特許第6262422号(P6262422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262422
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】冷却装置および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20180104BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 N
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-220500(P2012-220500)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-75385(P2014-75385A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】音部 優里
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直毅
(72)【発明者】
【氏名】西 槙介
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/136017(WO,A1)
【文献】 米国特許第05915463(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0294113(US,A1)
【文献】 特開2002−185175(JP,A)
【文献】 特開2011−166122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0162899(US,A1)
【文献】 特開2000−243886(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007044537(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0145581(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0056669(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0050483(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0296249(US,A1)
【文献】 国際公開第03/060414(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/114475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の外部に発熱体を接合可能で、前記発熱体側の前記基体の内部に前記基体の入口側から前記基体の出口側にかけて複数のピン状の放熱フィンが配置されると共に、冷却媒体を前記基体の入口側から前記基体の出口側に向けて流動させることで前記発熱体を冷却する冷却装置であって、
前記放熱フィンの幅方向断面形状は、前記冷却媒体の流動方向の寸法が前記冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法よりも大きく、
前記放熱フィンは、互いに前記冷却媒体の流動方向と直交する幅方向に所定の間隔を介して設けられ、
前記放熱フィンは、幅方向断面形状の外縁が前記冷却媒体の流動方向に向けて前記放熱フィンの幅方向両側に拡がるように延びる2つの辺部を含んで構成され、該2つの辺部が交差する部位が前記冷却媒体の流動方向の上流側に向いていて、
前記基体は、底板と、該底板から立設された側板と、該側板から外方へ向かって延びる板状の接合部とを備え、
前記放熱フィンは、平板状の支持板に支持されていて、
前記基体の接合部と前記支持板とは接合されていて、前記放熱フィンの先端部は前記基体の底板に接合されていて、
前記冷却媒体の流動方向に並ぶ前記放熱フィンのうち、一方の放熱フィンにおける下流側の一部と他方の放熱フィンにおける上流側の一部とは、前記冷却媒体の流動方向と直交する方向において互いに重なり、
前記冷却媒体の流動方向における前記接合部の長さは、前記冷却媒体の流動方向における前記側板と該側板の最も近くに配置された放熱フィンとの間隙よりも小さく、前記冷却媒体の流動方向と直交する方向における前記接合部の長さは、前記冷却媒体の流動方向と直交する方向における前記側板と該側板の最も近くに配置された放熱フィンとの間隙よりも大きいことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記放熱フィンは、前記2つの辺部が交差する部位が角部になっている請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記放熱フィンの幅方向断面形状は、菱形形状をなしている請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記放熱フィンは、
前記冷却媒体の流動方向の上流側に設けられ、幅方向断面形状の外縁として2つの辺部が交差する部位を有する第1部位と、
前記冷却媒体の流動方向の下流側に設けられ、幅方向断面形状の外縁として2つの辺部が交差する部位を有さない第2部位と
を有する請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記放熱フィンが千鳥状に配置されている請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記所定の間隔は前記冷却媒体の流動方向における前記放熱フィンの寸法以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記放熱フィンは、幅方向断面形状の外縁が前記冷却媒体の流動方向に向けて前記放熱フィンの幅方向両側から狭まるように延びる2つの辺部を含んで構成され、該2つの辺部が交差する部位が前記冷却媒体の流動方向の下流側に向いていることを特徴とする請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の冷却装置における前記基体には、前記発熱体としての半導体素子が絶縁基板を介して接合されることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体の内部を流通する冷却媒体によって基体に接合される発熱体を冷却する冷却装置、及び該冷却装置に半導体素子を搭載した絶縁基板を接合した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品などの発熱体を冷却する冷却装置として、発熱体が外側から搭載される基体を有すると共に、この基体の内部に冷却媒体を流動させる流路を形成した構成が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷却装置においては、ピン状をなす多数の放熱フィンを流路内に配置することにより、基体の流路内面における冷却媒体への接触面積を増大させている。そして、発熱体が発した熱が発熱体から基体に伝達されると、基体の流路内面から冷却媒体への放熱が放熱フィンによって促進されることにより、発熱体に対する冷却効率の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−29539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の冷却装置では、発熱体に対する冷却効率を向上させる場合には、放熱フィンにおいて円形状をなす断面形状の中心径を大きくすることにより、放熱フィンの表面積を増大させることが考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合には、放熱フィンは、冷却媒体の流動方向と直交する幅方向における寸法が大きくなる。その結果、流路における放熱フィンによる流路抵抗が増大することにより、冷却媒体が流路を通過する際の圧力損失が大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を抑制しつつ、発熱体に対する冷却効率の向上を図ることができる冷却装置および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、基体の外部に発熱体を接合可能で、前記発熱体側の前記基体の内部に前記基体の入口側から前記基体の出口側にかけて複数のピン状の放熱フィンが配置されると共に、冷却媒体を前記基体の入口側から前記基体の出口側に向けて流動させることで前記発熱体を冷却する冷却装置であって、前記放熱フィンの幅方向断面形状は、前記冷却媒体の流動方向の寸法が前記冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法よりも大きく、前記放熱フィンは、互いに前記冷却媒体の流動方向と直交する幅方向に所定の間隔を介して設けられていることを要旨とする。
【0009】
これによれば、放熱フィンの幅方向断面形状が円形状の場合と比較して、冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法を変化させることなく、冷却媒体の流動方向の寸法を大きくすることが可能となる。この場合、放熱フィンは、冷却媒体の流動方向での寸法が大きくなることにより、発熱体から伝達される熱を冷却媒体に効率良く放熱する。その結果、発熱体に対する冷却効率の向上を図ることができる。また、この場合、放熱フィンは、冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法が変化しないため、基体の内部における放熱フィンによる流路抵抗が増大することが抑制される。したがって、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を抑制しつつ、発熱体に対する冷却効率の向上を図ることができる。
【0010】
請求項1に記載の発明は、前記放熱フィンは、幅方向断面形状の外縁が前記冷却媒体の流動方向に向けて前記放熱フィンの幅方向両側に拡がるように延びる2つの辺部を含んで構成され、該2つの辺部が交差する部位が前記冷却媒体の流動方向の上流側に向いていて、前記基体は、底板と、該底板から立設された側板と、該側板から外方へ向かって延びる板状の接合部とを備え、前記放熱フィンは、平板状の支持板に支持されていて、前記基体の接合部と前記支持板とは接合されていて、前記放熱フィンの先端部は前記基体の底板に接合されていて、前記冷却媒体の流動方向に並ぶ前記放熱フィンのうち、一方の放熱フィンにおける下流側の一部と他方の放熱フィンにおける上流側の一部とは、前記冷却媒体の流動方向と直交する方向において互いに重なり、前記冷却媒体の流動方向における前記接合部の長さは、前記冷却媒体の流動方向における前記側板と該側板の最も近くに配置された放熱フィンとの間隙よりも小さく、前記冷却媒体の流動方向と直交する方向における前記接合部の長さは、前記冷却媒体の流動方向と直交する方向における前記側板と該側板の最も近くに配置された放熱フィンとの間隙よりも大きいことを要旨とする。
【0011】
これによれば、基体の内部における放熱フィンによる流路抵抗が更に大きく低減されることにより、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。また、一方の放熱フィンにおける下流側の一部と他方の放熱フィンにおける上流側の一部との間に形成される冷却媒体の流路の流路断面積の大きさが変化することが抑制されるため、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の冷却装置において、前記放熱フィンは、前記2つの辺部が交差する部位が角部になっていることを要旨とする。
これによれば、放熱フィンの幅方向断面形状の外縁は、冷却媒体の流動方向における上流側に向いている部位が冷却媒体の流動方向の上流側に向けて尖った形状となる。そのため、基体の内部における放熱フィンによる流路抵抗が更に大きく低減されることにより、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項又は請求項に記載の冷却装置において、前記放熱フィンの幅方向断面形状は、菱形形状をなしていることを要旨とする。
これによれば、放熱フィンは、冷却媒体の流動方向に長く延びる形状となるため、冷却媒体の流動方向における放熱フィンの剛性を十分に確保することができる。また、放熱フィンの幅方向断面形状の外縁は、2つの辺部が交差する部位から基体の内部の流動方向に向けて基体の内部の幅方向両側に拡がるように延びている。そのため、基体の内部における放熱フィンによる流路抵抗が低減されることにより、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を抑制することができる。また、下流側にて渦流の発生を抑制することができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項又は請求項に記載の冷却装置において、前記放熱フィンは、前記冷却媒体の流動方向の上流側に設けられ、幅方向断面形状の外縁として2つの辺部が交差する部位を有する第1部位と、前記冷却媒体の流動方向の下流側に設けられ、幅方向断面形状の外縁として2つの辺部が交差する部位を有さない第2部位とを有することを要旨とする。
【0015】
これによれば、放熱フィンは、冷却媒体の流動方向に長く延びる形状となるため、冷却媒体の流動方向における放熱フィンの剛性を十分に確保することができる。また、放熱フィンの第1部位における幅方向断面形状の外縁は、2つの辺部が交差する部位から冷却媒体の流動方向に向けて基体の内部の幅方向両側に拡がるように延びている。そのため、基体の内部における放熱フィンによる流路抵抗が低減されることにより、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のうち何れか一項に記載の冷却装置において、前記放熱フィンが千鳥状に配置されていることを要旨とする。
これによれば、冷却媒体は、基体の内部に配置された放熱フィンの間を円滑に流動することができるため、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のうち何れか一項に記載の冷却装置において、前記所定の間隔は前記冷却媒体の流動方向における前記放熱フィンの寸法以下であることを要旨とする。
【0019】
これによれば、放熱フィンは、互いに冷却媒体の流動方向と直交する幅方向に適切な間隔を介して設けられるため、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を抑制しつつ、発熱体に対する冷却効率の向上を図ることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の冷却装置において、前記放熱フィンは、幅方向断面形状の外縁が前記冷却媒体の流動方向に向けて前記放熱フィンの幅方向両側から狭まるように延びる2つの辺部を含んで構成され、該2つの辺部が交差する部位が前記冷却媒体の流動方向の下流側に向いていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のうち何れか一項に記載の冷却装置における前記基体には、前記発熱体としての半導体素子が絶縁基板を介して接合されることを要旨とする。
【0023】
基体における冷却媒体の流動方向での剛性が放熱フィンによって特に大きく増強されている。そのため、絶縁基板と基体との線熱膨張係数の違いに起因して基体が冷却媒体の流動方向に反りを生じたとしても、こうした基体の反りを放熱フィンによって好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、冷却媒体が基体の内部を通過する際の圧力損失の増大を抑制しつつ、発熱体に対する冷却効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態における冷却装置を示す分解斜視図。
図2】実施形態における冷却装置を示す断面図。
図3】実施形態における冷却装置の作用を示す模式図。
図4】(a)〜(d)は別例の冷却装置を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1図3に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態における冷却装置10の基体20は、アルミニウム製の第1基体形成部材21及びアルミニウム製の第2基体形成部材22を接合することで形成されている。第1基体形成部材21及び第2基体形成部材22は同一の形状とされている。第1基体形成部材21及び第2基体形成部材22は、平面視矩形状をなす底板23の四辺のうち、短辺から立設された側壁25a及び長辺から立設された側壁25bと、各側壁25a,25bの先端から外方に向かって略水平に延びる板状の接合部26とから構成されている。
【0027】
基体20の内部には、冷却媒体が流通する流路として内部領域Sが形成されている。第1基体形成部材21の底板23において内部領域Sに面する内面の裏面側となる外面には、矩形板状の絶縁基板27を介して発熱体としての半導体素子28が接合されている。具体的には、絶縁基板27の下面は、接合層として機能する金属板(図示略)を介して第1基体形成部材21に接合されている。なお、絶縁基板27の長手方向は第1基体形成部材21の長手方向と一致している。また、絶縁基板27の上面は、半導体素子28が搭載される面となっており、配線層として機能する金属板(図示略)を介して半導体素子28が搭載されている。そして、本実施形態では、冷却装置10における基体20の外面に、半導体素子28が搭載された絶縁基板27が接合されることで半導体装置30が構成されている。
【0028】
第1基体形成部材21と第2基体形成部材22との間には、基体20の内部領域Sに収容されるピン状の放熱フィン31を支持する支持板32が配設されている。支持板32は、矩形平板状をなすとともに、その大きさは接合部26の外周と同一の大きさとなっている。支持板32は、第1基体形成部材21の底板23及び第2基体形成部材22の底板23と対向するように接合部26に挟持されている。第1基体形成部材21の接合部26、第2基体形成部材22の接合部26、及び支持板32はロウ材で接合されているため、接合部26と支持板32の接合界面は気密状に封止されている。そして、内部領域Sは、支持板32によって第1流路S1(図2参照)と第2流路S2に区画されている。
【0029】
また、両基体形成部材21,22の接合部26における長手方向の両側には凹部33a,33b,34a,34b(凹部34aは図2参照)が形成されている。そして、両基体形成部材21,22の接合部26が支持板32を介して重ね合わされると、第1基体形成部材21の凹部33a,34aが第1流路S1を基体20の外部に連通させる連通部として構成される。また、第2基体形成部材22の凹部33b,34bが第2流路S2を基体20の外部に連通させる連通部として構成される。
【0030】
また、両基体形成部材21,22における凹部33a,33bの側縁は、円筒状の流入パイプ41が接合可能とされる接合部となっている。流入パイプ41は、凹部33aを通じて第1流路S1に冷却媒体を流入させると共に、凹部33bを通じて第2流路S2に冷却媒体を流入させる。また、両基体形成部材21,22における凹部34a,34bの側縁は、円筒状の流出パイプ42が接合可能とされる接合部となっている。流出パイプ42は、凹部34aを通じて第1流路S1から冷却媒体を流出させると共に、凹部34bを通じて第2流路S2から冷却媒体を流出させる。そして、冷却媒体は、両基体形成部材21,22の長手方向に沿うように基体20の入口側となる凹部33a,33bから基体20の出口側となる凹部34a,34bに向けて流動する。
【0031】
図2に示すように、支持板32の上下両面には、凹部33a,33b側から凹部34a,34b側にかけて複数のピン状をなす放熱フィン31が平面視で千鳥状に配置されている。支持板32の上面に支持される放熱フィン31の配置態様と、支持板32の下面に支持される放熱フィン31の配置態様とは互いに同一となっている。具体的には、支持板32には、支持板32の短手方向に等間隔に配置された4つの放熱フィン31aと、支持板32の短手方向に等間隔に配置された3つの放熱フィン31bとが、支持板32の長手方向に交互に7列並ぶように配置されている。そして、放熱フィン31bは、支持板32の短手方向において隣り合う放熱フィン31aの中間位置に位置している。この場合、冷却媒体の流動方向に並ぶ放熱フィン31a及び放熱フィン31bのうち、一方の放熱フィン31aの下流側の一部と他方の放熱フィン31bにおける上流側の一部とは、冷却媒体の流動方向と直交する支持板32の短手方向において互いに重なるように配置されている。また、放熱フィン31a及び放熱フィン31bは、冷却媒体の流動方向と直交する支持板32の短手方向に所定の間隔Pを介して設けられている。
【0032】
全ての放熱フィン31は、一定の太さで支持板32から突出しており、その幅方向断面形状が放熱フィン31の突出方向の全域で同一となっている。そして、放熱フィン31の幅方向断面形状は、内部領域Sにおける冷却媒体の流動方向の寸法L2が冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法L1よりも大きい菱形形状をなしている。すなわち、放熱フィン31の幅方向断面形状において相対的に長い対角線は、冷却媒体の流動方向に延びている。また、放熱フィン31の幅方向断面形状において相対的に短い対角線は、冷却媒体の流動方向と直交する方向に延びている。また、放熱フィン31は、幅方向断面形状の外縁を構成する4つの直線状の辺部A1,A2,A3,A4のうち、2つの辺部A1,A2が冷却媒体の流動方向に向けて冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の両側に拡がるように延びている。そして、これらの辺部A1,A2が交差する角部Cが冷却媒体の流動方向の上流側に向いている。なお、放熱フィン31aと放熱フィン31bとの間の間隔Pは、冷却媒体の流動方向における放熱フィン31の幅方向断面形状の寸法L2よりも小さい。また、放熱フィン31の角部Cは、2つの辺部A1,A2が鋭角をなすように交差している。また、全ての放熱フィン31は、支持板32からの突出量が互いに等しく構成されている。そして、支持板32の上面から上方に突出する全ての放熱フィン31の先端部が第1基体形成部材21の底板23に接合されている。また、支持板32の下面から下方に突出する全ての放熱フィン31の先端部が第2基体形成部材22の底板23に接合されている。
【0033】
次に、上記のように構成された冷却装置10の作用について説明する。
本実施形態における冷却装置10の放熱フィン31の幅方向断面形状は、冷却媒体の流動方向の寸法L2が冷却媒体の流動方向と直交する方向の寸法L1よりも大きい。これに対し、従来例の放熱フィンの幅方向断面形状は円形状となっており、冷却媒体の流動方向の寸法と冷却媒体の流動方向と直交する方向の寸法とが等しい。そのため、本実施形態の放熱フィン31の幅方向断面形状では、従来例の放熱フィンの幅方向断面形状と比較して、冷却媒体の流動方向と直交する方向の寸法の大きさを増大させることなく、冷却媒体の流動方向の寸法の大きさを増大させることが可能となる。
【0034】
この場合、本実施形態の放熱フィン31は、従来例の放熱フィンと比較して、冷却媒体の流動方向の寸法の増大に伴って冷却媒体と接触する表面積が大きくなる。その結果、放熱フィン31から冷却媒体への放熱効率が高くなることにより、半導体素子28から基体20に伝達された熱が放熱フィン31から冷却媒体に効率よく放熱される。したがって、冷却装置10による半導体素子28の冷却効率の向上が図られる。
【0035】
また、この場合、本実施形態の放熱フィン31は、従来例の放熱フィンと比較して、冷却媒体の流動方向と直交する方向の寸法の大きさが変化しない。その結果、冷却媒体の流動が放熱フィン31によって遮られる程度は大きく変化しない。したがって、本実施形態の放熱フィン31は、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失が放熱フィン31によって増大されることが抑制される。
【0036】
特に、本実施形態の放熱フィン31は、冷却媒体の流動方向の上流側に向いている角部Cが鋭角をなすように鋭く尖った形状となっている。そのため、図3に矢印で示すように、冷却媒体の流動方向は、放熱フィン31の角部Cから基体20の内部領域Sの幅方向両側に拡がるように円滑に誘導される。したがって、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失が放熱フィン31によって増大されることが更に大きく抑制される。
【0037】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)放熱フィン31の幅方向断面形状は、基体20の内部領域Sにおける冷却媒体の流動方向の寸法L2が基体20の内部領域Sにおける冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法L1よりも大きい。したがって、放熱フィン31の幅方向断面形状が円形状の場合と比較して、冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法を変化させることなく、冷却媒体の流動方向の寸法を大きくすることが可能となる。この場合、放熱フィン31は、冷却媒体の流動方向での寸法が大きくなることにより、半導体素子28から伝達される熱を冷却媒体に効率良く放熱する。その結果、半導体素子28に対する冷却効率の向上を図ることができる。また、この場合、放熱フィン31は、冷却媒体の流動方向と直交する幅方向の寸法が変化しないため、基体20の内部領域Sにおける放熱フィン31による流路抵抗が増大することが抑制される。したがって、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失の増大を抑制しつつ、半導体素子28に対する冷却効率の向上を図ることができる。
【0038】
(2)放熱フィン31の幅方向断面形状の外縁を構成する4つの辺部A1,A2,A3,A4のうち、2つの辺部A1,A2が交差する部位が冷却媒体の流動方向の上流側に向いている。したがって、基体20の内部領域Sにおける放熱フィン31による流路抵抗が更に大きく低減されることにより、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。
【0039】
(3)放熱フィン31は、2つの辺部A1,A2が交差する部位が角部Cになっている。したがって、放熱フィン31の幅方向断面形状の外縁は、冷却媒体の流動方向における上流側に向いている部位が冷却媒体の流動方向の上流側に向けて尖った形状となる。そのため、基体20の内部領域Sにおける放熱フィン31による流路抵抗が更に大きく低減されることにより、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。
【0040】
(4)放熱フィン31の幅方向断面形状は菱形形状をなしている。したがって、放熱フィン31は、冷却媒体の流動方向に長く延びる形状となるため、冷却媒体の流動方向における放熱フィン31の剛性を十分に確保することができる。また、放熱フィン31の幅方向断面形状の外縁は、2つの辺部A1,A2が交差する部位から冷却媒体の流動方向に向けて基体20の内部領域Sの幅方向両側に拡がるように延びている。そのため、基体20の内部領域Sにおける放熱フィン31による流路抵抗が低減されることにより、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0041】
(5)基体20の内部領域Sには複数の放熱フィン31が千鳥状に配置されている。したがって、冷却媒体は、基体20の内部領域Sに配置された放熱フィン31の間を円滑に流動することができるため、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。
【0042】
(6)放熱フィン31は、互いに冷却媒体の流動方向と直交する幅方向に適切な間隔Pを介して設けられるため、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失の増大を抑制しつつ、半導体素子28に対する冷却効率の向上を図ることができる。
【0043】
(7)放熱フィン31aにおける下流側の一部と放熱フィン31bにおける上流側の一部とが冷却媒体の流動方向と直交する方向において互いに重なるように配置されている。そのため、両放熱フィン31a,31bの間に形成される冷却媒体の流路の流路断面積の大きさが変化することが抑制されるため、冷却媒体が基体20の内部領域Sを通過する際の圧力損失の増大を更に抑制することができる。
【0044】
(8)基体20には半導体素子28が絶縁基板27を介して接合されている。そのため、基体20は、絶縁基板27との線熱膨張係数の違いに起因して、絶縁基板27の長手方向となる冷却媒体の流動方向に特に大きく反りを生じ得る。この点、本実施形態では、基体20における冷却媒体の流動方向での剛性が放熱フィン31によって特に大きく増強されている。そのため、こうした基体20の反りを放熱フィン31によって好適に抑制することができる。
【0045】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
図4(a)に示すように、放熱フィン31の幅方向断面形状は、菱形形状の角部Cが丸みを帯びた構成としてもよい。
【0046】
図4(b)に示すように、放熱フィン31の幅方向断面形状は、冷却媒体の流動方向の上流側(図4(b)では左側)に位置する半分の部分を第1部位31Aとして半菱形状に構成すると共に、冷却媒体の流動方向の下流側(図4(b)では右側)に位置する半分の部分を第2部位31Bとして半楕円状に構成してもよい。すなわち、放熱フィン31の幅方向断面形状は、冷却媒体の流動方向に沿う方向において非対称に構成してもよい。
【0047】
図4(c)に示すように、放熱フィン31の幅方向断面形状は、六角形状に構成してもよい。すなわち、放熱フィン31の幅方向断面形状は、冷却媒体の流動方向における寸法が冷却媒体の流動方向と直交する方向の寸法よりも大きければ、任意の数の角部を有する多角形状に構成してもよい。この場合、多角形状の角部は、尖った形状としてもよいし、丸みを帯びた形状としてもよい。
【0048】
図4(d)に示すように、放熱フィン31の幅方向断面形状は、冷却媒体の流動方向に細長く延びる楕円状に構成してもよい。すなわち、放熱フィン31の幅方向断面形状の外縁が交差することなく滑らかに連なる構成としてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、冷却媒体の流動方向と直交する方向における放熱フィン31aと放熱フィン31bとの間隔Pは、冷却媒体の流動方向における放熱フィン31の幅方向断面形状の寸法L2と等しくなるように設定してもよい。
【0050】
○ 実施形態において、放熱フィン31は、突出方向における太さが一定ではない構成としてもよい。例えば、放熱フィン31は、突出方向の先端側に向けて太さが次第に細くなるように多角錐状や楕円錐状に構成してもよい。
【0051】
○ 実施形態において、放熱フィン31を平面視において格子状に配置してもよい。
○ 実施形態において、支持板32に支持される放熱フィン31の数を増やしてもよいし、減らしてもよい。
【0052】
○ 実施形態において、支持板32の上面に支持される放熱フィン31の配置態様と、支持板32の下面に支持される放熱フィン31の配置態様とを互いに異ならせてもよい。
○ 実施形態において、必ずしも、支持板32に支持される全ての放熱フィン31を同一の形状にする必要はない。すなわち、支持板32に支持される放熱フィン31のうち、一部の放熱フィン31の幅方向断面形状を冷却媒体の流動方向に長く延びる菱形形状としつつ、他の放熱フィン31の幅方向断面形状を冷却媒体の流動方向に長く延びる他の形状としてもよい。
【0053】
○ 実施形態において、内部領域Sを支持板32によって上下に仕切ることなく、上下両面のうち片側の面のみに放熱フィン31が設けられた支持板を内部領域Sに収容してもよい。
【符号の説明】
【0054】
A1,A2…辺部、C…角部、L1,L2…寸法、P…間隔、10…冷却装置、20…基体、27…絶縁基板、28…発熱体としての半導体素子、30…半導体装置、31,31a,31b…放熱フィン、31A…第1部位、31B…第2部位。
図1
図2
図3
図4