特許第6262384号(P6262384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6262384
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20180104BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20180104BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08L25/04
   C08L25/10
   C08L63/00 A
   C08K3/26
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-49301(P2017-49301)
(22)【出願日】2017年3月15日
【審査請求日】2017年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-195537(P2016-195537)
(32)【優先日】2016年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-195538(P2016-195538)
(32)【優先日】2016年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-195539(P2016-195539)
(32)【優先日】2016年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】今野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宝晃
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 利春
(72)【発明者】
【氏名】大胡 寛己
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−017165(JP,A)
【文献】 特開2001−311011(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/072514(WO,A1)
【文献】 特開平09−031276(JP,A)
【文献】 特表2012−512942(JP,A)
【文献】 特開2005−132967(JP,A)
【文献】 特開昭60−139736(JP,A)
【文献】 特開2013−010851(JP,A)
【文献】 特開2001−011461(JP,A)
【文献】 特開平10−298372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と、臭素化ポリマー型難燃剤と、エポキシ化合物と、ハロゲン捕捉剤と、酸化防止剤と、を含有し、
臭素含有量が18〜42質量%であり、
前記スチレン系樹脂と前記臭素化ポリマー型難燃剤との合計量100質量部に対して、前記エポキシ化合物を4〜25質量部、前記ハロゲン捕捉剤を0.8〜15質量部、前記酸化防止剤を0.8〜7質量部含有し、
前記ハロゲン捕捉剤は、ドロマイト系化合物及びハイドロタルサイト系化合物の少なくとも一方を含み、
前記臭素化ポリマー型難燃剤は、
(a)ブタジエン及びビニル芳香族炭化水素を単量体成分として有する共重合体であり、
(b)臭素化前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が5〜90質量%であり、
(c)ブタジエン中に、1,2−ブタジエンを含有し、
(d)重量平均分子量(Mw)が1000以上であり、
(e)1H−NMR分光法による未臭素化非芳香族二重結合含有量が、臭素化前の共重合体の非芳香族二重結合含有量基準で50%未満であり、
(f)熱重量分析(TGA、Thermogravimetric Analysis)による5%減量温度が200℃以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ハロゲン捕捉剤は、少なくともドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを、ドロマイト系化合物/ハイドロタルサイト系化合物=10/90〜90/10の質量比率で含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物からなることを特徴とする難燃性樹脂成形体。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物とさらなるスチレン系樹脂とからなることを特徴とする難燃性樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤とを含む難燃性樹脂組成物と、該難燃性樹脂組成物を用いてなる難燃性樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂成形体に難燃性を付与するために用いられる難燃剤としては、一般にヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が用いられていたが、HBCDは、生体内蓄積性を有し、水生生物に有毒であり、分解しにくいという点から、代替品として臭素化ポリマー型難燃剤が検討されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、臭素化ポリマー型難燃剤は熱安定性が不充分であり、スチレン系樹脂と混合して難燃性樹脂組成物を製造するプロセスや、該難燃性樹脂組成物を用いて難燃性樹脂成形体を成形する成形プロセスにおいて高温に曝された際に熱劣化して黒異物や変色が発生し、成形体の外観を損ねる場合があった。
【0004】
このような黒異物の発生を解消する方法として、特許文献2には、臭素化ポリマー型難燃剤を樹脂と混合する際に、アルキルホスファイトやエポキシ化合物を安定剤として添加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−516019号公報
【特許文献2】特表2012−512942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤とを含有する難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、スチレン系樹脂と、臭素化ポリマー型難燃剤と、エポキシ化合物と、ハロゲン捕捉剤と、酸化防止剤と、を含有し、
臭素含有量が18〜42質量%であり、
前記スチレン系樹脂と前記臭素化ポリマー型難燃剤との合計量100質量部に対して、前記エポキシ化合物を4〜25質量部、前記ハロゲン捕捉剤を0.8〜15質量部、前記酸化防止剤を0.8〜7質量部含有し、
前記ハロゲン捕捉剤は、ドロマイト系化合物及びハイドロタルサイト系化合物の少なくとも一方を含み、
前記臭素化ポリマー型難燃剤は、
(a)ブタジエン及びビニル芳香族炭化水素を単量体成分として有する共重合体であり、
(b)臭素化前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が5〜90質量%であり、
(c)ブタジエン中に、1,2−ブタジエンを含有し、
(d)重量平均分子量(Mw)が1000以上であり、
(e)1H−NMR分光法による未臭素化非芳香族二重結合含有量が、臭素化前の共重合体の非芳香族二重結合含有量基準で50%未満であり、
(f)熱重量分析(TGA、Thermogravimetric Analysis)による5%減量温度が200℃以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
【0008】
本発明の難燃性樹脂組成物においては
記ハロゲン捕捉剤は、少なくともドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを、ドロマイト系化合物/ハイドロタルサイト系化合物=10/90〜90/10の質量比率で含むこと
記酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤であること
好ましい態様として含む。
【0009】
また、本発明の第2は、上記本発明の第1の難燃性樹脂組成物からなることを特徴とする難燃性樹脂成形体である。
【0010】
さらにまた、本発明の第3は、上記本発明の第1の難燃性樹脂組成物とさらなるスチレン系樹脂とからなることを特徴とする難燃性樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エポキシ化合物とハロゲン捕捉剤とを併用して、臭素化ポリマー型難燃剤の安定剤として用いることで、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性が改善された難燃性樹脂組成物が得られる。よって、本発明の難燃性樹脂組成物を用いて成形体を成形する際に黒異物の発生が低減され、外観に優れた難燃性樹脂成形体が提供される。
また本発明においては、上記ハロゲン捕捉剤としてドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを併用することにより、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性がより改善された難燃性樹脂組成物が得られ、黒異物の発生が低減された上に、変色の発生が防止され、外観に優れた難燃性樹脂成形体が提供される。
【0012】
また、本発明においては、上記エポキシ化合物とハロゲン捕捉剤に加えて酸化防止剤を用いることにより、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性がより改善された難燃性樹脂組成物が得られ、黒異物の発生が防止された上に、変色の発生も抑制され、外観に優れた難燃性樹脂成形体が提供される。
【0013】
さらに、本発明においては、上記ハロゲン捕捉剤としてドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを併用した上で、酸化防止剤を併用することにより、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性が高度に改善された難燃性樹脂組成物が得られ、黒異物の発生及び変色の発生のいずれもが防止され、外観に優れた難燃性樹脂成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の難燃性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と記す)は、スチレン系樹脂に配合される臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定剤としてエポキシ化合物とハロゲン捕捉剤とを併用することを特徴とし、係る樹脂組成物を用いて成形することで、本発明の難燃性樹脂成形体が得られる。本発明の難燃性樹脂成形体としては、本発明の樹脂組成物をそのまま用いて成形した難燃性樹脂成形体(以下、「第1の成形体」と記す)、或いは、本発明の樹脂組成物にさらにスチレン系樹脂を添加して、臭素含有量をより低く調整した難燃性樹脂成形体(以下、「第2の成形体」と記す)のいずれであってもよい。
【0015】
以下、本発明の樹脂組成物、第1及び第2の成形体について詳細に説明する。
【0016】
本発明の樹脂組成物に用いられるスチレン系樹脂としては、スチレンのホモポリマー、スチレンと共重合可能なモノマーとのコポリマー、及びこれらにゴム補強したスチレン系樹脂が挙げられる。例えば、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合樹脂(AAS)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂等である。これらのスチレン系樹脂は単独乃至2種以上を同時に用いることも出来る。最も好ましいのはポリスチレンである。
【0017】
本発明に使用される臭素化ポリマー型難燃剤は、従来公知のものであり、特許文献1や2で開示されるものがそのまま使用できる。好ましくは、以下の(a)〜(f)の特徴を有する臭素化共重合体が好ましく用いられる。
(a)ブタジエン及びビニル芳香族炭化水素を単量体成分として有する共重合体である。
(b)臭素化前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が5〜90質量%である。
(c)ブタジエン中に、1,2−ブタジエンを含有する。
(d)重量平均分子量(Mw)が1000以上である。
(e)1H−NMR分光法による未臭素化非芳香族二重結合含有量が、臭素化前の共重合体の非芳香族二重結合含有量基準で50%未満である。
(f)熱重量分析(TGA、Thermogravimetric Analysis)による5%減量温度が200℃以上である。
【0018】
中でも、上記(a)〜(f)の特徴を有し、ビニル芳香族炭化水素がスチレンである、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化スチレン・ブタジエンランダム共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体などが挙げられる。特に臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体が好ましく、具体的には、ケムチュラ社の「EMERALD INNOVATION 3000」やICL社の「FR122P」などの市販品が挙げられる。
【0019】
本発明において、臭素化ポリマー型難燃剤は、樹脂組成物中の臭素含有量が18〜42質量%となるように添加量を調整する。
【0020】
本発明において用いられるエポキシ化合物としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化植物油等が挙げられ、これらを単独乃至2種以上を同時に用いることも出来る。中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とエポキシ化大豆油が好ましい。エポキシ化合物の添加量は、スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤との合計100質量部に対して、好ましくは4〜25質量部である。係る範囲であれば、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性が良好に改善され、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いてなる第1の成形体、第2の成形体において、臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による黒異物の発生が効果的に低減され、成形加工性も良好で、外観に優れた成形体が得られる。より好ましくは、10〜20質量部である。
【0021】
本発明に用いられるハロゲン捕捉剤は、樹脂組成物の製造プロセスから第1の成形体或いは第2の成形体を得るまでの過程で生成する遊離ハロゲンを捕捉する成分である。例えば、ドロマイト系化合物、ハイドロタルサイト系化合物、過塩素酸マグネシウム化合物、アルミノケイ酸塩化合物(ゼオライトなど)、有機錫化合物等が挙げられる。中でも、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とが好ましい。ハイドロタルサイト系化合物は、Mg6Al2(OH)16CO3・nH2Oなどに代表される天然に産出する粘土鉱物の一種である。これらハロゲン捕捉剤は、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。
【0022】
ハロゲン捕捉剤の添加量は、スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤との合計100質量部に対して、好ましくは0.8〜15質量部である。係る範囲であれば、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性が良好に改善され、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いてなる第1の成形体、第2の成形体において、臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による黒異物の発生が効果的に低減され、成形加工性も良好で、外観に優れた成形体が得られる。より好ましくは5〜10質量部である。
【0023】
本発明においては、上記ハロゲン捕捉剤として、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物を併用して用いることにより、黒異物発生の低減効果に加えて、変色の発生を防止することができる。この場合、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物の質量比率は、好ましくは、ドロマイト系化合物/ハイドロタルサイト系化合物=10/90〜90/10であり、係る範囲であれば、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性が良好に改善され、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いてなる第1の成形体、第2の成形体において、臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による変色の発生が効果的に防止され、外観に優れた成形体が得られる。より好ましくはドロマイト系化合物/ハイドロタルサイト系化合物=30/70〜70/30である。
【0024】
尚、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを併用して用いる場合、これら化合物以外にも、過塩素酸マグネシウム化合物、アルミノケイ酸塩化合物(ゼオライトなど)、有機錫化合物等を併用して用いてもかまわないが、好ましくは、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物のみを用いる。
【0025】
本発明においては、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定剤として、上記したエポキシ化合物とハロゲン捕捉剤に加えてさらに、酸化防止剤を用いることで、黒異物の発生を防止した上に、変色の発生を抑制することができる。
【0026】
本発明に用いられる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられるが、好ましくはフェノール系酸化防止剤、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート〕、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス〔(ドデシルチオ)メチル〕−o−クレゾール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、DL−α−トコフェロール、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等を挙げることができるが、中でもオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが最も好ましい。
【0027】
酸化防止剤の添加量は、スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤との合計100質量部に対して、好ましくは0.8〜7質量部である。係る範囲であれば、樹脂組成物中における臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性を改善し、第1の成形体、第2の成形体において、臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による黒異物の発生を効果的に防止し、変色の発生を効果的に抑制して、外観に優れた成形体が得られる。
【0028】
尚、本発明においては、ハロゲン捕捉剤として、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物を併用した上で、さらに酸化防止剤を用いることで、臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性をより効果的に改善し、臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による黒異物の発生及び変色の発生が同時に防止され、外観に優れた成形体が得られる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤を添加する事が出来る。例えば、脂肪酸系滑剤、脂肪族アマイド系滑剤、金属石鹸系滑剤等の滑剤、タルク、マイカ、シリカ等の充填剤、ガラス繊維等の補強剤、顔料、染料等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の帯電防止剤である。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、臭素化ポリマー型難燃剤と、エポキシ化合物と、ハロゲン捕捉剤と、必要に応じて酸化防止剤と、を公知の混合技術で予備ブレンドした後、溶融混練して製造することができる。予備ブレンド方法としては、例えばミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置で出来る。また、溶融混練方法としては、特に制限はなく公知の溶融技術を適用できる。係る溶融混練に用いられる好適な溶融混練装置としては、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等であり、好ましくは、二軸押出機である。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、それ自体を用いて第1の成形体を成形しても良いが、本発明の樹脂組成物にさらなるスチレン系樹脂(第2のスチレン系樹脂)を添加してより臭素含有量の少ない第2の成形体を成形することもでき、この場合も臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性は良好に保持され、黒異物や変色の発生が抑制、或いは防止され、外観に優れた成形体が得られる。第2のスチレン系樹脂としては、前記した本発明の樹脂組成物を製造する際に用いられるスチレン系樹脂(以下、「第1のスチレン系樹脂」と記す)として例示したスチレン系樹脂が用いられ、好ましくは第1のスチレン系樹脂と同じスチレン系樹脂が用いられる。
【0032】
第2の成形体の成形に際しては、本発明の樹脂組成物と第2のスチレン系樹脂とを溶融混練して予め第2の樹脂組成物を作製し、該第2の樹脂組成物を用いて成形しても良いが、本発明の樹脂組成物と第2のスチレン系樹脂とを成形機に投入して直接第2の成形体を成形してもよい。予め第2の樹脂組成物を作製する場合には、上記溶融混練装置が好ましく用いられる。
【0033】
本発明の樹脂組成物を用いた第1の成形体、第2の成形体の成形方法は限定されず、従来、難燃性樹脂成形体の成形に用いられていた成形方法が適宜用いられるが、押出成形が好ましく、板状押出発泡体の押出発泡成形に好ましく用いられる。板状押出発泡体は、例えば、樹脂組成物の構成成分を配合して加熱溶融する、或いは、予め作製した樹脂組成物を加熱溶融し、任意の段階で発泡剤を注入して混錬し、発泡最適温度に調整して低圧雰囲気下(通常大気圧)に押出発泡させることにより製造することができる。発泡剤を注入する際の圧力は特に制限するものではなく、押出機などの内圧より高い圧力でガス化しなければよい。また、板状押出発泡体を製造する際には、発泡核剤としてシリカ、タルクや炭酸カルシウム等の無機充填剤を必要に応じて用いることができる。発泡体の密度、発泡倍率や平均気泡径は発泡剤量や発泡核剤量を調整することで変化させることができる。発泡剤としては公知のもの、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の低級炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどのアルコール類、トリクロロモノフルオルメタンや塩化メチル等のハロゲン化炭化水素、炭酸ガス、水等の無機ガスなど任意の発泡剤を単独又は混合して用いることができるが、低級炭化水素を主成分とすることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に例を挙げて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0035】
〔スチレン系樹脂〕
重量平均分子量(Mw)20万、メタノール可溶成分量1.2質量%であるスチレンのホモポリマー(ポリスチレン)を使用した。尚、重量平均分子量(Mw)、メタノール可溶成分量は以下の方法で測定した。
【0036】
〈重量平均分子量(Mw)の測定〉
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製「Shodex GPC−101」
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製「PLgel 10μm MIXED−C」
移動相:クロロホルム
試料濃度:0.2質量%
温度:40℃(オーブン)
検出器:示差屈折計
本発明における各成分の分子量測定は、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0037】
〈メタノール可溶成分量の測定〉
試料1gを溶媒(メチルエチルケトン)40mlに溶解し、10倍量の貧溶媒(メタノール)400mlでポリスチレンを再沈させ、再沈ポリスチレンの質量を求め、残分をメタノール可溶成分量とした。
【0038】
〔臭素化ポリマー型難燃剤〕
ケムチュラ社製「EMERALD INNOVATION 3000」(前記(a)〜(f)の特徴を有する臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素含有量:60質量%)
【0039】
〔エポキシ化合物〕
エポキシ化合物−1:ハンツマン・ジャパン社製「ARALDITE(登録商標)ECN 1280」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)
エポキシ化合物−2:日油株式会社製「ニューサイザー510R」(エポキシ化大豆油)
【0040】
〔ハロゲン捕捉剤〕
ハロゲン捕捉剤−1:味の素ファインテクノ株式会社製「プレンライザーHC−100B」(ドロマイト系化合物)
ハロゲン捕捉剤−2:日東化成株式会社製「MC−63A」(ハイドロタルサイト系化合物)
【0041】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤:BASFジャパン社製「Irganox 1076」(オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
【0042】
参考実施例1〜8、比較例1、2)
表1に示す配合量で、各成分を混合機に投入して予備ブレンドを行い、ブレンド物を二軸押出機(東芝株式会社製「TEM26SS:14バレル」)に定量フィーダを用いて供給し、シリンダー温度180℃、総供給量30kg/時間、スクリュー回転数300rpmの押出条件で溶融混練して押し出した。押し出されたストランドは水冷してからペレタイザーへ導き、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットには、いずれも黒異物は発生していなかった。得られた樹脂組成物のペレット中の臭素含有量を以下の方法で測定し、下記熱安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
〔臭素含有量の測定方法〕
樹脂組成物のペレット中の臭素含有量を燃焼−イオンクロマトグラフィーにて以下の条件で測定した。
機種:三菱化学株式会社製「AQF−100」及びダイオネクス社製「DX−120」
燃焼管温度:1000℃
検出器:電気伝導度検出器
カラム:AS12A
流量:1.5ml/min
溶離液組成:2.7mM−Na2CO3+0.3mM−NaHCO3
試料導入量:5μl
試料量:3mg
【0044】
〔熱安定性評価〕
樹脂組成物のペレットを10g計量してガラス瓶に入れ、220℃のギアオーブンで60分加熱した後に取出し、冷却した。完全に冷却後、目視にて黒異物発生状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:発生した黒異物が4個以下。
×:黒異物が5個以上発生。
【0045】
【表1】
【0046】
参考実施例9〜18、比較例3,4)
各成分の配合量を表2に示す配合量とした以外は、参考実施例1と同様の方法で樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットには、いずれも黒異物や変色は発生していなかった。得られた樹脂組成物のペレット中の臭素含有量を参考実施例1と同様の方法で測定し、参考実施例1と同様にして熱安定性評価を行った。尚、熱安定性評価においては、目視にて変色の発生状態も観察した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
・黒異物の発生状態
○:発生した黒異物は4個以下。
×:黒異物が5個以上発生。
・変色の発生状態
○:変色は発生せず。
×:明らかな変色が発生。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例19〜29、比較例5,6)
各成分の配合量を表3に示す配合量とした以外は、参考実施例1と同様の方法で樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットには、いずれも黒異物や変色は発生していなかった。得られた樹脂組成物のペレット中の臭素含有量を参考実施例1と同様の方法で測定し、参考実施例1と同様にして熱安定性評価を行った。尚、熱安定性評価においては、目視にて変色の発生状態も観察した。評価基準は以下の通りである。結果を表3に示す。
・黒異物の発生状態
○:黒異物の発生なし。
×:黒異物発生。
・変色の発生状態
○:変色は発生せず。
△:わずかに変色が発生。
×:明らかな変色が発生。
【0049】
【表3】
【0050】
表1に示されるように、参考実施例1〜8の樹脂組成物は、エポキシ化合物とハロゲン捕捉剤とを併用したことにより、エポキシ化合物及びハロゲン捕捉剤の一方のみを用いた比較例1、2の樹脂組成物に比べて、220℃で60分加熱しても、黒異物の発生が4個以下に低減されており、樹脂組成物中における臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性が改善されていることがわかった。
【0051】
また、表2に示されるように、参考実施例9〜18の樹脂組成物は、エポキシ化合物とハロゲン捕捉剤とを併用した上で、さらにハロゲン捕捉剤としてドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを併用したことにより、黒異物の発生が4個以下に低減された上に、変色の発生が防止されており、樹脂組成物中における臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性がより改善されていることがわかった。
【0052】
さらに、表3に示されるように、実施例28,29の樹脂組成物は、エポキシ化合物とハロゲン捕捉剤と酸化防止剤とを併用したことにより、黒異物の発生が防止された上に、変色の発生も抑制されている。さらに実施例19〜27の樹脂組成物においては、エポキシ化合物とハロゲン捕捉剤と酸化防止剤を併用した上で、さらにハロゲン捕捉剤としてドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを併用したことにより、黒異物の発生及び変色のいずれもが防止されており、樹脂組成物中における臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性が高度に改善されていることがわかった。
【要約】
【課題】スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤とを含有する難燃性樹脂組成物中における該臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性を改善し、黒異物や変色の発生が低減された難燃性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤との合計100質量部に対して、エポキシ化合物を4〜25質量部、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを10/90〜90/10の質量比で含むハロゲン捕捉剤を0.8〜15質量部、さらに必要に応じて酸化防止剤0.8〜7質量部添加して、臭素含有量が18〜42質量%の難燃性樹脂組成物とする。
【選択図】なし