特許第6262444号(P6262444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262444
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】防護柵支柱
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   E01F15/04 B
   E01F15/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-89359(P2013-89359)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-214415(P2014-214415A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】永石 充
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−156167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に固定されるベースプレートと、
前記ベースプレートに接合された閉断面中空状の支柱と、を備え、
前記支柱の内部において、前記ベースプレートに、補強部材が立上り方向に設けられ、
前記補強部材は、
地面に設置された前記支柱に対して外側から荷重が入力された際に、前記ベースプレートと前記支柱との接合部分における曲げ剛性を高める剛性保持部と、
前記補強部材の前記荷重方向に対向する側の高さを延伸するように形成されて、前記支柱に対する荷重を変形によって吸収し荷重による支柱本体の変形範囲を分散する荷重分散部と、を有し、
前記補強部材の前記荷重方向と反対側の端部は、前記支柱が所定の載荷位置において想定される最大荷重を受けた場合の前記支柱の座屈点になり、
前記補強部材の、前記荷重方向に対向する側の端部の高さは、所定の載荷位置に対して5分の1以下であり、
前記荷重方向と反対側の前記補強部材の端部の高さは、前記荷重方向に対向する側の端部高さの3分の1〜3分の2に設定される
ことを特徴とする防護柵支柱。
【請求項2】
前記補強部材は、
前記荷重方向と反対側の前記補強部材の端部の高さを上底とし、前記荷重方向に対向する側の前記補強部材の端部の高さを下底とした台形状であることを特徴とする請求項1に記載の防護柵支柱。
【請求項3】
前記上底と前記下底とを結ぶ斜辺には、前記補強部材が、前記支柱に対する荷重により前記下底側が変形した場合に、前記斜辺部分が座屈するように脆弱部が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の防護柵支柱。
【請求項4】
基礎に固定されるベースプレートと、
前記ベースプレートに接合された閉断面中空状の支柱と、を備え、
前記支柱の内部において、前記ベースプレートに、補強部材が立上り方向に設けられ、
前記補強部材は、
地面に設置された前記支柱に対して外側から荷重が入力された際に、前記ベースプレートと前記支柱との接合部分における曲げ剛性を高める剛性保持部と、
前記補強部材の前記荷重方向に対向する側の高さを延伸するように形成されて、前記支柱に対する荷重を変形によって吸収し荷重による支柱本体の変形範囲を分散する荷重分散部と、を有し、
前記補強部材の前記荷重方向と反対側の端部は、前記支柱が所定の載荷位置において想定される最大荷重を受けた場合の前記支柱の座屈点になり、
前記補強部材は、前記荷重方向と反対側の前記補強部材の端部の高さを上底とし、前記荷重方向に対向する側の前記補強部材の端部の高さを下底とした台形状であり、前記上底と前記下底とを結ぶ斜辺には、前記補強部材が、前記支柱に対する荷重により前記下底側が変形した場合に、前記斜辺部分が座屈するように脆弱部が設けられた
ことを特徴とする防護柵支柱。
【請求項5】
前記補強部材は、前記支柱を地面に設置した場合に前記支柱への入力が想定される荷重を受ける方向に沿って立設されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の防護柵支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路側や中央分離帯などに設けられる防護柵に用いられる防護柵支柱に係り、特に、車両の衝突等による衝撃を吸収する防護柵支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に設置されるガードレール、ガードパイプ、ガードケーブル、また橋梁に設置される高欄等(以下、これらを「防護柵等」という。)は、間隔を設けて設置された支柱に固定されている。このような支柱は、車両が衝突した際の衝撃力を吸収して車両を受け止め、乗員の安全を図る目的を有する。そのため、支柱は、所定の支持力を有する鋼管(丸形金属管や角形金属管を含む)やH形鋼によって製造され、地中に打ち込まれ又は基礎に固定されたベースプレートに溶接接合されている。
【0003】
ところで、ベースプレートに溶接接合された支柱は、車両が衝突した際に衝撃力を受けた場合、支柱とベースプレートとの溶接接合された部分(溶接部)が破断すると、支柱における衝撃エネルギーの吸収量が急激に低下してしまうことが懸念される。このように溶接部が破断するのは、支柱の変形に溶接部が追従しないことによる。このような課題に対応して、従来、衝撃力により支柱の座屈する側の下部における支柱断面を欠損させて切欠や穴を設けることにより、支柱の座屈を促進させ、結果として溶接部への荷重負担を軽減して溶接部の破断を防いだ技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−95472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術のように、支柱に穴を設けた場合、当該穴からの雨水や塵埃の浸入が考えられる。特に、雨水は、平面位置でベースプレートから穴の下端まで溜まることが考えられ、防錆上好ましくない。また、支柱に設けられた切欠や穴は、外部から視認可能で欠損した部分となるため、景観上好ましくなかった。
【0006】
一方で、従来は、支柱に設けられた穴などの断面欠損により、所定の支持力を得ることができない場合、支柱の板厚や径を大きくすることで対応していたが、このような対応はコスト高につながり、経済性が課題になっていた。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、支柱を欠損させることなく支柱とベースプレートとの間の溶接部の破断を防止し、支持力の向上と腐食の防止を図ることができる防護柵支柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の防護柵支柱では、基礎に固定されるベースプレートと、前記ベースプレートに接合された閉断面中空状の支柱と、を備え、前記支柱の内部には、前記ベースプレートと前記支柱との接合部分近傍に、補強部材が立上り方向に設けられ、前記補強部材は、地面に設置された前記支柱に対して外側から荷重が入力された際に、前記支柱の前記接合部近傍における曲げ剛性を高める剛性保持部を有し、前記補強部材の前記荷重方向と反対側の上端部位置は、前記支柱が荷重を受けた場合の前記支柱の座屈点になるように、前記剛性保持部を設けることを特徴とする。また、前記補強部材は、前記支柱を地面に設置した場合に前記支柱への入力が想定される荷重を受ける方向に沿って立設されていることを特徴とする。
【0009】
以上の態様では、閉断面中空状の支柱の内部に設けた補強部材が、剛性保持部を有することで、支柱の板厚を高めることなく容易に支持力を高めることができるとともに、内部において荷重方向と反対側の上端部を支柱の座屈点とすることができるので、支柱自体に欠損を設ける必要がない。これにより、支柱を欠損させることなく支柱とベースプレートとの間の溶接部の破断を防止し、支持力の向上と腐食の防止を図ることができる。また、板厚を高めたり、支柱径を高めなくても、支柱の支持力を高めることができるので、簡易な構成を実現でき、経済性が高い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記補強部材は、前記補強部材の前記荷重方向に対向する側の高さを延伸するように形成された荷重分散部を有し、前記荷重分散部は、前記支柱に対する荷重を、変形によって吸収し、荷重による支柱本体の変形範囲を分散するものであることを特徴とする。
【0011】
以上の態様では、荷重分散部が、支柱に載荷される荷重を支柱の長さ方向に渡って分散させることが可能となり、支柱とベースプレートとの間の溶接部の破断を防ぐことができる。また、上述のように、剛性保持部の荷重方向と反対側の上端部は、支柱の座屈点となるが、荷重方向に対向する側は荷重分散部により荷重を分散させ支柱の変形を広く分散させることで、支柱の当該座屈点における破断を防止することができる。
【0012】
本発明の他の態様では、前記補強部材の、前記荷重方向に対向する側の端部の高さは、所定の載荷位置に対して5分の1以下程度であり、前記荷重方向と反対側の前記補強部材の端部の高さは、前記荷重方向に対向する側の端部高さの3分の1〜3分の2程度に設定されることを特徴とする。
【0013】
以上の態様では、補強部材の荷重側の端部高さを高くすると、補強プレートの大型化を招き、加工性や設置時の施工容易性又は経済性において適当でない。また、補強部材の荷重側の端部高さと補強部材の反対側の端部高さを同じに、又は補強部材の荷重側の端部高さを補強部材の反対側の端部高さより高く設定すると、その高さにおいて支柱が座屈した際、支柱に破断が生じる可能性がある。これに対して本態様では、支柱の荷重側の端部高さと反対側の端部高さとを、支柱に付加する剛性と荷重分散との最適な範囲に設定することができる。これにより、補強プレートの加工性や設置時の施工容易性又は経済性を高めることが可能である。
【0014】
本発明の他の態様では、前記補強部材は、前記荷重方向と反対側の前記補強部材の端部の高さを上底とし、前記荷重方向に対向する側の前記補強部材の端部の高さを下底とした台形状であることを特徴とする。
【0015】
以上の態様では、補強部材を台形状で形成することで、剛性保持部を方形状に、荷重分散部を三角形状に形成することができるので、補強部材の形成がシンプルで容易に製作することができる。
【0016】
本発明の他の態様では、前記上底と前記下底とを結ぶ斜辺には、前記補強部材が、前記支柱に対する荷重により前記下底側が変形した場合に、前記斜辺部分が座屈するように脆弱部が設けられたことを特徴とする。
【0017】
以上の態様では、荷重分散部の形状に改良を施して、補強プレートに脆弱部分を設けることで、支柱に載荷される荷重を分散させる効果が高まる。
【発明の効果】
【0018】
以上のような本発明によれば、支柱を欠損させることなく支柱とベースプレートとの間の溶接部の破断を防止し、支持力の向上と腐食の防止を図ることができる防護柵支柱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る防護柵支柱を示す側面模式図(a)及び平面模式図(b)。
図2】本発明の実施形態に係る防護柵支柱の補強プレートを示す模式図。
図3】本発明の実施形態の実験装置を示す模式図。
図4】本発明の実施形態に係る補強プレートの形状パターンを示す模式図。
図5図4に示す補強プレートの形状パターンに対して行った荷重の載荷実験の結果を示すグラフ図。
図6】本発明の他の実施形態に係る防護柵支柱の補強プレートを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る防護柵支柱について図面を参照して説明する。
[1.本実施形態]
[1−1.防護柵支柱の概略構成]
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)に係る防護柵支柱の構成について説明する。図1は、本実施形態の防護柵支柱1の全体構成を示す側面模式図(a)及び平断面図(b)である。
【0021】
図1(a)に示すように、本実施形態の防護柵支柱1は、基礎に固定されるベースプレート2と、ベースプレート2に接合された閉断面中空状の支柱3と、から構成される。
【0022】
なお、防護柵支柱の一例として、図1(a)に示すように、防護柵支柱1は、防護柵支柱1を道路に沿って一定間隔で複数本設置し、支柱3の高さ方向で中央部分と、上端部分とに、取付部材となるブラケットBr1,Br2を介して横梁部材B1,B2を支持することで、防護柵として機能する。なお、この横梁部材B1,B2と、ブラケットBr1,Br2は、本発明に特有のものではなく、公知の部材を用いることにより構成可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0023】
ベースプレート2は、図1(a)及び(b)に示すように、方形の鋼板からなり、所定の位置(ここでは四隅)に貫通穴21a〜21dを有する。この貫通穴21a〜21dを介してアンカーボルトBoにより地面に設置したコンクリート基礎や鋼製地覆等の取付対象Gに固定されるものである。なお、図示はしないが、このベースプレート2は、地面に設置後、表面をコンクリートやアスファルトによって覆うことで、路面上から露出しないように施工する場合もある。
【0024】
支柱3は、ベースプレート2に対して、路面への設置前に溶接により接合されている。支柱3は、鋼板により形成された断面が円形の筒状である。支柱3の支柱径や支柱を構成する鋼板の板厚は、防護柵支柱1が設置される道路において要求される支持力を考慮して設定される。
【0025】
支柱3は、また、内部のベースプレート2と支柱3との接合部分近傍に補強部材としての補強プレート31を立上り方向に備える。この補強プレート31は、支柱3を取付対象Gに設置した場合に、支柱3を地面に設置した場合に支柱3への入力が想定される荷重を受ける方向に沿って立設されている。
【0026】
この「支柱に入力されると想定される荷重を受ける方向」とは、支柱3に対して車両等の障害物が衝突する際に入力すると想定される荷重に対向する方向を意味し、例えば、支柱が車道の側方に立設される場合には、車道の延在方向に対して直交する方向や交差する方向をいう。また「荷重を受ける方向に沿って立設」とは、補強部材31がプレート状である場合には、平面視した長手方向が荷重を受ける方向に沿って立設されることを意味し、補強部材31が平面視して多角形、例えば三角形状をなす場合には、底辺を道路側に配置し、その頂点と底辺上の一点とを結ぶ線が荷重を受ける方向に沿って立設されることを意味する。
【0027】
すなわち、図1(a)及び(b)に矢印で荷重方向を示すように、この荷重方向に沿って、補強プレート31の面が向けられて設置されている。これを防護柵支柱1が路面に設置された状態でいえば、車道における車両の進行方向と直交する方向に向けて補強プレート31が設けられていることになる。
【0028】
ここで、この補強プレート31の設置方法は、ベースプレート2に対して、支柱3を溶接接合する前に、ベースプレート2上に、又は支柱3の中空管内の最下部に、溶接接合し、その上で、ベースプレート2に支柱3を接合する手順で行う。
【0029】
[1−2.補強プレートの詳細な構成]
補強プレート31は、図2(a)に示すように、支柱3とベースプレート2との接合部X近傍において、支柱3の曲げ剛性に作用する剛性保持部32と、補強プレート31の荷重方向に対向する側の高さを延伸するように形成された荷重分散部33と、から形成される。すなわち、剛性保持部32は、補強プレート31の下方に形成される略方形部分であり、荷重分散部33は、剛性保持部32の上方に形成される略三角形部分である。言い換えれば、補強プレート31は、荷重方向と反対側の端部の高さを上底とし、荷重方向に対向する側の端部の高さを下底とした台形状で形成される。
【0030】
なお、剛性保持部32と荷重分散部33とは、補強プレート31を機能的に分割して捉えたものであり、補強プレート31は、一枚の鋼板により一体に構成するのが好ましいが、剛性保持部32と荷重分散部33とを分割して形成し、溶接等により組み合わせることも可能である。
【0031】
上述の通り、剛性保持部32は、支柱3とベースプレート2との接合部X近傍における曲げ剛性を高める部分(域)である。この場合、剛性保持部32の荷重側と反対側の上端部分が、支柱3が荷重を受けて変位した場合の座屈点Nとなる。
【0032】
一方、荷重分散部33は、支柱3に対する荷重を変形によって吸収し、荷重による支柱3本体の変形範囲を分散するものである。
【0033】
ここで、補強プレート31の荷重方向に対向する側の端部の高さH及び反対側の端部の高さhは、設定される車両の衝突による衝撃力に対して、支柱3が良好に衝撃エネルギーを吸収して座屈するような構造設計によって求められている。
【0034】
これを一般化すると、図2(b)に示すように、補強プレート31の荷重方向に対向する側の端部の高さHは、所定の載荷位置L(図1(a)参照)に対して5分の1以下程度で設定される。また、この補強プレート31の荷重方向と反対側の端部の高さhは、荷重方向に対向する側の端部の高さHに対して、3分の1〜3分の2程度に設定されるのが好ましい。なお、プレートの板厚は、衝撃エネルギーの吸収能率に影響するので、設定される車両の衝突による衝撃力に応じて適宜調整することが可能である。
【0035】
[1−3.実験例]
以上のような構成の防護柵支柱1において、支柱3の内部に設置される補強プレート31の形状を種々変化させて、支柱3の所定の位置を載荷位置として荷重を掛け、その際の支柱3の変位量を測定してグラフにした。
【0036】
(実験装置:図3
実験装置の例を、図3に示す。本実験例は、図3に示すように、所定の架台Kに、上述した構成からなるベースプレート2に固定された支柱3(径114.3、板厚4.5mm)を設置し、この支柱3と対向した架台K上の位置に、反力支柱Pを設置した。
【0037】
また、この反力支柱Pに油圧ジャッキJの軸を水平方向に向けて取り付け、この油圧ジャッキの支柱3に対して支柱3に水平荷重を載荷する支柱保持部材Sを設けている。油圧ジャッキJと支柱保持部材Sとの間には、油圧ジャッキJにより載荷される荷重を検知するセンサとしてロードセルRが設けられる。
【0038】
支柱3を挟んで、反力支柱Pと対向する位置には、油圧ジャッキJによる載荷位置と同じ高さに、変位計Mが設けられる。この変位計Mは、支柱3に荷重が付加されることによって、剛性又は塑性変形する支柱3の変位量を計測するものである。また、ロードセルRと変位計Mからの出力値は、データロガーDに入力されるとともに、この結果がコンピュータCに入力される。
【0039】
ここで、本実験において、支柱3に対する荷重の載荷位置は、図3に示すように架台K上から800mmの位置に設定される。これは、社団法人日本道路協会発行の「防護柵の設置基準・同解説」(平成21年6月10日第6刷)において指定される基準に則ったものである。
【0040】
(実験パターン:図4
以上のような実験装置を用いて、図4(a)〜(e)に示すような補強プレート31の形状及び高さに変化を持たせたパターン(a)〜(e)について、荷重載荷実験を行った。
【0041】
図4(a)に示すパターン(a)は、補強プレート31が、方形状に形成される、本実施形態における剛性保持部32のみから形成される例である。具体的には、荷重方向に対向する側の高さと、荷重方向と反対側の端部の高さとを、ともに73mmとした例である。なお、補強プレート31の支柱3直径方向の長さは、支柱3の直径によって決定され、本態様では図4(a)〜(e)に共通して105mmである。
【0042】
図4(b)に示すパターン(b)は、パターン(a)に改良を加えたものである。具体的には、補強プレート31が、台形状に形成され、剛性保持部32と荷重分散部33とから形成される例であり、荷重方向に対向する側の高さを73mmとし、荷重方向と反対側の端部の高さを23mmとした例である。
【0043】
図4(c)に示すパターン(c)も、パターン(a)同様に補強プレート31が方形状に形成される。すなわち、本実施形態における剛性保持部32のみから形成される例である。より具体的には、荷重方向に対向する側の高さと、荷重方向と反対側の端部の高さとを、ともに148mmとした例である。
【0044】
図4(d)に示すパターン(d)は、パターン(c)に改良を加えたものである。具体的には、補強プレート31が、台形状に形成され、剛性保持部32と荷重分散部33とから形成される例であり、荷重方向に対向する側の高さは148mmで、荷重方向と反対側の端部の高さを93mmとした例である。
【0045】
図4(e)に示すパターン(e)は、パターン(d)にさらに改良を加えたものである。具体的には、補強プレート31が、台形状に形成され、剛性保持部32と荷重分散部33とから形成される例であり、荷重方向に対向する側の高さを148mmとし、荷重方向と反対側の端部の高さを43mmとした例である。
【0046】
(実験結果:図5
図4(a)〜(e)に示すような補強プレート31の形状及び高さに変化を持たせたパターン(a)〜(e)で行った実験の結果について説明するとともに、当該実験における各パターンの支柱3に対する荷重と当該荷重に対する変位量との推移を、図5にグラフとして示す。なお、図5のグラフにおいて、各折れ線グラフの白抜き丸印は、各パターンにおける最大支持力(Pmax)を示し、破線、一点鎖線、二点鎖線等で示す線は、塑性域での所定の変位量Qまでにおける極限支持力(Pw)を示している。
【0047】
(パターン(a))
パターン(a)(荷重側高さ73mm,反対側高さ73mm)では、ベースプレート2と支柱3との接合部分に破断は生じなかった。一方、支柱3内面と補強プレート31の反対側の端部が接する位置が、支柱3の座屈点になり、この座屈点において支柱3は破断した。図5の(a)に示すように、変位量の上昇に伴って、支持力の低下が見られるものの、支柱3が、補強プレート31の存在により、載荷された荷重に対して保持力を維持していることを見ることができる。
【0048】
(パターン(b))
パターン(b)(荷重側高さ73mm,反対側高さ23mm)では、ベースプレート2と支柱3との接合部分に破断は生じず、支柱3内面と補強プレート31の反対側の端部が接する位置が、支柱3の座屈点になるが、この座屈点においても支柱3は破断しなかった。一方、支柱3の座屈を境にして、支持力の低下が見られるが、パターン(a)と同様の最大支持力及び極限支持力を示しつつ、パターン(a)に比較して低下の度合は緩やかであり、支柱3が補強プレート31の存在により載荷された荷重に対して保持力を維持していることが見ることができる。
【0049】
(パターン(c))
パターン(c)(荷重側高さ148mm,反対側高さ148mm)においては、図5の(c)に見られるように、パターン(a)及び(b)、(d)及び(e)に比較して、最大支持力及び極限支持力が向上していることがわかる。また、ベースプレート2と支柱3との接合部分に破断は生じない。しかし、支柱3内面と補強プレート31の反対側の端部が接する位置が、支柱3の座屈点になり、この座屈点において支柱3は破断した。図5の(b)に示すように、変位量の上昇に伴って、支持力の低下が見られるものの、支柱3が、補強プレート31の存在により、載荷された荷重に対して保持力を維持していることを見ることができる。
【0050】
(パターン(d))
パターン(d)(荷重側高さ148mm,反対側高さ93mm)では、最大支持力及び極限支持力が、パターン(c)に次いで高い値を示している。一方、ベースプレート2と支柱3との接合部分に破断は生じず、また、支柱3内面と補強プレート31の反対側の端部が接する位置が、支柱3の座屈点になるが、この座屈点においても支柱3は破断しなかった。変位量の上昇に伴って、支持力の低下が見られるが、低下の度合は緩やかであり、支柱3が補強プレート31の存在により載荷された荷重に対して保持力を維持していることが見ることができる。
【0051】
(パターン(e))
パターン(e)(荷重側高さ148mm,反対側高さ43mm)では、最大支持力及び極限支持力が、パターン(c)及び(d)に次いで高い値を示している。一方、ベースプレート2と支柱3との接合部分に破断は生じず、また、支柱3内面と補強プレート31の反対側の端部が接する位置が、支柱3の座屈点になるが、この座屈点においても支柱3は破断しなかった。変位量の上昇に伴って、他のパターンに比較して低下の度合は緩やかであり、変位量が上昇しても支持力を維持していることがわかる。
【0052】
(実験結果の考察)
以上示した実験の結果を以下にまとめる。補強プレート31を、剛性保持部32の高さを高く取った構成のパターン(c)及び(d)では、最大支持力(Pmax)が高く、この点から剛性保持部32を設けることにより、支柱3の剛性が向上し、荷重支持力の上昇が見込めることがわかる。
【0053】
一方で、補強プレート31を、剛性保持部32のみで形成した方形状のパターン(a)及び(c)と、このパターン(a)及び(c)を改良して、荷重分散部33を設けたパターン(b)、(d)及び(e)とを比較すると明らかなとおり、支柱3の座屈後の支持力の低下が緩やかであり、荷重分散部33の変形によって荷重を吸収し、荷重による支柱本体の変形範囲を分散していることがわかる。
【0054】
さらには、荷重側高さを高く、反対側高さを低く取ったパターン(e)においては、最大支持力(Pmax)は最大とはならないが、支柱3の座屈後における支持力の低下が止まり、支持力を維持していることがわかる。このことから、このパターン(e)が、最も荷重分散部33の変形によって荷重を吸収し、荷重による支柱本体の変形範囲を分散していることがわかる。なお、上述のように、最大支持力は、支柱径や支柱を構成する板厚及び補強プレートの板厚の変更により上昇させることができるから、パターン(e)においても、支柱径や支柱又は補強プレートの板厚を向上させることで、パターン(c)における最大支持力を実現することは可能である。
【0055】
[1−4.効果]
以上のような本実施形態の防護柵支柱1によれば、閉断面中空状の支柱3の内部に設けた補強プレート31が、剛性保持部32を有することで、支柱3の板厚を高めることなく容易に剛性を高めることができる。また、支柱3の内部において荷重方向と反対側の上端部を支柱3の座屈点とすることができるので、支柱3自体に欠損を設ける必要がない。
【0056】
これにより、支柱3を欠損させることなく支柱3とベースプレート2との間の溶接部の破断を防止し、支持力の向上と腐食の防止を図ることができる。また、支柱3の板厚を高めたり、支柱径を高めなくても、支柱3の剛性を高めることができるので、簡易な構成を実現でき経済性が高い。
【0057】
また、荷重分散部33は、支柱3に載荷される荷重を支柱3の長さ方向に渡って分散させることができるので、この荷重分散部33によっても、支柱3とベースプレート2との間の溶接部の破断を防ぐ効果を持たせることができる。また、剛性保持部32の荷重方向と反対側の上端部は、支柱の座屈点となるが、荷重分散部33により、荷重を分散させ支柱3の変形を広く分散させることで、支柱3の当該座屈点における破断を防止することができる。
【0058】
また、補強プレート31の荷重側の端部高さHを高くすると、補強プレート31の大型化を招き、加工性や設置時の施工容易性又は経済性において適当でない。また、補強プレート31の反対側の端部高さhを高く設定すると、その高さhにおいて支柱3が座屈した際、支柱3に破断が生じる可能性がある。
【0059】
これに対して本実施形態では、支柱3の荷重側の端部高さHと反対側の端部高さhとを、支柱3に付加する剛性と荷重分散との最適な範囲に設定している。これにより、補強プレート31の加工性や設置時の施工容易性又は経済性を高めることが可能である。
【0060】
本実施形態ではまた、補強プレート31を台形状で形成することで、剛性保持部32を方形状に、荷重分散部33を三角形状に形成することができるので、補強プレート31の形成がシンプルで容易に作製することができる。
【0061】
[2.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態において示した態様に限られず、例えば、次に示すような態様も包含する。例えば、上記実施形態において補強プレートを、剛性保持部と荷重分散部とから構成し、荷重分散部は、方形の剛性保持部上に形成された略三角形状とした。しかしながら、本発明では、この荷重分散部の形状は、このような例に限られず、図7に示すような態様も包含する。
【0062】
図6(a)に示す補強プレート31aは、上記実施形態における荷重分散部33の三角形状の斜辺に当たる部分を湾曲させた形状である。また、同図(b)は、上記実施形態における荷重分散部33の三角形状の斜辺に当たる部分の一部に窪みを設け、荷重分散部33bに対する荷重を受けて座屈させる脆弱部34bを設けた形状である。さらに、同図(c)は、荷重分散部33cとして、側面視L字型に形成したものである。
【0063】
以上のような補強プレート31a〜31cによれば、荷重分散部33a〜33cの形状に改良を施して、補強プレートに脆弱部分を設けることで、支柱3に載荷される荷重を分散させる効果が高まる。
【0064】
また、上記実施形態では、閉断面中空状の支柱の一例として、円筒形の支柱3を示したが、本発明は、このような態様に限られず、支柱を四角柱やその他の多角柱形状によって形成することも可能である。例えば、四角柱であれば、補強プレートを中央部分に一枚設ける態様が通常であるが、剛性と荷重分散とを高めるには、等間隔で2枚やそれ以上の枚数の補強プレートを設けることも可能である。
【0065】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、公知技術等を参酌して、本発明の目的を逸脱しない範囲において適宜構成に変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 防護柵支柱
2 ベースプレート
21a〜21d 貫通穴
3 支柱
31,31a〜31c プレート
32 剛性保持部
33,33a〜33c 荷重分散部
34b 脆弱部
B,B1,B2 横梁部材
Bo アンカーボルト
C コンピュータ
D データロガー
G 取付対象
J ジャッキ
K 架台
M 変位計
N 座屈点
P 反力支柱
R ロードセル
S 支柱保持部材
X 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6