(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1面圧分布の位置と前記第2面圧分布の位置との間の距離と、前記第1面圧分布を算出した時から前記第2面圧分布を算出するまでの時間とから、前記歩行速度を算出する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
前記制御部は、第2基準歩行速度k2(但し、k1>k2>0である)より前記歩行速度が遅いときに、前記踏段の走行速度を、第2基準走行速度v2(但し、v0>v1>v2>0である)にさらに低減する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
前記制御部は、検出した左右一対の前記面圧分布から前記歩行速度を検出し、前記第1基準歩行速度k1、又は、前記第2基準歩行速度k2から前記歩行速度に対応して、前記踏段の走行速度を、前記第1基準走行速度v1、又は、前記第2基準走行速度v2に低減させ、前記踏段に乗った乗客が降りたことを前記マットで検出したときに、前記通常速度v0に復帰させる、
請求項7記載の乗客コンベア。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の乗客コンベアについて、エスカレータ10に適用して
図1〜
図5を参照して説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
各エスカレータ10の構造について、
図1に基づいて説明する。
図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0010】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット24,24、左右一対の手摺りベルトシーブ27,27が設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキ23を有している。この駆動チェーン22により左右一対の駆動スプロケット24,24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対の手摺りベルトシーブ27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキ23などを制御する制御部50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の駆動スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30が等間隔で取り付けられている。モータ20が回転すると踏段30の前輪301は、駆動スプロケット24の外周部にある凹部に係合して、トラス12に固定された不図示の案内レールを走行し、後輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。
【0014】
欄干36の側面下部には、スカートガード44が設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0015】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、複数の案内ローラからなる案内ローラ群64を介して手摺りベルトシーブ27に掛け渡され、その後、複数の案内ローラからなる案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部
48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、手摺りベルトシーブ27が駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転する手摺りベルトシーブ27に走行する手摺りベルト38を押圧するための複数の押圧ローラからなる押圧ローラ群68を有する。
【0016】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が侵入する。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。さらに、上階側の乗降口にある乗降板32と下階側の乗降口にある乗降板34の上には、それぞれ乗客の歩行速度wを算出するためのマット72が置かれている。このマット72の構造については後から説明する。
【0017】
エスカレータ10には、安全装置70が設けられている。安全装置70としては、スカートガード44に設けられたスカートガード挟まれ検出装置、インレット部46,48に設けられたインレット挟まれ検出装置、案内レール25に設けられた踏段浮き上がり検出装置、踏段チェーン切断検出装置、非常停止ボタンなどである。スカートガード挟まれ検出装置とは、スカートガード44と踏段30の間に異物(例えば、服や荷物)が挟まれたことを検出する装置であり、インレット挟まれ検出装置とは、手摺りベルト38が引き込まれるインレット部46又はインレット部48に異物(例えば、乗客の手や荷物)が同時に引き込まれたときに検出する装置である。安全装置70は、制御部50に接続され、この安全装置70の一つが動作した場合には、制御部50はモータ20を停止させると共に、ディスクブレーキ23を動作させて、エスカレータ10を停止させる。
【0018】
(2)マット72の構造
次に、マット72の構造について
図2に基づいて説明する。
【0019】
マット72は、長方形を成し、乗降板32、乗降板34と同じ大きさに形成されている。マット72の内部には、シート状の面圧センサ74が設けられている。この面圧センサ74は、格子状に配された複数のセル面圧センサ76から構成され、乗客がマット72を踏んだ場合に、各セル面圧センサ76がOFF状態からON状態となり、制御部50にそのセル面圧センサ76の位置情報とON情報をセンサ情報として出力する。
【0020】
セル面圧センサ76の「位置情報」とは、格子状に配された複数のセル面圧センサ76におけるx軸とy軸の値であり、x軸は乗降板32,34の幅方向を示し、y軸方向は乗降板32,34の乗客が歩く方向を示している。なお、各セル面圧センサ76には、対応した位置情報が予め付与されている。例えば、
図2においてマット72の左端で、かつ、入口側のセル面圧センサ76の位置情報は(0,0)に設定されている。
【0021】
(3)エスカレータ10の電気的構成
エスカレータ10の電気的構成について
図4のブロック図に基づいて説明する。
【0022】
モータ20は、インバータ回路21によってインバータ制御され、移動、停止及び回転数が制御される。このインバータ回路21は、制御部50からの制御信号に基づいて制御されている。制御部50は、モータ20を停止させるためのディスクブレーキ23も制御している。
【0023】
制御部50には、上階側の操作盤52、54、下階側の操作盤56、スピーカ58、安全装置70が接続されている。さらに、この制御部50には、上記で説明した面圧センサ74が接続されている。制御部50には、この面圧センサ74の各セル面圧センサ76からセンサ情報が入力する。
【0024】
(4)歩行速度wの算出
次に、制御部50がマット72の面圧センサ74を用いて乗客の歩行速度wを算出する方法について説明する。なお、エスカレータ10の踏段30は下り方向に移動し、上階側の乗降板32が乗客の入口側となっているため、上階側のマット72を用いて説明する。
【0025】
まず、マット72の面圧センサ74を構成する全てのセル面圧センサ76は、初期状態において全てOFF状態である。
【0026】
次に、乗客がマット72を入口側から順番に足で踏んだ場合には、踏まれたセル面圧センサ76だけがON状態となる。このときセル面圧センサ76の寸法に対応して、足跡のサイズに対応した複数のセル面圧センサ76が同時にON状態となる。
【0027】
次に、ON状態となった各セル面圧センサ76は、それら位置情報とON情報とをセンサ情報として制御部50に出力する。
【0028】
次に、制御部50は、ON状態となったセル面圧センサ76のセンサ情報と入力時刻tを取得する。ここで踏段30に乗客が乗る場合には、左右に分かれて1人ずつ乗るか、又は、1列で順番に乗る場合が殆どである。したがって、複数人の乗客が、マット72の同じ場所を同時に踏むことはない。
【0029】
次に、制御部50は、同じ時刻tにON状態となったセル面圧センサ76の位置情報を一体にして足跡の面圧分布として取得する。この面圧分布は、乗客の足跡に対応した分布となる。但し、制御部50は、成人の場合には、面圧分布のx軸方向の寸法が7cm〜15cm、y軸方向の寸法が20cm〜30cm、また、子供の場合には、面圧分布のx軸方向の寸法が4cm〜10cm、y軸方向の寸法が14cm〜22cmのときに足跡の面圧分布として取得し、これ以外の条件の面圧分布は、足跡としては取得しない。そして、制御部50は、マット72の入口側に最も近い足跡の面圧分布を1歩目の足跡として取得する。
【0030】
次に、制御部50は、この足跡の面圧分布の重心を計算し、1歩目の足跡に対応した面圧分布の重心位置(x1.y1)と入力時刻t1を、1歩目の足跡情報A1(x1,y1,t1)として記憶する。
【0031】
次に、乗客が2歩目をマット72に踏み出した場合には、制御部50は、セル面圧センサ76から入力したセンサ情報から2歩目の足跡の面圧分布を算出する。この2歩目の算出方法は、1歩目の足跡の面圧分布とは反転した分布、すなわち左右対称の面圧分布の面圧分布を制御部50が検索し、この反転した面圧分布を1歩目の足跡に対応したもう一方の足跡の面圧分布であるとして取得する。制御部20は、この2歩目の足跡情報A2(x2,y2,t2)を記憶する。なお、制御部50が2歩目の足跡の面圧分布を検索するときは、1歩目の足跡の面圧分布より後方を検索で、かつ、一人前の乗客の足跡より前方を検索する。
【0032】
次に、制御部50は、上記と同様にして3歩目の足跡情報A3、4歩目の足跡情報A4を算出する。
【0033】
次に、制御部50は、1歩目〜4歩目の足跡情報A1〜A4を用いてその乗客の歩行速度wを算出する。歩行速度wは、足跡情報A1の位置情報(x1,y1)と足跡情報A2の位置情報(x2,y2)から両者間の距離L1を求め、また、時刻t1と時刻t2の差分時間を求めて、この距離L1と差分時間T1から歩行速度w1=L1/T1を算出する。同様にして2歩目と3歩目の歩行速度w2、3歩目と4歩目の歩行速度w3を求め、そこから例えばw1,w2,w3の平均速度を算出する。制御部50は、この平均速度をその乗客の歩行速度wと判断する。なお、この制御部50の歩行速度wの算出方法において、平均速度を算出するだけでなく、例えば1歩目から4歩目までの位置情報と差分時間から歩行速度wを算出してもよい。
【0034】
(5)エスカレータ10の走行速度の制御方法
次に、エスカレータ10の走行速度vの制御方法について
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
ステップS1において、制御部50は、モータ20の起動を行ってエスカレータ10の運転を開始し、ステップS2に進む。
【0036】
ステップS2において、制御部50は、踏段30の走行速度vを通常速度v0(例えば、30m/分)で走行させ、ステップS3に進む。
【0037】
ステップS3において、制御部50は、マット72の面圧センサ74からのセンサ情報に基づいて、上記で説明したように乗客の歩行速度wを算出し、ステップ4に進む。
【0038】
ステップS4において、制御部50は、算出した歩行速度wが第1基準歩行速度k1(例えば、50m/分)より遅ければ、エスカレータ10に乗ろうとしている乗客が、高齢者などの乗客と判断してステップS5に進み、同速、又は、それより早ければ健常者の乗客と判断してステップS2に戻る。
【0039】
ステップS5において、高齢者などの乗客が踏段30に乗るまでに、制御部50は踏段30の走行速度vを、通常速度v0から第1基準走行速度v1(例えば、25m/分)に下げ、ステップS6に進む。
【0040】
ステップS6において、制御部50は、高齢者などの乗客が踏段30に乗り終わった後に、第1基準走行速度v1から通常速度v0に走行速度vを上げる。この理由は、高齢者などの乗客であっても、踏段30の上に乗った場合には、走行速度vとは関係なく安全だからである。そしてステップS7に進む。
【0041】
ステップS7において、高齢者などの乗客が下階側に到着する前に踏段30の走行速度vを再び第1基準走行速度v1に下げ、高齢者などの乗客が踏段30から降り易いようにし、ステップS8に進む。制御部50が、第1基準走行速度v1に下げるタイミングは、踏段30が通常速度v0で上階から下階に至るまでの時間を予め測定しておき、その時間に基づいて第1基準走行速度v1に下げる。
【0042】
ステップS8において、高齢者などの乗客が踏段30から降りたことを下階側のマット72の面圧センサ74が検出した後に、再び踏段30の走行速度vを通常速度v0に復帰させる。そしてステップ2に戻る。
【0043】
(6)効果
本実施形態によれば、高齢者などの乗客が、踏段30に乗ろうとするときに、踏段30の走行速度vが下がるため、乗客の安全性を確保できる。
【0044】
また、乗客の歩行速度wは、乗客が歩くマット72の足跡に基づいて判断するため、確実に歩行速度wを算出できる。
【0045】
また、左右一対の足跡を検出する場合に、一方の足跡の面圧分布と反転した状態の面圧分布を他方の足跡とするため、左右一つの足跡を確実に検出できる。
【0046】
また、面圧センサ74は、格子状に配された複数のセル面圧センサ76から構成されているため、足跡の位置を確実に把握できる。
【0047】
(7)変更例
上記実施形態では、検出した歩行速度wが、第1基準歩行速度k1を基準にして踏段30の走行速度vを変更したが、これに代えて第1基準歩行速度k1と第2基準歩行速度k2(但し、k1>k2である)を設定することにより、乗客の歩行速度wを3段階に分け、歩行速度wが遅いほどより踏段30の走行速度vを下げる。すなわち、第2基準歩行速度k2より歩行速度wが遅いときは、第2基準走行速度v2(0<v2<v1<v0、例えば、20m/分)に下げる。
【0048】
また、上記実施形態では、高齢者などの乗客が踏段30に乗った後は、通常速度v0に復帰させていたが、これに限らず、高齢者などの乗客がエスカレータ10を降りるまで、第1基準走行速度v1で走行させてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、マット72を歩く乗客の足跡だけで歩行速度wを判断したが、これに加えて例えば建屋1の天井面にカメラを設置して乗降口の動画像を撮影する。制御部50は、撮影した動画像から乗客の姿を解析し、乗客が成人、子供、杖を突いていたり松葉杖を使用している乗客かを判断し、杖や松葉杖による面圧分布を除き、乗客の足跡のみを検出してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、マット72のセル面圧センサ76は、ON/OFFのみを検出したが、これに代えて圧力値を測定するセル面圧センサ76を用いてもよい。この場合には、セル面圧センサ76は、制御部50には位置情報と検出圧力値をセンサ情報として出力する。制御部50は、検出圧力値の大きさに応じて人間の足跡か否かを判断する。例えば、体重60kgの乗客や、体重30kgの子供の乗客などの圧力値を含む面圧分布を予め記憶しておき、この記憶した圧力値を含む面圧分布で乗客の足跡を検出し、その足跡から歩行速度wを算出してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、足跡の面圧分布の重心位置を足跡の位置としたが、これに代えて面圧分布の前端部、中心位置、又は、後端部の位置を足跡の位置としてもよい。
【0052】
上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0053】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。