(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記積層工程及びバンプ形成工程において、上記フレキシブルプリント配線板及び金属板の重畳領域に上記複数のバンプを形成する請求項1又は請求項2に記載の電子部品の製造方法。
上記積層工程及びバンプ形成工程において、上記フレキシブルプリント配線板の伝導領域のみに上記1又は複数のバンプを形成する請求項1又は請求項2に記載の電子部品の製造方法。
上記バンプが、電気伝導性粒子とそのバインダーとを含有し、この電気伝導性粒子の含有量が20体積%以上70体積%以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
上記バンプが、熱伝導性粒子とそのバインダーとを含有し、この熱伝導性粒子の含有量が30体積%以上90体積%以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本願発明の実施形態の説明]
本発明は、導電パターンを有するフレキシブルプリント配線板と、このフレキシブルプリント配線板のうち少なくとも導電パターンが露出する1又は複数の伝導領域に重ね合わされる1又は複数の金属板と、上記フレキシブルプリント配線板及び金属板間に充填され、少なくとも厚さ方向に電気伝導性又は熱伝導性を有する伝導性接着層とを備える電子部品の製造方法であって、電気伝導性又は熱伝導性を有する伝導性スラリーを印刷により上記フレキシブルプリント配線板及び金属板のうちのいずれか一方の対向面に積層する工程と、積層した上記伝導性スラリーを硬化し、1又は複数のバンプを形成する工程と、接着剤の充填により、上記対向面かつ上記1又は複数のバンプの周囲に接着剤層を形成する工程と、上記1又は複数のバンプ及び接着剤層を有する上記伝導性接着層の表面に、上記フレキシブルプリント配線板及び金属板の他方を積層する工程と、積層した上記フレキシブルプリント配線板及び金属板間を圧着する工程とを有する。
【0014】
当該電子部品の製造方法は、電気伝導性又は熱伝導性を有するバンプとこのバンプの周囲に充填される接着剤からなる接着剤層とを有する伝導性接着層を形成する。これにより、上記バンプによってフレキシブルプリント配線板と金属板とを電気的又は熱的に接続すると同時に上記接着剤層によってフレキシブルプリント配線板と金属板とを機械的に接着することができる。その結果、フレキシブルプリント配線板及び金属板間の機械的接着強度の向上及び電気伝導性又は熱伝導性の向上を両立できる。
【0015】
また、当該電子部品の製造方法は、フレキシブルプリント配線板又は金属板に直接上記伝導性接着層を積層するため、伝導性接着層を例えば離型シート上に形成してからフレキシブルプリント配線板又は金属板に貼る手法に比べ、位置合わせの手間や離型シートを省略することができる。その結果、当該電子部品の製造方法は、容易かつ低コストで電子部品を製造することができる。
【0016】
上記伝導領域の面積に対する上記伝導領域のバンプの総面積率としては0.1%以上80%以下が好ましい。このようにバンプの総面積率を上記範囲とすることにより、良好な接着力と、良好な電気伝導性又は熱伝導性とが得られる。
【0017】
上記積層工程及びバンプ形成工程において、上記フレキシブルプリント配線板及び金属板の重畳領域に上記複数のバンプを形成するとよい。このようにフレキシブルプリント配線板及び金属板の重畳領域にバンプを形成することで、伝導性スラリー印刷時の位置精度を高めることなく、フレキシブルプリント配線板の伝導領域内にバンプを形成することができる。その結果、電子部品をより容易に製造することができる。
【0018】
上記積層工程及びバンプ形成工程において、上記フレキシブルプリント配線板の伝導領域のみに上記1又は複数のバンプを形成してもよい。このように上記フレキシブルプリント配線板の伝導領域のみに上記1又は複数のバンプを形成することで、伝導領域以外の領域において接着剤層の接着力が低下しないので比較的大きな機械的接着強度が得られる。また、フレキシブルプリント配線板は、伝導領域以外の領域にカバーレイ等の絶縁層が積層され得る。従って、伝導領域との接着予定領域以外にもバンプを設ければ、伝導領域以外のバンプがカバーレイ等の表面で圧縮され、その反力によって伝導領域のバンプの導電パターン及び金属板に対する圧接力を低下させる。これに対し、伝導領域以外にバンプを形成しないことで、伝導領域のバンプの導電パターン及び金属板に対する圧接力を低下させる要因を無くすことができ、バンプを介した導電パターンと金属板との接続の信頼性を高めることができる。
【0019】
上記伝導領域毎に1個のバンプを形成するとよい。このように各伝導領域に対して1個のバンプを接続するよう構成することによって、各バンプの伝導領域に対する圧接力を大きくして電気的又は熱的な接続をより確実に確保できる。また、バンプの周囲の面積が大きくなるので接着力をより大きくすることができる。
【0020】
上記伝導性接着層における上記バンプの総面積率としては0.01%以上2%以下が好ましい。このようにバンプの総面積率を上記範囲とすることにより、良好な接着強度と良好な電気伝導性又は熱伝導性とが得られる。
【0021】
上記バンプの中央縦断面形状が台形状であるとよい。このようにバンプの中央縦断面形状が台形状であることによって、台形の傾斜した側辺を接着剤が被覆するため、製造過程における伝導性接着層からのバンプの脱落を防止できる。また、伝導性接着層を被接着部材に圧着するとき、バンプの幅が小さい側(台形の頂辺側)の圧力が高くなるため、密着性が低い被接着部材にバンプの幅が小さい側の面を当接させることで、フレキシブルプリント配線板と金属板との間の電気又は熱の伝達の信頼性を高められる。
【0022】
上記バンプが電気伝導性粒子とそのバインダーとを含有するとよく、この電気伝導性粒子の含有量としては20体積%以上70体積%以下が好ましい。このように、バンプが上記含有量の電気伝導性粒子とバインダーとを含有することにより、バンプのより良好な電気伝導性及び機械的強度が得られる。
【0023】
上記導電パターンと金属板との間の電気抵抗としては1Ω以下が好ましい。このように上記導電パターンと金属板との間の電気抵抗を上記上限以下にすることにより、電磁波ノイズに対するシールド機能を大きくすることができる。
【0024】
上記バンプが熱伝導性粒子とそのバインダーとを含有するとよく、この熱伝導性粒子の含有量としては30体積%以上90体積%以下が好ましい。このように、バンプが上記含有量の熱伝導性粒子とバインダーとを含有することにより、バンプのより良好な熱伝導性及び機械的強度が得られる。
【0025】
ここで、「金属板」とは、フレキシブルプリント配線板に積層される板状の金属体を意味し、フレキシブルプリント配線板を補強するための補強板やフレキシブルプリント配線板の放熱性を高めるためのヒートシンクを含む概念である。「バンプ」とは、隆起又は突起を形成するものをいう。「スラリー」とは、固形分が流体に混合され、印刷可能な流動性を有するものをいい、接着剤、ペースト、インキ、塗料等を含む。「台形状」とは、底辺とこの底辺に対向する頂辺を有し、底辺から頂辺に向かって幅が小さくなる形状を意味し、頂辺又は側辺が曲線であるものも含む概念である。「バンプの中央縦断面形状」とは、バンプの重心を通り、伝導性接着層に垂直な面での断面形状を意味する。
【0026】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る電子部品の製造方法の実施形態について、図面を参照しつつ詳説する。なお、「表」及び「裏」は、当該電子部品の製造方法で用いるフレキシブルプリント配線板の厚さ方向のうち、導電パターンが形成される側を表、その反対側を裏とする方向を意味し、当該電子部品の製造方法で得られる電子部品の使用状態における表裏を意味するものではない。
【0027】
[第一実施形態]
当該電子部品の製造方法は、導電パターンを有するフレキシブルプリント配線板と、このフレキシブルプリント配線板のうち少なくとも導電パターンが露出する1又は複数の伝導領域に重ね合わされる1又は複数の金属板と、上記フレキシブルプリント配線板及び金属板間に充填され、少なくとも厚さ方向に電気伝導性を有する伝導性接着層とを備える電子部品の製造方法であり、以下の工程を有する。
(1)電気伝導性を有する伝導性スラリーを印刷によりフレキシブルプリント配線板の金属板との対向面に積層する工程(以下、「伝導性スラリー積層工程」ともいう)
(2)積層した上記伝導性スラリーを硬化し、複数のバンプを形成する工程(以下、「バンプ形成工程」ともいう)
(3)接着剤の充填により、上記対向面かつ上記複数のバンプの周囲に接着剤層を形成する工程(以下、「接着剤充填工程」ともいう)
(4)上記接着剤充填工程により得られた伝導性接着層の表面に金属板を積層する工程(以下、「金属板積層工程」ともいう)
(5)積層したフレキシブルプリント配線板及び金属板間を熱圧着する工程(以下、「熱圧着工程」ともいう)
【0028】
<伝導性スラリー積層工程>
伝導性スラリー積層工程において、
図1Aに示すようにフレキシブルプリント配線板1の表面(金属板10との対向面)の金属板10との重畳領域(金属板10が積層される領域)に、電気伝導性粒子とそのバインダーとを含む伝導性スラリー2を印刷により所望の立体形状となるよう積層する。上記重畳領域は、導電パターン3が露出する伝導領域4を含む。この導電性スラリー2の印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等を用いることができる。
【0029】
(伝導性スラリー)
バンプ5を形成する伝導性スラリー2は、バンプ5を構成する電気伝導性粒子とバインダーとを含むことにより電気伝導性を有する組成物であって、バインダーが硬化しておらず、印刷技術によってパターンを形成できる適度な流動性を有し、後述する硬化工程において硬化させられるものであればよい。従って、電気伝導性を有する伝導性スラリー2としては、例えば導電性ペースト、導電性インク、導電性塗料、導電性接着剤等の名称で市販されているものを使用してもよい。
【0030】
また、伝導性スラリー2には硬化剤を添加することができる。この硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、酸及び酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、第三アミノ類、イミダゾール類等を挙げることができる。
【0031】
さらに、伝導性スラリー2は、上述した成分に加えて、増粘剤、レベリング剤等の助剤を添加することができる。また、伝導性スラリー2は、上記各成分を例えば三本ロールや回転攪拌脱泡機等により混合することで得ることができる。
【0032】
(電気伝導性粒子)
上記伝導性スラリー2に含有される電気伝導性粒子の材質としては、例えば銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、ハンダ等を挙げることができ、これらを単体で又は2種以上混合して用いることができる。これらの中でも優れた電気伝導性を示す銀粉末、銀コート銅粉末、ハンダ粉末等が好ましい。
【0033】
伝導性スラリー2における電気伝導性粒子の濃度は、後述するバンプ形成工程によって形成されたバンプ5中における電気伝導性粒子の含有量が後述する範囲内に入るように調整することが好ましい。
【0034】
(バインダー)
上記バインダーとしては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でもバンプ5の耐熱性を向上できる熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0035】
上記バインダーとして用いるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、F型、S型、AD型、ビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型、ナフタレン型、ノボラック型、ビフェニル型、ジシクロペンタジエン型等のエポキシ樹脂や、高分子エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を挙げることができる。
【0036】
また、上記バインダーは溶剤に溶解して使用することができる。この溶剤としては、例えばエステル系、エーテル系、ケトン系、エーテルエステル系、アルコール系、炭化水素系、アミン系等の有機溶剤を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。なお、後述するようにバンプ5が電気伝導性を有する伝導性スラリー2の印刷によって形成される場合、印刷性に優れた高沸点溶剤を用いることが好ましく、具体的にはカルビトールアセテートやブチルカルビトールアセテート等を用いることが好ましい。
【0037】
(フレキシブルプリント配線板)
フレキシブルプリント配線板1は、ベースフィルム6と、このベースフィルム6の表面に積層される導電パターン3と、この導電パターン3の表面に積層されるカバーレイ7とを有する。
【0038】
ベースフィルム6は、可撓性及び電気絶縁性を有するシート状部材で構成されている。このベースフィルム6としては、具体的には樹脂フィルムを採用可能である。この樹脂フィルムの材料としては、例えばポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が好適に用いられる。
【0039】
ベースフィルム6の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、ベースフィルム6の平均厚さの上限としては、150μmが好ましく、50μmがより好ましい。ベースフィルム6の平均厚さが上記下限未満であるとベースフィルム6の強度が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると当該電子部品の製造方法で得られる電子部品が不要に厚くなるおそれがある。
【0040】
上記導電パターン3は、ベースフィルム6に積層された金属層をエッチングすることによって所望の平面形状(パターン)に形成されている。この導電パターン3は、導電性を有する材料で形成可能であるが、一般的には例えば銅によって形成されている。
【0041】
上記金属層をベースフィルム6に積層する方法としては特に限定されず、例えば金属箔を接着剤で貼り合わせる接着法、金属箔上にベースフィルム6の材料である樹脂組成物を塗布するキャスト法、スパッタリングや蒸着法でベースフィルム6上に形成した厚さ数nmの薄い導電層(シード層)の上に電解メッキで金属層を形成するスパッタ/メッキ法、金属箔を熱プレスで貼り付けるラミネート法等を用いることができる。
【0042】
上記導電パターン3の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン3の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、20μmがより好ましい。導電パターン3の平均厚さが上記下限未満であると電気伝導性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると当該電子部品の製造方法で得られる電子部品が不要に厚くなるおそれがある。
【0043】
カバーレイ7は、絶縁機能と接着機能とを有し、上記導電パターン3及びベースフィルム6の表面に積層されるフィルムである。このカバーレイ7としては、例えば絶縁層と接着層とを有する2層フィルムを用いることができる。カバーレイ7を絶縁層と接着層との2層構造とする場合、絶縁層の材質としては特に限定されるものではないが、ベースフィルム6を構成する樹脂フィルムと同様のものを使用することができる。カバーレイ7の絶縁層の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、カバーレイ7の絶縁層の平均厚さの上限としては、60μmが好ましく、40μmがより好ましい。カバーレイ7の絶縁層の平均厚さが上記下限未満であると絶縁性が不十分となるおそれがあり、またカバーレイ7の絶縁層の平均厚さが上記上限を超えるとフレキシブルプリント配線板1のフレキシブル性が不十分となるおそれがある。
【0044】
また、カバーレイ7を絶縁層と接着層との2層構造とする場合、接着層を構成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、かかる接着剤としては、例えばナイロン樹脂系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂系、アクリル樹脂系などの、各種の樹脂系の接着剤が挙げられる。カバーレイ7の接着層の平均厚さとしては、特に限定されるものではないが、20μm以上30μm以下が好ましい。カバーレイ7の接着層の平均厚さが上記下限未満であると接着性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えるとフレキシブルプリント配線板1がフレキシブル性を損なうおそれがある。
【0045】
このカバーレイ7は開口を有しており、この開口内が少なくとも導電パターン3が露出する伝導領域4である。この伝導領域4内の導電パターン3が伝導性接着層9及び金属板10と電気的に接続される。
図1A〜1Cでは、1つの伝導領域4のみを図示しているが、フレキシブルプリント配線板1はこの伝導領域4を複数有してもよい。フレキシブルプリント配線板1が複数の伝導領域4を有する場合、それぞれの伝導領域4に金属板10が積層される。この伝導領域4で露出する導電パターン3としては、グランド配線が好ましい。これによって金属板10を接地し、金属板10の電磁波ノイズに対するシールド機能を高めることができる。上記開口は、カバーレイ7を導電パターン3及びベースフィルム6に積層する前に形成してもよく、カバーレイ7を導電パターン3及びベースフィルム6に積層した後にレーザー等によって開口を形成してもよい。また、開口の平面形状及び大きさは伝導領域4に後述する伝導性接着層9のバンプ5を接続できれば特に限定されず、例えば円形や矩形とすることができる。
【0046】
なお、フレキシブルプリント配線板1は、上述したもの以外の層やシート等を有していてもよく、例えばベースフィルム6の裏面側に導電パターン3やカバーレイ7が積層されていてもよく、複数のベースフィルム6を有する多層フレキシブルプリント配線板やベースフィルム6の両面に導電パターン3を有する両面配線板であってもよい。また、フレキシブルプリント配線板1は、ベースフィルム6及び導電パターン3を備えるものであれば特に限定されず、カバーレイ7を備えていなくてもよい。
【0047】
<バンプ形成工程>
バンプ形成工程において、フレキシブルプリント配線板1の表面に積層した伝導性スラリー2のバインダーの種類に応じた適切な方法により、例えばバインダーが熱硬化性樹脂である場合には加熱により、伝導性スラリー2を硬化させてバンプ5を形成する。また、伝導性スラリー2が溶剤を含む場合にはこのバンプ形成工程において溶剤を蒸発させる。
【0048】
(バンプ)
バンプ5の平面視形状は特に限定されず、円形状の他に、多角形状、十字状、星形状等とすることができる。また、バンプ5の平面視の配設パターンは、伝導領域4の面積や形状等に合わせて適宜設計することができ、例えば
図2Aに示す複数の線状のバンプ5が並置されたストライプ状、
図2Bに示す複数の線状のバンプ5が交差した格子状、
図2Cに示す複数の円環にした線状のバンプ5からなる同心円状、
図2Dに示す散点状のバンプ5を格子状に配置したもの、図示しないが散点状のバンプ5を千鳥状に配置したもの等とすることができ、またこれらを組み合わせてもよい。上記各形状は、平面視で伝導領域4内にバンプ5が形成されない領域を有する。
【0049】
バンプ5における電気伝導性粒子の含有率の下限としては、20体積%が好ましく、30体積%がより好ましい。一方、バンプ5における伝導性粒子の含有率の上限としては、70体積%が好ましく、60体積%がより好ましい。電気伝導性粒子の含有率が上記下限未満の場合、フレキシブルプリント配線板1と金属板10との間における電気伝導性が不十分となるおそれがある。バンプ5における電気伝導性粒子の含有率が上記上限を超える場合、バインダーが少なくなるので、バンプ5の形成が困難になるおそれや、使用時にバンプ5が破断して電気伝導性を損なうおそれがある。
【0050】
上記バンプ5は、伝導性接着層9(導電パターン3)に垂直な台形状の中央縦断面形状を有する。具体的には、バンプ5の中央縦断面形状は、導電パターン3に当接する底辺と、伝導性接着層9の表面に表出する頂辺とを有し、底辺から頂辺に向かって幅が小さくなっている。つまり、頂辺は底辺よりも長さが小さく、頂辺と底辺とを結ぶ側辺は傾斜している。この傾斜した側辺上には接着剤層8が積層される。バンプ5は、この台形状の頂辺がフレキシブルプリント配線板1側に位置するように形成されてもよく、また台形状の頂辺が金属板10側に位置するように形成されてもよい。バンプ5の台形状の頂辺側の当接面積は底辺側の当接面積に対し相対的に小さくなるため、接着圧力を高めたい部材側に頂辺が位置するようにバンプ5を形成することで、この部材との密着性を高めることができる。
【0051】
上記断面形状において、バンプ5の底辺の平均長さw1に対する頂辺の平均長さw2の比(w2/w1)の上限としては、0.95が好ましく、0.8がより好ましい。底辺の平均長さw1に対する頂辺の平均長さw2の比が上記上限を超える場合、バンプ5の脱落防止効果が十分得られないおそれがある。一方、バンプ5の底辺の平均長さw1に対する頂辺の平均長さw2の比(w2/w1)の下限としては、0.2が好ましく、0.4がより好ましい。底辺の平均長さw1に対する頂辺の平均長さw2の比が上記下限未満の場合、底辺の平均長さw1が大きくなり過ぎバンプ5の周辺に充填される接着剤の充填量が減少して機械的な接着強度が低下するおそれや、頂辺の平均長さw2が小さくなり過ぎ被接着部材間の電気伝導性が低下するおそれがある。
【0052】
上記中央縦断面形状において、バンプ5の底辺の平均長さw1としては、フレキシブルプリント配線板1及び金属板10の接着面積等に合わせて適宜設計することができ、例えば50μm以上2000μm以下とすることができる。同様に、バンプ5の頂辺の平均長さw2としては、例えば10μm以上1900μm以下とすることができる。また、バンプ5同士の平均間隔(底辺間の距離)dとしては、例えば50μm以上2000μm以下とすることができる。なお、バンプ5の底辺及び頂辺の平均長さとは、各バンプ5の底辺長さが最小となる中央縦断面形状における底辺及び頂辺の長さの平均値を意味し、バンプ5の平均間隔とは、隣接するバンプ5の最小距離の平均値を意味する。
【0053】
伝導領域4におけるバンプ5の平均高さhの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、伝導領域4におけるバンプ5の平均高さhの上限としては、50μmが好ましく、45μmがより好ましい。伝導領域4におけるバンプ5の平均高さhが上記下限未満の場合、バンプ5の形成が困難になるおそれがある。また、例えばフレキシブルプリント配線板1に伝導性接着層9を用いて金属板10を接着する際に、導電パターン3の表面に積層されるカバーレイ7の厚さよりもバンプ5の平均高さhが小さくなって導電パターン3と金属板10とを電気的に接続できなくなるおそれがある。伝導領域4におけるバンプ5の平均高さhが上記上限を超える場合、伝導性接着層9の厚さが必要以上に大きくなるおそれがある。
【0054】
<接着剤充填工程>
接着剤充填工程において、
図1Bに示すように上記複数のバンプ5を形成したフレキシブルプリント配線板1の上記対向面かつ複数のバンプ5の周囲に接着剤を充填し、接着剤層8を形成する。この接着剤層8とバンプ5とにより、少なくとも厚さ方向に電気伝導性を有する伝導性接着層9が構成される。この接着剤の充填方法としては、印刷による方法又は塗工による方法を用いることができる。上記印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等を用いることができる。また上記塗工方法としては特に限定されず、例えばナイフコート、ダイコート、ロールコート等を用いることができる。
【0055】
(接着剤層)
上記接着剤層8を形成する接着剤としては、接着性を有するものであれば特に限定されず、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を挙げることができ、耐熱性の観点から熱硬化性樹脂が好ましく、フレキシブルプリント配線板1との接着性の観点からはエポキシ樹脂又はアクリル樹脂が特に好ましく、上記バンプ5を形成する伝導性スラリー2と同種の接着剤を用いることがさらに好ましい。
【0056】
接着剤層8には、上述した溶剤、硬化剤、助剤等を適宜添加することができる。また、接着剤層8には、伝導性接着層9の電気伝導性向上のために電気伝導性粒子を添加することができる。
【0057】
接着剤層8への電気伝導性粒子の添加量の上限としては、20体積%が好ましく、10体積%がより好ましく、5体積%がさらに好ましい。接着剤層8の伝導性粒子の添加量が上記上限を超える場合、接着剤層8内の不純物の増加によって接着剤層8の接着性が低下するおそれがある。
【0058】
接着剤層8の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、接着剤層8の平均厚さの上限としては、40μmが好ましく、35μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。接着剤層8の平均厚さが上記下限未満の場合、伝導性接着層9が十分な機械的接着強度や電気的接続性を発揮できないおそれがある。接着剤層8の平均厚さが上記上限を超える場合、伝導性接着層9を用いてフレキシブルプリント配線板1と金属板10とを接着して構成される電子部品の厚さが必要以上に大きくなるおそれがある。なお、接着剤層8の平均厚さとは、厚さ方向にバンプ5が存在しない領域における接着剤層8の平均厚さを意味する。また、伝導領域4におけるバンプ5の平均高さhは、伝導領域4における接着剤層8の平均厚さよりも大きくてもよい。伝導領域4におけるバンプ5の平均高さhを伝導領域4における伝導性接着層9の平均厚さよりも大きくしてバンプ5を接着剤層8の表面から突出させることで、伝導性接着層9の電気導電性を向上できる。ただし、伝導領域4におけるバンプ5の突出長さが大き過ぎると、接着剤層8とフレキシブルプリント配線板1及び金属板10との接着面積が低下して機械的接着強度が低下するおそれがあるため、バンプ5の突出長さ(伝導領域4におけるバンプ5の平均高さhから伝導領域4における接着剤層8の平均厚さを引いたもの)の上限としては、20μmが好ましく、10μmがより好ましい。
【0059】
(伝導性接着層)
伝導性接着層9は、フレキシブルプリント配線板1のうち導電パターン3が対向面に露出する伝導領域4及び金属板10間に少なくとも厚さ方向に電気伝導性を発現させる目的で形成される層である。この伝導性接着層9は、上記バンプ5によって少なくとも表面と垂直な方向(厚さ方向)に電気エネルギーを伝導可能であるとともに、上記接着剤層8によって接着性を有する。
【0060】
上記複数のバンプ5は、接着剤層8によって平面視で周囲を囲繞される。つまり、
図1Dに示すように伝導性接着層9の端部においてはバンプ5が存在せずに接着剤層8が存在するよう配設されている。
【0061】
伝導領域4におけるバンプ5の総面積率は特に限定されるものではないが、伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率の下限としては、0.1%が好ましく、1%がより好ましい。一方、伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率の上限としては、80%が好ましく、60%がより好ましい。伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率が上記下限未満の場合、伝導性接着層9の電気伝導性が不十分となるおそれがある。伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率が上記上限を超える場合、接着剤層8の割合が少なくなって伝導性接着層9の機械的接着強度が低下するおそれがある。なお、伝導領域4におけるバンプ5の総面積率とは、1つの伝導領域4内の伝導性接着層9を厚さ方向の略中央で切断した面におけるバンプ5の表出面積の総和をその伝導領域4の平面視面積(バンプ5を含む)で除した数値である。
【0062】
<金属板積層工程>
金属板積層工程は、
図1Cに示すように伝導性接着層9の表面に金属板10を積層する工程である。このように金属板10を積層することにより、バンプ5の表面側を金属板10に当接させ、導電パターン3及び金属板10間の電気伝導性を得ることができる。この際、伝導領域4外に形成されたバンプ5は、カバーレイ7と金属板10とによって圧縮される。
【0063】
(金属板)
金属板10は、金属製の板状部材である。金属板10を形成する金属としては、特に限定されず、例えばステンレス鋼、アルミニウム等を用いることができる。
【0064】
<熱圧着工程>
熱圧着工程では、フレキシブルプリント配線板1、伝導性接着層9及び金属板10からなる積層体を熱プレスすることによって一体化する。この加熱温度としては、120℃以上200℃以下が好ましく、加熱時間としては5秒以上60分以下が好ましい。加熱温度及び加熱時間を上記範囲とすることで、接着性を効果的に発揮できると共にベースフィルム6等の変質を抑制することができる。加熱方法としては特に限定されず、例えばオーブンやホットプレート等の加熱手段を用いて加熱することができる。また、導電パターン3と金属板10との接着性を向上させると共にこれらをバンプ5により確実に当接させるため、加熱の際に、バンプ5及び接着剤層8をフレキシブルプリント配線板1及び金属板10によりプレスすることが好ましい。
【0065】
以上の工程により、電子部品を製造できる。製造された電子部品11において、導電パターン3と金属板10との間の電気抵抗としては1Ω以下が好ましい。このように導電パターン3と金属板10との間の電気抵抗を上記上限以下にすることにより、例えば電磁波ノイズに対するシールド機能を大きくすることができる。
【0066】
<利点>
当該電子部品の製造方法において、フレキシブルプリント配線板1に電気伝導性を有する複数のバンプ5と、これらのバンプ5の周囲に充填される接着剤からなる接着剤層8とを備える伝導性接着層9を形成するため、伝導性接着層9がフレキシブルプリント配線板1の伝導領域4で対向面に露出している導電パターン3と金属板10との間に厚さ方向に電気伝導性を発現する。また、接着剤層8は、電気伝導性が要求されないので、比較的大きな接着力を発現する。つまり、当該電子部品の製造方法は、フレキシブルプリント配線板1及び金属板10間の機械的接着強度の向上及び電気伝導性の向上を両立した電子部品を得ることができる。
【0067】
また、当該電子部品の製造方法は、バンプ5がフレキシブルプリント配線板1の導電パターン3と金属板10とに同時に接触することで確実にこれらを電気的に接続するため、複数の伝導性粒子の接触によって導通を確保する従来の電気伝導性接着剤を用いた電子部品に比べて、抵抗値のバラツキを抑えた電子部品を得ることができる。
【0068】
また、従来の電気伝導性を有する粒子を分散した接着剤では、電気伝導に寄与しない(導電パターン3と金属板10とを電気的に接続しない)電気伝導経路が電気伝導性粒子によって複数構成されるが、当該電子部品の製造方法ではこれが防止され、電子部品の電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0069】
また、当該電子部品の製造方法では、バンプ5が台形状の中央縦断面形状を有しているため、台形の傾斜した側辺を接着剤層8で被覆し、バンプ5の脱落を防止することができる。
【0070】
さらに、当該電子部品の製造方法では、伝導領域4内に複数のバンプ5を形成するため、1個のバンプ5がフレキシブルプリント配線板1の導電パターン3又は金属板10から離間しても、他のバンプ5によりフレキシブルプリント配線板1の導電パターン3と金属板10との電気伝導性を維持できる。
【0071】
また、当該電子部品の製造方法は、従来のように接着シートによって電気伝導性接着剤を積層するのでなく、接着シートを用いずにフレキシブルプリント配線板1の表面に伝導性スラリー2を直接積層するとともに接着剤を充填する。これにより接着シートを作成する手間や接着シートをフレキシブルプリント配線板1に貼った後に接着シートの離型フィルムを剥がす手間を省くことができる。また、離型フィルムを用いないので製造コストを低減することができる。また、接着シートを用いる方法では、接着シートを貼ってから離型フィルムを剥がすまでの間に離型フィルムが周囲の熱等によって収縮し、電気伝導性接着剤の位置ズレが生じるおそれがある。これに対し、当該電子部品の製造方法は、フレキシブルプリント配線板1の表面に伝導性スラリー2を印刷により直接積層するので、印刷後の乾燥や加熱等によっても伝導性スラリー2の位置ズレが生じるおそれが少ない。これにより形成されるバンプ5の位置精度を高くすることができる。
【0072】
[第二実施形態]
第二実施形態に係る電子部品の製造方法は、第一実施形態に係る電子部品の製造方法と伝導性スラリー積層工程を除いて同じである。本実施形態に係る電子部品の製造方法における伝導性スラリー積層工程では、フレキシブルプリント配線板の上記対向面において、伝導領域の複数個所のみに電気伝導性粒子とそのバインダーとを含む伝導性スラリーを印刷により積層する。そして、バンプ形成工程において、積層した伝導性スラリーを硬化し、伝導領域のみに電気伝導性を有する複数のバンプを形成する。伝導性スラリー積層工程以外の工程は、上記第一実施形態の電子部品の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
<伝導性スラリー積層工程>
伝導性スラリー積層工程において、
図3に示すようにフレキシブルプリント配線板1の表面(金属板10との対向面)の金属板10との重畳領域(金属板10が積層される領域)のうち伝導領域4内の複数個所のみに、電気伝導性粒子とそのバインダーとを含む伝導性スラリー2を印刷により所望の立体形状となるよう積層する。この導電性スラリー2の印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等を用いることができる。
【0074】
上記導電性スラリー2により形成される複数のバンプ5は、接着剤層8によって平面視で周囲を囲繞される状態で配設される。つまり、伝導領域4の周縁においてはバンプ5が存在せずに接着剤層8が存在するよう配設される。
【0075】
当該電子部品の製造方法で得られる電子部品の伝導領域4におけるバンプ5の総面積率は特に限定されるものではないが、伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率の下限としては、0.1%が好ましく、1%がより好ましい。一方、伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率の上限としては、80%が好ましく、60%がより好ましい。伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率が上記下限未満の場合、伝導性接着層9の電気伝導性が不十分となるおそれがある。伝導領域4の面積に対するバンプ5の総面積率が上記上限を超える場合、接着剤層8の割合が少なくなって伝導性接着層9の機械的接着強度が低下するおそれがある。
【0076】
また、当該電子部品の製造方法で得られる電子部品の伝導性接着層9におけるバンプ5の総面積率は特に限定されるものではないが、伝導性接着層9の面積に対するバンプ5の総面積率の下限としては、0.01%が好ましく、0.05%がより好ましい。一方、伝導性接着層9の面積に対するバンプ5の総面積率の上限としては、2%が好ましく、1.5%がより好ましい。伝導性接着層9の面積に対するバンプ5の総面積率が上記下限未満の場合、伝導性接着層9の電気伝導性が不十分となるおそれがある。伝導性接着層9の面積に対するバンプ5の総面積率が上記上限を超える場合、接着剤層8の割合が少なくなって伝導性接着層9の機械的接着強度が低下するおそれがある。なお、伝導性接着層9の面積に対するバンプ5の総面積率とは、伝導性接着層9を厚さ方向の略中央で切断した面におけるバンプ5の表出面積の総和を伝導性接着層9の平面視面積(バンプ5を含む)で除した数値である。
【0077】
<利点>
上記第一実施形態のように伝導領域4以外にもバンプ5を設けた場合、伝導領域4以外のバンプ5がカバーレイ7等の表面で圧縮され、その反力によって伝導領域4のバンプ5の導電パターン3及び金属板10に対する圧接力を低下させる。これに対し、当該電子部品の製造方法は、伝導領域4以外にバンプ5を形成しないため、伝導領域4のバンプ5の導電パターン3及び金属板10に対する圧接力を低下させる要因を無くすことができ、バンプ5を介した導電パターン3と金属板10との接続の信頼性を高めることができる。また、当該電子部品の製造方法は、伝導領域4内に複数のバンプ5を形成するため、1個のバンプ5がフレキシブルプリント配線板1の導電パターン3又は金属板10から離間しても、他のバンプ5によりフレキシブルププリント配線板1の導電パターン3と金属板10との電気伝導性を維持できる。
【0078】
[第三実施形態]
第三実施形態に係る電子部品の製造方法は、第一実施形態に係る電子部品の製造方法と伝導性スラリー積層工程を除いて同じである。本実施形態に係る電子部品の製造方法における伝導性スラリー積層工程では、フレキシブルプリント配線板の上記対向面において、伝導領域の1個所のみに電気伝導性粒子とそのバインダーとを含む伝導性スラリーを印刷により積層する。そして、バンプ形成工程において、積層した伝導性スラリーを硬化し、伝導領域のみに電気伝導性を有する1個のバンプを形成する。伝導性スラリー積層工程以外の工程は、上記第一実施形態及び第二実施形態の電子部品の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
<伝導性スラリー積層工程>
伝導性スラリー積層工程において、
図4に示すようにフレキシブルプリント配線板1の表面(金属板10との対向面)の金属板10との重畳領域(金属板10が積層される領域)のうち伝導領域4内の1個所のみに、電気伝導性粒子とそのバインダーとを含む伝導性スラリー2を印刷により所望の立体形状となるよう積層する。この導電性スラリー2の印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等を用いることができる。
【0080】
当該電子部品の製造方法で得られる電子部品の伝導領域4におけるバンプ5の総面積率、及び伝導性接着層9におけるバンプ5の総面積率は、上記第三実施形態の電子部品の製造方法と同様とすることができる。
【0081】
<利点>
当該電子部品の製造方法は、上記第二実施形態と同様、伝導領域4以外にバンプ5を形成しないため、伝導領域4のバンプ5の導電パターン3及び金属板10に対する圧接力を低下させる要因を無くすことができ、バンプ5を介した導電パターン3と金属板10との接続の信頼性を高めることができる。また、当該電子部品の製造方法は、伝導領域4に1個のバンプ5を形成し、このバンプ5に接着剤層8の接着力による圧力が集中するので、バンプ5とフレキシブルプリント配線板1の導電パターン3との間の電気伝導を可能にする電気的接続が確実になる。また、バンプ5は当接位置においてフレキシブルプリント配線板1と金属板10との距離を定めるが、伝導領域4にバンプ5が1個だけであることにより、バンプ5の周囲ではフレキシブルプリント配線板1の可撓性によりフレキシブルプリント配線板1と金属板10との距離が小さくなる。これによって、接着剤層8がフレキシブルプリント配線板1及び金属板10に対してより確実に当接するので、より大きい接着力が得られる。
【0082】
[第四実施形態]
第四実施形態に係る電子部品の製造方法は、導電パターンを有するフレキシブルプリント配線板と、このフレキシブルプリント配線板のうち少なくとも導電パターンが露出する1又は複数の伝導領域に重ね合わされる1又は複数の金属板と、上記フレキシブルプリント配線板及び金属板間に充填され、少なくとも厚さ方向に熱伝導性を有する伝導性接着層とを備える電子部品の製造方法であり、以下の工程を有する。
(1)熱伝導性を有する伝導性スラリーを印刷によりフレキシブルプリント配線板の金属板との対向面に積層する工程(以下、「伝導性スラリー積層工程」ともいう)
(2)積層した上記伝導性スラリーを硬化し、複数のバンプを形成する工程(以下、「バンプ形成工程」ともいう)
(3)接着剤の充填により、上記対向面かつ上記複数のバンプの周囲に接着剤層を形成する工程(以下、「接着剤充填工程」ともいう)
(4)上記接着剤充填工程により得られた伝導性接着層の表面に金属板を積層する工程(以下、「金属板積層工程」ともいう)
(5)積層したフレキシブルプリント配線板2及び金属板4間を熱圧着する工程(以下、「熱圧着工程」ともいう)
【0083】
<伝導性スラリー積層工程>
伝導性スラリー積層工程において、
図5Aに示すようにフレキシブルプリント配線板1の表面(金属板11との対向面)の金属板11との重畳領域(金属板11が積層される領域)に、熱伝導性粒子とそのバインダーとを含む伝導性スラリー2を印刷により所望の立体形状となるよう積層する。上記重畳領域は、導電パターン3が露出する伝導領域4を含む。この導電性スラリー2の印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等を用いることができる。
【0084】
(伝導性スラリー)
バンプ5を形成する伝導性スラリー2は、バンプ5を構成する熱伝導性粒子とバインダーとを含むことにより熱伝導性を有する組成物であって、バインダーが硬化しておらず、印刷技術によってパターンを形成できる適度な流動性を有し、後述する硬化工程において硬化させられるものであればよい。
【0085】
(熱伝導性粒子)
上記伝導性スラリー2に含有される熱伝導性粒子の材質としては、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、アルミナ(Al
2O
3)、窒化ホウ素(BN)、酸化ベリリウム(BeO)等が挙げられる。これらの中で、熱伝導性の観点から、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素が好ましい。なお、上記熱伝導性粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
上記熱伝導性粒子の平均粒径の下限としては、伝導性接着層9の厚さにもよるが、2μmが好ましく、3μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。一方、熱伝導性粒子の平均粒径の上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。熱伝導性粒子の平均粒径が上記下限未満の場合、熱伝導性粒子の成形が困難になるおそれがある。熱伝導性粒子の平均粒径が上記上限を超える場合、バンプ5の表面が粗くなって被接着部材との接着性が損なわれるおそれがある。なお、「平均粒径」とは、粒子群に対し、篩分法により得た各粒度の篩い下の全粒子質量から得られる積算分布より、積算量が50質量%となる粒径値を意味する。
【0087】
伝導性スラリー2における熱伝導性粒子の濃度は、後述するバンプ形成工程によって形成されたバンプ5中における熱伝導性粒子の含有量が後述する範囲内に入るように調整することが好ましい。
【0088】
(バインダー)
上記バインダーとしては、上記第一実施形態の電子部品の製造方法で用いた伝導性スラリー2と同様のものを用いることができる。
【0089】
(フレキシブルプリント配線板)
フレキシブルプリント配線板1は、上記第一実施形態の電子部品の製造方法で用いたものと同様とすることができる。ただし、伝導領域4で露出する導電パターン3は特に限定されない。
【0090】
<バンプ形成工程>
バンプ形成工程において、フレキシブルプリント配線板1の表面に積層した伝導性スラリー2のバインダーの種類に応じた適切な方法により、例えばバインダーが熱硬化性樹脂である場合には加熱により、伝導性スラリー2を硬化させてバンプ5を形成する。また、伝導性スラリー2が溶剤を含む場合にはこのバンプ形成工程において溶剤を蒸発させる。
【0091】
(バンプ)
バンプ5は、熱伝導性粒子とそのバインダーとを含有する。このバンプ5は、
図1の伝導性接着層9におけるバンプ5とその熱伝導性粒子を除いては同様であるため、その形状や配置、バインダーの材質等の重複する説明を省略する。
【0092】
バンプ5の熱伝導性粒子の含有率の下限としては、30体積%が好ましく、50体積%がより好ましい。一方、バンプ5の熱伝導性粒子の含有率の上限としては、90体積%が好ましく、70体積%がより好ましい。熱伝導性粒子の含有率が上記下限未満の場合、被接着部材間の熱伝導性が低下するおそれがある。バンプ5の熱伝導性粒子の含有率が上記上限を超える場合、バインダーが少なくなるので、バンプ5の形成が困難になるおそれや、使用時にバンプ5が破断して熱伝導性を損なうおそれがある。
【0093】
<接着剤充填工程>
接着剤充填工程において、
図5Bに示すように上記バンプ5を形成したフレキシブルプリント配線板1の上記対向面かつバンプ5の周囲に接着剤を充填し、接着剤層8を形成する。この接着剤層8とバンプ5とにより、少なくとも厚さ方向に熱伝導性を有する伝導性接着層9が構成される。この接着剤の充填方法としては、印刷による方法又は塗工による方法を用いることができる。上記印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等を用いることができる。また上記塗工方法としては特に限定されず、例えばナイフコート、ダイコート、ロールコート等を用いることができる。
【0094】
接着剤層8は上記第一実施形態の電子部品の製造方法の接着剤層8と同様であるため、重複する説明を省略する。また、当該電子部品の製造方法で得られる電子部品の伝導領域4におけるバンプ5の総面積率、及び伝導性接着層9におけるバンプ5の総面積率は、上記第一実施形態の電子部品の製造方法と同様とすることができる。ここで、第一実施形態の電子部品の製造方法における「電気伝導性」は、「熱伝導性」と置き換えて適用する。
【0095】
<金属板積層工程>
金属板積層工程は、
図5Cに示すように伝導性接着層9の表面に金属板11を積層する工程である。このように金属板11を積層することにより、バンプ5の表面側を金属板11に当接させ、導電パターン3及び金属板11間の熱伝導性を得ることができる。この際、伝導領域4外に形成されたバンプ5は、カバーレイ7と金属板11とによって圧縮される。
【0096】
(金属板)
金属板11は、フレキシブルプリント配線板1に積層される板状の本体部11aからフレキシブルプリント配線板1と反対側に延出する複数のフィン11bを有する放熱部材である。金属板11を形成する金属としては、特に限定されないが、アルミニウムが好適である。
【0097】
<熱圧着工程>
熱圧着工程では、フレキシブルプリント配線板1、伝導性接着層9及び金属板11からなる積層体を熱プレスすることによって一体化する。この加熱温度としては、120℃以上200℃以下が好ましく、加熱時間としては5秒以上60分以下が好ましい。加熱温度及び加熱時間を上記範囲とすることで、接着性を効果的に発揮できると共にベースフィルム6等の変質を抑制することができる。加熱方法としては特に限定されず、例えばオーブンやホットプレート等の加熱手段を用いて加熱することができる。また、導電パターン3と金属板11との接着性を向上させると共にこれらをバンプ5により確実に当接させるため、加熱の際に、バンプ5及び接着剤層8をフレキシブルプリント配線板1及び金属板10によりプレスすることが好ましい。
【0098】
<利点>
当該電子部品の製造方法において、フレキシブルプリント配線板1に熱伝導性を有する複数のバンプ5と、これらのバンプ5の周囲に充填される接着剤からなる接着剤層8とを備える伝導性接着層9を形成するため、伝導性接着層9がフレキシブルプリント配線板1の伝導領域4で対向面に露出している導電パターン3と金属板11との間に厚さ方向に熱伝導性を発現する。また、接着剤層8は、熱伝導性が要求されないので、比較的大きな接着力を発現する。つまり、当該電子部品の製造方法は、フレキシブルプリント配線板1及び金属板11間の機械的接着強度の向上及び熱伝導性の向上を両立した電子部品を得ることができる。
【0099】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0100】
当該電子部品の製造方法において、バンプは、電気伝導性及び熱伝導性の両方を有してもよい。つまり、バンプを形成する伝導性スラリーは、電気伝導性粒子と熱伝導性粒子とを含むことができる。この場合、バンプの熱伝導性粒子及び熱伝導性粒子の含有率の下限及び上限は、熱伝導性粒子及び熱伝導性粒子の体積比に応じて、上述の熱伝導性粒子の下限及び上限と上述の熱伝導性粒子の下限及び上限とを比例配分した値とすればよい。
【0101】
また、当該電子部品の製造方法において、電気伝導性粒子を含むことにより電気伝導性を有するバンプと熱伝導性粒子とを含むことにより熱伝導性を有するバンプとが別々に形成されてもよい。この場合、フレキシブルプリント配線板の設計に応じて、電気伝導性を有する1又は複数のバンプと熱伝導性を有する1又は複数のバンプとを同一の接着予定領域に配設してもよく、電気伝導性を有する1又は複数のバンプと熱伝導性を有する1又は複数のバンプとを別々の接着予定領域に配設してもよい。
【0102】
また、本発明のバンプの伝導性接着層に垂直な断面の形状は上記実施形態のような厳密な台形に限定されず、例えば台形の頂辺が円弧である台形状や、底辺と頂辺とが非平行である台形状であってもよい。またさらに台形以外の半円形、三角形、長方形、高さ方向の中央部分に向かって幅が減少するくびれ形状、高さ方向の中央部分に向かって幅が増大する樽形状等を採用することも可能である。
【0103】
さらに、当該電子部品の製造方法で形成する伝導性接着層において、バンプがフレキシブルプリント配線板側及び金属板側に表出しないよう形成してもよい。つまり、バンプを被覆するように接着剤層を形成してもよい。このようにバンプのフレキシブルプリント配線板側面や金属板側面に接着剤層が存在しても、加熱接着工程での圧接力により、バンプをフレキシブルプリント配線板の導電パターンや金属板に接触させることができる。
【0104】
また、上記実施形態では、フレキシブルプリント配線板の金属板との対向面にバンプと接着剤層とを形成し、これらのバンプと接着剤層との外面に金属板を積層したが、金属板のフレキシブルプリント配線板との対向面にバンプと接着剤層とを形成し、これらのバンプと接着剤層との外面にフレキシブルプリント配線板を積層してもよい。
【0105】
また、上記第四実施形態において、第二実施形態や第三実施形態のようにバンプを伝導領域内のみに配設してもよく、この場合にバンプの数は1又は複数とすることができる。