(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262517
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】部品の加飾方法及び加飾部品
(51)【国際特許分類】
B05D 3/06 20060101AFI20180104BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20180104BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20180104BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20180104BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20180104BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20180104BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20180104BHJP
B44C 1/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
B05D3/06 Z
B05D5/06 104Z
B05D7/24 303C
B23K26/00 B
B23K26/00 N
H01S3/00 B
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B44C1/02
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-262147(P2013-262147)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-208437(P2014-208437A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-72779(P2013-72779)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 聡伸
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−175670(JP,A)
【文献】
特開平03−151083(JP,A)
【文献】
特表2011−506124(JP,A)
【文献】
特表2012−520905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B23K 26/00−26/70
B32B 1/00−43/00
B44C 1/00−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品表面に塗膜が形成され、レーザを照射して前記塗膜に絵柄を描く部品の加飾方法であって、
鱗片状をなす第1の金属微粉末を含む塗料を用いて前記塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記レーザの照射前後で前記塗膜の表面状態を同じ状態に維持可能なレーザ照射条件で前記レーザを照射することにより、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が小さくなるように、前記塗膜中の前記第1の金属微粉末を熱変形させて前記絵柄を描画するレーザ描画工程と
を含むことを特徴とする部品の加飾方法。
【請求項2】
部品表面に塗膜が形成され、レーザを照射して前記塗膜に絵柄を描く部品の加飾方法であって、
鱗片状をなす第1の金属微粉末を含む塗料を用いて前記塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記レーザの照射前後で前記塗膜の表面の構造及び色の状態を同じ状態に維持可能なレーザ照射条件で前記レーザを照射することにより、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が小さくなるように、前記塗膜中の前記第1の金属微粉末を熱変形させて球形状をなす第2の金属微粉末とすることにより前記絵柄を描画するレーザ描画工程と
を含むことを特徴とする部品の加飾方法。
【請求項3】
前記塗膜は、黒以外の色に着色された顔料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項4】
前記顔料は、前記塗膜中にて1.0重量%以上8.5重量%以下の割合で含まれていることを特徴とする請求項3に記載の部品の加飾方法。
【請求項5】
前記金属微粉末は、アルミニウムフレークであり、前記塗膜中にて0.5重量%以上5.0重量%以下の割合で含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項6】
前記レーザ照射条件として、前記レーザの波長が1064nmであり、前記レーザのエネルギー密度が50MW/cm2以上900MW/cm2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項7】
前記塗膜は、黒以外の色に着色された染料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項8】
前記鱗片状をなす第1の金属微粉末における最大寸法部位の平均値は5μm以上50μm以下であり、最小寸法部位の平均的な値は0.05μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項9】
前記鱗片状をなす第1の金属微粉末は、前記アスペクト比が20以上であり、前記レーザ描画工程では、前記アスペクト比が5よりも小さくなるよう前記第1の金属微粉末を熱変形させることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項10】
前記鱗片状をなす第1の金属微粉末は、その表面に有色顔料を吸着させた微粉末であり、着色金属粉顔料として機能することを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項11】
前記塗膜は、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末が表面側に浮上しないノンリーフィングタイプの塗料を用いて形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項12】
前記塗膜の表面には、前記絵柄に応じた凹凸が形成されていないことを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項13】
前記塗膜における前記レーザの吸収率が40%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項14】
前記塗膜形成工程で形成される前記塗膜には、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末が一様に分散し前記塗膜の面方向と平行に配列していることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の加飾方法。
【請求項15】
部品表面に塗膜が形成され、前記塗膜に絵柄が描かれた加飾部品であって、
前記塗膜は、
鱗片状をなす第1の金属微粉末を主として含むとともに、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が第1の値である第1領域と、
前記アスペクト比が前記第1の値よりも小さい第2の値である第2の金属微粉末を主として含み、前記第1領域と同じ表面状態を有する第2領域と
を備え、
前記第1領域及び前記第2領域の配置及び形状によって前記絵柄が描画されており、前記塗膜におけるレーザの吸収率が40%以下である
ことを特徴とする加飾部品。
【請求項16】
部品表面に塗膜が形成され、前記塗膜に絵柄が描かれた加飾部品であって、
前記塗膜は、
鱗片状をなす第1の金属微粉末を主として含むとともに、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が第1の値である第1領域と、
前記アスペクト比が前記第1の値よりも小さい第2の値である球形状をなす第2の金属微粉末を主として含み、表面の構造及び色の状態が前記第1領域と同じ状態となる第2領域と
を備え、
前記第1領域及び前記第2領域の配置及び形状によって前記絵柄が描画されており、前記塗膜におけるレーザの吸収率が40%以下である
ことを特徴とする加飾部品。
【請求項17】
前記塗膜は、黒以外の色に着色された顔料を含むことを特徴とする請求項15または16に記載の加飾部品。
【請求項18】
前記顔料は、前記塗膜中にて1.0重量%以上8.5重量%以下の割合で含まれていることを特徴とする請求項17に記載の加飾部品。
【請求項19】
前記塗膜は、黒以外の色に着色された染料を含むことを特徴とする請求項15または16に記載の加飾部品。
【請求項20】
前記鱗片状をなす第1の金属微粉末における最大寸法部位の平均値は5μm以上50μm以下であり、最小寸法部位の平均的な値は0.05μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項15または16に記載の加飾部品。
【請求項21】
前記鱗片状をなす第1の金属微粉末は、その表面に有色顔料を吸着させた微粉末であり、着色金属粉顔料として機能することを特徴とする請求項15または16に記載の加飾部品。
【請求項22】
前記塗膜は、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末が表面側に浮上しないノンリーフィングタイプの塗料を用いて形成されることを特徴とする請求項15または16に記載の加飾部品。
【請求項23】
前記塗膜の表面には、前記絵柄に応じた凹凸が形成されていないことを特徴とする請求項15または16に記載の加飾部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品表面に塗膜が形成され、レーザを照射して塗膜に絵柄を描く部品の加飾方法及び加飾部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体の表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような加飾部品に装飾を加える加飾方法としては、水圧転写が一般的に用いられている。水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や幾何学模様などの絵柄)を水圧によって樹脂成形体の表面に転写する技術である。この技術によれば、三次元曲面への印刷を行うことができる。
【0003】
また、水圧転写以外の加飾方法として、レーザ描画が知られている。レーザ描画は、部品表面にレーザを照射し、レーザによって与えられた熱により部品表面の状態を変化(例えば、表面を削る、または表面を焦がすなど)させて、絵柄を描くようにした加飾方法である。この加飾方法によれば、水圧転写による加飾方法と比較して、低コストで絵柄を描画することができる。
【0004】
因みに、特許文献1等には、部品の表面にレーザを照射して文字をマーキングする技術が開示されている。この技術では、部品の表面に塗装される塗料にアルミニウムからなる金属粉を混合し、レーザ照射によって金属粉を効率よく発熱させることで塗料を燃焼させて除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−24868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のように、レーザ照射によって塗膜の表面を凹状に削るレーザ加工を行うと、その加工部分においてアルミニウムからなる金属粉が露出してしまう。この場合、耐薬品性や耐油脂汚染性等の塗膜性能が低下し、十分な製品信頼性を確保できなくなってしまう。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品表面における塗膜性能の低下を回避しつつ塗膜に絵柄を描画することができる部品の加飾方法を提供することにある。また、別の目的は、部品表面の塗膜性能を維持することができ、製品信頼性に優れた加飾部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、部品表面に塗膜が形成され、レーザを照射して前記塗膜に絵柄を描く部品の加飾方法であって、鱗片状をなす第1の金属微粉末を含む塗料を用いて前記塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記レーザの照射前後で前記塗膜の表面状態を同じ状態に維持可能なレーザ照射条件で前記レーザを照射することにより、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が小さくなるように、前記塗膜中の前記第1の金属微粉末を熱変形させて前記絵柄を描画するレーザ描画工程とを含むことを特徴とする部品の加飾方法をその要旨とする。
手段2に記載の発明は、部品表面に塗膜が形成され、レーザを照射して前記塗膜に絵柄を描く部品の加飾方法であって、鱗片状をなす第1の金属微粉末を含む塗料を用いて前記塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記レーザの照射前後で前記塗膜の表面の構造及び色の状態を同じ状態に維持可能なレーザ照射条件で前記レーザを照射することにより、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が小さくなるように、前記塗膜中の前記第1の金属微粉末を熱変形させて球形状をなす第2の金属微粉末とすることにより前記絵柄を描画するレーザ描画工程とを含むことを特徴とする部品の加飾方法をその要旨とする。
【0009】
手段1,2に記載の発明によると、塗膜形成工程において、鱗片状をなす第1の金属微粉末を含む塗料を用いて、部品表面に塗膜が形成される。その後、レーザ描画工程では、レーザの照射前後で塗膜の表面状態を同じ状態に維持可能なレーザ照射条件に設定して部品表面の塗膜にレーザが照射される。このとき、レーザの加工熱によって、薄い鱗片状の金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値(即ち厚さの平均値)に対する最大寸法部位の平均値(即ち長径の平均値)の比で示されるアスペクト比が小さくなるように、塗膜中の第1の金属微粉末が熱変形して絵柄が描画される。具体的には、レーザ照射による加工部分(レーザー照射領域)では、レーザが照射されることで第1の金属微粉末が鱗片状から球形状に近づくように熱変形してその表面積が小さくなる。一方、レーザ未照射領域では、アスペクト比の大きな第1の金属微粉末が未変形のまま残る。従って、塗膜においてレーザ照射領域とレーザ未照射領域とで光透過率や光反射率に差をつけることができ、その差によって絵柄を描画することができる。また、塗膜の表面はレーザの照射前後で凹凸等が生じるわけではなく、同じ表面状態に維持される。このような加飾方法を採用すると、従来技術のように部品表面の塗膜を凹状に削らなくても絵柄を描くことができるため、塗膜の表面から金属微粉末が露出するといった問題を回避することができる。従って、部品表面の塗膜性能(耐薬品性や耐油脂汚染性等)を維持することができ、部品の製品信頼性を十分に確保することができる。
【0010】
塗膜は、黒以外の色に着色された顔料を含んでいてもよい。また、塗膜は、顔料に代えて黒以外の色に着色された染料を含んでいてもよい。この場合、レーザ照射による加工部分では、アスペクト比が小さくなるように第1の金属微粉末を熱変形させてその表面積を減少させることにより、第1の金属微粉末の裏側に隠れていた顔料や染料が部品表面側から見えるようになり顔料や染料の色を強調させることができる。従って、塗膜において鮮明な絵柄を描画することができ、部品の意匠性を十分に高めることができる。
【0011】
鱗片状をなす第1の金属微粉末における最大寸法部位の平均値は5μm以上50μm以下であり、最小寸法部位の平均的な値は0.05μm以上2μm以下であることが好ましい。このような金属微粉末を含む塗料を用いて塗膜を形成すると、部品表面においてメタリック調の外観を確実に得ることができる。
【0012】
鱗片状をなす第1の金属微粉末は、アスペクト比が20以上であり、レーザ描画工程では、アスペクト比が5よりも小さくなるよう第1の金属微粉末を熱変形させることが好ましい。また、レーザ描画工程では、熱変形によって金属微粉末を球形状に(アスペクト比を1に)近づけることがより好ましい。このようにすると、部品表面の塗膜において、絵柄を確実に描画することができ、部品の意匠性を十分に高めることができる。
【0013】
鱗片状をなす第1の金属微粉末は、その表面に有色顔料を吸着させた微粉末であり、着色金属粉顔料として機能するものであってもよい。このようにしても、部品表面の塗膜において、絵柄を鮮明に描画することができ、部品の意匠性を十分に高めることができる。
【0014】
金属微粉末の形成材料としては、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、スズ、ステンレスなどの金属材料を挙げることができる。また、塗膜を形成する塗料としては、メタリック塗料(即ち、金属微粉末が熱硬化アクリル塗料などの半透明エナメルに含まれる塗料)などが挙げられる。
【0015】
さらに、塗膜は、鱗片状をなす第1の金属微粉末が表面側に浮上しないノンリーフィングタイプのメタリック塗料を用いて形成されることが好ましい。また、塗膜におけるレーザの吸収率が40%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましい。このようにすると、塗膜の表面側には第1の金属微粉末が存在せず、その表面側でレーザのエネルギーが殆ど吸収されないため、レーザ描画工程において、塗膜の表面における凹凸の形成が確実に防止される。また、ノンリーフィングタイプのメタリック塗料を用いる場合、塗膜において、鱗片状をなす第1の金属微粉末が一様に分散し塗膜の面方向と平行に配列する。このため、レーザ描画工程において、塗膜の表面側から照射されたレーザが塗膜中の第1の金属微粉末に確実に当たるため、その加工熱によって金属微粉末を熱変形させることができる。
【0016】
具体的には、金属微粉末は、アルミニウムフレークであり、塗膜中にて0.5重量%以上5.0重量%以下の割合で含まれていることが好ましい。ここで、塗膜中のアルミニウムフレークが0.5重量%よりも少ないと、アルミニウムフレークの熱変形による加飾を十分に得られなくなる場合がある。また、塗膜中のアルミニウムフレークが5.0重量%を超える場合には、アルミニウムフレークの影響が大きくなりすぎて、顔料による着色効果が十分に得られなくなってしまう。従って、本発明のように、アルミニウムフレークからなる金属微粉末を0.5重量%以上5.0重量%以下の割合で含む場合、部品表面の塗膜に絵柄を確実に描画することができる。
【0017】
また、顔料は、塗膜中にて1.0重量%以上8.5重量%以下の割合で含まれていることが好ましい。このような割合で顔料を含ませることにより、部品表面の塗膜に絵柄を鮮明に描画することができる。
【0018】
レーザ照射条件として、レーザの波長が1064nmであり、レーザのエネルギー密度が50MW/cm
2以上900MW/cm
2以下であることが好ましい。このようにすると、アルミニウムフレークにおいてレーザのエネルギーが吸収され、アルミニウムフレークを確実に熱変形させることができる。
【0019】
手段3に記載の発明は、部品表面に塗膜が形成され、前記塗膜に絵柄が描かれた加飾部品であって、前記塗膜は、鱗片状をなす第1の金属微粉末を主として含むとともに、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が第1の値である第1領域と、前記アスペクト比が前記第1の値よりも小さい第2の値である第2の金属微粉末を主として含み、前記第1領域と同じ表面状態を有する第2領域とを備え、前記第1領域及び前記第2領域の配置及び形状によって前記絵柄が描画されて
おり、前記塗膜におけるレーザの吸収率が40%以下であることを特徴とする加飾部品をその要旨とする。
手段4に記載の発明は、部品表面に塗膜が形成され、前記塗膜に絵柄が描かれた加飾部品であって、前記塗膜は、鱗片状をなす第1の金属微粉末を主として含むとともに、金属微粉末における最小寸法部位の平均的な値に対する最大寸法部位の平均値の比で示されるアスペクト比が第1の値である第1領域と、前記アスペクト比が前記第1の値よりも小さい第2の値である球形状をなす第2の金属微粉末を主として含み、表面の構造及び色の状態が前記第1領域と同じ状態となる第2領域とを備え、前記第1領域及び前記第2領域の配置及び形状によって前記絵柄が描画されて
おり、前記塗膜におけるレーザの吸収率が40%以下であることを特徴とする加飾部品をその要旨とする。
【0020】
手段3,4に記載の発明によると、加飾部品の部品表面に形成されている塗膜は、アスペクト比が第1の値を有する鱗片状の第1の金属微粉末を主として含む第1領域と、アスペクト比が第1の値より小さい第2の値を有する第2の金属微粉末を主として含む第2領域とを備える。つまり、第1領域に含まれる第1の金属微粉末は、第2の金属微粉末よりもアスペクト比が大きく、薄い鱗片状の形状でありその表面積が大きい。一方、第2領域に含まれる第2の金属微粉末は、第1の金属微粉末よりもアスペクト比が小さく、球形に近い形状でありその表面積は小さい。このため、塗膜において第1領域と第2領域とで光透過率や光反射率に差をつけることができ、それら領域の配置及び形状によって絵柄を描画することができる。また、本発明の加飾部品では、従来技術のように部品表面の塗膜を凹状に削らなくても絵柄を描くことができるため、塗膜の第1領域と第2領域とは同じ表面状態になっている。つまり、本発明の加飾部品では、塗膜の表面から金属微粉末が露出するといった問題を回避することができる。従って、部品表面の塗膜性能(耐薬品性や耐油脂汚染性等)を維持することができ、加飾部品の製品信頼性を十分に確保することができる。
【0021】
加飾部品の表面に形成される塗膜は、黒以外の色に着色された顔料を含むことが好ましい。この加飾部品では、第1領域に含まれる鱗片状の第1の金属微粉末と比較して、第2領域に含まれる第2の金属微粉末はアスペクト比が小さくその表面積が小さいため、第2領域において顔料の色を強調させることができる。従って、塗膜において鮮明な絵柄を描画することができ、加飾部品の意匠性を十分に高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、請求項1〜
14に記載の発明によると、部品表面における塗膜性能の低下を回避しつつ塗膜に絵柄を描画することができる部品の加飾方法を提供することができる。また、請求項
15〜23に記載の発明によると、部品表面の塗膜性能を維持することができ、製品信頼性に優れた加飾部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態における自動車用加飾部品の表面の一部を示す平面図。
【
図3】レーザ加工熱によるアルミニウムフレークの熱変形を示す説明図。
【
図7】レーザ照射前の塗膜のSEM写真を示す説明図。
【
図8】レーザ照射後の塗膜のSEM写真を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、自動車用加飾部品1の表面の一部を示す平面図であり、
図2は、その自動車用加飾部品1を示す拡大断面図である。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、自動車用加飾部品1は、立体的形状をなす樹脂成形体2と、その樹脂成形体2の表面を被覆するように形成された塗膜3とを有し、塗膜3に所定形状の絵柄4が描かれている。なお、本実施の形態の絵柄4は、曲線で囲まれた異なる形状及びサイズを有する複数の模様からなる。自動車用加飾部品1は、自動車のドアに設けられたアームレストの上面を覆う装飾パネルである。また、樹脂成形体2は、有色の熱可塑性樹脂(例えば肌色に着色されたABS樹脂)を用いて成形された樹脂成形品である。
【0026】
塗膜3は、例えば青色に着色された顔料6と金属微粉末とを含んで形成されている。金属微粉末は、アルミニウムからなる金属粉(アルミニウム粉)である。塗膜3の厚さは、例えば5μm以上35μm以下(本実施の形態では15μm)に設定されている。この塗膜3の形成に用いられる塗料は、無色透明の2液型アクリルウレタン樹脂塗料に対して、光透過性を有しないアルミニウムフレーク(鱗片状をなす金属微粉末)7aを含有させてなるメタリック塗料である。なお、本実施の形態では、アルミニウムフレーク7aが表面側に浮上しないノンリーフィングタイプのメタリック塗料が用いられている。
【0027】
また、メタリック塗料は、アルミニウムフレーク7aを0.5重量%以上5.0重量%以下の割合で含み、顔料6を1.0重量%以上8.5重量%以下の割合で含んでいる。アルミニウムフレーク7aは、アルミニウムの粉末をローラ等で薄く伸ばすことで形成される。なお、アルミニウムフレーク7aの最大粒子径(長径)の平均値は、例えば5μm以上50μm以下(本実施の形態では15μm程度)であり、アルミニウムフレーク7aの厚さの平均値は、例えば0.05μm以上2μm以下(本実施の形態では0.3μm程度)である。また、顔料6のサイズとしては、アルミニウムフレーク7aの粒子径の1/10以下のサイズであり、平均粒子径が数百nm〜数μm程度のものが用いられる。
【0028】
塗膜3は、鱗片状をなすアルミニウムフレーク7a(第1の金属微粉末)を主として含む第1領域R1と、球形状をなすアルミニウム粉7b(第2の金属微粉末)を主として含む第2領域R2とを備える。本実施の形態において、第1領域R1に含まれるアルミニウムフレーク7aは、最小寸法部位の平均的な値(
図3で示される厚さT1の平均値)に対する最大寸法部位の平均的な値(
図3で示される長径D1の平均値)の比で示されるアスペクト比A1(=D1/T1)が20以上(第1の値)である。また、第2領域R2に含まれる球形状のアルミニウム粉7bは、厚さT2の平均値に対する長径D2の平均値の比で示されるアスペクト比A2(=D2/T2)が3以下(第2の値)であり、アルミニウムフレーク7aよりもアスペクト比が小さくなっている。
【0029】
図3に示されるように、球形状のアルミニウム粉7bは、レーザL1の加工熱によってアルミニウムフレーク7aを熱変形(凝縮)させることで形成されており、アルミニウムフレーク7aよりも表面積が小さくなっている。つまり、
図1及び
図2に示す塗膜3において、球形状のアルミニウム粉7bを主として含む第2領域R2は、レーザ照射によりアルミニウムフレーク7aを鱗片状から球形状に熱変形させることで形成されたレーザ照射領域である。一方、第1領域R1は、アルミニウムフレーク7aが未変形のまま残されたレーザ未照射領域である。
【0030】
このように塗膜3において、第1領域R1と第2領域R2とでは、塗膜3中に含まれる金属微粉末(アルミニウムフレーク7a、アルミニウム粉7b)の表面積が異なるため、光反射率や光透過率に差をつけることができる。そして、それら光反射率や光透過率の異なる各領域R1,R2の配置及び形状によって絵柄4が描画されている。
【0031】
本実施の形態において、塗膜3の表面側にはアルミニウムフレーク7aやアルミニウム粉7bが存在しておらず、塗膜3の表面からアルミニウムフレーク7aやアルミニウム粉7bが露出していない。また、塗膜3における第1領域R1と第2領域R2とでは同じ表面状態になっている。つまり、塗膜3の表面には絵柄4に応じた凹凸が形成されておらず、塗膜3の表面は平坦面になっている。
【0032】
次に、自動車用加飾部品1を製造するための表面加飾システム30について説明する。
【0033】
図4に示されるように、表面加飾システム30は、レーザ照射装置31、ワーク変位ロボット32及び制御装置33を備えている。レーザ照射装置31は、レーザL1(本実施の形態では、波長1064nmのYAGレーザ)を発生させるレーザ発生部41と、レーザL1を偏向させるレーザ偏向部42と、レーザ発生部41及びレーザ偏向部42を制御するレーザ制御部43とを備えている。レーザ偏向部42は、レンズ44と反射ミラー45とを複合させてなる光学系であり、これらレンズ44及び反射ミラー45の位置を変更することにより、レーザL1の照射位置や焦点を調整するようになっている。レーザ制御部43は、レーザL1の照射時間変調、照射強度変調、照射面積変調などの制御を行う。
【0034】
また、ワーク変位ロボット32は、ロボットアーム46と、ロボットアーム46の先端に設けられたワーク支持部47とを備えている。ワーク支持部47は、表面に塗膜3が塗装された樹脂成形体2を支持するようになっている。そして、ワーク変位ロボット32は、ロボットアーム46を駆動して樹脂成形体2の位置及び角度を変更することにより、樹脂成形体2の表面に対するレーザL1の照射位置を変更するようになっている。
【0035】
制御装置33は、CPU50、メモリ51及び入出力ポート52等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU50は、レーザ照射装置31及びワーク変位ロボット32に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0036】
なお、メモリ51には、レーザ照射を行うためのレーザ照射データが記憶されている。レーザ照射データは、CADデータを変換することによって得られるデータであり、CADデータは、樹脂成形体2の表面の形状データや絵柄4を示す画像データ等を変換することによって得られるデータである。また、メモリ51には、レーザ照射に用いられるレーザ照射パラメータ(レーザL1の照射位置、焦点、照射角度、照射面積、照射時間、照射強度、照射周期、照射ピッチなど)を示すデータが記憶されている。
【0037】
次に、自動車用加飾部品1の製造方法を説明する。
【0038】
まず、熱可塑性樹脂(本実施の形態ではABS樹脂)を用いて所定の立体形状に成形した樹脂成形体2を準備する。そして、樹脂成形体2は、作業者によってワーク変位ロボット32のワーク支持部47(
図4参照)にセットされる。
【0039】
次に、塗膜形成工程を行い、青色に着色された顔料6及びアルミニウムフレーク7aを含有するメタリック塗料を用いて、樹脂成形体2の表面を覆う塗膜3を形成する(
図5参照)。詳述すると、CPU50は、塗膜形成用の駆動信号を生成し、生成した塗膜形成用の駆動信号を塗装装置(図示略)に出力する。そして、塗装装置は、CPU50から出力された塗膜形成用の駆動信号に基づいて、塗装機61による塗膜3の塗装を開始させる。ここでは、樹脂成形体2の表面上に、塗装機61を用いてメタリック塗料を塗装することにより塗膜3を形成する。この塗装直後からの時間経過に伴って塗膜3が硬化するときには、塗膜3中においてアルミニウムフレーク7aが自重により徐々に沈み込むとともに、各アルミニウムフレーク7aは一様に分散し塗膜3の面方向に平行に配列する。この結果、塗膜3の表面側にはアルミニウムフレーク7aが存在しない領域が形成され、塗膜3中のアルミニウムフレーク7aは非露出状態となる。なお、この塗膜3に含まれる顔料6は青色に着色されており、塗膜3におけるレーザL1のエネルギー吸収率は40%以下となっている。
【0040】
続くレーザ描画工程では、樹脂成形体2の表面の塗膜3にレーザL1を照射しレーザL1の加工熱により、塗膜3内にてアルミニウムフレーク7aを熱変形させる。具体的に言うと、CPU50は、レーザ照射を行うためのレーザ照射データを生成し、あらかじめメモリ51に記憶しておく。また、CPU50は、レーザ照射に用いられるレーザ照射パラメータ(レーザL1の照射位置、焦点、照射面積、照射時間、照射強度など)をあらかじめ設定しておく。
【0041】
なお、レーザ照射データは、例えば以下の工程を経て生成される。即ち、作業者は、まず、従来周知の画像作成ソフトを用いて、絵柄4に対応した第2領域R2(レーザ照射領域)の画像データを作成する。なお、画像データは、CPU50によってCADデータに変換される。次に、CPU50は、CADデータに変換された画像データを、レーザ照射データに変換する。さらに、CPU50は、変換したレーザ照射データをメモリ51に記憶する。
【0042】
そして、上記したレーザ描画工程において、CPU50は、メモリ51に記憶されているレーザ照射データに基づいてレーザ照射を行う。具体的には、CPU50は、メモリ51に記憶されているレーザ照射データを読み出し、読み出したレーザ照射データに基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号をレーザ照射装置31に出力する。レーザ照射装置31は、CPU50から出力された駆動信号に基づいて、樹脂成形体2の表面に形成された塗膜3にレーザL1を照射する(
図6参照)。なお、レーザ照射装置31のレーザ制御部43は、レーザ発生部41からレーザL1を照射させ、画像データのパターンに応じてレーザ偏向部42を制御する。この制御により、レーザL1の照射位置が決定される。また、塗膜3に照射されるレーザL1のエネルギー密度は、50MW/cm
2以上900MW/cm
2以下(本実施の形態では170MW/cm
2)に決定される。このレーザ照射条件は、レーザL1の照射前後で塗膜3の表面の構造及び色の状態を同じ状態に維持可能な条件である。
【0043】
ここで、第2領域R2において、レーザ発生部41から照射されたレーザL1は、塗膜3の樹脂材や顔料6には殆ど吸収されることなく、アルミニウムフレーク7aに達する。そして、レーザL1がアルミニウムフレーク7aに当たることで発生した加工熱がアルミニウムフレーク7aで効率よく吸収される。この結果、アスペクト比A1が小さくなるように、塗膜3中のアルミニウムフレーク7aが鱗片状から球形状に熱変形してアルミニウム粉7bとなる。またこのとき、第2領域R2では、球形状に変形したアルミニウム粉7bはナノオーダのサイズとなることで視認不可能または視認困難な状態となる。
【0044】
図7にはレーザ照射前の塗膜3を示し、
図8にはレーザ照射後の塗膜3を示している。
図7及び
図8は、2000倍の倍率で観察したSEM写真である。
図7及び
図8に示されるように、アルミニウムフレーク7aが鱗片状から球形状に凝縮することで、アルミニウムフレーク7aにて隠れていた顔料6が表面側から視認可能となり、第2領域R2(レーザ照射領域)における顔料6の視認性が向上されている。なお、球形状のアルミニウム粉7bについては、2000倍のSEM写真でも観察できない程度に微細なサイズ(ナノオーダ)となっていた。
【0045】
また、第2領域R2の塗膜3において、アルミニウムフレーク7a周辺の樹脂材は、アルミニウムフレーク7aの発熱によって柔らかくなり、アルミニウムフレーク7aの熱変形に追従する。一方、塗膜3の表面側にはアルミニウムフレーク7aが存在せず、レーザL1の吸収が殆ど起きないため、削れたり焦げたりすることない。従って、レーザL1の照射後においても、塗膜3は、表面からアルミニウムフレーク7aやアルミニウム粉7bが露出することなく、平坦状の表面が維持される。因みに、本発明者らは、マイクロスコープを用いた300倍の倍率で第1領域R1及び第2領域R2の断面観察を行った。この断面観察の画像では、各領域R1,R2及びそれらの境界部分において凹凸のない表面が確認された。
【0046】
CPU50は、メモリ51に記憶されているレーザ照射データに基づいて、部品表面の絵柄4を構成する全ての第2領域R2についてレーザL1を照射する。この結果、樹脂成形体2の塗膜3に絵柄4が描画されることにより、
図1及び
図2に示す自動車用加飾部品1が完成する。
【0047】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施の形態では、部品表面の塗膜3の第2領域R2にレーザL1が照射され、アスペクト比A1が小さくなるように、アルミニウムフレーク7aが鱗片状から球形状に熱変形してその表面積が小さくなる。一方、塗膜3の第1領域R1には、レーザL1が照射されることはなく、アスペクト比A1の大きなアルミニウムフレーク7aがそのまま残る。従って、塗膜3において、第1領域R1(レーザ未照射領域)と第2領域R2(レーザ照射領域)とで光透過率や光反射率に差をつけることができ、その差によって絵柄4を描画することができる。また、レーザ描画工程では、レーザL1の照射前後で塗膜3の表面状態を同じ状態に維持可能なレーザ照射条件が設定されている。このため、塗膜3の第1領域R1と第2領域R2とは同じ表面状態になっている。このように、本実施の形態の加飾方法を採用すると、従来技術のように部品表面の塗膜3を凹状に削らなくても絵柄4を描くことができる。このため、塗膜3の表面からアルミニウムフレーク7aやアルミニウム粉7bが露出するといった問題を回避することができる。従って、部品表面の塗膜性能(耐薬品性や耐油脂汚染性等)を維持することができ、自動車用加飾部品1の製品信頼性を十分に確保することができる。
【0049】
(2)本実施の形態では、塗膜3は、青色に着色された顔料6を含んでいるため、アスペクト比A1が小さくなるようにアルミニウムフレーク7aを鱗片状から球形状に熱変形させてその表面積を減少させることにより、顔料6の青色を強調させることができる。従って、塗膜3において鮮明な絵柄4を描画することができ、自動車用加飾部品1の意匠性を十分に高めることができる。
【0050】
(3)本実施の形態の自動車用加飾部品1では、塗膜3中において0.5重量%以上5.0重量%以下の割合でアルミニウムフレーク7aが含まれている。ここで、塗膜3中のアルミニウムフレーク7aが0.5重量%よりも少ないと、アルミニウムフレーク7aの熱変形による加飾を十分に得ることができない。また、塗膜3中のアルミニウムフレーク7aが5.0重量%を超える場合には、アルミニウムフレーク7aの影響が大きくなりすぎて、顔料6による着色効果が十分に得られなくなってしまう。従って、本実施の形態のように、アルミニウムフレーク7aを0.5重量%以上5.0重量%以下の割合で含む場合、部品表面の塗膜3に絵柄4を確実に描画することができる。
【0051】
(4)本実施の形態の自動車用加飾部品1において、塗膜3は、アルミニウムフレーク7aが表面側に浮上しないノンリーフィングタイプのメタリック塗料を用いて形成されている。また、塗膜3におけるレーザの吸収率が40%以下となっている。このメタリック塗料を用いると、塗膜3の表面側にはアルミニウムフレーク7aが存在せず、その塗膜3の表面側ではレーザL1のエネルギーが殆ど吸収されない。このため、塗膜3の表面に凹凸が形成されることがない。また、塗膜3において、アルミニウムフレーク7aが一様に分散し塗膜3の面方向と平行に配列する。このため、塗膜3の表面側から照射されたレーザL1が塗膜3中のアルミニウムフレーク7aに確実に当たるため、その加工熱によってアルミニウムフレーク7aを鱗片状から球形状に熱変形させることができる。
【0052】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0053】
・上記実施の形態では、塗膜3には青色に着色された顔料6が含有されるものであったが、他の色(黒以外の色)に着色された顔料を塗膜3に含ませてもよい。また、塗膜3には顔料6に代えて染料を含ませてもよい。さらに、塗膜3は、顔料6や染料を含まない透明の塗膜であってもよい。なおこの場合でも、透明の塗膜3において第1領域R1にアルミニウムフレーク7aを含ませるとともに第2領域R2に球形状のアルミニウム粉7bを含ませることで、それら領域R1,R2における光反射率及び光透過率の違いによって絵柄4を描画する。また、アルミニウムフレーク7aとしては、その表面に有色顔料を着色させた金属微粉末であり、着色金属顔料として機能するものを用いてもよい。
【0054】
・上記各実施の形態では、自動車用加飾部品1を構成する樹脂成形体2はABS樹脂を用いて成形されていたが、他の樹脂材料を用いて成形してもよい。また、樹脂成形体2は、上記実施の形態以外の所定色(肌色以外の色)に着色された成形体であってもよいし、無色透明または半透明の成形体であってもよい。無色透明または半透明の樹脂成形体2を用いて自動車用加飾部品1を製造する場合、バックライトなどの照明装置を自動車用加飾部品1の下方に配置すると、透過光によって塗膜3の絵柄4を確認することができる。このため、意匠効果の優れた自動車用加飾部品1を実現することができる。
【0055】
・上記実施の形態の自動車用加飾部品1では、樹脂成形体2の表面に塗膜3が形成されていたが、塗膜3を保護するクリアコート層をその表面に形成してもよい。ここで、レーザL1を効率よく透過する無色透明なクリア塗料を用いてクリアコート層を形成する場合、そのクリアコート層の形成工程後にレーザ描画工程を行い、塗膜3に絵柄4を描画してもよい。
【0056】
・上記実施の形態において、波長1064nmのYAGレーザを用いてレーザ描画工程を行うものであったが、これに限定されるものではない。塗膜3や金属微粉末7の種類に応じて、YAGレーザ以外のレーザを用いてレーザ描画工程を行ってもよい。
【0057】
・上記実施の形態は、自動車用加飾部品1をドアのアームレストに具体化するものであったが、これ以外に、コンソールボックス、インストルメントパネルなどの他の部品に具体化してもよい。さらに、自動車用の部品以外に、航空機や船舶などの乗り物の加飾部品に本発明を具体化してもよいし、家電製品等に用いられる装飾パネルなどの加飾部品に本発明を具体化してもよい。
【0058】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0059】
(1)手段1,2において、前記レーザ照射条件として、前記レーザの波長が1064nmであり、前記レーザのエネルギー密度が50MW/cm
2以上900MW/cm
2以下であることを特徴とする部品の加飾方法。
【0060】
(2)手段1,2において、前記塗膜は、黒以外の色に着色された染料を含むことを特徴とする部品の加飾方法。
【0061】
(3)手段1,2において、顔料は、前記塗膜中にて1.0重量%以上8.5重量%以下の割合で含まれていることを特徴とする部品の加飾方法。
【0062】
(4)手段1,2において、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末における最大寸法部位の平均値は5μm以上50μm以下であり、最小寸法部位の平均的な値は0.05μm以上2μm以下であることを特徴とする部品の加飾方法。
【0063】
(5)手段1,2において、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末は、前記アスペクト比が20以上であり、前記レーザ描画工程では、前記アスペクト比が5よりも小さくなるよう前記第1の金属微粉末を熱変形させることを特徴とする部品の加飾方法。
【0064】
(6)手段1,2において、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末は、その表面に有色顔料を吸着させた微粉末であり、着色金属粉顔料として機能することを特徴とする部品の加飾方法。
【0065】
(7)手段1,2において、前記塗膜は、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末が表面側に浮上しないノンリーフィングタイプの塗料を用いて形成されることを特徴とする部品の加飾方法。
【0066】
(8)手段1,2において、前記塗膜の表面には、前記絵柄に応じた凹凸が形成されていないことを特徴とする部品の加飾方法。
【0067】
(9)手段1,2において、前記塗膜における前記レーザの吸収率が40%以下であることを特徴とする部品の加飾方法。
【0068】
(10)手段1,2において、前記塗膜形成工程で形成される前記塗膜には、前記鱗片状をなす第1の金属微粉末が一様に分散し前記塗膜の面方向と平行に配列していることを特徴とする部品の加飾方法。
【符号の説明】
【0069】
1…加飾部品としての自動車用加飾部品
3…塗膜
4…絵柄
6…顔料
7a…金属微粉末及び第1の金属微粉末としてのアルミニウムフレーク
7b…金属微粉末及び第2の金属微粉末としてのアルミニウム粉
L1…レーザ
R1…第1領域
R2…第2領域