(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262488
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ダンパーおよびそれを備えるハンドル装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/12 20060101AFI20180104BHJP
B60N 3/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
F16F9/12
B60N3/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-213233(P2013-213233)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-75206(P2015-75206A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】市岡 大明
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 淳
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−506256(JP,A)
【文献】
特開2007−292286(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/096235(WO,A1)
【文献】
特開2002−021902(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/132793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N3/00−99/00
F16F9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部と、前記外筒部の内側に形成された内筒部と、前記外筒部および前記内筒部を連設する底部と、前記外筒部および前記内筒部の間に画成されて粘性流体が充填される充填空間部と、を有するハウジングと、
頭部と、前記頭部から垂下して前記充填空間部に配設されるロータ筒部と、を有するロータと、
充填空間部を閉塞するシール部材と、を備え、
前記ロータは、前記ロータ筒部の外周面に、前記シール部材よりも前記底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第1溝部と、前記ロータ筒部の内周面に、前記シール部材よりも前記底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第2溝部と、を有し、
前記第1溝部の少なくとも一部は、前記ロータの内部と外部を連通するように形成された連通部を有し、
前記第2溝部は、前記連通部を通って前記ロータの内側に移動した気泡を収集可能に設けられ、収集した気泡が前記ロータの内側から外側に移動することを抑えるために前記連通部と周方向に離間して設けられることを特徴とするダンパー。
【請求項2】
前記連通部は、底部側の先端部を切り欠くように形成された切欠部を含むことを特徴とする請求項1に記載のダンパー。
【請求項3】
前記連通部を有する前記第1溝部と、前記連通部を有さない前記第1溝部が、周方向に交互に配設されることを特徴とする請求項1または2に記載のダンパー。
【請求項4】
前記連通部は、前記第1溝部に形成される連通孔を含み、
前記連通孔を有する前記第1溝部と、前記切欠部を有する前記第1溝部が、周方向に交互に配設されることを特徴とする請求項2に記載のダンパー。
【請求項5】
外筒部と、前記外筒部の内側に形成された内筒部と、前記外筒部および前記内筒部を連設する底部と、前記外筒部および前記内筒部の間に画成されて粘性流体が充填される充填空間部と、を有するハウジングと、
頭部と、前記頭部から垂下して前記充填空間部に配設されるロータ筒部と、を有するロータと、
充填空間部を閉塞するシール部材と、を備え、
前記ロータは、前記ロータ筒部の外周面に、前記シール部材よりも前記底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第1溝部と、前記ロータ筒部の内周面に、前記シール部材よりも前記底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第2溝部と、を有し、
前記第1溝部の少なくとも一部は、前記ロータの内部と外部を連通するように形成された連通部を有し、
前記第2溝部は、前記連通部と周方向に離間して設けられ、
前記シール部材は、前記ロータの外側に配設される第1シール部材と、前記ロータの内側に配設される第2シール部材と、を有し、
前記ロータの内周面および前記内筒部の外周面に形成される前記第2シール部材の保持空間は、前記ロータの外周面および前記外筒部の内周面に形成される前記第1シール部材の保持空間より軸方向に長く、
前記第2シール部材は、前記第2シール部材の保持空間内で軸方向に移動可能であることを特徴とするダンパー。
【請求項6】
通常状態から使用状態へ回転可能に設けられ、使用者が把持するための把持部と、
前記把持部を回転可能に軸支する軸部と、
前記把持部を前記使用状態から前記通常状態に戻る方向に付勢するバネ部と、
前記把持部の回転を減衰するダンパーと、を備え、
前記ダンパーは、
外筒部と、前記外筒部の内側に形成された内筒部と、前記外筒部および前記内筒部を連設する底部と、前記外筒部および前記内筒部の間に画成されて粘性流体が充填される充填空間部と、を有するハウジングと、
頭部と、前記頭部から垂下して前記充填空間部に配設されるロータ筒部と、を有するロータと、
充填空間部を閉塞するシール部材と、を備え、
前記ロータは、前記ロータ筒部の外周面に、シール部材よりも前記底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第1溝部と、前記ロータ筒部の内周面に、シール部材よりも前記底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第2溝部と、を有し、
前記第1溝部の少なくとも一部は、前記ロータの内部と外部を連通するように形成された連通部を有し、
前記第2溝部は、前記連通部を通って前記ロータの内側に移動した気泡を収集可能に設けられ、収集した気泡が前記ロータの内側から外側に移動することを抑えるために前記連通部と周方向に離間して設けられることを特徴とするハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングとロータの相対回転によりトルクを生じるダンパーおよびそれを備えるハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の助手席や後部座席の車室の壁面に、乗車者が把持するハンドル装置が設けられる。このハンドル装置は、回転可能に設けられる把持部と、把持部を所定の回転方向に付勢するバネ部と、把持部の回転を減衰するダンパーとを有する。
【0003】
たとえば特許文献1には、回転ダンパを備えるアシストグリップ装置が開示される。この回転ダンパは、環状室が設けられるハウジングと、本体部が環状室に挿入されてハウジングに対して相対回転可能なロータと、環状室に充填されるシリコンオイルと、ロータとハウジングの間をシールするシール部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−221247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の環状室にはシリコンオイルが充填されるものの気泡が残留する可能性がある。またシリコンオイルが熱膨張によって漏れた場合に、気泡が環状室に入る可能性がある。この気泡は、ハウジングおよびロータの相対回転時に環状室内に広がり、この気泡が広がった箇所では、シリコンオイルによる抵抗が得られず、ダンパーが発揮するトルクを低下させる。環状室はシリコンオイルの漏れを防ぐためにシールされているため、ダンパーの組み立て後に気泡を取り除くことは困難である。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダンパー動作時のトルクの低下を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のダンパーは、外筒部と、外筒部の内側に形成された内筒部と、外筒部および内筒部を連設する底部と、外筒部および内筒部の間に画成されて粘性流体が充填される充填空間部と、を有するハウジングと、頭部と、頭部から垂下して充填空間部に配設されるロータ筒部と、を有するロータと、充填空間部を閉塞するシール部材と、を備える。ロータは、ロータ筒部の外周面に、シール部材よりも底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第1溝部と、ロータ筒部の内周面に、シール部材よりも底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第2溝部と、を有する。第1溝部の少なくとも一部は、ロータの内部と外部を連通するように形成された連通部を有する。第2溝部は、連通部と周方向に離間して設けられる。
【0008】
この態様によると、ダンパーの組み立て時に残留した充填空間部内の気泡を第1溝部および第2溝部に収集して、気泡がロータの周面に広がることを抑えることができる。また、ロータの外側の気泡を連通部を通ってロータの内側に移動させ、第2溝部に気泡を溜め、ダンパーの動作時のトルクの低下を抑えることができる。また第2溝部を連通部と周方向に離間して設けることで、ロータの内側から外側に気泡が移動することを抑えることができる。
【0009】
本発明の別の態様は、ハンドル装置である。この装置は、通常状態から使用状態へ回転可能に設けられ、使用者が把持するための把持部と、把持部を回転可能に軸支する軸部と、把持部を使用状態から通常状態に戻る方向に付勢するバネ部と、把持部の回転を減衰するダンパーと、を備える。ダンパーは、外筒部と、外筒部の内側に形成された内筒部と、外筒部および内筒部を連設する底部と、外筒部および内筒部の間に画成されて粘性流体が充填される充填空間部と、を有するハウジングと、頭部と、頭部から垂下して充填空間部に配設されるロータ筒部と、を有するロータと、充填空間部を閉塞するシール部材と、を備える。ロータは、ロータ筒部の外周面に、シール部材よりも底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第1溝部と、ロータ筒部の内周面に、シール部材よりも底部側に形成され、軸方向に沿って延在する第2溝部と、を有する。第1溝部の少なくとも一部は、ロータの内部と外部を連通するように形成された連通部を有する。第2溝部は、連通部と周方向に離間して設けられる。
【0010】
この態様によると、ダンパーの組み立て時に残留した充填空間部内の気泡を第1溝部および第2溝部に収集して、気泡がロータの周面に広がることを抑えることができる。また、ロータの外側の気泡を連通部を通ってロータの内側に移動させ、第2溝部に気泡を溜め、ダンパーの動作時のトルクの低下を抑えることができる。また第2溝部を連通部と周方向に離間して設けることで、ロータの内側から外側に気泡が移動することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダンパーの動作時のトルクの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るハンドル装置の組み立て図である。
【
図3】
図3(a)は、ロータの正面図であり、
図3(b)はロータの斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図2(a)に示すダンパーの線分A−Aの断面図であり、
図4(b)は、ロータ、第1Oリングおよび第2Oリングの断面図である。
【
図6】変形例のダンパーの軸方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ダンパーは、粘性流体であるオイルを注入されたハウジングと、ハウジングに挿入されたロータとを有する。このダンパーは、ハウジングとロータの相対回転時のせん断抵抗および撹拌抵抗によって、トルクを発生する。
【0014】
ダンパーの組み立て時に粘性流体の充填空間部に気泡が残留する可能性がある。また、粘性流体は温度によって体積が変化し、ハウジング内に気泡が入り込む可能性がある。この気泡は、ハウジングとロータの相対回転時に加圧されて、ロータの周面に広がり、せん断抵抗を変化させ、気泡が広がるにつれてトルクが弱まる可能性がある。つまり、ハウジングとロータの相対回転を何度も行うと、ダンパーが発揮するトルクが小さくなる可能性がある。
【0015】
そこで、ロータの内外の周面に第1および第2の溝部を形成し、その溝部に気泡を収集することで気泡がロータの周面に広がることを抑えることができる。さらに、充填空間部においてロータの外周側は、回転時の遠心力によって粘性流体の圧力が高まり、粘性流体より軽い気泡がロータに形成された連通部を通ってロータの内側に移動させることができる。ロータの内側の粘性流体は外側より圧力が低いため、内側に移動した気泡によるせん断抵抗の変化は小さくなる。また、ロータの外側では内側よりモーメントが大きくなり、ロータの外側でのトルクの発生を安定させることで、ダンパーの全体としてトルクの低下を抑えることができる。ロータの内周面に第2の溝部が形成されるため、第2の溝部に気泡を収集して気泡がロータの周面に広がること抑えることができる。また、ダンパーの動作が終了しても、連通部と第2の溝部を離間するため、ロータの内側から外側に気泡が移動することを抑えることができる。つまり、ロータの内周面に形成された第2の溝部に気泡を閉じ込めることができる。このように、ダンパーの動作時のトルクの低下を抑えることができる。このダンパーおよびそれを備えるハンドル装置の形態について説明をする。
【0016】
図1は、実施形態に係るハンドル装置10の組み立て図である。ハンドル装置10は、軸部12、保持部14、バネ部16、把持部18およびダンパー20を備える。ハンドル装置10は、車室の壁面に設けられ、壁面に対して回転可能に設けられる。保持部14は、バネ部16およびダンパー20を保持する。バネ部16は、把持部18が車室の壁面に張り付くように付勢する。把持部18は、使用者に把持される。軸部12は把持部18を回転可能に軸支する。
【0017】
把持部18が車室の壁面に張り付いた状態、または車室の壁面に近接して静止した状態を通常状態といい、通常状態から把持部18が回転されて車室の壁面から離れた状態を使用状態という。バネ部16は、使用状態から通常状態に向かう回転方向に付勢する。
【0018】
使用者がハンドル装置10の使用する際に、把持部18をつまんで軸部12で回転させ、使用後は把持部18から手を離し、把持部18を元の回転位置に戻す。把持部18はバネ部16に付勢されて、車室の壁面に張り付くように戻る。把持部18が壁面に当接したときに大きな衝撃音が鳴ならないように、ダンパー20により把持部18の回転速度を抑え、衝撃音を抑える。ダンパー20について詳細に説明する。
【0019】
図2は、実施形態のダンパー20の斜視図である。
図2(a)は、口部33側のダンパー20の斜視図であり、
図2(b)は、底部38側のダンパー20の斜視図である。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0020】
ダンパー20は、ハウジング30、ロータ50、第1Oリング(不図示)および第2Oリング(不図示)を備える。ロータ50、第1Oリングおよび第2Oリングは、ハウジング30に収容される。ハウジング30およびロータ50は円筒形状に形成され、中央には軸部12が挿入される。
【0021】
ハウジング30は、外筒部32、口部33、内筒部34、突部36および底部38を有する。ハウジング30は、外筒部32および内筒部34により2重構造を有し、その間に粘性流体が充填される。粘性流体として、オイルなどの液体が用いられる。
【0022】
外筒部32および内筒部34の間にロータ50の筒部54が挿入される。ハウジング30およびロータ50は相対回転可能であり、ダンパー20は相対回転時の粘性抵抗によって減衰力を発生する。ダンパー20の各部材の構成について詳細に説明する。
【0023】
図3(a)は、ロータ50の正面図であり、
図3(b)はロータ50の斜視図である。
図4(a)は、
図2(a)に示すダンパー20の線分A−Aの断面図であり、
図4(b)は、ロータ50、第1Oリング80および第2Oリング82の断面図である。
図4(b)は、
図4(a)のダンパー20からハウジング30を除いた断面である。
【0024】
図4(a)に示すように、ハウジング30は外筒部32および内筒部34の間に画成されて粘性流体が充填される充填空間部37をさらに有する。充填空間部37は外筒部32および内筒部34と同じく筒状である。第1Oリング80は、ロータ50の外側に配設され、第2Oリング82はロータ50の内側に配設される。第1Oリング80および第2Oリング82(これらを区別しない場合、Oリングという)は充填空間部37を閉塞する。ハウジング30およびロータ50の間に第1Oリング80および第2Oリング82が設けられる。第1Oリング80および第2Oリング82は、粘性流体の漏れを抑えるシール部材として機能し、ゴム材で形成される。
【0025】
第1Oリング80および第2Oリング82の線径はほぼ同じである。外筒部32および内筒部34は、底部38により一端部が連設される。外筒部32の内側に形成された内筒部34は、内周面に軸方向に沿って延在する溝部40を有する。
【0026】
突部36は、外筒部32の外周面に径方向外向きに突出するように形成される。突部36は、保持部14や車室の内壁に当接して、ハウジング30の回転を規制する。
【0027】
ロータ50は、頭部52、筒部54、突部56、環状凹部58、第1溝部60a、第1溝部60b、切欠部62、連通孔64および第2溝部66を有する。頭部52は、中央孔53が形成された円盤状である。頭部52の表面に軸方向外向き突出する突部56が形成される。頭部52および突部56は、ハウジング30の口部33から露出する。
【0028】
突部56は、把持部18に当接してロータ50の回転を規制する。筒部54は、頭部52から垂下するよう延出する。環状凹部58は、筒部54の外周面に形成され、筒部54の頭部52側、すなわち頭部52との連結部分近傍に設けられる。環状凹部58には第1Oリング80が配設される。
【0029】
筒部54の外周面に、第1Oリング80よりも底部38側、すなわち先端側に形成され、軸方向に沿って延在する第1溝部60aおよび第1溝部60b(これらを区別しない場合、第1溝部60という)を有する。第1溝部60は筒部54の外周面に凹むように形成される。これにより第1溝部60は、ロータ50の外周側に残留した気泡を収集することができる。第1溝部60は周方向に等間隔離れて複数形成される。
【0030】
第1溝部60aは、底部38側の先端部を切り欠くように形成された切欠部62を有する。第1溝部60bは、複数の連通孔64を有する。切欠部62および連通孔64は、ロータ50の内部と外部を連通するように形成された連通部として機能する。これにより、ダンパー20の組み立て時に残留した充填空間部37内の気泡を連通部、すなわち切欠部62および連通孔64を通ってロータ50の内側に移動させることができる。また、切欠部62および連通孔64は第1溝部60に形成されるため、第1溝部60に収集した気泡を切欠部62および連通孔64へ容易に移動させることができる。そしてロータ50の内側に移動した気泡を第2溝部66に溜めることで、ダンパー20の動作時のトルクの低下を抑えることができる。
【0031】
図3(b)に示すように切欠部62を有する第1溝部60aと連通孔64を有する第1溝部60bとは、周方向に交互に配設される。第1溝部60aおよび第1溝部60bのそれぞれに切欠部62および連通孔64の両方を形成する場合と比べて、ロータ50の剛性の低下を抑えることができる。また、切欠部62は筒部54の先端に形成され、連通孔64は筒部54の中途に形成されることで、切欠部62および連通孔64は軸方向に異なる位置に設けられる。これにより、軸方向に延在した気泡を切欠部62および連通孔64でロータ50の内側に移動させることができる。このように、ロータ50の剛性の低下を抑えつつ、気泡の収集性能を高めることができる。また、切欠部62を筒部54の先端に形成することで、ロータ50の連通部を容易に加工しつつ、底部38に溜まった気泡を収集しやくできる。
【0032】
図4(b)に示すように第2溝部66は、筒部54の内周面に、第2Oリング82よりも底部38側、すなわち先端部側に形成され、軸方向に沿って延在する。第2溝部66は、切欠部62および連通孔64と周方向に離間して設けられる。これにより、切欠部62および連通孔64を通ってロータ50の内側に移動した気泡を第2溝部66に回収すれば、回転終了時に第2溝部66内の気泡が切欠部62および連通孔64を通ってロータ50の外側に移動することを抑えることができる。なお、気泡を収集する溝部をハウジング30に形成した場合、ハウジング30およびロータ50の相対回転時に、ハウジング30の溝部とロータ50の切欠部62および連通孔64とが何度も相対するため、ロータ50の内側にある気泡が切欠部62および連通孔64を通ってロータ50の外側に移動する可能性がある。第1溝部60および第2溝部66をロータ50に形成し、それらの周方向位置を異ならせることで、相対回転時に気泡がロータ50の外側に出ることを抑えることができます。
【0033】
ロータ50の内周面および内筒部34の外周面に第2Oリング82を保持する第2保持部70が形成される。ロータ50の外周面および外筒部32の内周面に第1Oリング80を保持する第1保持部68が形成される。第2保持部70により画成される保持空間は、第1保持部68より軸方向に長い。Oリングは、保持空間内で軸方向に移動できる。第2保持部70の軸方向長さは、第2Oリング82の線径の2倍以上である。これにより、ロータ50の内側に移動した気泡を第2保持部70の空間に移動させることができる。また、粘性流体をハウジング30に過剰に入れた場合、第2保持部70にて粘性流体の量のばらつきを吸収することができる。ダンパー20を減圧空間で組み立てることで、充填空間部37の気泡の残留を抑えることができる。また。組み立て後にダンパー20を大気圧に移動させると、第2Oリング82が外内の圧力差によって第2保持部70内で筒部54の先端側に引き込まれる。
【0034】
図5は、変形例のロータ150を説明するための図である。
図5(a)は、第1Oリング80およびロータ150の正面図であり、
図5(b)はロータ150の軸方向に沿った中央断面図である。なお
図5(b)は第1Oリング80および第2Oリング82を設けている。また、
図6は、変形例のダンパー120の軸方向に沿った断面図である。
【0035】
変形例のロータ150は、
図3に示すロータ50と、溝部、連通部および保持部の構成が異なる。ロータ150は、頭部52と、頭部52から垂下する筒部154と、を有する。筒部154は、第1Oリング80よりも底部38側の外周面に形成され、軸方向に沿って延在する第1溝部160aおよび第1溝部160b(これらを区別しない場合、第1溝部160という)と、第2Oリング82よりも底部38側の内周面に形成され、軸方向に沿って延在する第2溝部166とを有する。
【0036】
ハウジング130は、外筒部132と内筒部134とを有し、外筒部132と内筒部134の間に形成される筒状の充填空間部37を有する。ロータ150の筒部154は、充填空間部37に挿入される。
【0037】
第1溝部160a、160bおよび第2溝部66により充填空間部37内に残留した気泡を収集することができる。第1溝部160aは、底部38側の先端部を切り欠くように形成された切欠部62を有する。切欠部62は、ロータ150の内部と外部を連通するように形成された連通部として機能する。一方で、第1溝部160bには切欠部62などの連通部は形成されない。つまり、
図5(a)に示すように筒部54の外周面には、切欠部62を有する第1溝部160aと、切欠部62を有さない第1溝部160bが、周方向に交互に配設される。これにより、ロータ150の先端側の剛性の低下を抑えることができる。
【0038】
第1溝部160は、8本設けられ、
図3に示すロータ50の第1溝部60の2倍の数である。溝部の数を増やすことで、ロータ150は、相対回転時の撹拌抵抗が高まり、大きなトルクを発生することができる。
【0039】
図5(b)に示すように筒部154の内周面に形成される第2溝部166は、第1溝部160の半分の4本設けられる。また、第2溝部166は、切欠部62と周方向に離間して設けられる。これにより、第2溝部166に移動した気泡が切欠部62を通ってロータ50の外側に移動することを抑えることができる。
【0040】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0041】
実施形態では、ハウジング30の突部36が保持部14や車室の内壁に当接し、ロータ50の突部56が把持部18に当接して把持部18にトルクを伝達する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、ハウジング30の突部36が把持部18に当接し、ロータ50の突部56が保持部14や車室の内壁に当接する態様であってよい。
【0042】
実施形態では、把持部18の通常状態として車室の壁面に張り付く態様を示したが、この態様に限られない。例えば、ハンドル装置10に所定の回転位置で把持部18の回転を規制する規制手段を有し、把持部18が所定の回転位置にある場合を通常状態としてもよい。所定の回転位置では、把持部18が車室内に張り出さない形で静止する。規制手段は、所定の回転位置で把持部18に当接して回転を規制する。
【0043】
実施形態では、シール部材としてOリングを用いる態様を示したが、この態様に限られない。例えば、シール部材としてT型パッキンや、U型パッキンを用いて、充填空間部37から外部への粘性流体の漏れを抑えてよい。
【符号の説明】
【0044】
10 ハンドル装置、 12 軸部、 14 保持部、 16 バネ部、 18 把持部、 20 ダンパー、 30 ハウジング、 32 外筒部、 33 口部、 34 内筒部、 36 突部、 37 充填空間部、 38 底部、 40 溝部、 50 ロータ、 52 頭部、 54 筒部、 56 突部、 58 環状凹部、 60a,60b,60 第1溝部、 62 切欠部、 64 連通孔、 66 第2溝部、 68 第1保持部、 70 第2保持部、 80 第1Oリング、 82 第2Oリング。