(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全光線透過率が85%以上である透明基材上に、脂肪酸銀と銀イオン安定化剤から生成される銀超微粒子を低沸点溶剤中に含有する銀超微粒子含有分散液を含有して成る樹脂組成物層を有する透明材の下記式
T=T1/T0
式中、T1は前記銀超微粒子含有分散液を含有して成る樹脂組成物層を有する透明材の波長420nmの透過率であり、T0は前記銀超微粒子含有分散液を含有しない前記樹脂組成物層を有する透明材の波長420nmの透過率である、
で表される透過率比Tが0.94以下であり、且つ前記透明材中の銀超微粒子の含有量が樹脂分に対して0.1〜1.5重量%であり、前記低沸点溶剤の沸点が40〜120℃の範囲にあることを特徴とする抗菌性ブルーライト波長吸収材。
前記銀超微粒子含有分散液が、高沸点溶剤に脂肪酸銀と銀イオン安定化剤を添加し、これを加熱混合することにより銀超微粒子分散高沸点溶剤を調製し、該銀超微粒子分散高沸点溶剤を低沸点溶剤と混合した後、前記高沸点溶剤及び低沸点溶剤が二相分離すると共に、高沸点溶剤から低沸点溶剤中に銀超微粒子を抽出することにより形成されたものである請求項1記載の抗菌性ブルーライト波長吸収材。
前記銀超微粒子が、粒子表面に脂肪酸が配位し、該脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位して成る銀超微粒子である請求項1又は2記載の抗菌性ブルーライト波長吸収材。
前記脂肪酸又はグリセリドの溶解度パラメーター(SP値)と、低沸点溶剤の溶解度パラメーター(SP値)の差が3以下である請求項3記載の抗菌性ブルーライト波長吸収材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、380〜500nmの波長の光線透過率を抑制するための具体的な手段は記載されていない。また上記特許文献2はメガネレンズ等の光学部品として成形されるものであり、ブルーライトを発する種々の機器に適用して機器から発するブルーライト自体をカットするものではないことから、ブルーライトを発する機器に適用し、ブルーライト自体を容易にカットできるものが望まれている。
また近年、種々の製品に抗菌性能が求められていることから、ブルーライトを吸収可能なフィルム等の材料が抗菌性能も発現できれば、経済性や生産性の点からも有利である。
【0006】
従って本発明の目的は、ブルーライトを発する種々の形態の機器に容易に施すことができ、透明性を維持しつつブルーライトを効率よくカット可能であると共に、抗菌性能をも発現可能なブルーライト吸収材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、全光線透過率が85%以上である透明基材上に、脂肪酸銀と銀イオン安定化剤から生成される銀超微粒子を低沸点溶剤中に含有する銀超微粒子含有分散液を含有して成る樹脂組成物層を有する透明材の下記式
T=T
1/T
0
式中、T
1は前記銀超微粒子含有分散液を含有して成る樹脂組成物層を有する透明材の波長420nmの透過率であり、T
0は前記銀超微粒子含有分散液を含有しない前記樹脂組成物層を有する透明材の波長420nmの透過率である、
で表される透過率比Tが0.94以下であり、且つ前記透明材中の銀超微粒子の含有量が
樹脂分に対して0.1〜1.5重量%であ
り、前記低沸点溶剤の沸点が40〜120℃の範囲にあることを特徴とする抗菌性ブルーライト波長吸収材が提供される。
【0008】
本発明の抗菌性ブルーライト波長吸収材においては、
1.前記銀超微粒子含有分散液が、高沸点溶剤に脂肪酸銀と銀イオン安定化剤を添加し、これを加熱混合することにより銀超微粒子分散高沸点溶剤を調製し、該銀超微粒子分散高沸点溶剤を低沸点溶剤と混合した後、前記高沸点溶剤及び低沸点溶剤が二相分離すると共に、高沸点溶剤から低沸点溶剤中に銀超微粒子を抽出することにより形成されたものであること、
2.前記銀超微粒子が、粒子表面に脂肪酸が配位し、該脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位して成る銀超微粒子であること、
3.前記低沸点溶剤が、メチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトンであること、
4.前記脂肪酸又はグリセリドの溶解度パラメーター(SP値)と、低沸点溶剤の溶解度パラメーター(SP値)の差が3以下であること、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のブルーライト波長吸収材は、透明性に優れていると共にブルーライト波長を効率よくカットすることができ、更に優れた抗菌性能をも発現することができる。
しかもこのブルーライト波長吸収材を構成する樹脂組成物が含有する銀超微粒子含有分散液は銀超微粒子が凝集することなく低沸点溶剤中に均一に分散して存在するため、樹脂組成物においても均一分散し、ブルーライト波長を確実に吸収すると共に、優れた抗菌性能を発現することができる。
また銀超微粒子分散液を樹脂組成物に含有させることにより、前記式(1)で表わされる透過率比Tが0.94以下と、銀超微粒子分散液を含有させる前の樹脂組成物層から形成される透明材に比してブルーライト波長である420nmの波長の透過率が小さくなっており、効果的にブルーライト波長を吸収できることが分かる。
【0010】
本発明のブルーライト波長吸収材のこのような作用効果は後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、脂肪酸銀と銀イオン安定化剤から形成される銀超微粒子を低沸点溶剤中に含有する銀超微粒子含有分散液を含有して成る樹脂組成物層を有し、樹脂組成物層の銀超微粒子の含有量及び透過率比が上記範囲にあるブルーライト波長吸収材は、ブルーライト波長の透過が抑制されていると共に、優れた抗菌性を有している(実施例1〜4)。
これに対して、銀超微粒子含有分散液として、脂肪酸銀とサッカリンの組合せ以外を用いた場合には、透明性が劣っていると共に、所望の抗菌性能が得られていない(比較例1〜2)。また透明材中の銀超微粒子の含有量が少ない場合には、ブルーライト波長の透過が抑制できない(比較例3)。更に透明材中の銀超微粒子の含有量が多い場合には、経済性に劣るだけでなく、透明性が劣るようになり視認性に劣っていることが明らかである(比較例4)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、銀超微粒子に特有のプラズモン吸収を生じる波長域(300〜700nm)がブルーライトの波長域(380〜500nm)と重複することから、特定の銀超微粒子含有分散液を含有する層を有する透明材がブルーライト波長を吸収することを見出し、本発明に到達した。
本発明のブルーライト波長吸収材においては、銀超微粒子が樹脂組成物層に均一に分散されていることにより、ブルーライト波長を効率よくカットすることが可能になると共に、抗菌性能等の銀超微粒子が有する特性を発揮することが可能になる。
すなわち、ブルーライト波長を吸収可能であると共に抗菌性能を発現可能な透明材は、脂肪酸銀と銀イオン安定化剤から生成される銀超微粒子を低沸点溶剤中に含有する銀超微粒子含有分散液を含有する樹脂組成物層をもつ構成である。樹脂組成物層に含有する銀超微粒子含有分散液は、銀超微粒子の分散安定性に優れ、銀超微粒子が凝集することなく分散していることから、樹脂組成物層に混合した場合、透明性に優れていると共に、効率よく抗菌性能を発現することができる。尚、本明細書において、抗菌とは、菌の増殖や繁殖を抑制するものを示す
【0013】
また本発明のブルーライト波長吸収材の透明材においては、銀超微粒子含有分散液を含有することにより、前記式(1)で表される波長420nmに対する透過率の比が0.94以下であり、
図1に示すように、マトリックスとなる樹脂自体はブルーライト波長を透過してしまうものであっても、銀超微粒子が含有されていることによって透過率が顕著に低下しており、ブルーライト波長を吸収することが可能である。
更に、本発明のブルーライト波長吸収材においては、透明材の樹脂組成物層における銀超微粒子の含有量が0.1〜1.5重量%、特に0.2〜1.0重量%の範囲にあることも重要であり、上記範囲よりも銀超微粒子の含有量が少ない場合には、ブルーライト波長吸収性能に劣るようになり、その一方上記範囲よりも多い場合には、銀超微粒子が凝集するおそれがあり、経済的に劣るだけでなく、上記範囲にある場合よりもブルーライト吸収性能が低下するおそれがある。
【0014】
(銀超微粒子含有分散液)
本発明のブルーライト波長吸収材において、全光線透過率が85%以上の透明基材上に形成する樹脂組成物層に含有する銀超微粒子含有分散液は、脂肪酸銀と銀イオン安定化剤から生成される銀超微粒子を低沸点溶剤中に含有する銀超微粒子含有分散液であり、低沸点溶剤中に平均1次粒子径が100nm以下、特に10〜50nm、平均2次粒子径が900nm以下、特に200nm〜700nmの粒子が分散してなる分散液であることから、透過率が90%以上にあり、透明性に顕著に優れている。
尚、本明細書でいう平均1次粒子径とは、銀粒子と銀粒子との間に隙間がないものを一つの粒子とし、その平均をとったものをいう。平均2次粒子径は、銀粒子と銀粒子がパッキングした状態の粒子とし、その平均をとったものをいう。
また銀超微粒子が顕著に凝集することなく均一に分散していることから、優れた抗菌性能を発現することができる。
【0015】
本発明で用いる銀超微粒子含有分散液においては、分散液中に存在する銀超微粒子は、粒子表面に脂肪酸が配位し、この脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位した銀超微粒子であることから、分散安定性に顕著に優れており、長時間経過した場合でも沈殿することがほとんどないことから、透明材を構成する樹脂組成物層においても分散性よく均一に分散する。またこの分散液においては、銀超微粒子は、脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位した銀超微粒子であることから樹脂組成物層で、銀超微粒子表面と樹脂が直接接触することが低減されており、樹脂の分解を有効に抑制して、樹脂の分子量の低下等を低減することができ、成形性や加工性を阻害することも有効に防止されている。
【0016】
[銀イオン安定化剤]
本発明に用いる銀イオン安定化剤としては、低沸点溶媒又は高沸点溶媒にその一部又は全部が可溶し、且つ、酸解離係数(pka)が4.5以下のものがよく、例えば、サリチル酸(pKa2.8)、アスパラギン酸(pKa1.93)、クエン酸(pKa2.90)、フマル酸(pKa2.9)、安息香酸(pKa4.2)、o-安息香酸スルフィミド(サッカリン(pKa2.2))、m-ヒドロキシ安息香酸(pKa4.1)、o-アミノ安息香酸(pKa2.0)、m-アミノ安息香酸(pKa3.2)、p-アミノ安息香酸(pKa3.1)およびこれらの組み合わせがある。pKaとは酸解離定数であり、多塩基酸の場合は、第1段目の値をKaとした時に、pKa=−logKaで定義される値である。
【0017】
本発明において、銀イオン安定化剤との組合せで用いられる脂肪酸銀における脂肪酸としては、ミリスチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,パルミチン酸,n−デカン酸,パラトイル酸,コハク酸,マロン酸,酒石酸,リンゴ酸,グルタル酸,アジピン酸、酢酸等を挙げることができ、中でもステアリン酸銀を好適に使用することができる。
【0018】
[低沸点溶剤]
本発明に用いる銀超微粒子含有分散液において、銀超微粒子を含有する分散媒として使用される低沸点溶剤は、後述する高沸点溶剤の沸点よりも小さく且つ高沸点溶剤と二相分離可能な溶剤であり、低沸点溶剤と銀超微粒子表面に配位する脂肪酸又はグリセリドとのSP値の差が小さいことが重要であり、これにより、高沸点溶剤から銀超微粒子を抽出させると共に、高沸点溶剤を副生物や残渣物と共に除去することが可能になる。
低沸点溶剤の沸点は、好適には40〜120℃の範囲にあることが、透明材を構成する樹脂組成物層の生産性や取扱性等の点から望ましい。
このような低沸点溶剤としては、これに限定されないが、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。
また本発明においては、上記低沸点溶剤の中でも、二相分離に際して高沸点溶剤中の銀超微粒子を効率よく抽出可能とするために、上述したグリセリドと相溶性の高い低沸点溶剤を選択することが望ましいことから、粒子表面に配位する脂肪酸又はグリセリドのSP値(溶解度パラメータ)と、低沸点溶剤のSP値の差(絶対値)が、3以下となるように低沸点溶剤を選択することが望ましい。
具体的には、脂肪酸金属塩としてステアリン酸銀を用いる場合には、メチルイソブチルケトンを好適に使用することができる。
【0019】
[銀超微粒子含有分散液の製造方法]
本発明において、銀超微粒子含有分散液はこれに限定されないが、次の製造方法によって調製される。
(1)第一工程
第一工程では、高沸点溶剤であるグリセリン中で、銀超微粒子表面に脂肪酸又はグリセリドが配位して成る銀微粒子が生成される。このような銀微粒子が形成され得る限りその条件は問わないが、好適には、脂肪酸銀及びサッカリンをグリセリンに添加し、添加した後の高沸点溶剤の温度が130〜170℃、特に140〜160℃の範囲となるように加熱し、加熱温度によって左右されるが、10〜120分間、特に30〜80分間加熱混合することにより、銀微粒子表面に脂肪酸とグリセリドが配位して成る銀超微粒子をグリセリン中に形成することが可能になる。すなわち、脂肪酸銀を上記温度範囲で加熱することにより、脂肪酸銀が脂肪酸と金属銀に分解還元され、金属銀が銀超微粒子を形成し、脂肪酸が粒子表面に配位する。脂肪酸とグリセリンのエステル化反応が進行してグリセリドが生成されると共に、銀超微粒子表面に脂肪酸と同様にグリセリドが配位し、銀超微粒子がグリセリン中に分散される。
この際、抗菌成分である脂肪酸銀は、0.1〜2重量%の量で配合することが、経済性や生産性を損なうことなく、ブルーライト波長吸収性能及び抗菌性能を効率よく発現する上で望ましい。上記範囲よりも脂肪酸銀の配合量を外れる場合には、樹脂組成物層の銀超微粒子の含有量を前述した範囲にすることが困難になる。
【0020】
(2)第二工程
次いで、かかる銀超微粒子含有グリセリンに低沸点溶剤を添加後、攪拌混合して混合液を調製する。この際、低沸点溶剤と共に抽出補助剤としてエチレングリコール等の他の高沸点溶剤を一緒に添加してもよい。
低沸点溶剤の添加量は、一概に規定できないが、使用した高沸点溶剤100重量部に対して10〜200重量部の範囲にあることが望ましい。
また低沸点溶剤と共に添加するエチレングリコール等の他の高沸点溶剤は、低沸点溶剤100重量部に対して50〜100重量部の範囲にあることが好ましい。
(3)第三工程
高沸点溶剤及び低沸点溶剤の混合液を0〜40℃の温度で60分以上静置することにより、高沸点溶剤及び低沸点溶剤を相分離させた後、高沸点溶剤を除去する。
混合液が相分離されると、高沸点溶剤中に存在していた、銀超微粒子表面に脂肪酸とグリセリドが配位して成る銀超微粒子は低沸点溶剤側に抽出され、未反応の脂肪酸銀や還元が進行しすぎて金属銀のみとなった凝集体は高沸点溶剤中の残存するため、高沸点溶剤を除去することによって、低沸点溶剤中には銀超微粒子のみが分散した分散液を得ることができる。
尚、高沸点溶剤の除去は、単蒸留、減圧蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、抽出、膜分離等、従来公知の方法により行うことができる。
【0021】
(樹脂組成物層)
本発明のブルーライト波長吸収材において、透明基材上に形成する樹脂組成物層は、前述した銀超微粒子含有分散液を含有してなるものであり、透明性を有する限り、光硬化型樹脂組成物、2液硬化型樹脂組成物などの塗料組成物又は熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物の何れからなっていてもよい。
尚、本明細書において、透明体は塗料組成物から成る塗膜だけでなく、熱可塑性樹脂からなるフィルム組成物も含む。
銀超微粒子含有分散液を配合する樹脂組成物としては、加工後の透過率が90%以上の透明性を有することが好ましく、これに限定されないが、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、アリル系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を挙げることができ、好適には、優れた透明性及び透明基材への適用が容易であることから、光硬化型アクリル系樹脂から成ることが望ましい。
【0022】
本発明において、銀超微粒子含有分散液の樹脂組成物に対する配合量は、銀超微粒子含有分散液の銀超微粒子含有量によって異なり、一概に規定できないが、前述した通り、樹脂組成物中の銀の含有量が0.1〜1.5重量%、特に0.4〜1重量%の量となるように、銀超微粒子含有分散液を樹脂組成物の希釈剤として配合することが望ましい。
また樹脂組成物層の厚みは、銀超微粒子の含有量によって一概に規定することはできないが、上記範囲の銀超微粒子の含有量では1〜50μm、特に5〜20μmの範囲にあることが好適である。
【0023】
(透明基材)
本発明のブルーライト波長吸収材において、透明材を構成する透明基材としては、全光線透過率が85%以上有するフィルムやシートを適宜選択して用いることができる。その材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、( メタ) アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等があげられる。これらのなかもポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好適である。また上記樹脂以外にも樹脂組成物層との接着性が確保され得る限りガラス等を用いることもできる。
透明基材の屈折率としては特に制限されず、通常1.30〜1.80程度、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
透明基材の厚みは、透明基材の材質や用途等によって異なり、一概に規定できないが、透明基材が樹脂フィルム又はシートから成る場合には、30乃至300μmの範囲のものを使用することができる。
【0024】
(ブルーライト波長吸収材の製造方法)
本発明のブルーライト波長吸収材は、前述した透明基材上に、銀超微粒子含有分散液を含有する樹脂組成物層を積層することにより製造することができ、この積層方法自体は従来公知の方法を使用することができる。
すなわち、本発明で用いる銀超微粒子含有分散液は、前述した通り、取扱性に優れていることから、樹脂組成物の希釈剤として使用することが好適であり、これに限定されないが、樹脂組成物として、例えば光硬化型アクリル樹脂をベース樹脂として用いる場合には、光重合開始剤等従来公知の配合剤を含有し、希釈剤として銀超微粒子含有分散液を使用して塗料樹脂組成物を調製して、透明基材上に塗工して焼き付けることにより製造することができる。前記樹脂の塗工は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。なお、塗工にあたり、前記樹脂は、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等の一般的な溶剤で希釈してもよい。
また樹脂組成物層として、例えば熱可塑性ポリエステル樹脂を用いる場合には、銀超微粒子分散液を溶融樹脂に液添混合して、予め形成された透明基材上に押出しすることにより形成することもできるし、或いは透明基材を構成する溶融樹脂と共押出しすることにより、樹脂組成物層と透明基材の形成及び接着を同時に行うこともできる。
【実施例】
【0025】
(透過率測定)
分光光度計で380から800nmの透過率を測定した。
420nmブルーライト波長吸収率Aは、下記式から算出した。吸収率が5%未満を×、5%以上を○とした。
A=(T
0―T
1)/T
0×100
420nmブルーライト波長透過率比Tは、下記式から算出した。
T=T
1/T
0
式中、T
1は前記銀超微粒子含有分散液を含有して成る樹脂組成物層を有する透明材の波長420nmの透過率であり、T
0は前記銀超微粒子含有分散液を含有しない前記樹脂組成物層を有する透明材の波長420nmの透過率である。
【0026】
(抗菌試験)
抗菌試験方法はJIS Z 2801:2000抗菌加工製品―抗菌性試験方法に準じた。菌種は黄色ブドウ球菌(S.aureus)を用いた。無加工試験片の培養後菌数から抗菌加工試験片の培養後菌数を除した数の対数値を抗菌活性値とした。抗菌活性値2.0以上の場合を○、抗菌活性値2.0未満の場合を×と判定した。
【0027】
(SP値の測定)
SP値とは溶解度係数(solubility parameter)と同義であり液体間の混合性の目安となる。このSP値δは凝集エネルギーをE、分子容をVとすると、δ=(E/V)
1/2で表される。
【0028】
(実施例1)
グリセリン700g(SP値:20)にステアリン酸銀3.85g(ステアリン酸のSP値:9.1)とサッカリン0.385gを加え、150℃で40分間加熱した。グリセリンを60℃まで冷却後、メチルイソブチルケトン700g(SP値:8.7)を加えて攪拌した。1時間程静置した後にメチルイソブチルケトン層を採取し、銀粒子含有の分散液を得た。予め希釈溶剤と混合された光硬化型アクリル樹脂(大成ファインケミカル工業社製)と銀超微粒子含有分散液とMIBKと光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル社製)を樹脂分に対して銀超微粒子含有量が0.2重量%になるような重量比率で混合し、厚み100μmの易接着PETフィルム上にバーコーターで塗布後、UV照射装置にて硬化させて樹脂組成物から成る塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0029】
(実施例2)
樹脂分に対して銀超微粒子含有量が0.4重量%になるような重量比率で混合した以外は、実施例1と同様にして塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0030】
(実施例3)
樹脂分に対して銀超微粒子含有量が0.8重量%になるような重量比率で混合した以外は、実施例1と同様にして塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0031】
(実施例4)
樹脂分に対して銀超微粒子含有量が1.0重量%になるような重量比率で混合した以外は、実施例1と同様にして塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0032】
(実施例5)
塗膜厚みを15μmにした以外は、実施例1と同様にして塗膜15μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0033】
(比較例1)
サッカリンではなく、ラウリン酸を配合した以外は実施例1と同様にして塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0034】
(比較例2)
メチルイソブチルケトン700gに対して、平均1次粒子径100nmの銀ナノ粒子を2.8g混合攪拌して分散液を得た。予め希釈溶剤と混合された光硬化型アクリル樹脂(大成ファインケミカル工業社製)と銀超微粒子含有分散液とMIBKと光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル社製)を樹脂分に対して銀ナノ粒子含有量が0.2重量%になるような重量比率で混合し、厚み100μmの易接着PETフィルム上にバーコーターで塗布後、UV照射装置にて硬化させて樹脂組成物から成る塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0035】
(比較例3)
樹脂分に対して銀超微粒子が0.02重量%になるような重量比率で混合した以外は実施例1と同様にして塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムについて、透過率測定、抗菌試験を実施した。結果を表1に示した。
【0036】
(比較例4)
樹脂分に対して銀超微粒子が2重量%になるような重量比率で混合した以外は実施例1と同様にして塗膜5μmをPETフィルム上に形成した。得られたフィルムは、塗工ムラが生じ、凝集物が認められたため、加工性不良として透過率測定と抗菌試験は実施しなかった。
【0037】
【表1】