特許第6262318号(P6262318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 阪神高速技術株式会社の特許一覧 ▶ 内外構造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000002
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000003
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000004
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000005
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000006
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000007
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000008
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000009
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000010
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000011
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000012
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000013
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000014
  • 特許6262318-ケーブル点検装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6262318
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ケーブル点検装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20180104BHJP
   E01D 19/16 20060101ALI20180104BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20180104BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   E01D22/00 A
   E01D19/16
   B64C27/08
   B64C39/02
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-233386(P2016-233386)
(22)【出願日】2016年11月30日
【審査請求日】2016年11月30日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508061549
【氏名又は名称】阪神高速技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512138965
【氏名又は名称】内外構造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】陵城 成樹
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−056622(JP,A)
【文献】 特開2016−107843(JP,A)
【文献】 特開2016−135046(JP,A)
【文献】 特開2010−239687(JP,A)
【文献】 特開2012−163402(JP,A)
【文献】 日本ロボット学会協力企画 最新 ロボット事情 第29回 エクスプライナー−送電線の検査用ロボット,ロボコンマガジン 5月号,竹生 修己 株式会社オーム社
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
B64C 27/00−39/02
B66B 5/00− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象のケーブルを取り囲むように配置され、点検を実行する点検機器が搭載されるフレームと、
上記フレームに対向して取り付けられ、上記ケーブルに接して回転する少なくとも1対の車輪と、
一端に上記フレームが接続され、他端に飛行体が接続されて、接続棒と、この接続棒の一端を上記フレームに接続する第1ヒンジと、上記接続棒の他端を上記飛行体に接続する第2ヒンジを有する接続体とを備え、
上記第1ヒンジが有する回動軸は、上記飛行体が飛行する際の姿勢が水平に制御される際に水平方向を向く面である水平基準面と平行に延びており、
上記第2ヒンジが有する回動軸は、上記飛行体の水平基準面と平行に延びており、
上記第2ヒンジの回動軸は、上記第1ヒンジによるフレームの回動面と平行の回動面内で、上記接続棒と飛行体を互いに回動可能に接続することを特徴とするケーブル点検装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル点検装置において、
上記飛行体は、飛行中の姿勢を自律的に水平に保持する自律水平制御装置を有することを特徴とするケーブル点検装置。
【請求項3】
請求項1に記載のケーブル点検装置において、
上記飛行体は、無線通信により受けた前進又は後退及び上昇又は下降の指令に応じて空中の飛行位置を制御する指令応答制御装置を有することを特徴とするケーブル点検装置。
【請求項4】
請求項1に記載のケーブル点検装置において、
上記1対の車輪は、一方の車輪がケーブルの表面に接するとき、他方の車輪がケーブルの表面に対して遊間を形成するように上記フレームに取り付けられていることを特徴とするケーブル点検装置。
【請求項5】
請求項1に記載のケーブル点検装置において、
上記車輪は、上記フレームの中心軸に対して直交方向に回転軸が延在するローラ状に形成されていることを特徴とするケーブル点検装置。
【請求項6】
請求項に記載のケーブル点検装置において、
上記フレームは、上記ケーブルの軸方向の寸法が軸直角方向の寸法よりも大きく形成され、長手方向の両側に、上記ケーブルの軸方向視において上下方向と左右方向に対向する2対の車輪が各々配置されていることを特徴とするケーブル点検装置。
【請求項7】
請求項1に記載のケーブル点検装置において、
上記飛行体は、飛行を停止したときに上記ケーブルに当接して停止時の姿勢を保持する当接部材を有することを特徴とするケーブル点検装置。
【請求項8】
請求項に記載のケーブル点検装置において、
上記飛行体は、回転翼を有し、上記当接部材が上記ケーブルに当接したときに、上記回転翼がケーブルに接触しない姿勢を保持するように形成されていることを特徴とするケーブル点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば斜張橋等が有するケーブルを点検するケーブル点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
斜張橋やニールセンローゼ橋等では、主要な荷重をケーブルで支持しているため、ケーブルの維持管理を定期的に行っている。ケーブルの維持管理では、ケーブルの塗膜に、ひび割れや剥がれ等の異常が生じていないかを観察する目視点検が行われている。従来、ケーブルの目視点検は、ケーブルに吊下げたゴンドラに点検員が乗り込み、点検員がケーブルに接近して行われていたが、点検員が高所のケーブルに接近するのは危険が伴うという不都合があった。
【0003】
そこで、従来、ケーブルを点検するため、ケーブルに沿って走行する装置本体に、目視に代えてケーブルを撮影するカメラ等の点検機器を搭載し、無線通信を利用した遠隔操作によりケーブルの点検を行う自走式のケーブル点検装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この自走式のケーブル点検装置は、装置本体にバッテリやモータや変速ギヤ等の駆動装置を備えるため、質量が比較的大きく、ケーブルに設置する作業に手間がかかる不都合があった。また、最近の橋梁のケーブルには、強風雨時に振動が生じるレインバイブレーション現象を防止するため、表面に平行突起が設けられているものがあるが、質量の大きなケーブル点検装置が走行することにより、上記突起を破損するおそれがある。
【0004】
このような不都合を解決可能なケーブル点検装置として、従来、ケーブルに沿って移動可能な本体を、無線ヘリコプタで吊り下げて移動させるように構成されたヘリコプタ式のケーブル点検装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。図11は、上記従来のヘリコプタ式のケーブル点検装置を示す図である。このケーブル点検装置115は、ケーブル113に移動可能に装着された点検車116と、この点検車116を吊り下げた状態で移動させる無線ヘリコプタ117を備える。点検車116は、ケーブル113を取り囲むフレーム121と、このフレーム121の周方向に沿って取り付けられた複数の車輪118a〜118eと、ケーブル113の表面を撮影するカメラ125を備える。フレーム121は、車輪118a〜118eを回転支持する複数の回転軸127と、各回転軸127同士を連結する連結部材128を備える。連結部材128は、チェーン状に連結されており、ケーブル113の径及び傾斜角に応じて車輪118a〜118eの当接位置を調整する機能を有している。
【0005】
点検車116は、無線ヘリコプタ117に対して回動可能に連結されたリンク機構122により吊り下げられている。リンク機構122は、無線ヘリコプタ117から点検車116のフレーム121に向けて延びる主軸123と、無線ヘリコプタ117の飛行角度に応じて点検車116との連結角度が調整される調整軸124とを有する。このリンク機構122により、無線ヘリコプタ117が点検車116に対して角度を変更可能、かつ、回転可能になっており、点検車116に対して所定の方向の移動が制限されることなく、高い自由度で飛行可能になっている。
【0006】
無線ヘリコプタ117は、無線通信で操作信号が送信されるコントローラを操作者が操作することにより、ケーブル113に沿って飛行させられる。あるいは、無線ヘリコプタ117は、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)を利用した位置検出機能を備えた制御部に、ケーブル113の傾斜や長さを考慮した飛行経路を予め登録しておくことにより、ケーブル113に沿って飛行させられる。無線ヘリコプタ117がケーブル113に沿って飛行する際、無線ヘリコプタ117の飛行姿勢は、ケーブル113の角度や、周辺の障害物の有無に応じて適宜変更される。このとき、無線ヘリコプタ117は、リンク機構122によって点検車116に接続されているので、ケーブル113から左右にずれた位置を飛行可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−245496号公報
【特許文献2】特開2016−56622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のヘリコプタ式のケーブル点検装置は、リンク機構122により、無線ヘリコプタ117が点検車116に対して角度を変更可能、かつ、回転可能に接続されているので、点検車116のケーブル113周りの姿勢が不安定になる不都合がある。詳しくは、図13に示すように、無線ヘリコプタ117がケーブル113に沿って飛行する際に、矢印Mで示すようにケーブル113の軸直角方向に移動しようとすると、リンク機構122の作用により、図14の矢印R1で示すように、ケーブル113を中心に右回りに回動する。これにより、点検車116は、矢印R2で示すように、ケーブル113を中心に右回りに回動する。このように点検車116がケーブル113の回りを回動すると、カメラ125の撮影方向が変化するので、カメラ125がケーブル113の撮影すべき位置からずれた位置を撮影することとなり、点検精度の低下を招いてしまう。
【0009】
このような点検車116のケーブル113の回りの回動は、無線ヘリコプタ117が常にケーブル113の鉛直方向の真上を飛行することにより、防止できる。しかしながら、操作者がコントローラを通じて操作する場合、無線ヘリコプタ117を常にケーブル113の真上を飛行させるのは、操作者が無線ヘリコプタ117から離れた位置にあるため、実質的に不可能である。また、無線ヘリコプタ117に飛行経路を予め登録する場合、飛行位置はGPSの位置検出誤差や風の影響等を受けるので、無線ヘリコプタ117を常にケーブル113の真上を飛行させるのは困難である。
【0010】
そこで、本発明の課題は、点検機器が搭載された本体を飛行体で移動させるケーブル点検装置において、点検機器のケーブル回りの回転を防止でき、点検精度の低下を防止できるケーブル点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のケーブル点検装置は、点検対象のケーブルを取り囲むように配置され、点検を実行する点検機器が搭載されるフレームと、
上記フレームに対向して取り付けられ、上記ケーブルに接して回転する少なくとも1対の車輪と、
一端に上記フレームが接続され、他端に飛行体が接続されて、上記フレームを上記飛行体の水平基準面に対して直角を成す回動面内で回動可能に、かつ、上記回動面外で回動不可能に接続する接続体と
を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、点検対象のケーブルを取り囲むように配置されたフレームに、ケーブルの点検を実行する点検機器が搭載されている。ケーブルに接して回転する少なくとも1対の車輪が、フレームに対向して取り付けられている。このフレームに、このフレームを移動させる飛行体が、接続体によって接続されている。この接続体は、一端にフレームが接続され、他端に飛行体が接続されており、上記フレームを上記飛行体の水平基準面に対して直角を成す回動面内で回動可能に、かつ、上記回動面外で回動不可能に接続している。ケーブルが水平面に対して傾斜して配設されている場合、飛行体がケーブルに沿って飛行すると、この飛行体による駆動力が接続体を介してフレームに作用し、ケーブルに接する車輪が回転しながらフレームがケーブルに沿って移動する。ここで、ケーブルの上方で、飛行体の水平基準面が水平方向を向くように飛行体の姿勢を保持すると、接続体によりフレームが回動させられる回動面は、飛行体の水平基準面に対して直角を成すので、鉛直方向を向く。したがって、飛行体から鉛直方向を向く回動面に沿った下方に、フレームが位置することとなる。その結果、このフレームが取り囲むケーブルが、飛行体から上記回動面に沿った下方に位置することとなる。このように、飛行体の姿勢が水平に制御されれば、接続体がフレームを回動面内で回動可能かつ回動面外で回動不可能に接続することで発揮される規制作用により、飛行体の位置が、自律的にケーブルの鉛直方向の上方に配置される。したがって、飛行体は、ケーブルの概ね上方を飛行すれば、接続体の規制作用によってケーブルの真上に配置されることとなる。その結果、操作者が無線通信を介して飛行体を操作する場合、飛行体をケーブルの真上に位置させるための高精度な操作を行わなくても、飛行体を安定してケーブルの真上に位置するように飛行させることができる。したがって、フレームを、ケーブル回りの回転を防止しながら、ケーブルに沿って移動させることができる。また、飛行体に飛行経路を予め入力して自律的に飛行させる場合、位置検出誤差や風の影響等を受けても、接続体の規制作用により、飛行体がケーブルの真上に位置するように飛行できる。したがって、フレームを、ケーブル回りの回転を防止しながら、ケーブルに沿って移動させることができる。その結果、点検機器のケーブルに対する点検位置を、ケーブルの回りにおいて安定して保持できるので、上記点検機器は安定して精度の高い点検を行うことができる。
【0013】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記接続体の一端は、上記フレームと接続体を上記回動面内で互いに回動可能かつ上記回動面外で互いに回動不可能に接続する第1ヒンジにより上記フレームに接続され、上記接続体の他端は、上記飛行体と接続体を上記回動面内で回動可能かつ上記回動面外で回動不可能に接続する第2ヒンジにより上記飛行体に接続されている。
【0014】
上記実施形態によれば、接続体の一端が、フレームと接続体を飛行体の水平基準面に対して直角を成す回動面内で互いに回動可能かつ上記回動面外で互いに回動不可能に接続する第1ヒンジにより、フレームに接続されている。これと共に、接続体の他端が、飛行体と接続体を上記回動面内で互いに回動可能かつ上記回動面外で互いに回動不可能に接続する第2ヒンジにより、飛行体に接続されている。これにより、上記飛行体は、飛行するとき、上記第1及び第2ヒンジで接続された接続体により、ケーブルを取り囲むフレームとの間が、上記回動面内で回動可能かつ上記回動面外で回動不可能に規制される。その結果、上記飛行体をケーブルの概ね上方に飛行させれば、上記接続体の第1及び第2ヒンジの規制作用により、飛行体をケーブルの真上に位置させることができる。
【0015】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記飛行体は、飛行中の姿勢を自律的に水平に保持する自律水平制御装置を有する。
【0016】
上記実施形態によれば、飛行体は、自律水平制御装置で飛行中の姿勢が自律的に水平に保持されることにより、飛行体とフレームを接続する接続体の規制作用によって、ケーブルの真上に位置させられる。したがって、容易かつ良好な精度でケーブルの真上をケーブルに沿って移動できる。
【0017】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記飛行体は、無線通信により受けた前進又は後退及び上昇又は下降の指令に応じて空中の飛行位置を制御する指令応答制御装置を有する。
【0018】
上記実施形態によれば、飛行体は、飛行体とフレームを接続する接続体の規制作用によってケーブルの真上に配置されるので、指令応答制御装置により、無線通信で受けた前進又は後退及び上昇又は下降の指令に応じて空中の飛行位置が制御されるのみで、ケーブルの真上をケーブルに沿って移動できる。したがって、ケーブルの軸直角方向の制御が行われなくても、無線通信を介した簡易な操作により、精度よくケーブルの真上をケーブルに沿って移動できる。ここで、水平面に対して傾斜して配置されたケーブルに関し、傾斜の上側に向かう動きを前進といい、傾斜の下側に向かう動きを後退という。
【0019】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記1対の車輪は、一方の車輪がケーブルの表面に接するとき、他方の車輪がケーブルの表面に対して遊間を形成するように上記フレームに取り付けられている。
【0020】
上記実施形態によれば、1対の車輪は、一方の車輪がケーブルの表面に接するとき、他方の車輪がケーブルの表面に対して遊間を形成するようにフレームに取り付けられているので、飛行体でフレームが駆動される際、飛行体からフレームに作用する力の方向に応じて、一対の車輪のうちのいずれかの車輪のみがケーブルに接触する。したがって、ケーブルと車輪との間の摩擦力を低減でき、比較的小さいエネルギーで迅速にフレームを移動することができる。また、ケーブルの表面に存在する凸部に一方の車輪が接触しても、他方の車輪にケーブルの表面との間に遊間が存在するので、上記一方の車輪は凸部を乗り越えることができる。したがって、車輪が凸部に係止することなく、安定してケーブルの表面を回転して移動を継続することができる。
【0021】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記車輪は、上記フレームの中心軸に対して直交方向に回転軸が延在するローラ状に形成されている。
【0022】
上記実施形態によれば、フレームに取り付けられてケーブルに接する車輪が、フレームの中心軸に対して直交方向に回転軸が延在するローラ状に形成されているので、ケーブルの表面に凸部や凹部が設けられていても、車輪の進行方向を実質的に変えることなく凸部や凹部を乗り越えることができる。したがって、フレームを安定してケーブルに沿って移動させることができる。
【0023】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記フレームは、上記ケーブルの軸方向の寸法が軸直角方向の寸法よりも大きく形成され、長手方向の両側に、上記ケーブルの軸方向視において上下方向と左右方向に対向する2対の車輪が各々配置されている。
【0024】
上記実施形態によれば、フレームがケーブルの軸方向が長手方向となるように形成され、このフレームの長手方向の両側に2対の車輪が各々配置されているので、ケーブルの表面に設けられた凸部や凹部に車輪が係止することなく、安定してケーブルに沿って移動することができる。
【0025】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記飛行体は、飛行を停止したときに上記ケーブルに当接して停止時の姿勢を保持する当接部材を有する。
【0026】
上記実施形態によれば、飛行体が飛行を停止したとき、当接部材によってケーブルに当接して姿勢を保持するので、飛行体の停止時に、飛行体の部品がケーブルに接触して破損する不都合や、フレームと飛行体を接続する接続体に過大な負荷が作用する不都合を防止できる。
【0027】
一実施形態のケーブル点検装置は、上記飛行体は、回転翼を有し、上記当接部材が上記ケーブルに当接したときに、上記回転翼がケーブルに接触しない姿勢を保持するように形成されている。
【0028】
上記実施形態によれば、飛行体が飛行を停止したとき、当接部材がケーブルに当接することにより、飛行体が有する回転翼がケーブルに接触しない姿勢に保持されるので、回転翼がケーブルに接触して破損する不都合を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態のケーブル点検装置の使用状態を示す側面図である。
図2】実施形態のケーブル点検装置を示す側面図である。
図3】実施形態のケーブル点検装置を示す正面図である。
図4】実施形態のケーブル点検装置の一部を示す平面図である。
図5】実施形態のケーブル点検装置の一部を示す正面図である。
図6】実施形態のケーブル点検装置の使用状態を模式的に示す正面図である。
図7】実施形態のケーブル点検装置の使用状態を模式的に示す正面図である。
図8】変形例のケーブル点検装置の使用状態を示す側面図である。
図9】変形例のケーブル点検装置を示す正面図である。
図10】変形例の使用状態を示す側面図である。
図11】従来のケーブル点検装置の使用状態を示す側面図である。
図12】従来のケーブル点検装置を示す正面図である。
図13】従来のケーブル点検装置を模式的に示す正面図である。
図14】従来のケーブル点検装置を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態のケーブル点検装置により、橋梁のケーブルを点検する様子を示す側面図である。図2は、実施形態のケーブル点検装置の側面図であり、図3は、実施形態のケーブル点検装置の正面図である。このケーブル点検装置は、斜張橋やニールセンローゼ橋等の橋梁のケーブルを点検するものであり、飛行体としてのマルチコプタで駆動されて移動するように形成されている。
【0032】
このケーブル点検装置1は、ケーブル15に沿って移動可能なフレーム2と、このフレーム2に取り付けられ、ケーブル15に接して回転する複数の車輪8と、上記フレーム2をマルチコプタ3に接続する接続体4を備える。
【0033】
図4は、ケーブル15に設置されたフレーム2及び車輪8を示す平面図であり、図5は、ケーブル15に設置されたフレーム2及び車輪8を示す正面図である。このフレーム2は、正面が正方形を成す一方、側面が長方形を成す直方体形状に形成されており、長手方向をケーブル15の延在方向に向けて、このケーブル15を取り囲むように配置される。フレーム2は、直方体の各辺にアングル材が配置され、各アングル材の端部が互いに固定されて形成されている。フレーム2の側面、天面及び底面には、長手方向の中央に、短手方向に延在するプレートが、長辺のアングル材の間に架け渡されて取り付けられている。このフレーム2の側面のプレートに、接続体4の一端に接続される第1ヒンジ11が設置されている。フレーム2の側面、天面及び底面のいずれかのアングル材とプレートが、フレーム2に対して着脱可能に形成され、これらのアングル材とプレートを離脱してなる開口を通して、ケーブル15にフレーム2を配置又は撤去するようになっている。フレーム2の長手方向の端部には、点検機器としてのカメラ6が取り付けられている。カメラ6は、ケーブル15を撮影して可視光の静止画像又は動画像を出力する。なお、フレーム2は、ケーブル15を取り囲むように配置可能であれば、直方体形状以外に、正面が多角形や円形を成す筒状に形成されてもよい。
【0034】
車輪8は、フレーム2の長手方向の両端に、ケーブル15を取り囲むように4個ずつ配置されている。この車輪8は円筒形状を成し、フレーム2の正方形を成す4辺の内側に、各辺と平行に夫々配置されている。これにより、上記車輪8は、フレーム2の長手方向に延びる中心軸に対して直交方向に延びる回転軸の回りに、回転するようになっている。フレーム2の正方形の4辺のうちの対向する辺に設けられた1対の車輪8,8は、互いに最も近い部分の間の離隔距離が、ケーブル15の直径よりも、数ミリメートルから数センチメートルだけ大きく設定されている。これにより、フレーム2がケーブル15に沿って移動するとき、一対の車輪8のうちの一方の車輪8のみが、ケーブル15の表面に接するように形成されている。上記一対の車輪8は、少なくとも一方の車輪8の回転軸が直角方向に移動可能に形成されており、これにより、ケーブル15の直径に応じて一対の車輪8の離隔距離が調節可能になっている。
【0035】
接続体4は、フレーム2を、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で回動可能に、かつ、上記回動面外で回動不可能に、マルチコプタ3に接続している。接続体4は、接続棒10と、この接続棒10の一端をフレーム2に接続する第1ヒンジ11と、上記接続棒10の他端をマルチコプタ3に接続する第2ヒンジ12を有して形成されている。接続棒10は、図3の正面図に示すように、フレームの両側面と天面の外側にかけて配置されるコ字状部分10aと、このコ字状部分10aの中央からマルチコプタ3側に延びる棒状部分10bを有する。接続棒10のコ字状部分10aの先端は、2つの第1ヒンジ11により、フレーム2の両側面に夫々接続されている。接続棒10の棒状部分10bの先端は、第2ヒンジ12により、マルチコプタ3の下面に接続されている。2つの第1ヒンジ11,11は、フレーム2の側面視において同じ位置に設置され、フレーム2の中心軸の直角方向に一直線上に延びる回動軸回りに、フレーム2と接続棒10を互いに回動可能に接続している。
【0036】
第1ヒンジ11,11の回動軸は、マルチコプタ3の水平基準面と平行に延びており、図2の矢印P1で示すように、接続棒10のコ字状部分10aの先端が、この回転軸回りに回動可能に接続されている。これにより、第1ヒンジ11,11は、フレーム2と接続棒10を、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で互いに回動可能、かつ、上記回動面外で互いに回動不可能に接続している。ここで、マルチコプタ3の水平基準面とは、マルチコプタ3が飛行する際の姿勢が水平に制御される際に、水平方向を向く面である。例えば、マルチコプタ3の水平基準面は、マルチコプタ3が有する複数の回転翼の回転軸の先端を結んで定義される面と平行を成す面である。
【0037】
第2ヒンジ12の回動軸は、マルチコプタ3の水平基準面と平行に延びており、図2の矢印P2で示すように、接続棒10の棒状部分10bの先端が、この回転軸回りに回動可能に接続されている。これにより、第2ヒンジ12は、接続棒10とマルチコプタ3を、このマルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で互いに回動可能、かつ、上記回動面外で互いに回動不可能に接続している。さらに、第2ヒンジ12の回動軸は、上記第1ヒンジ11の回動軸と平行に延びており、これにより、上記第1ヒンジ11によるフレーム2の回動面と平行の回動面内で、接続棒10とマルチコプタ3を互いに回動可能に接続している。
【0038】
上記接続棒10と第1ヒンジ11と第2ヒンジ12を有する接続体4により、フレーム2を、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で回動可能に、かつ、上記回動面外で回動不可能に、マルチコプタ3に接続している。ここで、フレーム2がマルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で回動可能であるとは、フレーム2上の所定の着目点が、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角の平面内に軌跡を描くように、フレーム2が回動することをいう。また、フレーム2がマルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面外で回動不可能であるとは、フレーム2上の所定の着目点が、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角の平面に対して傾斜した方向には、フレーム2が回動することが不可能であることをいう。
【0039】
マルチコプタ3は、平面視において正方形の頂点を成す位置に配置された4つの回転翼と、これらの回転翼を駆動する4つのモータと、モータを含むマルチコプタ3の各部を制御する制御装置と、操作者が操作するコントローラとの間で無線通信を行う無線通信装置と、上記モータ、制御装置及び無線通信装置に電力を供給するバッテリを備える。なお、回転翼及びモータは、4個に限定されない。
【0040】
マルチコプタ3の制御装置は、CPU(Central Processing Unit)と、主記憶装置と、補助記憶装置を有し、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、マルチコプタ3の制御に関する処理を実行する。制御装置は、3軸ジャイロセンサ、3軸加速度センサ、磁気センサ、GPS(Global Positioning System)装置を有する。3軸ジャイロセンサは、3次元空間を定義する3方向の角速度を検出し、3軸加速度センサは、3次元空間を定義する3方向の加速度を検出する。磁気センサは、地磁気を検出して方位を検出する。GPS装置は、GPS衛星から出力される信号を受信して現在の位置を検出する。また、制御装置は、気圧を測定して高度を検出する気圧センサや、周囲の物体の存在を検出する超音波センサを有してもよい。
【0041】
制御装置は、上記センサの検出値と、無線通信装置を通じてコントローラから受けた指令に基づいて、モータの回転数を制御する。これにより、マルチコプタ3は、操作者がコントローラに入力した方向に移動し、旋回し、高度を変更する。このように、制御装置は、コントローラからの指令に基づいてマルチコプタ3の制御を行う場合、本発明の指令応答制御装置として機能する。
【0042】
また、制御装置は、操作者による指令と関連し、或いは、操作者による指令とは別に、マルチコプタ3の姿勢を自律的に水平に保持する。このとき、制御装置は、本発明の自律水平制御装置として機能する。制御装置による水平の制御は、マルチコプタ3を、進行方向視において水平に保持して行う。ここで、マルチコプタ3の進行方向に前傾するピッチングは、前後方向の進行方向に対応して許容する。すなわち、制御装置は、自律水平制御を行う場合、マルチコプタ3の進行方向と直角方向の姿勢を水平に保持し、進行方向の姿勢は他の条件に応じて適宜制御してもよい。
【0043】
また、制御装置は、飛行すべき位置及び高度からなる飛行経路を示す飛行経路情報が格納される飛行経路記憶部を有し、この飛行経路記憶部に格納された飛行経路情報で示される飛行経路を飛行するように、上記各センサの検出値に基づいてモータの回転数を制御する自動飛行モードを有する。
【0044】
上記構成のケーブル点検装置1は、次のようにしてケーブル15の点検を行う。まず、フレーム2の所定のアングルとプレートを離脱して開口を形成し、この開口を通してケーブル15にフレーム2を取り付け、この後、上記アングルとプレートを装着する。これにより、ケーブル15を取り囲むようにフレーム2を設置する。続いて、フレーム2の接続体4の他端に、第2ヒンジ12によってマルチコプタ3を接続する。ここで、マルチコプタ3を配置する方向を、傾斜したケーブル15の上側に向かって前側とし、傾斜したケーブル15の下側に向かって後側とする。
【0045】
フレーム2にマルチコプタ3を接続すると、操作者がコントローラを操作して、マルチコプタ3をケーブル15に沿って飛行させる。操作者は、マルチコプタ3を目視で視認できる橋梁上の位置で操作を行う。操作者が、コントローラに前進かつ上昇の指令を入力すると、ケーブル15の傾斜方向の上側に前側を向けて配置されたマルチコプタ3が、ケーブル15に沿ってケーブル15の上方を、傾斜方向の上側に向かって飛行する。
【0046】
このとき、マルチコプタ3は、ケーブル15の真上からずれて飛行し、図6の正面図に示すように、ケーブル15の上方で傾斜角度αを成す場合がある。ここで、マルチコプタ3は、ケーブル15を取り囲むように配置されたフレーム2に、接続体4によって接続されている。すなわち、接続体4の一端が、第1ヒンジ11により、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で互いに回動可能かつ上記回動面外で互いに回動不可能に、フレーム2に接続されている。これと共に、上記接続体4の他端が、第2ヒンジ12により、上記回動面内で互いに回動可能かつ上記回動面外で互いに回動不可能に、マルチコプタ3に接続されている。この接続体4の両端の第1及び第2ヒンジ11,12の規制作用により、マルチコプタ3とフレーム2との間が、上記回動面内で回動可能かつ上記回動面外で回動不可能に規制される。一方、マルチコプタ3は、制御装置により、進行方向と直角方向の姿勢が水平となるように回転翼の回転数が制御され、自律的に水平に調節される。これにより、マルチコプタ3は、傾斜角度αが零となるように、重心回りの回転力が作用するが、マルチコプタ3は接続体4によってフレーム2に接続されているので、上記接続体4の両端の第1及び第2ヒンジ11,12の規制力により、上記回転力のモーメントがフレーム2に伝達され、フレーム2がケーブル15の回りを回転する。その結果、マルチコプタ3は、図7に示すように、ケーブル15の鉛直方向の真上に配置される。このように、マルチコプタ3がケーブル15の概ね上方に飛行するように制御すれば、上記接続体4の規制作用により、マルチコプタ3の飛行位置がケーブル15の真上に自律的に調節される。その結果、コントローラを操作する操作者は、マルチコプタ3を、ケーブル15の真上に位置させるための高精度な操作を行う必要が無く、ケーブル15の概ね上方に位置するように操作すればよい。このような簡易な操作によって、マルチコプタ3を、安定してケーブル15の真上に位置させて飛行させることができる。
【0047】
このように、マルチコプタ3をケーブル15の概ね上方に位置するように操作すればよいので、マルチコプタ3をフレーム2に接続する際に、マルチコプタ3の前後方向を平面視においてケーブル15の中心軸の延在方向に一致させておけば、コントローラの操作を単純化することができる。マルチコプタ3のコントローラとしては、ジョイスティック型のものが多く存在し、ジョイスティック型のコントローラでは、左手で操作される左スティックと、右手で操作される右スティックとを有するものが多い。この場合、左スティックを直立位置から倒す方向に応じて、奥側が前進、手前側が後退、左側が左旋回、右側が右旋回の指令を、マルチコプタ3に送信するように設定されているものがある。また、右スティックを直立位置から倒す方向に応じて、奥側が上昇、手前側が下降、左側が左移動、右側が右移動の指令を、マルチコプタ3に送信するように設定されているものがある。このような場合、本実施形態のケーブル点検装置1を操作するためには、左スティックは奥側の前進と手前側の後退を指令し、右スティックは奥側の上昇と手前側の下降を指令できればよい。したがって、コントローラの左スティックと右スティックを、奥側と手前側にのみ操作可能に、スティックの移動を規制する規制部材をコントローラに設置する。規制部材としては、スティックの直立位置に対して両側に配置されたガイド棒や、スティックの奥側から手前側に延びる溝を有し、この溝にスティックを貫通させて装着されるカバー等が挙げられる。このような規制部材をコントローラに設置することにより、操作者は、前進又は後退及び上昇又は下降の指令のみを容易かつ確実に行うことができる。このような簡易な操作によって、マルチコプタ3を、安定してケーブル15の真上に位置させて飛行させることができる。
【0048】
こうしてマルチコプタ3がケーブル15の真上を飛行するので、マルチコプタ3で駆動されるフレーム2は、ケーブル15回りに回転することなく、ケーブル15に沿ってケーブル15の軸方向に移動する。その結果、フレーム2に搭載されたカメラ6は、ケーブル15の所定位置を安定して撮影でき、フレーム2のケーブル15回りの回転に起因する撮影位置のずれを効果的に防止できる。すなわち、点検機器としてのカメラ6によって、安定して精度の高い点検を行うことができる。
【0049】
また、フレーム2がマルチコプタ3によって駆動されるとき、フレーム2に設けられた車輪8は、ケーブル15に関して対向する一対の車輪8が、ケーブル15の直径よりも大きく形成されているので、上記一対の車輪8のうちの一方の車輪8のみがケーブル15に接触する。したがって、ケーブル15と車輪8との間に生じる摩擦力を低減でき、比較的小さいエネルギーで迅速にフレーム2を移動することができる。すなわち、マルチコプタ3のバッテリの消費量が比較的少なく、ケーブル点検装置1の点検時間を比較的長く確保することができる。また、橋梁のケーブル15の表面には、例えばレインバイブレーションを防止するための凸条のような凸部が設けられる場合がある。このような凸部に一方の車輪8が接触しても、他方の車輪8にはケーブル15の表面との間に遊間が存在するので、上記一方の車輪8は凸部に係止することなく凸部を乗り越えることができる。したがって、フレーム2の車輪8は、安定してケーブル15の表面を回転して移動を継続することができる。
【0050】
マルチコプタ3でフレーム2を駆動する場合、制御装置を自動飛行モードに設定してマルチコプタ3を飛行させてもよい。この場合、マルチコプタ3の制御装置の飛行経路記憶部に、ケーブル15に沿ってケーブル15の上方を飛行する経路を示す飛行経路情報を、予め格納する。マルチコプタ3は、自動飛行モードで飛行する場合、制御装置の各種センサの誤差や、風の影響により、予め設定された飛行経路からずれる場合がある。このような場合でも、マルチコプタ3とフレーム2を接続する接続体4の規制作用により、マルチコプタ3の飛行位置がケーブル15の真上に自律的に調節される。したがって、フレーム2のケーブル15の回りの回動を効果的に防止でき、ケーブル15の点検を安定して行うことができる。
【0051】
本実施形態のケーブル点検装置1は、点検を開始又は終了するとき、フレーム2に接続されたマルチコプタ3がケーブル15に接近し、マルチコプタ3の回転翼がケーブル15に接触する不都合が生じる可能性がある。また、フレーム2に接続体4で接続されたマルチコプタ3は、回転翼が停止すると揚力が失われるので、接続体4にマルチコプタ3の質量が集中するおそれがある。そこで、変形例のケーブル点検装置51では、マルチコプタ3に、飛行を停止したときにケーブル15に当接して停止時の姿勢を保持する当接部材17を設けている。図8は、変形例のケーブル点検装置51が飛行している様子を示す側面図であり、図9は、変形例のケーブル点検装置51の正面図である。このケーブル点検装置51は、マルチコプタ3の本体フレームに、当接部材17が固定されている。当接部材17は、本体フレームの幅方向の両側から下方に延びる2つのアーム18,18と、これらのアーム18,18の下端に連結されて本体フレームと平行に延在する接触棒19を有する。接触棒19は、少なくともケーブル15に接触する部分に、緩衝部材が設けられている。当接部材17は、アーム18,18の長さが調節可能に形成されており、これにより、マルチコプタ3の本体フレームと接触棒19との間の距離が調節可能になっている。マルチコプタ3の本体フレームと接触棒19との間の距離を、ケーブル15の傾斜角度に応じて調節することにより、種々の角度のケーブル15について、接触棒19がケーブル15に接したときにマルチコプタ3の姿勢を安定にできる。また、接触棒19がケーブル15に接したときに、マルチコプタ3の回転翼がケーブル15に接触する不都合を防止できる。
【0052】
変形例のケーブル点検装置51は、マルチコプタ3が飛行するとき、図8に示すように当接部材17の接触棒19がケーブル15から離れ、フレーム2を駆動する。一方、マルチコプタ3が飛行を停止するとき、接続体4の接続棒10が第1ヒンジ11の回りに回動してマルチコプタ3がケーブル15に接近し、図10に示すように、当接部材17の接続棒19がケーブル15の表面に当接する。この当接部材17と、フレーム2に接続された接続体4により、停止状態のマルチコプタ3がケーブル15の上に支持される。当接部材17がケーブル15に当接したマルチコプタ3は、回転翼がケーブル15から離れた姿勢に保持されるので、マルチコプタ3の起動時や停止時に、接近したケーブル15に回転翼が接触して破損する不都合を、効果的に防止できる。また、マルチコプタ3をケーブル15の上に安定した姿勢で配置できるので、ケーブル点検装置51を、ケーブル15に配置する作業や、ケーブル15から撤去する作業を、容易に行うことができる。
【0053】
上記実施形態において、接続体4は、接続棒10の一端を、第1ヒンジ11によってフレーム2の側面に接続したが、フレーム2に対する接続体4の接続位置は、側面に限られず、天面でもよい。接続体4は、フレーム2を、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で回動可能に、かつ、上記回動面外で回動不可能に、マルチコプタ3に接続していれば、フレーム2との接続位置は特に限定されない。
【0054】
また、上記実施形態において、マルチコプタ3は、コントローラを操作する操作者がマルチコプタ3の位置を目視で視認して操作を行ったが、マルチコプタ3に、撮影画像を無線通信により送信する無線カメラを搭載し、この無線カメラの撮影画像を操作者が視認してコントローラを操作してもよい。
【0055】
また、飛行体で駆動されて移動するように形成されたケーブル点検装置は、飛行体を含んでもよい。
【0056】
また、上記実施形態のケーブル点検装置1,51は、構造物としての斜張橋やニールセンローゼ橋等の橋梁が有するケーブルを点検するために用いられたが、橋梁に限らず、例えば電波塔や送電塔等の塔構造物や、超高層建築物等の他の構造物が有する種々のケーブルを点検するために適用できる。
【0057】
また、上記実施形態のケーブル点検装置1,51は、点検機器として、可視光の画像を撮影するカメラを用いたが、赤外線カメラ等の他の撮像装置や、超音波探傷装置や、電磁波探査装置や、X線探査装置等、種々の機器を採用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,51 ケーブル点検装置
2 フレーム
3 マルチコプタ
4 接続体
6 カメラ
8 車輪
10 接続棒
11 第1ヒンジ
12 第2ヒンジ
15 ケーブル
17 当接部材
【要約】
【課題】点検機器のケーブル回りの回転を防止でき、点検精度の低下を防止できるケーブル点検装置を提供する。
【解決手段】ケーブル点検装置1は、ケーブル15を撮影するカメラ6が取り付けられ、ケーブル15に沿って移動可能なフレーム2と、ケーブル15に接して回転する複数の車輪8と、フレーム2をマルチコプタ3に接続する接続体4を備える。接続体4は、フレーム2を、マルチコプタ3の水平基準面に対して直角を成す回動面内で回動可能に、かつ、この回動面外で回動不可能に、マルチコプタ3に接続する。マルチコプタ3をケーブル15の上方に飛行させると、マルチコプタ3が姿勢を自律的に水平に制御するに伴い、接続体4の規制作用によってマルチコプタ3がケーブル15の真上に自律的に配置される。ケーブル15の真上を飛行するマルチコプタ3で駆動されるフレーム2は、ケーブル15回りの回動が防止される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14