(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層構造は3枚の網状シートを積層してなり、その3枚のうちの厚み方向の中央に位置する網状シートは相対的に網目が細かく、他の2枚は相対的に網目が粗い請求項1記載の吸収性物品。
前記積層構造を構成する複数枚の網状シートは、網目のパターンが互いに同じであり、厚み方向に隣接する2枚の網状シートどうしは、一方向及びこれに直交する方向それぞれにおいて、1個の網目の当該方向の半分の長さ分ずれて配置されている請求項1〜3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、
図1及び
図2に示すように、肌対向面を形成する表面シート2、非肌対向面を形成する裏面シート3、及び両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する吸収性本体5を備えている。
【0012】
本明細書において、肌対向面は、ナプキン1及びその構成部材(例えば吸収性本体5)における、着用状態において着用者の肌側に向けられる面(相対的に着用者の肌に近い側)であり、非肌対向面は、ナプキン1及びその構成部材における、着用状態において着用者の肌側とは反対側に向けられる面(相対的に着用者の肌から遠い側)である。
【0013】
ナプキン1(吸収性本体5)は、
図1に示すように、着用時に着用者の液排泄部(膣口等)に対向配置される領域である排泄部対向部B、該排泄部対向部Bより着用者の腹側(前側)に配される前方部A、及び該排泄部対向部Bよりも着用者の背側(後側)に配される後方部Cを有している。また、ナプキン1(吸収性本体5)は、着用時に着用者の前後方向に相当する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有している。ナプキン1(吸収性本体5)の縦方向Xは、前方部Aと後方部Cとの間を排泄部対向部Bを介して延びる方向である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置(当該吸収性物品の正しい着用位置)が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
【0014】
ナプキン1は、吸収性本体5に加えて更に、吸収性本体5における排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部7,7を有している。尚、本発明の吸収性物品において、排泄部対向部は、本実施形態のナプキン1のようにウイング部を有する場合には、吸収性物品の縦方向(吸収性物品の長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域(ウイング部の縦方向一方側の付け根と他方側の付け根とに挟まれた領域)である。ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(吸収性物品の幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折曲線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域と同じか又は該領域よりも狭い領域である。
【0015】
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、その縦方向Xに沿う両側縁は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁と略同位置に存している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出して、後述するサイドシート8と共にサイドフラップ部6を形成している。裏面シート3とサイドシート8とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、
図1に示すように、吸収体4の縦方向Xの前端及び後端それぞれから縦方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されてエンドシール部を形成している。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていても良い。
【0016】
吸収性本体5の肌対向面(表面シート2の肌対向面)における縦方向Xに沿う両側部には、
図1に示すように、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート8,8が吸収性本体5の縦方向Xの略全長に亘って配されている。一対のサイドシート8,8は、それぞれ、縦方向Xに延びる接合線9にて吸収性本体5(表面シート2)に接合されている。
【0017】
サイドフラップ部6は、
図1に示すように、排泄部対向部Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部7,7が延設されている。ウイング部7は、
図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面には、該ウイング部7をショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部7は、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。また、吸収性本体5の非肌対向面(裏面シート3の非肌対向面)には、該吸収性本体5をショーツ等の着衣に固定する本体粘着部(図示せず)が形成されている。前記ウイング部粘着部及び前記本体粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
【0018】
図1に示すように、吸収性本体5の肌対向面(表面シート2の肌対向面)には、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥してなる、平面視において閉じた形状の溝51が形成されている。溝51は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。溝51においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。溝51がナプキン1の肌対向面に形成されていることにより、吸収体4の平面方向の液の拡散が効果的に抑制されるようになり、また、吸収体4のヨレを防止できる。
【0019】
本実施形態における吸収体4は、
図1及び
図2に示すように、吸収性シート401及び402の積層体からなり、排泄部対向部Bに中高部42を有している。吸収体4は、1枚の吸収性シート401の折り畳み構造の内部に別の吸収性シート402が内包された構造を有し、この別の吸収性シート402は中高部42に配されている。中高部42は、排泄部対向部Bのみに形成され、前方部A及び後方部Cには形成されていない。中高部42は、
図2に示すように、吸収体4を構成する吸収性シートの積層枚数が、その周囲に位置する部分より多く、厚みが大きい部分である。このため、ナプキン1は、排泄部対向部Bに、表面シート2側(ナプキン1の肌対向面側)に突出した隆起部を形成している。
【0020】
また、吸収体4は、吸収体4の外形を形成する主吸収体40と、主吸収体40の一部に重ねて配された主吸収体40より小型の補助吸収体41とを有している。主吸収体40は、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で且つ前方部Aから排泄部対向部Bを経て後方部Cに亘って延びる1枚の吸収性シート401からなり、補助吸収体41は、平面視において略矩形形状であり、排泄部対向部Bからその近傍の後方部Cに亘って配されている。主吸収体40は、1枚の吸収性シート401を折り畳んで複数層の構造としたものであり、主吸収体40における、相対向する2枚の吸収性シート401,401間に、1枚の吸収性シート402を折り畳んでなる補助吸収体41が配されている。より具体的には、主吸収体40は、ナプキン1よりも横方向Yの長さ(幅)が長い、1枚の平面視矩形形状の吸収性シート401からなり、該吸収性シート401の縦方向Xに沿う両側部を該吸収性シート401の非肌対向面側に折り返し、且つその縦方向Xに沿う両側縁どうしを横方向Yの中央にて重ね合わせて構成されている。また、補助吸収体41は、1枚の平面視矩形形状の吸収性シート403を横方向Yに3つ折りして構成されており、3層構造である。このように、主吸収体40の一部(排泄部対向部Bに位置する部分)に補助吸収体41を配することで、吸収体4の一部の吸収容量を容易且つ効率的に増大させることができる。
【0021】
尚、補助吸収体41は、主吸収体40を構成する相対向する2枚の吸収性シート401,401間に配置するのに代えて、主吸収体40を構成する上側(肌対向面側)の吸収性シート401の肌対向面側に積層しても良いし、主吸収体40を構成する下側の(非肌対向面側)の吸収性シート401の非肌対向面側に積層しても良い。また、吸収性シート間は、接合されていなくても良いし、まばらに散布した接着剤等によって接着されていても良い。
【0022】
吸収体4は、中高部42の厚みが、好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下である。より具体的には、中高部42の厚みは0.7mm以上5mm以下が好ましく、更には1mm以上4mm以下であることが好ましい。中高部42の厚みをこの範囲とすることで、中高部42が形成されている排泄部対向部Bにおける良好な着用感と高い吸収性能とを両立することが容易となる。また、本実施形態のナプキン1のように吸収性物品がウイング部を備えている場合には、その着用時に排泄部対向部での吸収体のヨレを抑制しやすくなる。中高部42以外の吸収体4の厚み、即ち主吸収体40(相対向する2枚の吸収性シート401,401の積層体)の厚みに関しては、好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.5mm以下である。より具体的には、主吸収体40の厚みは、0.5mm以上3mm以下、更には0.6mm以上2.5mm以下であることが、高い吸収性能と着用者の動きへの追従性を高める観点から好ましい。前述した吸収体4の各部の厚みは下記方法により測定される。
【0023】
<吸収体の厚みの測定方法>
測定対象物である吸収体を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm
2の荷重下での厚みを測定する。本発明における厚みの測定には、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いた。このとき、厚み計の先端部と測定対象物における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が5cN/cm
2となるようにプレートの大きさを調整する。
【0024】
本実施形態のナプキン1の主たる特徴の1つとして、
図2に示すように、排泄部対向部Bにおける吸収体4と裏面シート3との間に、吸収体4と裏面シート3とをそれらの厚み方向(ナプキン1の厚み方向。
図2の上下方向。)に離間させるスペーサー部材10が介在されている点が挙げられる。スペーサー部材10は、多数の網目が規則的に形成された撥水性の網状シートを複数枚積層してなる、積層構造を有している。本実施形態においては、スペーサー部材10は、2枚の網状シート11,12を積層してなる2層構造を有している。本実施形態においては、スペーサー部材10は、排泄部対向部Bのみならず、吸収体4(主吸収体40)の非肌対向面の全域に亘って配されており、主吸収体40と平面視形状が同形状で且つ略同寸法である。
【0025】
図3には、スペーサー部材10が有する網状シート11,12の積層構造(2層構造)が例示されている。
図3中、上方に位置するのが網状シート11、下方に位置するのが網状シート12であり、ナプキン1においては、
図2に示すように、網状シート11は吸収体4に最も近接する網状シートであり、網状シート12は裏面シート3に最も近接する(吸収体4から最も遠い)網状シートである。網状シート11は、格子状の網目11Aを多数有し、その多数の網目11Aは、一方向及びこれに直交する方向の両方向に等間隔に配列されている。隣接する2個の網目11A,11A間には、網目11Aを画成する線状部材11Bが存している。多数の網目11Aは、互いに同形状且つ同寸法であり、
図3に示す形態では平面視四角形形状(正方形形状)をなしている。網状シート12は、網状シート11と同一の構成を有しており、図中、符号12Aは網状シート12の網目、符号12Bは網状シート12の線状部材を示す。このように、本実施形態においては、スペーサー部材10(積層構造)を構成する複数枚の網状シート11,12は、網目のパターンが互いに同じである。
【0026】
図2及び
図3に示すように、スペーサー部材10(網状シート11,12の積層構造)において、その厚み方向(ナプキン1の厚み方向)に隣接する2枚の網状シートどうし11,12は、それらの網目11A,12Aが一致しないようにずらして配置されている。ここで「網目が一致しない」とは、
図3に示す如き、重ね合わされた2枚の網状シート11,12(スペーサー部材10)の平面視において、一方の網目11Aと他方の網目12Aとが完全に重なる形態、即ち、「相対的に上側に位置する網状シート11の任意の1個の網目11Aを介して、その下側に位置する網状シート12の線状部材12B(網目12A以外の部分)が目視で確認できる形態」を除く趣旨であり、重ね合わされた2枚の網状シートにおいて斯かる形態以外の形態は、「網目が一致しない」に該当する。
【0027】
図3(a)に示すスペーサー部材10においては、網目のパターンが互いに同じであり且つ厚み方向に隣接する2枚の網状シート11,12どうしは、ナプキン1の縦方向Xにおいては、任意の1個の網目11A(12A)の当該方向(縦方向X)の半分の長さ分、ずれて配置されているが、ナプキン1の横方向Yにおいてはずれていない。
【0028】
図3(a)に示すスペーサー部材10において、2枚の網状シート11,12どうしは、ナプキン1の縦方向Xのみならず横方向Yにおいても同様にずれて配置されていても良い。即ち、網目のパターンが互いに同じであり且つ厚み方向に隣接する2枚の網状シート11,12どうしは、縦方向X及びこれに直交する横方向Yそれぞれにおいて、任意の1個の網目11A(12A)の当該方向(縦方向X又は横方向Y)の半分の長さ分、ずれて配置されていても良い。斯かる構成により、
図3に示す如きスペーサー部材10の平面視において、両網状シート11,12の線状部材11B,12Bによって画成される「見掛け上の網目」の面積を小さくすることができ、それによって吸収体4、スペーサー部材10及び裏面シート3の各々の隣接する部材間における接触面積(濡れの生じやすさ)を小さく保ちながら、吸収体4を裏面シート3から離間することができる。
【0029】
図3(b)に示すスペーサー部材10においては、網目のパターンが互いに同じであり且つ厚み方向に隣接する2枚の網状シート11,12どうしは、網目の配列方向をズラして配置されている。即ち、網状シート11の平面視四角形形状(正方形形状)の網目11Aの配列方向は、ナプキン1の縦方向X及び横方向Yに一致しているのに対し、網状シート12の平面視四角形形状(正方形形状)の網目11Aの配列方向は、縦方向X及び横方向Yに一致しておらず、両方向X,Yに交差する方向(斜め方向)に一致している。
【0030】
このように、吸収体4と裏面シート3との間にスペーサー部材10が介在されていることにより、
図4に示すように、吸収体4と裏面シート3との間には、スペーサー部材10を構成する網状シート11,12の網目11A,12Aからなる、空間部が形成され、その空間部によって吸収体4と裏面シート3との接触が阻害されるので、吸収体4に吸収保持された経血等の体液が裏面シート3に付着し難くなり、裏面シート3からナプキン1の外部への体液の染み出しが防止される。また、このスペーサー部材10の空間部(網目11A,12A)は、ナプキン1を厚み方向に透過する空気又は水蒸気の通路として機能し得る。従って、ナプキン1においては、着用時における着装内の湿度を低下させてムレを防止する観点から、裏面シート3の透湿性を高めることが可能であり、例えば、裏面シート3として、比較的大きな孔を有する透湿性の高い多孔質フィルムを用いても、裏面シート3側からの体液の染み出しが防止される。つまり、ナプキン1は、裏面シート3側の透湿性が高く、且つ裏面シート3側から体液が染み出し難い吸収性物品であると言える。
【0031】
ナプキン1の着用時において該ナプキン1に着用者の体圧がかかると、
図4に示すように、吸収体4とスペーサー部材10とが密着し、吸収体4(吸収性シート401)における網状シート11の網目11Aに対応する部分が、スペーサー部材10側に向かって突出し、その突出部が該網目11A内に入り込み得る。しかし、このような、吸収体4の非肌対向面側(スペーサー部材10との対向面側)の変形(突出)があっても、スペーサー部材10の厚みT1が、吸収体4の変形量、より具体的には前記突出部の突出長さT2に比して大きくなされていれば、吸収体4と裏面シート3との接触は防止される。スペーサー部材10の厚みT1は、吸収体4と裏面シート3との接触をより確実に防止する観点から、好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは4.0mm以下、更に好ましくは3.5mm以下、より具体的には、好ましくは0.2〜4.0mm、更に好ましくは0.5〜3.5mmである。
【0032】
また、本実施形態においては、吸収体4と裏面シート3とを厚み方向に離間させるに際し、これらの間に単層構造のスペーサー部材を介在配置させるのではなく、複数枚(2枚)の網状シート11,12の積層構造からなるスペーサー部材10を介在配置させており、斯かる構成により、スペーサー部材10の柔軟性を高めることが可能となる。即ち、吸収体4と裏面シート3との間に介在させるスペーサー部材を単層構造とすると、吸収体4と裏面シート3との接触を防止するために、その単層構造の厚みがそれなりに大きなものとなり、結果として、スペーサー部材(単層構造)の剛性が高まり、柔軟性に乏しいものとなる。これに対し、本実施形態のように、スペーサー部材10を複数枚の網状シート11,12の積層構造とすると、各網状シート11,12の厚みを比較的薄いものとすることができるので、吸収体4と裏面シート3との接触を防止しつつ、スペーサー部材10の剛性の向上、柔軟性の低下を効果的に抑制することができる。そして、スペーサー部材10が柔軟であることにより、ナプキン1の着用時のフィット性、着用感の向上が期待できる。
【0033】
また、スペーサー部材10を複数枚の網状シート11,12の積層構造とすることの別の利点として、スペーサー部材10を構成する複数枚の網状シートの網目のパターンを互いに異ならせることが容易になる点が挙げられる。網状シートに厚み方向における配置位置に応じて適切な網目のパターンを選択することで、裏面シート3から体液の染み出し、裏面シート3側の透湿性及び通気性をより適切に制御することが可能となる。
【0034】
加えて、積層構造のスペーサー部材10を採用すると、吸収体4の損傷の危険性を低減することも可能となる。単層構造のスペーサー部材10として1枚の網状シートを採用し、単に該網状シートの網目を細かくしたような場合には、吸収体4が該網状シートの上面(肌対向面)で網目を画成する線状部材と接する面積が大きくなり、加圧による負担によって吸収体4が損傷しやすくなる。これに対して、本発明のように、複数枚の網状シートを組み合わせて積層構造のスペーサー部材10とすることによって、平面視で該積層構造としての網目が細かくなるように配置すると、該積層構造の上面(肌対向面)で吸収体4が網状シートを構成する線状部材と接触する面積を減らすことができる。従って、吸収体4は、加えられた体圧等の圧力を厚み方向下方(非肌対向面側)へ逃がすように変形可能、例えば、非肌対向面側(スペーサー部材10側)に向かって凸状に湾曲変形可能となり、それによって吸収体4の損傷の危険性が減る。一方で、吸収体4の非肌対向面と対向する網状シートの線状部材が、下方へ変形した吸収体4の部分を押さえることができるので、吸収体4と裏面シート3との接触を防止しつつ、吸収体4の過度の変形が抑制され、それによってやはり、吸収体4の損傷を防止することができる。
【0035】
裏面シート3からの体液の染み出しをより効果的に防止するためには、体液の給源となる吸収体4とスペーサー部材10との接触面積を少なくすることが有効である。この観点から、スペーサー部材10(積層構造)を構成する複数枚の網状シート11,12のうち、吸収体4に最も近接する網状シート11は相対的に網目が粗いことが好ましい。従って、本実施形態の如き、2層構造のスペーサー部材10においては、吸収体4に最も近接する(吸収体4と接触する)網状シート11は、相対的に網目が粗く、裏面シート3に最も近接する(裏面シート3と接触する)網状シート12は、相対的に網目が細かいことが好ましい。
【0036】
また、図示していないが、スペーサー部材10(積層構造)が3枚の網状シートを積層してなる場合、その3枚のうちの厚み方向の中央に位置する網状シートは、相対的に網目が細かく、他の2枚(即ち、吸収体4に最も近接する網状シート及び裏面シート3に最も近接する網状シート)は、相対的に網目が粗いことが好ましい。斯かる構成により、吸収体4とスペーサー部材10との接触面積が少なくなると共に、裏面シート3とスペーサー部材10との接触面積も少なくなるため、裏面シート3からの体液の染み出し効果の向上に加えて更に、スペーサー部材10の配置に起因する裏面シート3の通気性(透湿性)の低下がより効果的に防止される。
【0037】
前記「相対的に網目が粗い網状シート」における1個の網目の面積は、好ましくは4mm
2以上、更に好ましくは8mm
2以上、そして、好ましくは70mm
2以下、更に好ましくは50mm
2以下、より具体的には、好ましくは4〜70mm
2、更に好ましくは8〜50mm
2である。
前記「相対的に網目が細かい網状シート」における1個の網目の面積は、好ましくは0.4mm
2以上、更に好ましくは1mm
2以上、そして、好ましくは50mm
2以下、更に好ましくは40mm
2以下、より具体的には、好ましくは0.4〜50mm
2、更に好ましくは1〜40mm
2である。
【0038】
裏面シート3とスペーサー部材10(網状シート12)とは、裏面シート3の肌対向面(スペーサー部材10との対向面)に部分的に塗布された接着剤(図示せず)を介して接合している。即ち、裏面シート3の肌対向面の全域には接着剤は塗布されておらず、該肌対向面には接着剤が塗布されていない部分が存している。本実施形態においては、スペーサー部材10の非肌対向面を形成する網状シート12の線状部材12Bに接着剤を塗布し、該網状シート12の接着剤塗布面に裏面シート3を重ねることで、両部材10,3を該接着剤を介して一体化している。従って、裏面シート3の肌対向面における接着剤の塗布部分は、該肌対向面と接触する網状シート12の網目のパターンに一致している。このように、裏面シート3の一面(肌対向面)に接着剤が部分的に塗布されている(全面的に塗布されていない)ことにより、裏面シート3が有する通気性(透湿性)が阻害されにくく、実用上十分な通気性(透湿性)が確保され得る。尚、吸収体4(吸収性シート401)とスペーサー部材10(網状シート11)との間も、裏面シート3とスペーサー部材10との間と同様に、接着剤を介して接合されていても良い。
【0039】
また、スペーサー部材10(積層構造)を構成する複数枚の網状シート11,12どうしは、ナプキン1の着用中等に積層されている網状シート11,12がずれてスペーサー部材10の構造が崩れる不都合を防止する観点から、互いに接合されていることが好ましい。網状シート11,12どうしの接合は、接着剤を介して行うことができ、また、網状シート11,12が熱融着性材料からなる場合は、接着剤を介さずに、両シート11,12を加圧加熱するだけで、網状シート11,12どうしを融着により接合することができる。
【0040】
ナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2としては、この種の吸収性物品において従来用いられている液透過性の表面シートを用いることができ、例えば、カード法により製造された不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布;開口手段によって液透過可能とされたフィルム等が挙げられる。これらの不織布やフィルムには、界面活性剤等の親水化剤を用いた親水化処理が施されていても良い。表面シート2の坪量は、好ましくは15g/m
2以上、更に好ましくは30g/m
2以上、そして、好ましくは100g/m
2以下、更に好ましくは80g/m
2以下、より具体的には、好ましくは30〜80g/m
2、更に好ましくは15〜100g/m
2である。
【0041】
また、図示していないが、表面シート2の肌対向面側は、多数の凸部及び凹部を有する凹凸形状をなしていても良い。斯かる構成により、ナプキン1の肌対向面のドライ感が向上する。表面シートの凹凸形状を構成する凹部は、熱エンボス加工、超音波エンボス加工等のエンボス加工によって形成することができ、該凹凸形状を構成する凸部は、複数の凹部間に位置する。表面シート2の凹凸形状を構成する凸部は、内部に構成繊維が充填された中実構造であっても良く、内部に空間部が形成された中空構造であっても良い。
【0042】
また、裏面シート3は透湿性を有している。裏面シート3が透湿性を有していることにより、ナプキン1の着用時における着装内の湿度が低下し、ムレが防止され得る。ここで「透湿性」とは、JIS Z0208やASTM E398に開示された概念の如く、気流移動を伴わず、熱力学の第二法則に従って、高湿度側から低湿度側に水蒸気拡散する性質であり、極微小の開孔を有する多孔質フィルム(透湿性フィルム)や、水と相溶性の高い無孔フィルムで発現する性質である。透湿性を有する裏面シート3としては、例えば、透湿性フィルム単独、又は透湿性フィルムと不織布との積層体、撥水性不織布等を用いることができる。透湿性の裏面シート3による前記効果をより確実に奏させるようにする観点から、裏面シート3は、透湿性に加えて更に、通気性を有することが好ましい。ここで「通気性」とは、文字通り通気する性質であり、典型的には各種布地のように気流が通る性質である。裏面シート3の坪量は、好ましくは15g/m
2以上、更に好ましくは25g/m
2以上、そして、好ましくは100g/m
2以下、更に好ましくは80g/m
2以下、より具体的には、好ましくは15〜100g/m
2、更に好ましくは25〜80g/m
2である。
【0043】
吸収体4としては、ナプキン1の薄型化、低剛性化の観点から、木材パルプ等の繊維材料を積繊してなる積繊体ではなく、該積繊体に比して厚みが薄く低剛性の吸収性シートを用いることが望ましい。特に、吸収体4が吸収性シートを含んで構成されていると、前記積繊体を含んで構成されている場合に比して圧縮変形が小さいため、スペーサー部材10を構成する網状シート11(吸収体4に最も近接する網状シート)の網目11A内に吸収体4が入りにくく〔吸収体4の前記突出部の突出長さT2(
図4参照)が小さく〕、裏面シート3側からの体液の染み出しがより一層効果的に防止される。
【0044】
本実施形態のナプキン1において、吸収性シート401及び402としては、湿潤状態の吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性ポリマーとの間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとしては、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造された吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び吸水性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後高吸収性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸収性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることができる。吸収性シートとして好適なものとしては、パルプ繊維の集合体に吸水性ポリマーを固定させたもの、エアレイド法で製造された乾式パルプシート、2枚の不織布間に粒子状の吸水性ポリマーを散布したものが挙げられる。これらの吸収性シートは、一枚を所定形状に裁断してシート状吸収体として用いることができる。吸収性シートの1枚あたりの厚みとしては、好ましくは0.1mm以上、特に0.3mm以上であり、また、好ましくは2mm以下、特に1.5mm以下であることが好ましい。より具体的には、0.1mm以上2mm以下、特に0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0045】
しかしながら、吸収体4としては、前述した吸収性シートに代えて、積繊型の吸収体を用いても良い。積繊型の吸収体の一例として、積繊型の吸収体を複数(2個)積層してなる積層構造が挙げられる。斯かる積繊型の吸収体の積層構造は、例えば、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で且つ前方部Aから排泄部対向部Bを経て後方部Cに亘って延びる、下層吸収体(前記主吸収体40と平面視において同形状の吸収体)と、該下層吸収体よりも幅狭で且つ排泄部対向部Bにおいて該下層吸収体の横方向Yの中央部の肌対向面側に配置された、上層吸収体(前記補助吸収体41と平面視において同形状の吸収体)とを有し、両吸収体の積層体が中高部42を形成している。積繊型の吸収体を構成する材料としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたもの等を用いることができる。
【0046】
また、吸収体4は、
図2に示す如き吸収性シート含む形態、あるいは前述した積繊型の吸収体の何れにおいても、吸収性シートあるいは積繊型の吸収体からなる吸収性コアと、該吸収性コアを被覆する液透過性のコアラップシートとを含んで構成されていても良い。その場合、吸収性コアとコアラップシートとの間は、所定の部位においてホットメルト粘着剤等の接合手段により接合されていても良い。吸収性コアを被覆するコアラップシートとしては、例えば、ティッシュペーパー等の紙、各種不織布、開孔フィルム等の液透過性シートを用いることができる。吸収体4が吸収性コアとこれを被覆するコアラップシートとを含んで構成されていると、吸収性コアのみで構成されている場合に比して圧縮変形が小さくなるため、スペーサー部材10を構成する網状シート11(吸収体4に最も近接する網状シート)の網目11A内に吸収体4が入りにくく〔吸収体4の前記突出長さT2(
図4参照)が小さく〕、裏面シート3側からの体液の染み出しがより一層効果的に防止される。
【0047】
サイドシート8としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。その他の材料としては、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布(S)とメルトブロー不織布(M)とが複合化されたシート(例えばSM、SMS、SMMS等)、ヒートロール不織布、エアスルー不織布等の撥水性(疎水性)不織布が挙げられる。
【0048】
スペーサー部材10を構成する網状シート11,12の素材としては、撥水性のもの、即ち液を吸収保持しないものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の樹脂が挙げられる。網状シート11,12の坪量は、それぞれ、好ましくは15g/m
2以上、更に好ましくは20g/m
2以上、そして、好ましくは100g/m
2以下、更に好ましくは80g/m
2以下、より具体的には、好ましくは15〜100g/m
2、更に好ましくは20〜80g/
2である。網状シート11,12の坪量(厚み)は、互いに同じでも異なっていても良い。
【0049】
尚、網状シート11,12として使用できるのは、多数の網目が規則的に形成された網状シートであり、網目が不規則に形成された網状シートは、本発明では使用しない。従って、例えば通常の紙や不織布の如き、構成繊維間の繊維間隙を内包するシート(繊維集合体)は、本発明に係る網状シートではない。
【0050】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、スペーサー部材10は、吸収体4(主吸収体40)の非肌対向面の全域に亘って配されていたが、少なくとも排泄部対向部Bに配されていれば良く、前方部A及び/又は後方部Cには配されていなくても良い。また、スペーサー部材10は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出していても良い。また、前記実施形態では、スペーサー部材が有する積層構造を構成する複数枚の網状シートは、網目のパターンが互いに同じであったが、互いに異なっていても良い。また、網状シートの網目の平面視形状は、正方形形状に制限されず、矩形形状、円形形状、三角形形状、六角形形状、異なる多角形の組み合わせ形状等、任意に設定可能である。
【0051】
また、ナプキン1は、ウイング部7を有しないものであっても良い。本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンの他、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド、使い捨ておむつ等にも適用できる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。