−4に関連して説明された受信GPS信号対期待GPS信号、及び/又は相対位置特定メカニズムからの情報に基づくことが可能である。例えば、モバイルデバイスは、障害物の大きさを示す地図データにアクセスすることが可能であるかもしれない。次いで、例えば、ユーザーが本影領域に入ると、デバイスはいつユーザーが本影領域を通り越しそうであるかを予測することが可能である。例えば、相対位置特定メカニズムは、ユーザーが本影領域に入って以来直線的に移動し続けたことを示すことが可能である。この情報並びにユーザーのスピード及び障害物の大きさについての情報を用いて、モバイルデバイスは、いつユーザーが本影領域を通り越すであろうかを予測することが可能である。
【0068】
[0071] モバイルデバイスは、当該予測された本影領域からの脱出までGPS信号の検知を制限することによって、電力消費を低減することができる。この予測は、追加の情報を受け取った時に修正されることが可能である。例えば、もしユーザーが方向を変化させ建築物の方へ向かったことを相対位置特定メカニズムが示すならば、モバイルコンピューティングデバイスは、ユーザーがその障害物に入ろうとしていると予測することができる。モバイルデバイスは、次いで、建築物の中に配置されているかもしれない無線アクセスポイントを検出しようと試みるなどの、異なる行動方針をとることができる。
【0069】
[0072] 本影領域の境界を決定するための一手法は、相対位置デッドレコニングの使用に基づくことが可能である。例えば、そのような相対位置デッドレコニングは、携帯電話ハードウェア234、Wi−Fiハードウェア236、ジャイロスコープ238、加速度計240、及び磁力計242、及び/又は他の相対位置特定メカニズムによって達成されることが可能である。
【0070】
[0073] まず、ユーザーが地点Xpから不感帯の内部へ軌跡Pに沿って進む際、視認可能な衛星の数は最初はNs≧Nminであるが、これらの衛星のうちの1又は複数に対してはQ<Qsの値である。最終的に地点Xuにおいて、視認可能な衛星の数はNminを下回り、このことが本影の縁を特定する。XpからXuへ向かう軌跡に沿って、Xuの位置から始まる相対位置は、MEMSベースのデッドレコニングを用いることによって決定されることが可能である。
【0071】
[0074] このような方法で地点Xuが特定され、その位置が、Xpの位置とデッドレコニング手法により決定される漸進的な位置変化とを用いて計算される。これらの様々な地点Xをクラウドソーシングすることによって、不感帯の本影領域の外縁の近似的な輪郭を徐々に改善し、それを地図上に重ね合わせることが可能である。
【0072】
[0075] 要約すると、GPS及び他の衛星方式のナビゲーションシステムは、軌道上の複数の衛星からの信号の飛行時間を用いて地上の位置を三角測量する。開けた場所では、たくさんの衛星が視認可能であるかもしれないが、少なくとも4個が現在の技術では一般に必要とされる。建築物に隣接した歩道上のような障害物に遮られた場所では、より少ない衛星が視認可能であるかもしれない。上空の各衛星の期待位置を示すエフェメリス情報も利用可能である。もし衛星が上空におけるその位置に基づき潜在的には視認可能であるが、遮蔽している建築物のために隠れて見えないなら、本実装例は、少なくとも4個の衛星が近似的な位置特定のために視認可能である限り、建築物又は通りの人がいる側を、どの衛星が視認可能であるかに基づいて決定することが可能である。
【0073】
[0076] いくつかの実装例は、推測の精度を更に改善するために、特に都市エリアの高層建築に起因するマルチパス効果に対抗するために、2つの手法を利用することが可能である。第1に、これらの実装例は、視認可能な衛星の組の変化を検査することが可能である。例えば、通りの一方側において視認可能であると想定されるいくつかの衛星の消失は、モバイルデバイスが他方側へ移動した(例えばユーザーが通りを渡った)ことを示唆することが可能である。第2に、本実装例は、側(side)の情報を地図サービス及び/又は位置特定サービスに供給することによって、側の推測を反復的に改善することが可能である。側の情報は位置推定においてより高い分解能を可能にすることが多く、この高い分解能はその後、新たな側の推測を導出するのに用いられることが可能である。
【0074】
[0077] Wi−Fi AP情報が通りの両側の建築物に対して利用可能である場合、いくつかの実装例は、側の推測の精度を改善するために、通りの異なる側でモバイルデバイスに視認可能なAPを更に活用することが可能である。視認可能なAPの組は、視認可能な衛星の組と同様の方法で用いられることが可能である。
【0075】
[0078] 別の言い方をすれば、解決策は、Wi−Fi APを用いて、又は用いずに実現されることが可能である。Wi−Fi AP情報がない場合、いくつかの解決策は、GPS信号が取得され又は見失われる場合はGPS信号と、対応するGPS衛星の一般に利用可能な天体暦情報とに依存することが可能である。ひとたび位置特定サービスが通りのレベルでの現在位置の推定を提供することができると、本解決策は、その通りの区域に対する都市峡谷の構造を構築することが可能である。この構築は、その通りにある建築物についての地図サービスからの情報によって補助されることが可能である。いくつかの実装例では、当該構築はまた、通りの両側に比較的高い建築物があるということを単に想定することも可能であり、それはほとんどの都市エリアに当てはまる。その時点におけるGPS衛星の天体暦情報を用いて、本解決策は、推定位置の通りの一方側において最も視認可能であると考えられる衛星の組と、その通りの他方側に対する衛星の別の組とを導出することが可能である。これらの2つの組を、同一時点において信号が実際に取得された衛星の組と比較することによって、本解決策は、デバイスがその通りのどちら側にある可能性がより高いかを判定することが可能である。
【0076】
<更に詳細な例>
[0079] この議論は、障害物によりもたらされる半影及び本影領域を検出するための詳細な例を提供する。これらの手法は、障害物検出モジュール220(図2)又は他のコンポーネントによって実施されることが可能である。これらの領域の一方又は両方の検出は、モバイルデバイスに関する予測が例えば予測モジュール222(図2)によってなされることを可能にすることができる。モバイルデバイスは、次いで、検出された領域及び/又は予測に基づいて制御されることが可能である。
【0077】
[0080] 図7は、本概念の少なくともいくつかの実装例に合致した方法又は手法700のフローチャートを示す。方法700はいくつかの場合には反復方法であってよく、したがって、特定のブロックが最初に論じられるが何ら固定的順序は意図されていない、ということを留意されたい。この特定の方法は、7個のブロック702、704、706、708、710、712、及び714、並びにGPSハードウェア232を含む。
【0078】
[0081] ブロック702において、本方法は、モバイルデバイスに関連する最新の正確な位置情報を取得することが可能である。多くの実装例では、最新の正確な位置情報は、十分なGPS信号が4個以上のGPS衛星から受信された時に取得される。あるいはまた、最新の正確な位置情報は、GPS手法と、特にWi−Fi、携帯電話ID手法との組み合わせを用いることができる。
【0079】
[0082] ブロック704において、本方法は、GPS衛星のエフェメリスデータをGPSハードウェア232から、及び/又はインターネットを介してNASAから取得することが可能である。
【0080】
[0083] ブロック706において、本方法は、ブロック702及び704から受け取られた入力に基づいて示された視認可能なGPS衛星を識別することが可能である。
【0081】
[0084] ブロック708において、どのGPS衛星が実際に視認可能である(例えば障害物に遮られていない)かを判定するために、GPSハードウェア232からのGPS信号が評価されることが可能である。ある場合には、GPS信号が障害物に遮られているか否かを判定するために、受信されたGPS信号が、予め定義された閾値と比較されることが可能である。
【0082】
[0085] ブロック710において、可能性のある障害物の方向を決定するためにブロック706及び708からの入力が利用されることが可能である。例えば、期待されるGPS信号が、受信されたGPS信号と比較されることが可能である。見失った又は品質が低下したGPS信号に対応するGPS衛星の位置は、エフェメリスデータから決定されることが可能である。
【0083】
[0086] ブロック712において、最新の正確な位置に近接している障害物を識別するために、ブロック702の出力が3D地図サービスに適用されることが可能である。
【0084】
[0087] ブロック714において、モバイルデバイスに対する障害物の位置を決定するための入力をブロック710及び712が提供することが可能である。モバイルデバイスは次いで、モバイルデバイス上の資源を節約する、及び/又は有益な位置情報をユーザーに提供する、などの様々な目的を達成するように障害物の相対位置に基づいて制御されることが可能である。
【0085】
[0088] 図8は、本概念の少なくともいくつかの実装例に合致した方法又は手法800のフローチャートを示す。
【0086】
[0089] ブロック802において、本方法は、最新の正確なGPS測定値に基づいてモバイルデバイスの位置を近似することが可能である。
【0087】
[0090] ブロック804において、本方法は、最新の正確なGPS測定値とエフェメリス情報に基づいて、モバイルデバイスに対して見通し線上にあるはずのGPS衛星の組から、期待されるGPSデータを識別することが可能である。例えば、モバイルデバイスの位置と、当該位置の上方にその時点でどのGPS衛星があるかを指定するエフェメリスデータとに基づいて、頭上の衛星の組が決定されることが可能である。エフェメリス位置は、GPS衛星自体から、又はNASAや別のエンティティによって維持されることができるようなデータベースから、取得されることが可能である。
【0088】
[0091] ブロック806において、本方法は、受信されたGPSデータと期待されるGPSデータとの差を検出することが可能である。いくつかの場合、受信されたGPSデータは、期待されるGPSデータ(例えば信号強度)の割合を表す予め定義された閾値と比較されることが可能である。例えば、閾値は期待される信号強度の(例えば)60パーセントに定義されることができ、それにより、当該閾値を下回る受信されたGPS信号はブロックされたとみなされる。いくつかの場合、検出された差は、モバイルデバイスが地理的構造によって作られた半影/本影領域にあることの指標として用いられることが可能である。GPS信号強度に代えて、又は加えて、いくつかの実装例は、障害物の存在に対する指標として信号形状を利用することが可能である。例えば、いくつかの例では、GPS信号はモバイルデバイスに近接している1又は複数の障害物から跳ね返ることが可能であり、それによって、受信されたGPS信号は、ひとつの大きなピークではなくいくつかの小さなピークを含むことがある。したがって、受信されたGPS信号の形状もまた、障害物の存在を示すことが可能である。要約すると、受信されたGPS信号(又はその欠如)は、障害物の存在を示すことが可能である。利用可能なGPS衛星の1又は複数からの受信されたGPS信号の数の偏移、及び/又は、受信されたGPS信号の強度及び/又は形状は、障害物の存在を示すことが可能である。
【0089】
[0092] ブロック808において、本方法は、差の原因となっている、モバイルデバイスに近接した地理的構造(例えば障害物)を認識することが可能である。上で言及されたように、モバイルデバイスに対する地理的構造の位置は、どのGPS衛星がブロックされどれがブロックされていないかによって決定されることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、モバイルデバイスの位置に近接している地理的構造の存在を示す3D地図などのリソースが、アクセスされることが可能である。
【0090】
[0093] ブロック810において、本方法は、その後の時間における当該地理的構造のモバイルデバイスに対する影響を予測することが可能である。予測は、モバイルデバイスの経路及び/又はその経路からのずれに基づくことが可能である。ずれは、スピードの変化、方向の変化、建築物の外側から内側へ入ること等であり得る。予測はまた、障害物に遮られている衛星の動きを考慮することも可能である。例えば、衛星は、障害物の「背後を」移動している場合があり、又は障害物の「背後から外へ」移動している場合がある。後者の場合、たとえモバイルデバイスが静止したままでいたとしても、受信されたGPS信号は段々強くなっていくだろう。
【0091】
[0094] ブロック812において、本方法は、予測された影響に少なくとも部分的に基づいて、モバイルデバイスの機能を制御することが可能である。例えば、相対位置特定メカニズムが起動されることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、更なるGPS信号の検知が、予め定義されたデフォルト設定と比較してより高い頻度で取得され、又は遅らせることが可能である。例えば、モバイルデバイスは、本影領域に入るのに先立って更なるGPS信号を取得しようと試みることが可能である。反対に、ひとたび本影領域に入ったら、予測された本影領域からのモバイルデバイスの脱出まで、更なる試みは遅らせることができる。
【0092】
[0095] 図9は、本概念の少なくともいくつかの実装例に合致した別の方法又は手法900のフローチャートを示す。
【0093】
[0096] ブロック902において、本方法は、モバイルデバイスの見通し線上にあると期待されるGNSS衛星を識別することが可能である。いくつかの場合、識別は、エフェメリス情報のデータベースにアクセスすることによって達成されることが可能である。他の場合、識別は、エフェメリス情報を直接GNSS衛星から取得することによって達成されることが可能である。
【0094】
[0097] ブロック904において、本方法は、受信されたGNSSデータ信号と期待されるGNSS衛星からの期待されるGNSSデータ信号との差を検出することが可能である。いくつかの場合、その差は、個々のGNSS衛星から受信されたGNSSデータの信号強度を用いて検出される。個々のGNSS衛星から受信されたGNSSデータの信号強度が予め定義された閾値を下回る場合、当該個々のGNSS衛星は、障害物によってブロックされているとみなされることが可能である。この処理は、エフェメリス情報により示される利用可能な各GNSS衛星について繰り返されることが可能である。
【0095】
[0098] ブロック906において、本方法は、検出された差の少なくともいくつかを生じさせている障害物のモバイルデバイスからの方向を決定することが可能である。障害物の方向(及び/又は障害物についての他の情報)は、モバイルデバイスに対する当該障害物の将来の影響を予測するのに用いられることが可能である。次いで、予測された将来の影響に少なくとも部分的に基づいて、モバイルデバイスの機能性が制御されることが可能である。例えば、モバイルデバイスは、最新の正確なGNSSベースの位置からの自己の動きを追跡することが可能である。次いで、モバイルデバイスは、様々なWi−Fiネットワーク、携帯電話ネットワーク等にアクセスするなどの、適切な行動をとることが可能である。
【0096】
[0099] 上記方法が説明された順序は限定として解されるようには意図されておらず、説明された任意の数のブロックが、本方法又は代替方法を実現するのに任意の順序で結合されることが可能である。その上、本方法は、コンピューティングデバイスが本方法(例えばコンピューター実装方法)を実装することができるような、任意の適切なハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせにより実現されることが可能である。ある場合には、本方法は、コンピューティングデバイスによる実行が当該コンピューティングデバイスに本方法を実施させるような命令のセットとして、コンピューター可読記憶媒体上に格納される。
【0097】
<結び>
[0100] 位置認識の実装例に相応しい手法、方法、デバイス、システム等が構造的な特徴及び/又は方法論的行為に特有の言い回しで説明されているが、添付された特許請求の範囲において定義される主題は必ずしも説明された特有の特徴又は行為に限定されるものではない、ということは理解されなければならない。それどころか、当該特有の特徴及び行為は、特許請求の範囲に記載された方法、デバイス、システム等を具体化する例示的な形として開示されているのである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9