(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環状溝に連通する複数の溝を前記取付け部材が有し、これらの溝によって前記内周部位が前記取付け部材の周方向に複数に分けられていることを特徴とする請求項1に記載の時計。
前記内周凹部に開放される少なくとも一個の穴を前記ベゼルが有するとともに、この穴と同数の突起を前記取付け部材が有し、前記突起と前記穴とが嵌合されていることを特徴とする請求項3に記載の時計。
前記ベゼルを任意の回転位置に保持するクリックストップ手段を更に備え、このクリックストップ手段が、前記胴に対向する前記外周部位の端面に前記取付け部材の周方向に並んで形成された複数の凹凸からなるクリック係合部と、このクリック係合部に弾性力により押付けられ前記クリック係合部に係脱されるクリック部材とを有することを特徴とする請求項4に記載の時計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
胴とベゼルとの間に、砂粒が侵入した場合、或いは汚れが堆積した場合等には、ベゼルの回転操作が重く(不円滑に)なることがある。更に、パッキン材の劣化は経過的に進行するので、ベゼルの回転操作が長期間にわたってなされない場合、劣化したパッキン材が胴とベゼルに張り付くことを原因として、ベゼルの回転操作が重くなることがある。
【0006】
このような事態を回復するメンテナンスでは、一旦、ベゼルを胴から外した後、胴及びベゼルをクリーニングするか、パッキン材を交換した後に、再びベゼルが胴に取付けられる。このメンテナンスにおいて胴からベゼルを外すには、ベゼルと胴との間に分解用の工具を差し込み、この工具でベゼルをこじり上げることにより行われる。又、クリーニングされたベゼルの胴への取付けは、強い力でベゼルを胴に押し付けることで行なわれる。
【0007】
金属製の胴の係止鍔部と金属製のベゼルの被係止鍔部の変形は容易ではない。そのため、既述のベゼルの脱着に伴って、胴の係止鍔部とベゼルの被係止鍔部とが競って、これらの鍔部が削れられる。したがって、ベゼルを脱着する回数が増えるほど、係止鍔部と被係止鍔部との掛かり代が減少し、ベゼルが胴から外れ易くなる、という課題がある。
【0008】
又、従来の時計は、ベゼルが胴に取付けられた状態を保持するための係止鍔部と被係止鍔部との係合の他に、ベゼルのがたつき止めと回転操作トルクを規定するために、専用のパッキン材を必要とする、という課題がある。
【0009】
本発明の目的は、メンテナンスのためにベゼルが脱着されたとしても、ベゼルが胴に取付けられた状態を保持する信頼性を維持できるとともに、専用のパッキン材を用いないでベゼルのがたつき止めと回転操作トルクを規定できる時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の時計は、環状凸部を有するとともにこの環状凸部の外周に周方向に延びる係合突起が形成された胴を備えるケースと、前記環状凸部の外周を囲む内周凹部を有し前記環状凸部の外周を覆って回転操作可能に配置されたリング形のベゼルと、前記内周凹部に配置される外周部位、この外周部位に接離する方向への弾性変形を可能とする環状溝を前記外周部位との間に形成して前記外周部位位に連続された内周部位、及びこの内周部位に形成され前記内周部位の弾性変形を伴って前記係合突起に係脱可能な係合部を有し、前記係合突起と前記係合部との係合状態を前記内周部位の弾性力によって維持するリング形の取付け部材と、を具備することを特徴としている。
【0011】
本発明で、胴は金属製であることが好ましく、ベゼルは金属製又は合成樹脂製とすることができる。本発明で、取付け部材は、弾性材料例えば弾性を有する合成樹脂の一体成形品であることが好ましい。本発明で、取付け部材は、その外周部位が接着剤を用いてベゼルの内周凹部に固定されていても良い。更に、本発明で、取付け部材は、実施形態で説明するようにベゼルの内周凹部に外周部位等を接触させた状態で、ベゼルの回転方向に相対的に動き得るようにベゼルに保持されていても良く、或いは、ベゼルと一体的に回転されるように更ベゼルに位置決めされていてもよい。
【0012】
本発明の時計で、胴にベゼルを取付けるには、予め、ベゼルの内周凹部に取付け部材を保持させた状態で、胴が有する環状凸部の外周を取付け部材が囲むようにベゼルをケースに組み付けることにより行われる。これにより、取付け部材の係合部が、環状凸部の係合突起を乗り越え、その直後に環状凸部の根元側から係合突起に引っ掛かった状態に係合されて、ベゼルが胴に取付けられる。又、メンテナンスにおいてベゼルを胴から外すには、ベゼルにこれを外す外力を人為的に加えればよい。それにより、環状凸部の係合突起に引っ掛かった係合部が、係合突起を乗り越えて、胴からベゼルを外すことができる。
【0013】
ベゼルの脱着に伴う前記乗り越えの際、取付け部材の内周部位は外周部位に近付けられるように弾性変形される。この変形は、内周部位と外周部位との間に環状溝が形成されていることにより可能である。以上のように係合部を有した内周部位が弾性変形されることにより、係合部が係合突起を逃げながらこれを乗り越える。このため、係合部と係合突起との強度が同じであっても異なっていても、係合部と係合突起とが競り合って削られることが抑制される。
【0014】
更に、既述の手順でベゼルが胴に取付けられた状態で、胴とベゼルとで挟まれた取付け部材の内周部位は、弾性変形された状態を維持している。これにより、内周部位の弾性力で係合部が環状凸部に弾性的に押し付けられるとともに、その反力がベゼルに与えられて、ベゼルを静止状態に保持できる。
【0015】
本発明の時計の好ましい形態は、前記発明において、更に、前記環状溝に連通する複数の溝を前記取付け部材が有し、これらの溝によって前記内周部位が前記取付け部材の周方向に複数に分けられていることを特徴としている。
【0016】
この好ましい形態で、複数に分けられた内周部材は、溝を境に隣接した内周部材の影響を受けることなく、胴にベゼルを脱着する際の弾性変形がより容易となる。これにより、胴に対するベゼルの脱着がより容易となる。
【0017】
本発明の時計の好ましい形態は、更に、前記取付け部材が前記ベゼルの厚み方向に動かないように前記ベゼルと前記外周部位とが凹凸嵌合されていることを特徴としている。
この好ましい形態において凹凸嵌合とは、ベゼルと外周部位とのいずれか一方に設けた凸部と他方に設けた凹部とが嵌合されていることを指している。これと共に、凸部と凹部は夫々複数設けられていても差し支えない。
【0018】
この好ましい形態では、凹凸嵌合により取付け部材がベゼルの厚み方向に動かないように保持されるので、この保持をするために接着剤や止め具を用いて取付け部材をベゼルに固定することを要しない。このように取付け部材がベゼルに固定されないため、ベゼルの回転操作に取付け部材が連れ回りする場合、取付け部材は、ベゼルの回転角度とは異なる角度で回転することが可能である。これとともに、ベゼルから取付け部材を外すことが可能であるので、メンテナンスにおいて取付け部材を交換することも可能となる。
【0019】
本発明の時計の好ましい形態は、更に、前記内周凹部に開放される少なくとも一個の穴を前記ベゼルが有するとともに、この穴と同数の突起を前記取付け部材が有し、前記突起と前記穴とが嵌合されていることを特徴としている。
【0020】
この好ましい形態では、ベゼルの穴と取付け部材の突起とが嵌合していることにより、取付け部材が回転操作された場合、取付け部材を、ベゼルと同じ回転角度で回転させることができる。
【0021】
本発明の時計の好ましい形態は、更に、前記ベゼルを任意の回転位置に保持するクリックストップ手段を更に備え、このクリックストップ手段が、前記胴に対向する前記外周部位の端面に前記取付け部材の周方向に並んで形成された複数の凹凸からなるクリック係合部と、このクリック係合部に弾性力により押付けられ前記クリック係合部に係脱されるクリック部材とを有することを特徴としている。
【0022】
この好ましい形態において、クリック部材とは別に用意したコイルばねの弾性力で、クリック部材をクリック係合部に押し付けることが可能である。又、これに代えて、クリック部材が板ばねで形成される場合、クリック部材自体の弾性力でクリック部材をクリック係合部に押し付けることも可能である。
【0023】
この好ましい形態では、取付け部材がベゼルと同じ回転角度で回転される時計において、ベゼルに対して回り止めされた取付け部材がクリックストップ手段の一部を担っているので、ベゼルの回転操作に拘わらず、ベゼル表面に付された表示とクリック係合部との位置関係を、狂うことなく適正に保持できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、メンテナンスのためにベゼルが脱着されたとしても、胴の係合突起とこの突起に係合されて胴にベゼルを保持する取付け部材の係合部とが削れて、これらの掛かり代が減ることが抑制されるので、ベゼルが胴に取付けられた状態を保持する信頼性を維持できる。これとともに、取付け部材の内周部位が弾性変形された状態で取付け部材が胴とベゼルとで挟まれているので、専用のパッキン材を用いないでベゼルのがたつき止めと回転操作トルクを規定できる、という効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の実施の形態を
図1〜
図7を参照して説明する。
図1及び
図2中符号11は、時計例えば携帯時計具体的にはダイバーズウオッチ等の腕時計を示している。腕時計11はその外装をなすケース12を備えている。
図2に示すようにケース12内に、表示板例えば文字板13、時刻などの表示を制御する機器例えば時刻表示用の針14の動きを制御するムーブメント15等の所要部材が収められている。
図2中符号16はムーブメント15を支持する中枠を示している。
【0027】
図2〜
図4に示すようにケース12は、環状に作られた胴21の厚み方向一面に時計11の正面をなす円形の透視カバー22を液密に装着するとともに、胴21の厚み方向他面に時計11の裏面をなす裏蓋23を液密に装着して形成されている。胴21はステンレス鋼やチタンなどの金属製であり、裏蓋23は金属や合成樹脂製である。透視カバー22は透光部材例えば透明なガラス等からなり、これを通して文字板13を透視可能である。
図2〜
図4中符号24,25は夫々夫々ケース12の液密を保持するためのシール材により環状に形成されたパッキンを示している。
図1中符号26は竜頭を示している。
【0028】
図2〜
図4に示すように胴21はケース12の正面側に突出する環状凸部31を有している。環状凸部31はその先端及び内周にそれぞれ開放して形成された支持凹部32を有している。この支持凹部32の底面に透視カバー22の周部裏面が接触され、この透視カバー22の周面と支持凹部32との間に挟まれたパッキン24を介して環状凸部31の内側に透視カバー22が液密に装着されている。したがって、環状凸部31は透視カバー22を囲んで設けられている。
【0029】
環状凸部31の外周に係合突起33が形成されている。係合突起33は、環状凸部31の周方向に延びて、例えば環状凸部31の外周を途切れることなく一周連続している。この係合突起33の突出寸法は例えば(0.6±0.1)mmであることが好ましい。
【0030】
図4に示すように係合突起33は第1斜面33aと第2斜面33bを有している。第1斜面33aは、環状凸部31の根元を基準として、第2斜面33bより環状凸部31の先端に近い面であり、係合突起33の先端面側ほど環状凸部31の根元側に近付くように傾斜されている。第2斜面33bは、環状凸部31の根元を基準として第1斜面33aより環状凸部31の根元に近い面であり、係合突起33の先端面側ほど環状凸部31の根元側から遠ざかるように傾斜されている。したがって、係合突起33は先細り形状に形成されている。この第2斜面33bは係合面として利用される。
【0031】
胴21は、環状凸部31の根元部を囲む凸部34と凹溝35を有している。凸部34はケース12の正面側に突出して環状に形成されている。凹溝35は、凸部34と環状凸部31とにより仕切られて環状に形成されていて、ケース12の正面側に開放されている。
胴21は、凹溝35と環状凸部31の根元部とがなす角部に環状段部36を有している。そのため、環状凸部31の周面に、環状段部36と係合突起33とで仕切られた環状の係合凹部31a(
図4参照)が形成されている。
【0032】
ケース12の正面側にベゼル41が回転操作可能に配置されている。
図1に示すようにベゼル41はその内径が透視カバー22より大きいリング形をなしている。ベゼル41はその表面に所定の表示42を有している。これとともに、ベゼル41が使用者により回転操作される時、操作者の指が滑らないようにするための凸凹43が、ベゼル41の外周に形成されている。
【0033】
ベゼル41は例えば胴21と同種の金属製であり、
図3及び
図4に示すように内周凹部44、嵌合凹部45、少なくとも一個の穴46、カバー部47、及び挿入凸部48を有している。
【0034】
内周凹部44は、ベゼル41の周方向に一周連続し、かつ、ベゼル41で囲まれた内側空間及びベゼル41の裏面に開放されている。嵌合凹部45は、ベゼル41の周方向に一周連続し、かつ、ベゼル41の厚み方向に沿って内周凹部44を仕切った縦面に開放して設けられている。
【0035】
穴46は内周凹部44に開放して設けられている。具体的に、穴46は、前記縦面から折れ曲がって連続して内周凹部44を仕切った横面に開放して設けられている。前記横面は斜面であっても、段差を有する面であってもよい。穴46は、一箇所のみ図示したが、本実施形態では、ベゼル41の周方向に180度隔てられた二個設けられている。なお、複数の穴46とする場合、これらをベゼル41の周方向に等間隔に隔てて設ければよい。又、穴46は前記縦面に開放して設けることも可能である。
【0036】
カバー部47は、内周凹部44に対してベゼル41の中心側に突出し、このベゼル41の最小内径を規定するとともに、環状凸部31の先端を覆う部位である。挿入凸部48は、環状であって、ベゼル41の裏面部に形成され凹溝35の一部に挿入される部位である。
【0037】
図2〜
図4に示すようにベゼル41にこれから脱落しないように取付け部材51が保持され、この取付け部材51を介して胴21にベゼル41が回転操作可能に取付けられている。
【0038】
取付け部材51は、弾性変形が可能な材料、例えば弾性を有するプラスチックス等の合成樹脂の一体成形品であり、
図6及び
図7に示すようにリング形に作られている。
図3〜
図7に示すように取付け部材51は、外周部位52、ベース部位53、内周部位54、溝55、係合部56、突起57、及び嵌合凸部58を有している。
【0039】
外周部位52は、内周凹部44を仕切った前記縦面に接して内周凹部44に配置される部位である。この外周部位52の外周に嵌合凸部58が突出されている。嵌合凸部58は外周部位52を一周連続して形成されている。この嵌合凸部58は嵌合凹部45に嵌合される部位である。
【0040】
ベース部位53は外周部位52に連続して設けられている。ベース部位53は内周凹部44を仕切った前記横面に接する平面53aを有し、この平面53aに突起57が穴46と同数でかつ同じ配置に突出されている。突起57は穴46に嵌合される部位である。
【0041】
内周部位54は、外周部位52との間に環状溝59を形成してベース部位53に連続されている。したがって、内周部位54と外周部位52とはベース部位53を介して互いに連続している。
図5に示すように環状溝59の幅はベース部位53から遠ざかるに従い次第に広がっている。
【0042】
内周部位54の長さは外周部位52の長さより短い。この内周部位54は、
図6及び
図7に示すように環状溝59に連通して取付け部材51の周方向に等間隔に設けられた複数の溝55によって、取付け部材51の周方向に複数に分けられている。内周部位54は外周部位52に接離する方向に弾性変形が可能であり、この弾性変形は環状溝59によって許容される。更に、内周部位54は、各溝55によって複数に分けられていることから、更に容易に弾性変形をすることが可能である。
【0043】
係合部56は内周部位54の先端部でかつ外周部位52に対向しない側面に突出されている。係合部56は内周部位54を一周連続している。この係合部56は、胴21の係合凹部31aに嵌入されるとともに、係合突起33の第2斜面33bに環状凸部31の根元側から係合される部位である。
【0044】
図5に示すように係合部56は、斜状面56aと係合面56bを有している。斜状面56aは、斜面又は円弧面で形成されている。係合面56bは係合突起33の第2斜面33bと同様な斜面で形成されている。
【0045】
取付け部材51は、各突起57をベゼル41の穴46に夫々嵌合させるとともに、嵌合凸部58をベゼル41の嵌合凹部45に凹凸嵌合させることにより、ベゼル41に取付けられている。この取付け状態は
図3及び
図4に示される。前記凹凸嵌合により、取付け部材51をベゼル41の厚み方向に動かないように保持できる。このため、取付け部材51をベゼル41に固定状態に保持をするために接着剤や固定部品を用いることを要しない。
【0046】
同取付け状態で、取付け部材51の外周部位52はベゼル41の内周凹部44に配置されている。この外周部位52の外周は内周凹部44を仕切った前記縦面に接着されることなく略垂直に立った状態で接触し、ベース部位53の平面53aは内周凹部44を仕切った前記横面に接着されることなく接触している。
【0047】
更に、同取付け状態で、外周部位52の先端は、ベゼル41の裏面から突出されている。しかも、同取付け状態で、取付け部材51の内周部位54は、外周部位52に対して斜めになっている。
【0048】
取付け部材51は、ベゼル41から脱落しないように嵌合凸部58と嵌合凹部45との嵌合により保持されている。更に、取付け部材51は、前記横面への平面53aの接触と前記凹凸嵌合とによって、ベゼル41に厚み方向に動かないように保持されている。又、取付け部材51は、突起57と穴46との嵌合によって、ベゼル41に対しその周方向に移動することがないように位置決めされている。
【0049】
ベゼル41は、以上のように保持された取付け部材51を介して胴21に取付けられる。この作業は、取付け部材51が胴21の環状凸部31の少なくとも外周を囲むように、ベゼル41を環状凸部31に被せて押込むことにより行われる。
【0050】
この場合、まず、取付け部材51の係合部56が、環状凸部31の外周に接するに伴い内周部位54が外周部位52に近づく方向に弾性変形される。ベゼル41の押込みが進行するに伴い、係合部56が環状凸部31の係合突起33に接するので、内周部位54は更に弾性変形をする。それにより、係合部56が係合突起33を乗り越える。
【0051】
このとき、係合突起33の第1斜面33aと係合部56の斜状面56aが接する。これにより、係合部56が係合突起33に引っ掛かってベゼル41の押し込みが停止されることはない。しかも、内周部位54は、各溝55によって複数に分けられていて、容易に弾性変形をすることが可能である。したがって、第1斜面33a及び斜状面56aの案内作用によって、係合部56は係合突起33を容易に乗り越えることができる。
係合部56が係合突起33を乗り越えた直後、取付け部材51の外周部位52の先端が凹溝35の底面に接する。それにより、ベゼル41の押込みによる移動が停止される。
【0052】
これとともに、前記乗り越えの直後に、内周部位54がその弾性力で
図3中斜め左上向きに復元されるに伴って、係合部56が環状凸部31の係合凹部31aに入り込み、この係合部56の係合面56bが、係合突起33の第2斜面(係合面)33bに環状凸部31の根元側から引っ掛かった状態に係合される。これにより、ベゼル41がケース12の厚み方向に位置決めされて胴21に取付けられる。なお、この取付け状態で、凹溝35の底面に接した外周部位52が弾性変形をする場合、係合部56と係合突起33との係合がより安定し、ベゼル41の取付け状態がより安定するので好ましい。
【0053】
こうした取付けによりベゼル41の挿入凸部48が、胴21の凹溝35に入り込み凸部34の内周に嵌合される。これにより、ベゼル41が胴21の径方向に移動することが防止される。又、ベゼル41のカバー部47が、胴21に形成された環状凸部31の先端面を覆って、透視カバー22の周縁に近接して配置される。なお、カバー部47を省略し、若しくはベゼル41の中心方向への突出幅を短くして、このカバー部47の内周と透視カバー22の周縁との間に、環状凸部31の先端面を露出させるようにしてもよい。
【0054】
以上のようにベゼル41が胴21に取付けられた状態で、取付け部材51は胴21の環状凸部31とベゼル41とで挟まれ、その内周部位54は弾性変形を維持した状態にある。これにより、内周部位54の弾性力で、係合部56が環状凸部31の外周に弾性的に押し付けられるとともに、その反力がベゼル41に与えられる。
【0055】
この反力によって、ベゼル41がその径方向にがたつかないように保持される。これとともに、環状凸部31の外周とこれに弾性的に接した内周部位54との摩擦係合力によって、ベゼル41の回転操作力が規定される。このようにベゼル41のがたつき止めとベゼル41の回転操作力の規定とを、そのための専用部品を要することなく取付け部材51を利用して実現できる。
【0056】
なお、本実施形態では、ベゼル41の二個の穴46に取付け部材51の突起57が夫々嵌合されている。このため、ベゼル41が使用者により回転操作された場合、取付け部材51はベゼル41と同じ回転角度で環状凸部31の周りを回転される。
又、ベゼル41まわりをメンテナンスする場合、ベゼル41を胴21から外すには、ベゼル41にこれを外す外力を人為的に加えればよい。
【0057】
それにより、取付け部材51の内周部位54が外周部位52に近づく方向に弾性変形される。この場合、胴21の環状段部36の高さに応じて内周部位54は外周部位52より短いので、内周部位54の弾性変形に伴い先端が凹溝35の底面に接して擦れることがない。したがって、内周部位54は確実に弾性変形される。
【0058】
内周部位54の弾性変形を伴って係合部56が環状凸部31の係合突起33を乗り越えることにより、胴21からベゼル41が外される。このとき、係合突起33の第2斜面33bと係合部56の係合面56bの案内作用によって、係合部56は係合突起33を容易に乗り越えることができる。しかも、内周部位54は、各溝55によって複数に分けられていて、より容易に弾性変形をすることが可能である。
【0059】
こうしてベゼル41が外された状態で、このベゼル41、胴21の環状凸部31、及び取付け部材51のクリーニングを行うことで、ベゼル41まわりのメンテナンスをすることができる。更に、場合によってはクリーニングに加えて取付け部材51の交換を行うことで、ベゼル41まわりのメンテナンスをすることができる。
【0060】
以上説明したように胴21に対してベゼル41が脱着される場合、取付け部材51の係合部56が環状凸部31の係合突起33を乗り越える。このとき、取付け部材51の内周部位54は外周部位52に近付けられるように弾性変形する。言い換えれば、係合部56を有した内周部位54の弾性変形を伴って、係合部56が係合突起33を逃げながらこれを乗り越える。これにより、ベゼル41の脱着において係合部56と係合突起33とが競り合うにも拘らず、係合部56と係合突起33との強度が同じであっても異なっていても、これらが削られることが抑制される。
【0061】
したがって、胴21にベゼル41が取付けられた状態での係合部56と係合突起33との掛かり代が減ることが抑制される。それに伴い、ベゼル41の脱着が繰り返された場合でも、ベゼル41が胴21に取付けられた状態を保持する信頼性を維持できる。
【0062】
図8及び
図9は本発明の第2の実施の形態を示している。この第2実施形態の構成は以下の説明を除いて第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成又は同一の機能を奏する構成については、第1実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
第2実施形態では、第1実施形態で説明したベゼル41の穴及びこれに嵌合される取付け部材51の突起57が省略されている。それにより、ベゼル41とこれに接着止めされない取付け部材51とは、相対的に周方向に滑り動くことが可能となっている。なお、以上説明した構成以外は、
図8及び
図9に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。
【0064】
したがって、第2実施形態でも、第1実施形態で説明した理由により本発明の課題を解決できる。加えて、第2実施形態では、ベゼル41の嵌合凹部45と、ベゼル41に接着剤により固定されない取付け部材51の嵌合凸部58は、それらの凹凸嵌合部分において滑ることが可能である。これにより、回転操作されたベゼル41に取付け部材51が追従して回転される場合、取付け部材は、ベゼル41の回転角度とは異なる角度で取付け部材51が回転されることが許容される。
【0065】
図10は本発明の第3の実施の形態を示している。この第3実施形態の構成は以下の説明を除いて第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成又は同じ機能を奏する構成については、第1実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
第3実施形態で、取付け部材51の内周部位54は、複数に分けられずに、周方向に一回り連続して形成されている。これ以外の構成は、
図10に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。
したがって、第3実施形態でも、第1実施形態で説明した理由により本発明の課題を解決できる。
【0067】
図11及び
図12は本発明の第4の実施の形態を示している。この第4実施形態の構成は以下の説明を除いて第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成又は同じ機能を奏する構成については、第1実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
第4実施形態の腕時計11は、ベゼル41を任意の回転位置に保持するクリックストップ手段61を更に備えているとともに、第1実施形態で説明したベゼル41の挿入凸部及び胴21の凸部が省略されている。
図11に示すようにクリックストップ手段61は、例えばクリック係合部62と、クリック部材63と、コイルばね64を有している。
【0069】
クリック係合部62は、
図12に示すように胴21が有する凹溝35の底面に接する外周部位52の端面に設けられている。このクリック係合部62は、取付け部材51の周方向に交互に並んだ複数の凹凸により形成されている。クリック係合部62の凸部62a(
図12参照)は、凹溝35の底面に向けて先細りとなって突出された三角形をなしている。これとともに、隣接した三角形の凸部62a間に形成されたクリック係合部62の凹部62b(
図12参照)は、凹溝35の底面に向けて末広がり状に広げられている。
【0070】
図11に示すように凹溝35の底面に開放する収容溝38が胴21に形成されている。収容溝38は例えば円形の縦穴からなる。この収容溝38の内側に、クリック部材63とコイルばね64が収容されている。
【0071】
クリック部材63は例えば鋼球からなる。このクリック部材63は、収容溝38をその軸方向に移動可能であるが、この収容溝38の開口を狭めた開口縁部38aによって、収容溝38から抜け止めされている。クリックばね64はその弾性力でクリック部材63を付勢している。この付勢によりクリック部材63の一部が収容溝38から突出され、この突出部がクリック係合部62に押し付けられている。
【0072】
クリック係合部62の前記突出部は、クリック係合部62に係脱自在であり、その係合によりベゼル41が不用意に回転しないように保持される。ベゼル41が回転操作されるに伴い、クリック部材63はクリック係合部62の凸部62aで押されるとともにコイルばね64の付勢力に抗して収容溝38内に押し込められる。それにより、クリック係合部62へのクリック部材63の係合が外れるので、ベゼル41の回転操作が継続される。その直後、クリック部材63がコイルばね64の付勢力でクリック係合部62の凹部62bに押し付けられて、クリック係合部62とクリック部材63とが係合される。
【0073】
したがって、使用者がベゼル41を任意角度に回転した状態で回転操作を停止させると、クリックストップ手段61によって、ベゼル41の回転操作が停止された位置(任意位置)にベゼル41を保持することができる。なお、ベゼル41の回転操作に伴い、クリック部材63がクリック係合部62に対する係脱を繰り返すので、それに伴う衝撃音と共に、節度感を与えることができる。
【0074】
そして、第4実施形態では、突起57と穴46との嵌合により、取付け部材51がベゼル41と同じ回転角度で回転される。第4実施形態の腕時計11では、既述のようにクリックストップ手段61の一部を取付け部材51が担っている。このため、ベゼル41の回転操作に拘わらず、ベゼル41の表面に付された表示とクリック係合部62との位置関係が、狂うことがない。
【0075】
なお、4実施形態で以上説明した以外の構成は、
図11及び
図12に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。
したがって、第4実施形態でも、第1実施形態で説明した理由により本発明の課題を解決できる。