(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持脚のうち、前記シートクッションに取り付けられる上端側は、前記支持ベースに連結される下端側よりもシート前方に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
前記ベースカバーにおいて、前記脚ガイド部、及び前記脚規制部のうち、少なくとも一方の前記支持ベース側の面には、補強リブが形成されていることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の車両用シート。
前記ベースカバーは、前記シートクッション側の面において、着座可能状態と収納状態との間で移動する前記シートバック及び前記シートクッションの少なくとも一方が接触する部分にシート摺動部を備え、
該シート摺動部は、前記ベースカバーよりも摩擦係数が低いことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような、シート本体を収納フロアに収納可能なシートでは、シート本体を設置する車体フロア面だけでなく、収納フロア面にもシートバックを回転可能に支持するための脚部材や、保持溝等の構成品を取り付けており、シート本体を収納するために複雑な収納構造となっていた。
そのため、シンプルな構造で、収納フロアに収納可能な車両用シートが望まれていた。また、広い収納スペースを確保可能な車両用シートが望まれていた。
【0006】
また、特許文献1のようなシートでは、シートクッションを支持する脚部材が、シートクッションと収納フロアとの間で連結されるために長尺な部材となっていた。
そのため、着座可能状態とチップアップ状態との間でシート本体を切り替える際に、脚部材を保持溝から着脱させたり、装着させたりする操作が必要となるが、脚部材の全長が長いことで、脚部材の前後方向の振れ幅が大きくなり、脚部材を保持溝に装着させる操作が困難であった。
そこで、着座可能状態から切り替え操作が容易な車両用シートが望まれていた。
【0007】
さらに、特許文献1のようなシートでは、外部から受ける衝撃等から保護することを目的として、通常、収納構造を構成する取り付け軸や保持溝等を上方から覆う樹脂製のカバー部材が取り付けられるが、このカバー部材を利用して着座可能状態から切り替え操作を容易にするような配慮はなされていなかった。
そのため、収納構造の構成品を上方から覆うカバー部材を利用して、着座可能状態から切り替え操作が容易な車両用シートが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シンプルな構造で、収納フロアに収納可能な車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、収納フロア面に収納構造の構成品を配置することなく、広い収納スペースを確保可能な車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、着座可能状態から切り替え操作が容易な車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、シートバック、及び該シートバックに連結されたシートクッション
を収納可能な車両用シートであって
、車体フロアに設けられ、前記シートクッションの下方に配置されて前記シートバックの下端側が回動可能に連結される支持ベースと、上端側が前記シートクッションに取り付けられ、下端側が前記支持ベースに連結される支持脚と、前記支持ベースに取り付けられ、前記支持脚の下端側を着脱可能に保持する脚保持部材と、前記支持ベースを上方から覆うベースカバーと、を備え、前記脚保持部材は、前記ベースカバーのうち、前記支持ベースを上方から覆っている部分の前端部よりもシート後方に配置されていること、により解決される。
【0010】
上記構成により、車体フロア側に設けられ、シートバックを回動可能に支持する支持ベースと、シートクッションを支持する支持脚と、支持ベースに取り付けられ、支持脚の下端側を着脱可能に保持する脚保持部材と、支持ベースを上方から覆うベースカバーと、を備え、収納フロアには一切構成品を設けないシンプルな構造によって、シート本体を構成するシートバック及びシートクッションを収納フロアに収納可能な車両用シートを提供することができる。
特に、支持脚を保持する脚保持部材が、支持ベースを上方から覆うベースカバーの前端部よりもシート後方に配置されているため、支持脚及び脚保持部材が、支持ベース及びベースカバーよりもシート前方に突出しない配置となるため、シート前方側に広いスペースを確保可能となる。
また、収納構造の構成品となる支持ベース、支持脚、脚保持部材、及びベースカバーを車体フロア側に全て配置するため、収納フロアに広い収納スペースを確保可能となる。
また、脚保持部材が収納フロアではなく、車体フロア側に配置されているため、結果として、支持脚の全長を小さくできる。支持脚の全長が小さい分だけ、支持脚の前後方向の振れ幅が小さくなることから、支持脚が脚保持部材に保持され易くなる。従って、着座可能状態から切り替え操作が容易な車両用シートとなる。
【0011】
このとき、前記シートバックは、前記支持ベースに対して、前記シートクッションを前記
車体フロアよりも低位置に形成された収納フロア側へ移動させるように回転可能であって、前記支持脚は、前記シートクッションの移動に伴って、該シートクッションに対して回転し、前記脚保持部材から離脱可能であって、前記ベースカバーは、離脱した前記支持脚を前記シートクッション側に収納させるようにガイドする脚ガイド部を備え、該脚ガイド部は、前記支持脚に対して、前記シートクッションが移動する側に配置されていると良い。
上記構成により、ベースカバーの脚ガイド部が、支持脚をシートクッション側に収納させるようにガイドするため、着座可能状態から収納状態への切り替え操作が容易になる。
また、支持脚がシートクッション側に収納されるため、シート本体が収納フロアにコンパクトに収納されることになる。
【0012】
このとき、前記支持脚のうち、前記シートクッションに取り付けられる上端側は、前記支持ベースに連結される下端側よりもシート前方に配置されると良い。
上記構成により、支持脚の上端側が下端側よりもシート前方に配置されることで、支持脚がシート前方に向かって上方傾斜する配置となるため、支持脚がシートクッション側に収納回転され易い配置となる。
また、シートクッションの下方において、支持脚の下端側を保持する脚保持部材が比較的シート後方に配置されることになるため、脚保持部材及び支持脚のシート前方側にスペースを確保することができ、着座者が比較的自由に足を曲げたり伸ばしたりできるようになる。また、上下方向においてシートの小型化が可能となる。
【0013】
このとき、前記脚ガイド部は、前記ベースカバーの上面から上方に突出してなり、該ベースカバーと一体形成されていると良い。
上記構成により、ベースカバーとガイド部とが一体物となるため、部品点数を削減することができる。
【0014】
このとき、前記脚ガイド部は、前記ベースカバー外表面から、前記シートクッションが移動する側に張り出していると良い。
上記構成により、ベースカバーの脚ガイド部が、シートクッションの移動方向において支持脚と当接し易くなり、支持脚を一層ガイドし易くなる。
【0015】
このとき、前記収納フロアは、前記車体フロアよりもシート前方に形成され、前記ベースカバーは、前記脚保持部材よりもシート後方に形成され、前記支持脚が前記脚保持部材よりもシート後方に移動することを規制する脚規制部を備えると良い。
上記構成により、ベースカバーの脚規制部が支持脚の移動を規制するため、例えば、収納状態から着座可能状態へ復帰させるときに、支持脚がガイドされて脚保持部材に保持され易くなる。
【0016】
このとき、前記脚規制部は、前記ベースカバーと一体形成されていると良い。
上記構成により、ベースカバーと脚規制部とが一体物となるため、部品点数を削減することができる。
【0017】
このとき、前記脚規制部は、前記ベースカバーの上面から上方に突出する突出部を備えると良い。
上記構成により、ベースカバーの脚規制部が、上下方向において支持脚の移動を一層規制し易くなるため、収納状態から着座可能状態へ復帰させるときに、支持脚がガイドされて脚保持部材に一層保持され易くなる。
【0018】
このとき、前記脚規制部の前記突出部は、シート前方に張り出していると良い。
上記構成により、脚規制部が、シート前後方向において支持脚の移動を一層規制し易くなるため、支持脚がガイドされて脚保持部材に一層保持され易くなる。
【0019】
このとき、前記脚規制部は、シート幅方向において前記脚ガイド部と重なる位置に配置される。
上記構成により、脚規制部と脚ガイド部とをコンパクトに配置できる。
【0020】
このとき、前記ベースカバーにおいて、前記脚ガイド部、及び前記脚規制部のうち、少なくとも一方の前記支持ベース側の面には、補強リブが形成されていると良い。
上記構成により、ベースカバーのうち、脚ガイド部、及び脚規制部を備えた部分において支持剛性が向上する。
【0021】
このとき、前記ベースカバーは、着座可能状態のときに、前記支持脚の少なくとも下端側を収容する脚収容凹部を備え、該脚収容凹部と前記脚規制部とが、シート前後方向において連続して形成されていると良い。
上記構成により、ベースカバーの脚規制部が、脚収容凹部に収容される支持脚の移動を一層規制し易くなるため、支持脚が脚収容凹部に設けられる脚保持部材に一層保持され易くなる。
【0022】
このとき、前記支持ベースに取り付けられ、車両の後方衝突時に前記支持脚の下端側を前記脚保持部材に保持された状態でロックする慣性ロック装置を備え、該慣性ロック装置は、シート前後方向において前記脚保持部材と重なる位置に配置され、前記脚収容凹部は、前記脚保持部材と前記慣性ロック装置との間のシート幅方向の距離よりも幅広に形成されていると良い。
上記構成により、ベースカバーの脚収容凹部が、シート幅方向において比較的幅広に形成されるため、支持脚を収容し易くなる。
【0023】
このとき、前記車体フロアに固定され、シート前後方向に延びる左右のロアレールと、該ロアレールに沿って摺動可能に支持される左右のアッパレールと、を備え、前記支持ベースは、前記左右のアッパレールの上方に取り付けられ、前記脚保持部材は、シート幅方向において前記左右のアッパレールの間に配置されると良い。
また、前記ベースカバーは、シート前方側からシート後方側へ向かって上方傾斜する左右の傾斜部を備え、該傾斜部は、左右の前記アッパレールの前端側の上方に配置されると良い。
上記構成により、ベースカバーは、支持ベース、及び支持ベースの下方に取り付けられるアッパレールを保護するように取り付けられることになる。特に、ベースカバーのうち、アッパレール前端側の上方を保護する部分に傾斜部を設けることで、ベースカバーのコンパクト化を図ることができる。
【0024】
このとき、前記支持ベースには、前記シートバックの回動軸となるバック回動軸が取り付けられ、前記ベースカバーは、前記バック回動軸が取り付けられた部分よりもシート前方に配置される前方カバー部と、前記バック回動軸が取り付けられた部分よりもシート後方前方に配置される後方カバー部と、を備え、前記前方カバー部と、前記後
方カバー
部とが分割可能であると良い。
上記構成により、ベースカバーは、バック回動軸を境にして前方カバーと後方カバーとに分割可能であるため、前方カバー又は後方カバーの一方を取り外しただけで、バック回動軸の組み付けを外部から確認できるようになる。
【0025】
このとき、前記ベースカバーは、前記シートクッション側の面において、着座可能状態と収納状態との間で移動する前記シートバック及び前記シートクッションの少なくとも一方が接触する部分にシート摺動部を備え、該シート摺動部は、前記ベースカバーよりも摩擦係数が低いと良い。
上記構成により、シートバック及びシートクッションの少なくとも一方と、ベースカバーのシート摺動部とが接触したときに、互いに損傷を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によれば、車体フロア側に設けられ、シートバックを回動可能に支持する支持ベースと、シートクッションを支持する支持脚と、支持ベースに取り付けられ、支持脚の下端側を着脱可能に保持する脚保持部材と、支持ベースを上方から覆うベースカバーと、を備え、収納フロアには一切構成品を設けないシンプルな構造によって、シート本体を構成するシートバック及びシートクッションを収納フロアに収納可能な車両用シートを提供することができる。
特に、支持脚を保持する脚保持部材が、支持ベースを上方から覆うベースカバーの前端部よりもシート後方に配置されているため、支持脚及び脚保持部材が、支持ベース及びベースカバーよりもシート前方に突出しない配置となるため、シート前方側に広いスペースを確保可能となる。
また、収納構造の構成品となる支持ベース、支持脚、脚保持部材、及びベースカバーを車体フロア側に全て配置するため、収納フロアに広い収納スペースを確保可能となる。
また、脚保持部材が収納フロアではなく、車体フロア側に配置されているため、結果として、支持脚の全長を小さくできる。支持脚の全長が小さい分だけ、支持脚の前後方向の振れ幅が小さくなることから、支持脚が脚保持部材に保持され易くなる。従って、着座可能状態から切り替え操作が容易な車両用シートとなる。
【0027】
請求項2の発明によれば、ベースカバーの脚ガイド部が、支持脚をシートクッション側に収納させるようにガイドするため、着座可能状態から収納状態への切り替え操作が容易になる。また、支持脚がシートクッション側に収納されるため、シート本体が収納フロアにコンパクトに収納されることになる。
請求項3の発明によれば、支持脚の上端側が下端側よりもシート前方に配置されることで、支持脚がシート前方に向かって上方傾斜する配置となるため、支持脚がシートクッション側に収納回転され易い配置となる。
また、シートクッションの下方において、支持脚の下端側を保持する脚保持部材が比較的シート後方に配置されることになるため、脚保持部材及び支持脚のシート前方側にスペースを確保することができ、着座者が比較的自由に足を曲げたり伸ばしたりできるようになる。また、上下方向においてシートの小型化が可能となる。
請求項4の発明によれば、ベースカバーとガイド部とが一体物となるため、部品点数を削減することができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、ベースカバーの脚ガイド部が、シートクッションの移動方向において支持脚と当接し易くなり、支持脚を一層ガイドし易くなる。
請求項6の発明によれば、ベースカバーの脚規制部が支持脚の移動を規制するため、例えば、収納状態から着座可能状態へ復帰させるときに、支持脚がガイドされて脚保持部材に保持され易くなる。
請求項7の発明によれば、ベースカバーと脚規制部とが一体物となるため、部品点数を削減することができる。
【0029】
請求項8の発明によれば、ベースカバーの脚規制部が、上下方向において支持脚の移動を一層規制し易くなるため、収納状態から着座可能状態へ復帰させるときに、支持脚がガイドされて脚保持部材に一層保持され易くなる。
請求項9の発明によれば、脚規制部が、シート前後方向において支持脚の移動を一層規制し易くなるため、支持脚がガイドされて脚保持部材に一層保持され易くなる。
請求項10の発明によれば、脚規制部と脚ガイド部とをコンパクトに配置できる。
【0030】
請求項11の発明によれば、ベースカバーのうち、脚ガイド部、及び脚規制部を備えた部分において支持剛性が向上する。
請求項12の発明によれば、ベースカバーの脚規制部が、脚収容凹部に収容される支持脚の移動を一層規制し易くなるため、支持脚が脚収容凹部に設けられる脚保持部材に一層保持され易くなる。
請求項13の発明によれば、ベースカバーの脚収容凹部が、シート幅方向において比較的幅広に形成されるため、支持脚を収容し易くなる。
【0031】
請求項14、15の発明によれば、ベースカバーは、支持ベース、及び支持ベースの下方に取り付けられるアッパレールを保護するように取り付けられることになる。特に、ベースカバーのうち、アッパレール前端側の上方を保護する部分に傾斜部を設けることで、ベースカバーのコンパクト化を図ることができる。
請求項16の発明によれば、ベースカバーは、バック回動軸を境にして前方カバーと後方カバーとに分割可能であるため、前方カバー又は後方カバーの一方を取り外しただけで、バック回動軸の組み付けを外部から確認できるようになる。
請求項17の発明によれば、シートバック及びシートクッションの少なくとも一方と、ベースカバーのシート摺動部とが接触したときに、互いに損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】車両用シートの骨格となるシートフレームの斜視図である。
【
図3】シートフレームの斜視図であって部分拡大図である。
【
図4】車両用シートの支持ベースを保護するベースカバーの斜視図である。
【
図5】ベースカバーの別の角度から見た斜視図である。
【
図7】車両用シートの側面図であって、着座可能状態から、収納状態へ移動する動作を説明する図である。
【
図8】車両用シートの側面図であって、収納状態へ移動する動作を説明する図である。
【
図9】車両用シートの側面図であって、収納状態から、チップアップ状態へ移動する動作を説明する図である。
【
図10】車両用シートの側面図であって、チップアップ状態から、着座可能状態へ復帰する動作を説明する図である。
【0033】
本実施形態は、シート本体を収納フロアに収納可能な車両用シートであって、車体フロア側に取り付けられ、シートバックを支持する支持ベースを備え、シートバックは、支持ベースに取り付けられたバック回動軸を中心としてシートクッションを収納フロア側へ移動させるように回転可能であって、支持ベースには、シートクッションを支持する支持脚の下端を着脱可能に保持する脚保持部材が取り付けられており、支持ベースを覆うベースカバーの形状を利用してシート本体の切り替え操作を容易にしたことを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0034】
本実施形態の車両用シートSは、例えば車両の後部座席に相当するリアシートである。なお、車両前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートとしても利用可能である。
車両用シートSは、
図1に示すように、シートバック1と、シートクッション2と、ヘッドレスト3とを備えるシート本体と、
図2に示すように、車体フロアに取り付けられ、シート本体を前後方向に移動可能な状態で支持する左右のレール装置4と、シート本体とレール装置4の間に取り付けられ、シートクッション2を支持する支持脚30と、シートバック1を回動可能に支持する支持ベース40と、支持ベース40に取り付けられ、支持脚30を着脱可能に保持する脚保持部材50と、支持ベース40を上方から覆う
図1に示すベースカバー60と、から主に構成されている。
また、車両用シートSには、
図2に示すように、支持ベース40に対してシートバック1を回動可能に連結するリクライニング装置13と、シートバック1に対してシートクッション2を回動可能に連結するクッションロック装置25と、が取り付けられている。
車両用シートSの前方側には、
図7に示すように、車体フロアよりも低位置に形成された凹型の収納フロアが設けられている。
【0035】
車両用シートSは、乗員が着座可能な着座可能状態と、シート本体を収納フロアに収納させた収納状態と、シート本体を上方に跳ね上げたチップアップ状態との3種類の形態のシートアレンジが可能なシートである。
具体的には、車両用シートSは、
図7(a)に示す着座可能状態から、乗員が不図示の操作レバーを引っ張ると、シート本体が前倒れして折り畳まれ、収納フロアに収納された
図8(c)に示す収納状態に切り替わる。また、収納状態から、乗員が手動でシート本体を上方に起こすことで
図9(b)に示すチップアップ状態に切り替わる。さらに、チップアップ状態から、乗員が操作レバーとして機能する支持脚30を引っ張ると、シートバック1に対してシートクッション2がシート下方に回転し、
図10(b)に示す着座可能状態に復帰する。詳細は後述する。
【0036】
シートバック1は、
図1に示すように、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となる
図2に示すバックフレーム10に、クッションパッド1aを載置して、表皮1bで被覆されて構成されている。
シートクッション2は、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となる
図2に示すクッションフレーム20に、クッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮2bによって被覆されて構成されている。
ヘッドレスト3は、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となる不図示のピラーにクッションパッド3aを載置して、表皮3bで被覆されて構成されている。
【0037】
レール装置4は、上下方向においてシート本体と車体フロアとの間に配設されており、
図2に示すように、車体フロアに固定され、シート前後方向に延びる左右のロアレール4aと、ロアレール4aに沿って摺動可能に支持される左右のアッパレール4bと、から構成されている。
左右のアッパレール4bの上面には、支持ベース40が架設されている。
なお、レール装置4には、アッパレール4bを摺動不能にロックする不図示のロック部材と、ロック部材のロック状態を解除する不図示の操作レバーとが取り付けられている。
【0038】
バックフレーム10は、シートバック1の骨格となる略矩形状の枠体からなり、
図2に示すように、バックフレーム10の左右外側面であって下方部分には、支持ベース40と連結するための左右の連結ブラケット11が取り付けられている。
連結ブラケット11は、上下方向に延出する板金部材からなり、シート側面側から見て略弓形状に形成されており、連結ブラケット11の上端部がバックフレーム10に取り付けられ、その下端部が支持ベース40に取り付けられている。
【0039】
連結ブラケット11の上端部は、シート左右方向においてバックフレーム10とクッションフレーム20の間に挟まれて配置されている。
左側の連結ブラケット11の下端部には、左右方向において支持ベース40に軸支されたバック回動軸12が設けられ、右側の連結ブラケット11の下端部には、支持ベース40に対してバックフレーム10を回動可能に連結するリクライニング装置13が取り付けられている。
【0040】
リクライニング装置13は、公知の装置からなり、
図2に示すように、連結ブラケット11の左右内側面に配置されており、左右方向においてクッションフレーム20との干渉を抑制している。
リクライニング装置13は、バック回動軸13aと、バックフレーム10をバック回動軸13aを中心として前方側に回転させて収納状態に付勢する渦巻きバネ13bと、から主に構成されている。
バック回動軸13aは、左右方向においてバックフレーム10側と支持ベース40側とに軸支され、渦巻きバネ13bは、その一端部がバックフレーム10側に係止され、他端部が支持ベース40側に係止されている。
リクライニング装置13は、バックフレーム10の回動動作をロックするロック状態に切り替え可能であって、バックフレーム10を起立状態にロックし、不図示の操作レバーが操作されることでロック状態を解除し、渦巻きバネ13bの付勢力によってバックフレーム10を前方側に回転させて支持ベース40側に折り畳むことができる。
【0041】
クッションフレーム20は、シートクッション2の骨格となる略矩形状の枠体からなり、
図2に示すように、左右側方に配置された左右のサイドフレーム21と、各サイドフレーム21の前方部分を連結する前方連結パイプ22と、各サイドフレームの前後方向の略中央部分を連結する中央連結パイプ23と、前方連結パイプ22と中央連結パイプ23を連結する板状フレームとしてのパンフレーム24と、から主に構成されている。
サイドフレーム21は、前後方向に延出する板金部材からなり、その前方部分が前方連結パイプ22と連結され、その後方部分であって上端部には、バックフレーム10に対してクッションフレーム20を回動可能に連結するクッションロック装置25が取り付けられている。
なお、シート側面側から見てサイドフレーム21の外縁部には、左右外側に屈曲された不図示のフランジ部が形成され、前方連結パイプ22及びバックフレーム10の支持剛性を高めている。
【0042】
クッションロック装置25は、公知の装置からなり、
図2に示すように、クッション回動軸25aと、クッションフレーム20をクッション回動軸25aを中心として下方側に付勢する渦巻きバネ25bと、を備えている。
クッション回動軸25aは、左右方向においてバックフレーム10側とクッションフレーム20側とに軸支され、渦巻きバネ25bは、その一端部がバックフレーム10側に係止され、他端部がクッションフレーム20側に係止されている。
クッションロック装置25は、クッションフレーム20の回動動作をロックするロック状態に切り替え可能である。
クッションロック装置25は、
図8(c)に示すように、シート本体を収納フロアに収納させたときに、具体的には、バックフレーム10をクッションフレーム20側に折り畳んだ状態のときに、クッションフレーム20の回動動作をロックする。そして、
図11に示すように、操作レバーとして機能する支持脚30が引っ張られるとロック状態を解除し、渦巻きバネ25bの付勢力によってバックフレーム10に対してクッションフレーム20を下方側に回転させることができる。
【0043】
前方連結パイプ22は、
図2に示すように、略コ字形状のパイプ部材からなり、その左右内側面には、クッションフレーム20に対して支持脚30を回動可能に連結する脚ロック装置26が取り付けられている。
脚ロック装置26は、脚回動軸26aと、支持脚30を脚回動軸26aを中心としてクッションフレーム20とは逆側に、言い換えれば、クッションフレーム20から離れる方向に付勢するバネ部材26bと、を備えている。
脚回動軸26aは、左右方向において前方連結パイプ22と、支持脚30の上端部とに軸支され、バネ部材26bは、その一端部がクッションフレーム20側に係止され、他端部が支持脚30側に係止されている。
脚ロック装置26は、支持脚30の回動動作をロックするロック状態に切り替え可能であって、収納状態となるときに、具体的には、
図8(a)に示すように、支持脚30が脚保持部材から離脱し、クッションフレーム20側に収納されたときに、支持脚30の回動動作をロックする。そして、
図11に示すように、ロックされた支持脚30が引っ張られるとロック状態を解除し、バネ部材26bの付勢力によって、着座可能状態に復帰させるように支持脚30を脚保持部材50に装着可能な位置に移動させることができる。
【0044】
支持脚30は、
図2に示すように、シートクッション2を支持する略コ字形状のパイプ部材であり、左右側方に配置された脚本体部31と、各脚本体部31の下端部を連結する脚連結部32と、を備えている。
脚本体部31の上端部は、クッションフレーム20の左右内側面であって前後方向の略中央部分に連結され、脚連結部32の左右方向の略中央部は、脚保持部材50に着脱可能に保持されている。
支持脚30の上端部は、支持脚30の下端部よりもシート前方に配置されており、支持脚30下端部側から支持脚30上端部側に向かって前方に上方傾斜している。
【0045】
支持ベース40は、シートバック1を支持する部材であり、
図3に示すように、左右側方にアッパレール4bに沿って配置された左右のサイドベース部41と、各サイドベース部41の前方部分を連結する第1ベース連結部42と、各サイドベース部41の略中央部分を連結する第2ベース連結部43と、各サイドベース部41の上面に取り付けられる左右の補強ベース部44と、第1ベース連結部42及び第2ベース連結部43を連結し、脚保持部材50を支持する保持部材支持部45と、を備えている。
【0046】
サイドベース部41は、前後方向に長尺な略クランク形状の板金部材からなり、
図3に示すように、アッパレール4b上面に連結された連結壁部41aと、連結壁部41aの左右内側端部から下方へ屈曲された内側壁部41bと、連結壁部41aの左右外側端部から上方へ屈曲された外側壁部41cと、から主に構成されている。
サイドベース部41のうち、内側壁部41bの下端部、外側壁部41cの上端部には、それぞれ左右内側に折り曲げられたフランジ部41d、41eが形成されている。
また、左側のサイドベース部41のうち、シート側面側から見てバック回動軸12と対向する部分には、略半円形状の切り欠き部41fが形成されており、バック回動軸12をシート側面側から組み付け易くなっている。
【0047】
第1ベース連結部42及び第2ベース連結部43は、
図3に示すように、左右方向に延在する略円形状のパイプ部材からなり、前後方向に所定の距離を空けて離間している。
補強ベース部44は、
図3に示すように、前後方向に長尺な略クランク形状の板金部材からなり、サイドベース部41上面に連結された連結壁部44aと、連結壁部44aの左右内側端部から下方へ屈曲された内側壁部44bと、連結壁部44aの左右外側端部から上方へ屈曲された外側壁部44cと、から主に構成されている。
補強ベース部44のうち、内側壁部44bの下端部には、左右内側に折り曲げられたフランジ部44dが形成され、外側壁部44cの上端部には、左右外側に折り曲げられたフランジ部44eが形成されている。
【0048】
第1ベース連結部42及び第2ベース連結部43それぞれの左右両端部は、
図3に示すように、サイドベース部41と補強ベース部44とで挟まれるように連結されている。
補強ベース部44は、連結壁部44aにおいてサイドベース部41に取り付けられているほか、フランジ部44eと、サイドベース部41のフランジ部41eとが上下で重なり合って閉断面構造を形成する構成となり、支持ベース40の支持剛性が向上している。
言い換えれば、支持ベース40は最中形状となっている。
左側の補強ベース部44は、左右方向において連結ブラケット11とサイドベース部41との間に挟まれて連結されている。
【0049】
保持部材支持部45は、
図3に示すように、脚保持部材50を支持する湾曲形状の板金部材であり、シート前後方向に延びてその略中央部分には、前方部分及び後方部分よりも下方に折り曲げられた折り曲げ部45aが形成されている。
保持部材支持部45の前方部分は、第1ベース連結部42に取り付けられ、保持部材支持部45の後方部分は、第2ベース連結部43に取り付けられている。
折り曲げ部45aの上面に脚保持部材50が取り付けられている。
【0050】
脚保持部材50は、支持脚30を着脱可能に保持する略U字形状のクリップ部材からなり、
図3に示すように、一対の側壁部51と、各側壁部51の下端部を連結する底壁部52と、から構成されている。
各側壁部51は、その下端部から上端部に向かって互いに近接する方向に折り曲げられており、言い換えれば、脚保持部材50の開口部分を狭めるように開口内側方向に折り曲げられており、上端部には、開口部外側方向に反り曲げられたカール部53が形成されている。
底壁部52は、湾曲形状からなり、保持部材支持部45の折り曲げ部45aに沿わせるようにして取り付けられている。詳しく言うと、底壁部52は、その一部を切り起こした不図示の切り起こし部を備え、切り起こし部が、折り曲げ部45aに形成された不図示の掛け止め溝に掛け止めされることで取り付けられている。
【0051】
脚保持部材50は、水平面に対して所定の傾斜角度で後傾させた位置で保持部材支持部45に支持されている。言い換えれば、脚保持部材50は、その開口部分を前方斜め上方に向けた位置で、保持部材支持部45に支持されている。
脚保持部材50は、その開口部分の幅を支持脚30の幅径よりもやや狭く形成しており、脚保持部材50を弾性変形させることで、支持脚30を着脱可能に保持する。
【0052】
脚保持部材50に隣接した部分には、車両の後面衝突時に支持脚30下端側の脚連結部32を脚保持部材50に保持された状態でロックする慣性ロック装置54が配置される。
慣性ロック装置54は、公知の装置からなり、
図3に示すように、支持ベース40に取り付けられており、前後方向において第1ベース連結部42と第2ベース連結部43の間に配置され、また、左右方向において脚保持部材50と重なる位置に配置されている。
【0053】
ベースカバー60は、支持ベース40全体を上方から覆う樹脂成形品であり、
図4又は
図5に示すように、前方側に配置される前方カバー部61と、前方カバー部61の後方に配置される後方カバー部68と、から構成されている。前方カバー部61と後方カバー部68とはスナップフィット結合されており、
図6に示すように、分解可能な構成となっている。
詳しく言うと、ベースカバー60は、シート前後方向においてバック回動軸12の位置を境にして前方カバー部61と後方カバー部68とに分割可能な構成となっている。そのため、少なくとも一方のカバー部を支持ベース40から取り外しただけで、バック回動軸12の組み付けを確認することができる。
【0054】
ベースカバー60の前方カバー部61は、
図4に示すように、支持脚30を収容する脚収容凹部62と、脚収容凹部62よりも前方に配置され、脚保持部材50から離脱した支持脚30をシートクッション2側に収容させるようにガイドする脚ガイド部63と、脚収容凹部62よりも後方に配置され、支持脚30が脚収容凹部62よりも後方に移動することを規制する脚規制部64と、を備えている。
脚収容凹部62、脚ガイド部63、及び脚規制部64は、それぞれ前方カバー部61と一体形成されている。
【0055】
脚収容凹部62は、ベースカバー60上面から下方側に向かって窪んだ略U字形状の凹部からなり、左右方向に延びた長尺体として形成されている。
脚収容凹部62は、前後一対の側壁部62aと、左右一対の側壁部62bと、各側壁部62a、62bの下端部を連結する底壁部62cと、から構成されており、その開口部分を前方斜め上方に向けた位置で配置されている。
各側壁部62a、62bは、それぞれ底壁部62c側から開口部分側に向かうほど互いに離間するように広がって形成されており、脚収容凹部62が支持脚30を収容し易い形状となっている。
【0056】
脚収容凹部62のうち、前後の各側壁部62aの左右方向の略中央部分には、略四角形状の貫通穴がそれぞれ形成されており、
図1に示すように、ベースカバー60裏面側から脚保持部材50を構成する一対の側壁部51及びカール部53が貫通穴を介して外部に露出するように構成されている。
また、脚収容凹部62のうち、後方の側壁部62a及び底壁部62cには、上下方向に長尺な貫通穴が連続して形成されており、ベースカバー60裏面側から慣性ロック装置54の一部が貫通穴を介して外部に露出するように構成されている。
このとき、脚収容凹部62は、左右方向において脚保持部材50と慣性ロック装置54との間の左右方向の距離よりも幅広に形成されることになる。
なお、脚収容凹部62の底壁部62cは、支持脚30下端部の円形状に合わせて、また、脚保持部材50の底壁部52の円形状に合わせて、円弧形状に形成されている。
上記構成により、支持脚30が、
図1に示すように、着座可能状態のときに脚収容凹部62に収容され易くなり、脚保持部材50によって着脱可能に保持される構成となる。
【0057】
脚ガイド部63は、ベースカバー60上面から上方側に向かって突出する凸部からなり、前後方向に延びた長尺体であって、左右方向に比較的幅狭な形状としてコンパクトに形成されている。また、ベースカバー60前面から前方に向かってやや張り出すように形成されている。
脚ガイド部63は、ベースカバー60の左右方向の略中央部分であって、前方部分に配置され、前後方向において脚収容凹部62からほぼ連続するように設けられている。
上記構成において脚ガイド部63は、着座可能状態のときに、
図1に示すように、支持脚30の前方に配置され、
図7(a)に示すように、収納フロアの後方に配置されることになる。そのため、脚ガイド部63は、
図8(a)に示すように、脚保持部材50及び脚収容凹部62から離脱した支持脚30と当接し、支持脚30が脚回動軸26aを中心としてシートクッション2側に収納回転するのをガイドすることができる。
【0058】
脚規制部64は、
図4に示すように、ベースカバー60外表面から前方側に向かって張り出した部分からなり、左右方向に延びた長尺体として形成され、前後方向において脚収容凹部62から後方側に連続して配置されている。
脚規制部64は、その下端側から上端側に向かうほど前後方向に幅広となるように形成されており、脚規制部64の上端側には、ベースカバー60上面から上方に突出するように突出部64aを備え、突出部64aは、さらに前方に張り出すように形成されている。
上記構成により、脚規制部64は、支持脚30を脚収容凹部62に収容するときに、支持脚30の後方移動を規制し、脚収容凹部62側に案内する構成となっている。
また、脚規制部64は、シート左右方向において脚ガイド部63と重なる位置に配置されており、シートが着座可能状態から切り替わるときには、脚ガイド部63が、離脱した支持脚30をガイドし、一方、シートが着座可能状態へ復帰するときには、脚規制部64が、離脱した支持脚30を脚保持部材50側にガイドする配置となっている。
【0059】
ベースカバー60において、脚ガイド部63及び脚規制部64それぞれの支持ベース40側の裏面には、
図6に示すように、所定形状の補強リブ65が形成されており、ベースカバー60のうち、特に他の構成品と接触して支持剛性を必要とする部分において支持剛性を向上させた形状となっている。
ベースカバー60において、左右のアッパレール4b前端部の上方に相当する部分には、
図4に示すように、傾斜部66が形成されている。
傾斜部66は、シート側方から見て略円弧形状からなり、前方側から後方側へ向かって上方傾斜するように形成されており、ベースカバー60のスリム化を図っている。
【0060】
ベースカバー60において、左右の傾斜部66の上面には、比較的摩擦係数が低く形成されたシート摺動部67が形成されている。
シート摺動部67は、シート前後方向に延びた長尺体であって、左右方向においてサイドフレーム21の幅と同等の幅となるように形成されている。
シート摺動部67は、着座可能状態から収納状態へ切り替わるときにシートクッション2を構成するクッションフレーム20、特にサイドフレーム21、又は前方連結パイプ22に相当する部分と接触する部分であって、例えば、シートクッション2とベースカバー60とが接触したとしても互いに損傷を抑制することができる。
なお、補強リブ65、傾斜部66、及びシート摺動部67は、それぞれ前方カバー部61と一体形成されている。
【0061】
次に、
図7、
図8に基づいて車両用シートSを着座可能状態から収納状態へ移動させる動作を説明する。なお、
図7、
図8において、リクライニング装置13、クッションロック装置25、及び脚ロック装置26は、黒丸で図示されているときにロック状態を示し、白丸で図示されているときにロック解除状態を示すものとする。
図9、
図10も同様である。
【0062】
車両用シートSが
図7(a)に示す着座可能状態にあるとき、シートバック1は、支持ベース40に支持され、リクライニング装置13によって起立状態にロックされており、シートクッション2は、脚保持部材50に保持された支持脚30に支持される構成となる。
支持脚30上端部にある脚回動軸26aは、着座可能状態にあるときに脚保持部材50よりも前方に配置されている。
また、脚保持部材50は、ベースカバー60のうち、支持ベース40を上方から覆っている部分の前端部よりも後方に配置されている。
【0063】
車両用シートSを着座可能状態から収納状態へ移動させるときには、例えば、シートバック1上面に設けられた不図示の操作レバーを操作する。
乗員が操作レバーを操作することで、
図7(b)に示すように、リクライニング装置13のロック状態が解除され、シートバック1は、渦巻きバネ13bの付勢力によって、シートクッション2を収納フロアまで移動させるようにバック回動軸13aを中心としてシート前方側に回転を開始する。
支持脚30は、シートバック1の回転に連動して、シートクッション2に対して脚回動軸26aを中心としてシートクッション2側に回転を開始する。このとき、支持脚30は、シートクッション2と車体フロア側との間で突っ張った状態となるため、シートクッション2及びシートバック1を安定して移動させることができる。
なお、操作レバーとリクライニング装置13との間には、不図示の公知なケーブルが連結されており、操作レバーの操作によってケーブルが引っ張られ、ロック状態を解除する構成となっている。
【0064】
シートバック1が、
図8(a)に示すように、所定の回転位置に到達したときに、支持脚30が脚保持部材50から離脱する。言い換えると、支持脚30が、シートバック1の回転に連動して、所定の回転位置に到達したときに脚保持部材50から離脱する。
離脱した支持脚30は、脚ロック装置26によって、バネ部材26bの付勢力に抗して脚回動軸26aを中心としてシートクッション2側に折り畳まれるように回転する。そして、支持脚30は、シートクッション2側に収納された状態でロックされる。
このとき、支持脚30は、不図示のベースカバー60の脚ガイド部63によってシートクッション2側に収納されるようにガイドされる。
また、ベースカバー60のうち、シートクッション2と接触する部分にシート摺動部67が設けられているため、シートクッション2の収納フロア側への移動が容易になる。
【0065】
さらに、シートバック1が、
図8(b)に示すように、所定の回転位置に到達したときに、シートクッション2の前端部が、支持脚30よりも先に収納フロア面に当接する。
シートクッション2の前後両端部には、収納フロア面に対して摺動可能な不図示の摺動部材が取り付けられており、シートバック1の回転に伴って、シートクッション2はシート前方側に向かって収納フロア面を安定して摺動することができる。
なお、摺動部材は、シートクッション2の前後両端部のうち、少なくとも一方に取り付けられていれば良い。
【0066】
上記一連の動作によって、
図8(c)に示すように、シート本体が収納フロアに収納され、車両用シートSが収納状態に切り替わる。
シートクッション2は、収納状態のときに、具体的にはシートバック1がシートクッション2側に折り畳まれた状態のときに、クッションロック装置25によってロックされる。
支持脚30は、収納状態のときに脚保持部材50よりも下方位置に配置される。
【0067】
次に、
図9に基づいて車両用シートSを収納状態からチップアップ状態へ移動させる動作を説明する。
車両用シートSが
図9(a)に示す収納状態にあるときに、例えば、乗員が手動でシート本体を上方に起こすことで
図9(b)に示すチップアップ状態に切り替わる。
このとき、クッションロック装置25が、シートクッション2の回動動作をロックしているため、シートバック1を上方に起こすことでシートクッション2も一体的に上方に起こすことが可能である。
なお、チップアップ状態のときに、アッパレール4bをロアレール4aに対してシート後方側に摺動させることによって、シート前方側に広い荷室スペースを確保することができる。
【0068】
車両用シートSが
図9(b)に示すチップアップ状態に切り替わったとき、シートバック1は、着座可能状態の位置と同じ位置に復帰し、リクライニング装置13によって起立状態にロックされることになる。
【0069】
次に、
図10に基づいて車両用シートSをチップアップ状態から着座可能状態へ移動させる動作を説明する。
車両用シートSをチップアップ状態から着座可能状態へ移動させるときには、
図10(a)に示すように、例えば操作レバーとして機能する支持脚30を操作する。
乗員が支持脚30を脚回動軸26aを中心として上方回転させるように、言い換えれば、シートクッション2側から離れる方向に引っ張ることで、クッションロック装置25、及び脚ロック装置26のロック状態が解除される。
なお、支持脚30と、クッションロック装置25との間には、不図示の公知なケーブルが連結されており、支持脚30の操作によってケーブルが引っ張られ、ロック状態を解除する構成となっている。
【0070】
シートクッション2は、クッションロック装置25の解除に伴い、
図10(b)に示すように、渦巻きバネ25bの付勢力によって、シートバック1に対して下方側に回転する。
支持脚30は、脚ロック装置26の解除に伴い、バネ部材26bの付勢力によって、脚保持部材50に装着可能な位置まで脚回動軸26aを中心として回転し、脚保持部材50に装着されることになる。
このとき、支持脚30は、ベースカバー60のうち、脚収容凹部62、脚ガイド部63、及び脚規制部64にガイドされることよって、脚収容凹部62の下端側に取り付けられた脚保持部材50に向かって移動するようになる。
上記一連の動作により、車両用シートSが
図10(b)に示す着座可能状態に復帰する。
【0071】
上記構成において、脚保持部材50は、
図7(a)に示すように、車体フロアのうち、収納フロアと連結された段差部よりもシート後方に配置されている。
このように構成することで、脚保持部材50に保持される支持脚30をコンパクトに配置することができる。また、支持脚30がシートクッション2の前後方向の略中央部分を支持する構成となり、シートクッション2の支持剛性を高めることができる。
なお、車体フロアは、段差部を含むものであり、収納フロアを含まないものである。
【0072】
上記実施形態において、車両用シートSの前方に収納フロアが形成されているが、これに限定されることなく、車両用シートSの後方に収納フロアが形成されていても良い。
【0073】
上記実施形態において、クッションロック装置25は、
図8(c)に示すように、収納状態のときに、シートクッション2の回動動作をロックするロック状態に切り替え可能であるが、これに限定されることなく、
図9(b)に示すチップアップ状態においてロック状態に切り替える構成としても良い。
【0074】
上記実施形態において、支持脚30は、着座可能状態から収納状態へ切り替わるときに、シートクッション2に対して脚回動軸26aを中心として後方側に回転し、シートクッション2側に収納される構成となっているが、これに限定されることなく、支持脚30は、脚回動軸26aを中心として前方側に回転し、シートクッション2側に収納される構成としても良い。
このとき、支持脚30の上端部は、支持脚30の下端部よりもシート後方に配置され、支持脚30下端部側から支持脚30上端部側に向かって後方に上方傾斜していると良く、シートクッション2側に収納回転し易くなる。
【0075】
上記実施形態において、支持ベース40は、レール装置4を介して車体フロアに固定されているが、これに限定されることなく、レール装置4を不要として直接車体フロアに固定される等、適宜変更しても良い。
また、上記実施形態において、連結ブラケット11を不要として、直接シートバック1と支持ベース40とを連結させた構成としても良い。
【0076】
上記実施形態において、ベースカバー60の前方カバー部61と後方カバー部68とは、分割可能な構成となっているが、これに限定されることなく、一体物として形成されていても良い。
また、ベースカバー60のシート摺動部67は、左右の傾斜部66の上面に配置されているが、これに限定されることなく、ベースカバー60と、シートバック1及びシートクッション2とが接触する可能性のある部分に適宜設けても良い。
さらに、脚収容凹部62の底壁部62cが、シート摺動部67のように比較的摩擦係数が低く設定されていると良い。このように構成することで、支持脚30と脚収容凹部62とが接触するときに互いに損傷を抑制することができる。
【0077】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる収納可能な車両用シートについて説明したが、これに限定されることなく、電車、バス等の車両用シートのほか、飛行機、船等の乗物用シートとしても利用することができる。
【0078】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートSに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、支持脚30、支持ベース40、脚保持部材50、及びベースカバー60の形状、配置、及び構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。