(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の四輪構造機構100では、坂道もしくは障害物を上り始める時に、重心Gは四輪構造機構100の車体後方に移動する。上述の通り、従来の四輪構造機構100では、2つの駆動輪101が前方にあるため、当該2つの駆動輪101と路面との接地力が弱まり、坂道を上るための十分な駆動力が得られない場合がある。更に凹凸が多い路面を走行する際に、坂道の頂上もしくは障害物の頂点と車体との接触により、車体が支持され、駆動輪101が空転し、四輪構造機構100が動作不能状態に陥る可能性がある。
【0006】
また、従来の四輪構造機構100では、安定性を確保するため、4つの車輪の接地点で形成される四角形のほぼ中心に重心Gが配置される。この四輪構造機構100を水平面においてその場で回転させるために、前方に配置される2つの駆動輪101を互いに逆方向に回転させることがある。この際に、四輪構造機構100の回転中心は前方の2つの駆動輪101の中心を結ぶ線分の中点付近となり、この回転中心と四輪構造機構100の重心Gとが一致しない。そのため、四輪構造機構100をその場で回転させると、大きな慣性モーメントが発生するために、四輪構造機構100の機敏な動作が妨げられてしまう。また、四輪構造機構100の回転軌道は少なくとも前方と後方とに配置された4つの車輪の接地点を通る円となり、後述する対向2輪構造を有するロッカーボギー200よりも回転半径が大きくなってしまう。
【0007】
つまり、従来型の四輪構造機構100は、一定の踏破性を有しつつも起伏の激しい凹凸路面には対応できないことがある。また、回転中心と重心Gとが離れているため、慣性モーメントが大きく、また回転軌道が大きいため、機敏性が低いという問題がある。
【0008】
さらに、他の車輪を4つ有する構造の駆動機構として、
図17に示すように、1つの同一の直線状に別々に駆動する2つの駆動輪201が中央に配置され、その前後に対称的に水平面において自由な方向に回転できる2つのキャスター車輪202が配置される、いわゆる対向2輪構造機構200がある。対向2輪構造では、従来の四輪構造機構に比べて、回転中心と重心Gとが一致するため慣性モーメントが最小になり、さらにその場で水平方向に回転する際に最小の回転半径で回転できる。従って、小回りの利く、機敏で軽快な移動が期待できる。
【0009】
しかしながら、従来の対向2輪構造機構200は、すべての車輪が同一の構造体によって支持されているため、凹形状の路面となる坂道もしくは段差の上り始めるとき、その構造上、駆動輪が宙に浮くあるいは接地荷重が低下し、結果として、駆動輪201が空転し動作不能状態に陥る恐れがある。また、凸形状の路面となる坂の頂上もしくは障害物を駆動輪が通過するときに、車体全体が不安定になり、浮いていた進行方向のキャスター車輪202が次の瞬間急に接地し、本体が進行方向に急激に回転し、ボディ全体に強い衝撃が加わる。これにより最悪の場合転倒するという問題がある。従って、対向2輪構造機構200はその場回転などの機敏性を有しつつも、逆に凹凸および激しい起伏に対する踏破性が低いという問題がある。
【0010】
また、車輪を6つ有する構造の機構として、ロッカーボギー機構があげられる。
図18に示すロッカーボギー300の車体の前方部と後方部とにそれぞれ2輪のキャスター車輪302、303を有し、車体の中央に対向2輪の駆動輪304を有する構造がある。この構造では、後方部のキャスター車輪303を支持する支持部材が、前方部のキャスター車輪302及び中央の駆動輪304を支持する支持部材に対して、回転機構305を介して回転可能に構成されている。そのため、凹形状の路面である坂道もしくは障害物を登り始めるとき、又は凸形状の路面である坂道の頂上に駆動輪304が差し掛かるときなどに、滑らかに車輪が接地し、重心Gの移行が行われ、各車輪は路面をなめるように接地し良好な駆動性能を得ることができる。したがって、車体の重心バランスが安定しており、凸形状路面を踏破する際には転倒の危険性も十分に低減される。またその場で水平方向に回転する際、対向の駆動輪394の中央に重心Gを配置することが可能で、重心Gと回転中心を一致させることが可能である。
【0011】
しかしながら、ロッカーボギー300の構造を構成するためには6つの車輪が必要であり、さらに後方部のキャスター車輪にそれぞれ独立のリンク機構を備える必要がある。よって、四輪の構成に比べると構造が複雑になり、必須の部品点数が増え、コストが高騰する。また、その場で水平方向に回転する場合の回転半径も、車輪が4つのみで構成される対向2輪構造に比べて大きくなる。さらに、六輪構成のロッカーボギー構造は、車輪の配置方向に重心が移動する場合(たとえば坂道を下る場合、走行中に制動をかける場合等)の重心の前方移動限界角度が通常の構造より狭いため、回転機構305より前方に重心が位置する場合は前方向に転倒してしまう。
【0012】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、機敏な動作と低コストを実現しつつ、なめるように障害物の踏破する機能も有する四輪構造のロッカーボギーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の第1態様に係るロッカーボギーは、それぞれ第1平面に接地可能な第1車輪、第2車輪、及び第3車輪を備える第1ベースと、前記第1平面に接地可能な第4車輪を備える第2ベースと、前記第2ベースが前記第1ベースに対して回転自在となるように、前記第1ベースと前記第2ベースとを接続する回転軸と、を備える。さらに、前記回転軸は、前記第1車輪の回転中心と前記第2車輪の回転中心とを結ぶ第1直線に平行であってかつ、前記第3車輪の回転中心と前記第1直線との間に配置され、前記第4車輪は、前記第1直線を挟んで、前記第3車輪とは反対側に配置されている。
前記ロッカーボギーは、前記第2ベースに載置された構造物をさらに備え、前記構造物の重心は、平面視において、前記第3車輪の回転中心と前記第1直線との間にあってもよい。
【0014】
前記第1車輪及び前記第2車輪は、別々に駆動可能な駆動輪であり、前記第3車輪及び前記第4車輪はキャスターであってもよい。
【0015】
左右方向外側から見た場合に、前記第3車輪の接地位置から前記回転軸までの距離と前記第1直線から前記回転軸までの距離が2対1の割合になっていてもよい。
【0016】
左右方向外側から見た場合に、前記第4車輪の接地位置から前記第1直線までの距離と前記回転軸から、該第1直線までの距離が3対1の割合になっていてもよい。
【0017】
左右方向外側から見た場合に、前記第3車輪の支持軸から前記回転軸までの距離と前記第1直線から前記回転軸までの距離が2対1の割合になっていてもよい。
【0018】
左右方向外側から見た場合に、前記第4車輪の支持軸から前記第1直線までの距離と前記回転軸から、該第1直線までの距離が3対1の割合になっていてもよい。
【0019】
前記ロッカーボギーは、前記第4車輪が接地面から離れたとき、前記第4車輪が接地面から離れる方向の回転軸の回転を制限する回転制動機構をさらに備えてもよい。
【0020】
水平面に置かれた状態において、鉛直方向における前記回転軸の位置が前記第一直線の位置と同じ又はそれよりも鉛直下側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記態様に係るロッカーボギーによれば、部品点数を多くすることなく、高い機敏性と不整地での高い踏破性とを廉価で実現することができる。
また、回転制動機構が設けられれば、ロッカーボギー構造の欠点である前方向への転倒限界角に関しても改善でき、通常の対向2輪構造の四輪車と同等の転倒限界角度を維持し安全な走行が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の実施形態に係るロッカーボギーを示す上面斜視図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係るロッカーボギーを示す上面図である。
【
図1C】本発明の実施形態に係るロッカーボギーを示す正面図である。
【
図1D】本発明の実施形態に係るロッカーボギーを示す側面図である。
【
図2A】ロッカーボギー1が凸形状の路面を踏破するときの状態を示す。
【
図2B】ロッカーボギー1が凹形状の路面を踏破するときの状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係るロッカーボギーの回転機構を説明するための図である。
【
図4A】ロッカーボギー1が、斜面を登り初める際の車輪の接地状態を示す。
【
図4B】ロッカーボギー1が、斜面を登り終える際の車輪の接地状態を示す。
【
図4C】ロッカーボギー1が、斜面を下り初める際の車輪の接地状態を示す。
【
図4D】ロッカーボギー1が、斜面を下り終える際の車輪の接地状態を示す。
【
図4E】ロッカーボギー1が、段差に登る際の車輪の接地状態を示す。
【
図4F】ロッカーボギー1が、段差から下る際の車輪の接地状態を示す。
【
図4G】ロッカーボギー1が、障害物を乗り越える際の車輪の接地状態を示す。
【
図5】ロッカーボギー1のその場回転を説明するための図である。
【
図6】ロッカーボギー1が急停止する際の挙動を示す。
【
図7】回転制動機構20を有するロッカーボギー1Aを示す。
【
図8】回転制動機構30を有するロッカーボギー1Bを示す。
【
図9】ロッカーボギー1Bの回転制動機構30の詳細を示す。
【
図10】ロッカーボギー1Bの回転制動機構30のロック前の状態を示す。
【
図11】ロッカーボギー1Bの回転制動機構30が急停止によりロックされた状態を示す。
【
図12】ロッカーボギー1Bの回転制動機構30が、車輪5がくぼみにはまることによりロックされた状態を示す。
【
図13A】回転制動機構30を2つ設ける場合の構成例を示す。
【
図13B】回転制動機構30を3つ設ける場合の構成例を示す。
【
図13C】回転制動機構30を4つ設ける場合の構成例を示す。
【
図14】ロッカーボギー1が急発進する際の挙動を示す。
【
図15A】ロッカーボギー1Cを示す上面斜視図である。
【
図15B】ロッカーボギー1Cを示す正面図である。
【
図15C】ロッカーボギー1Cを示す側面図である。
【
図18】従来の車輪を6つ有する構造のロッカーボギー300を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
[四輪ロッカーボギー構造とその動作原理]
本発明の一実施形態に係るロッカーボギー1を
図1A〜1Dに示す。
図1Aはロッカーボギー1の上面斜視図であり、
図1Bはロッカーボギー1の上面図であり、
図1Cはロッカーボギー1の正面図であり、
図1Dはロッカーボギー1の側面図である。
【0024】
図1A〜1Dに示すように、対向する2輪の駆動輪である車輪(第1車輪)2、車輪(第2車輪)3とその前方に配置された車輪(第3車輪)4が構造物(第1ベース)6に載置され、後方に配置された車輪(第4車輪)5が構造物(第2ベース)7に載置される。さらに、構造物7が構造物6と回転軸を有する回転機構8を介して接続されている。
また、本体となる構造物9は構造物7上に載置される。
中央に配置される2輪の駆動輪2、3は、それぞれ独立して駆動可能である。前進する際は駆動輪2、3を同じ速度で正回転させ、後退する際は駆動輪2、3を同じ速度で逆回転させる。また、水平方向にロッカーボギー1を回転させる際は、互いに逆方向に回転させる。
車輪4、5は、キャスターであり、水平面上を自由な方向に向くように回転できる。なお、本実施形態では、車輪4、5は駆動機構を有さない。
【0025】
なお、車輪4、5はキャスターに限定されず、ボールキャスターや全方向車輪であるオムニホイール(登録商標)を適宜採用してもよい。
車輪4、5としてキャスターを用いれば、安価で、走行性能の高いロッカーボギーを実現できる。
【0026】
一方、車輪4、5としてボールキャスターやオムニホイールを用いれば、平面視における構造物6及び7と車輪4及び5とをそれぞれ連結する支持軸4a、5aの位置と、車輪4、5の接地点とが常に同じ位置になる。そのためより走行時の安定性の高いロッカーボギーを実現できる。また、ボールキャスターやオムニホイールであれば、キャスターのように支持軸4a、5b周りの回転(ヨーイング)のためのスペースを設ける必要がない。
【0027】
構造物6及び構造物7は、板状であり、本実施形態ではそれぞれ平面視で三角形状を有している。構造物6及び構造物7の材料としては、金属、木、樹脂材料、セラミクスなどを用いればよく、用途に適した特性を有していれば限定されない。
本実施形態では、
図5に示すように、重心Gを駆動輪2、3の中点にすることができるため、水平方向にロッカーボギー1を回転させる際に回転中心Cと重心Gとが一致する。従って、重心Gによる慣性モーメントが発生しない。また、本実施形態では車輪が4つであり、その場で水平方向に回転する際に4つ車輪2〜5の中心を軸に回転するため、
図5の矢印で示すようにより小さな回転半径で回転できる。従って、小回りの利く、機敏で軽快な移動が可能である。
【0028】
ここで、本実施形態では、駆動輪2,3の車軸に平行な方向を左右方向と呼び、水平方向において駆動輪2,3の車軸に垂直な方向を前後方向と呼び、車輪4が設けられる側を前側、車輪5が設けられる側を後側とする。また、ロッカーボギー1を水平面に置いた際の鉛直方向を上下方向と呼び、鉛直方向上側を上側、鉛直方向下側を下側とする。
【0029】
図3に示すように、回転機構8は、構造物6に固定される部分が固定部材11、構造物7に固定される固定部材12aと固定部材12bと、回転軸13とで構成される。固定部材11を挟んで固定部材12aと固定部材12bとが配置される。固定部材11、12a、12bは、回転軸13上に配置され、結果として構造物7が構造物6に対して回転軸13を中心に回転する。
図1Bに示すように、回転軸13は対向する駆動輪2,3の車軸(第1直線)Aと平行かつ、回転軸13の垂直投影線が車輪2、3、及び4で形成される接地三角形内に投影されるように配置されている。
このような回転機構8を導入したとき、回転軸回りの構造物の動きを側面からみると
図2のようになる。
図2Aは凸形状の路面を踏破するときの状態で、
図2Bは凹形状の路面を踏破するときの状態である。
【0030】
また、
図4A〜4Gは回転機構8を有するロッカーボギー1が実際に斜面等を踏破する際の各車輪の接地状態を示す。
図4Aは、ロッカーボギー1が斜面を登り初める際、
図4Bは、ロッカーボギー1が斜面を登り終える際、
図4Cは、ロッカーボギー1が斜面を下り初める際、
図4Dは、ロッカーボギー1が斜面を下り終える際、
図4Eは、ロッカーボギー1が段差に乗り上げる際、
図4Fは、ロッカーボギー1が段差から下りる際、
図4Gは障害物を乗り越える際、の車輪の接地状態を示している。
【0031】
ロッカーボギー1は、回転機構8を有することで、様々な形状の路面において、
図4に示すように駆動輪に十分な接地力を持ったまま、空転することなく踏破することが可能となり、またすべての車輪が接地した状態で、踏破することが可能となる。さらに、ロッカーボギー1は、回転機構8を有することで、急激に進行方向への回転を抑制した状態で、結果として車体全体のバランスを安定させたまま移動することが可能である。
【0032】
通常、水平面上にロッカーボギー1を置いた場合、四輪に安定に均等に荷重がかかるようにしようとすると、構造物9を含む全体の重心は対向2輪(車輪2、3)の車軸Aの中央の真上に位置するように調整される。
【0033】
また、
図1Dのように車輪2、3、4で均等に荷重をかけようとすると、左右方向外側から見た場合の構造物6と構造物7とを接続する回転軸13と車輪2、3の接地点を結ぶ直線との距離aと、回転軸13と車輪4の接地点までの距離b1との比率がa:b1=1:2になる。また車輪5とその他の車輪の荷重を均等にするためには、左右方向外側から見た場合の重心Gの水平面への投影点から回転軸13の水平面への投影線までの距離cと車輪5の接地点から重心Gの水平面への投影点までの距離d1の比率がc:d1=1:3の割合になる。
【0034】
また、車輪4及び5としてキャスターを用いる場合、ヨーイングによって回転軸13や重心Gに対する車輪3、4の接地点の相対位置が走行方向によって変化する。
図1Dにおける距離b1及びd1は、前方向に走行するロッカーボギー1のキャスターの状態を想定している。
【0035】
一方、後方向への走行や回転を考慮して、車輪4及び5の支持軸4a、5bとの位置関係に基づいて設計してもよい。
この場合、左右方向外側から見た場合の構造物6と構造物7とを接続する回転軸13と車輪2、3の接地点を結ぶ直線との距離aと、回転軸13と車輪4の支持軸4aまでの距離b2との比率をa:b2=1:2にすればよい。また左右方向外側から見た場合の重心Gの水平面への投影点から回転軸13の水平面への投影線までの距離cと車輪5の支持軸5aから重心Gの水平面への投影点までの距離d2の比率をc:d2=1:3にすればよい。
【0036】
本実施形態に係るロッカーボギー1の構造物6及び車輪2〜4で構成される構造は、3輪の車輪構造であるため、路面がボディに接触しない限り、どのような形状の路面でも良好に接地することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るロッカーボギー1では、車輪2、3の接地点を結ぶ直線と平行な回転軸13を有する回転機構8で構造物6、7が接続され、この回転軸13周りに回転の自由度がある。つまり、車輪5と構造物7で構成される構造は車輪2〜4と構造物6で構成される3輪構造の接地状況を阻害することがない。従って、車輪5と構造物7とで構成される構造に路面が接触さえしなければ、様々な形状の路面に良好に接地させることができる。
【0038】
また、構造物7の上に本体となる構造物9を載置することで、路面が構造物6,7に接することがなければ、多様な路面の形状に沿って各車輪が各々独立して良好な接地状況を作り出せる。
なお、本実施形態では、車輪の直径の1/4程度の高さの段差、10〜20度程度の斜面の踏破性能を得ることを想定している。
【0039】
[回転制動機構について]
また、本体となる構造物9の高さ寸法が高い場合、急停止時などにロッカーボギーが前方へ転倒する恐れがある。これは急停止により車輪5が持ち上がる方向にモーメントが発生し、回転軸を介して構造物9が回転するためである。前方への転倒性能は、回転軸より前方に重心の垂直投影線が位置すると転倒することになり、これは、通常の対向2輪の場合に車輪4の接地点より前に重心の垂直投影線が位置しなければ転倒しない場合と比較すると、中心からの距離で1/3程度に余裕度が悪化している。
【0040】
この悪化の原因は、本実施形態のようなロッカーボギー構造にすることで、前方への転倒が回転軸13を中心に発生することにある。このため、
図6Aの右図の矢印に示すように前方に倒れる場合に回転軸13を中心にする前方(車輪5が接地面から離れる方向)への回転を制動することで転倒を回避できる。
【0041】
また、前方への転倒性能を改善するために、回転軸13に回転制動機構が取り付けられてもよい。回転制動機構は、車輪5の接地力が概ねゼロになると、車輪5が接地面から離れる方向への回転軸13の回転を制止する構成を有する。
【0042】
[前方転倒限界性能の向上策とその動作1]
重心が前方に移動することで、車輪5の接地荷重が減少することを利用し、上述の回転制動機構20を働かせて実現する例を、
図7を用いて示す。
【0043】
図7に回転制動機構20を有するロッカーボギー1Aを示す。なお、ロッカーボギー1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
回転制動機構20は、伸長ばね21と、ラチェット歯車22と、係合部材23と、歯止め24と、上下移動バー25とで構成される。
ロッカーボギー1Aでは、上下移動バー25の下端に車輪5が設けられる。上下移動バー25の上端は構造物7よりも上に位置しており、係合部材23に回転可能に接続される。
【0044】
伸長ばね21は、上下移動バー25を介して、車輪5を上下方向に移動可能である。伸長ばね21の一端は構造物7に取り付けられ、伸長ばね21の他端は上下移動バー25に取り付けられる。ここで伸長ばね21は、車輪5の接地荷重が減少すると伸び、車輪5が接地すると縮むように設定されている。伸長ばね21が伸びると、上下移動バー25及び車輪5が下方向に移動する。
【0045】
係合部材23は、上下移動バー25の上端からラチェット歯車22(回転軸13)に向かって直線的に設けられる。係合部材23の一端は上下移動バー25の上端に回転軸を介して接続される。係合部材23の他端にはラチェット歯車22にかみ合うように加工された歯止め24が設けられる。また、係合部材23の任意の中間点は構造物7と回転軸を介して接続される。
【0046】
ラチェット歯車22は、回転軸13にはめ込まれ、構造物6に固定される。なお、図示していないが車輪5が接地しており伸長ばね21が伸びていない状態では係合部材23(歯止め24)はラチェット歯車22に係合しておらず、
図7に示すように伸長ばね21により上下移動バー25が下方向へ移動した際に、係合部材23の歯止め24がラチェット歯車22にかみ合う。
【0047】
以下、回転制動機構20がロッカーボギー1Aの前方への転倒を回避するまでの動作について詳細に説明する。
【0048】
急停止などによりロッカーボギー1Aに前方向の力が働き、車輪5の接地荷重が減少すると、
図7に示すように車輪5に取り付けられたばね21が伸びる。それにより、車輪5の上下移動バー25が下方向(構造体7から車輪5を遠ざける方向)に移動する。その結果、上下移動バー25に接続された回転制動機構20の係合部材23の他端が下方に下がる。これにより、係合部材23と構造物7との回転軸を中心に係合部材23が回転することで、係合部材23の一端に形成される歯止め24が上方に上がるように移動する。結果として、歯止め24がラチェット歯車22と噛み合い、構造物7は回転制動機構20によって構造体7から車輪5を遠ざける方向への回転が制限される。よって、この状態では構造物6と構造物7とが前方への転倒動作に対して固縛される。結果として、重心の垂直投影点が回転軸13より前方に位置しても、車輪4の接地点を超えて前方にならない限り転倒しない構造が実現できる。
【0049】
また、重心が後方に下がり、車輪5に適度な重量がかかるようになると歯止め24がラチェット歯車22からはずれ、回転軸13を中心に構造物7は構造物6に対して自由に回転できるようになる。
【0050】
[前方転倒限界性能の向上策とその動作2]
図8に回転制動機構30を有するロッカーボギー1Bを示す。ロッカーボギー1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
もう一つの前方への転倒を防止する手法として、構造物7を二つに分ける手法がある。
図8に示すロッカーボギー1Bでは、上述のロッカーボギー1の構造物7が、後方の車輪がある構造物7aと、構造物7aの上に重ねられ、本体となる構造物9を支える構造物7bとで構成される。
構造物6上に回転軸13を有する回転機構8が設けられる。また、回転軸13を中心にして回転するように構造物7aと構造物7bが取り付けられている。本体となる構造物9は構造物7b上に設置される。
【0052】
通常、構造物6は3つの車輪2〜4を介して地面に接地し、構造物7aは構造物6に支持されつつ、車輪5を介して地面と接地する。構造物7bは構造物6に支持されつつ、構造物7aにも支持されている。このような構造では、急ブレーキなどにより急停止すると、構造物7aと構造物7bとは回転軸13を中心として前方へ回転する。なお、構造物6は構造上、重心が低くなっており、急停止時に極端に回転するおそれは低い。
【0053】
ロッカーボギー1Bでは、構造物7a及び構造物7bの構造物6に対する回転を利用して、回転制動機構30を構成する。回転制動機構30は、作動バー31、ラチェット歯車32、ラチェット爪33、及び伸張ばね34で構成される。
【0054】
図9に示すように、回転制動機構30は、回転軸13を有する回転機構8の左右方向の外側に設けられる。作動バー31は、構造物7aの後方の端部であって、回転機構8の左右方向の両脇にそれぞれ1つずつ取り付けられ、後述のラチェット爪33を支持している。ラチェット歯車32は、作動バー31の下方に設けられ、構造物6に固定されており、回転しない。ラチェット爪33及び伸張ばね34は、作動バー31及びラチェット歯車32の上方に配置されており、構造物7bに取り付けられる。
図10に示すように、ラチェット爪33の先端部は、伸張ばね34により上方から下方へ移動可能に構成される。伸張ばね34は、作動バー31がラチェット爪33を支持している状態では圧縮されている。つまり、構造物7bが構造物7aに対して相対的に回転すると、作動バー31によるラチェット爪33の支持が外れ、伸張ばね34の復元力でラチェット爪33の先端が下方向に押し下げられ、ラチェット爪33とラチェット歯車32とが噛み合う。なお、
図10〜13では回転制動機構30の構成を見やすくするため、回転機構8等を適宜省略して記載している。
【0055】
ラチェット爪33とラチェット歯車32とが噛み合うことの詳細について説明する。構造物7bが構造物7aに対して相対的に回転していない状態では、ラチェット爪33はラチェット歯車32に接することがなく、接する直前のところでラチェット爪33が作動バー31により制止されている。従って、通常の状態では構造物7a及び構造物7bは構造物6に対して自由に回転する。すなわち、構造物7aと構造物7bが一体である限り、ラチェット爪33は下方に移動しない。
【0056】
一方、構造物7aと構造物7bとが一体ではなくなるとき、すなわち構造物7aから構造物7bが離れた時、
図11に示すようにラチェット爪33は作動バー31から離れる。これにより、作動バー31に支持されていたラチェット爪33の先端が伸長ばね34の復元力により、下方向に移動する。この移動により、ラチェット爪33はラチェット歯車32に噛み合う。その結果、構造物7aと構造物7bとの回転は回転制動機構30により制止され、ロッカーボギー1Bが転倒することを防ぐことができる。
【0057】
なお、
図12に示すように、走行中に車輪5が急にくぼみRにはまる状態になっても、回転制動機構30が作動し、構造物7a及び構造物7bの構造物6に対する回転にロックがかかる。しかしながら、この場合、はロックされる方向と逆の方向に構造物7a及び構造物7bが回転するので、回転が制止されない。
また、
図13A〜13Cに、回転制動機構30を2つ、3つ、4つ設ける場合の構成例をそれぞれ示す。回転制動機構30の数が多く設けられれば、急ブレーキ時の力が分散され、回転制動機構30の破損を防ぐことができるため好ましい。なお、回転制動機構30を複数設ける場合は、構造物7b及び構造物7aに作動バー、ラチェット爪、伸張ばねを適宜設置できるように部材の追加等を行ってもよい。
【0058】
また、上記説明では、回転制動機構としてラチェット歯車を用いた構成を示した。しかしながら、本発明はロッカーボギーの前方への転倒を回避する機構であればこれに限定されない。例えば構造体同士の相対的な回転を制御するための回路を搭載して電気的に制御してもよいし、構造物6の上面と及び構造物7の下面とをひもや伸長ばね等で接続し、簡易的に回転角度を規制してもよい。
【0059】
[発進時の安定性向上策]
この他に、本体となる構造物9の高さ寸法が高い場合、
図14に示すように、急発進時にロッカーボギーの前輪が持ち上がってロッカーボギーが不安定になるおそれがある。これは駆動輪である対向2輪2、3の車軸よりも回転軸13が高い位置にあることにより、前輪である車輪4を持ち上げる方向のモーメントが発生するためである。
【0060】
図15A〜15Cに回転制動機構30を有するロッカーボギー1Cを示す。ロッカーボギー1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図15Aはロッカーボギー1Cの上面斜視図であり、
図15Bはロッカーボギー1Cの正面図であり、
図15Cはロッカーボギー1Cの側面図である。
【0061】
図15A〜15Cに示すようにロッカーボギー1Cは、水平面に置かれた状態において、回転軸13Aの鉛直方向における位置が駆動輪である対向2輪2,3の車軸Aの位置と同じ又はそれよりも鉛直下側に配置されるように構成されている点でロッカーボギー1と異なる。
【0062】
詳述すると、
図15Cに示すように、ロッカーボギー1Cでは、構造物6は、傾斜部6Aと水平部6Bとで構成される。傾斜部6Aは、前方向上向きに傾斜して、車輪4に接続されている。水平部6Bは、対向2輪2、3に接続され、前後方向に水平に延在する。傾斜部6Aと水平部6Bとは前後方向における車輪4と対向2輪2、3との間で接続固定されている。ロッカーボギー1Cでは、傾斜部6Aを設けることで、回転軸13Aの位置を下げることができるとともに、キャスター車輪である車輪4と構造物6との接続に必要な高さも確保することができる。
また、構造物7は、傾斜部7Aと湾曲部7Bとで構成される。傾斜部7Aは、後ろ方向上向きに傾斜して、車輪5に接続されている。湾曲部7Bは、対向2輪2、3の車軸Aを上側から囲むように湾曲しており、構造物6の水平部6Bの上側に配置される。傾斜部7Aと湾曲部7Bとは前後方向における車輪5と対向2輪2、3との間で接続固定されている。ロッカーボギー1Cでは、傾斜部7Aを設けることで、回転軸13Aの位置を下げることができるとともに、キャスター車輪である車輪5と構造物7との接続に必要な高さも確保することができる。
【0063】
構造物6の水平部6Bと構造物7の湾曲部7Bとは、車輪4と対向2輪2、3との間に形成される回転機構8Aを介しての回転軸13Aを中心に回転可能に接続されている。ここで、回転軸13Aの鉛直方向における位置は、駆動輪である対向2輪2,3の車軸Aの位置と同じ位置又はそれよりも鉛直下側に配置される。
【0064】
これにより、本体となる構造物9の高さ寸法が高い場合であっても、回転軸13Aが十分に低い位置にあるため、急発進時に前輪である車輪4を持ち上げる方向に働くモーメントを抑制できる。
そのため、この構成を用いれば急発進時にロッカーボギーの前輪が持ち上がることを抑制できる。これにより、急発進時においても四輪とも地面に接した状態を維持でき、ロッカーボギー1Cをより安定させることができる。
【0065】
設計の自由度を考慮すると、厳密に駆動輪である対向2輪2,3の車軸Aよりも回転軸13Aが若干であれば高い位置であってもよい。
例えば水平面にロッカーボギー1Cを置いた際の鉛直方向における回転軸13Aの位置が、対向2輪2,3の半径(車軸の高さ)の1.1倍の位置より低ければ、急発進時に前輪である車輪4を持ち上げる方向に働くモーメントを抑制できる。
【0066】
なお、水平面にロッカーボギー1Cを置いた際の鉛直方向における回転軸13Aの位置が、対向2輪2,3の半径の0.8〜1.0倍の位置であることが特に好ましい。回転軸13Aの位置が、対向2輪2,3の半径の1.0倍以下であれば、対向2輪2,3の車軸Aよりも回転軸13Aが低いため、急発進時に持ち上げる方向に働くモーメントを十分に抑制できる。そのためロッカーボギー1Cの前輪4が持ち上がることを防げる。また、回転軸13Aの位置が、対向2輪2,3の半径の0.8倍以上であれば、小さな障害物を乗り越えるための空間を構造物6及び7と接地面との間に確保できる。
【0067】
また、
図7や
図8を参照して説明した上述の回転制動機構の原理を用いて、急発進時に前輪4が持ち上がることを物理的に抑制する機構を設けてもよい。
【0068】
また、ロッカーボギー1Cにおいても、左右方向外側から見た場合の構造物6と構造物7とを接続する回転軸13Aと車輪2、3の接地点を結ぶ直線との距離aと、回転軸13Aと車輪4の接地点までの距離b1との比率がa:b1=1:2になることが好ましい。さらに、左右方向外側から見た場合の重心Gの水平面への投影点から回転軸13の水平面への投影線までの距離cと車輪5の接地点から重心Gの水平面への投影点までの距離d1の比率がc:d1=1:3の割合になることが好ましい。
【0069】
また、ロッカーボギー1と同様に、ロッカーボギー1Cにおいても後方向への走行や回転を考慮して、支持軸4a、5bの位置に基づいた距離b2及びd2を用いてもよい。この場合、a:b2=1:2、c:d2=1:3とすればよい。
【0070】
上記では前方転倒限界性能を向上させるための構成や発進時の安定性を向上させるための構成をいくつか示したが、これら構成は単独で用いてもよく、また必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0071】
また、本体となる構造物9としては、限定されないが、金属部品を含む重量の大きな構造体やロッカーボギーの左右方向及び前後方向の寸法よりも3倍以上の高さを有する構造体等であってもよい。重量や高さの大きな構造物9が設けられる場合でも、本実施形態に係るロッカーボギーの構成を用いれば車体全体のバランスを安定させたまま移動することが可能である。
【0072】
また、本実施形態に係るロッカーボギーにおいては、前方の障害物を感知できるセンサーを搭載して、所定の大きさ以上の障害物を感知した場合は走行を停止するようにもよい。この場合ロッカーボギーの所定の位置に、所定の高さ以上を感知できる接触式センサーを設けてもよいし、光学センサーや超音波センサーなどの非接触式センサーを用いてもよい。これにより、例えば本体となる構造物9として重量の大きな構造体を用いる場合でも、ロッカーボギーが障害物を乗り越えることによってその障害物が破損等することなどを防ぐことができる。
【0073】
なお、a:b1(b2)=1:2及びc:d1(d2)=1:3について、厳密に上述の比率である必要はなく、各車輪にほぼ均等に荷重がかかっていればある程度の誤差は許容される。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。