特許第6262477号(P6262477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262477薄膜トランジスタ、表示装置用電極基板およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262477
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ、表示装置用電極基板およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20180104BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180104BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01L29/78 616L
   H01L29/78 612Z
   H01L29/78 616N
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 619A
   H01L29/78 627C
   G02F1/1368
   H01L21/28 A
   H01L21/28 301B
   H05B33/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-189917(P2013-189917)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-56565(P2015-56565A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】川野 英郎
【審査官】 川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−015436(JP,A)
【文献】 特開2012−114245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1368
H01L 21/28
H01L 21/336
H01L 29/786
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された透明アモルファス酸化物半導体層と、
前記ゲート絶縁膜および透明アモルファス酸化物半導体層上に、前記ゲート電極と重ならないようにそれぞれ形成されたソース電極およびドレイン電極と、
前記透明アモルファス酸化物半導体層上に、前記ゲート電極をマスクとした前記基板側からの露光により形成されたチャネル保護層と、を備え、
前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記チャネル保護層、を用いて、前記透明アモルファス酸化物半導体層に対して還元性ガスによる還元処理が実施されることで、前記透明アモルファス酸化物半導体層において、前記チャネル保護層の端部と前記ソース電極および前記ドレイン電極のそれぞれの端部との間の領域の抵抗値は、前記チャネル保護層、前記ソース電極および前記ドレイン電極と重なっている領域の抵抗値よりも低くなっている
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記還元性ガスは、水素ラジカル、アンモニアラジカル、水素ガスのうち、少なくとも1種類を含む
請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薄膜トランジスタを用いた表示装置用電極基板であって、
透明な絶縁性の前記基板上に形成された複数本の走査信号線と、
絶縁膜を介して前記複数本の走査信号線と交差するように形成された複数本の表示信号線と、
前記複数の走査信号線と前記複数の表示信号線との各交差領域に形成された複数の前記薄膜トランジスタと電気的に接続された複数の表示画素電極と、をさらに備え、
前記ゲート電極は、前記走査信号線の一部または延在部から構成され、
前記ソース電極および前記ドレイン電極は、前記表示信号線と同一工程によって形成されている
表示装置用電極基板。
【請求項4】
基板上にゲート電極を形成するステップと、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するステップと、
前記ゲート絶縁膜上に透明アモルファス酸化物半導体層を形成するステップと、
前記ゲート絶縁膜および透明アモルファス酸化物半導体層上に、前記ゲート電極と重ならないようにソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成するステップと、
前記透明アモルファス酸化物半導体層上に、前記ゲート電極をマスクとした前記基板側からの露光によりチャネル保護層を形成するステップと、
前記透明アモルファス酸化物半導体層の表面に対して、前記チャネル保護、前記ソース電極および前記ドレイン電極をマスクとして、還元性ガスによる還元処理を行うステップと、
を備えた薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記還元性ガスは、水素ラジカル、アンモニアラジカル、水素ガスのうち、少なくとも1種類を含む
請求項4に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の薄膜トランジスタの製造方法を用いた表示装置用電極基板の製造方法であって、
透明な絶縁性の前記基板上に複数本の走査信号線を形成するステップと、
絶縁膜を介して前記複数本の走査信号線と交差するように複数本の表示信号線を形成するステップと、
前記複数の走査信号線と前記複数の表示信号線との各交差領域に形成された複数の前記薄膜トランジスタと電気的に接続されるように複数の表示画素電極を形成するステップと、をさらに備え、
前記ゲート電極を形成するステップと、前記複数本の走査信号線を形成するステップとは、同一ステップであり、
前記ソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成するステップと、前記複数本の表示信号線を形成するステップとは、同一ステップである
ことを特徴とする表示装置用電極基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)を用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)、この薄膜トランジスタ(TFT)を用いた表示装置用電極基板およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFTの半導体層として、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)を用いるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、TAOSをTFTに用いるに際して、半導体層を従来のアモルファスシリコン(a−Si:amorphous Silicon)からTAOSに置き換えることを念頭に開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−150900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
図2は、一般的なi/s型TFTの構造を示す断面図である。図2において、TFTのチャネル長をL、チャネル幅をWとすると、TFTの電気的な性能は、W/Lで表される。また、TFTの寄生容量は、チャネル領域の面積およびゲート電極51とソース電極52またはドレイン電極53との交差面積によって決まる。
【0005】
ここで、TFTを用いた表示装置用電極基板が適用される液晶表示装置や有機EL表示装置等のアクティブマトリクス型表示装置において、画面輝度不均一性の根本原因の1つは、TFT寄生容量の存在である。すなわち、表示装置の開口率や画質を向上させるために、TFTの寄生容量を低減することが求められる。
【0006】
そこで、もしこのTFT寄生容量領域をチャネル領域と同一にし、かつチャネル長Lを最小加工寸法に設定することができれば、TFTのサイズ(チャネル長Lおよびチャネル幅W)に対して、TFT寄生容量を理想的な最小値にすることができる。
【0007】
しかしながら、実際には、TFT寄生容量領域のサイズは、電極間隔が最も狭い箇所をプロセス上の最小加工寸法に設定する必要があり、一般的なi/s型TFTの場合には、i/s層54(チャネル保護層54に相当)上に位置するソース電極52とドレイン電極53との間隙幅が、最小加工寸法となる。
【0008】
そのため、ソース・ドレイン間隙幅がTFT寄生容量領域のサイズを決める要因となって、チャネル長Lが最小加工寸法よりも長くなり、TFT寄生容量は、理想的な最小値よりも大きくなる。
【0009】
このとき、i/s型TFTにおいて、TFT寄生容量を理想的な最小値にまで低減するためには、ゲート電極幅を最小加工寸法に設定する必要があるが、これは、ソース・ドレイン間隙幅を、ゲート電極幅よりも拡幅しなければならないことを意味している。すなわち、ソース電極52またはドレイン電極53と、半導体層55との接続領域が、ゲート電極51の外側に位置することとなる。
【0010】
また、これを実現するためには、ソース電極端またはドレイン電極端とi/s層端との間を繋ぐ低抵抗な導電層を、単層の半導体層55で形成する必要がある。すなわち、ソース電極端またはドレイン電極端とi/s層54で覆われたチャネル領域端との間の領域は、半導体単層となる。
【0011】
また、この半導体単層領域でチャネル領域とソース電極52またはドレイン電極53とを電気的に接続し、かつ良好なTFT特性を得るためには、この半導体単層領域の抵抗を、チャネルのオン抵抗と比べて十分に小さい値に抑制する必要がある。これは、半導体層55の比抵抗を導体領域の比抵抗にまで低減することを意味し、従来のTFT製造技術では不可能であった。
【0012】
そのため、一般的なi/s型TFTの製造方法では、半導体層55を局所的に十分に低抵抗化することができないので、i/s型TFT構造において、ソース・ドレイン間隙幅を、最小加工寸法に設定しなければならない。
【0013】
ここで、液晶表示装置や有機EL表示装置等において、開口率や画質を向上させるために、TFTの寄生容量を低減する方法として、紫外線による裏面露光を用いたi/s型のセルフアライン(自己整合型)TFT構造の導入がある。
【0014】
半導体層55に、従来のa−Siに代わる半導体材料として開発が進められているTAOSを用いる場合において、TAOS材料の中で製品化が有力視されるIGZO(In、GaおよびZnを含む酸化物)は、製造過程で受けるプラズマダメージ耐性が弱く、酸やアルカリに対する耐薬液性も低い。
【0015】
これに対して、i/s構造におけるi/s層54は、これらのプロセスダメージから半導体層55のチャネル領域を保護する機能を有するので、TAOSを用いたTFT(TAOS TFT)に最適なTFT構造として注目されている。
【0016】
しかしながら、今後のディスプレイの大型・高精細化に対しては、i/s型のセルフアラインTFTであっても、TFT寄生容量に起因する画質の低下が顕著になることが予想されるので、TFT寄生容量を理想的な最小値に向けて低減を図る必要がある。
【0017】
さらに、i/s型のセルフアラインTFTを製造するためには、ソース・ドレイン間隙幅を最小加工寸法に設定しなければならないので、TFT寄生容量が理想的な最小値よりも必然的に大きくなるという問題もある。
【0018】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、素子サイズが小さく、かつ寄生容量の小さいTAOS TFT、このTAOS TFTを用いた表示装置用電極基板およびそれらの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係る薄膜トランジスタは、基板上に形成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成された透明アモルファス酸化物半導体層と、ゲート絶縁膜および透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極と重ならないようにそれぞれ形成されたソース電極およびドレイン電極と、透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光により形成されたチャネル保護層と、を備え、ソース電極、ドレイン電極およびチャネル保護層、を用いて、透明アモルファス酸化物半導体層に対して還元性ガスによる還元処理が実施されることで、透明アモルファス酸化物半導体層において、チャネル保護層の端部とソース電極およびドレイン電極のそれぞれの端部との間の領域の抵抗値は、チャネル保護層、ソース電極およびドレイン電極と重なっている領域の抵抗値よりも低くなっているものである。
【0020】
この発明に係る薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極を形成するステップと、ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するステップと、ゲート絶縁膜上に透明アモルファス酸化物半導体層を形成するステップと、ゲート絶縁膜および透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極と重ならないようにソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成するステップと、透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光によりチャネル保護層を形成するステップと、透明アモルファス酸化物半導体層の表面に対して、チャネル保護、ソース電極およびドレイン電極をマスクとして、還元性ガスによる還元処理を行うステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る薄膜トランジスタによれば、透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光によりチャネル保護層が形成され、透明アモルファス酸化物半導体層のチャネル保護層と重ならない領域の抵抗値は、還元性ガスによる還元処理により、チャネル保護層と重なる領域の抵抗値よりも低くなっている。
また、この発明に係る薄膜トランジスタの製造方法によれば、透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光によりチャネル保護層を形成した後、透明アモルファス酸化物半導体層の表面に対して、チャネル保護層をマスクとして、還元性ガスによる還元処理を行うことにより、透明アモルファス酸化物半導体層のチャネル保護層によってマスクされていない領域が低抵抗化される。
そのため、素子サイズが小さく、かつ寄生容量の小さいTAOS TFT、このTAOS TFTを用いた表示装置用電極基板およびそれらの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施の形態1に係るTAOS TFTの構成を示す断面図である。
図2】一般的なi/s型TFTの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明に係るTFTおよび表示装置用電極基板の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0024】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るTAOS TFT10の構成を示す断面図である。図1において、TAOS TFT10は、ガラス基板11と、ゲート電極12と、ゲート絶縁膜13と、TAOS層14(透明アモルファス酸化物半導体層)と、TAOS還元層15と、ソース電極16と、ドレイン電極17と、i/s層18(チャネル保護層18に相当)と、樹脂絶縁膜19とを備えている。
【0025】
ゲート電極12は、ガラス基板11上に形成されている。なお、基板は、ガラス基板11に限定されず、透明で、かつ絶縁性を有していればよい。ゲート絶縁膜13は、ゲート電極12上に形成されている。TAOS層14は、ゲート絶縁膜13上に形成されている。
【0026】
ここで、TAOS層14は、材料として、上述したIn、GaおよびZnを含む酸化物であるIGZOを用いている。また、TAOS還元層15は、TAOS層14の表面が、後述する還元処理によって導体化した層である。
【0027】
ソース電極16およびドレイン電極17は、TAOS層14上に、ゲート電極12と重ならないようにそれぞれ形成されている。i/s層18は、TAOS層14上に、ゲート電極12をマスクとしたガラス基板11側からの露光(裏面露光)により形成された絶縁層である。樹脂絶縁膜19は、TAOS層14、ソース電極16およびドレイン電極17上に形成されている。
【0028】
なお、TAOS TFT10を用いた表示装置用電極基板は、TAOS TFT10に加えて、ガラス基板11上に形成された複数本の走査信号線(図示せず)と、絶縁膜(図示せず)を介して複数本の走査信号線と交差するように形成された複数本の表示信号線(図示せず)と、複数の走査信号線と複数の表示信号線との各交差領域に形成された複数のTAOS TFT10と電気的に接続された複数の表示画素電極(図示せず)とをさらに備えて構成される。
【0029】
また、この表示装置用電極基板において、ゲート電極12は、走査信号線の一部または延在部から構成され、ソース電極16およびドレイン電極17は、表示信号線と同一工程によって形成されている。
【0030】
続いて、TAOS TFT10の製造方法を、手順に沿って説明する。
まず、ガラス基板11上にゲート電極12を形成する。ここで、ゲート電極12は、例えばスパッタリングによって形成された金属層をパターニングすることによって形成される。続いて、ゲート電極12上に、ゲート絶縁膜13を形成する。ここで、ゲート絶縁膜13は、例えばCVDによって形成される。
【0031】
次に、ゲート絶縁膜13上に、TAOS層14を形成する。ここで、TAOS層14は、少なくともArおよびOを含む混合ガスを用いて、スパッタリングにより形成される。
【0032】
続いて、ゲート絶縁膜13およびTAOS層14上に、ゲート電極12と重ならないようにソース電極16およびドレイン電極17を形成する。ここで、ソース電極16およびドレイン電極17は、例えばスパッタリングによって形成された金属層をパターニングすることによって形成される。
【0033】
次に、TAOS層14上に、ゲート電極12をマスクとしたガラス基板11側からの露光(裏面露光)により、i/s層18を形成する。ここで、i/s層18の材料として、樹脂製材料や酸化シリコン系または窒化シリコン系のSiNx、SiOxまたはSiOxNyが考えられる。
【0034】
続いて、TAOS層14の表面に対して、i/s層18をマスクとして、水素ラジカル等の還元性ガスによる還元処理を行う。ここで、還元処理により、i/s層18で覆われていない領域のTAOS層14(IGZO)中の酸素原子が還元反応して酸素空孔が増加し、性質が導体側に近づく。また、還元性ガスは、水素ラジカル、アンモニアラジカル、水素ガスのうち、少なくとも1種類を含む。
【0035】
これにより、TAOS層14の表面が低抵抗化されてTAOS還元層15となり、電極として使用できる程度の導電率となる。続いて、TAOS還元層15、ソース電極16、ドレイン電極17およびi/s層18上に、樹脂製材料により、樹脂絶縁膜19を形成する。
【0036】
なお、TAOS TFT10を用いた表示装置用電極基板の製造方法は、TAOS TFT10の製造方法に加えて、以下の手順を備えている。すなわち、ガラス基板11上に複数本の走査信号線(図示せず)を形成する手順と、絶縁膜(図示せず)を介して複数本の走査信号線と交差するように複数本の表示信号線(図示せず)を形成する手順と、複数の走査信号線と複数の表示信号線との各交差領域に形成された複数のTAOS TFT10と電気的に接続されるように複数の表示画素電極(図示せず)を形成する手順とをさらに備えている。
【0037】
また、この表示装置用電極基板の製造方法において、ゲート電極12は、複数本の走査信号線を形成する手順において同時に形成され、ソース電極16およびドレイン電極17は、複数本の表示信号線を形成する手順においてそれぞれ同時に形成される。
【0038】
これにより、ゲート電極12の外側の領域において、導体化したTAOS層14であるTAOS還元層15とソース電極16およびドレイン電極17とを電気的に接続することができる。
【0039】
また、i/s層18で覆われていない領域のTAOS層14を導体化するので、i/s層18で覆われたチャネル領域端とソース電極端またはドレイン電極端との間を、表面が導体化された単層のTAOS還元層15で電気的に接続することができる。
【0040】
そのため、ゲート電極幅を最小加工寸法に設定することができるので、ソース・ドレイン間隙幅を最小加工寸法に設定していたi/s型TFTと比べて、チャネル幅Lの短縮、およびTFT寄生容量の理想的な最小値への低減を図ることができる。また、i/s型のセルフアラインTFTにおいて、i/s層18とソース電極16およびドレイン電極17との合せ精度を見込む必要がなくなるので、TFT寄生容量を低減することができる。
【0041】
さらに、ソース電極16およびドレイン電極17と接続する領域のTAOS層14が導体化(TAOS還元層15)しているので、TAOS還元層15とオーミック接続可能なソース電極16およびドレイン電極17の材料の選択肢を広げることができる。
【0042】
以上のように、実施の形態1によれば、透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光によりi/s層が形成され、透明アモルファス酸化物半導体層のi/s層と重ならない領域の抵抗値は、還元性ガスによる還元処理により、i/s層と重なる領域の抵抗値よりも低くなっている。
また、この発明に係る薄膜トランジスタの製造方法によれば、透明アモルファス酸化物半導体層上に、ゲート電極をマスクとした基板側からの露光によりi/s層を形成した後、透明アモルファス酸化物半導体層の表面に対して、i/s層をマスクとして、還元性ガスによる還元処理を行うことにより、透明アモルファス酸化物半導体層のi/s層によってマスクされていない領域が低抵抗化される。
そのため、素子サイズが小さく、かつ寄生容量の小さいTAOS TFT、このTAOS TFTを用いた表示装置用電極基板およびそれらの製造方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
11 ガラス基板、12 ゲート電極、13 ゲート絶縁膜、14 TAOS層、15 TAOS還元層、16 ソース電極、17 ドレイン電極、18 i/s層、19 樹脂絶縁膜。
図1
図2