(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262273
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】変身用帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 1/00 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
A42B1/00 V
A42B1/00 X
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-40726(P2016-40726)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-155369(P2017-155369A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】309000657
【氏名又は名称】株式会社 A.R.K
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】今井 諒
【審査官】
藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第03/037122(WO,A1)
【文献】
米国特許第05035004(US,A)
【文献】
米国特許第02462258(US,A)
【文献】
登録実用新案第3189829(JP,U)
【文献】
実開昭55−172319(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3134908(JP,U)
【文献】
実開昭49−136416(JP,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0087687(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽子着用者の顔全面を覆うように形成され顔前面側表面に顔面模様が付されたメッシュ状の垂れ幕と、
前記垂れ幕を内蔵可能に該垂れ幕と接続された帽子本体部と、
前記垂れ幕が前記帽子本体部に内装される態様と前記垂れ幕が前記帽子本体部から延出される態様とを切り換え可能に前記帽子本体部と前記垂れ幕とを接続する弾性的装着部と
を具備する変身用帽子であって、
前記垂れ幕が編みゴムテープを介して前記変身用帽子の前面端部に取付けられ、該垂れ幕の外周部はパイピング処理あるいはテープ布の縫い付け処理がなされている
ことを特徴とする変身用帽子。
【請求項2】
上記垂れ幕はファスナーあるいは面ファスナーによって取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の変身用帽子。
【請求項3】
前記帽子着用者の顔前面以外の側面及び/もしくは後頭面を覆う前記垂れ幕がさらに前記帽子本体部に内蔵されることを特徴とする請求項1もしくは2記載の変身用帽子。
【請求項4】
前記帽子着用者の頭部を覆うクラウン部より前記変身用帽子の外部に引き出し可能な付加物が前記変身用帽子の内部に内蔵されていることを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の変身用帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば帽子のような頭部装着品に係り、特に変身用帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、漫画やアニメ、あるいはアイドルを模した仮装や扮装をして変身するコスチュームプレイ、いわゆるコスプレが流行っている。コスプレは、変身するまでに衣装を変えたり、化粧をしたりと準備や支度に時間や費用がかかり、簡単には行うことができない。
【0003】
一方、コスプレ変身状態で、イベント会場に行くために電車に乗ったり、一般道路を歩いて行ったりすることは、一般的に恥ずかしく勇気がいる。コスプレ会場に行くまでは通常の服装をしているが、会場到着後に容易に変身できるものが望まれる。また、上記のように平常時は普通の服装であるが、各種イベントの会場ではイベントにあった簡易な変身を容易に達成できればイベントの場を盛り上げるのにも喜ばれる。
【0004】
そこで、全身に亘るコスプレではなくとも、顔の部分だけでも変身できれば、かなりインパクトがある。簡易に顔の部分を変身させる方法としてお面やマスクを被る方法があるが、そのためにはお面やマスクを持ち歩かねばならないため、意外性には欠けてしまう。
【0005】
特許文献1に開示されている帽子の鍔に簡単に取り付けることができる着脱式のメッシュ状顔面保護具の代わりに、お面を付ける方法がある。しかし、通常時にはお面を持ち歩かねばならず荷物になってしまう。その上、荷物からお面を取り出して装着していては意外性に欠けてしまう。なお、特許文献1のメッシュ状顔面保護具は、小石や小枝の跳ね上がりに対して顔面を保護するもので、同顔面保護具を変身の為に応用することについては触れられていない。
【0006】
特許文献2に開示されているマスク兼用帽子では、通常はツバ付き帽子として使用する一方、マスクとして使用するときには、帽子のツバを引き下げるだけで顔を覆うことができる。特許文献2の発明思想は、もともと防寒用、防災用のマスクとしての応用を主としたものであるが、このクラウン(帽子頭部)部分に動物のキャラクターや人の顔をプリントすることができ、つばを引き下げると顔の大部分を覆い、変身することも可能である。
【0007】
しかし、眼、鼻、口の開口部があるためキャラクターや人の顔を模するデザインには限界があり、顔を覆ってすぐ、何に変身したかを他者に気づかせるのは難しい場合があると考えられる。また、通常時はクラウン部(帽子頭部)の膨出をうまく防止するのが難しく、特許文献2の
図3の如く、通常時には普通の帽子とは明らかにデザインが異なり、クラウン前部にマスクフェイス部分が来てしまうことから、変身する対象がある程度判ってしまうため、意外性や面白みに欠けてしまう。なお、特許文献2は防寒用、防災用を目的としており、変身用を目的としたとの記述は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−152432号公報
【特許文献2】特開2005−281894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の従来技術上の諸問題を解決しようとするものであり、通常時は普通の帽子と全く変わらないデザイン、形状を有し、特別な付属物を必要とせず、容易に変身扮装ができる帽子を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような各課題を解決するために、本発明に係る変身用帽子においては、帽子に顔面模様を付した垂れ幕を内蔵し、該垂れ幕を下ろすことにより変身遊びができるようにする。帽子着用者の顔全面を覆うように形成され顔前面側表面に顔面模様が付されたメッシュ状の垂れ幕と、上記垂れ幕を内蔵可能に該垂れ幕と接続された帽子本体部と、上記垂れ幕が上記帽子本体部に内装される態様と上記垂れ幕が上記帽子本体部から延出される態様とを切り換え可能に上記帽子本体部と上記垂れ幕とを接続する弾性的装着部とを具備する。
【0011】
また、帽子着用者の顔前面以外の側面及び/もしくは後面を覆う垂れ幕も内蔵するようにしてもよい。
【0012】
さらに、垂れ幕を編みゴムテープを介して帽子前面端部に取付け、同垂れ幕の外周部をパイピング処理あるいはテープ布の縫い付け処理を行うようにしてもよい。
【0013】
上記に加え、帽子頭部のクラウン部よりクラウン部内部に内蔵した付属物を引き出せる構造とするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明によれば、通常時は普通の帽子と全く変わらない外見のため、着用するのに気恥ずかしいことは無く、その帽子から垂れ幕を引き出すことにより瞬時にキャラクターに変身できるため、より意外性を強調できる効果がある。
【0015】
上記垂れ幕は、表面にキャラクター等の顔面模様を付してあるため、装着者以外から見ればお面を被ったように見え、装着者はメッシュの細かい穴を通して外部を見ることができる。このため装着者の活動には支障が無く、キャラクターの変身後もメッシュ製垂れ幕を通して視界が確保されるため、様々なパフォーマンスをすることができるという効果がある。
【0016】
また、前面垂れ幕と同様に表面にそれぞれの模様を付した垂れ幕を装着者の側面、後面に内蔵させ、これを下ろすようにすれば、装着者の頭部がすっかり隠れ、更にキャラクターになりきることが可能となる。
【0017】
上記の垂れ幕の外周に対してパイピング処理あるいは裏打ちテープ布の縫い付け処理を行い、編みゴムテープによって帽子に取り付けると、垂れ幕がちょうど装着者の顔面に略添った形にふくらみ、より変身効果を高めることができる。また、垂れ幕外周が補強されるため風によって垂れ幕がめくれ上がってしまうことが防止できる。
【0018】
更に、上記垂れ幕及び帽子取り付け部にたとえばマジックテープ(登録商標)やベルクロ(登録商標)のような面ファスナーを用いれば、様々なキャラクターの垂れ幕を簡単に付け替えて変身することができ、キャラクター専用の帽子自体を変えるよりもずっと経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る変身用帽子の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る変身用帽子の垂れ幕構造図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る変身用帽子の垂れ幕収納説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る変身用帽子の頭部付加物の概略図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る変身用帽子の概略図である。
【
図6】本発明の更に別の実施形態に係る変身用帽子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0021】
本発明の一実施形態に係る変身用帽子1の構成概略を
図1によって説明する。
図1は、本発明によるツバ付き帽子型変身用帽子1の一例であり、ツバ付き帽子2の前面の垂れ幕3を下ろした状態を示している。垂れ幕3の前面には変身するキャラクターの顔面模様が付されている。また、ツバ付き帽子2のクラウン部21から角型の頭部付加物23を引き出した状態を示している。
【0022】
図2は、
図1の垂れ幕3部分を抜き出した説明図である。前面のキャラクター顔面模様は、わかりやすくするため図示を省略してある。垂れ幕3の略全面は、帽子装着者の顔面を覆う程度の大きさのメッシュ幕31で構成されている。メッシュ幕31の前面には特徴あるキャラクターの顔面模様が印刷等で付されており、外部から帽子装着者を見るとメッシュ幕31の顔面模様が目立ち、お面を被っているように見え、装着者の顔はほとんど判別できないことから、簡単に変身することができる。
【0023】
一方、装着者側から見ると目前のメッシュ幕31を通して周囲が良く見え、移動や識別にはほとんど支障が無い。メッシュ幕31の素材は布製の網折素材や折布や細糸接着布を用いることができるが、ポリエステル樹脂によるメッシュ布等は装着者の顔面形状に沿った立体形を保てるので好適である。メッシュ生地の粗さは、変身しようとするキャラクターを表現するに足る顔面模様の細かさと、装着者のメッシュ幕を通してどのくらい視界が確保できるかとのバランスで決定される。
【0024】
メッシュ幕31の周囲は補強とほつれ防止とを兼ねてパイピングあるいはテープ布の縫い付けによって端面処理32を施す。また、メッシュ幕31を帽子に取り付ける端面には弾性的装着部を付す。弾性的装着部は一定の弾性部を有する伸縮可能素材よりなる、例えば帯/袋状の部材であることから、メッシュ幕31を帽子内部に内蔵した形態を保持することができる。この弾性的装着部の一態様として、編みゴムテープ33を採用することができる。この編みゴムテープ33を帽子2の前面下部に取り付ける。取り付け方法としては編みゴムテープ33を帽子2の前面下部に縫製取付としてもよい。上記のようにメッシュ幕31の周囲を端面補強32し上部
に編みゴムテープ33を付加し、編みゴムテープ33を帽子2の前面カーブに沿って取り付けると、ちょうど装着者の顔面カーブに略沿った立体形となり、お面を被ったような効果となる。
【0025】
また、
図2で示すように編みゴムテープ33に点線表示の面ファスナー34を付加し、この面ファスナー34にて帽子2に取り付けることも可能である。この場合には、種々のキャラクターの顔面模様を付した垂れ幕を容易に交換することにより色々な変身ができ、さらにエンターテインメント効果を高めることができる。
【0026】
図3は、垂れ幕3及び角型の頭部付加物23を帽子2の内部に収容した場合の概略図である。垂れ幕3は帽子2のビン皮22に沿った形で編みゴムテープ33によって帽子2に取り付けられているため、編みゴムテープ33の張力によって帽子2のクラウン部分の内側に
図3のごとくぴったり収納され、この状態で帽子2をかぶってしまえば、通常の帽子と何ら変わっては見えない。
【0027】
図4は、角型の頭部付加物23の収納説明図である。通常装着者の頭の形に合わせた帽子2の頭部は、複数の略三角形の構成布24a、24b、24c、・・・を縫製して構成されている。たとえば、本例の角型の頭部付加物23は構成布24aと構成布24bとの縫製部Bの一部であるAを未縫製部としておき、構成布24aあるいは構成布24b、もしくは構成布24aと構成布24bの両者に角型の頭部付加物23を縫製しておき、通常は帽子2の内部に収納し、垂れ幕3を顔面前方に展開するとき、同時に角型の頭部付加物23を頭部外部に引き出してより変身を効果的に見せることができる。
【0028】
上記説明では、角型の頭部付加物を縫製によって取り付けているが、ファスナーや面ファスナーによって取り付けてもよい。また、角型の頭部付加物はぴんと立たせるために角部分を袋状とし、内部に柔軟性のある樹脂材を挿入しておく等、通常行われている方法を用いることができる。更に、構成布の縫製部を利用するばかりでなく、任意の場所にスリットを設け、同様に頭部外部に引き出せる付加物を取り付けてもよい。
【0029】
図5は、本発明によるツバ無し帽子型の変身帽子101の一例であり、
図1と同様、前面の垂れ幕103を下ろし、クラウン部121から耳型の頭部付加物123を引き出した状態を示している。
【0030】
図6は、本発明によるツバ無し帽子型の変身帽子201の他の例であり、前面の垂れ幕203と両側面の垂れ幕61と後面の垂れ幕62(図示せず)を下ろした状態を示している。
図6においては、変身しようとするキャラクターの頭部の側面や後面に特徴がある場合に大変効果的である。もちろん、側面垂れ幕61及び後面垂れ幕62の外周は垂れ幕3と同様な外周処理を施しておき、帽子内部への収容も前面垂れ幕203と同様に行う。なお、側面と後面の側面垂れ幕61及び後面垂れ幕62の素材はメッシュ幕でなく通常布幕でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記本発明の説明においては、キャップ型と言われるツバ付き帽子やツバ無し帽子への応用を例に取ったが、通常ハットと言われる外周ツバ付き帽子や、キャスケット、ハンティング、ベレー、ニットキャップ、コック帽子さらにはヘルメットにも容易に応用・利用することができる。
【0032】
また、上記説明ではコスプレやイベント時のエンターテインメントへの応用について説明したが、例えば、教育現場に応用して、歴史上の人物に変身して説明を行えば教育効果をいっそう高めることが期待できる。
【0033】
更に、夏の海岸で美人に変身すると共に日焼け防止効果も期待できる等、楽しく実利を得るという応用もある。同様に顔面模様を反射画材で描いておけば、夜間の事故防止にも役立てることができる。また、有名人のキャラクターに変身して宣伝やトークへの活用、垂れ幕に虫除け材や香料材を付加するという応用も可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…変身用帽子、2…ツバ付き帽子、3…垂れ幕、21…クラウン部、22…ビン皮、23…角型の頭部付加物、31…メッシュ幕、32…端面処理、33…編みゴムテープ、34…面ファスナー、24a〜24c…構成布、101…変身用帽子、103…垂れ幕、121…クラウン部、123…耳型の頭部付加物、201…変身用帽子、203…垂れ幕、61…側面垂れ幕、62…後面垂れ幕、A…未縫製部、B…縫製部