特許第6262430号(P6262430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262430
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   H01L21/304 642A
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 648G
【請求項の数】39
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-286859(P2012-286859)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130872(P2014-130872A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】宮城 雅宏
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−321971(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/082780(WO,A1)
【文献】 特開昭61−156740(JP,A)
【文献】 特開2011−103438(JP,A)
【文献】 特開2009−200365(JP,A)
【文献】 特開平2−83926(JP,A)
【文献】 特開2013−77626(JP,A)
【文献】 特開2013−77625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板の一方の主面である第1主面上に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板の前記第1主面および他方の主面である第2主面を、液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液に接触させる除電液接液部と、
前記除電液の温度を調整する温度調整部と、
前記処理液供給部、前記除電液接液部および前記温度調整部を制御することにより、前記除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が前記処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内としつつ、前記基板の前記第1主面および前記第2主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させた後、前記処理液を前記基板の前記第1主面上に供給して所定の処理を行う制御部と、
を備え、
前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の温度がより低くなるように前記温度調整部が前記制御部により制御されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記除電液の温度を測定する除電液測定部をさらに備え、
前記制御部が、前記除電液測定部の測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記温度調整部を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記除電液の温度と前記目標温度との差が閾値温度差以下の場合、前記温度調整部による前記除電液の温度調整が停止されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板の一方の主面である第1主面上に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板の前記第1主面および他方の主面である第2主面を、液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液に接触させる除電液接液部と、
前記除電液の温度を調整する温度調整部と、
前記処理液供給部、前記除電液接液部および前記温度調整部を制御することにより、前記除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が前記処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内としつつ、前記基板の前記第1主面および前記第2主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させた後、前記処理液を前記基板の前記第1主面上に供給して所定の処理を行う制御部と、
を備え、
前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の比抵抗がより高くなるように前記温度調整部が前記制御部により制御されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記除電液の比抵抗を測定する除電液測定部をさらに備え、
前記制御部が、前記除電液測定部の測定結果に基づいて、前記除電液の比抵抗と所定の目標比抵抗との差が小さくなるように前記温度調整部を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記除電液の比抵抗と前記目標比抵抗との差が閾値比抵抗差以下の場合、前記温度調整部による前記除電液の温度調整が停止されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記第1主面に接触する前記除電液と前記第2主面に接触する前記除電液とが前記基板上において連続していることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理装置であって、
前記除電液接液部が、前記除電液を貯溜する除電液貯溜部を備え、
前記基板が、前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に浸漬されることにより、前記第1主面および前記第2主面が前記除電液に接触することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に、前記基板を含むとともにそれぞれの主面の法線方向が水平方向を向くように配列された複数の基板が浸漬されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記除電液接液部が、
前記第1主面を上側に向けた状態で前記基板保持部に保持された前記基板の前記第1主面上に前記除電液を供給して前記第1主面全体を前記除電液にてパドルする第1除電液接液部と、
前記基板の前記第2主面に対向し、前記除電液を前記第2主面に向けて吐出して前記第2主面全体を前記除電液と接触させる第2除電液接液部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記基板の前記第1主面上の液体を除去する液体除去部をさらに備え、
前記制御部が前記液体除去部を制御することにより、前記基板の前記除電液との接触と、前記処理液による前記所定の処理との間において、前記除電液が前記第1主面上から除去されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記除電液が純水であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記処理液が硫酸を含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項14】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、
b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、
c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程と、
を備え、
前記a)工程において、前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の温度がより低くなるように前記除電液の温度が調整されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程が、
a1)前記除電液の温度を測定する工程と、
a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、
a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項16】
請求項14に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程が、
a1)前記除電液の温度を測定する工程と、
a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が閾値温度差以下の場合、前記除電液の温度調整を行わず、前記除電液の温度と前記目標温度との前記差が前記閾値温度差よりも大きい場合、前記除電液の温度と前記目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程よりも前に、
d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、
d2)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、
d3)前記d2)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記処理液の前記比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を取得する工程と、
d4)前記d3)工程にて取得された温度よりも低い仮目標温度を設定する工程と、
d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、
d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、
d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、
d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、
d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項18】
請求項15または16に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程よりも前に、
d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、
d2)前記処理液の前記比抵抗よりも高い仮目標比抵抗を設定する工程と、
d3)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、
d4)前記d3)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記d2)工程にて設定された前記仮目標比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を仮目標温度として取得する工程と、
d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、
d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、
d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、
d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、
d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の基板処理方法であって、
前記d8)工程と前記d9)工程との間に、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記d6)工程の処理時間を変更して前記d6)工程ないし前記d8)工程を行う工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項20】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、
b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、
c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程と、
を備え、
前記a)工程において、前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の比抵抗がより大きくなるように前記除電液の温度が調整されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項21】
請求項20に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程が、
a1)前記除電液の比抵抗を測定する工程と、
a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の比抵抗と所定の目標比抵抗との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、
a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項22】
請求項20に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程が、
a1)前記除電液の比抵抗を測定する工程と、
a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の比抵抗と所定の目標比抵抗との差が閾値比抵抗差以下の場合、前記除電液の温度調整を行わず、前記除電液の比抵抗と前記目標比抵抗との前記差が前記閾値比抵抗差よりも大きい場合、前記除電液の比抵抗と前記目標比抵抗との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項23】
請求項14ないし22のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記基板の前記一方の主面に接触する前記除電液と前記基板の他方の主面に接触する前記除電液とが前記基板上において連続していることを特徴とする基板処理方法。
【請求項24】
請求項23に記載の基板処理方法であって、
前記b)工程において、前記基板が、除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に浸漬されることにより、前記一方の主面および前記他方の主面が前記除電液に接触することを特徴とする基板処理方法。
【請求項25】
請求項24に記載の基板処理方法であって、
前記b)工程において、前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に、前記基板を含むとともにそれぞれの主面の法線方向が水平方向を向くように配列された複数の基板が浸漬されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項26】
請求項14ないし22のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記b)工程が、
b1)前記一方の主面を上側に向けた状態で保持された前記基板の前記一方の主面上に前記除電液を供給して前記一方の主面全体を前記除電液にてパドルする工程と、
b2)前記基板の他方の主面に向けて前記除電液を吐出して前記他方の主面全体を前記除電液と接触させる工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項27】
請求項14ないし26のいずれかに記載の基板処理方法であって、
e)前記b)工程と前記c)工程との間において、前記基板の前記第1主面上から前記除電液を除去する工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項28】
請求項14ないし27のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記除電液が純水であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項29】
請求項14ないし28のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記処理液が硫酸を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項30】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、
b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、
c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程と、
を備え、
前記a)工程が、
a1)前記除電液の温度を測定する工程と、
a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、
a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程と、
を備え、
前記a)工程よりも前に、
d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、
d2)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、
d3)前記d2)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記処理液の前記比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を取得する工程と、
d4)前記d3)工程にて取得された温度よりも低い仮目標温度を設定する工程と、
d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、
d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、
d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、
d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、
d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項31】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、
b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、
c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程と、
を備え、
前記a)工程が、
a1)前記除電液の温度を測定する工程と、
a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、
a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程と、
を備え、
前記a)工程よりも前に、
d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、
d2)前記処理液の前記比抵抗よりも高い仮目標比抵抗を設定する工程と、
d3)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、
d4)前記d3)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記d2)工程にて設定された前記仮目標比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を仮目標温度として取得する工程と、
d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、
d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、
d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、
d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、
d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項32】
請求項30または31に記載の基板処理方法であって、
前記基板の前記一方の主面に接触する前記除電液と前記基板の他方の主面に接触する前記除電液とが前記基板上において連続していることを特徴とする基板処理方法。
【請求項33】
請求項32に記載の基板処理方法であって、
前記b)工程において、前記基板が、除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に浸漬されることにより、前記一方の主面および前記他方の主面が前記除電液に接触することを特徴とする基板処理方法。
【請求項34】
請求項33に記載の基板処理方法であって、
前記b)工程において、前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に、前記基板を含むとともにそれぞれの主面の法線方向が水平方向を向くように配列された複数の基板が浸漬されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項35】
請求項30または31に記載の基板処理方法であって、
前記b)工程が、
b1)前記一方の主面を上側に向けた状態で保持された前記基板の前記一方の主面上に前記除電液を供給して前記一方の主面全体を前記除電液にてパドルする工程と、
b2)前記基板の他方の主面に向けて前記除電液を吐出して前記他方の主面全体を前記除電液と接触させる工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項36】
請求項30ないし35のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記d8)工程と前記d9)工程との間に、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記d6)工程の処理時間を変更して前記d6)工程ないし前記d8)工程を行う工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項37】
請求項30ないし36のいずれかに記載の基板処理方法であって、
e)前記b)工程と前記c)工程との間において、前記基板の前記第1主面上から前記除電液を除去する工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項38】
請求項30ないし37のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記除電液が純水であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項39】
請求項30ないし38のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記処理液が硫酸を含むことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板処理装置を用いて酸化膜等の絶縁膜を有する基板に対して様々な処理が施される。例えば、表面上にレジストのパターンが形成された基板に薬液を供給することにより、基板の表面に対してエッチング等の処理が行われる。また、エッチング等の終了後、基板上のレジストを除去する処理も行われる。
【0003】
特許文献1の基板処理装置では、SPM(sulfuric acid / hydrogen peroxide mixture)液等の薬液による処理を行う前に、薬液よりも電気伝導率が低い液体を基板上の処理領域に供給し、当該液体が処理領域上に存在している状態で、薬液が処理領域に吐出される。これにより、基板と薬液との接触により生じる基板の局所的なダメージの防止が図られる。基板の局所的なダメージとは、処理領域のフィールド酸化膜やゲート酸化膜の局所的な破壊であり、当該破壊は、薬液と薬液用ノズルとの間の摩擦帯電現象により薬液が帯電した状態で基板の処理領域に接触することにより生じる。
【0004】
特許文献2では、ウエハ上の処理領域に濃硫酸等の薬液を供給する前に、薬液よりも比抵抗値が低いCO水等の液体を処理領域に供給し、当該液体が処理領域上に存在している状態で薬液を処理領域に吐出する技術が開示されている。これにより、処理領域への薬液の接液の際に生じる静電摩擦現象による帯電の防止が図られる。
【0005】
特許文献3では、電子デバイスの洗浄装置において、基板の表面または薬液ノズルに、イオン化された蒸気を供給することにより、基板の表面または薬液ノズルに存在する静電気を除電する技術が開示されている。特許文献4の基板液処理装置では、基板の回路形成面に対する液処理工程よりも前に、基板の回路形成面とは反対側の面に向けて除電処理液を吐出する除電処理工程が行われる。
【0006】
一方、特許文献5では、基板の表面に除去液を供給することにより、基板の表面に付着した有機物を除去する基板処理装置が開示されている。当該基板処理装置では、基板の温度と、基板上に供給される除去液の温度との差が所定の範囲内となるように、基板の温度を調整する温調手段が設けられる。温調手段の一例として、保持回転手段により保持された基板の裏面に、温度が調整された流体を供給する流体供給手段が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−200365号公報
【特許文献2】特開2007−134673号公報
【特許文献3】特開2007−214347号公報
【特許文献4】特開2011−103438号公報
【特許文献5】特開2004−158588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、基板処理装置にて処理される基板には、基板処理装置に搬入される前に、ドライエッチングやプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等のドライ工程が行われている。このようなドライ工程では、デバイス内に電荷が発生して帯電するため、基板は、帯電した状態で基板処理装置に搬入される(いわゆる、持ち込み帯電)。そして、基板処理装置において、SPM液のような比抵抗が小さい薬液が基板上に供給されると、デバイス内の電荷が、デバイスから薬液へと急激に移動し(すなわち、薬液中へと放電し)、当該移動に伴う発熱によりデバイスにダメージが生じるおそれがある。そこで、薬液を基板に供給する前に、イオナイザにより基板を除電することが考えられるが、基板の帯電量が大きい場合、効率的に除電することは困難である。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、処理液による処理の際に電荷の移動による基板の損傷を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板の一方の主面である第1主面上に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板の前記第1主面および他方の主面である第2主面を、液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液に接触させる除電液接液部と、前記除電液の温度を調整する温度調整部と、前記処理液供給部、前記除電液接液部および前記温度調整部を制御することにより、前記除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が前記処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内としつつ、前記基板の前記第1主面および前記第2主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させた後、前記処理液を前記基板の前記第1主面上に供給して所定の処理を行う制御部とを備え、前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の温度がより低くなるように前記温度調整部が前記制御部により制御される
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記除電液の温度を測定する除電液測定部をさらに備え、前記制御部が、前記除電液測定部の測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記温度調整部を制御する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の基板処理装置であって、前記除電液の温度と前記目標温度との差が閾値温度差以下の場合、前記温度調整部による前記除電液の温度調整が停止される。
請求項4に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板の一方の主面である第1主面上に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板の前記第1主面および他方の主面である第2主面を、液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液に接触させる除電液接液部と、前記除電液の温度を調整する温度調整部と、前記処理液供給部、前記除電液接液部および前記温度調整部を制御することにより、前記除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が前記処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内としつつ、前記基板の前記第1主面および前記第2主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させた後、前記処理液を前記基板の前記第1主面上に供給して所定の処理を行う制御部とを備え、前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の比抵抗がより高くなるように前記温度調整部が前記制御部により制御される。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の基板処理装置であって、前記除電液の比抵抗を測定する除電液測定部をさらに備え、前記制御部が、前記除電液測定部の測定結果に基づいて、前記除電液の比抵抗と所定の目標比抵抗との差が小さくなるように前記温度調整部を制御する。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の基板処理装置であって、前記除電液の比抵抗と前記目標比抵抗との差が閾値比抵抗差以下の場合、前記温度調整部による前記除電液の温度調整が停止される。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記第1主面に接触する前記除電液と前記第2主面に接触する前記除電液とが前記基板上において連続している。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の基板処理装置であって、前記除電液接液部が、前記除電液を貯溜する除電液貯溜部を備え、前記基板が、前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に浸漬されることにより、前記第1主面および前記第2主面が前記除電液に接触する。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の基板処理装置であって、前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に、前記基板を含むとともにそれぞれの主面の法線方向が水平方向を向くように配列された複数の基板が浸漬される。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記除電液接液部が、前記第1主面を上側に向けた状態で前記基板保持部に保持された前記基板の前記第1主面上に前記除電液を供給して前記第1主面全体を前記除電液にてパドルする第1除電液接液部と、前記基板の前記第2主面に対向し、前記除電液を前記第2主面に向けて吐出して前記第2主面全体を前記除電液と接触させる第2除電液接液部とを備える。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記基板の前記第1主面上の液体を除去する液体除去部をさらに備え、前記制御部が前記液体除去部を制御することにより、前記基板の前記除電液との接触と、前記処理液による前記所定の処理との間において、前記除電液が前記第1主面上から除去される。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記除電液が純水である。
【0023】
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記処理液が硫酸を含む。
【0024】
請求項14に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程とを備え、前記a)工程において、前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の温度がより低くなるように前記除電液の温度が調整される。
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の基板処理方法であって、前記a)工程が、a1)前記除電液の温度を測定する工程と、a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程とを備える。
請求項16に記載の発明は、請求項14に記載の基板処理方法であって、前記a)工程が、a1)前記除電液の温度を測定する工程と、a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が閾値温度差以下の場合、前記除電液の温度調整を行わず、前記除電液の温度と前記目標温度との前記差が前記閾値温度差よりも大きい場合、前記除電液の温度と前記目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程とを備える。
請求項17に記載の発明は、請求項15または16に記載の基板処理方法であって、前記a)工程よりも前に、d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、d2)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、d3)前記d2)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記処理液の前記比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を取得する工程と、d4)前記d3)工程にて取得された温度よりも低い仮目標温度を設定する工程と、d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程とをさらに備える。
請求項18に記載の発明は、請求項15または16に記載の基板処理方法であって、前記a)工程よりも前に、d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、d2)前記処理液の前記比抵抗よりも高い仮目標比抵抗を設定する工程と、d3)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、d4)前記d3)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記d2)工程にて設定された前記仮目標比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を仮目標温度として取得する工程と、d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程とをさらに備える。
請求項19に記載の発明は、請求項17または18に記載の基板処理方法であって、前記d8)工程と前記d9)工程との間に、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記d6)工程の処理時間を変更して前記d6)工程ないし前記d8)工程を行う工程をさらに備える。
請求項20に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程とを備え、前記a)工程において、前記基板上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、前記除電液の比抵抗がより大きくなるように前記除電液の温度が調整される。
請求項21に記載の発明は、請求項20に記載の基板処理方法であって、前記a)工程が、a1)前記除電液の比抵抗を測定する工程と、a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の比抵抗と所定の目標比抵抗との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程とを備える。
請求項22に記載の発明は、請求項20に記載の基板処理方法であって、前記a)工程が、a1)前記除電液の比抵抗を測定する工程と、a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の比抵抗と所定の目標比抵抗との差が閾値比抵抗差以下の場合、前記除電液の温度調整を行わず、前記除電液の比抵抗と前記目標比抵抗との前記差が前記閾値比抵抗差よりも大きい場合、前記除電液の比抵抗と前記目標比抵抗との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程とを備える。
【0025】
請求項23に記載の発明は、請求項14ないし22のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記基板の前記一方の主面に接触する前記除電液と前記基板の他方の主面に接触する前記除電液とが前記基板上において連続している。
【0026】
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載の基板処理方法であって、前記b)工程において、前記基板が、除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に浸漬されることにより、前記一方の主面および前記他方の主面が前記除電液に接触する。
【0027】
請求項25に記載の発明は、請求項24に記載の基板処理方法であって、前記b)工程において、前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に、前記基板を含むとともにそれぞれの主面の法線方向が水平方向を向くように配列された複数の基板が浸漬される。
【0028】
請求項26に記載の発明は、請求項14ないし22のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記b)工程が、b1)前記一方の主面を上側に向けた状態で保持された前記基板の前記一方の主面上に前記除電液を供給して前記一方の主面全体を前記除電液にてパドルする工程と、b2)前記基板の他方の主面に向けて前記除電液を吐出して前記他方の主面全体を前記除電液と接触させる工程とを備える。
【0038】
請求項27に記載の発明は、請求項14ないし26のいずれかに記載の基板処理方法であって、e)前記b)工程と前記c)工程との間において、前記基板の前記第1主面上から前記除電液を除去する工程をさらに備える。
【0039】
請求項28に記載の発明は、請求項14ないし27のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記除電液が純水である。
【0040】
請求項29に記載の発明は、請求項14ないし28のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記処理液が硫酸を含む。
請求項30に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程とを備え、前記a)工程が、a1)前記除電液の温度を測定する工程と、a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程とを備え、前記a)工程よりも前に、d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、d2)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、d3)前記d2)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記処理液の前記比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を取得する工程と、d4)前記d3)工程にて取得された温度よりも低い仮目標温度を設定する工程と、d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程とを備える。
請求項31に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する除電液の温度を、前記除電液の比抵抗が処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする工程と、b)前記a)工程よりも後に、基板の両側の主面を全面に亘って前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記基板上の電荷を減少させる工程と、c)前記b)工程よりも後に、前記処理液を前記基板の一方の主面上に供給して所定の処理を行う工程とを備え、前記a)工程が、a1)前記除電液の温度を測定する工程と、a2)前記a1)工程における測定結果に基づいて、前記除電液の温度と所定の目標温度との差が小さくなるように前記除電液の温度を調整する工程と、a3)前記a1)工程と前記a2)工程とを繰り返す工程とを備え、前記a)工程よりも前に、d1)前記処理液の比抵抗を得る工程と、d2)前記処理液の前記比抵抗よりも高い仮目標比抵抗を設定する工程と、d3)前記除電液の温度と比抵抗との関係を得る工程と、d4)前記d3)工程にて得られた前記関係に基づいて、前記除電液の比抵抗が前記d2)工程にて設定された前記仮目標比抵抗に等しくなる前記除電液の温度を仮目標温度として取得する工程と、d5)前記仮目標温度の除電液を準備する工程と、d6)試験用基板の両側の主面を全面に亘って前記仮目標温度の前記除電液に接触させて接液状態を維持することにより前記試験用基板上の電荷を減少させる工程と、d7)前記処理液を前記試験用基板の一方の主面上に供給して前記所定の処理を行う工程と、d8)前記d7)工程の終了後、前記試験用基板の前記一方の主面の状態を評価する工程と、d9)前記一方の主面の状態が、前記一方の主面上のデバイスの損傷が生じていない良好な状態であれば、前記仮目標温度を前記目標温度として設定し、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記一方の主面の状態が良好になるまで、前記仮目標温度を下げて前記d5)工程ないし前記d8)工程を繰り返し、状態が良好になった際の前記仮目標温度を前記目標温度として決定する工程とをさらに備える。
請求項32に記載の発明は、請求項30または31に記載の基板処理方法であって、前記基板の前記一方の主面に接触する前記除電液と前記基板の他方の主面に接触する前記除電液とが前記基板上において連続している。
請求項33に記載の発明は、請求項32に記載の基板処理方法であって、前記b)工程において、前記基板が、除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に浸漬されることにより、前記一方の主面および前記他方の主面が前記除電液に接触する。
請求項34に記載の発明は、請求項33に記載の基板処理方法であって、前記b)工程において、前記除電液貯溜部に貯溜された前記除電液に、前記基板を含むとともにそれぞれの主面の法線方向が水平方向を向くように配列された複数の基板が浸漬される。
請求項35に記載の発明は、請求項30または31に記載の基板処理方法であって、前記b)工程が、b1)前記一方の主面を上側に向けた状態で保持された前記基板の前記一方の主面上に前記除電液を供給して前記一方の主面全体を前記除電液にてパドルする工程と、b2)前記基板の他方の主面に向けて前記除電液を吐出して前記他方の主面全体を前記除電液と接触させる工程とを備える。
請求項36に記載の発明は、請求項30ないし35のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記d8)工程と前記d9)工程との間に、前記一方の主面の状態が良好でなければ、前記d6)工程の処理時間を変更して前記d6)工程ないし前記d8)工程を行う工程をさらに備える。
請求項37に記載の発明は、請求項30ないし36のいずれかに記載の基板処理方法であって、e)前記b)工程と前記c)工程との間において、前記基板の前記第1主面上から前記除電液を除去する工程をさらに備える。
請求項38に記載の発明は、請求項30ないし37のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記除電液が純水である。
請求項39に記載の発明は、請求項30ないし38のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記処理液が硫酸を含む。
【発明の効果】
【0041】
本発明では、処理液による処理の際に電荷の移動による基板の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図2】枚葉処理装置の構成を示す図である。
図3】純水の温度と比抵抗との関係を示す図である。
図4】基板の処理の流れを示す図である。
図5】基板の処理の流れの一部を示す図である。
図6】基板の処理の流れの一部を示す図である。
図7】除電処理の前後における基板の表面電位を示す図である。
図8.A】目標温度の決定の流れを示す図である。
図8.B】目標温度の決定の流れを示す図である。
図9】目標温度の決定の流れの一部を示す図である。
図10】基板の処理の流れの一部を示す図である。
図11】基板の処理の流れの一部を示す図である。
図12】第2の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図13】除電処理の前後における基板の表面電位を示す図である。
図14】第3の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図15】基板の処理の流れの一部を示す図である。
図16】基板上の除電液の様子を示す図である。
図17】除電処理の前後における基板の表面電位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置10の構成を示す図である。基板処理装置10は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を処理する装置である。図1に示すように、基板処理装置10は、枚葉処理装置1と、除電液接液部7と、温度調整部61と、除電液測定部62と、制御部8とを備える。
【0044】
枚葉処理装置1は、基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。除電液接液部7は、基板9を除電液に接触させる。温度調整部61は、除電液の温度を調整する。除電液測定部62は、除電液の温度を測定する温度センサである。記憶部8aは目標温度や除電時間(詳細は後述)を保持しており基板処理を実行する際にこれらを制御部8に設定する。制御部8は、上記目標温度等に基づいて、枚葉処理装置1、除電液接液部7、温度調整部61および除電液測定部62等の構成を制御する。
【0045】
図2は、枚葉処理装置1の構成を示す図である。枚葉処理装置1では、基板9に処理液であるSPM(sulfuric acid / hydrogen peroxide mixture)液が供給されてSPM処理、すなわち、基板9上のレジスト膜の除去処理が行われる。枚葉処理装置1は、基板保持部2と、処理液供給部3と、カップ部41と、基板回転機構42とを備える。基板保持部2は、基板9の一方の主面91(以下、「上面91」という。)を上側に向けた状態で基板9を保持する。処理液供給部3は、基板9の上面91上にSPM液等の処理液を供給する。カップ部41は、基板9および基板保持部2の周囲を囲む。基板回転機構42は、基板9を基板保持部2と共に水平に回転する。基板9は、基板回転機構42により、基板9の中心を通るとともに基板9の上面91に垂直な回転軸を中心として回転する。枚葉処理装置1では、基板保持部2、カップ部41、基板回転機構42等が、図示省略のチャンバ内に収容される。
【0046】
処理液供給部3は、硫酸を供給する硫酸供給部31、過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給部32、硫酸供給部31および過酸化水素水供給部32に接続される混合液生成部33、基板9の上方に配置されて基板9に向けて液体を吐出する処理液ノズル34、並びに、処理液ノズル34を回転軸351を中心として水平に回動する処理液ノズル回動機構35を備える。処理液ノズル回動機構35は、回転軸351から水平方向に延びるとともに処理液ノズル34が取り付けられるアーム352を備える。
【0047】
硫酸供給部31は、硫酸を貯溜する硫酸貯溜部311、硫酸貯溜部311および混合液生成部33に接続される硫酸配管312、硫酸貯溜部311から硫酸配管312を介して混合液生成部33へと硫酸を供給する硫酸ポンプ313、硫酸配管312上に設けられる硫酸バルブ314、並びに、硫酸ポンプ313と硫酸バルブ314との間で硫酸配管312上に設けられて硫酸を加熱する硫酸加熱部315を備える。硫酸配管312は硫酸加熱部315と硫酸バルブ314との間で分岐して硫酸貯溜部311へと接続されており、硫酸バルブ314が閉じられている状態では、硫酸加熱部315により加熱された硫酸は、硫酸貯溜部311と硫酸加熱部315とを循環する。
【0048】
過酸化水素水供給部32は、過酸化水素水を貯溜する過酸化水素水貯溜部321、過酸化水素水貯溜部321および混合液生成部33に接続される過酸化水素水配管322、過酸化水素水貯溜部321から過酸化水素水配管322を介して混合液生成部33へと過酸化水素水を供給する過酸化水素水ポンプ323、並びに、過酸化水素水配管322上に設けられる過酸化水素水バルブ324を備える。なお、硫酸貯溜部311および過酸化水素水貯溜部321は、基板処理装置10の外部に設けられ、硫酸配管312および過酸化水素水配管322がそれぞれ接続されてもよい。
【0049】
混合液生成部33は、硫酸配管312および過酸化水素水配管322が接続されるミキシングバルブ331、ミキシングバルブ331および処理液ノズル34に接続される吐出用配管332、並びに、吐出用配管332上に設けられる攪拌流通管333を備える。混合液生成部33では、硫酸供給部31からの加熱された硫酸と、過酸化水素水供給部32からの常温(すなわち、室温と同程度の温度)の過酸化水素水とが、ミキシングバルブ331において混合されて混合液であるSPM液(硫酸過水)が生成される。
【0050】
SPM液は攪拌流通管333および吐出用配管332を通過して処理液ノズル34へと送られる。攪拌流通管333では、SPM液が攪拌されることにより、SPM液に含まれる硫酸と過酸化水素水との化学反応が促進される。処理液であるSPM液は、処理液ノズル34の先端の吐出口から基板9の上面91に向けて吐出される。本実施の形態では、硫酸加熱部315により約130℃〜150℃に加熱された硫酸が硫酸供給部31から混合液生成部33へと供給される。なお、硫酸供給部31から供給される硫酸の温度は適宜変更されてよい。
【0051】
図1に示すように、除電液接液部7は、除電液を貯溜する除電液貯溜部71、除電液貯溜部71に除電液を供給する除電液供給部72、複数の基板9を保持するカートリッジ73、および、基板9に対する減圧乾燥処理を行う基板乾燥部75を備える。図1では、カートリッジ73を保持して移動するカートリッジ移動部の図示を省略している。除電液接液部7では、除電液として純水(DIW:deionized water)が利用される。
【0052】
図3は、純水の温度と比抵抗との関係を示す図である。図3に示すように、純水の比抵抗は、液温が上昇するに従って漸次減少する。純水の比抵抗は、純水の凝固点以上沸点以下の全範囲において、上述のSPM液の比抵抗よりも大きい。除電液接液部7で使用される除電液は、液温が上昇するに従って比抵抗が漸次減少する液体であれば、純水には限定されない。また、除電液の比抵抗は、除電液の凝固点以上沸点以下の少なくとも所定の温度範囲において、枚葉処理装置1にて利用される処理液の比抵抗よりも大きければよい。除電液としては、例えば、純水に二酸化炭素(CO)を溶解させたCO水のようなイオンを含む液体が利用されてもよい。他の実施の形態においても同様である。
【0053】
図1に示すように、除電液供給部72は、除電液配管721と、流量計722と、除電液バルブ724とを備える。除電液配管721は、図示省略の除電液供給源に接続される。除電液配管721の先端から吐出される除電液は、除電液貯溜部71に供給されて貯溜される。除電液配管721上には、除電液供給源から除電液貯溜部71に向かって、流量計722、温度調整部61、除電液バルブ724および除電液測定部62が順に配置される。流量計722は、除電液配管721内を流れる除電液の流量を測定する。温度調整部61は、除電液配管721内を流れる除電液を必要に応じて加熱または冷却することにより、除電液配管721内の除電液の温度を調整する。除電液バルブ724は、除電液配管721内を流れる除電液の流量を調整する。除電液測定部62は、除電液配管721内を流れる除電液の温度を測定する。
【0054】
除電液測定部62の測定結果(すなわち、除電液の温度)は、制御部8へと送られる。制御部8は、記憶部8aに記憶されている除電液の目標温度、すなわち、後述の除電処理における除電液の好ましい温度、に基づいて枚葉処理装置1、除電液接液部7、温度調整部61および除電液測定部62等の構成を制御する。除電液の目標温度は、除電処理における除電液の好ましい比抵抗(すなわち、目標比抵抗)を実現するための温度である。除電液の目標比抵抗は、枚葉処理装置1にて利用される処理液の比抵抗よりも大きい。目標温度は、目標比抵抗や図3に示す除電液の温度と比抵抗との関係等に基づいて求められる。目標温度の具体的な求め方については後述する。
【0055】
目標比抵抗は、基板9の上面91上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど(すなわち、デバイスの配線の最小幅が小さいほど)、大きく設定される。したがって、目標温度は、基板9の上面91上に予め形成されているデバイスのサイズが小さいほど、低く設定される。本実施の形態では、目標比抵抗は、約1〜18MΩ・cmの範囲で設定され、目標温度は、約25〜100℃の範囲で設定される。
【0056】
基板処理装置10では、除電液測定部62の測定結果、および、上述の目標温度に基づいて、制御部8により温度調整部61がフィードバック制御される。温度調整部61では、除電液配管721内の除電液の温度と目標温度との差が小さくなるように、除電液の温度が調整される。これにより、除電液貯溜部71に供給される除電液の温度が、およそ目標温度に維持される。換言すれば、上記フィードバック制御により、除電液の温度が、実質的に目標温度に等しいといえる狭い温度範囲(もちろん、目標温度を含む。)内に維持される。
【0057】
基板処理装置10では、除電液の温度が目標温度から多少ずれていても許容されるケースがある。このようなケースでは、除電液測定部62により測定された除電液の温度と目標温度との差が閾値温度差以下である場合、制御部8により温度調整部61による除電液の温度調整が停止され、除電液の温度と目標温度との差が閾値温度差よりも大きい場合のみ、温度調整部61による除電液の温度調整が行われる。目標温度よりも閾値温度差だけ低い温度を「下限温度」と呼び、目標温度よりも閾値温度差だけ高い温度を「上限温度」と呼ぶと、上記温度調整により、除電液貯溜部71に供給される除電液の温度は、下限温度以上かつ上限温度以下の範囲内におよそ維持される。上限温度における除電液の比抵抗は、枚葉処理装置1にて利用される処理液の比抵抗よりも大きい。
【0058】
このように、除電液供給部72では、制御部8が温度調整部61を制御することにより、除電液の温度を、除電液の比抵抗が上記処理液の比抵抗よりも大きくなる範囲内とする。
【0059】
除電液接液部7では、除電液貯溜部71の上方に配置されたカートリッジ73により、複数の基板9が、主面が平行となるように配列された状態で保持される。そして、カートリッジ移動部によりカートリッジ73が下降し、複数の基板9が、それぞれの主面の法線方向が水平方向を向くように配列された状態で、除電液貯溜部71に貯溜された除電液に浸漬される。
【0060】
基板乾燥部75では、除電液に浸漬された後の基板9に対して減圧乾燥処理が行われる。基板乾燥部75では、カートリッジ73に保持された状態の複数の基板9に対して減圧乾燥処理が行われてもよく、カートリッジ73から取り外された基板9が1枚ずつ乾燥されてもよい。基板乾燥部75では、減圧乾燥処理以外の様々な方法により乾燥処理が行われてもよい。減圧乾燥処理が行われた基板9は、枚葉処理装置1に搬入される。なお、図1では、基板乾燥部75と枚葉処理装置1との間において基板9を搬送する搬送機構等の図示を省略している。
【0061】
次に、基板処理装置10における基板9の処理の流れについて図4を参照しつつ説明する。まず、使用する基板9に対応する目標温度と除電時間が記憶部8aから読み出されて制御部8に設定される(ステップS11)。本実施形態では目標温度と除電時間が記憶部8aに予め記憶されており、基板処理を開始する時点で記憶部8aから読み出されて制御部8に設定される。しかし、目標温度と除電時間を記憶部8aに記憶させず、基板処理を開始する都度、作業者が図示しない入力手段を使って制御部8に設定するようにしてもよい。
【0062】
また、目標温度を記憶部8aに記憶させる代わりに、基板9上のデバイスのサイズと除電液の目標温度との関係を示すテーブルを記憶部8aに予め記憶させておいてもよい。この場合には、基板9の基板処理を開始する前に記憶部8aに処理対象の基板9上のデバイスのサイズが入力され、次に当該デバイスのサイズと前記テーブルとに基づいて基板9に対応する目標温度が決定され、最後に当該目標温度が制御部8に設定される。目標温度と除電時間の決定および制御部8への設定(あるいは、後述する目標比抵抗の決定および設定)については、後述する他の基板処理装置においても同様である。
【0063】
続いて、複数の基板9が保持されたカートリッジ73が、基板処理装置10に搬入される。各基板9は、基板処理装置10に搬入される前に、ドライエッチングやプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等のドライ工程を経ており、基板9は帯電した状態となっている。
【0064】
除電液接液部7では、除電液配管721の先端が除電液貯溜部71から外れた位置に向けられた状態で、制御部8により除電液バルブ724が開かれ、除電液配管721から除電液(純水)の吐出が開始される。そして、除電液測定部62の測定結果である除電液の温度、および、上述の目標温度に基づいて、温度調整部61に対するフィードバック制御が行われる。これにより、除電液の温度が、除電液の比抵抗が枚葉処理装置1にて利用される処理液(SPM液)の比抵抗よりも大きくなる温度範囲内に調整される(ステップS12)。
【0065】
図5は、除電液の温度調整(ステップS12)の流れを示す図である。まず、除電液測定部62により、除電液配管721内を流れる除電液の温度が測定される(ステップS121)。続いて、ステップS121における測定結果に基づいて、除電液配管721内の除電液の温度と目標温度との差が小さくなるように、温度調整部61により除電液の温度が調整される(ステップS122)。そして、ステップS121とステップS122とが繰り返されることにより、除電液の温度が、およそ目標温度に調整されて維持される(ステップS123)。
【0066】
上述のように、除電液の温度が目標温度から多少ずれていても許容されるケースでは、図5のステップS121〜S123に代えて、図6に示すように温度調整が行われる。まず、除電液測定部62により、除電液配管721内を流れる除電液の温度が測定される(ステップS124)。続いて、ステップS124における測定結果に基づいて、除電液配管721内の除電液の温度と目標温度との差が求められ、上述の閾値温度差と比較される(ステップS125)。
【0067】
除電液の温度と目標温度との差が閾値温度差以下の場合、温度調整部61による除電液の温度調整は行われない。除電液の温度と目標温度との差が閾値温度差よりも大きい場合、除電液の温度と目標温度との差が小さくなるように、温度調整部61により除電液の温度が調整される(ステップS126)。そして、ステップS124〜S126が繰り返されることにより、除電液の温度が、目標温度よりも閾値温度差だけ低い下限温度以上、かつ、目標温度よりも閾値温度差だけ高い上限温度以下の温度範囲内におよそ調整されて維持される。
【0068】
除電液の温度調整が終了すると、除電液配管721の先端が除電液貯溜部71に向けられ、除電液が、除電液供給部72から除電液貯溜部71に所定の量だけ供給されて貯溜される(ステップS13)。除電液接液部7では、除電液貯溜部71内の除電液の温度を測定する補助測定部と、除電液貯溜部71内の除電液の温度を調整する補助調整部とがさらに設けられてもよい。この場合、補助測定部の測定結果に基づいて補助調整部が制御され、除電液貯溜部71内の除電液が所望の温度(例えば、目標温度)となるように、必要に応じて当該除電液が補助調整部により加熱または冷却される。
【0069】
その後、カートリッジ移動部が制御部8により制御され、除電液貯溜部71の上方に配置されたカートリッジ73が、除電液貯溜部71に向けて下降する。そして、カートリッジ73に保持された複数の基板9が、除電液貯溜部71内の除電液に浸漬される。各基板9は、カートリッジ73に保持された状態におけるエッジの下部から徐々に除電液に浸漬され、基板9の全体が浸漬されることにより、基板9の両側の主面が全面に亘って除電液に接触する。また、基板9の両側の主面に接触する除電液は、基板9のエッジ上において連続する。
【0070】
基板9において、デバイスが設けられている主面を「第1主面」と呼び、他方の主面を「第2主面」と呼ぶと、基板9が除電液に浸漬されることにより、第1主面および第2主面が全面に亘って除電液に接触する。第1主面に接触する除電液は、第2主面に接触する除電液と、基板9のエッジ上において連続する。このように、基板9が除電液と接触することにより、基板9上の電荷が、除電液へと比較的緩やかに移動する。基板処理装置10では、基板9の除電液に対する接液状態が所定の時間だけ維持されることにより、基板9上のデバイスにダメージを与えることなく、基板9上の電荷が減少する。換言すれば、基板9の除電処理が行われる(ステップS14)。
【0071】
図7は、基板処理装置10による除電処理の前後における基板9の上面91の表面電位を示す図である。図7では、基板9の中心部における表面電位の絶対値を示す(図13および図17においても同様)。上述の除電処理により、基板9上の電荷が減少し、基板9の電位が全体的に低減される。基板処理装置10では、基板9上のデバイスのサイズが比較的小さい場合、除電液の温度は、例えば約25℃に維持され、除電液の比抵抗は約18MΩ・cmとなる。また、基板9上のデバイスのサイズが比較的大きい(すなわち、電荷の移動によるダメージに対する耐性が比較的高い)場合、除電液の温度は、例えば100℃よりも少し低い温度に維持され、除電液の比抵抗は約1MΩ・cmとなる。このように、除電液の温度を高くして比抵抗を比較的小さくすることにより、基板9から除電液への電荷の移動速度が増大する。その結果、基板9の除電処理に要する時間を短くすることができる。
【0072】
基板9の除電処理が終了すると、制御部8により制御される基板乾燥部75により、基板9に対する減圧乾燥処理が行われ、基板9の上面91全体および下面92全体から除電液が除去される(ステップS15)。換言すれば、基板乾燥部75は、基板9の上面91上および下面92上の液体を除去する液体除電液供給部72である。続いて、1枚の基板9が、図2に示す枚葉処理装置1へと搬入され、上面91を上側に向けた状態で基板保持部2に保持される。次に、制御部8により基板回転機構42が制御されることにより、基板9の回転が開始される(ステップS16)。また、処理液ノズル回動機構35による処理液ノズル34の回動が開始され、処理液ノズル34が基板9の中心部とエッジとの間で往復運動を繰り返す。
【0073】
次に、制御部8により処理液供給部3が制御されることにより、硫酸供給部31の硫酸バルブ314が開かれ、硫酸加熱部315により約130℃〜150℃に加熱された硫酸が、硫酸配管312を介して混合液生成部33のミキシングバルブ331へと供給される。また、制御部8により過酸化水素水バルブ324が開かれ、常温の過酸化水素水が、過酸化水素水貯溜部321から過酸化水素水配管322を介してミキシングバルブ331へと供給される。ミキシングバルブ331では、加熱された硫酸と常温の過酸化水素水とが混合されてSPM液が生成される。SPM液の温度は、硫酸と過酸化水素水との反応により、硫酸供給部31から供給される硫酸の温度よりも高い約150℃〜195℃となる。
【0074】
SPM液は、吐出用配管332および攪拌流通管333を通過し、処理液ノズル34から、基板9の上面91に対して供給される。換言すれば、処理液供給部3により、加熱された硫酸と過酸化水素水とが混合されつつ基板9の上面91に供給される。SPM液は、基板9の回転により、基板9の上面91の全面に拡がり、基板9のエッジから外側へと飛散してカップ部41により受けられる。枚葉処理装置1では、基板9に対するSPM液の供給が所定時間だけ連続的に行われ、基板9に対するSPM処理、すなわち、SPM液に含まれるカロ酸の強酸化力による基板9上のレジスト膜の除去処理が行われる(ステップS17)。なお、枚葉処理装置1では、基板9の中心部の上方にて停止した処理液ノズル34からSPM液等の供給が行われてもよい。
【0075】
SPM処理が終了すると、過酸化水素水バルブ324が開かれた状態で硫酸バルブ314が閉じられ、過酸化水素水が、ミキシングバルブ331、吐出用配管332および攪拌流通管333を通過し、処理液ノズル34から、レジスト膜が除去された基板9上に供給される(ステップS18)。当該過酸化水素水供給処理により、ミキシングバルブ331、吐出用配管332、攪拌流通管333および処理液ノズル34内に残っているSPM液が除去される。また、基板9上に供給された過酸化水素水は、基板9の回転により、基板9の上面91の全面に拡がり、基板9上に残っているSPM液を、基板9のエッジから外側へと押し出して除去する。
【0076】
過酸化水素水供給処理が終了すると、過酸化水素水バルブ324が閉じられて過酸化水素水の供給が停止され、処理液ノズル回動機構35により、処理液ノズル34が基板9の外側の待機位置へと移動される。次に、図示省略のリンス液供給部から基板9の上面91にリンス液が供給されるリンス処理が行われる(ステップS19)。リンス液としては、例えば、純水やCO水が利用される。リンス液は、基板9の回転により、基板9の上面91の全面に拡がる。これにより、基板9上に残っている過酸化水素水が洗い流される。リンス処理が所定時間だけ連続的に行われると、リンス液の供給が停止される。そして、基板9の回転数を増大させ、基板9の回転により基板9上に残っているリンス液を除去する乾燥処理が行われる(ステップS20)。その後、基板9の回転が停止され(ステップS21)、基板9が基板処理装置10から搬出される。
【0077】
以上に説明したように、基板処理装置10では、ドライエッチングやプラズマCVD等の前処理により帯電している基板9に対し、枚葉処理装置1における処理液による処理(すなわち、SPM液によるSPM処理)を行う前に、当該処理液よりも比抵抗が大きい除電液に基板9の両側の主面を全面に亘って接触させて接液状態が維持される。これにより、基板9の両側の主面全体が比較的緩やかに除電される。除電の際には、基板9上の電荷が急激に除電液へと移動して発熱することがないため、基板9上のデバイスにダメージが生じることが防止される。
【0078】
そして、除電処理が行われた後の基板9に対し、上記処理液が供給されることにより、基板9が、除電液よりも比抵抗が小さい当該処理液と接触しても、基板9から処理液へと大量の電荷が急激に移動することがない。このため、枚葉処理装置1における処理液による処理の際にも、電荷の移動によるデバイスのダメージ、すなわち、基板9の損傷を防止することができる。
【0079】
基板処理装置10では、温度調整部61により除電液の温度を調整することにより、除電液の比抵抗を、枚葉処理装置1にて利用される処理液の比抵抗よりも大きい状態に維持しつつ、基板9の両側の主面と除電液との接触が行われる。これにより、上述のように、デバイスにダメージを与えることなく、基板9の除電処理を行うことができる。また、デバイスにダメージを与えない範囲で、除電液の温度を高くして比抵抗を小さくすることにより、基板9から除電液への電荷の移動速度を増大させることができる。その結果、基板9の除電処理に要する時間を短くすることができる。
【0080】
除電液の比抵抗の調整は、例えば、純水に二酸化炭素(CO)等を溶解させたイオンを含む液体を除電液として利用し、除電液のイオン濃度を調整することによっても可能である。しかしながら、この方法では、二酸化炭素等を使用するため、除電処理に要するコストが増大するおそれがある。また、同じ温度の純水に比べて、除電液の比抵抗を大きくすることはできない。これに対し、上述の基板処理装置10では、除電液の温度を調整することにより除電液の比抵抗を調整するため、除電液の比抵抗を容易に、かつ、低コストにて調整することができる。
【0081】
上述のように、基板処理装置10では、基板9上のデバイスのサイズが小さいほど、より低い温度が除電液の目標温度として決定され、より高い比抵抗が目標比抵抗として決定される。これにより、枚葉処理装置1における処理時の基板9の損傷防止と除電処理の所要時間の短縮との両立を、デバイスのサイズに合わせて適切に行うことができる。
【0082】
除電液接液部7では、基板9の一方の主面に接触する除電液と他方の主面に接触する除電液とが、基板9のエッジ上において連続している。これにより、基板9の一方の主面に接触する除電液と他方の主面に接触する除電液とが連続していない場合に比べて、除電処理により基板9の表面電位(の絶対値)を、より小さくすることができる。
【0083】
除電液接液部7では、基板9全体が除電液に浸漬されることにより、基板9の一方の主面に接触する除電液と他方の主面に接触する除電液とを容易に連続させることができる。また、基板9の単位面積当たりに接触する除電液の量を容易に大きくすることができるため、基板9の表面電位(の絶対値)を、より一層小さくすることができる。
【0084】
上述のように、除電液接液部7では、複数の基板9を除電液貯溜部71内の除電液に一度に浸漬することにより、複数の基板9の除電処理を効率良く行うことができる。また、除電液貯溜部71への除電液の供給を頻繁に行う必要がないため、除電液と除電液配管721との摩擦により除電液中に電荷が生じることを抑制することができる。さらに、各基板9がエッジから徐々に浸漬されるため、万一、基板9から除電液への電荷の移動により基板9にダメージが生じたとしても、基板9上のデバイスに対して影響が少ない基板9のエッジ近傍のみにダメージが生じる。このため、デバイスの歩留まりを向上することができる。
【0085】
除電液接液部7では、上記ステップS121〜S123に示す温度調整が行われることにより、除電液の温度を精度良く調整することができる。また、ステップS124〜S126に示す温度調整が行われる場合は、ステップS121〜S123に示す温度調整を行う場合に比べて、制御部8による温度調整部61の制御を簡素化することができる。
【0086】
上述のように、除電液接液部7では、除電液として純水が利用される。これにより、除電液として、純水に二酸化炭素(CO)等を溶解させたイオンを含む液体を利用する場合に比べて、除電液の使用に係るコストを低減することができる。
【0087】
基板処理装置10では、ステップS14における除電処理と、ステップS17における処理液による処理(SPM処理)との間において、ステップS15における乾燥処理により、基板9上の除電液が除去される。これにより、基板9上における除電液と処理液との混合による悪影響を防止することができる。当該悪影響としては、例えば、除電液である純水とSPM液に含まれる硫酸との反応熱による基板9の損傷(いわゆる、ヒートショック)、SPM液が除電液により希釈されることによるSPM処理の質の低下、および、SPM液の除電液との部分的な混合によりSPM液の濃度が不均一となり、基板9全体におけるSPM処理の均一性が低下することが挙げられる。
【0088】
図8.Aおよび図8.Bは、図4中のステップS11において制御部8に設定される目標温度の決定の流れの一例を示す図である。目標温度の決定処理では、まず、ステップS17にて使用される予定の処理液(SPM液)の比抵抗が測定されて得られる(ステップS611)。続いて、図3に示す除電液(純水)の温度と比抵抗との関係も取得される(ステップS612)。そして、ステップS612にて得られた関係に基づいて、除電液の比抵抗が処理液の比抵抗に等しくなる除電液の温度が取得される(ステップS613)。
【0089】
次に、ステップS613にて取得された温度よりもわずかに低い仮目標温度が設定され、仮目標温度の除電液が準備される(ステップS614,S615)。除電液の準備と並行して、上記基板9と同様の構造を有する試験用基板が準備される。試験用基板は、貯溜部に貯溜された仮目標温度の除電液に浸漬される。これにより、試験用基板の両側の主面が、全面に亘って除電液に接触し、当該接液状態が所定の時間だけ維持されることにより、試験用基板上の電荷が減少する。換言すれば、試験用基板の除電処理が行われる(ステップS616)。
【0090】
除電処理が終了すると、試験用基板が除電液中から取り出され、乾燥処理が行われることにより、試験用基板の両面上から除電液が除去される。続いて、試験用基板の上面(すなわち、デバイスが予め形成されている面)上に処理液が供給され、ステップS17と同様に所定の処理(SPM処理)が行われる(ステップS617)。
【0091】
SPM処理が終了すると、試験用基板の上面の状態が観察される等して評価され(ステップS618)、上面の状態が良好であれば(ステップS619)、仮目標温度が目標温度として決定される。当該目標温度は記憶部8aに記憶される(ステップS623)。ステップS619では、試験用基板において、上面上のデバイスの損傷が生じていない場合、上面の状態が良好であると評価され、デバイスの損傷が生じている場合、上面の状態が良好ではないと評価される。
【0092】
試験用基板の上面の状態が良好ではない場合(ステップS619)、ステップS616の除電処理の時間(すなわち、試験用基板の除電液に対する接液状態を維持する時間)が長くなるように変更され、新たな試験用基板に対する除電処理が行われる(ステップS620,S621,S616)。そして、SPM処理および試験用基板の上面の状態の評価が行われる(ステップS617,S618)。除電処理の時間を変更しての除電処理、SPM処理および試験用基板の評価は、所定の回数だけ繰り返される(ステップS619〜S621)。ただし、所定回数の繰り返しが終了する前に、ステップS619において試験用基板の上面の状態が良好であると判断された場合は、仮目標温度が目標温度として決定され、最新のステップS616における除電処理の時間が、ステップS14における除電時間の時間として決定される。当該除電時間は記憶部8aに記憶される。(ステップS623)。
【0093】
一方、所定回数の繰り返しが終了しても、試験用基板の上面の状態が良好であると判断されなかった場合は、仮目標温度が下げられる(ステップS619,S620,S622)。換言すれば、最新の仮目標温度よりも低い温度が仮目標温度として設定される。そして、新たな試験用基板に対する除電処理、SPM処理および試験用基板の評価が行われる(ステップS616〜S618)。試験用基板の上面の状態が良好になれば、仮目標温度が目標温度として決定される(ステップS619,S623)。また、試験用基板の上面の状態が良好ではない場合は、除電時間を長く変更し(ステップS619〜S621)、除電処理、SPM処理および試験用基板の評価が所定回数だけ繰り返される(ステップS616〜S621)。
【0094】
このように、ステップS616〜S622が繰り返されることにより、SPM処理後の試験用基板の上面の状態が良好となる仮目標温度および除電時間が、目標温度および除電時間として決定される(ステップS623)。そして、基板処理装置10において、当該目標温度の除電液を利用して除電処理を行うことにより、処理液による処理の際に、基板9の損傷を防止することができる。また、設定された除電時間だけ除電処理を行うことにより、除電時間を過剰に長くすることが防止される。
【0095】
また、本目標除電温度決定処理においては、比抵抗が処理液に等しくなる除電液の温度よりもわずかに低い温度を目標除電温度取得処理開始時点での仮目標温度とし(ステップS614)、当該仮目標温度を少しずつ下げていき(ステップS622)、試験用基板の上面が良好となった時点での仮目標温度を最終的な目標温度としている(ステップS622)。除電液の温度が高ければ高いほど除電時間を短くすることができるため、試験用基板の上面に損傷を与えない温度範囲のうちで最も除電時間が短くなる温度を最終的な目標温度として決定することができる。
【0096】
図9は、目標温度の決定の他の例を示す図である。図9では、目標温度の決定の流れの一部を示す。まず、ステップS17にて使用される予定の処理液(SPM液)の比抵抗が測定されて得られる(ステップS631)。続いて、処理液の比抵抗よりもわずかに高い比抵抗が仮目標比抵抗として設定される(ステップS632)。また、図3に示す除電液(純水)の温度と比抵抗との関係も取得される(ステップS633)。そして、ステップS633にて得られた関係に基づいて、除電液の比抵抗がステップS632にて設定された比抵抗に等しくなる除電液の温度が、仮目標温度として取得される(ステップS634)。
【0097】
以下、上述のステップS615〜S623と同様の工程が行われ、SPM処理後の試験用基板の上面の状態が良好となる仮目標温度および除電時間が、目標温度および除電時間として決定される。そして、基板処理装置10において、当該目標温度の除電液を利用して除電処理を行うことにより、処理液による処理の際に、基板9の損傷を防止することができる。また、設定された除電時間だけ除電処理を行うことにより、除電時間を過剰に長くすることが防止される。図8.A、図8.Bおよび図9に示す目標温度の決定処理は、基板処理装置10において行われてもよく、基板処理装置10を用いることなく行われてもよい。
【0098】
図1に示す基板処理装置10では、除電液測定部62として比抵抗計が利用され、除電液測定部62により除電液の比抵抗が測定されてもよい。この場合、基板処理装置10では、図4に示すステップS11に代えて、図10に示すように、除電処理における除電液の好ましい比抵抗である目標比抵抗が、制御部8に設定される(ステップS31)。また、図3に示すような除電液の温度と比抵抗との関係も、制御部8に記憶される。
【0099】
続いて、図5に示すステップS121〜S123に代えて、除電液測定部62により、除電液配管721内を流れる除電液の比抵抗が測定される(ステップS321)。次に、ステップS321における測定結果、および、除電液の温度と比抵抗との関係に基づいて、除電液配管721内の除電液の比抵抗と目標比抵抗との差が小さくなるように、温度調整部61により除電液の温度が調整される(ステップS322)。そして、ステップS321とステップS322とが繰り返されることにより、除電液の比抵抗が、およそ目標比抵抗に調整されて維持される(ステップS323)。これにより、除電液の比抵抗を精度良く調整することができる。
【0100】
除電液の比抵抗が目標比抵抗から多少ずれていても許容されるケースでは、図10のステップS321〜S323に代えて、図11に示すように温度調整が行われる。まず、除電液測定部62により、除電液配管721内を流れる除電液の比抵抗が測定される(ステップS324)。続いて、ステップS324における測定結果に基づいて、除電液配管721内の除電液の比抵抗と目標比抵抗との差が求められ、予め設定された所定の閾値比抵抗差と比較される(ステップS325)。
【0101】
除電液の比抵抗と目標比抵抗との差が閾値比抵抗差未以下の場合、温度調整部61による除電液の温度調整は行われない。除電液の比抵抗と目標比抵抗との差が閾値比抵抗差よりも大きい場合、除電液の比抵抗と目標比抵抗との差が小さくなるように、温度調整部61により除電液の温度が調整される(ステップS326)。目標比抵抗よりも閾値比抵抗差だけ小さい比抵抗を「下限比抵抗」と呼び、目標比抵抗よりも閾値比抵抗差だけ大きい比抵抗を「上限比抵抗」と呼ぶと、ステップS324〜S326が繰り返されることにより、除電液の比抵抗が、下限比抵抗以上かつ上限比抵抗以下の範囲内におよそ調整されて維持される。これにより、ステップS321〜S323に示す温度調整を行う場合に比べて、制御部8による温度調整部61の制御を簡素化することができる。
【0102】
基板処理装置10では、上述のステップS31,S321〜S323が行われる場合、基板9上のデバイスのサイズが小さいほど、除電液の目標比抵抗が大きく設定される。これにより、枚葉処理装置1における処理時の基板9の損傷防止と除電処理の所要時間の短縮との両立を、デバイスのサイズに合わせて適切に行うことができる。また、ステップS31,S324〜S326が行われる場合も同様である。
【0103】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置10aについて説明する。図12は、基板処理装置10aの構成を示す図である。基板処理装置10aでは、除電液接液部7において、図1に示す除電液貯溜部71よりも小さい除電液貯溜部71aが設けられる。除電液貯溜部71aに貯溜された除電液には、1枚の基板9が浸漬される。基板処理装置10aでは、図1に示すカートリッジ73等が省略される。その他の構成は、図1に示す基板処理装置10と同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
【0104】
基板処理装置10aにおける基板処理の流れは、図4に示すものとほぼ同様であり、ステップS14において、制御部8の制御により除電液貯溜部71a内の除電液に基板9を浸漬する際に、1枚の基板9が上面91とは反対側の主面(以下、「下面92」という。)から浸漬される点のみが異なる。
【0105】
図13は、基板処理装置10aによる除電処理の前後における基板9の上面91の表面電位を示す図である。上述の除電処理により、基板9上の電荷が減少し、基板9の電位が全体的に低減される。これにより、図1に示す基板処理装置10と同様に、除電処理が行われた後の基板9に対する枚葉処理装置1におけるSPM処理の際に、電荷の移動によるデバイスのダメージ、すなわち、基板9の損傷を防止することができる。また、除電液接液部7では、基板9の上面91および下面92に接触する除電液が、基板9のエッジ上において連続している。これにより、除電処理により基板9の表面電位(の絶対値)を、より小さくすることができる。さらに、除電液接液部7では、基板9全体が除電液に浸漬されることにより、基板9の表面電位(の絶対値)を、より一層小さくすることができる。
【0106】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置10bについて説明する。図14は、基板処理装置10bの構成を示す図である。基板処理装置10bでは、除電液接液部7に代えて、枚葉処理装置1に除電液接液部7aが設けられる。除電液接液部7aでは、除電液貯溜部や基板乾燥部等は設けられず、図1に示す除電液供給部72と一部構造が異なる除電液供給部72aが設けられる。その他の構成は、図1に示す基板処理装置10と同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
【0107】
図14に示す除電液供給部72aは、図1に示す除電液供給部72と同様に、除電液配管721と、流量計722と、除電液バルブ724とを備え、除電液配管721は、図示省略の除電液供給源に接続される。また、除電液供給部72aは、除電液配管721の先端に設けられる除電液ノズル725と、除電液ノズル725を回転軸7281を中心として水平に回動する除電液ノズル回動機構728を備える。除電液ノズル回動機構728は、回転軸7281から水平方向に延びるとともに除電液ノズル725が取り付けられるアーム7282を備える。除電液配管721上には、除電液供給源から除電液ノズル725に向かって、流量計722、温度調整部61、除電液バルブ724および除電液測定部62が順に配置される。
【0108】
枚葉処理装置1では、基板9の外縁部の一部が基板保持部2により支持されており、基板保持部2と接触する当該一部を除き、基板9の下面92と基板保持部2とは離間している。除電液供給部72aは、基板9の下面92へと除電液を供給する下面接液部761をさらに備える。下面接液部761は、基板9の下面92の中心部と対向する位置に配置され、下面92に向けて除電液を吐出する。下面接液部761は、下面用配管762を介して除電液配管721に接続され、下面用配管762上には下面用バルブ763が設けられる。
【0109】
除電液接液部7aでは、除電液接液部7と同様に、目標温度が設定された制御部8により温度調整部61が制御されることにより、除電液の温度が調整され(図4:ステップS11,S12)、およそ目標温度に維持される。これにより、除電液の比抵抗が、およそ目標比抵抗に維持される。あるいは、除電液の温度は、下限温度以上かつ上限温度以下の範囲内におよそ維持されてもよい。除電液接液部7aでは、図10または図11に示すように制御部8に目標比抵抗が設定され(ステップS31)、当該目標比抵抗に基づいて除電液の温度が調整されてもよい(ステップS321〜S323、または、ステップS324〜S326)。
【0110】
温度調整された除電液は、除電液ノズル725および下面接液部761に送られ、基板9の上面91の中心部上方に向けられた除電液ノズル725の先端の吐出口から、基板9の上面91に除電液が供給され、また、基板9の下面92の中心部と対向する下面接液部761から、基板9の下面92に除電液が供給される。除電液ノズル725および下面接液部761をそれぞれ第1除電液接液部および第2除電液接液部と呼ぶと、除電液接液部7aでは、第1除電液接液部および第2除電液接液部により、基板9の上面91および下面92が除電液に接触する。
【0111】
図15は、基板処理装置10bにおける基板9の処理の流れの一部を示す図である。まず、図1に示す基板処理装置10と同様に、基板9上のデバイスのサイズ等に基づいて決定された除電液の目標温度が、制御部8に設定される(ステップS41)。続いて、帯電した状態の基板9が基板処理装置10bに搬入され、枚葉処理装置1の基板保持部2により保持される。
【0112】
除電液接液部7aでは、除電液ノズル725が基板9よりも外側の待機位置に位置した状態で、除電液ノズル725から除電液(純水)の吐出が開始される。そして、除電液測定部62の測定結果である除電液の温度、および、上述の目標温度に基づいて、温度調整部61に対するフィードバック制御が行われる。これにより、除電液の温度が、除電液の比抵抗が処理液(SPM液)の比抵抗よりも大きくなる温度範囲内に調整される(ステップS42)。除電液の温度調整の詳細は、図5中のステップS121〜S123、または、図6中のステップS124〜S126と同様である。
【0113】
除電液の温度調整が終了すると、図14に示す基板回転機構42により基板9の回転が開始される。続いて、図16に示すように、下面用バルブ763が開放され、下面接液部761の先端の吐出口から基板9の下面92に向けて、上述のように温度調整された除電液95の吐出が開始される。基板9の回転速度は、後述のSPM処理時における回転速度よりも低い。基板9の下面92に接触した除電液95は、基板9の回転により、基板9の下面92の中心部から全面に拡がる。除電液95が基板9の下面92全体に拡がると、除電液95の吐出および基板9の回転が停止される。これにより、基板9の下面92全体(ただし、基板保持部2との接触部分を除く。)が除電液95に接触した状態が維持され、その結果、基板9の下面92の電荷が、除電液95へと比較的緩やかに移動し、基板9の下面92全体の除電処理が行われる(ステップS43)。
【0114】
基板9の下面92への除電液95の供給が終了すると、除電液ノズル回動機構728により除電液ノズル725が待機位置から移動し、除電液ノズル725の先端の吐出口が、基板9の上面91の中心部を向く。そして、除電液ノズル725から基板9の上面91上に除電液95が所定の量だけ供給された後、除電液ノズル725からの除電液95の供給が停止される(いわゆる、液盛りが行われる。)。除電液ノズル725から供給された除電液95は、基板9の中心部から上面91全体に拡がり、上面91上に除電液95の薄い層(例えば、厚さ約1mmの層)が形成されて上面91全体が除電液95にてパドルされる(ステップS44)。これにより、基板9の上面91の電荷が、除電液95へと比較的緩やかに移動し、基板9の上面91全体の除電処理が行われる。なお、基板9の下面92に接触している除電液95と、基板9の上面91に接触している除電液95とは、基板9上において連続していない。
【0115】
基板処理装置10bでは、基板回転機構42が停止した状態で、基板9の上面91全体が除電液95にてパドルされるとともに、基板9の下面92全体が除電液95と接触している状態を所定時間だけ維持することにより、基板9の上面91全体および下面92全体の除電処理が行われる。
【0116】
除電処理が終了すると、基板9の回転が開始され(図4:ステップS16)、基板9の上面91および下面92上の除電液が、基板9の回転により除去される。これにより、次のSPM処理の際に、基板9の上面91にて除電液とSPM液とが混ざることが防止される。その結果、基板9上における除電液と処理液との混合による上述の悪影響を防止することができる。
【0117】
除電液の除去が終了すると、図14に示す処理液供給部3からSPM液が基板9の上面91上に供給されてSPM処理が行われる(ステップS17)。続いて、処理液供給部3から過酸化水素水が基板9の上面91上に供給されて過酸化水素水供給処理が行われた後、リンス液(純水)が基板9の上面91上に供給されてリンス処理が行われる(ステップS18,S19)。リンス液は、図示省略のリンス液供給部から供給されてもよく、除電液接液部7aの除電液ノズル725から供給されてもよい。その後、基板9の回転により基板9上のリンス液を除去する乾燥処理が行われ、基板9の回転が停止される(ステップS20,S21)。
【0118】
図17は、基板処理装置10bによる除電処理の前後における基板9の上面91の表面電位を示す図である。上述の除電処理により、基板9上の電荷が減少し、基板9の電位が全体的に低減される。これにより、図1に示す基板処理装置10と同様に、除電処理が行われた後の基板9に対するSPM処理の際に、電荷の移動によるデバイスのダメージ、すなわち、基板9の損傷を防止することができる。また、基板処理装置10bでは、除電液接液部7aを枚葉処理装置1に設けることにより、基板処理装置10bを小型化することができる。
【0119】
基板処理装置10bでは、基板9に対する除電処理は、実質的に基板回転機構42が停止した状態で行われる。これにより、基板9の除電を効率的に行うことができる。基板回転機構42が実質的に停止した状態とは、上述のように、基板回転機構42による基板9の回転が完全に停止している状態のみならず、基板回転機構42により基板9が低い回転数(例えば、10〜200rpm)にて回転しており、当該回転により、基板9上の除電液の層に実質的な影響が生じていない状態を含む。
【0120】
上述の基板処理装置10,10a,10bは、様々な変更が可能である。
【0121】
基板処理装置10では、例えば、除電液測定部62により、除電液貯溜部71に貯溜された除電液の温度または比抵抗が測定されてもよい。また、除電液貯溜部71内の除電液を必要に応じて加熱または冷却する機構が、温度調整部61として設けられてもよい。
【0122】
基板処理装置10bにおける除電処理では、基板9の上面91上における除電液の層が崩れずに維持されるのであれば、上面91への除電液の供給およびパドル処理が、基板9が回転している状態において行われてもよい。また、基板9の上面91の除電液によるパドル処理は、基板9の下面92への除電液の供給よりも前に、あるいは、並行して行われてもよい。
【0123】
除電液と処理液との混合により悪影響が生じないのであれば、基板処理装置10において、ステップS15の乾燥処理は省略されてもよい。また、基板処理装置10bでは、ステップS16において除電液の基板9上からの除去を行うことなく、ステップS17の処理が行われてもよい。
【0124】
上述の基板処理装置では、SPM液以外の処理液が基板9上に供給され、基板9に対する他の処理が行われてもよい。例えば、レジスト膜が形成された基板9上に処理液としてバッファードフッ酸(BHF)が供給され、基板9のエッチング処理が行われてもよい。基板処理装置では、上述のように、帯電した基板9と処理液との接触による電荷の急激な移動に伴う基板9の損傷を防止することができるため、基板処理装置の構造は、SPM液やバッファードフッ酸のように、比抵抗が非常に小さい処理液による処理が行われる装置に特に適している。
【0125】
上述の基板処理装置では、除電液として、純水にアンモニアを溶解させたものや純水に微量の希塩酸を加えたものが利用されてもよく、また、他の様々なイオンを含む液体が利用されてもよい。さらに、除電液は、凝固点以上沸点以下の少なくとも所定の温度範囲において、枚葉処理装置1にて利用される処理液よりも比抵抗が大きくなるものであれば、純水またはイオンを含む液体には限定されず、様々な種類の液体が除電液として利用されてよい。
【0126】
基板処理装置では、除電液の目標温度および目標比抵抗は、デバイスのサイズ以外の条件(例えば、基板処理装置に搬入される前に基板に対して行われた処理の種類)に基づいて決定されてもよい。
【0127】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0128】
2 基板保持部
3 処理液供給部
7,7a 除電液接液部
8 制御部
9 基板
10,10a,10b 基板処理装置
61 温度調整部
62 除電液測定部
71,71a 除電液貯溜部
91 上面
92 下面
95 除電液
725 除電液ノズル
761 下面接液部
S11〜S21,S31,S41〜S44,S121〜S126,S321〜S326,S611〜S623,S631〜S634 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8.A】
図8.B】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17