特許第6262440号(P6262440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262440
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ホイールローダ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20180104BHJP
   F01N 3/033 20060101ALI20180104BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20180104BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20180104BHJP
【FI】
   E02F9/00 D
   F01N3/033 B
   F01N3/24 C
   F01N3/24 E
   F01N3/24 J
   F01N13/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-80396(P2013-80396)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-202002(P2014-202002A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月15日
【審判番号】不服2017-5874(P2017-5874/J1)
【審判請求日】2017年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】509241041
【氏名又は名称】株式会社KCM
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下平 陽
(72)【発明者】
【氏名】青木 忠義
(72)【発明者】
【氏名】矢田 裕昭
【合議体】
【審判長】 松下 聡
【審判官】 八木 誠
【審判官】 金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−184602(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152306(WO,A1)
【文献】 特開2009−103016(JP,A)
【文献】 特開2011−43078(JP,A)
【文献】 特開2007−222819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01N 3/033, 3/24, 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部車体と後部車体とから構成されセンタピンにより互いに回動自在に連結された車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されターボチャージャを上部に有するエンジンと、
前記エンジンの上部を覆い、支柱を介して前記車体フレームに固定されたエンジンカバーと、
前記エンジンの上方に配置され、前記車体フレームの一方側に出口部を有する筒状の第1の排気装置と、
前記第1の排気装置に接続され、前記第1の排気装置の出口部と同じ側に入口部を有し、前記第1の排気装置よりも低く、かつ前記エンジンの上方の位置に配設された、前記第1の排気装置とは異なる機能を有する筒状の第2の排気装置と、
前記第1の排気装置を保持する上部保持部と、前記第2の排気装置を保持する下部保持部と、前記エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座と、前記上部保持部、前記下部保持部及び前記取付座が取り付けられた本体部とを有するブラケットと、
前記ターボチャージャと前記第1の排気装置とを接続し蛇腹管を有する排気配管とを備え、
前記ブラケットは、上方から見たときに前記第1の排気装置の延在方向と前記第2の排気装置の延在方向とが平行に、かつ、上方から見たときに前記第1の排気装置の一部と前記第2の排気装置の一部とが重なり合うように前記第1および第2の排気装置が一体的に保持されており、
前記第1および第2の排気装置は、前記取付座を介して前記エンジンカバーの下方で固定されていることを特徴とするホイールローダ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関を有する作業機械には、排気装置として、消音のためのマフラや、排気ガス清浄化のための各種の後処理装置が設けられている。これらの排気装置を一体化すると、重量および外形寸法が増大してしまう。そこで、重量および外形寸法が増大した排気装置に対応した設置構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−106581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、機能が異なる複数の排気装置を一体化すると、上述した特許文献に記載されているように重量および外形寸法が増大すること以外にも、一体化した排気装置の汎用性がなくなるためコストが増大するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるホイールローダは、前部車体と後部車体とから構成されセンタピンにより互いに回動自在に連結された車体フレームと、前記車体フレームに搭載されターボチャージャを上部に有するエンジンと、前記エンジンの上部を覆い、支柱を介して前記車体フレームに固定されたエンジンカバーと、前記エンジンの上方に配置され、前記車体フレームの一方側に出口部を有する筒状の第1の排気装置と、前記第1の排気装置に接続され、前記第1の排気装置の出口部と同じ側に入口部を有し、前記第1の排気装置よりも低く、かつ前記エンジンの上方の位置に配設された、前記第1の排気装置とは異なる機能を有する筒状の第2の排気装置と、前記第1の排気装置を保持する上部保持部と、前記第2の排気装置を保持する下部保持部と、前記エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座と、前記上部保持部、前記下部保持部及び前記取付座が取り付けられた本体部とを有するブラケットと、前記ターボチャージャと前記第1の排気装置とを接続し蛇腹管を有する排気配管とを備え、前記ブラケットは、上方から見たときに前記第1の排気装置の延在方向と前記第2の排気装置の延在方向とが平行に、かつ、上方から見たときに前記第1の排気装置の一部と前記第2の排気装置の一部とが重なり合うように前記第1および第2の排気装置が一体的に保持されており、前記第1および第2の排気装置は、前記取付座を介して前記エンジンカバーの下方で固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブラケットが、上方から見たときに第1の排気装置の延在方向と第2の排気装置の延在方向とが略平行に、かつ、上方から見たときに第1の排気装置の一部と第2の排気装置の一部とが重なり合うように第1および第2の排気装置を一体的に保持するとともに、第1および第2の排気装置をエンジンカバーの下方で固定するように構成した。これにより、作業機械の重量増や大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
図2】ホイールローダ100の後部車体(フレーム)に取り付けられた建屋カバーおよび冷却器用建屋カバーの外観を示す斜視図である。
図3】エンジンカバーおよび冷却器用建屋カバーを左前斜め上側から見た斜視図である。
図4】左側からエンジン室を見たときの図である。
図5】左前側からエンジン室を見たときの図である。
図6】エンジンを左後側から見た図である。
図7】エンジンの上方に設けられる吸排気系の補機類を左前側から見たときの図である。
図8】吸排気系の補機類を右後側から見たときの図である。
図9】排気系の補機類のうち特に排気装置を前方から見たときの図である。
図10】酸化触媒と消音装置とが取付用ブラケットによって一体的に保持された状態を示す斜視図である。
図11】酸化触媒と消音装置とが取付用ブラケットによって一体的に保持された状態を前方から見た図である。
図12】取付用ブラケットの分解図である。
図13】エンジンカバーを左前方斜め下側から見た斜視図である。
図14】取付ブラケットによって排気装置がエンジンカバーの下面に取り付けられた状態を示す側面図である。
図15図14のA−A断面矢視図である。
図16】取付ブラケットで保持された排気装置を左前方斜め下側から見た斜視図である。
図17】変形例を示す図である。
図18】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜16を参照して、本発明による作業機械の一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。図2は、ホイールローダ100の後部車体(フレーム)120に取り付けられた建屋カバー130および冷却器用建屋カバー132の外観を示す斜視図である。説明の便宜上、本実施の形態では各図に記載したように前後左右方向および上下方向を規定する。
【0009】
ホイールローダ100は、アーム111、バケット112、タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121、機械室(エンジン室)122、冷却器室126、タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。エンジン室122は、上方がエンジンフード(エンジンカバー)140で、側方が開閉可能な建屋カバー130で覆われている。建屋カバー130の上部側面は、上部のヒンジを中心に外側に向かって開くように構成されており、不図示のガススプリングによって開いた状態で保持されるように構成されている。
【0010】
エンジンカバー140には、排気ガスを排気するためのテールパイプ171が取り付けられている。冷却器室126は、エンジン室122の後方に設けられており、エンジン室122とは不図示の隔壁によって仕切られている。冷却器室126の側面は、建屋カバー130の一部と冷却器用建屋カバー132とで覆われ、冷却器室126の上面は、冷却器用建屋カバー132で覆われている。冷却器室126には、複数の冷却器(熱交換器)等が設けられている。冷却器用建屋カバー132は、後方で開口している。当該開口部分は、開閉可能に取り付けられたグリル200によって覆われている。
【0011】
後部車体120の後方にはカウンタウエイト124が取り付けられている。エンジン室122の前方には、作動油タンク125が設けられている。作動油タンク125は、たとえば図2に示すように、後部車体120に立設されている。
【0012】
図3は、エンジンカバー140および冷却器用建屋カバー132を左前斜め上側から見た斜視図であり、図4は、左側からエンジン室122を見たときの図である。また、図13は、エンジンカバー140を左前方斜め下側から見た斜視図であり、後述する取付ブラケット500が取り付けられた状態を示している。エンジンカバー140は、天板141と、天板141が取り付けられるフレーム142とを備えている。
【0013】
天板141は、エンジン室122の上部開口を覆う板であり、上方に向かって突出する突部143と、排気ガスを排出するための開口である開口部144とが設けられ、フレーム142の上に取り付けられている。突部143は、後述する排気装置400の第1排気装置410との干渉を防止するために設けられている。開口部144の周縁には、排気ガスを排気するための上述したテールパイプ171が取り付けられている(図2および図3参照)。
【0014】
フレーム142は、天板141の補強部材であり、略矩形状に組まれた4本の補強部材142a〜142dと、これらの補強部材のうち前後方向に延在する2本の補強部材142b,142dの間の位置で前後方向に延在する1本の補強部材142eとを有する。
【0015】
エンジンカバー140は、前端の下面が作動油タンク125の上面に当接して支持され、後端が建屋カバー支持部材160で支持される。建屋カバー支持部材160は、後部車体120にそれぞれ立設される左右一対の支柱161を有する略門型の部材である。建屋カバー支持部材160は、エンジンカバー140(特に補強部材142c)の強度を補強している。なお、上述した不図示の隔壁は、建屋カバー支持部材160の後面に、たとえばボルト止めなどによって固定されている。
【0016】
アーム111は不図示のアームシリンダの駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ116の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0017】
図5は、左前側からエンジン室122を見たときの図であり、図6は、エンジン301を左後側から見た図である。また、図7は、エンジン301の上方に設けられる吸排気系の補機類を左前側から見たときの図であり、図8は、同じく吸排気系の補機類を右後側から見たときの図であり、図9は、排気系の補機類のうち特に排気装置400を前方から見たときの図である。
【0018】
本実施の形態のエンジン301は、ディーゼルエンジンである。エンジン301と、エンジン301に取り付けられたトランスミッション320は、取り付け用のブラケット331およびエンジンマウントラバー332を介して後部車体120のブラケット128に取り付けられている(図6)。エンジン301には、たとえば、ターボチャージャ302やEGRクーラ303等の各種の補機が取り付けられている。
【0019】
図7,8で特に示すように、エンジン室122内で、エンジン301の上方には、吸気系の補機であるエアクリーナ350と、排気系の補機である排気装置400とが設けられている。エアクリーナ350は、吸入した空気を濾過する不図示のフィルタと、このフィルタを保持するエアクリーナボックス351とを備えている。エアクリーナ350は、外気を導く吸気配管352がエアクリーナボックス351の背面に接続され、濾過した空気をターボチャージャ302に導く吸気配管353がエアクリーナボックス351の左側面に接続されている。なお、図示はしないが、エアクリーナボックス351は、ブラケット354を介して作動油タンク125の背面に取り付けられる。
【0020】
エアクリーナ350で濾過された空気は、上述したように吸気配管353を介してターボチャージャ302へ供給されて過給される。ターボチャージャ302で過給された空気は、吸気配管355を介して不図示のインタークーラに送られる。なお、インタークーラは、冷却器室126に設けられている。インタークーラで冷却された空気は、吸気配管356等を介して、エンジン301に供給される。
【0021】
エンジン301から排出される排気ガスは、ターボチャージャ302を経由した後、排気配管361を介して排気装置400に送られ、排気装置400で浄化され、および音量が抑制された後、テールパイプ171から大気中に排出される。排気装置400については、以下に詳述する。なお、排気配管361の途中には、エンジン301と排気装置400との振動モードの相違を吸収する蛇腹管361aが設けられている。
【0022】
−−−排気装置400について−−−
排気装置400は、第1の排気装置(第1排気装置410)と第2の排気装置(第2排気装置420)とを有する。本実施の形態では、第1排気装置410には消音機能付きの酸化触媒(以下、単に酸化触媒またはDOC(Diesel Oxidation Catalyst)と呼ぶ)4100が用いられ、第2排気装置420には消音装置4200が用いられている。後述するように、排気装置400は、第1排気装置410(酸化触媒4100)と第2排気装置420(消音装置4200)とが取付用ブラケット500によって一体的に保持(固定)されて、エンジンカバー140の下方で固定されている。排気装置400への排気ガスの入口は酸化触媒4100の後述する入口4111であり、排気装置400からの排気ガスの出口は消音装置4200の後述する出口4212である。
【0023】
本実施の形態の酸化触媒4100は、排気ガス中の一酸化窒素の酸化の処理も行う排気装置である。酸化触媒4100は、不図示の酸化触媒と、この酸化触媒を収納する筐体4110とを有する。筐体4110には、排気ガスの入口4111および排気ガスの出口4112が設けられている。筐体4110は、略円筒形状を呈する中空部材であり、一端に入口4111が設けられ、他端が閉じられている。筐体4110の他端近傍の外周面には出口4112が設けられている。
【0024】
消音装置4200は、筐体4210の内部が排気ガスを消音するように構成された公知の消音装置である。筐体4210は、略円筒形状を呈する中空部材であり、両端が閉じられている。筐体4210の一端近傍の外周面には排気ガスの入口4211が設けられ、他端近傍の外周面には排気ガスの出口4212が設けられている。出口4212には、延長配管431の一端が接続されている。延長配管431の他端は、エンジンカバー140に取り付けられたテールパイプ171の下部に挿入されている。
【0025】
酸化触媒4100の出口4112は、筐体4110の下部から下方に向かって延在しており、消音装置4200の入口4211は、筐体4210の左方で上方に向かって延在している。消音装置4200から見て酸化触媒4100は左斜め上方に配設されている。酸化触媒4100の出口4112と消音装置4200の入口4211とは、前後方向および左右方向における位置が略同一である。酸化触媒4110および消音装置4200は、酸化触媒4100の出口4112に消音装置4200の入口4211が挿入されることで互いに接続されている。酸化触媒4100の出口4112と消音装置4200の入口4211との接続部分は、Uボルト532によって締め付けられて固定されている。
【0026】
図10は、酸化触媒4100と消音装置4200とが取付用ブラケット500によって一体的に保持された状態を示す斜視図であり、図11は、酸化触媒4100と消音装置4200とが取付用ブラケット500によって一体的に保持された状態を前方から見た図である。図12は、取付用ブラケット500の分解図である。取付用ブラケット500は、上述したように酸化触媒4100と消音装置4200とが接続された状態で、これらを一体的に保持する。
【0027】
具体的には、取付用ブラケット500は、ブラケット本体510を有する。ブラケット本体510には、酸化触媒4100を保持するための上側第1保持座511および上側第2保持座512と、消音装置4200保持するための下側保持座513とが設けられている。上側第1保持座511は、ブラケット本体510の前部上面に設けられた保持座であり、酸化触媒4100の筐体4110を出口4112の近傍で下方から支持する。酸化触媒4100は、筐体4110の外周がUバンド531によって締め付けられて上側第1保持座511に固定されている。なお、酸化触媒4100は、筐体4110の内部に設けられた不図示の酸化触媒の破損防止のため、外周の締め付け箇所が酸化触媒4100のメーカによって指定されている。
【0028】
上側第2保持座512は、ブラケット本体510の後部上面に設けられた保持座であり、酸化触媒4100の入口4111を下方から支持する。酸化触媒4100は、入口4111の外周がUボルト532によって締め付けられて上側第2保持座512に固定されている。
【0029】
下側保持座513は、ブラケット本体510の右側下面に設けられた保持座であり、消音装置4200の筐体4210を上方から保持する。消音装置4200は、筐体4210の外周がUバンド531によって締め付けられて下側保持座513に固定されている。
【0030】
上側第1保持座511の左方および右方と、上側第2保持座512の左方および右方には、取付用ブラケット500をエンジンカバー140の下面(フレーム142の下面)に取り付けるための取付座515が合計で4箇所に設けられている。
【0031】
取付用ブラケット500は、酸化触媒4100の略円筒状の筐体4110の延在方向と、消音装置420の略円筒状の筐体4210の延在方向とが平行となるように酸化触媒4100および消音装置4200を保持している。また、図11に示すように、取付用ブラケット500は、消音装置4200よりも酸化触媒4100の方が上に位置するように酸化触媒4100および消音装置4200を保持している。
【0032】
取付用ブラケット500は、酸化触媒4100の筐体4110の略円形の断面半径をR1とし、消音装置4200の筐体4210の略円形の半径をR2としたときに、酸化触媒4100の断面の中心軸と、消音装置4200断面の中心軸との左右方向の離間距離Dが次の式(1)で表す関係となるように酸化触媒4100および消音装置4200を保持している。
D <R1 + R2 ・・・・・・・・(1)
【0033】
すなわち、酸化触媒4100の断面の中心軸と、消音装置4200断面の中心軸とが上下方向で離間して異なる高さ位置で延在するため、酸化触媒4100および消音装置4200を、上方から見たときに筐体4110,4210同士が左右方向で重なるように取付用ブラケット500で保持できる。このように取付用ブラケット500が酸化触媒4100および消音装置4200を保持することで、酸化触媒4100および消音装置4200の配設空間を左右方向で狭めることができる。
【0034】
なお、酸化触媒4100の断面の中心軸と、消音装置4200断面の中心軸とが左右方向で離間して延在するため、酸化触媒4100および消音装置4200を、左方および右方から見たときに筐体4110,4210同士が上下方向で重なるように取付用ブラケット500に保持することも可能である。したがって、酸化触媒4100および消音装置4200の配設空間を上下方向で狭めることもできる。
【0035】
−−−排気装置400の搭載状態について−−−
上述したように図13は、エンジンカバー140への取付ブラケット500の取付状態を示す斜視図である。図14は、取付ブラケット500によって排気装置400がエンジンカバー140の下面に取り付けられた状態を示す側面図である。図15は、図14のA−A断面矢視図であり、図16は、取付ブラケット500で保持された排気装置400を左前方斜め下側から見た斜視図である。
【0036】
上述したように、排気装置400を保持した取付ブラケット500は、エンジンカバー140の下面に固定される。具体的には、図13および図15に示すように、ブラケット本体510の取付座515がエンジンカバー140のフレーム142(補強部材142d,142e)の下面にボルトおよびナットなどの締結部品によって固定される。これによって、酸化触媒4100の略円筒状の筐体4110の延在方向、および、消音装置4200の略円筒状の筐体4210の延在方向が、ホイールローダ100の前後方向と略一致する。このようにして、取付ブラケット500は、機能の異なる2つの排気装置410,420を一体的に保持してエンジンフード140の下面に固定する。
【0037】
これにより、排気装置400は、取付ブラケット500およびエンジンカバー140のフレーム142を介して、後部車体120に立設された作動油タンク125および建屋カバー支持部材160で支持される。そのため、重量物である酸化触媒4100および消音装置4200は、十分な強度で後部車体に対して固定される。
【0038】
仮に、酸化触媒と消音装置とを一体化した排気装置を作成した場合、汎用性がなく、製造コストが上昇する。また、この場合には排気装置の長さ(軸長)が長くなってしまう。そこで、酸化触媒と消音装置とは一体化せずに別々に設置することが望ましい。また、エンジン301の上方の限られた空間に、排気装置400以外にもエアクリーナ350等を配設する必要がある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、酸化触媒4100と消音装置4200とを一体化した排気装置とはせずに、酸化触媒4100と消音装置4200とをそれぞれ別体化して(個別に)設けている。なお、本実施の形態では、第1排気装置410としての酸化触媒4100が第2排気装置420としての消音装置4200よりも高い位置に配設しているが、その理由は次のとおりである。すなわち、エンジン301側からの振動伝達を抑制するため、ターボチャージャ302と酸化触媒4100とを接続する排気配管361の蛇腹管361aの長さをある程度確保する必要がある。また、消音装置4200の方が酸化触媒4100よりも表面の温度が高くなるため、消音装置4200を酸化触媒4100よりもエンジンカバー140から離間させる必要がある。
【0040】
上述した本実施の形態のホイールローダ100では、次の作用効果を奏する。
(1) 機能が異なる酸化触媒4100と消音装置4200とを、上方から見たときに筐体4110,4210同士が左右方向で重なるように取付用ブラケット500で一体的に保持するように構成した。そして、酸化触媒4100と消音装置4200とを保持した取付用ブラケット500をエンジンカバー140の下面に取り付けるように構成した。これにより、異なる機能を有する複数の排気装置を作業機械に搭載する際の重量増や大型化を抑制できるので、たとえばエンジン室122等の限られた空間に排気装置を配設でき、作業機械の外観の変更などを最小限に抑制できるほか、作業機械の重量増や大型化を抑制できる。したがって、作業機械のコスト増を抑制できる。また、作業機械に配設する排気装置の汎用性を損なわないため、排気装置を他の作業機械へ配設できる。これにより、排気装置の調達の際に他の作業機械に配設する分とともに調達することで、一回の調達での調達数を増やせるので、調達コストを抑制できる。
【0041】
(2) 酸化触媒4100と消音装置4200とを、上方から見たときに筐体4110の前後方向に延在する中心軸と、4210の前後方向に延在する中心軸とが重ならないように取付用ブラケット500で一体的に保持するように構成した。これにより、酸化触媒4100および消音装置4200を、左方および右方から見たときに筐体4110,4210同士が上下方向で重なるように取付用ブラケット500に保持できる。したがって、酸化触媒4100および消音装置4200の配設空間を上下方向で狭めることができるので、たとえばエンジン室122等の限られた空間に排気装置を配設でき、作業機械の外観の変更などを最小限に抑制できるほか、作業機械の重量増や大型化を抑制できる。したがって、作業機械のコスト増を抑制できる。
【0042】
(3) ディーゼルエンジンであるエンジン301の排気装置400として酸化触媒4100と消音装置4200とを備えるように構成した。これにより、排気ガス中の未燃燃料等を燃焼させ、一酸化窒素を酸化させ、粒子状物質を処理でき、騒音を抑制できるので、作業機械の重量増や大型化を抑制しつつ、環境への影響を抑制できる。
【0043】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、第1排気装置410には消音機能付きの酸化触媒4100を用い、第2排気装置420には消音装置4200を用いているが、これらは一例であり、本発明はこれに限定されない。たとえば、図17に示すように、第1排気装置410には尿素SRC(Selective Catalytic Reduction)4300を用い、第2排気装置420にはDPF(Diesel Particulate Filter)4400を用いてもよい。また、たとえば、図18に示すように、第1排気装置410には酸化触媒4100を用い、第2排気装置420には尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)4300を用いてもよい。
【0044】
(2) 上述の説明では、排気装置400に対して排気ガスが、酸化触媒4100の後部で後方に向かって突出する入口4111から流入し、消音装置4200の後部上面に設けられた出口4212から排出するが、これらは一例であり、本発明はこれに限定されない。たとえば、排気装置400に対して排気ガスが、酸化触媒4100の後部側面から流入してもよい。また、たとえば、排気ガスが、消音装置4200の後部で後方に向かって突出するように構成された出口から排出するように構成してもよい。なお、排気ガスが、消音装置4200の後部で後方に向かって突出するように構成された出口から排出するように構成した場合には、この出口に対して、上方に向かって曲げられた配管を取り付けることで、排気ガスをテールパイプ171に導くように構成することが望ましい。
【0045】
(3) 上述の説明では、取付用ブラケット500に対して第1排気装置410が第2排気装置420よりも上方に取り付けられるように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、取付用ブラケット500に対して第1排気装置410が第2排気装置420よりも下方に取り付けられるように構成してもよい。
【0046】
(4) 上述の説明では、酸化触媒4100の略円筒状の筐体4110の延在方向および消音装置420の略円筒状の筐体4210の延在方向がホイールローダ100の前後方向と略一致しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、筐体4110の延在方向および筐体4210の延在方向がホイールローダ100の左右方向と略一致していてもよい。また、上述の説明では、筐体4110および筐体4210が略円筒状であったが、本発明はこれに限定されない。すなわち、たとえば、筐体4110および筐体4210の延在方向と直行する平面における断面が円形でなくてもよく、楕円形や多角形であってもよく、円や楕円、多角形の組み合わせ等であってもよい。
【0047】
(5) 上述の説明では、エンジン301がディーゼルエンジンであるが、本発明はこれに限定されず、たとえばガソリンエンジン等の他の形式の内燃機関であってもよい。
(6) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、作業機械の車体フレームと、車体フレームに搭載されるエンジンと、エンジンの上部を覆い、支柱を介して車体フレームに固定されるエンジンカバーと、筒状の外観を呈する第1の排気装置と、筒状の外観を呈し、第1の排気装置とは機能が異なる第2の排気装置と、上部保持部で第1の排気装置を保持し、下部保持部で第2の排気装置を保持してエンジンカバーの下面に取り付けるブラケットとを備え、ブラケットは、上方から見たときに第1の排気装置の延在方向と第2の排気装置の延在方向とが略平行に、かつ、上方から見たときに第1の排気装置の一部と第2の排気装置の一部とが重なり合うように第1および第2の排気装置を一体的に保持するとともに、第1および第2の排気装置をエンジンカバーの下方で固定することを特徴とする各種構造の作業機械を含むものである。
【符号の説明】
【0049】
100 ホイールローダ、120 後部車体(フレーム)、125 作動油タンク、140 エンジンカバー、141 天板、142 フレーム、160 建屋カバー支持部材、400 排気装置、500 取付用ブラケット、510 ブラケット本体、511 上側第1保持座、512 上側第2保持座、513 下側保持座、515 取付座、410 第1の排気装置(第1排気装置)、420 第2の排気装置(第2排気装置)、4100 消音機能付きの酸化触媒(酸化触媒またはDOC(Diesel Oxidation Catalyst))、4110 筐体、4200 消音装置、4210 筐体
図1
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