【実施例1】
【0033】
a)まず、本実施例1におけるセラミック積層体を用いた電子装置について、
図1に基づいて説明する。
図1(A)に示す様に、電子装置1は、移動体通信用モジュールやコンピュータ用のマルチチップモジュールなどに使用されるものであり、低温焼成用材料からなるセラミック層3を複数枚(例えば20枚)積層することにより構成されたセラミック積層体5に、電子部品を搭載することにより構成されている。
【0034】
具体的には、セラミック積層体5内には、キャパシタやインダクタを構成する導電パターン7、9が形成されている。また、セラミック積層体5の上面には、導電パッド11が形成されており、この導電パッド11に、ダイオードなどのチップ部品13、IC15、厚膜抵抗体17などが接続されている。一方、セラミック積層体5の側面から下面にかけて、外部電極19が形成され、外部電極19に接続された下面の導電パッド11が図示しない回路基板に接続される。
【0035】
なお、
図1(B)に示すように、このセラミック積層体5は、セラミック積層体5が多数配列された多数個取り基板20から分割して取り出されるものである。
b)次に、本実施例1のセラミック積層体5の製造工程について、
図2〜
図9に基づいて説明する。なお、ステップS100〜S290の工程の手順については、
図2にまとめて示す。
【0036】
<土台準備工程(ステップS100)>
まず、
図3に示すように、例えば縦250mm×横250mm×厚み20mmのセラミック板からなる土台21を用意する。
【0037】
この土台21の表面には、後述する多数個取り基板用のシート積層体23(
図6参照)の外径形状、即ち、平面視が正方形の外径形状に沿って、例えば縦(外径)200mm×横(外径)200×幅5mm×深さ10mmの正方形の各辺に沿った(正方形の)四角枠状の溝25が形成してある。
【0038】
なお、土台21を構成するセラミック板の材料としては、例えばアルミナ(Al
2O
3)等を採用できるが、セラミック以外の材料(例えば樹脂等)も使用できる。
<固定テープ配置工程(ステップS110)>
次に、
図4(A)、(B)に示すように、土台21の表面に、溝25を覆うように固定テープ(下地テープ)27を貼り付ける。詳しくは、例えば縦(外径)210mm×横(外径)210mm×幅15mm×厚み30μmの正方形の各辺に沿った(正方形の)四角枠状の両面テープである固定テープ27を、溝25が露出しないように覆って貼り付ける。
【0039】
従って、
図4(C)にY部を拡大して示すように、固定テープ27は溝25の両側の表面(
図4(C)の左右方向の上面)を、同じ幅L1、L3(例えば10mm)で覆っている。なお、固定テープ27の厚みは、0.5mm〜2.0mmの範囲の例えば0.5mmである。
【0040】
この固定テープ27は、基材フィルム29の両面に接着剤(粘着剤)からなる接着剤層31、33が設けられたものであるので、固定テープ27の土台21側の接着剤層33によって、固定テープ27が土台21に接着される。
【0041】
基材フィルム29の材料としては、ポリエステル(PET等)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)等を採用でき、厚み30〜100μmの範囲(例えば100μm)のフィルムを用いることができる。
【0042】
なお、固定テープ27は、温度が150℃になっても特性が変化しない耐熱テープであり、この固定テープ27としては、例えば住友スリーエム(株)製のBlack Elastic Tacky(BETA)Tapes(ヘ゛タテーフ゜):品番4485を採用できる。
【0043】
接着剤層31、33を構成する接着剤としては、接着及び剥離が可能な、例えばアクリル系、ゴム系等の感圧接着剤を採用できる。
<保護テープ熱処理工程(ステップS120)>
また、
図5(A)に一部を拡大して示すように、片面テープである保護テープ(キャリアフィルム)41を熱処理する。この熱処理は、保護テープ41が後の工程の熱圧着などの加熱によって収縮の影響を小さくするために行う。熱処理は、この保護テープ41を150〜170℃で180秒以上加熱することにより行う。なお、この保護テープ熱処理工程は、省略してもよい。
【0044】
前記保護テープ41は、基材フィルム43の一方の面に接着剤(粘着剤)からなる接着剤層45が設けられたものである。
基材フィルム43の材料としては、ポリエステル(PET等)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)等を採用でき、その厚みが30〜100μmのフィルムを用いることができる。
【0045】
なお、保護テープ41として、例えばポリエステルフィルムを用いる場合に、フィルムに固体粒子を分散させて、フィルムを構成する長鎖の分子がその途中で適宜遮られる構造とすることで、フィルムの剪断性を向上させることが好ましい。上記固体粒子としては、TiO
2、BaO
3 、Ba
2(SO
4)
3、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)等の粒子を用いることができる。
【0046】
接着剤層45を構成する接着剤としては、接着及び剥離が可能な、例えばアクリル系、ゴム系等の感圧接着剤を採用できる。
<キャスティング工程(ステップS130)>
熱処理後に、
図5(B)に示すように、ドクターブレード法により、保護テープ41(即ち接着剤層45)上にセラミック材料のスラリーを薄く延ばして、例えば厚み30〜120μmのセラミックグリーンシート47をキャスティング(テープ成形)する。
【0047】
ここで、セラミック材料としては、ホウケイ酸ガラスとアルミナとが混合された低温焼成セラミックや、アルミナからなる高温焼成セラミック等を用いることができる。
<シート切断工程(ステップS140)>
キャスティング後に、セラミックグリーンシート47に保護テープ41を付けた状態で、図示しないカッタを用いて、セラミックグリーンシート47を保護テープ41と共に所定サイズに切断する。
【0048】
<パンチング工程(ステップS150)>
シート切断後に、NCパンチ等を用いて、
図5(C)に示すように、セラミックグリーンシート47の所定位置に、ビアホール49や基準ホール51を打ち抜き形成する。基準ホール51は、後述する印刷パターンを形成する際の基準位置を表すものである。なお、この工程にて、保護テープ41にも、セラミックグリーンシート47のビアホール49や基準ホール51と連続してパンチング孔53、55が打ち抜き形成される。
【0049】
<印刷工程(ステップS160)>
パンチング後に、
図5(D)に示すように、ビアホール49およびセラミックグリーンシート47上に、導体ペーストをスクリーン印刷により充填および塗布して、ビア導体57および配線パターン59を形成する。導電ペーストとしては、Au−Pd系合金やW、Mo系合金等を用いることができる。
【0050】
<乾燥工程(ステップS170)>
印刷後に、セラミックグリーンシート47に保護テープ41を付けた状態で、例えば60〜80℃で45〜60秒程度加熱し、印刷パターンである配線パターン59とビア導体57を乾燥させる。
【0051】
この際、予め熱処理された保護テープ41が、印刷パターン加熱乾燥時のセラミックグリーンシート47の収縮を抑える役割を果たす。これにより、保護テープ41と、ビア導体57および配線パターン59を設けたセラミックグリーンシート47とからなる所定形状のシート体61(
図6参照)が形成される。
【0052】
<シート載置工程(ステップS180)>
次に、
図6(A)に示すように、前記シート体61を、(土台21の表面に貼り付けられた)固定テープ27上に載置して貼り付ける。このとき、平面視で、正方形のシート体61の重心と正方形の土台1の重心とが一致するように配置する。これにより、シート体61の外周の各辺は、溝25の上方に配置されることになる。なお、平面視で、シート体61の外周と溝25の外周とには、2.5mmの間隔がある。
【0053】
なお、以下では、シート体61、セラミックグリーンシート47、保護テープ41について、下側より、第1、第2等の番号を付す。
詳しくは、固定テープ27に第1セラミックグリーンシート47aが接するようにして(即ち第1セラミックグリーンシート47aを下向きにして)、固定テープ27上に第1シート体61aを重ね合わせる。これにより、第1保護テープ41aは、第1セラミックグリーンシート47aの上側となる。
【0054】
<第1保護テープ剥離工程(ステップS190)>
次に、
図6(B)に示すように、固定テープ27上に貼り付けられた第1シート体61a(従って第1セラミックグリーンシート47a)から、第1保護テープ41aを剥離する。
【0055】
<シート積層工程(ステップS200)>
次に、
図6(C)に示すように、第1保護テープ41aが剥離された第1セラミックグリーンシート47a上に、第2シート体61b(即ち、第2保護テープ41bに裏打ちされた第2セラミックグリーンシート47b)を載置して、セラミックグリーンシート47の積層体であるシート積層体23を形成する。
【0056】
詳しくは、固定テープ27上の第1セラミックグリーンシート47aに対して、他の第2シート体61bを、第1セラミックグリーンシート47aと第2セラミックグリーンシート47bとが接するようにして(即ち第2セラミックグリーンシート47bを下向きにして)重ね合わせる。これにより、第2保護テープ41bは、第2セラミックグリーンシート47b(従ってシート積層体23)の上側となる。
【0057】
<熱圧着工程(ステップS210)>
次に、第2保護テープ41bが貼り付けられた状態で、シート積層体23を、例えば55℃、12.0〜12.7MPaの条件で熱圧着して一体化する。
【0058】
<第2保護テープ剥離工程(ステップS220)>
次に、
図6(D)に示すように、第1セラミックグリーンシート47a上に載置された第2シート体61b(従って第2セラミックグリーンシート47b)から第2保護テープ41bを剥離する。
【0059】
<多層積層工程(ステップS230)>
その後、同様にして、セラミックグリーンシート47が所望の積層枚数(例えば10枚)となるまで、前記ステップS190〜S220の処理を繰り返して、
図6(E)に示すような所定段数のシート積層体23である第1積層中間体65Aを作製する。
【0060】
<導電パッド形成工程(ステップS240)>
積層後に、
図6(F)に示すように、第1積層中間体65Aの表面に、焼成後に導電パッド11となるパッドパターン11aを形成する。導電パッド11は、上述したチップ部品13などを搭載し、または外部回路に接続するための端子である。パッドパターン11aは、導電ペーストを、27〜37μmの厚さで所定のパターンにしたがってスクリーン印刷することにより形成することができる。
【0061】
<溝形成工程(ステップS250)>
積層後に、第1積層中間体65A上の主面67上に、ブレーク溝69(
図9参照)を形成する。なお、
図9では、説明を簡単にするために周辺の1箇所だけブレーク溝69を示している。このブレーク溝69は、セラミック積層体5の焼成後の分割(即ち多数個取り基板20からの各セラミック積層体5の分割)を容易にするためであり、パッドパターン11aをパターン認識することで、カッタの位置を合わせて主面67の一部に切れ目を入れる。
【0062】
<固定テープ切断工程(ステップS260)>
次に、
図7に示すように、切断部材であるヒータ71を用いて、固定テープ27を切断する。
【0063】
このヒータ71は、長方形の板材(例えばアルミナからなるセラミック板)73の表面に、四角枠状に形成された幅5mm×高さ1mmのニクロム線75を配置したものである。
【0064】
詳しくは、ニクロム線75は、土台21の四角枠状の溝25の(平面視の)中心線に沿って延びるように、長方形の各辺に沿って形成された四角枠状の部材(中心線に沿った寸法:縦195mm×横195mm)である。
【0065】
従って、この固定テープ切断工程では、平面視で、第1積層中間体65Aの外周と溝25の外周との間にニクロム線75を配置して、
図8(A)に示すように、ヒータ71(詳しくはニクロム線75)に通電し、ニクロム線75を例えば300℃に加熱し、固定テープ27の上方よりニクロム線75を下降させて、固定テープ27に接触(又は近接)させる。
【0066】
これによって、
図8(B)に拡大して示すように、固定テープ27の温度が上昇して溶融し、固定テープ27が切断される。従って、固定テープ27は、第1積層中間体65Aの外周に沿って、平面視で四角枠状に切断される。
【0067】
<固定テープ剥離工程(ステップS270)>
次に、
図8(C)に示すように、図示しない吸着搬送ハンドラーによって、土台21から(切断された残りの固定テープ27ごと)第1積層中間体65Aを剥がし、その後、
図8(D)に示すように、図示しないテープ剥離機による物理的な剥離(物理的に剥がすこと)によって、第1積層中間体65Aに付着している残余の固定テープ27を剥がす。
【0068】
<積層中間体接合工程(ステップS280)>
その後、前記ステップS100〜S270と同様な工程を経て、
図9の下部に示すように異なった配線パターンを有する第2積層中間体65Bを形成し、第1積層中間体65Aと第2積層中間体65Bとを熱圧着する。ここで、第1積層中間体65Aには、チップ部品13等(
図1参照)が搭載され、第2積層中間体65Bは、回路基板に接続される。
【0069】
<脱脂・焼成工程(ステップS290)>
第1、第2積層中間体65A、65Bを熱圧着した後に、240℃×10時間加熱することで脱脂し、さらに、840℃×60分で焼成する。これによって、多数個取り基板20が得られる。この場合において、低温焼成材料として、ガラスセラミックを用いた場合には約870℃で焼成する。
【0070】
<後工程>
その後、多数個取り基板20をブレーク溝69で分割することで、各セラミック積層体5が分離して製造され、さらに各セラミック積層体5にチップ部品13などを搭載することにより電子装置1が製造される。
【0071】
c)次に、本実施例の効果を説明する。
本実施例1では、固定テープ27として、所定の温度にて溶けて切断される固定テープ27を用い、ヒータ71のニクロム線75として、固定テープ27を切断可能な切断温度に加熱できるニクロム線75を用いる。そして、切断温度に加熱されたニクロム線75を、固定テープ27の溝25を覆う部分に接触又は近接させることによって、固定テープ27を切断して、土台21からシート積層体23である第1積層中間体65Aや第2積層中間体65Bを分離する。
【0072】
このように、本実施例1では、従来のように切断刃によって固定テープ27を切断するのではなく、ニクロム線75の熱によって固定テープ27を溶かして切断するので、固定テープ27に大きな応力がかからない。よって、従来のように、切断刃が溝25の底部に当たって破損することがなく、固定テープ27が大きく引っ張られることや切断後の反動によって、シート積層体23が破損することもない。
【0073】
従って、本実施例1では、土台21に固定した固定テープ27からシート積層体23を好適に分離することができるという顕著な効果を奏する。
また、本実施例1では、土台21上の溝25は、平面視が枠状であり、ニクロム線75は、溝25の平面形状に沿って形成された平面視が枠状である。
【0074】
従って、枠状のニクロム線75を、(溝25上の)固定テープ27に接触又は近接させることによって、固定テープ27を一度に枠状に切断することができる。
【実施例2】
【0075】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例2のセラミック積層体の製造方法は、実施例1とは、固定テープを切断する方法が異なるので、異なる点を中心に説明する。なお、実施例1と同様な部材には、同様な部材の番号を使用する。
【0076】
a)まず、本実施例2で使用する切断部材について説明する。
図10に示すように、本実施例2では、切断部材として、超音波振動する切断部材によって部材を切断する超音波カッタ81を使用する。
【0077】
この超音波カッタ81は、基台83の一方の面から突出するように、四枚の板状の超音波振動する切断刃85を四角枠状に配置したものである。詳しくは、超音波振動する切断刃85は、前記実施例1のニクロム線の配置と同様に、土台21に設けられた(平面視が長方形の外周に沿った四角枠状の)溝25の中心に沿うように、溝25の各辺にそれぞれ板状の4枚の超音波振動する切断刃85が配置されて(平面視が)四角枠状となったものである。
【0078】
なお、超音波振動する切断刃85としては、例えば(株)ソノテック製の品番SH−3510、HG−110を使用することができる。
b)次に、本実施例2において固定テープ27を切断する方法について説明する。
【0079】
ここでは、前記実施例1のステップS100〜S250の工程の後に、本実施例2における固定テープ切断工程(ステップS260)を実施する。
この固定テープ切断工程では、
図11(A)に示すように、超音波カッタ81に通電し、超音波の周波数を20kHz〜40kHzとして、超音波振動する切断刃85を駆動する。そして、超音波振動する切断85を、毎秒10〜100μmの速度で、固定テープ27の上方より下降させて、固定テープ27に接触させる。
【0080】
これによって、
図11(B)に拡大して示すように、固定テープ27が破断されて切断される。従って、固定テープ27は、第1積層中間体65Aの外周に沿って、平面視で四角枠状に切断される。
【0081】
その後、固定テープ剥離工程(ステップS270)にて、前記実施例1と同様に、土台21から第1積層中間体65Aを剥がし(
図11(C)参照)、第1積層中間体65Aから残余の固定テープ27を剥がす(
図11(D)参照)。
【0082】
その後は、前記実施例1と同様に、前記ステップS280、S290の工程によって、セラミック積層体5を完成する。
c)本実施例では、固定テープ27として、超音波によって破断する固定テープ27を用い、切断部材として、固定テープ27を破断可能な超音波カッタ81を用いる。そして、超音波振動する切断刃85を固定テープ27の溝25を覆う部分に接触させることによって、固定テープ27を破断する。
【0083】
従って、前記実施例1と同様に、土台21に固定した固定テープ27からシート積層体23を好適に分離することができるという顕著な効果を奏する。
また、本実施例2では、土台21上の溝25は、平面視が四角枠状であり、4枚の超音波刃85は、溝25の平面形状に沿って形成された平面視が四角枠状である。
【0084】
従って、四角枠状の4枚の超音波振動する切断刃85を、(溝25上の)固定テープ27に接触させることによって、固定テープ27を一度に四角枠状に切断することができる。
【0085】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、実施例1、2では、(中央部分が開口となった)四角枠状の固定テープを使用したが、セラミックグリーンシートの底面の全体を覆うような開口が無い固定テープを使用してもよい。
【0086】
(2)また、実施例1、2において、土台の溝の平面視の形状に沿うように、四角枠状の配置されたニクロム線や超音波振動する切断刃を使用したが。例えば直線状や棒状のニクロム線や超音波振動する切断刃を使用して、溝に沿って順次固定テープを切断してもよい。
【0087】
つまり、溝に沿って固定テープを切断できれば、その形状に限定はない。