特許第6262403号(P6262403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック株式会社の特許一覧 ▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6262403-燃料電池システム 図000002
  • 特許6262403-燃料電池システム 図000003
  • 特許6262403-燃料電池システム 図000004
  • 特許6262403-燃料電池システム 図000005
  • 特許6262403-燃料電池システム 図000006
  • 特許6262403-燃料電池システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262403
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20180104BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20180104BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/0606
   H01M8/12
   H01M8/04 J
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-517592(P2017-517592)
(86)(22)【出願日】2016年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2016001519
(87)【国際公開番号】WO2016181596
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2017年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-96796(P2015-96796)
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嘉久和 孝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 龍夫
(72)【発明者】
【氏名】大江 俊春
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 俊治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直樹
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−011810(JP,A)
【文献】 特開2002−053302(JP,A)
【文献】 特開2010−032184(JP,A)
【文献】 特開2004−156895(JP,A)
【文献】 特開2015−185493(JP,A)
【文献】 特開2015−187952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料の改質により改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガスと空気との反応により発電する固体酸化物形燃料電池と、
前記固体酸化物形燃料電池に隣接して設けられ、前記固体酸化物形燃料電池の反応後に残存する改質ガスが集合する燃料集合部と、
前記固体酸化物形燃料電池から排出されたカソードオフガスが流通する空気通過部と、
前記燃料集合部の燃料吹き出し口から出た改質ガスに前記カソードオフガスが混合することで前記改質ガスを燃焼させる燃焼部と、
前記空気通過部から前記燃焼部へ前記改質器に沿って流れる前記カソードオフガスの一部の流れを妨げるように設けられている覆い体と、を備え、
前記燃焼部の燃焼熱を用いて、前記改質器による前記原燃料の改質が行われ、前記覆い体は、前記燃料集合部の燃料吹き出し口側へ前記カソードオフガスを送るように構成されている燃料電池システム。
【請求項2】
前記改質器は、前記燃料集合部の周囲を囲む環状に設けられ、
前記空気通過部は、前記改質器と前記燃料集合部との間に、前記燃料集合部の外周に沿って、環状に設けられており、
前記燃料吹き出し口は、前記燃料集合部の側壁部に設けられている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記覆い体は、前記改質器から前記燃料集合部への向きにおいて鉛直方向下方に傾斜している請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記覆い体の上方から前記燃焼部を覆う第1保炎カバーを備える請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1保炎カバーは、前記改質器から前記燃料集合部への向きにおいて鉛直方向上方に傾斜している請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記覆い体の上方から前記燃焼部を覆い、前記燃料集合部から突出している第2保炎カバーを備える請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記覆い体は、前記空気通過部から前記燃焼部への前記カソードオフガスの吹き出しのための開口部を備え、
前記開口部は、前記燃料吹き出し口の直下に設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記改質器と前記燃料吹き出し口との間の距離は、30mm以上である請求項1〜のいずれかに記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムでは、燃料を燃料電池にて発電に使用するだけでなく、燃焼部での燃焼燃料にも使用している。例えば、燃料の全体量に対して燃料電池において発電に使用する燃料の割合を70〜80%として(以下、この割合を燃料利用率という)、残りの20〜30%の燃料を燃焼部での燃焼燃料に使用することが多い。
【0003】
ところで、最近、電力需要の高まり及び環境問題への関心の高まり等から、燃料電池の発電効率の更なる向上が求められている。燃料電池の発電効率の向上には、燃料電池の発電電圧を上げる方法、燃料電池の燃料利用率を上げる方法等がある。前者の方法は、燃料電池の材料開発が必要となるので、後者の方法が有望視されている。
【0004】
しかし、燃料電池の燃料利用率を更に高くする場合には、燃料電池にて更に多量の改質ガスを発電に使用するため、その増加に伴い燃焼部での燃焼燃料に使用される可燃ガス量が減少する。よって、燃焼部にて未利用の改質ガスを燃焼させる際の酸化剤として、燃料電池を通過したカソードオフガスを用いる場合、可燃ガスの濃度減少による燃焼性の悪化(失火)を招く場合がある。かかる燃焼性の悪化によって、燃焼排ガス中に未燃成分(CO等)が残存する可能性があるので、その未燃成分の除去等を行うための排ガス処理触媒(浄化触媒)への負担が増大する。
【0005】
なお、可燃ガス量の減少によって燃焼部の発熱量が低下すると、改質器の改質反応に適した温度及び発電電圧に影響を与える燃料電池の温度を維持のための十分な熱量が得られにくくなる。よって、例えば、燃料電池スタックを収容する収容部の断熱性能、燃焼部の燃焼熱を回収する熱交換器等の熱回収性能を向上する必要がある。その結果、燃料電池システムの製造コストのアップ、及びシステム構成の複雑化、更にはシステムの大型化を招く可能性がある。
【0006】
ここで、燃料電池システムにおいて、燃料電池の燃料利用率は、発電効率を決める上で重要なパラメータであるので、発電状態により決定される。それに対して、燃料電池の空気利用率は、発電電圧に影響を与える燃料電池の温度及び温度ムラを最適に制御するために、運転状態や環境温度等によって変化し得る。例えば、燃料電池の燃料利用率を70%、燃料電池の空気利用率を35%で運転した場合、燃焼部で希薄燃焼となる。よって、この場合、燃焼部の燃焼性が悪化(例えば、失火等)する可能性が高くなる。
【0007】
そこで、特許文献1では、燃料電池からのカソードオフガスとは異なるフレッシュな空気を最適な空気比に設定して燃焼部に送ることで、燃焼部の燃焼性の悪化を抑制する方法が提案されている。
【0008】
特許文献2では、図5に示す如く、燃料電池システムの燃焼部に、燃料噴出部18と空気噴出部19とに亘る状態で通気性及び電気絶縁性を備える多孔体21を設け、これにより、燃焼部34の燃焼性の悪化を抑制する方法が提案されている。
【0009】
特許文献3では、図6に示す如く、覆い体17により、セル9の空気通流部8の横側を閉塞することで、燃焼部の燃焼性の悪化を抑制する方法が提案されている。
【0010】
特許文献4では、燃料電池からの未利用の改質ガス及び空気の混合促進のために、複数の燃料電池を跨ぐように長尺状の部材(渦流発生体)を設け、これにより、燃焼部の燃焼性の悪化を抑制する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許公開2013−157274号公報
【特許文献2】特許公開2013−206603号公報
【特許文献3】特許公開2013−222592号公報
【特許文献4】特許公開2011−150842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来例は、固体酸化物形燃料電池から排出される改質ガス及び空気の燃焼部における適切な混合について十分に検討されていない。また、従来例は、このような燃焼部の熱による改質器の適切な加熱についても十分に検討されていない。
【0013】
本開示の一態様(aspect)は、このような事情に鑑みてなされたものであり、固体酸化物形燃料電池の発電効率向上のために燃料利用率を高くする場合に、固体酸化物形燃料電池から排出される改質ガス及び空気の燃焼部における混合を従来よりも適切に行い得る燃料電池システムを提供する。また、このような燃焼部の熱による改質器の加熱を従来よりも適切に行い得る燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本開示の一態様に係る燃料電池システムは、原燃料の改質により改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガスと空気との反応により発電する固体酸化物形燃料電池と、前記固体酸化物形燃料電池に隣接して設けられ、前記固体酸化物形燃料電池の反応後に残存する改質ガスが集合する燃料集合部と、前記燃料集合部の外周に沿って形成されている空気通過部と、前記燃料集合部の燃料吹き出し口から出た改質ガスに前記空気通過部を流れる空気が混合することで前記改質ガスを燃焼させる燃焼部と、前記空気通過部から前記燃焼部への前記改質器に沿う方向の前記空気の流れを妨げるように設けられている覆い体と、を備え、前記燃焼部の燃焼熱を用いて、前記改質器による前記原燃料の改質が行われ、前記覆い体は、前記燃料集合部の燃料吹き出し口側へ前記空気を送るように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様に係る燃料電池システムによれば、以上に説明したように構成され、固体酸化物形燃料電池の発電効率向上のために燃料利用率を高くする場合に、固体酸化物形燃料電池から排出される改質ガス及び空気の燃焼部における混合を従来よりも適切に行い得る。また、このような燃焼部の熱による改質器の加熱を従来よりも適切に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る燃料電池システムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る燃料電池システムの燃料集合部の周辺部の一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る燃料電池システムの燃料集合部の周辺部における流体シミュレーション結果の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態の変形例に係る燃料電池システムの燃料集合部の周辺部の一例を示す図である。
図5図5は、従来の燃料電池システムの構成の一例を示す模式図である。
図6図6は、従来の燃料電池システムの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者らは、固体酸化物形燃料電池から排出される改質ガス及び空気の燃焼部における適切な混合に関して、従来例の問題点を鋭意検討し、以下の知見を得た。
【0018】
まず、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、フレッシュ空気の経路を新たに形成する必要があるので、燃料電池システムのコストアップ及び収納性が難点となる。
【0019】
特許文献2に記載の燃料電池システムでは、多孔体21を追加する必要があるとともに、多孔体21を固定できる構成以外には適用できないという問題がある。
【0020】
特許文献3に記載の燃料電池システムでは、空気通流部8の横側に覆い体17を配置できない構成では適用しにくいという問題がある。
【0021】
特許文献4に記載の燃料電池システムでは、渦流発生体を配置できない構成では適用しにくいという問題、渦流発生体の耐熱性確保が難点となり得るという問題がある。
【0022】
そこで、本開示の第1の態様の燃料電池システムは、原燃料の改質により改質ガスを生成する改質器と、改質ガスと空気との反応により発電する固体酸化物形燃料電池と、固体酸化物形燃料電池に隣接して設けられ、固体酸化物形燃料電池の反応後に残存する改質ガスが集合する燃料集合部と、燃料集合部の外周に沿って形成されている空気通過部と、燃料集合部の燃料吹き出し口から出た改質ガスに空気通過部を流れる空気が混合することで改質ガスを燃焼させる燃焼部と、空気通過部から燃焼部への改質器に沿う方向の空気の流れを妨げるように設けられている覆い体と、を備え、燃焼部の燃焼熱を用いて、改質器による原燃料の改質が行われ、覆い体は、燃料集合部の燃料吹き出し口側へ空気を送るように構成されている。
【0023】
かかる構成によると、固体酸化物形燃料電池の発電効率向上のために燃料利用率を高くする場合に、固体酸化物形燃料電池から排出される改質ガス及び空気の燃焼部における混合を従来よりも適切に行い得る。また、このような燃焼部の熱による改質器の加熱を従来よりも適切に行い得る。
【0024】
具体的には、固体酸化物形燃料電池からの空気が空気通過部を通過する際に、空気が覆い体により燃料集合部の燃料吹き出し口へと導かれる。そして、燃料吹き出し口からの改質ガスと空気とが混合し、燃焼部で燃焼される。これにより、改質器と燃料集合部の間を空気が燃焼部の燃料燃焼に関与することなく素通りすることを防止できる。また、改質器は、空気通過部を介して燃料集合部と隣接しているので、燃焼部の燃焼熱を適切に改質器に伝熱できる。
【0025】
以上により、例えば、固体酸化物形燃料電池の発電効率向上のために燃料利用率を高くする場合でも、燃焼部での失火等を起こすことなく燃焼部における燃料燃焼を安定して行うことができる。つまり、燃焼部の発熱量の低下及び燃焼性の悪化を抑制し得る。このため、燃焼排ガス中の未燃焼ガス成分(CO等)を低減できる。また、燃焼部の燃焼熱を有効に活用することで、燃料集合部に隣接された改質器への加熱を適切に行うことができる。また、燃料電池システムの製造コストのアップを抑え、燃焼部のコンパクトな構成を維持し得る。
【0026】
本開示の第2の態様の燃料電池システムは、第1の態様の燃料電池システムにおいて、燃焼部の燃焼に使用される空気は、固体酸化物形燃料電池から排出されたカソードオフガスであってもよい。
【0027】
かかる構成によると、燃焼部へ空気を供給するための装置を別途設ける必要がないので、燃料電池システムを簡素に構成できる。また、燃料電池システムの製造コストを低減できる。
【0028】
本開示の第3の態様の燃料電池システムは、第1の態様又は第2の態様の燃料電池システムにおいて、覆い体は、改質器から燃料集合部への向きにおいて鉛直方向下方に傾斜していてもよい。
【0029】
かかる構成によると、覆い体と燃料集合部の上壁部との間の空間を適切に確保できるので、燃料集合部の燃料吹き出し口側への空気送出が容易となる。また、覆い体が燃焼部の火炎を包み込む配置となる。よって、覆い体による燃焼部の保炎効果が得られるので、燃焼部が失火する可能性を低減できる。
【0030】
本開示の第4の態様の燃料電池システムは、第1の態様、第2の態様及び第3の態様のいずれかの燃料電池システムにおいて、覆い体の上方から燃焼部を覆う第1保炎カバーを備えてもよい。
【0031】
また、本開示の第5の態様の燃料電池システムは、第4の態様の燃料電池システムにおいて、第1保炎カバーは、改質器から燃料集合部への向きにおいて鉛直方向上方に傾斜していてもよい。
【0032】
かかる構成によると、第1保炎カバーが燃焼部の火炎を包み込む配置となる。よって、第1保炎カバーによる燃焼部の保炎効果が得られるので、燃焼部が失火する可能性を低減できる。
【0033】
また、本開示の第6の態様の燃料電池システムは、第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様及び第5の態様のいずれかの燃料電池システムにおいて、覆い体の上方から燃焼部を覆い、燃料集合部から突出している第2保炎カバーを備えてもよい。
【0034】
かかる構成によると、第2保炎カバーが燃焼部の火炎を包み込む配置となる。よって、第2保炎カバーによる燃焼部の保炎効果が得られるので、燃焼部が失火する可能性を低減できる。
【0035】
また、本開示の第7の態様の燃料電池システムは、第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様及び第6の態様のいずれかの燃料電池システムにおいて、覆い体は、空気通過部から燃焼部への空気の吹き出しのための開口部を備え、開口部は、燃料吹き出し口の直下に設けられていてもよい。
【0036】
かかる構成によると、隣り合う燃料吹き出し口に形成される火炎と火炎の間を空気が通過しにくくなるので、燃焼部の着火点から火炎が全周に火移りしやすくなる。
【0037】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態等は、一例であり、本開示を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な図示ではない場合がある。
【0038】
(実施形態)
[装置の全体構成]
図1は、実施形態に係る燃料電池システムの構成の一例を示す模式図である。図1では、燃料電池システム100を側面視した図が示されている。また、便宜上、「上」から「下」に重力が作用するものとし、以下の説明では、上下方向を鉛直方向という場合がある。また、原燃料及び改質ガスの流れを実線、空気の流れを点線、燃焼排ガスの流れを一点鎖線で示している。
【0039】
図1に示すように、燃料電池システム100は、改質器4と、固体酸化物形燃料電池2と、燃料集合部9と、原燃料経路1と、改質ガス経路16と、空気経路12と、排ガス経路19と、を備える。
【0040】
改質器4は、原燃料の改質により改質ガスを生成する。具体的には、改質器4において、原燃料経路1からの原燃料が改質反応して、水素含有の改質ガスが生成される。改質反応は、いずれの形態であってもよく、例えば、水蒸気改質反応、オートサーマル反応及び部分酸化反応等が挙げられる。
【0041】
図面には示されていないが、各改質反応において必要となる機器は適宜設けられる。例えば、改質反応が水蒸気改質反応であれば、水蒸気を生成する蒸発器、及び蒸発器に水を供給する水供給器が設けられる。改質反応がオートサーマル反応であれば、燃料電池システム100には、更に、改質器4に空気を供給する空気供給器が設けられる。なお、本実施形態では、原燃料経路1の上流側に、図示しない蒸発部が設けられている。これにより、排ガス経路19を流れる燃焼排ガスの余熱を利用して改質反応用の水が蒸発され、原燃料経路1を通じて原燃料と水蒸気とが混合されて改質器4へと送られる。
【0042】
原燃料は、メタンを主成分とする都市ガス、天然ガス、LPG等の少なくとも炭素及び水素から構成される有機化合物を含む燃料である。
【0043】
ここで、改質器4は、鉛直方向の平面視において、燃料集合部9の周囲を囲む環状(例えば、円環状)に形成されている。そして、空気通過部3及び燃焼部34は、燃料集合部9の外周に沿って形成されている。図1に示すように、本実施形態では、改質器4と燃料集合部9との間に、環状(例えば、円環状)の空気通過部3及び燃焼部34が形成されている。なお、燃料集合部9の周辺部の詳細については後述する。
【0044】
以上により、改質器4は、燃焼部34の熱及び燃焼排ガスの熱により改質反応に適した温度(例えば、約600〜700℃程度)にまで加熱されている。
【0045】
固体酸化物形燃料電池2は、改質ガスと空気との反応により発電する。なお、燃料電池スタックは、例えば、複数の平板型燃料電池及びインターコネクタ等の部材を積層した平板型スタックであってもいいし、複数の円筒型燃料電池(セルチューブ)及びインターコネクタ等の部材をバンドル(束にして固定)した円筒型スタックであってもいい。
【0046】
ここで、改質器4から出た改質ガスは、中空の板状の改質ガス経路16において十分に混合された後、固体酸化物形燃料電池2のそれぞれの内部の中空領域へと均等に分配して供給される。これにより、改質ガス経路16から出た改質ガスが、固体酸化物形燃料電池2のそれぞれの中空領域内を上昇し、固体酸化物形燃料電池2の発電反応に必要な水素(改質ガス)が固体酸化物形燃料電池2に供給される。
【0047】
一方、固体酸化物形燃料電池2の発電反応に必要な酸素(空気)は、これらとは別のルートを通じて燃料電池スタックへと供給される。具体的には、空気経路12の上流側に、図示しない空気供給器が設けられている。空気供給器として、例えば、ブロア等を例示できる。空気供給器によって空気経路12内を圧送される空気は、図示しない適宜のフィルターを通過した後、空気経路12の下流部へと送られる。なお、このとき、空気経路12を流れる空気は、排ガス経路19を流れる燃焼排ガスとの熱交換により加熱される。つまり、本熱交換器5には、排ガス経路19を構成する流路部材と空気経路12を構成する流路部材とが通過する。これにより、常温の空気は、約600℃程度まで加熱される。高温の燃焼排気ガスは、約300℃程度まで冷却される。なお、燃焼排ガスは、その後、給湯用の温水を生成するための図示しない熱交換器へと送られる。そして、図1に示すように、空気経路12の下流部は、燃料電池スタックの中央の下端部付近に位置しており、本下流部には、複数の空気出口23が、空気経路12を構成する流路部材の周方向にほぼ均等に形成されている。これにより、空気出口23から出た高温の空気(例えば、約600〜700℃程度)が、隣り合う固体酸化物形燃料電池2の隙間を上昇し、固体酸化物形燃料電池2の発電反応に必要な酸素(空気)が固体酸化物形燃料電池2に供給される。
【0048】
このようにして、以上の改質ガス及び空気の燃料電池スタックでの上昇中において、改質ガス中の水素及び一酸化炭素と空気中の酸素との間で発電反応が起こり、水蒸気と二酸化炭素ガスが生成され、同時に、起電力が生じる。改質ガス中の発電成分(水素及び一酸化炭素)のうち、約60%〜80%が発電反応に使用され、約20%〜40%の未利用の発電成分は、燃料電池スタックの上方で燃焼される。そして、未利用の改質ガスの燃焼熱が、改質器4の改質反応に利用される。空気中の酸素は、一般的には約30%が発電反応に使用され、未利用の酸素を含む空気も燃料電池スタックの上方で燃焼される。
【0049】
ところで、従来構成では、数十〜数百個の固体酸化物形燃料電池のそれぞれの上端部の燃料吹き出し部から未利用の改質ガスが吹き出し、改質ガスを燃焼させている。このため、数個の固体酸化物形燃料電池の燃料吹き出し部において、燃焼部の部分的な失火等で不完全燃焼が起こる場合がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、図1に示すように、固体酸化物形燃料電池2のそれぞれの未利用の改質ガスを燃料集合部9で集合させる構成を取っている。つまり、燃料集合部9は、固体酸化物形燃料電池2に隣接して設けられ、固体酸化物形燃料電池2の反応後に残存する改質ガスが集合する。また、燃焼部34は、燃料集合部9の燃料吹き出し口13から出た改質ガスに空気通過部3を流れる空気が混合することで改質ガスを燃焼させる。以下、燃料集合部9の周辺部の構成について説明する。なお、燃焼部34の燃焼に使用される空気は、図示しない空気供給器によって供給される空気であってもよいし、固体酸化物形燃料電池2から排出されたカソードオフガスであってもよい。本実施形態では、燃焼部34の燃焼に使用される空気は、固体酸化物形燃料電池2から排出されたカソードオフガスである。これにより、燃焼部34へ空気を供給するための装置を別途設ける必要がないので、燃料電池システム100を簡素に構成できる。また、燃料電池システム100の製造コストを低減できる。
【0051】
[燃料集合部の周辺部の構成]
図2は、実施形態に係る燃料電池システムの燃料集合部の周辺部の一例を示す斜視図である。図2でも、「上」から「下」に重力が作用するとしている。また、改質ガスの流れを実線、空気の流れを点線で示している。
【0052】
図1及び図2に示すように、中空の板状(ここでは、円盤状)の燃料集合部9は、固体酸化物形燃料電池2を備える燃料電池スタックの上方に設けられている。そして、上記のとおり、未利用の改質ガスが燃料集合部9で集合するよう、固体酸化物形燃料電池2のそれぞれの内部と燃料集合部9の内部とは連通している。
【0053】
また、燃料集合部9は、図2に示す如く、鉛直方向において立設する円筒状の側壁部9Aと、側壁部9Aの上端部から中央部へ向けて水平に延在する円盤状の蓋部9Cと、側壁部9Aの下端部から外側に延在する円環状の上壁部9Bを備える。
【0054】
そして、数十個の燃料吹き出し口13(例えば、改質ガスの吹き出しのための開口部である丸孔)が、燃料集合部9の側壁部9Aの鉛直方向の適所において、周方向にほぼ均等に形成されている。これにより、燃料集合部9内の改質ガスが、燃料吹き出し口13で再分配されて燃焼部34へと水平方向に吹き出される。よって、従来構成で発生していた部分的な失火が抑制される。
【0055】
覆い体8は、空気通過部3から燃焼部34への改質器4に沿う方向(つまり、鉛直方向)の空気の流れを妨げるように設けられ、燃料集合部9の燃料吹き出し口13側へ空気を送るように構成されている。
【0056】
覆い体8は、例えば、円環状のステンレス製の金属板で構成されていて、この金属板の内端部が、上記の上壁部9Bの端部と溶接等の適宜の固定手段で固定されている。そして、上壁部9Bの近傍における覆い体8の適所に、数十個の空気吹き出し口14(例えば、空気の吹き出しのための開口部である丸孔)が、複数段(ここでは、2段)に亘り、周方向にほぼ均等に形成されている。これにより、改質器4と燃料集合部9の間を空気が燃焼部34の燃料燃焼に関与することなく素通りすることを防止できる。つまり、覆い体8は、空気を燃料吹き出し口13側に所望の流速で空気吹き出し口14から吹き出させ、空気通過部3を通過する空気の素通りを禁止できる構成となっている。よって、ほぼ全量の空気が燃焼部34の燃料燃焼に利用され得る。
【0057】
なお、ここで、上記の覆い体8を用いずに燃料集合部9と改質器4の距離を短くするにより、燃焼部34の燃料燃焼に空気を適切に関与させることも可能である。しかし、この方法の場合、燃焼部34の火炎と改質器4(つまり、改質触媒)の距離が短くなり過ぎて、燃焼部34の火炎の影響で改質触媒を劣化させる可能性がある。また、燃料集合部9と改質器4の距離が短くなると、空気通過部3を通過する空気の流速が速くなり、燃焼部34の火炎を吹き飛ばす可能性もある。しかしながら、本実施形態では、上記の覆い体8を用いることで、このような可能性を低減できる。
【0058】
[覆い体の具体例]
以下、覆い体8の具体例について図面を参照しながら説明する。
【0059】
本例では、改質器4と燃料集合部9の燃料吹き出し口13との間の距離L(図1参照)を約30mm以上、取っている。これにより、改質器4のステンレス製の容器及び改質触媒が、燃焼部34の火炎による熱から適切に保護され、改質器4における熱応力の発生も抑制できる。
【0060】
また、覆い体8は、改質器4から燃料集合部9への向きにおいて鉛直方向下方に傾斜している。本例では、覆い体8は、水平方向を基準に約30°程度、傾斜している。これにより、燃料集合部9の上壁部9Bと覆い体8との間の隙間を適切に確保できるので、燃料集合部9の燃料吹き出し口13側への空気送出が容易となる。
【0061】
また、燃焼部34の火炎は、燃料吹き出し口13から外向きの斜め上方に形成されるので、水平方向を基準に覆い体8を約30°程度、傾斜させると、覆い体8が燃焼部34の火炎を包み込む配置となる。よって、覆い体8による燃焼部34の保炎効果が得られるので、燃焼部34が失火する可能性を低減できる。
【0062】
なお、覆い体8による燃料吹き出し口13側への空気送出効果は、汎用の熱流体解析ソフト「SCRYU/Tetra(登録商標)」での流体シミュレーション結果でも裏付けられている。
【0063】
図3は、実施形態に係る燃料電池システムの燃料集合部の周辺部における流体シミュレーション結果の一例を示す図である。図3には、燃料吹き出し口13及び空気吹き出し口14の近傍におけるガスの流速分布がコンター図で描かれている。本流体シミュレーションの結果によれば、水平方向を基準に覆い体8を約30°程度、傾斜させることで、燃焼部34への空気送出の容易化を図れることを可視化できている。
【0064】
なお、図2及び図3に示すように、燃料集合部9の上壁部9Bについても、燃料集合部9から改質器4への向きにおいて鉛直方向下方に傾斜している。これにより、仮に覆い体を水平に形成する場合でも、燃焼部34への空気送出を容易に行うことができる。但し、本例の如く、覆い体8及び上壁部9Bの両方を傾斜させる方が、燃焼部34への空気送出の容易化において有利である。
【0065】
[第1保炎カバー]
以下、第1保炎カバー10について図面を参照しながら説明する。
【0066】
図1及び図2に示すように、第1保炎カバー10は、覆い体8の上方から燃焼部34を覆っている。また、第1保炎カバー10は、改質器4から燃料集合部9への向きにおいて鉛直方向上方に傾斜している。
【0067】
第1保炎カバー10は、例えば、円環状のステンレス製の金属板で構成されていて、この金属板は、覆い体8で保持され、燃焼部34を包むように、改質器4から内向きの斜め上方に所定の幅寸法だけ延在(突出)している。
【0068】
以上により、第1保炎カバー10が燃焼部34の火炎を包み込む配置となる。これにより、第1保炎カバー10による燃焼部34の保炎効果が得られるので、燃焼部34が失火する可能性を低減できる。つまり、固体酸化物形燃料電池2の燃料利用率を高くして燃焼部34の発熱量が減少した場合でも、第1保炎カバー10により、燃焼部34の火炎を保炎し、燃焼部34の失火等の発生を抑制できる。
【0069】
また、燃焼部34の何らかの状態変化(例えば、空気拡散の悪化、ガス流量の極端な変更等)の影響で燃焼部34の火炎が伸長した場合でも、第1保炎カバー10で、改質器4まで火炎が届かないように改質器4を保護できる。
【0070】
[第2保炎カバー]
以下、第2保炎カバー11について図面を参照しながら説明する。
【0071】
図1及び図2に示すように、第2保炎カバー11は、覆い体8の上方から燃焼部34を覆い、燃料集合部9から突出している。
【0072】
第2保炎カバー11は、例えば、円環状のステンレス製の金属板で構成されていて、この金属板の内端部は、蓋部9Cの外端部と溶接等の適宜の固定手段で固定されている。そして、本金属板は、燃焼部34を包むように、燃料吹き出し口13が形成されている側壁部9Aの上端部から外向きの斜め上方に所定の幅寸法だけ延在(突出)している。
【0073】
以上により、第2保炎カバー11が燃焼部34の火炎を包み込む配置となる。これにより、第2保炎カバー11による燃焼部34の保炎効果が得られるので、燃焼部34が失火する可能性を低減できる。つまり、固体酸化物形燃料電池2の燃料利用率を高くして燃焼部34の発熱量が減少した場合でも、第2保炎カバー11により、燃焼部34の火炎を保炎し、燃焼部34の失火等の発生を抑制できる。
【0074】
(変形例)
以下、実施形態の変形例の燃料電池システム100について図面を参照しながら説明する。図4は、実施形態の変形例に係る燃料電池システムの燃料集合部の周辺部の一例を示す図である。図4(a)では、燃料集合部9の周辺部を鉛直方向に平面視した図が示されている。図4(b)では、図4(a)のB−Bの矢視図が示されている。
【0075】
本変形例では、覆い体8に形成されている複数段の空気吹き出し口14のうちの燃料集合部9に最も近接する空気吹き出し口14が、燃料吹き出し口13の直下に設けられている。なお、図4には、図面を理解しやすくする趣旨で、燃焼部34が着火した場合の燃料吹き出し口13に形成される火炎の様子をドット模様で図示し、空気吹き出し口14については燃料集合部9に最も近接する丸孔のみを図示している。
【0076】
燃料電池システム100の起動時における燃焼部34の着火の場合、又は、燃料電池システム100の運転中に何らかの状態変化で燃焼部34の火炎が消えた場合、燃焼部34が、燃焼条件を満たしていれば、図示しない着火器で燃焼部34の着火が行われる。なお、着火器として、例えば、ヒーター、点火プラグ等を例示できる。
【0077】
ここで、仮に隣り合う燃料吹き出し口13の間に、空気吹き出し口14を設けた場合、隣り合う燃料吹き出し口13に形成される火炎と火炎の間を、空気吹き出し口14からの空気が遮るように上昇するので、両者間の火炎の火移りが困難となり、燃焼部34の部分失火、或いは着火不良等を招く可能性がある。しかし、本変形例では、上記のとおり、空気吹き出し口14が、燃料吹き出し口13の直下に設けられているので、このような可能性を低減できる。つまり、隣り合う燃料吹き出し口13に形成される火炎と火炎の間を空気が通過しにくくなるので、燃焼部34の着火点から火炎が全周に火移りしやすくなる。
【0078】
上記説明から、当業者にとって、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示の一態様によれば、固体酸化物形燃料電池の発電効率向上のために燃料利用率を高くする場合に、固体酸化物形燃料電池から排出される改質ガス及び空気の燃焼部における混合を従来よりも適切に行い得る。よって、本開示の一態様は、例えば、燃料電池システムに利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 :原燃料経路
2 :固体酸化物形燃料電池
3 :空気通過部
4 :改質器
5 :熱交換器
8 :覆い体
9 :燃料集合部
9A :側壁部
9B :上壁部
9C :蓋部
10 :第1保炎カバー
11 :第2保炎カバー
12 :空気経路
13 :燃料吹き出し口
14 :空気吹き出し口
16 :改質ガス経路
19 :排ガス経路
23 :空気出口
34 :燃焼部
100 :燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6