(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262341
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】支持体のコーティング組成物およびコーティング方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/08 20060101AFI20180104BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20180104BHJP
C09D 201/04 20060101ALI20180104BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
C09D183/08
C09D7/12
C09D201/04
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302L
【請求項の数】53
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-526391(P2016-526391)
(86)(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公表番号】特表2016-528334(P2016-528334A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】CN2013079513
(87)【国際公開番号】WO2015006937
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ,ジョニー
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ヤンミーン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤチュイン
(72)【発明者】
【氏名】ハルス,ライアン
【審査官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−157856(JP,A)
【文献】
特開2012−144695(JP,A)
【文献】
特開2011−046688(JP,A)
【文献】
特開2009−074070(JP,A)
【文献】
特開2010−185074(JP,A)
【文献】
特表2001−512170(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0114120(US,A1)
【文献】
特開平10−120444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/08
B05D 7/24
C09D 7/12
C09D 201/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランポリマーを含む少なくとも1種のコーティング剤;および
(b)前記コーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和するか、あるいは少なくとも部分的に乳化するのに有効な量で少なくとも1種のモノクロロ,トリフルオロプロペンを含むキャリヤー;
を含む組成物であって、
前記ペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランは次の式I、式II、または式IIIの化合物を含み:
R1f−Si(R)a(X)3−a (I)
Si(R)a(X)3−a−R2f−Si(R)a(X)3−a (II)
R1f−Si(R)z(X)2−a−O−Si(R1f) (R)a(X)1−a−O−
Si(R)a(X)2−a−R1f (III)
ここで、
Rは一価のアルキル基またはアリール基であり;
Xは加水分解基であり;
aは0から2までの整数であり;
R1fはF−(CF2)l−Rf−(CH2)mY(CH2)n−であり;そして
R2fは−(CH2)nY(CH2)m−Rf−(CH2)mY(CH2)n−であり;
ここで、
lは1から6までの整数であり;
mは1または2であり;
nは2から20までの整数であり;
YはOまたは二価の有機基であり;そして
Rfは -(OC3F6)x-、-(OC2F4)y-、-(OCF2)z- またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化繰返しユニットを含むペルフルオロポリエーテル基であり、ここでx、yおよびzはそれぞれ独立して1から200までの整数であり、好ましくは1から100までの整数であり、より好ましくは5から50までの整数であり、さらにより好ましくは10から30までの整数である、組成物。
【請求項2】
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)及び/又はシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
フルオロカーボンコキャリヤーおよび非フッ素系コキャリヤーからなる群から選択されるコキャリヤーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロクロロカーボン、フルオロエーテル、フルオロケトン、およびこれらの二つ以上の組み合わせからなる群から選択されるフルオロカーボンコキャリヤーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
アルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、およびこれらの二つ以上の組み合わせからなる群から選択される非フッ素系コキャリヤーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロブチルエーテル、ペルフルオロイソブチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、クロロホルム、シクロヘキサン、2,2-ジクロロプロパン、塩化メチレン、d-リモネン、イソプレン、スチレン液、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチレングリコール、2-エチルヘキサノール、およびこれらの二つ以上の組み合わせからなる群から選択されるコキャリヤーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
コキャリヤーはキャリヤーの約10重量パーセントまでの量で存在し、好ましくは約30重量パーセント、より好ましくは約50重量パーセント、さらに好ましくは約70重量パーセントの量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のモノクロロ,トリフルオロプロペンが、実質的に完全に可溶性および/または実質的に完全に乳化性の流体混合物を与えるのに有効な量でキャリヤー中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
キャリヤーは組成物の5%から99.99%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
約99.8重量%から99.95重量%までのキャリヤー及び0.05重量%から0.2重量%までのコーティング剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
20重量%のコーティング組成物、及びトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及びエチルペルフルオロイソブチルエーテルとエチルペルフルオロブチルエーテルを含むキャリヤーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
キャリヤーが、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、及びエタノール、アセトン、ヘキサン、トルエン、クロロホルム又は酢酸エチルを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項16】
キャリヤーが、100未満のGWPを有し、好ましくは50未満、より好ましくは20未満、さらに好ましくは5未満のGWPを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
アルキル基は、1〜4個の炭素原子のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルなどである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
アリール基は、フェニル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物を含む、霧化しうる組成物。
【請求項20】
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含む、請求項19に記載の霧化しうる組成物。
【請求項21】
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)及び/又はシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、請求項19に記載の霧化しうる組成物。
【請求項22】
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)を含む、請求項20に記載の霧化しうる組成物。
【請求項23】
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、請求項20に記載の霧化しうる組成物。
【請求項24】
アルキル基は、1〜4個の炭素原子のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルなどである、請求項19に記載の霧化しうる組成物。
【請求項25】
アリール基は、フェニル基である、請求項19に記載の霧化しうる組成物。
【請求項26】
支持体の表面にコーティング剤を塗布するための方法であって、次の各工程:
(a)(i)少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランを含む少なくとも1種のコーティング剤、及び(ii)および前記コーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和するか、あるいは少なくとも部分的に乳化するのに有効な量で少なくとも1種のモノクロロ,トリフルオロプロペンを含むキャリヤーを含む組成物を用意すること;
前記ペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランは次の式I、式II、または式IIIの化合物を含み:
R1f−Si(R)a(X)3−a (I)
Si(R)a(X)3−a−R2f−Si(R)a(X)3−a (II)
R1f−Si(R)z(X)2−a−O−Si(R1f) (R)a(X)1−a−O−
Si(R)a(X)2−a−R1f (III)
ここで、
Rは一価のアルキル基またはアリール基であり;
Xは加水分解基であり;
aは0から2までの整数であり;
R1fはF−(CF2)l−Rf−(CH2)mY(CH2)n−であり;そして
R2fは−(CH2)nY(CH2)m−Rf−(CH2)mY(CH2)n−であり;
ここで、
lは1から6までの整数であり;
mは1または2であり;
nは2から20までの整数であり;
YはOまたは二価の有機基であり;そして
Rfは -(OC3F6)x-、-(OC2F4)y-、-(OCF2)z- またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化繰返しユニットを含むペルフルオロポリエーテル基であり、ここでx、yおよびzはそれぞれ独立して1から200までの整数であり、好ましくは1から100までの整数であり、より好ましくは5から50までの整数であり、さらにより好ましくは10から30までの整数である、
(c)前記組成物を支持体の表面に塗布すること;および
(d)前記コーティング剤からキャリヤーを除去すること;
を含む、方法。
【請求項27】
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)及び/又はシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
アルキル基は、1〜4個の炭素原子のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルなどである、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
アリール基は、フェニル基である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記キャリヤーは蒸発によって除去される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物は吹き付け塗布によって支持体に塗布される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記塗布する工程は、ディップコーティング、回転塗布、流し込み、はけ塗り、および浸漬からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
支持体のコーティング後の表面が、90°を超え、好ましくは100°を超え、さらに好ましくは105°を超える水の接触角によって測定される撥水性を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
支持体のコーティング後の表面が、50°を超え、好ましくは60°を超え、さらに好ましくは65°を超えるヘキサンの接触角によって測定される撥油性をを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
硬化の工程を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
室温(約25℃)から約150℃までの処理温度を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
支持体は、紙、織物、金属、金属酸化物、ガラス、プラスチック、磁器およびセラミックスである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
支持体は、ガラス、セラミックス、金属、またはプラスチックである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
物品が、光学部材;ディスプレー;衛生陶器;ガラス窓およびヘッドランプのカバー;建物の外壁;台所用品;公衆電話ボックス;美術品;コンパクトディスク及びDVDである、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
コーティングが、レンズ、フィルターなどの光学部材に塗布される、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
コーティングが、指紋を防ぐために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
コーティングが、眼鏡のレンズ、非反射フィルターなどの光学部材;美術品;コンパクトディスクまたはDVDの上の指紋を防ぐために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
コーティングが、汚れを防ぐために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
コーティングが、衛生陶器;自動車、列車、航空機などの乗り物におけるガラス窓およびヘッドランプのカバー;建物の外壁または公衆電話ボックスの汚れ防止のために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
コーティングが、撥水性のために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
コーティングが、バスタブ、洗面台などの衛生陶器;建物の外壁または美術品の撥水性のために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
コーティングが、油汚れを防ぐため又は撥油性のために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
コーティングが、台所用品または美術品の油汚れを防ぐため又は撥油性のために与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
コーティングが、固着防止コーティングとして与えられる、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
コーティングが、公衆電話ボックスのための固着防止コーティングとして与えられる、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、コーティング剤およびそのコーティング剤のための溶媒またはキャリヤーを含むコーティング組成物、コーティング方法およびコーティング装置に関する。典型的には、その組成物を意図されたやり方で塗布する結果として、溶媒またはキャリヤーを(通常は蒸発によって)除去すると、あるいは除去するのに伴って、コーティング剤は機能するようになる。
【背景技術】
【0002】
[0002]多くの適用には(単一または複数の)有効成分のためのキャリヤー、分散剤、希釈剤、加工助剤、および/または溶媒として作用する物質の使用が含まれる。それらのキャリヤー、分散剤、希釈剤、加工助剤または溶媒(以下では便宜上しばしば「キャリヤー」と称する)は、予定された使用部位での有効成分のうちの少なくとも一つのものの配置および/または作用を促進し、また好ましくは向上させるものであり、そして同時に、そのようなキャリヤーは有効成分の作用を妨げてはならない。そのような状況の中でキャリヤーはしばしば、使用時に開放された大気中に放出されるであろうから、合成物質と作用力の環境への影響についての関心が高まっているために、キャリヤー物質の環境特性はますます重要になっている。例えば、過去の数年の間に、冷却の分野において地球温暖化とオゾン層の枯渇への影響がはるかに小さい物質を開発することに相当な努力が向けられてきた。さらに、大気中への物質の放出はスモッグやもやなどの低いレベルの大気状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
[0003]好ましい環境特性に加えて、キャリヤーのために用いられる物質は好ましくは、特定の用途によっては他の特性との取り合わせを行うことも(困難ではあるが)望ましく、それは例えば、数ある特性の中でも、有効成分に対して不活性であること、低い毒性および低い引火性である。多くの用途において、キャリヤーは有効成分を少なくとも部分的に乳化し、そして/または、有効成分を好ましくは少なくとも部分的に溶媒和する能力を有することも望ましく、あるいはそのような能力を有することが重要である。
【0004】
[0004]一つの特定の用途としては、ガラスやセラミックスのような支持体を表面処理して、それらの支持体が油や水をはじくようにすることがある。例えば、タッチパネルディスプレースクリーン、光学レンズ、鏡、その他同種類のものを含めた多くの支持体の表面は、指紋、皮脂、ほこり、汗、化粧品などによる汚れを受けやすい。ガラスやセラミックスのような支持体を防油性および防水性にするための、一つ以上のフッ素化基を有するフッ素化シラン(すなわち、シラン化合物)の使用は公知である。例えば、米国特許8211544号は、ペルフルオロポリエーテルポリマー鎖のブロックを含むオルガノシリコーン化合物を含む表面改質剤を用いて支持体の表面を処理する方法を記載している。米国特許7294731号はペルフルオロポリエーテルシランを含むコーティング組成物を記載している。米国特許7196212号はペルフルオロポリエーテル改質シランを含む表面処理剤を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許8211544号
【特許文献2】米国特許7294731号
【特許文献3】米国特許7196212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0005]湿式コーティング法によるこのようなコーティング剤の堆積には、ペルフルオロカーボン(例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタンおよびペルフルオロオクタン)、フッ素改質芳香族炭化水素溶媒(例えば、ビス-トリフルオロメチル-ベンゼン)、部分的にフッ素化した炭化水素溶媒(例えば、2H,3H-ペルフルオロペンタン)、およびヒドロフルオロエーテルなどの溶媒を必要とする。典型的に、フッ素化溶媒に溶かしたコーティング用ポリマーのかなり希釈した溶液を支持体の上に塗布すると、極めて薄い層のコーティングが得られる。その結果、大量の溶媒が大気の環境中へ放出される。しかし、そのような溶媒は比較的高い地球温暖化係数(GWP)を有している(例えば、ペルフルオロヘキサンは9300のGWPを有し、2H,3H-ペルフルオロペンタンは1640のGWPを有し、ペルフルオロブチルメチルエーテルは297のGWPを有し、そして1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルは580のGWPを有する)。地球温暖化はますます懸念されるようになっているので、コーティング用ポリマーを十分に溶解し、それらのポリマーで支持体をコーティングすることができて、低いGWPを示す溶媒に対する必要性が当分野において存在する。
【0007】
[0006]上記の必要性ならびにその他の必要性は本発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]本発明の一つの側面において、コーティング剤とキャリヤーを含むコーティング組成物が提供され、キャリヤーはコーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和するか、あるいは少なくとも部分的に乳化するのに有効な量で用いられる。キャリヤーはモノクロロ,トリフルオロプロペンを含み、そして好ましくは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含み、さらに好ましくはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(E))および/またはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(Z))を含む。
【0009】
[0008]コーティング剤は、アルキルオキシシランによって改質された少なくとも一つのペルフルオロポリエーテル(「PFPE」)ポリマーを含む。特定の態様において、このPFPE改質アルキルオキシシランポリマーは次の一般式I、一般式II、または一般式IIIを有する:
R
1f−Si(R)
a(X)
3−a (I)
Si(R)
a(X)
3−a−R
2f−Si(R)
a(X)
3−a (II)
R
1f−Si(R)
z(X)
2−a−O−Si(R
1f) (R)
a(X)
1−a−O−
Si(R)
a(X)
2−a−R
1f (III)
ここで、
Rは一価のアルキル基またはアリール基であり;
Xは加水分解基であり;
aは0から2までの整数であり;
R
1fはF−(CF
2)
l−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;そして
R
2fは−(CH
2)
nY(CH
2)
m−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;
ここで、
lは1から6までの整数であり;
mは1または2であり;
nは2から20までの整数であり;
YはOまたは二価の有機基であり;そして
R
fは -(OC
3F
6)
x-、-(OC
2F
4)
y-、-(OCF
2)
z- またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化(全フッ素置換された)繰返しユニットを含むペルフルオロポリエーテル基であり、ここでx、yおよびzはそれぞれ独立して1から200までの整数であり、好ましくは1〜100の範囲、より好ましくは5〜50の範囲、さらに好ましくは10〜30の範囲の整数である。
【0010】
[0009]特定の態様において、コーティング組成物はコキャリヤー(co-carrier)を含む。コキャリヤーはフルオロカーボンコキャリヤーあるいは非フッ素系コキャリヤーとすることができる。特定の好ましいフルオロカーボンコキャリヤーとしては、(これらに限定はされないが)ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロクロロカーボン、フルオロエーテル、フルオロケトン、およびこれらの二つ以上の組み合わせがある。特定の好ましい非フッ素系コキャリヤーとしては、(これらに限定はされないが)アルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、およびこれらの二つ以上の組み合わせがある。好ましいコキャリヤーの例としては、(これらに限定はされないが)ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、ペルフルオロブチルエーテル、ペルフルオロイソブチルエーテル、ペルフルオロブチルメチルエーテル、ペルフルオロブチルエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、クロロホルム、シクロヘキサン、2,2-ジクロロプロパン、塩化メチレン、d-リモネン、イソプレン、スチレン液、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチレングリコール、2-エチルヘキサノール、およびこれらの二つ以上の組み合わせがある。
【0011】
[0010]別の側面において、本発明はコーティング剤とキャリヤーを含むコーティング組成物で構成される霧化しうる組成物を提供し、キャリヤーはコーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和するか、あるいは少なくとも部分的に乳化するのに有効な量で用いられる。キャリヤーはモノクロロ,トリフルオロプロペンを含み、そして好ましくは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含み、さらに好ましくはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(E))および/またはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(Z))を含む。コーティング剤は、アルキルオキシシランによって改質された少なくとも一つのペルフルオロポリエーテルポリマーを含む。特定の態様において、このPFPE改質アルキルオキシシランポリマーは上で定義した通りの一般式I、一般式II、または一般式IIIを有する。
【0012】
[0011]さらに別の側面において、本発明は支持体の表面にコーティング剤を塗布するための方法を提供する。この方法は少なくとも1種のコーティング剤と、このコーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和するか、あるいは少なくとも部分的に乳化するのに有効な量のキャリヤーとを含む組成物を用意することを含む。適当なキャリヤーはモノクロロ,トリフルオロプロペンを含み、そして好ましくは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含み、さらに好ましくはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(E))および/またはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(Z))を含む。適当なコーティング剤は、アルキルオキシシランによって改質されたペルフルオロポリエーテルポリマーを含む。特定の態様において、このPFPE改質アルキルオキシシランポリマーは上で定義した通りの一般式I、一般式II、または一般式IIIを有する。特定の態様において、コーティング剤からキャリヤーを除去する工程は蒸発によって行われる。適当な塗布工程には、吹付け塗布、ディップコーティング(dip coating)、回転塗布、流し込み、はけ塗り、および浸漬(immersing)が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0012]本発明は1種以上のコーティング剤を含む組成物、方法および装置を提供するものであり、そのコーティング剤はキャリヤーとしてモノクロロ,トリフルオロプロペンを利用し、そして好ましくは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を、さらに好ましくはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(E))および/またはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zdまたはHCFO-1233zd(Z))を利用する。本明細書において「コーティング剤」という用語は、組成物がコーティングを形成した後にその組成物、方法または装置の意図された機能に寄与し、そして/または、その機能を向上させる、その組成物の任意の1種以上の成分を指す。特定の好ましい態様において、形成されるコーティングは水および/または油をはじく作用を行うことが予定されている。本明細書において「キャリヤー」という用語は、包括的には、その主な機能が(好ましくは、比較的に薄めた状態において)コーティング剤を包含するための手段を与えること、および/または、予定される使用部位におけるコーティング組成物の容易な塗布および/またはその有効性を助けるかまたはそれに寄与するための手段を与えることであるような組成物、装置または方法の任意の1種以上の構成要素を指す。
【0014】
[0013]出願人は、本発明の好ましい組成物、方法および装置は、好ましくは低いGWP、低いODPおよび/または低いVOCを含めた、かなり有利で望ましい環境特性を与えることを期せずして見いだした。特定の態様において、本発明のキャリヤーは100未満のGWPを有し、好ましくは50未満、より好ましくは20未満、さらに好ましくは10未満、さらに好ましくは5未満のGWPを有する。本発明のキャリヤー成分は一般的には予定された最終生成物を形成または生成するように直接には作用しないが、そうではあっても、キャリヤーとしてのその有効性のために、例えば、コーティング剤を予定された目標の位置に均一に分布させることによって、そして/または、コーティング剤をそれが予定された機能を果たすのにより有効な状態で残留させることによって、キャリヤーの有効性が最終生成物の特性に間接的に影響を及ぼすことを、当業者であれば認識するであろう。
【0015】
[0014]有利で望ましい環境特性を与えることに加えて、キャリヤーとして用いるための本明細書に記述するモノクロロ,トリフルオロプロペン化合物は、好ましくは、そして特に、後述する化学式I、化学式II、または化学式IIIに従うポリマーを含む好ましいコーティング剤と組み合わせて用いると、数ある特性の中でもコーティング剤に対して実質的に不活性であること、低毒性および低引火性を含めた(困難ではあるが)望ましい他の特性の組み合わせを有する。特定の用途と態様において、好ましいコーティング剤と組み合わせたキャリヤーは、組成物、方法または装置の次の一つ以上の特性に寄与する:キャリヤーを除去して硬化した後の、あるいはコーティング剤をさらに加工処理した後の材料の可撓性、キャリヤーを除去して硬化した後の、あるいはコーティング剤をさらに加工処理した後の材料の高品質の仕上り、迅速な乾燥時間、および組成物の塗布の容易さ、および/または塗布の効率。出願人はさらに、本発明に係る好ましいガラスまたはセラミックスの支持体の表面は、本発明のコーティング組成物を塗布した後には、90°を超え、好ましくは100°を超え、さらに好ましくは105°を超える水の接触角によって測定される撥水性を示すことを期せずして見いだした。出願人はまた、そのような支持体の表面は、本発明のコーティング組成物を塗布した後には、50°を超え、好ましくは60°を超え、さらに好ましくは65°を超えるヘキサンの接触角によって測定される撥油性を示すことを見いだした。加えて、本発明の特定の好ましい態様に従うコーティング組成物を好ましい支持体の表面に塗布すると、例えば、支持体の表面を人の指でなぞるときに、滑らかな移動が可能になるように支持体の摩擦係数が変化する。
【0016】
[0015]キャリヤーはコーティング剤を少なくとも部分的に乳化し、そして/または、好ましくはコーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和する能力を有することも望ましく、あるいはそのような能力を有することも重要である。支持体の表面を処理する用途については、キャリヤーとコーティング剤の組み合わせが少なくとも部分的に可溶性の混合物および/または少なくとも部分的に乳化性の混合物を形成する能力があることが、かなり望ましいだろう。出願人は、本発明の多くの好ましい態様が少なくとも部分的に可溶性の混合物および/または部分的に乳化性の混合物である流体組成物を与え、また、より好ましい適用においては実質的に完全に可溶性および/または実質的に完全に乳化性の流体組成物を与えることを見いだした。さらに、本発明の組成物、方法および装置は、多くの態様において、材料に塗布した後に追加の工程をほとんど必要とせずに、あるいは全く必要とせずに、キャリヤーを容易に除去する能力をもたらすという利益を有する。従って、好ましい組成物、方法および装置において、コーティング剤を硬化または発現させるのに要する時間は比較的短く、そして塗布工程の後の追加のエネルギーはほとんど必要とせず、また好ましくは、そのようなエネルギーは全く必要としない。
【0017】
[0016]コーティング剤は、本発明の広い範囲に従う様々なペルフルオロポリエーテル(「PFPE」)ポリマー物質およびそのようなポリマー物質の組み合わせとすることができる。特定の態様において、ポリマーはアルキルオキシシランで改質されたPFPEである。本発明におけるコーティング剤として用いるのに適したそのようなPFPE改質アルキルオキシシランの例としては、米国特許7196212号、米国特許7294731号および米国特許8211544号に記載されたものがある。理論によって拘束されることは望まないが、このPFPEは、本発明の組成および方法に従って塗布すると、その鎖の可撓性、疎水性および疎油性のために、好ましい支持体の表面に低摩擦係数と防汚機能を与え、一方、アルキルオキシシラン基は支持体の表面と反応して表面へのPFPEポリマーの結合性を向上させる、と出願人は考えている。
【0018】
[0017]本発明に係るPFPE改質アルキルオキシシラン化合物は、例えば、通常のヒドロシリル化プロセスに従って白金族触媒の存在下でいずれかの端部にアルファ不飽和部分を有するペルフルオロポリエーテルへの加水分解基を有するヒドロシランの付加反応を行うことによって調製される。それによって得られる本発明のPFPE改質アルキルオキシシランは次の一般式I、一般式II、または一般式IIIを有する:
R
1f−Si(R)
a(X)
3−a (I)
Si(R)
a(X)
3−a−R
2f−Si(R)
a(X)
3−a (II)
R
1f−Si(R)
z(X)
2−a−O−Si(R
1f) (R)
a(X)
1−a−O−
Si(R)
a(X)
2−a−R
1f (III)
ここで、
Rは一価のアルキル基またはアリール基であり;
Xは加水分解基であり;
aは0から2までの整数であり;
R
1fはF−(CF
2)
l−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;そして
R
2fは−(CH
2)
nY(CH
2)
m−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;
ここで、
lは1から6までの整数であり;
mは1または2であり;
nは2から20までの整数であり;
YはOまたは二価の有機基であり;そして
R
fは -(OC
3F
6)
x-、-(OC
2F
4)
y-、-(OCF
2)
z- またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化(全フッ素置換された)繰返しユニットを含むペルフルオロポリエーテル基であり、ここでx、yおよびzはそれぞれ独立して1から200までの整数であり、好ましくは1〜100の範囲、より好ましくは5〜50の範囲、さらに好ましくは10〜30の範囲の整数である。適当なアルキル基の例としては、1〜4個の炭素原子の低級アルキル基またはフェニル基、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびフェニルがある。
【0019】
[0018]出願人はさらに、その特性(例えば、引火性、カウリブタノール(KB)値、またはその種の他のもの)、塗布の方法(例えば、吹付け、非吹付けなど)および/またはコーティング剤とのその溶解性に応じて、コーティングの用途においては特にシス-またはトランス-HCFO-1233zdを選択できることを見いだした。非限定的な例として、特定の吹付け塗布の用途においては、トランス-HCFO-1233zd異性体がその低沸点の故に好ましく、しかしながら、必要に応じて、コーティング剤の溶解性を補うためにシス異性体も用いてもよい。沸点が低いと蒸発が速くなり、ひいては実際的なコーティング性能が得られる。特定の非吹付け塗布(例えば、ディッピング(dipping)、流し込み、はけ塗り、浸漬(immersing)など)においては、キャリヤーとコーティング剤の組み合わせが少なくとも部分的に可溶性の混合物および/または少なくとも部分的に乳化性の混合物を形成すること、および、用いられる異性体の選択はコーティング剤とのその異性体の溶解性に基づいて行うことが、特に望ましい。特定の非吹付け塗布においては、シス-HCFO-1233zd異性体が好ましいかもしれず、というのは、それはコーティング剤との良好な溶解性を示すからであり、特に上記の包括的なカテゴリーに入るコーティング剤との良好な溶解性を示す。あるいは、トランス-HCFO-1233zd異性体が好ましいか、あるいはそれを用いても良いような幾つかの非吹付け塗布においては、それを単独で用いることができ、あるいは特定の態様においては、(必要な場合)1種以上のコキャリヤーとともに用いることができ、特にコーティング剤とのトランス-1233zdの溶解性または相溶性を改善する1種以上のコキャリヤーとともに用いることができる。
【0020】
[0019]出願人は、驚くべきことに、そして期せずして、シス-HCFO-1233zdのカウリブタノール(KB)値は34であり、そしてトランス-HCFO-1233zdのKB値は25であることを発見した。すなわち、シス異性体はトランス異性体よりも30%以上大きなKB値を有し、このことは、少なくとも特定の用途においては、シス異性体がより良好な溶媒であることを示唆している。従って、本発明の特定の側面において、選択されるモノクロロ,トリフルオロプロペンは、そして特に、選択されるHCFO-1233zd異性体は、30よりも大きなKB値を有する。さらなる態様において、有効成分に対して望ましい溶解性を与えるために、特にシス-HCFO-1233zd異性体を単独で、あるいはトランス異性体とともに、選択することができる。
【0021】
[0020]上述したカウリブタノール値と低い沸点に加えて、HCFO-1233zdは極めて低い表面張力も示す(例えば、トランス-HCFO-1233zdは約12.7ダイン/cmの表面張力を有する)。これらの特性(すなわち、低い表面張力、低い沸点、および有利なカウリブタノール値)は、用いる異性体または用いる異性体の比率に応じて調整することができる浸透性、揮発性および溶解力のバランスをHCFO-1233zdに与える。一つの特定の異性体が好ましいかもしれないという本明細書に開示される態様においては他の異性体または両方の異性体を含めることは必ずしも排除されない、ということを出願人は認めている。むしろ、それは単に、その用途に対しては好ましいかもしれない一つの異性体の特質を特定しているに過ぎない。そのような用途においていずれかの異性体を用いることができるということに過ぎず、あるいは異性体の混合物として用いることもできる。
【0022】
[0021]本発明のキャリヤーは組成物の過半量の割合を構成すると想定されるけれども、好ましい態様においては、キャリヤーは組成物の約5%から約99.99%までを構成し、好ましくは少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%を構成するだろう。特定の相当に好ましい態様において、本発明のコーティング組成物は約99.8重量%から約99.95重量%までのモノクロロ,トリフルオロプロペンを含み、そして約0.05重量%から約0.2重量%までのコーティング剤を含む。組成物、方法または装置の全体的な性能を補うか、あるいは向上させるために、キャリヤーの中にその他の物質が含まれていてもよい、ということが認識されるだろう。キャリヤーの中にそのような補助的かつ付加的な物質の何がしかが含まれていること、およびそのような物質の全てが含まれていることは、本発明の広い範囲の中に包含される。
【0023】
[0022]本発明のモノクロロ,トリフルオロプロペンのキャリヤー成分と組み合わせて用いることができる付加的または補助的な物質の例としては、その他の炭化水素、その他のフルオロクロロカーボンを含めた他のフルオロカーボン、フルオロエーテル、フルオロケトン、アルコール、ケトンおよび/またはホルメートなどのコキャリヤーがある。上述したように、これらの付加的または補助的な成分は、例えば、組成物、方法または装置の総体的な環境への影響を低下させるために、そして/または、組成物の性能を改善するために添加することができる。他の例としては、コーティング層の摩擦抵抗および/または疎水性と疎油性を改善する添加剤がある。一般的には好ましくないが、このコーティング方法は、所望の最終仕上げ表面またはコーティングした表面を得るために二つ以上の異なる組成物または物質を適用することを必要とする、ということも考えられる。そのような場合、本発明の装置は、本発明のコーティング組成物とともに、本発明に係るコーティングを得るために予定された追加の物質または組成物あるいは本発明に係るコーティングを得るために本発明のコーティング組成物とともに用いられる追加の物質または組成物を含むと考えられる。
【0024】
[0023]コーティング組成物がさらにコキャリヤーを含むような本発明の特定の態様において、適当なコキャリヤーには他のフルオロカーボンおよび非フッ素系コキャリヤーが含まれるだろう。フルオロカーボンの例としては、(これらに限定はされないが)ペルフルオロカーボン(例えば、ペルフルオロヘキサン)、ヒドロフルオロカーボン(例えば、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)、フルオロクロロカーボン、フルオロエーテル(例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ペルフルオロブチルメチルエーテル、およびペルフルオロブチルエチルエーテル)、およびフルオロケトンがある。非フッ素系コキャリヤーの例としては、(これらに限定はされないが)アルコール(例えば、メタノールおよびエタノール)、ケトン(例えば、アセトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン)、クロロカーボン(例えば、クロロホルム、シクロヘキサン、2,2-ジクロロプロパン、塩化メチレン)、ホルメート、ナフサ、テルペンをベースとする溶媒(例えば、d-リモネン)、その他の高蒸発速度の有機物質(例えば、イソプレン、スチレン液、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチレングリコール、2-エチルヘキサノール)、およびこれらのいずれかのものの混合物であってコキャリヤーとして用いられるさらなる物質を伴うか、または伴わない混合物がある。キャリヤーとともにコキャリヤーが含まれる特定の態様において、コキャリヤーはキャリヤーの約10重量パーセントまでの量で存在し、好ましくは約30重量パーセント、より好ましくは約50重量パーセント、さらに好ましくは約70重量パーセントの量で存在する。
【0025】
[0024]本発明のコーティング方法は、ここで記述しているコーティング組成物を用意すること、およびコーティングするべき支持体、本体および/または表面にそのコーティング組成物を塗布することを含み、使用する部位にその組成物を配置するとコーティング剤はコーティングまたは被膜を形成することができて、より好ましくは、キャリヤーの少なくとも一部を除去するとコーティングまたは被膜を形成することができて、さらに好ましくは、キャリヤーの少なくとも一部が蒸発するとコーティングまたは被膜を形成することができる。PFPE改質アルキルオキシシランはHCFO-1233zdに溶解することができて、場合により、上述した1種以上の追加のコキャリヤーおよび添加剤の存在下で溶解することができる。コーティングを形成する際には、はけ塗り、浸漬、吹付け塗布、回転塗布および蒸発などの周知の方法によって組成物を塗布することができる。特定の態様において、コーティングの性能を改善するために硬化の工程が用いられる。最適な処理温度は個々の処理方法に応じて異なるが、室温(約25℃)から約150℃までの温度が望ましい。処理条件は用いられる個々のコーティング剤と添加剤に応じて異なるので、適切な処理条件は塗布方法に応じて選択される、ということが理解されよう。
【0026】
[0025]特定の態様において、この方法は、コーティング剤によって所望のコーティングを形成させるために、あるいはそのような形成を増進させるために、支持体、本体および/または表面からのキャリヤーの少なくとも相当な部分の除去を促進するか、あるいはそのような除去を達成することを助けるような、さらなる工程を含む。そのようなさらなる工程は本方法においては多くの形をとることができるが、多くの適用において、そのような工程は単純に、塗布されたコーティング組成物を周囲環境に曝露することからなり、それにより、多くの好ましい態様において、モノクロロ,トリフルオロプロペンの少なくとも一部が蒸発し、そして好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に全てが蒸発するだろう。幾つかの態様において、塗布されたコーティング組成物を加熱することによって蒸発は促進され、加熱工程を行うことにより、例えば、コーティングの形成または硬化が促進され、そして/または、形成したコーティングの望ましい特性の発現が促進される、という追加の利益がもたらされることが理解されよう。コーティング方法には、余分な材料を除去するための研磨工程も含まれてもよい。
【0027】
[0026]本発明の表面処理用組成物を用いて様々な支持体を処理することができる。適当な支持体としては、紙、織物、金属、金属酸化物、ガラス、プラスチック、磁器およびセラミックスがある。この表面コーティング剤を塗布すると有益な表面を有する物品としては次のようなものがある:眼鏡のレンズおよび非反射フィルターなどの光学部材(指紋やひどい汚れを防ぐためのコーティング);ディスプレー;バスタブや洗面台などの衛生陶器(水をはじくコーティングおよび防汚性コーティング);自動車、列車および航空機などの乗り物におけるガラス窓およびヘッドランプのカバー(防汚性コーティング);建物の外壁(撥水性コーティング、防汚性コーティング);台所用品(油汚れを防ぐためのコーティング);公衆電話ボックス(撥水性コーティング、防汚性コーティング、固着防止コーティング);および美術品(撥水性および撥油性コーティング、耐指紋コーティング);およびコンパクトディスクとDVD(指紋を防ぐためのコーティング)。本発明の表面コーティング剤は、レンズやフィルターなどの光学部材の上にコーティングを形成して、それらに非反射性と防汚性を付与するのに特に適している。
【0028】
[0027]それらの支持体を処理すると、コーティングした表面は油と水をはじく性質をもつために、処理した表面は汚れを保持しにくくなり、きれいにすることが容易になる。本発明のコーティング組成物を塗布することによってコーティングした表面は高度の耐久性を得るので、長期間晒したり使用したり、また繰返し清掃しても、望ましい特性は維持される。
【0029】
[0028]以下の実施例は本発明を例証する目的で提示されるが、しかし、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1.実例のコーティング組成物1によるガラス支持体の浸漬塗布
[0029]1グラムのDow Corning 2700コーティング(このコーティングはエチルペルフルオロイソブチルエーテルとエチルペルフルオロブチルエーテルの混合溶媒中のペルフルオロポリエーテル官能性トリメトキシシラン(CAS番号870998-78-0)の20%濃縮溶液である)を、ビーカーの中で199グラムのトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンによって希釈した。この溶媒の中にガラスチップを浸漬し、次いで、溶液からゆっくりと引き上げた。ガラスチップを120℃において20分間加熱した。処理したガラスの表面上での水の接触角は108度と測定された。
【0031】
実施例2.実例のコーティング組成物1によるガラス支持体の吹付け塗布
[0030]1グラムのDow Corning 2700コーティング(このコーティングはエチルペルフルオロイソブチルエーテルとエチルペルフルオロブチルエーテルの混合溶媒中のペルフルオロポリエーテル官能性トリメトキシシラン(CAS番号870998-78-0)の20%濃縮溶液である)を、ビーカーの中で199グラムのトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンによって希釈した。次いで、この希釈した溶液を手持ち式噴霧器(Iwata LPH-50)の中に充填し、そして(表面活性およびコーティングとの付着力を増大させるために)プラズマによって予め洗浄したガラスの表面に吹き付けた。ガラスを120℃において20分間加熱した。処理したガラスの表面上での水の接触角は111度と測定された。コーティングしたガラスを、Taber-5900往復摩耗試験機によって#0000のスチールウールを用いて1kgの力で2000サイクルこすった。摩耗試験を行った後の水の接触角は103度であった。
【0032】
実施例3.実例のコーティング組成物2によるガラス支持体の吹付け塗布
[0031]0.1グラムのFluorolink S10(Solvay Solexisによって供給されているエトキシシラン末端基を有するペルフルオロポリエーテル)をビーカーの中で100グラムのトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンに溶解した。次いで、この溶液を手持ち式噴霧器(Iwata LPH-50)の中に充填し、そして溶剤で予め洗浄したガラスの表面に吹き付けた。ガラスを120℃において20分間加熱した。処理したガラスの表面上での水の接触角は96度と測定された。
【0033】
実施例4.実例のコーティング組成物3によるガラス支持体の吹付け塗布
[0032]1グラムのShinetsu KY-178コーティング(このコーティングはエチルペルフルオロイソブチルエーテルとエチルペルフルオロブチルエーテルの混合溶媒中のペルフルオロポリエーテル改質ポリシロキサンの20%濃縮溶液である)を、ビーカーの中で199グラムのトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンによって希釈した。次いで、この希釈溶液を手持ち式噴霧器(Iwata LPH-50)の中に充填し、そして溶剤で予め洗浄したガラスの表面に吹き付けた。ガラスを120℃において20分間加熱した。処理したガラスの表面上での水の接触角は109度と測定された。
【0034】
実施例5.実例のキャリヤーの中のコーティング剤の溶解度
[0033]ビーカーの中でトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを無水エタノールと90対10(重量/重量)の割合で混合した。ビーカーの中で1グラムのDow Corning 2700コーティングを199グラムのトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとエタノールの混合溶媒と混合した。溶媒混合物中でのペルフルオロポリエーテル官能性トリメトキシシランの溶解度に限界があるために、PFPEポリマーの一部は溶液の中で沈殿した。相の分離を行った後、約10ccの上方の澄んだ相を秤量した時計皿に移し、そして溶媒を蒸発させるためにゆっくり加熱した。10ccの溶液の中に溶解したPFPEポリマーの量を計算するために、時計皿を再び秤量した。トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとエタノールの混合溶媒の中でのPFPEポリマーの溶解度を計算した。様々な割合のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび様々な補助溶媒を用いて同様の試験を行った。その結果を下の表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例6.実例のコーティング組成物を用いて吹付け塗布を行った後のガラス支持体についての水の接触角
[0034]ビーカーの中で1グラムのDow Corning 2700コーティングを199グラムのトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと補助溶媒との混合物と混合した。次いで、この希釈溶液を手持ち式噴霧器(Iwata LPH-50)の中に充填し、そして溶剤で予め洗浄したガラスの表面に吹き付けた。ガラスを120℃において20分間加熱した。ガラスの処理した表面上での水の接触角を測定した。その結果を下の表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例7.カウリブタノール値の測定
[0035]ASTM法(炭化水素溶媒のカウリブタノール(KB)値のためのD1133標準試験方法)を用いてトランス-1233zdとシス-1233zdの両者について、実験室においてカウリブタノール値の測定を行った。溶媒のカウリブタノール値は、カウリゴム樹脂溶液が溶媒の中でどれだけ良好に溶解するかの尺度であり、化合物の溶解力を比較するために工業界で広く用いられている。カウリブタノール溶液はFisher Scientificから得た。トランス-1233zdとシス-1233zdの両者を溶液の中に滴下し、セプタムスクリューキャップを備えた20ccのガラス瓶の中に溶液を保持した。トランス-1233zdについてのKB値は25であり、シス-1233zdについてのKB値は34であることがわかった。意外なことに、シス-1233zdのKB値はトランス-1233zdのKB値よりも30%以上大きかった。(これらに限定はされないが)電子装置の洗浄、ドライクリーニング、金属の洗浄および堆積を含めた様々な洗浄用途において広く用いられている溶剤であるCFC-113は、31のKB値を有していた。電子装置の洗浄、ドライクリーニング、金属の洗浄および堆積を考慮すると、シス-1233zdは、その高いKB値の故に好ましい溶媒であろう。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(a)少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランのポリマーを含む少なくとも1種のコーティング剤;および
(b)コーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和するか、あるいは少なくとも部分的に乳化するのに有効な量で少なくとも1種のモノクロロ,トリフルオロプロペンを含むキャリヤー;
を含むコーティング組成物。
[2]
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含む、[1]に記載の組成物。
[3]
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)を含む、[2]に記載の組成物。
[4]
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、[2]に記載の組成物。
[5]
前記ペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランは次の式I、式II、または式IIIの化合物を含み:
R
1f−Si(R)
a(X)
3−a (I)
Si(R)
a(X)
3−a−R
2f−Si(R)
a(X)
3−a (II)
R
1f−Si(R)
z(X)
2−a−O−Si(R
1f) (R)
a(X)
1−a−O−
Si(R)
a(X)
2−a−R
1f (III)
ここで、
Rは一価のアルキル基またはアリール基であり;
Xは加水分解基であり;
aは0から2までの整数であり;
R
1fはF−(CF
2)
l−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;そして
R
2fは−(CH
2)
nY(CH
2)
m−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;
ここで、
lは1から6までの整数であり;
mは1または2であり;
nは2から20までの整数であり;
YはOまたは二価の有機基であり;そして
R
fは -(OC
3F
6)
x-、-(OC
2F
4)
y-、-(OCF
2)
z- またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化繰返しユニットを含むペルフルオロポリエーテル基であり、ここでx、yおよびzはそれぞれ独立して1から200までの整数である、[1]に記載の組成物。
[6]
フルオロカーボンコキャリヤーおよび非フッ素系コキャリヤーからなる群から選択されるコキャリヤーをさらに含む、[1]に記載の組成物。
[7]
ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロクロロカーボン、フルオロエーテル、フルオロケトン、およびこれらの二つ以上の組み合わせからなる群から選択されるフルオロカーボンコキャリヤーを含む、[6]に記載の組成物。
[8]
アルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、およびこれらの二つ以上の組み合わせからなる群から選択される非フッ素系コキャリヤーを含む、[6]に記載の組成物。
[9]
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロブチルエーテル、ペルフルオロイソブチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、クロロホルム、シクロヘキサン、2,2-ジクロロプロパン、塩化メチレン、d-リモネン、イソプレン、スチレン液、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチレングリコール、2-エチルヘキサノール、およびこれらの二つ以上の組み合わせからなる群から選択されるコキャリヤーを含む、[6]に記載の組成物。
[10]
[1]に記載の組成物を含む、霧化しうる組成物。
[11]
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む、[10]に記載の霧化しうる組成物。
[12]
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)を含む、[11]に記載の霧化しうる組成物。
[13]
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、[11]に記載の霧化しうる組成物。
[14]
前記ペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランは次の式I、式II、または式IIIの化合物を含み:
R
1f−Si(R)
a(X)
3−a (I)
Si(R)
a(X)
3−a−R
2f−Si(R)
a(X)
3−a (II)
R
1f−Si(R)
z(X)
2−a−O−Si(R
1f) (R)
a(X)
1−a−O−
Si(R)
a(X)
2−a−R
1f (III)
ここで、
Rは一価のアルキル基またはアリール基であり;
Xは加水分解基であり;
aは0から2までの整数であり;
R
1fはF−(CF
2)
l−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;そして
R
2fは−(CH
2)
nY(CH
2)
m−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;
ここで、
lは1から6までの整数であり;
mは1または2であり;
nは2から20までの整数であり;
YはOまたは二価の有機基であり;そして
R
fは -(OC
3F
6)
x-、-(OC
2F
4)
y-、-(OCF
2)
z- またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化繰返しユニットを含むペルフルオロポリエーテル基であり、ここでx、yおよびzはそれぞれ独立して1から200までの整数である、[10]に記載の霧化しうる組成物。
[15]
支持体の表面にコーティング剤を塗布するための方法であって、次の各工程:
(a)(i)少なくとも1種のコーティング剤、および(ii)このコーティング剤を少なくとも部分的に溶媒和するか、あるいは少なくとも部分的に乳化するのに有効な量のキャリヤーを含む組成物を用意すること、ここで、前記コーティング剤は少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランを含み、そして前記キャリヤーは少なくとも1種のモノクロロ,トリフルオロプロペンを含む;
(b)組成物を支持体の表面に塗布すること;および
(c)コーティング剤からキャリヤーを除去すること;
を含む、前記方法。
[16]
前記モノクロロ,トリフルオロプロペンは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を含む、[15]に記載の方法。
[17]
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)を含む、[16]に記載の方法。
[18]
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)を含む、[16]に記載の方法。
[19]
前記ペルフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランは次の式I、式II、または式IIIの化合物を含み:
R
1f−Si(R)
a(X)
3−a (I)
Si(R)
a(X)
3−a−R
2f−Si(R)
a(X)
3−a (II)
R
1f−Si(R)
z(X)
2−a−O−Si(R
1f) (R)
a(X)
1−a−O−
Si(R)
a(X)
2−a−R
1f (III)
ここで、
Rは一価のアルキル基またはアリール基であり;
Xは加水分解基であり;
aは0から2までの整数であり;
R
1fはF−(CF
2)
l−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;そして
R
2fは−(CH
2)
nY(CH
2)
m−R
f−(CH
2)
mY(CH
2)
n−であり;
ここで、
lは1から6までの整数であり;
mは1または2であり;
nは2から20までの整数であり;
YはOまたは二価の有機基であり;そして
R
fは -(OC
3F
6)
x-、-(OC
2F
4)
y-、-(OCF
2)
z- またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化繰返しユニットを含むペルフルオロポリエーテル基であり、ここでx、yおよびzはそれぞれ独立して1から200までの整数である、[15]に記載の方法。
[20]
キャリヤーは蒸発によって除去される、[15]に記載の方法。
[21]
塗布する工程は、吹付け塗布、ディップコーティング、回転塗布、流し込み、はけ塗り、および浸漬からなる群から選択される、[15]に記載の方法。