(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
以下に詳細に記述する目的で、本発明は、反対の内容が明らかに示されている場合を除き、様々な代替の変形例および工程順序を想定することができると理解される。さらに、任意の操作実施例に記載されているもの以外、または他に指示されている場合、例えば本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量を表す全ての数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されることが理解される。したがって、反対の内容が示されない限り、以下の明細書および添付される特許請求の範囲に記述される数値パラメーターは、本発明によって得られる所望の性質に応じて変化してもよい近似値である。最低でも、特許請求の範囲に対する均等物の教義の適用を限定しようとするものではなく、各数値パラメーターは、報告された有効桁の数に照らしてかつ通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0020】
本発明の広い範囲を記述する数値範囲およびパラメーターが近似値であるにも関わらず、特定の実施例で記述される数値は可能な限り正確であるものとして報告される。しかし任意の数値は、本来、そのそれぞれの試験測定で見出される標準偏差から必然的に得られるある誤差を含有する。
【0021】
また、本明細書で列挙される任意の数値範囲は、そこに包含される全ての部分範囲を含むものと理解すべきである。例えば、「1から10」の範囲は、示された最小値1から示された最大値10までの間(かつそれらの値を含む)、即ち1に等しくまたはそれよりも大きい最小値と10に等しくまたはそれ未満の最大値を有する、全ての部分範囲を含むものとする。
【0022】
本出願において、他に特に指示しない限り、単数形の使用は複数形を含みかつ複数形は単数形を包含する。さらに本出願では、「または」の使用は、「および/または」がある特定の場合に明らかに使用され得る場合であっても、他に特に指示しない限り「および/または」を意味する。
【0023】
本出願において、「オフシフト」という用語は、前処理組成物で被覆される物品が前処理浴内にはないことを意味し、前処理浴がプロセスラインから必ずしも除去されることを意味しない。
【0024】
本出願では、「全鉄」または「全Fe」という用語は、第二(Fe
+2)鉄および第一(Fe
+3)鉄を含むがこれらに限定されない前処理浴内の鉄の全量を意味する。
【0025】
本出願では、反対の内容を特に示さない限り、前処理組成物が特定の成分を「実質的に含まない」と記述する場合には、検討されている材料が、たとえあったとしても付随的な不純物として組成物中に存在することを意味する。言い換えれば、材料は意図される組成物成分の一部として不純物として持ち越されるので、組成物に意図的に添加されず、少ないまたは取るに足らないレベルで存在し得る。さらに、前処理組成物が特定の成分を「完全に含まない」と記述される場合、検討されている材料は組成物中に全く存在しないことを意味する。
【0026】
前述のように、本発明のある実施形態は、
鉄金属基板を処理するための方法を対象とする。本発明で使用するのに適切な
鉄金属基板には、自動車の車体、自動車の部品、およびその他の物品、例えば小さい金属部品であって、固定具、即ちナット、ボルト、ねじ、ピン、釘、クリップ、およびボタンを含めたものの組立てでしばしば使用されるものが含まれる。適切な
鉄金属基板の特定の例には、冷間圧延鋼、熱間圧延鋼、亜鉛金属で被覆された鋼、亜鉛化合物、または亜鉛合金、例えば電気亜鉛めっき鋼、熱浸漬亜鉛めっき鋼、ガルバニール鋼、および亜鉛合金でめっきされた鋼が含まれるが、これらに限定するものではない。さらに、本発明の方法により処理される
鉄基板は、その他の方法で処理されるかつ/またはその表面の残りの部分が被覆される、基板の縁端であってもよい。本発明の方法によって被覆される金属
鉄基板は、例えば金属板または製作部品の形をとってもよい。
【0027】
本発明の方法により処理される
鉄基板は、最初に、油、汚れ、またはその他の異物が除去されるように清浄化されてもよい。これはしばしば、市販されており金属前処理プロセスで従来から使用されているような、弱または強アルカリ性清浄剤を用いることによって行われる。本発明で使用するのに適切なアルカリ性清浄剤の例には、そのそれぞれがPPG Industries,Inc.から市販されているChemkleen(商標)163、177、611L、および490MXが含まれる。
【0028】
既に示したように、本発明のある実施形態は、金属基板と、IIIBおよび/またはIVB族金属を含む前処理組成物とを接触させる工程を含む、金属基板を処理するための方法を対象とする。本明細書で使用される「前処理組成物」という用語は、基板に接触すると、基板表面と反応し化学的に変化させ、その表面に結合して保護層を形成する組成物を指す。
【0029】
しばしば前処理組成物は、担体、しばしば水性媒体を含み、したがって組成物は、IIIBおよび/またはIVB族金属化合物を担体に加えた溶液または分散体の形をとってもよい。これらの実施形態では、溶液または分散体は、浸漬または含浸、噴霧、断続的な噴霧、浸漬後の噴霧、噴霧後の浸漬、ブラッシング、またはロール塗布などの、様々な公知の技法のいずれかによって基板に接触させてもよい。ある実施形態では、金属基板に付着させるときの溶液または分散体は、50から150°F(10から65℃)に及ぶ温度である。接触時間は、しばしば2秒から5分であり、例えば30秒から2分である。
【0030】
本明細書で使用される「IIIBおよび/またはIVB族金属」という用語は、例えばthe Handbook of Chemistry and Physics、第63版(1983年)に示されるような、CAS元素周期表のIIIB族またはIVB族の元素を指す。利用可能な場合、金属そのものを使用してもよい。ある実施形態では、IIIBおよび/またはIVB族金属化合物が使用される。本明細書で使用される「IIIBおよび/またはIVB族金属化合物」という用語は、CAS元素周期表のIIIB族またはIVB族の少なくとも1種の元素を含む化合物を指す。
【0031】
ある実施形態では、前処理組成物で使用されるIIIBおよび/またはIVB族金属化合物は、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、またはこれらの混合物の化合物であってもよい。ジルコニウムの適切な化合物には、ヘキサフルオロジルコン酸、そのアルカリ金属およびアンモニウム塩、炭酸アンモニウムジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、カルボン酸ジルコニウム、およびヒドロキシカルボン酸ジルコニウム、例えばヒドロフルオロジルコン酸、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、グリコール酸アンモニウムジルコニウム、乳酸アンモニウムジルコニウム、クエン酸アンモニウムジルコニウム、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。チタンの適切な化合物には、フルオロチタン酸およびその塩が含まれるが、これらに限定するものではない。ハフニウムの適切な化合物には、硝酸ハフニウムが含まれるが、これに限定するものではない。
【0032】
ある実施形態では、IIIBおよび/またはIVB族金属化合物は、少なくとも10ppmの金属、例えば少なくとも20ppmの金属、少なくとも30ppmの金属量で、またはある場合には少なくとも50ppmの金属量で(元素金属として測定される)、前処理組成物の浴内に存在する。ある実施形態では、IIIBおよび/またはIVB族金属化合物は、500ppm以下の金属、例えば150ppm以下の金属量で、またはある場合には80ppm以下の金属量で(元素金属として測定される)、前処理組成物の浴内に存在する。前処理組成物中のIIIBおよび/またはIVB族金属の量は、示された値の任意の組合せの間であって示された値も含めた範囲に及ぶことができる。
【0033】
既に示したように、本発明の方法のある実施形態で使用される前処理組成物は、リン酸イオンを含む。ある実施形態では、リン酸イオンの供給源がリン酸であり、例えば75%リン酸であるが、リン酸イオンのその他の供給源が本発明では考えられ、例えばリン酸一ナトリウムまたはリン酸二ナトリウムなどがある。あるその他の実施形態では、本発明の方法の前処理組成物は、リン酸イオンを実質的に含まない。
【0034】
既に述べたように、本発明の方法のある実施形態では、リン酸イオンが、浴内での不溶性の錆の形成を本質的に防止するのに十分な量で、前処理組成物の浴内に維持される。本明細書で使用される「維持される」という用語は、リン酸イオンの量が、不溶性の錆の形成を本質的に防止するために規制されかつ必要に応じて調節されることを意味する。本明細書で使用される「不溶性の錆の形成を本質的に防止する」という文言は、不溶性の錆、即ち水和酸化鉄(III)(Fe
2O
3・nH
2O)および/または水酸化酸化鉄(III)(FeO(OH))を含むがこれらに限定されないものが、浴内でのそのような化合物の形成を示すオレンジまたは赤褐色の外観が裸眼で見えなくなる程度まで、浴内で形成されるのを防止することを意味する。むしろ本発明のある実施形態では、リン酸イオンは、浴内でリン酸鉄(III)(FePO
4)が形成されるように処理されている
鉄金属基板の表面からエッチングされた可溶性の鉄と錯体を形成するのに十分な量で、浴内で維持され、その結果、錆の存在に関連したオレンジまたは赤褐色の外観ではなく白っぽい外観を有する浴が得られ、従来の濾過設備を使用して浴から除去することができる不溶性スラッジが形成される。したがって、本発明のある実施形態は、基板上に堆積される可能性がありかつ下流の噴霧ノズル、ポンプ、リンス浴、および有機コーティングを堆積させるための電気被覆浴などの後続の加工設備に送られる可能性のある、不溶性の錆になるのに利用可能な浴内の第二鉄(Fe
+3)の量(
鉄金属基板から)を制限する。既に述べたように、そのような交差汚染は、後で堆積されるコーティングの性能に有害な影響を及ぼす可能性がある。
【0035】
本発明の方法のある実施形態では、リン酸イオンもまた、
鉄金属基板上に、少なくとも10mg/m
2、例えば少なくとも100mg/m
2、またはある場合には100から500mg/m
2の被覆率(全被膜重量)を有するIIIBまたはIVB族金属被膜の堆積を防止するのに不十分な量で、前処理組成物の浴内に維持される。特に、本発明で使用される浴のpHでは、望み通りにリン酸鉄が形成されるように
鉄金属基板からエッチングされた可溶性の鉄と錯体を形成するリン酸イオンと、
鉄金属基板上での十分なIIIBまたはIVB族金属被膜の堆積を防止すると考えられるために望ましくない、浴内に存在するIIIBまたはIVB族金属と錯体を形成するリン酸イオンとの間に、微妙なバランスがあることが発見された。
【0036】
組成物中の第二鉄(Fe
+3)イオン1重量部ごとに、1から1.8、例えば1.2から1.6重量部のリン酸イオンが存在することにより、上述のように不溶性の錆の形成を本質的に防止するのに十分であるが、
鉄金属基板上の被覆率が少なくとも100mg/m
2、例えば少なくとも10mg/m
2であるIIIBまたはIVB族金属被膜の堆積を防止するには不十分であることが発見された。その結果、本発明の方法のある実施形態では、リン酸イオンが浴内で、リン酸イオンと第二鉄イオンとの重量比が1から1.8:1、ある場合には1.2から1.6:1をもたらすレベルで維持される。リン酸イオンと第二鉄イオンとの重量比が1:1未満である場合、上述のような浴内での不溶性の錆の形成を本質的に防止するために、浴内には非常に少ないリン酸塩が存在し得る。リン酸イオンと第二鉄イオンとの重量比が1.8:1よりも大きい場合、リン酸イオンの量は、
鉄金属基板上の十分なIIIBまたはIVB族金属被膜の堆積を防止するのに十分であってもよい。前処理組成物中のリン酸イオンと第二鉄イオンとの比は、列挙された値の任意の組合せであってそれらの列挙された値も含めた任意の組合せの間に及ぶことができる。
【0037】
さらに、本発明の方法のある実施形態では、リン酸イオンは、浴内のIIIBおよび/またはIVB族金属とリン酸イオンとの重量比が少なくとも50:1、ある場合には少なくとも25:1、ある場合には少なくとも12.5:1、ある場合には少なくとも3:1、ある場合には少なくとも2:1をもたらすレベルで浴内に維持される。IIIBおよび/またはIVB族金属とリン酸イオンとの重量比が2:1未満の場合、非常に多くのリン酸塩が浴内に存在する可能性があり、それによって、
鉄金属基板上での十分なIIIBまたはIVB族金属被膜を堆積する能力に悪影響を及ぼす。
【0038】
明らかなように、本発明の前処理組成物は、ある場合には20から500ppmのIIIBおよび/またはIVB族金属、例えば30から150ppm、またはある場合には30から80ppmのIIIBおよび/またはIVB族金属を含むという理由で、本発明の方法のある実施形態では、比較的少ないリン酸イオンが浴内にしばしば存在するが、それはリン酸イオンが、ある実施形態において浴内のIIIBおよび/またはIVB族金属とリン酸イオンとの重量比が少なくとも2:1、ある場合には少なくとも3:1をもたらすレベルで浴内に維持されることによる。その結果、ある実施形態では、そのような浴は、30ppm以下、例えば10から30ppmのリン酸イオンを含む。さらに、低レベルのリン酸イオンの存在は、ある実施形態では最長何カ月または何年まで、前処理浴での不溶性の錆の形成を防止することによって、例えば鉄を前処理浴から除去することによって、有用な浴の寿命に劇的な効果を発揮することを示している。
【0039】
上記で論じたように、IIIBまたはIVB族金属化合物をベースにした前処理組成物を用いて
鉄金属基板を加工する場合、前処理組成物の浴内の第二(Fe
+3)鉄の濃度は、より多くの鉄をベースにした金属が処理されるにつれて時間と共に増加する。結果は、そのような浴は、処理される基板上に堆積する可能性があり後続の加工工程に運ばれる、不溶性の錆を蓄積させることである。これを避けるには、そのような浴を、しばしば定期的に、ある場合には週当たり1回交換しなければならない。しかし前述の低レベルのリン酸塩は、浴を交換せずに数カ月間にわたり、おそらくは無期限に操作することができるよう、十分なIIIBおよび/またはIVB族金属被膜の形成を防止することなく不溶性の錆の形成を防止することができることを、驚くべきことにも発見した。そのような低レベルのリン酸塩が、有意な程度まで浴寿命を延ばすことができることは、驚くべきことでありかつ予期しなかった。さらに、そのような少量でのリン酸イオンの存在は、不溶性の錆の防止によって十分相殺される最小量のスラッジの形成をもたらし、その結果、廃棄物処分の問題は重大な関心事ではなくなった。
【0040】
ある実施形態では、前処理組成物は、陽電性金属も含む。本明細書で使用される「陽電性金属」という用語は、金属基板よりも高い陽電性の金属を指す。これは本発明の目的のために、「陽電性金属」という用語が、処理される金属基板の金属よりもそれほど容易に酸化しない金属を包含することを意味する。当業者に理解されるように、金属が酸化される傾向を酸化電位と呼び、ボルトを単位として表し、標準水素電極に対して測定されるが、これには酸化電位ゼロが任意に割り当てられる。いくつかの元素に関する酸化電位を以下の表に示す。元素は、以下の表において、比較される元素よりも大きい電圧値E
*を有する場合、別の元素よりもそれほど容易に酸化しない。
【化1】
【0041】
このように、明らかなように、本発明の場合のように金属基板が
鉄金属を含む場合、前処理組成物中に含むのに適切な陽電性金属には、例えばニッケル、スズ、銅、銀、および金、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0042】
ある実施形態では、前処理組成物中の陽電性金属の供給源は、水溶性金属塩である。本発明のある実施形態では、水溶性金属塩は水溶性銅化合物である。本発明で使用するのに適切な水溶性銅化合物の特定の例には、シアン化銅、シアン化銅カリウム、硫酸銅、硝酸銅、ピロリン酸銅、チオシアン化銅、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム銅四水和物、臭化銅、酸化銅、水酸化銅、塩化銅、フッ化銅、グルコン酸銅、クエン酸銅、ラウロイルサルコシン酸銅、ギ酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、フィチン酸銅、酒石酸銅、リンゴ酸銅、コハク酸銅、マロン酸銅、マレイン酸銅、安息香酸銅、サリチル酸銅、アスパラギン酸銅、グルタミン酸銅、フマル酸銅、グリセロリン酸銅、ナトリウム銅クロロフィリン、フルオロケイ酸銅、フルオロホウ酸銅、およびヨウ素酸銅、ならびに同族列のカルボン酸であるギ酸からデカン酸の銅塩、同族列の多塩基酸であるシュウ酸からスベリン酸の銅塩と、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、およびクエン酸を含めたヒドロキシカルボン酸の銅塩が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0043】
そのような水溶性銅化合物から供給された銅イオンが、硫酸銅、酸化銅などの形で不純物として沈澱する場合、銅イオンの沈澱を抑制し、したがって銅イオンを溶液中で銅錯体として安定化させる錯化剤を添加することが好ましいと考えられる。
【0044】
ある実施形態では、銅化合物は、それ独自で組成物中に安定に存在することができるK
3Cu(CN)
4またはCu−EDTAなどの銅錯体塩として添加されるが、それ独自では溶解するのが難しい化合物と錯化剤とを組み合わせることによって組成物中で安定に存在することができる銅錯体を形成することも可能である。その例には、CuCNとKCNとの組合せまたはCuSCNとKSCNもしくはKCNとの組合せによって形成されたシアン化銅錯体、およびCuSO
4とEDTA・2Naとの組合せによって形成されたCu−EDTA錯体が含まれる。
【0045】
錯化剤に関し、銅イオンと錯体を形成することができる化合物を使用することができ;その例には、トリポリリン酸ナトリウムおよびヘキサメタリン酸などのポリリン酸塩;エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、およびニトリロ三酢酸などのアミノカルボン酸;酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのヒドロキシカルボン酸、およびその塩;トリエタノールアミンなどのアミノアルコール;チオグリコール酸およびチオ尿素などの硫黄化合物と、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、およびヒドロキシエチリデンホスホン酸などのホスホン酸が含まれる。
【0046】
ある実施形態では、銅などの陽電性金属は、前処理組成物中に全金属の少なくとも1ppm、例えば少なくとも5ppm、またはある場合には少なくとも10ppmの量(元素金属として測定される)で含まれる。ある実施形態では、陽電性金属は、そのような前処理組成物に、全金属の500ppm以下、例えば100ppm以下、またはある場合には50ppm以下の量(元素金属として測定される)含まれる。前処理組成物中の陽電性金属の量は、列挙された値の任意の組合せであってその列挙された値も含めた組合せの間に及ぶことができる。
【0047】
示されるように、本発明の方法で使用される前処理組成物の作用pHは、4.0から5.5に、ある場合には4.0から5.0、4.5から5.5、またはさらにその他の場合には4.5から5.0に及ぶ。前処理組成物のpHは、例えば任意の酸または塩基を必要に応じて使用することにより調節してもよい。
【0048】
既に述べた成分に加え、本発明の方法で使用される前処理組成物は、様々な追加の任意選択の成分のいずれかを含んでいてもよい。例えば、ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第6,805,756号、第3欄第9行から第4欄第32行に記載されるようなポリヒドロキシ官能性環式化合物を含む。しかしその他の実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、任意のそのようなポリヒドロキシ官能性環式化合物を実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0049】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第6,805,756号、第4欄第52行から第5欄第13行と、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第6,193,815号、第4欄第62行から第5欄第39行に記載されるような酸化剤−促進剤を含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、任意のそのような酸化剤−促進剤を実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0050】
ある実施形態では、前処理組成物は米国特許第5,653,823号に開示されるような、アルカノールアミンと少なくとも2つのエポキシ基を含有するエポキシ官能性材料との反応生成物などの、有機被膜形成樹脂と;樹脂を調製する際の追加の反応物としてジメチロールプロピオン酸、フタルイミド、またはメルカプトグリセリンを使用することによって組み込まれる、βヒドロキシエステル、イミド、または硫化物官能基を含有する樹脂と;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(EPON 880としてShell Chemical Companyから販売されている)、ジメチロールプロピオン酸、およびジエタノールアミンが0.6から5.0:0.05から5.5:1のモル比にある反応生成物と;米国特許第3,912,548号および第5,328,525号に開示される水溶性および水分散性ポリアクリル酸と;米国特許第5,662,746号に記載されるフェノールホルムアルデヒド樹脂と;WO95/33869に開示されるような水溶性ポリアミドと;カナダ特許出願第2,087,352号に記載されるマレイン酸またはアクリル酸とアリルエーテルとのコポリマーと;米国特許第5,449,415号に論じられている、エポキシ樹脂、アミノプラスト、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、タンニン、およびポリビニルフェノールを含む水溶性および分散性樹脂とを含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、上記物質の1つまたは複数のような任意の有機被膜形成樹脂を実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0051】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第6,805,756号、第6欄第7〜23行に記載されるような、フッ化物イオンを含む。ある実施形態では、フッ化物イオンは、IIIBおよび/またはIVB族金属化合物によって組成物に導入される。ある実施形態では、前処理組成物は、IIIBおよび/またはIVB族金属化合物以外の供給源から前処理組成物に導入された任意のフッ化物イオンを実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0052】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第6,805,756号、第6欄第53〜64行および国際出願WO2005/001158、第3頁第17〜23行に記載されるような多糖を含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、任意のそのような多糖を実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0053】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、リン酸エステル、脂肪酸および/または硝酸の水溶性ポリエチレングリコールエステルであって、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第5,139,586号、第6欄第31〜63行に記載されているようなものを含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、リン酸エステル、脂肪酸および/または硝酸の水溶性ポリエチレングリコールエステルを、実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0054】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第4,992,115号、第2欄第47行から第3欄第29行と米国特許出願公開第2007/0068602号とに記載されているような、バナジウムおよび/またはセリウムイオンを含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、バナジウムおよび/またはセリウムイオンを実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0055】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第5,728,233号、第4欄第24〜37行に記載されているような、亜リン酸、次亜リン酸、および/またはその塩を含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、亜リン酸、次亜リン酸、および/またはその塩を実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0056】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第5,380,374号、第3欄第25〜33行に記載されているようなIIA族金属、および/または参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第5,441,580号、第2欄第66行から第3欄第4行に記載されているようなIA族金属を含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、任意のIIA族金属および/または任意のIA族金属を実質的に含まずまたはいくつかの場合には完全に含まない。
【0057】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、英国特許出願GB 2
259 920 Aに記載されているようなモリブデン化合物を含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、任意のモリブデン化合物を実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0058】
ある実施形態では、本発明の方法で使用される前処理組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第5,104,577号、第2欄第60行から第3欄第26行に記載されているような、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムからなる群から選択された金属の1種または複数のイオンを含む。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムからなる群から選択された金属の任意のイオンを実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0059】
前処理組成物は、前処理の分野で従来から使用されている非イオン性界面活性剤および助剤などのその他の材料を、任意選択で含有していてもよい。水性媒体中には、水分散性有機溶媒、例えば、メタノール、イソプロパノールなどの最大約8個の炭素原子を持つアルコール;またはエチレングリコール、ジエチレングリコール、もしくはプロピレングリコールなどのモノアルキルエーテルなどのグリコールエーテルが存在していてもよい。存在する場合の水分散性有機溶媒は、水性媒体の全体積に対して最大約10体積パーセントの量で、典型的には使用される。
【0060】
その他の任意選択の材料には、消泡剤または基板湿潤剤として機能する界面活性剤が含まれる。
【0061】
ある実施形態では、前処理組成物は、シリカ質充填剤などの充填剤も含む。適切な充填剤の非限定的な例には、シリカ、マイカ、モンモリロナイト、カオリナイト、アスベスト、タルク、珪藻土、バーミキュライト、天然および合成ゼオライト、セメント、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、ポリケイ酸アルミニウム、アルミナシリカゲル、およびガラス粒子が含まれる。シリカ質充填剤に加え、その他の微粒子状の実質的に水不溶性充填剤を用いてもよい。そのような任意選択の充填剤の例には、カーボンブラック、木炭、黒鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムが含まれる。対照的に、その他の実施形態では、前処理組成物は、任意のそのような充填剤を実質的に含まず、またはある場合には完全に含まない。
【0062】
ある実施形態では、前処理組成物は、クロム酸塩、および/またはリン酸亜鉛などの重金属リン酸塩を、実質的に含まずまたはある場合には完全に含まない。本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、前処理組成物中にクロム酸塩および/または重金属リン酸塩が存在しないことに関して使用される場合、これらの物質が環境に負荷を与えるような程度まで組成物中に存在しないことを意味する。本明細書で使用される「完全に含まない」という用語は、重金属リン酸塩および/またはクロム酸塩が存在しないことに関して使用される場合、重金属リン酸塩および/またはクロム酸塩が組成物中に全くないことを意味する。
【0063】
理解されるように、ある実施形態では、本発明の方法で利用される前処理組成物は、(a)ジルコニウム化合物などのIIIBおよび/またはIVB族金属化合物;(b)リン酸などのリン酸イオンの供給源;および(c)水から本質的になり、またはある場合にはそれからなる。あるその他の実施形態では、本発明の方法で利用される前処理組成物は、(a)ジルコニウム化合物などのIIIBおよび/またはIVB族金属化合物;および(c)水から本質的になり、またはある場合には上記のものからなる。ある実施形態では、そのような前処理組成物は、IIIBおよび/またはIVB族金属化合物を用いて前処理組成物に導入されたフッ化物イオンを含む。本明細書で使用される「〜から本質的になる」という文言は、組成物が、本発明の基本的および新規な特徴に著しく影響を及ぼし得る任意のその他の成分を含まないことを意味する。本発明の目的のため、これは、前処理組成物が、本発明の方法で首尾良く用いられる前処理組成物の能力に著しく影響を及ぼし得るいかなる成分も含まないことを意味する。
【0064】
ある実施形態では、前処理コーティング組成物の残りの被膜被覆率(全被膜重量)は、平方メートル当たり少なくとも10ミリグラム(mg/m
2)、例えば100から500mg/m
2、またはある場合には、少なくとも50mg/m
2である。前処理コーティングの厚さは変えることができるが一般に非常に薄く、しばしば1マイクロメートル未満の厚さを有し、ある場合には、1から500ナノメートルであり、さらにその他の場合には、10から300ナノメートル、例えば20から100ナノメートルである。
【0065】
ある実施形態では、オフシフト方法は、前処理浴から可溶性の鉄を除去してこの前処理浴がオフシフト方法の終了時に鉄を実質的に含まないようにし、それによって前処理組成物の作動中の浴内で不溶性の錆の形成が本質的に防止されるようにするのに使用される。本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、前処理組成物の作動中の浴内の鉄に関して使用される場合、全ての鉄が10ppm未満の量で存在することを意味する。本明細書で記述されるように、ある実施形態では、前処理組成物の浴は、例えば前処理浴内のリン酸塩の存在が基板上の前処理組成物の堆積に悪影響を及ぼし得る前処理システムにおけるように、浴が作動しているときにリン酸イオンを実質的に含まない。そのような実施形態では、前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法は、前処理浴内での不溶性の錆の形成を本質的に防止する方法として、リン酸イオンを実質的含まないような前処理システムで特に有用と考えられる。さらに、本明細書に記述されるように、あるその他の実施形態では、前処理組成物の浴は、前処理浴内での不溶性の錆の形成を本質的に防止する方法として、リン酸イオンを含む。そのような実施形態では、前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法は、前処理浴内での不溶性の錆の形成を本質的に防止する追加のまたは補足的な方法として特に有用と考えられる。
【0066】
既に示したように、ある実施形態では、前処理浴は、4.0よりも大きい作用pH、例えば4.2から5.5の間、好ましくは4.5から5.0の間、最も好ましくは4.8の作用pHを有する。ある実施形態では、前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法の第1の工程は、前処理浴のpHを少なくとも0.2、例えば少なくとも0.5、または少なくとも1.0低減させる工程を含み、例えば前処理浴のpHは、1.0から3.8の間に、好ましくは2.5から3.3の間に低減させる。ある実施形態では、前処理浴のpHは、前処理浴に酸を添加することによって低減させ、この酸には、非限定的な例として、IVB族フルオロ(fluro)金属酸、例えばヘキサフルオロジルコン酸およびヘキサフルオロチタン酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、およびこれらの混合物が含まれる。
【0067】
前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法のある実施形態では、前処理浴のpHを低減させる第1の工程は、上記で論じたように、pHを低減させるのに十分な量の酸を前処理浴に添加することによって実現される。
【0068】
前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法のある実施形態では、第2の工程は、リン酸イオンを前処理浴に添加する工程を含む。ある実施形態では、リン酸イオンの供給源は、例としてリン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、およびこれらの混合物を含む一水素型または二水素型のいずれかとして存在するアルカリ金属およびアンモニウムオルトリン酸塩であってもよい。ある実施形態では、Zircobond Additive P、即ちPPG Industries,Inc.、Euclid、Ohioから市販されているリン酸一ナトリウム溶液を、リン酸イオンの供給源として使用する。
【0069】
前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法のある実施形態では、第3の工程は、酸化剤を前処理浴に添加する工程を含む。そのような実施形態では、酸化剤が過酸化物化合物、空気、亜硝酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、およびこれらの混合物である。好ましい実施形態では、過酸化物化合物が過酸化水素である。
【0070】
前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法のある実施形態では、リン酸イオンの供給源および酸化剤がそれぞれ、鉄を実質的に含まない前処理浴をもたらすのに十分な量で添加される。
【0071】
前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法のある実施形態では、第4の工程は、前処理浴のpHを少なくとも0.2上昇させる工程を含む。実施形態では、pHは、4.0よりも高く、例えば4.2から5.2に、4.5から5.0に、および4.8に上昇させる。ある実施形態では、pHは、非限定的な例として苛性ソーダ、苛性カリ、および水酸化ナトリウムを含む十分な量のアルカリ性組成物を前処理浴に添加することによって上昇させる。実施形態において、アルカリ性組成物はChemfil Bufferであり、PPG Industries,Inc.、Euclid、Ohioから入手可能な商品を、所望の作用pHを実現するのに十分な量で使用することができる。
【0072】
本発明のオフシフト方法のある実施形態では、リン酸イオンは、浴内でリン酸鉄(III)(FePO
4)が形成されるように処理される
鉄金属基板の表面からエッチングされた可溶性の鉄と錯体を形成するのに十分な量で、前処理浴に添加され、その結果、錆の存在に伴うオレンジまたは赤褐色の外観ではなく白っぽい外観を有する浴が得られ、従来の濾過設備を使用して浴から除去することができる不溶性のスラッジが形成される。本発明のオフシフト方法のある実施形態では、第5の工程は、前処理浴から固体物質を、即ちリン酸鉄、酸化鉄、水酸化鉄、または任意のその他の不溶性フラッジであって前処理浴に形成されるものを除去するために、そのような従来の濾過設備を使用して前処理浴を濾過する工程を含む。ある実施形態では、濾過する工程は、前処理浴のpHを少なくとも0.2上昇させた直後であってもよい。あるその他の実施形態では、濾過する工程は、平衡期間、即ちこの期間の最中にこの不溶性スラッジが前処理浴の底部に沈降する平衡期間の後であってもよく、例えば前処理浴のpHを上昇させた1から10時間後であってもよい。
【0073】
したがって本発明のオフシフト方法は、基板上に堆積されかつ後続の加工設備、例えば下流の噴霧ノズル、ポンプ、リンス浴、および有機コーティングを堆積するための電気被覆浴に運ばれる可能性のある不溶性の錆になり得る、浴内の可溶性の鉄を、(
鉄金属基板から)除去する。既に示したように、そのような交差汚染は、そのような引き続き堆積されたコーティングの性能に有害な影響を及ぼす可能性がある。しかし驚くべきことに、前処理浴のpHを作用pHよりも低く低下させ、次いで前述の低レベルのリン酸塩および任意選択で酸化剤を添加することによって、浴内の鉄を本質的に除去することができ、それによって、浴のpHが作用レベルに上昇した後にかなりのIIIBおよび/またはIVB族金属被膜の形成を防止することなく前処理内での不溶性の錆の形成が防止され、その結果この浴は、数カ月間にわたり、おそらくは無期限に、交換することなく動作させることができることを発見した。そのような工程が、浴の寿命をそのような有意な程度にまで延ばすことができたことは、驚くべきことであり予期しなかった。
【0074】
前処理溶液に接触させた後、基板を水でリンス処理し乾燥してもよい。
【0075】
本発明の方法のある実施形態では、基板を前処理組成物に接触させた後、次いで被膜形成樹脂を含むコーティング組成物に接触させる。基板とそのようなコーティング組成物とを接触させる任意の適切な技法、例えばブラッシング、浸漬、流し塗り、および噴霧などを含めた技法を使用してもよい。しかしある実施形態では、以下に、より詳細に記述するように、そのような接触は、電着性組成物が電着によって金属基板上に堆積される電気被覆工程を含む。
【0076】
本明細書で使用される「被膜形成樹脂」という用語は、組成物中に存在するいかなる希釈剤もしくは担体も除去した後に、または周囲温度もしくは高温で硬化した後に、基板の少なくとも水平面上に自立連続被膜を形成することができる樹脂を指す。使用されてもよい従来の被膜形成樹脂には、とりわけ自動車用OEMコーティング組成物、自動車用塗り換えコーティング組成物、工業用コーティング組成物、建築用コーティング組成物、コイルコーティング組成物、および航空宇宙用コーティング組成物に典型的に使用されるものが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0077】
ある実施形態では、コーティング組成物は、熱硬化性被膜形成樹脂を含む。本明細書で使用される「熱硬化性」という用語は、硬化または架橋後に不可逆的に「硬化し」、ポリマー成分のポリマー鎖が共有結合によって一緒に接合する樹脂を指す。この性質は通常、例えば熱または放射線によってしばしば誘発される組成物の構成成分の架橋反応に関連する。硬化または架橋反応は、周囲条件下で実施されてもよい。硬化または架橋した後、熱硬化性樹脂は、熱を加えることによって融解しなくなり、溶媒に不溶である。その他の実施形態では、コーティング組成物は熱可塑性被膜形成樹脂を含む。本明細書で使用される「熱可塑性」という用語は、共有結合によって接合しないポリマー成分を含み、それによって熱を加えることで液体流動することができかつ溶媒に可溶な樹脂を指す。
【0078】
既に示したように、ある実施形態では、電着性組成物が電着によって金属基板上に堆積される電気被覆工程によって、基板と、被膜形成樹脂を含むコーティング組成物とを接触させる。電着プロセスでは、電極として働く処理される金属基板と、電気伝導性の対電極とを、イオン性の電着性組成物に接触させて配置する。電極と対電極との間に、それらを電着性組成物に接触させた状態で電流を通すことにより、電着性組成物の接着被膜が、実質的に連続した状態で金属基板上に堆積されることになる。
【0079】
電着は通常、1ボルトから数千ボルトの範囲、典型的には50から500ボルトの定電圧で実施される。電流密度は通常、平方フィート当たり1.0アンペアから15アンペア(平方メートル当たり10.8から161.5アンペア)の間であり、電着プロセス中に素早く減少する傾向にあり、これは連続自己絶縁被膜が形成することを示す。
【0080】
本発明のある実施形態で利用される電着性組成物は、しばしば、水性媒体に分散された樹脂状相を含み、この樹脂状相は、(a)活性水素基含有イオン性電着性樹脂と、(b)(a)の活性水素基と反応する官能基を有する硬化剤とを含む。
【0081】
ある実施形態では、本発明のある実施形態で利用される電着性組成物は、主被膜形成ポリマーとして、活性水素含有イオン性の、しばしば陽イオン性の電着性樹脂を含有する。広く様々な電着性被膜形成樹脂が公知であり、本発明では、ポリマーが「水分散性」である限り、即ち水に可溶化され、分散され、または乳化されるように適合される限り、使用することができる。水分散性ポリマーは、その性質がイオン性であり、即ちポリマーは、負電荷を与えるために陰イオン性官能基を含有することになり、またはしばしば好まれるように、正電荷を与えるために陽イオン性官能基を含有することになる。
【0082】
陰イオン性電着性組成物で使用するのに適切な被膜形成樹脂の例は、塩基可溶化カルボン酸含有ポリマー、例えば、乾性油または半乾性脂肪酸エステルとジカルボン酸または無水物との反応生成物または付加物;脂肪酸エステル、不飽和酸または無水物、および任意の追加の不飽和変性材料であってさらにポリオールと反応させる、反応生成物である。不飽和カルボン酸のヒドロキシ−アルキルエステル、不飽和カルボン酸、および少なくとも1種のその他のエチレン系不飽和モノマーの、少なくとも部分的に中和されたインターポリマーも適切である。さらに別の適切な電着性被膜形成樹脂は、アルキド−アミノプラスト賦形剤、即ちアルキド樹脂およびアミン−アルデヒド樹脂を含有する賦形剤を含む。さらに別の陰イオン性電着性樹脂組成物は、参照によりその引用部分が本明細書に組み込まれる米国特許第3,749,657号、第9欄第1から75行および第10欄第1から13行に記載されているような、樹脂状ポリオールの混合エステルを含む。その他の酸官能性ポリマー、例えば当業者に公知のリン酸化ポリエポキシドまたはリン酸化アクリルポリマーも使用することができる。
【0083】
前述のように、活性水素含有イオン性電着性樹脂(a)は陽イオン性でありかつカソード上に堆積可能であることがしばしば望ましい。そのような陽イオン性被膜形成樹脂の例には、米国特許第3,663,389号;第3,984,299号;第3,947,338号;および第3,947,339号に記載されているような、ポリエポキシドと第一級または第二級アミンとの酸可溶化反応生成物などの、アミン塩基含有樹脂が含まれる。しばしば、これらのアミン塩基含有樹脂は、ブロックイソシアネート硬化剤と組み合わせて使用される。イソシアネートは、米国特許第3,984,299号に記載されるように完全にブロックすることができ、またはイソシアネートは、米国特許第3,947,338号に記載されるように部分的にブロックされかつ樹脂の主鎖と反応することができる。また、米国特許第4,134,866号およびDE−OS第2,707,405号に記載されている一成分組成物を、被膜形成樹脂として使用することもできる。エポキシ−アミン反応生成物の他に、被膜形成樹脂は、米国特許第3,455,806号および第3,928,157号に記載されているような陽イオン性アクリル樹脂から選択することもできる。
【0084】
アミン塩基含有樹脂の他に、米国特許第3,962,165号;第3,975,346号;および第4,001,101号に記載されている、有機ポリエポキシドと第3級アミン塩との反応から形成されたような、第4級アンモニウム塩基含有樹脂を用いることもできる。その他の陽イオン性樹脂の例は、3成分スルホニウム塩基含有樹脂および第4級ホスホニウム塩基含有樹脂であって、それぞれ米国特許第3,793,278号および第3,984,922号に記載されているようなものである。また、欧州出願第12463号に記載されているようなエステル交換を介して硬化する被膜形成樹脂を使用することもできる。さらに、米国特許第4,134,932号に記載されているようなMannich塩基から調製された陽イオン性組成物を使用することができる。
【0085】
ある実施形態では、電着性組成物中に存在する樹脂は、米国特許第3,663,389号;第3,947,339号;および第4,116,900号に記載されているような、第一級および/または第二級アミン基を含有する正に帯電している樹脂である。米国特許第3,947,339号において、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラアミンなどのポリアミンのポリケチミン誘導体を、ポリエポキシドと反応させる。反応生成物が酸で中和され水中に分散された場合、遊離第一級アミン基が発生する。また、ポリエポキシドがジエチレントリアミンやトリエチレンテトラアミンなどの過剰なポリアミンと反応した場合、均等な生成物も形成され、米国特許第3,663,389号および第4,116,900号に記載されるように、過剰なポリアミンは反応混合物から真空ストリッピングされる。
【0086】
ある実施形態では、活性水素含有イオン性電着性樹脂は、電着浴の全重量に対して1から60重量パーセントの量で、例えば5から25重量パーセントの量で電着性組成物中に存在する。
【0087】
示されるように、電着性組成物の樹脂状相はしばしば、イオン性電着性樹脂の活性水素基と反応するように適合された硬化剤をさらに含む。例えば、ブロック有機ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤の両方は本発明での使用に適切であるが、ブロックイソシアネートはしばしばカソード電着に好ましい。
【0088】
しばしば陰イオン性電着用の好ましい硬化剤であるアミノプラスト樹脂は、アミンまたはアミドとアルデヒドとの縮合生成物である。適切なアミンまたはアミドの例は、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、および類似の化合物である。一般に、用いられるアルデヒドはホルムアルデヒドであるが、生成物は、アセトアルデヒドやフルフラールなどのその他のアルデヒドから作製することができる。縮合生成物は、用いられる特定のアルデヒドに応じてメチロール基または類似のアルキロール基を含有する。しばしば、これらのメチロール基は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびn−ブタノールのような1から4個の炭素原子を含有する1価アルコールなどのアルコールとの反応によって、エーテル化される。アミノプラスト樹脂は、American Cyanamid Co.からCYMELという商標で、およびMonsanto Chemical Co.からRESIMENEという商標で市販されている。
【0089】
アミノプラスト硬化剤は、電着性組成物中の樹脂固形分の全重量に対して5重量パーセントから60重量パーセントに及ぶ量で、例えば20重量パーセントから40重量パーセントに及ぶ量で、活性水素含有陰イオン性電着性樹脂と併せてしばしば利用される。
【0090】
示されるように、ブロック有機ポリイソシアネートは、カソード電着組成物中の硬化剤としてしばしば使用される。ポリイソシアネートは、米国特許第3,984,299号、第1欄第1から68行、第2欄、および第3欄第1から15行に記載されるように完全にブロックすることができ、または米国特許第3,947,338号、第2欄第65から68行、第3欄、および第4欄第1から30行に記載されるように部分的にブロックされてポリマー主鎖と反応することができ、これらの文献の引用部分は参照により本明細書に組み込まれている。「ブロックされる」とは、イソシアネート基が化合物と反応し、得られたブロックイソシアネート基が活性水素に対して周囲温度では安定になるが通常は90℃から200℃の高温で被膜形成ポリマー中では活性水素と反応することを意味する。
【0091】
適切なポリイソシアネートには、脂環式ポリイソシアネートを含めた芳香族および脂肪族ポリイソシアネートが含まれ、代表的な例には、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,4−または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、これらの混合物を含めたもの、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとポリメチレンポリフェニルイソシアネートとの混合物が含まれる。トリイソシアネートなどの高級ポリイソシアネートを使用することができる。その例には、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートが含まれると考えられる。ネオペンチルグリコールおよびトリメチロールプロパンなどのポリオールを有し、ポリカプロラクトンジオールおよびトリオール(NCO/OHの当量比は1より大きい。)などのポリマーポリオールを有する、イソシアネート( )−プレポリマーを使用することもできる。
【0092】
ポリイソシアネート硬化剤は、電着性組成物の樹脂固形分の全重量に対して5重量パーセントから60重量パーセントに及ぶ量で、例えば20重量パーセントから50重量パーセントに及ぶ量で、活性水素含有陽イオン性電着性樹脂と併せて典型的には利用される。
【0093】
ある実施形態では、被膜形成樹脂を含むコーティング組成物は、イットリウムも含む。ある実施形態では、イットリウムは、全イットリウムの10から10,000ppm、例えば5,000ppm以下、ある場合には1,000ppm以下の量で(元素状イットリウムとして測定した)、そのような組成物中に存在する。
【0094】
可溶性および不溶性の両方のイットリウム化合物は、イットリウムの供給源として働いてもよい。鉛フリー電着性コーティング組成物で使用するのに適切なイットリウム供給源の例は、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、ギ酸イットリウム、炭酸イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、および硝酸イットリウムなどの、可溶性有機および無機イットリウム塩である。イットリウムが水溶液として電気被覆浴に添加される場合、硝酸イットリウム、容易に入手可能なイットリウム化合物が、好ましいイットリウム源である。電着性組成物で使用するのに適切なその他のイットリウム化合物は、酸化イットリウム、臭化イットリウム、水酸化イットリウム、モリブデン酸イットリウム、硫酸イットリウム、ケイ酸イットリウム、およびシュウ酸イットリウムなどの有機および無機イットリウム化合物である。有機イットリウム錯体およびイットリウム金属を使用することもできる。イットリウムが顔料ペーストの成分として電気被覆浴に組み込まれる場合、酸化イットリウムはしばしばイットリウムの好ましい供給源である。
【0095】
本明細書に記述される電着性組成物は、水性分散体の形をとる。「分散体」という用語は、樹脂が分散相内にあり水が連続相内にある2相の透明な、半透明な、または不透明な樹脂状系と考えられる。樹脂状相の平均粒度は、一般に1.0ミクロン未満、通常は0.5ミクロン未満、しばしば0.15ミクロン未満である。
【0096】
水性媒体中の樹脂状相の濃度は、水性分散体の全重量に対してしばしば少なくとも1重量パーセント、例えば2から60重量パーセントである。そのような組成物が樹脂濃縮物の形をとる場合、それらは一般に、水性分散体の重量に対して20から60重量パーセントの樹脂固形分含量を有する。
【0097】
本明細書に記述される電着性組成物は、2成分:(1)一般に活性水素含有イオン性電着性樹脂、即ち主被膜形成ポリマー、硬化剤、および任意の追加の水分散性非着色成分を含む透明樹脂供給材と;(2)1種または複数の着色剤(以下に記述する)、主被膜形成ポリマーと同じにすることができまたは異ならせることができる水分散性粉砕樹脂、および任意選択で湿潤または分散助剤などの添加剤を一般に含む顔料ペーストとして、しばしば供給される。
【0098】
ある実施形態では、2成分電着性組成物は、当業者に周知のように電着浴の形で具体化され、成分(1)および(2)は、水および通常は融合溶媒を含む水性媒体に分散される。本発明の方法の利点は、既に示したように、濾過設備がない場合であっても、そのような浴が錆で汚染されるのを防止できることである。
【0099】
前述のように、水の他にも、水性媒体は融合溶媒を含有してもよい。有用な融合溶媒は、しばしば炭化水素、アルコール、エステル、エーテル、およびケトンである。好ましい融合溶媒は、しばしばアルコール、ポリオール、およびケトンである。特定の融合溶媒は、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレンおよびプロピレングリコール、エチレングリコールのモノエチルモノブチルおよびモノヘキシルエーテルを含む。融合溶媒の量は、水性媒体の全重量に対して一般に0.01から25重量パーセント、例えば0.05から5重量パーセントである。
【0100】
さらに、着色剤と、望む場合には界面活性剤、湿潤剤、または触媒などの様々な添加剤とを、被膜形成樹脂を含むコーティング組成物に含めることができる。本明細書で使用される「着色剤」という用語は、色および/またはその他の不透明度をおよび/またはその他の視覚効果を組成物に与える任意の物質を意味する。着色剤は、個別の粒子、分散体、溶液、および/または薄片など、任意の適切な形で組成物に添加することができる。単一の着色剤または2種以上の着色剤の混合物を使用することができる。
【0101】
例示的な着色剤には、顔料、染料、および色味、例えば塗料産業で使用されかつ/またはドライカラー製造業者協会(Dry Color Manufacturers Association (DCMA))で列挙されるもの、ならびに特殊効果用組成物が含まれる。着色剤は、例えば、使用条件下で不溶性であるが湿潤性である微細固体粉末を含んでいてもよい。着色剤は、有機または無機とすることができ、凝集させることができまたは凝集させなくてもよい。着色剤は、アクリル粉砕賦形剤などの粉砕賦形剤の使用によって組み込むことができ、その使用は当業者に馴染みのあるものになる。
【0102】
例示的な顔料および/または顔料組成物には、カルバゾールジオキサジン粗製顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、塩タイプ(レーキ)、ベンズイミダゾロン、縮合、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン、および多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラトロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。「顔料」および「着色充填剤」という用語は、同義に使用することができる。
【0103】
例示的な染料には、溶媒および/または水性ベースのもの、例えばフタロ(pthalo)グリーンまたはブルー、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、アルミニウム、およびキナクリドンが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0104】
例示的な色味には、Degussa,Inc.から市販されているAQUA−CHEM
896、Eastman Chemical,Inc.のAccurate Dispersions divisionから市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなど、水ベースのまたは水混和性の担体に分散させた顔料が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0105】
上述のように、着色剤は、ナノ粒子分散体を含むがこれに限定されない分散体の形をとることができる。ナノ粒子分散体は、所望の可視色および/または不透明度および/または視覚効果をもたらす1種または複数の高度に分散されたナノ粒子着色剤および/または着色粒子を含むことができる。ナノ粒子分散体は、粒度が150nm未満、例えば70nm未満、または30nm未満である顔料または染料などの着色剤を含むことができる。ナノ粒子は、ストック有機または無機顔料を、粒度が0.5mm未満の粉砕媒体でミリングすることによって生成することができる。例示的なナノ粒子分散体とそれを作製するための方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,875,800(B2)号で明らかにされる。ナノ粒子分散体は、結晶化、沈澱、気相縮合、および化学的摩耗(即ち、部分溶解)によって生成することもできる。コーティング内でのナノ粒子の再凝集を最小限に抑えるために、樹脂で被覆されたナノ粒子の分散体を使用することができる。本明細書で使用される「樹脂で被覆されたナノ粒子の分散体」は、ナノ粒子とナノ粒子上の樹脂コーティングとを含む個別の「複合微粒子」が分散されている連続相を指す。例示的な、樹脂で被覆されたナノ粒子の分散体およびそれを作製するための方法は、やはり参照により本明細書に組み込まれる2004年6月24日に出願された米国特許出願公開第2005−0287348(A1)号、2003年6月24日に出願された米国仮出願第60/482,167号、および2006年1月20日に出願された米国特許出願第11/337,062号で明らかにされている。
【0106】
使用されてもよい例示的な特殊効果用組成物には、反射率、真珠箔、金属光沢、リン光、蛍光、フォトクロミズム、感光性、サーモクロミズム、ゴニオクロミズム、および/または色変化など、1つまたは複数の外観効果を発揮する顔料および/または組成物が含まれる。追加の特殊効果用組成物は、不透明度または質感などの、その他の知覚可能な性質を提供することができる。ある実施形態では、特殊効果用組成物は、コーティングを異なる角度から見たときにコーティングの色が変化するように、色ずれをもたらすことができる。例示的な色効果用組成物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,894,086号で明らかにされる。追加の色効果用組成物は、透明な被覆付きマイカおよび/または合成マイカ、被覆付きシリカ、被覆付きアルミナ、透明液晶顔料、液晶コーティング、および/または任意の組成物、即ち干渉が材料内の屈折率差から生じ、材料の表面と空気との間の屈折率差によるものではない組成物を含むことができる。
【0107】
ある実施形態では、1つまたは複数の光源に曝されたときにその色を可逆的に変化させる感光性組成物および/またフォトクロミック組成物を使用することができる。フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、指定された波長の放射線に曝すことによって活性化することができる。組成物が励起されると分子構造が変化し、変化した構造は、組成物の当初の色とは異なる新しい色を示す。放射線への曝露が取り除かれると、フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、組成物の当初の色が回復される静止状態に戻ることができる。ある実施形態では、フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、非励起状態で無色にすることができ、励起状態で色を示すことができる。完全な色変化はミリ秒から数分以内に、例えば20秒から60秒以内に出現することができる。例示的なフォトクロミックおよび/または感光性組成物にはフォトクロミック染料が含まれる。
【0108】
ある実施形態では、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、重合性成分のポリマーおよび/またはポリマー材料に、共有結合などによって関連付けられかつ/または少なくとも部分的に結合することができる。感光性組成物がコーティングから外に移行して基板内に結晶化され得るいくつかのコーティングとは対照的に、本発明の、ある実施形態によるポリマーおよび/または重合性成分に関連付けられかつ/または少なくとも部分的に結合された感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、コーティングから外への移行が最小限に抑えられる。例示的な感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物とそれらを作製するための方法は、参照により本明細書に組み込まれる2004年7月16日に出願された米国出願第10/892,919号で明らかにされる。
【0109】
一般に着色剤は、所望の視覚および/または色効果を与えるのに十分な任意の量で、コーティング組成物中に存在することができる。着色剤は、組成物の全重量に対して1から65重量パーセント、例えば3から40重量パーセント、または5から35重量パーセントを構成してもよい。
【0110】
堆積後、コーティングをしばしば加熱して、堆積された組成物を硬化する。加熱または硬化操作は、120から250℃、例えば120から190℃の範囲内の温度で、10から60分に及ぶ時間にわたってしばしば実施される。ある実施形態では、得られた被膜の厚さは10から50ミクロンである。
【0111】
前述の説明により理解されるように、本発明のある実施形態は、
鉄金属基板が被覆されるプロセスに濾過設備がない場合であっても、被覆設備の錆の汚染を防止する方法も対象とする。ある実施形態では、そのような方法は、pHが4から5.5でありかつ:(a)IIIBおよび/またはIVB族金属化合物;(b)リン酸イオン;および(c)水を含みまたはある場合にはこれらから本質的になる前処理組成物を利用する工程を含む。本発明の方法のそのような実施形態では、リン酸イオンが:(i)浴内での不溶性の錆の形成を本質的に防止するのに十分な;および(ii)
鉄金属基板上の被覆率が少なくとも10mg/ft
2であるIIIBおよび/またはIVB族金属被膜の堆積を防止するのに不十分な量で、前処理組成物の浴内に維持される。あるその他の実施形態では、そのような方法は、ある実施形態では操作中にリン酸イオンを実質的に含まずかつあるその他の実施形態ではリン酸イオンを含む、IIIBおよび/またはIVB族金属を含む前処理浴から鉄を除去するオフシフト方法を含む。オフシフト方法は、(a)前処理浴のpHを少なくとも0.2低減させる工程;(b)(a)において前処理浴にリン酸イオンを添加する工程;(c)(b)において前処理浴に酸化剤を添加する工程;および(d)(c)において前処理浴のpHを少なくとも0.2上昇させる工程を含む。前処理浴から鉄を除去する、そのようなオフシフト方法では、不溶性の錆を前処理浴から本質的に除去してもよい。ある実施形態では、オフシフト方法は、濾過設備を使用して前処理浴を濾過する工程をさらに含む。
【0112】
やはり理解されるように、本発明は、
鉄金属基板を被覆するための方法も対象とする。ある実施形態では、これらの方法は、(a)
鉄金属基板と、pHが4から5.5でありかつ(i)IIIBおよび/またはIVB族金属化合物、(ii)リン酸イオン、および(ii)水を含みまたはある場合にはこれらから本質的になる水性前処理組成物とを接触させる工程であって、リン酸イオンが前処理組成物の浴内で、この浴内での不溶性の錆の形成を本質的に防止するのに十分な量で維持される工程と;次いで(b)基板と、被膜形成樹脂を含むコーティング組成物とを接触させて、耐蝕特性を示す被覆された金属基板を形成する工程とを含む。あるその他の実施形態では、そのような方法は、(a)前処理浴がオフシフトにあるときに、前処理浴から鉄を除去する工程と;次いで(b)
鉄金属基板と、pHが4から5.5でありかつ(i)IIIB族および/またはIVB族金属および(ii)水を含みまたはある場合にはこれらから本質的になる水性前処理組成物とを接触させる工程であって、前処理組成物が、ある実施形態ではリン酸イオンを実質的に含まない工程と;次いで(c)基板と、被膜形成樹脂を含むコーティング組成物とを接触させて、耐蝕特性を示す被覆された金属基板を形成する工程を含む。そのような方法では、前処理浴がオフシフトにあるときに前処理浴から鉄を除去する工程は、(a)前処理浴のpHを少なくとも0.2低減させる工程と;(b)(a)において前処理浴にリン酸イオンを添加する工程と;(c)(b)において前処理浴に酸化剤を添加する工程と;(d)(c)において前処理浴のpHを少なくとも0.2上昇させる工程とを含み、またはある場合にはこれらから本質的になる。本明細書で使用される「耐蝕特性」という用語は、ASTM B117(塩水噴霧試験)に記載される試験を利用した、金属基板に対する腐蝕防止の測定を指す。この試験では、ASTM D1654−92により、被覆された基板にナイフで傷を付けて剥き出しの金属基板を露出させる。傷を付けた基板を試験チャンバー内に置き、この基板に水性塩溶液を連続的に霧吹きする。チャンバーを一定温度で維持する。被覆された基板を、指定された期間、例えば250、500、または1000時間にわたって塩噴霧環境に曝す。曝した後に、被覆された基板を試験チャンバーから取り出し、傷に沿った腐蝕について評価する。腐蝕は、傷の端から端まで腐蝕が進んだ全距離を、単位をミリメートルで表したものとして定義される「スクライブクリープ」によって測定する。基板が「耐蝕特性を示す」と言われた場合、
鉄金属基板により示されたスクライブクリープは、この基板が製造業者の取扱説明書に従ってPCT79111としてPPG Industries,Inc.から市販されているポリエステル粉末塗料で被覆されている場合、塩水噴霧環境で500時間にわたるASTM B117による試験後に3ミリメートル以下であることを意味する。
【0113】
本発明を以下の実施例で示すが、詳細に本発明を限定するとみなすものではない。実施例における、ならびに明細書の全体を通して、全ての部およびパーセンテージは他に指示しない限り重量によるものである。
【実施例】
【0114】
(実施例1)
一実験において、5つの清浄な鋼パネルを、pHが約1.8〜2.4でありフルオロジルコン酸およびリン酸を含有する(Zr 90ppm、およびPO
4−3 10ppm)水溶液中に置いた。第一鉄濃度を約30ppmに増やした後、パネルを透明溶液から取り出し、1ガロン(3.78リットル)ずつに分けた。
【0115】
第1のガロンをさらに700mlずつに細分し、そこに(75重量%)リン酸を添加することにより、リン酸イオンが10、25、50、75、および100ppmである一連の浴が得られた。同じ一連のリン酸レベルを、125、150、および200ppmのジルコニウムで繰り返した。
【0116】
全てのサンプル浴のpHを5.0に調節した。第一鉄30ppmと、様々な量のジルコニウムおよびリン酸イオンを含有する浴を、2日間静止状態のままにした。2日後、個々の浴の外観を書き留めた。以下の表1.0にまとめた結果は、この実施例において、全鉄30ppmを含有するジルコニウム浴が、リン酸イオン25から50ppmの存在下で褐色から白色の外観に変換されることを実証する。褐色の外観は、酸化鉄またはオキシ水酸化鉄の形成を示す。
【0117】
結果のマトリックスは、10ppmのPO
4−3浴の全てが錆で着色された水とほとんど褐色の沈澱物を同じ程度まで、即ちZrレベルとは無関係に、発生させることを示した。次に薄い色のものは、全て25ppmのPO
4−3浴であり、やはり薄く着色された沈澱物があった。全ての50ppmのPO
4−3浴は、ほぼ無色であり、辛うじて目に付く程度のオフホワイトの結晶質状の沈澱物があった。75および100ppmのPO
4−3浴は、全て無色であり、白色結晶質沈澱物があった。この白色沈澱物はリン酸第二鉄であり、おそらくは取るに足らない量のジルコニウム化合物を有していた。
【0118】
この実施例は、リン酸塩と第二鉄との重量比が少なくとも1:1であり、例えば少なくとも1.2:1、例えば1から1.8:1であり、浴が
鉄金属基板を処理するのに使用される場合、IIIBおよび/またはIVB族金属を含む前処理浴での不溶性の錆の形成を本質的に防止するのに十分なものであることを示す。
【表1】
【0119】
(実施例2)
鋼パネルを、従来のアルカリベースの清浄剤を使用して清浄化し、水道水で2回濯ぎ、10〜150ppmの範囲のジルコニウムおよび10〜100ppm範囲のリン酸塩を含有する浴内で処理し、次いで引き続き水道水で濯いだ。処理した鋼パネルに、共にPPG
Industries Inc.から市販されているP590陽イオン性エポキシ電着コーティングまたはPCT79111トリグリシジルイソシアヌレート−ポリエステル粉末コーティングを塗装した。腐蝕性能は、ジルコニウムで処理され塗装されたパネルを、ASTM B117に従って表2.0に示される時間にわたり中性塩水噴霧に曝すことによって決定した。この試験における1000時間の中性塩水噴霧曝露での、陽イオン性エポキシ電着コーティングの許容される性能は、1/2幅スクライブ損失が4.0〜5.0mmであった。500時間の中性塩水噴霧曝露での、TGIC−ポリエステル粉末で許容される性能は、1/2幅スクライブ損失が2.0〜3.0mmであった。以下の結果は、許容される腐蝕性能を、リン酸イオンがジルコニウム処理浴に添加された場合に得ることができることを実証する。実施例1.0に示したように、リン酸イオンが低濃度の場合、処理浴は褐色に変化して、酸化鉄またはオキシ水酸化鉄の存在を示す。
【表2】
【0120】
(実施例3)
前処理溶液を調製し、そこに多量のヘキサフルオロジルコン酸を添加した。冷間圧延鋼パネルを被覆する前に、浴のpHを4.7に調節した。ACT Labs(Hillsdale、MI)から得たパネルを、まず、アルカリ性清浄剤(PPG Industries Chemkleen 611L、2%および140〜150°F)で噴霧清浄し、2回濯いだ後に、前処理ゾーンに進入させた。ジルコニウム浴をパネルに9psiで60秒間噴霧した。次いでそれらを水道水で濯ぎ、最後に脱イオン水ハロで濯いだ後に、赤外線乾燥工程に進めた。
【0121】
パネルのサンプルを、0、10、15、20、50、および80ppmのジルコニウム浴レベルで得た。それぞれの断面を、XPS(X線光電子分光法)を介して分析して、コーティング内のジルコニウムの層厚を決定した。ジルコニウム層の深さは、プロファイルが10%の原子パーセントレベルにまで戻って低下するナノメートルになるように決定された。深さに関して得られた表は、
図1に示されるようにジルコニウム浴濃度に対してグラフにした。
【0122】
同じ系列のパネルを使用して、Powercron 395としてPPG Industries,Inc.から市販されている陰イオン性アクリル電気被覆を、各レベルで3つのパネルに付着させた後、ASTM B117およびD1654−92に従い腐蝕試験を行った。結果を
図2に示す。結果は、最小限の厚さの実現と一致した、即ち20ppmのジルコニウムを有する浴から、腐蝕保護の良好な程度に到達することを確認する。
【0123】
(実施例4)
実際に、錆で酷く汚染されている浴は、半透明のオレンジ溶液の外観の後に、不透明な褐色がかった赤になり、これは不溶性の第二鉄錯体に最初に変換されたことを示す。一実験において、100ppmのジルコニウムを含有する10ガロンの低pH浴(約2.7)を、全鉄が50ppmに到達するまで鋼パネルに数時間噴霧した。第一鉄は約40ppmであった。浴は10ppmの可溶性第二鉄イオンを含有していたが、それは無色透明であった。大きいサンプルをいくつかに分割し、そこに高レベルのリン酸塩を添加して、pHが5に上昇した後に浴の初期退色を防止し得るレベルを決定した。リン酸塩を含まない対照サンプルの場合、第二鉄レベルは24ppmまで増加し、その直後に浴が変色し始めた。この実験結果を表3.0に示す。
【表3】
【0124】
高いPO
4レベルでは、色の変化がより長くなり、ゼロリン酸塩対照ほど濃くない。さらにpHは、一晩保存した後に、表に示されるレベルまで降下したが、これは酸化および沈澱工程の終了を示す。pHの低下は、より多くのリン酸塩を使用した場合よりも小さかった。あるレベルのリン酸塩の後、pHは一定のままであり、第二鉄で必要な量を超えて過剰であることを示す。数日にわたり、沈澱物の品質は表3.0に記載されるように明白であった。系内に十分なリン酸塩がないと、沈澱物は凝塊状の褐色酸化物として発生し、その結果、pHがかなり低下した。十分なリン酸塩があると、沈澱物は白色であり、その密度は、下流に運ばれ得る前に鉄の除去が促進される値であった。
【0125】
ジルコニウムのレベルもチェックして、任意の過剰なリン酸塩の作用を決定した。
図3は、いくらかのジルコニウムが系から枯渇したが、その損失は多くはないことを示す。リン酸塩は、可溶性の第二鉄錯体を不溶性のリン酸第二鉄に変換するので、第二鉄へのリン酸塩の均等な添加点は、pHの平坦域によってわかる。これは、第二鉄24ppmに関してリン酸塩が約35〜40ppmであるときに生じた。
【0126】
このように、上記の作用浴では、第二鉄24ppm当たり僅か25〜35ppmのリン酸塩が、ジルコニウムの枯渇がごく少量である赤味がかった褐色の浴の発生を阻止するのに十分と考えられる。この実施例の浴の寿命は、IIIBおよび/またはIVB族金属をベースにするがリン酸イオンを含まない競合する工業用の浴で典型的に見られる場合よりも、著しく長いと考えられる。リン酸塩と第二鉄との比は、重量ベースで1:1から1.8:1の範囲にある。より高い比は、非常に多くのジルコニウムを枯渇させ始める可能性がある。
【0127】
(実施例5)
鉄を含有する濃縮物は、ヘキサフルオロジルコン酸を脱イオン水に溶かした溶液であってリン酸塩を含有しない溶液中に、清浄な鋼パネルを2日間吊るすことによって得た。最終の第一鉄レベルは約900ppmであり、第二鉄は33ppmであった。次いで濃縮物を水道水で希釈して、約20ppmの第一鉄および3ppmの第二鉄を得た。様々な量のリン酸を添加し、その後、全ての第一鉄を第二鉄に変換するのに十分な過酸化水素を添加した。次いでpHを、各浴ごとに4.7に調節した。静止状態に1日放置した後、リン酸塩およびジルコニウムに関して浴を分析した。結果を
図4にプロットする。明らかなように、約30ppmのリン酸塩は、溶液中に当初の65ppmのジルコニウムのほとんどを維持しながら20ppmの第二鉄を除去するのに十分と考えられる。
【0128】
(実施例6)
実施例6は、第二鉄(Fe
+3)をオフシフトの前処理浴から除去できることを実証するために実施した。
【0129】
ストック溶液を、水道水3リットルおよびフルオロジルコン酸溶液(45%)1.2gから調製した。ストック溶液は、85ppmのZrというターゲットを有していた。ここに、硫酸第二鉄(50%溶液)0.38mlを添加して、20ppmの第二鉄イオンを有するターゲット溶液にした。ストック溶液のpHは2.9であった。
【0130】
ストック溶液を、浴A〜Dに分け、それぞれはストック溶液900mlを含有していた。以下に、より詳細に記述されるように、Hachメーターをこの実施例で(かつ実施例6および7で)使用して、第一鉄(Fe
+2)および全鉄濃度を様々な時点で測定した。特定の浴で第二鉄(Fe
+3)濃度を得ることが望まれた場合、第二鉄濃度は、全鉄濃度と第一鉄濃度との差として計算した。実施例6では、どの浴A〜Dも、測定される任意の時点で第一鉄(Fe
+2)を全く含有していなかった。
【0131】
浴Aは対照としての役割をし、浴B、C、およびD(以下に記述されるように処理した)の第二鉄(Fe
+3)および全鉄濃度(ppm)と比較した。
【0132】
Chemfil緩衝液0.1g、即ちPPG Industries,Inc.から市販されているアルカリ性溶液を、アルカリ度の供給源として対照浴Aに添加して、pH3.4を得た。
図5に示されるように、浴Aの第二鉄(Fe
+3)濃度(ppm)は、72時間の実験の持続時間中、約18.6ppmであった。浴Aで形成された、辛うじて目に見える錆で着色された沈澱物があった。これらのデータは、第二鉄(Fe
+3)が約3.4のpH範囲で非常に安定することを確認する。
【0133】
Chemfil緩衝液0.5gを浴Bの900mlストック溶液に添加して、浴のpHを4.8に上昇させたが、これは本明細書に記述される前処理組成物を含有する浴の標準作用範囲内であった。
図5に示されるように、浴Bの第二鉄(Fe
+3)濃度は、前処理浴のpHを4.8に上昇させた後2時間で、約21ppmの初期濃度から約2ppmの濃度まで減少した。これらのデータは、可溶性第二鉄のほとんどが、前処理組成物に不溶の錆または酸化第二鉄に変換されたことを示す。錆状の沈澱物は、pHの上昇後2時間で、浴B内に見ることができた。
【0134】
PPG Industries,Inc.、Euclid、OHから入手可能なZircobond Additive Pとして提供されたリン酸一ナトリウム溶液0.09g(45重量%)を、浴Cの900mlストック溶液に添加した。浴Cは、リン酸塩14ppmを含有し、そのpHは2.9であって、実験の72時間の持続時間中安定していた。
図5に示されるように、浴Cの第二鉄(Fe
+3)濃度は、実験の最初の2時間で約18ppmから約12ppmに減少し、次いで72時間の持続時間中徐々に減少し続けて、最終濃度7ppmになった。白色沈澱物が、実験の最初の数時間以内に浴Cで見られ、実験の終わりまでに、僅かに黄褐色の沈澱物が形成されたが、これはpHが通常の作用レベルよりも低い場合、第二鉄の除去が緩やかであり不完全であったことを示している。
【0135】
Zircobond Additive Pとして提供されたリン酸一ナトリウム溶液0.09g(45重量%)を、浴Dの900mlストック溶液に添加した。浴Dは、リン酸塩34ppmを含有していた。
図5に示されるように、浴Dの第二鉄(Fe
+3)濃度は20ppmであった。0.5gのChemfil緩衝液を浴Dに添加してpHを4.75に上昇させると、浴は直ぐに曇った。結晶を沈降させた後、浴サンプルを、5ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過しこの濾液を、全鉄に関してチェックした。浴Dの第二鉄濃度は2ppmであり、2時間後(実験の終了時)は1.9ppmであった。浴は透明で、小さい白色沈澱物があった。
【0136】
実験6のデータは、前処理浴へのリン酸塩の添加によって、低pHで第二鉄の大部分が除去され、pHが元の作用範囲に上昇した後、間もなく、第二鉄の実質的に全てが除去されたことを実証する。これらのデータは、浴がオフシフトにあるときに、第二鉄を前処理浴から除去し得ることを確認する。
【0137】
(実施例7)
図5に示され実施例6に記述されたデータは、リン酸塩を低pHの前処理浴に添加することにより、第二鉄が前処理浴から除去されることを実証した。しかし実際に、基板を処理するのに使用されてきた前処理浴は、前処理浴から除去するために第二鉄に変換されなければならない第一鉄をしばしば含有する。実施例7と、表4に示され本明細書に記述されるデータは、前処理浴に酸化剤を添加することによって、当初は第一鉄状態にあった鉄の除去が改善されることを実証する。
【0138】
ストック溶液を、水道水3リットルおよびフルオロジルコン酸溶液(45%)1.2gから調製した。ストック溶液は、85ppmのZrというターゲットを有していた。ここに、硫酸第一鉄7水和物0.32gを添加して、20ppmの第二鉄イオン(Fe
+2)および23ppmの全鉄を有するターゲット溶液にした。ストック溶液のpHは3.1であった。
【0139】
ストック溶液を、浴E〜Gに分け、それぞれはストック溶液900mlを含有していた。浴Eは対照としての役割をし、浴FおよびG(以下に記述されるように処理した)の第一鉄(Fe
+2)および全鉄濃度(ppm)と比較した。Hachメーターを使用して、第一鉄および全鉄濃度を、実験の44時間の持続時間中周期的な間隔で、各浴においてモニターした。
【0140】
浴Eは、対照としての役割をした。浴Eは、初期pHが3.1であった。数滴のChemfil緩衝液を浴に添加してpHを3.5に上昇させ、これは表4に示されるように、実験の持続時間中安定なままであった。やはり表4に示されるように、浴Eの全鉄濃度(ppm)は当初の22.8ppmから44時間の実験の終わりには22.1ppmに降下した。第一鉄(Fe
+2)濃度は、当初は19.8ppmであり、44時間の実験の終わりに15.7ppmに降下した。浴は、実験の持続時間中は透明なままであり、赤色形成はなかった。これらのデータは、浴内の鉄の全てが第一鉄として溶液中に在り続け、第一鉄から第二鉄へのごく少量の変換しかなかったことを示す。これらのデータは、低pH(即ち、作用pHよりも低いpH)で、第一鉄から第二鉄への最小限の変換しかなされないことを実証する。
【0141】
リン酸一ナトリウム0.093g(45%溶液)を浴Fに添加して、43ppmのリン酸塩を有しかつPO
4:全鉄の比が約1.8:1である溶液を得た。次いでChemfil緩衝液0.5gを浴に添加して、pH4.7を得た。浴FのpHは、実験の持続時間中に僅かに低下し、44時間で4.38であった。表4に示されるように、浴Eの全鉄濃度は当初の22.8ppmから30分で18.5ppmに、さらに44時間の実験の終わりに14.7ppmに減少した。第一鉄濃度は、当初は19.8ppmであり、30分で17.2ppmに減少し、44時間の実験の終わりに12.4ppmであった。リン酸第二鉄の形成を示すいくらかの白色沈澱物が、実験の持続時間中に浴内で形成された。これらのデータは、リン酸塩の添加後にpHを4.38〜4.7の間に上昇させることによって、可溶性の鉄がリン酸第二鉄としてごく一部しか除去されないことを示すが、この理由は、理論に拘泥するものではないがpHのみ上昇させることによる第一鉄の酸化が比較的遅くかつpHに関連した平衡によって制限されるからである。
【0142】
表4に示されるように、浴Gは、当初のpHが3.0であり、全鉄濃度が22.8ppmであり、第一鉄濃度が19.8ppmであった。リン酸一ナトリウム(45%溶液)0.1gを浴Gに添加し、その直後に0.32gの過酸化水素(3重量%溶液)を添加した。過酸化水素を添加した後15分で、全鉄濃度は10.2ppmに減少し、第一鉄濃度は0.4ppmに減少し、pHは2.6であった。いくらかの白色沈澱物が浴内に形成されたが、これは鉄−リン酸塩錯体が部分的に完成したことを示している。次に、0.6gのChemfil緩衝液を添加することによって浴のpHを4.7に上昇させ、15分後(即ち、実験の開始から46分後)、鉄のほぼ全てが除去され、全鉄濃度が5ppmであり第一鉄濃度が0.1ppmであった。実験の終了時(即ち、開始から44時間後)、浴のpHは4.6であり、全鉄濃度は0.24ppmであり、第一鉄濃度は0.02ppmであった。これらのデータは、浴へのリン酸塩および過酸化水素の添加によって、作用pHでの浴からの鉄の除去が著しく改善されることを実証した。
【表4-1】
【表4-2】
【0143】
(実施例8)
この実施例では、3.60gのヘキサフルオロジルコン酸を水3リットルに添加して、240ppmのジルコニウムを有する溶液を得ることにより、作用前処理浴を作製した。溶液のpHを4.5に上昇させるのに十分な量のChemfil緩衝液を添加した。硫酸第一鉄7水和物0.31gを添加することにより、20ppmの第一鉄が得られた。錆粒子の形成を防止するために、ヘキサフルオロジルコン酸約14滴を直ぐに添加して、pHを3.3に低下させた。浴は透明であった。Hachメーターを使用して、全鉄濃度が23.2ppmであることを測定し、第一鉄は19.5ppmであった。
【0144】
リン酸塩を、沈澱させる全鉄に対して約1:1のモル比(または重量で1.8:1)で、浴に添加した。この浴では、リン酸溶液(75重量%)0.175gからの41.5ppmのリン酸塩を添加して、約8〜9ppmを超えるようにした。1分間混合した後、次いで第一鉄(僅かに過剰)に対する1:1のモル比に基づいて、過酸化水素溶液(3重量%)1.27gを添加した。第一鉄は、1分未満で第二鉄に変換された。
【0145】
第二鉄の全てをリン酸第二鉄として沈澱させるために、Chemfil緩衝液を1滴ずつ添加することによって、浴のpHをゆっくりと4.75に上昇させた。上昇が速すぎると、いくらかの不溶性酸化第二鉄が、リン酸第二鉄の代わりに錆として形成される可能性がある。pHが上昇するにつれ、浴に白色の曇りが発生し、これが最終的には凝塊になって10分以内に沈降し、その結果、透明な浴が得られた。この最終的な溶液は、0.2ppmの全鉄を含有し、検出可能な第一鉄はなかった。残留リン酸塩は8.5ppmであり、これは質量平衡計算と矛盾がなかった。
【0146】
上述の実施形態に対し、その広範な本発明の概念から逸脱することなく変更を加えることができることが、当業者に理解されよう。したがって本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨および範囲内にある修正例を包含するものであることが理解される。