(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の高床車両は、道床から客室の床面までの高さが大きく、車両が非常停止した際に、乗員が客室から車外に直接出ることは困難である。そのため、乗員を安全に降車させるために、車両用非常梯子が開発されている。
【0003】
従来、この車両用非常梯子として、
図22〜24に示すように、車両110の乗降口111の下部に設けられるとともに、車両110に対して回転軸102を中心として回転可能に設けた踏台103と、該踏台103に対して支軸108を中心として上下方向に回転可能に設けた梯子104からなる車両用非常梯子101が知られている。
【0004】
この踏台103は、通常は、踏台103が車両110の側面112から突出しないように、
図22に示すように、回転軸102を中心として回転され、車両110の下部に、梯子104と共に、固定手段105により固定保持されている。
【0005】
そして、使用時に、踏台103の固定手段105を解除して、
図23に示すように、踏台103が車両110の側面112から突出するように、回転軸102を中心として、踏台103を180度回転させ、その状態で固定保持する。
【0006】
そして、梯子104を、
図24に示すように、支軸108を中心として下方に回動させて、その後、手摺107を踏台103に固定し、非常用梯子101として使用するようになっている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
[実施例1]
図1乃至
図11は、本発明の実施例1を示す。
【0016】
図1は、実施例1に係る車両用非常梯子1を設置した状態の一例を示す正面図、
図2はその一部を部分断面とした左側面図、
図3は
図1の斜視図である。
【0017】
前記車両用非常梯子1は、
図1〜3に示すように、収納箱2と、踏台3と、梯子4と、手摺5を有する。
【0018】
前記収納箱2は、
図1,2に示すように、車両10の出入口である乗降口11の下方における車両10の下部に固設されている。前記収納箱2は、
図7に示すように、その内部に、前記踏台3と手摺5を収納できる大きさに形成されている。前記収納箱2は、
図2,7に示すように、乗降口11側に設けた開口2aのみが開口する箱状に形成されている。該開口2aは、
図2に示すように、車両10の側面10aよりも外側に突出せず、
図4に示すように、踏台3が乗降口11の直下近傍に位置するように収納箱2は配置されている。以下において、乗降口11側、すなわち、
図2の右側を前A、左側を後B、
図1の右側を右C、左側を左Dとして説明する。
【0019】
前記開口2aには、開口2aの下端部を軸として、上下方向に開閉できる蓋7が設けられ、該蓋7は、締金7aにより閉状態を保持できるようになっている。
【0020】
前記収納箱2内の上部における、左右C−D両側部には、案内レール2b,2bが前後A−B方向(車体10の左右方向)に固設されている。前記踏台3は、前記案内レール2b,2bに沿って摺動可能に設けられ、通常時は、
図4〜7に示すように、収納箱2内に収納され、使用時には、
図2,8に示すように、開口2aから外側(前A側)方向に引き出し、車両10の側面10aから外側方向に所定量突出できるようになっている。前記踏台3を、車両10の側面10aから外側方向に所定量突出した際にも、踏台3の奥側部は、案内レール2b,2b等と係合し、踏台3の上面に所定の負荷が掛かっても、その状態を保持できるようになっている。
【0021】
前記左右の案内レール2b,2bには、夫々開口2a側の下部に位置して、固定ピン12が、バネ等の付勢部材により常時上方に付勢されて設けられている。また、踏台3の下面における左右両側部には、夫々、開口側(前A側)部と奥側(後B側)部に、前記固定ピン12の先端部が係合できる係合穴が設けられている。これにより、踏台3を収納箱2内に収納した位置と、開口2aから外側方向に所定量引き出した位置とを、固定ピン12によりロックできるようになっている。
【0022】
前記踏台3の上面には、
図8に示すように、前A側部に、上方が開口する第1取付穴14a,14aが所定の距離離間して2個設けられ、右C側部に、上方が開口する第2取付穴14b,14bが所定の距離離間して2個設けられ、左D側部に、上方が開口する第3取付穴14c,14cが、所定の距離離間して2個設けられている。第1取付穴14aと14aの距離と、第2取付穴14bと14bの距離と、第3取付穴14cと14cの距離は、同じに設定されている。
【0023】
前記梯子4は、所定の長さを有する一対の側枠4a,4aを有し、該側枠4a,4a間には、側枠4aに対して所定の角度となるステップ4bが所定間隔で、所定の数設けられている。前記側枠4a,4aの下端部には、長さ調節部材4f,4fが設けられており、該長さ調節部材4fを回転させることにより、側枠4aの長さが調節できるようになっている。
【0024】
前記両側枠4a,4aの上端部間には軸4cが固設され、該軸4cに対して回動可能に固定金具4d,4dが2個所定の距離離間して設けられている。
【0025】
両側枠4a,4aには、夫々、後述する梯子用手摺23を取り付けるための取付部4e,4eが2個設けられている。
【0026】
前記収納箱2の左側部には第1梯子取付部材15が設けられ、前記収納箱2の下部には第2梯子取付部材16が設けられている。
【0027】
前記第1梯子取付部材15は、上下方向に立設する支脚15aと、該支脚15aの下端に連結され、前後方向に設けられた取付部15bで構成されている。前記支脚15aの上端部は、車体10の下面に固設されている。前記取付部15bの上部には、前記梯子4の一端部を載置することが出来るようになっている。
図4,6に示すように、取付部15bの上部に梯子4を載置した状態を、ロック機構付き固定部材17により保持することが出来るようになっている。
【0028】
前記第2梯子取付部材16は、上下方向に立設する支脚16aと、該支脚16aの下端に連結され、前後方向に設けられた取付部16bで構成されている。前記支脚16aの上端部は、収納箱2の下面に固設されている。前記取付部15bと収納箱2との間には、前記梯子4を挿入できる空間20が形成されている。また、前記取付部16bの上部は、前記梯子4の他端部を載置することが出来るようになっている。
図5,6に示すように、取付部16bの上部に梯子4を載置した状態を、ロック機構付き固定部材17により保持することが出来るようになっている。
【0029】
梯子4は、通常時は、
図4〜6に示すように、梯子取付部材15,16の取付部15b,16bの上部に載置され、固定部材17により固定されている。
【0030】
前記手摺5は、踏台用第1手摺21、踏台用第2手摺22、梯子用手摺23の3種類で構成されている。
【0031】
前記踏台用第1手摺21は、1本のパイプを略U字状に曲折して形成され、その両端部を、前記踏台3の取付穴14a,14a(14b,14b又は14c,14c)に挿入し、取り外し可能に固定することが出来るようになっている。
【0032】
前記踏台用第2手摺22は、1本のパイプを曲折し、全体として略U字状で、その中間部が側方に膨らんだ形状に曲折して形成され、その両端部を、前記踏台3の取付穴14a,14a(14b,14b又は14c,14c)に挿入し、取り外し可能に固定することが出来るようになっている。
【0033】
前記梯子用手摺23は、1本のパイプを曲折して形成した持ち手部23aと、該持ち手部23aの両端部に、一端を回動可能に連結した支柱23b,23cとで構成されている。支柱23b,23cの他端は、梯子4の取付部4e,4eに取り外し可能に固定することが出来るようになっている。梯子用手摺23は、
図9に示すように、支柱23b,23cを回動させて折り畳むことができ、この折り畳んだ状態で、
図7に示すように、収納箱2における踏台3の下部収納空間19に収納することが出来るようになっている。
【0034】
踏台用手摺21,22と折り畳んだ梯子用手摺23は、通常時、
図7に示すように、収納箱2における踏台3の下部収納空間19に収納されている。
【0035】
次に、車両用非常梯子1の設置方法について説明する。
通常時は、
図4〜6に示すように、収納箱2内に踏台3と手摺5が収納され、梯子取付部材15,16の上部に梯子4が載置されている。
【0036】
この状態から、先ず、
図7に示すように、固定部材17の係合状態を解除して、梯子取付部材15,16の上部から梯子4を取り外して地面に降ろす。この固定部材17の解除は、梯子4を梯子取付部材15,16の上部に載置したままの状態で行えるので、容易に行うことが出来る。
【0037】
次に、
図7に示すように、締金7aを回動させて係合状態を解除して、蓋7を下方に開ける。
【0038】
次に、収納箱2から踏台用手摺21,22と折り畳んだ梯子用手摺23を取り出す。
次に、固定ピン12を下方に下げて係合状態を解除した後に、
図8に示すように、踏台3を収納箱2の開口2aから前方の所定の位置まで引き出す。踏台3が所定の位置に達すると、固定ピン12が付勢手段により、踏台3の奥側の係合穴に係合して、その位置が保持されるようになっている。
【0039】
次に、踏台3に対して、梯子4を取付けたい方向の端面にある取付穴14a,14a(14b,14b又は14c,14c)に、梯子4の固定金具4d,4dを挿入して取り付ける。次に、夫々の側枠4aの長さ調節部材4fを回転させて、夫々の長さ調節部材4fが地面に接するように調節する。梯子4の側枠4a,4aは、取付部4e,4e、すなわち踏台3に対して、上下方向に回動することが出来るために、地面の高さ等に影響されることなく、地面GLに側枠4a,4aの長さ調節部材4f,4fを、確実に載置することが出来る。
【0040】
踏台3の3箇所に取付穴14a,14a(14b,14b又は14c,14c)を設けたことにより、梯子4を、
図3,10に示すように、車両10の進行方向と平行で、その何れの進退方向にも載置できると共に、
図11に示すように、車両10の進行方向と直交する方向にも設置することが出来るようになっている。
【0041】
次に、梯子4を取り付けなかった取付穴14a,14a(14b,14b又は14c,14c)に踏台用手摺21,22を、
図3,10,11に示すように、取り付けるとともに、所定の形状に変形させた梯子用手摺23を、梯子4の取付部4e,4eに取り外し可能に取り付ける。
【0042】
これにより、車両用非常梯子1を車両10に設置することが出来る。
上記とは逆の操作により車両用非常梯子1を取り外し、車両10の所定の場所に収納する。
【0043】
本発明の車両用非常梯子1を設置する際は、前記従来技術の非常用梯子で求められるような力仕事が少なく、非力な女性乗務員等でも、比較的容易に車両用非常梯子1を設置することが出来る。
【0044】
前記従来技術の非常用梯子101では、客室から乗員が車外に降りる際に触れる手摺107が、通常時には車外に露出して設置されているために、手摺107が汚れてしまうが、本発明の車両用非常梯子1では、通常時は、手摺5を収納箱2内に収納することができるため、汚れが少なく、乗員が降りる際に手等が汚れることを抑制できる。
【0045】
なお、踏台3に設ける手摺として、踏台用手摺21,22の2種類用いたが、後述する実施例2に示すように、L字状の1種類の踏台用手摺のみを用いても良い。また、踏台用手摺の形状としては、踏台3の取付穴14a,14b,14cに取り外し可能であるとともに、踏台3から側方に転落することを抑制する形状であれば任意の形状とすることができる。
【0046】
また、前記梯子用手摺23の形状としては、梯子4の取付部4e,4eに取り外し可能であるとともに、梯子4から側方に転落することを抑制する形状であれば任意の形状とすることができる。また、梯子用手摺23は設けなくてもよい。
【0047】
[実施例2]
図12乃至
図18は、本発明の実施例2を示す。
【0048】
前記実施例1においては、車両用非常梯子1の収納時には、梯子4を収納箱2内に収納しないようにしたが、梯子4を収納箱31内に収納するようにしたのが本実施例2である。
【0049】
本実施例2の収納箱31は、前記実施例1の収納箱2と同様に、一対の案内レール2b,2b及び踏台3が備えられている。本実施例2の踏台3は、前記実施例1の踏台3と形状は異なるものの、同様の構造を有している。
【0050】
前記実施例1においては、左右の案内レール2b,2bに夫々固定ピン12,12を設けたが、本実施例2においては、この固定ピン12を、収納箱31の内面下部で、かつ、踏台3の左右方向の中央下部に一つのみ設けた。また、踏台3の下面における中央下部には、開口側(前A側)部と奥側(後B側)部に、前記固定ピン12の先端部が係合できる係合穴が設け、踏台3を収納箱2内に収納した位置と、開口2aから外側方向に所定量引き出した位置とを、固定ピン12によりロックできるようになっている。
【0051】
前記収納箱31の内部には、案内レール2b,2bの左右何れかの一方の側に、梯子4及び手摺5を収納できる収納空間32が形成されている。該収納空間32の左右には、
図13〜15に示すように、案内レール32a,32aが伸縮可能に設けられ、該案内レール32a,32aには、梯子取付台33が固設されている。該梯子取付台33は、通常時は、
図13,14に示すように、収納箱31内に収納され、設置時に、
図15に示すように、梯子取付台33を、収納箱31の開口部32bから外側(前A側)方向に引き出し、車両10の側面10aから外側方向に突出できるようになっている。
【0052】
梯子取付台33には、梯子4と手摺5が取り外し可能に取付けることができるようになっている。本実施例では、梯子4を梯子取付台33の上部に、手摺5を梯子取付台33の下部に、取り外し可能に取り付けるようにした。
【0053】
梯子4と手摺5は、梯子取付台33に対して取り付けた状態を、ロック機構付き固定部材35により保持することができるようになっている。
【0054】
本実施例2では、手摺5を、1個のL字状の踏台用手摺36のみで構成し、前記実施例1で用いた梯子用手摺23は用いていない。
【0055】
その他の構造は前記実施例1と同様であるため、その説明を省略する。
次に、車両用非常梯子1の設置方法について説明する。
【0056】
通常時は、
図12,13に示すように、収納箱31内に踏台3と梯子4と手摺5が収納されている。
【0057】
この状態から、先ず、
図14に示すように、締金7aを回動させて係合状態を解除して、蓋7を下方に開ける。
【0058】
次に、
図15に示すように、梯子4と手摺5が取付けられた梯子取付台33を、開口32bから外側(前A側)方向に引き出す。その後、固定部材35の係合状態を解除して、
図15に示すように、梯子取付台33の上部から梯子4を、下部から手摺5を取り外す。
【0059】
次に、前記実施例1と同様に、踏台3に、梯子4と手摺5を取付ける。本実施例2においても、前記実施例1と同様に、踏台3の3箇所に取付穴14a,14a(14b,14b又は14c,14c)を設けたことにより、梯子4を、
図16,18に示すように、車両10の進行方向と平行で、その何れの進退方向にも載置できると共に、
図17に示すように、車両10の進行方向と直交する方向にも設置することが出来るようになっている。
【0060】
これにより、車両用非常梯子1を車両10に設置することが出来る。
本実施例2においても前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0061】
更に、本実施例2では、梯子4も収納箱31内に収納したことにより、車両用非常梯子1を構成する部材は、通常時は車外に露出せず、汚れを抑えることが出来る。
【0062】
[実施例3]
図19〜21は、本発明の実施例3を示す。
【0063】
前記梯子4の両側枠4a,4aの下端部に長さ調節部材4f,4fを設けたが、この長さ調節部材4f,4fを設けず、
図19〜21に示すように、両側枠4a,4aの下端部間の中央部に、1本の支脚40を設けてもよい。
【0064】
該支脚40は、側枠4a,4aより他方の端部側に突出して設けられ、該支脚40の一方の端部は、最も他方の端部に位置するステップ4bに固設されている。また、支脚40と両側枠4a,4aは、補強板40aで連結されている。
【0065】
前記支脚40の他方の端面40bの一部を、側面から見て側枠4a,4aに対して所定の角度傾斜する平面状に形成した。なお、支脚40の他方の端面40bを曲面状に形成しても良い。
【0066】
また、本実施例3では、軸4cに対して回動可能に取付板41を設け、該取付板41には、2個の固定金具42,42が、梯子4を設置する際に踏台3の前記取付穴14a,14b,14cに嵌合できるように、前記取付板41の一方の面から突出するとともに、所定の距離離間して設けられている。
【0067】
側枠4aと取付板41との間には、波座金44が介在されており、側枠4aに対する取付板41の回動する際の抵抗を上げ、取付板41の自重による回動を抑制し、側枠4aに対する取付板41の位置を保持することが出来るとともに、側枠4aに対する取付板41の回動を手動で容易に行えるようになっている。
【0068】
その他の構造は前記実施例1,2と同様であるため、その説明を省略する。
本実施例3においても前記実施例1,2と同様の効果を奏する。
【0069】
本実施例3では、更に、前記梯子4の地面に対する設置側には1本の支脚40を設け、前記車両用非常梯子1の使用時は、前記梯子4が、前記1本の支脚40のみで地面に接するようにしたことにより、乗員が梯子4を乗降する際に、梯子4に荷重が掛かり、梯子4の下端部が、道床側に沈んだ場合にも、支脚40の端面が確実に道床と接し、前記実施例1,2の車両用非常梯子1よりも梯子4が安定し、安全に梯子4を乗降することができる。