(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記DC/DCコンバータは、前記入力端子と前記出力端子の間に設けられた直列キャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の駆動装置。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具の光源として、従来のハロゲンランプや高輝度放電ランプから、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)などの半導体デバイスへの置き換えが進んでいる。このような半導体光源(以下、単に光源と称する)を駆動する駆動回路は、電池電圧などの入力電圧を昇圧もしくは降圧し、光源に供給するコンバータと、コンバータを制御するコントローラを備える。コントローラは、コンバータの出力電流を検出し、出力電流が、目標輝度に応じた電流値に近づくように、コンバータのスイッチングをフィードバック制御する。
【0003】
図1は、従来の車両用灯具の構成を示す図である。
図2(a)、(b)は、車両用灯具1rの動作波形図である。
図1を参照すると、車両用灯具1rは、光源10および駆動装置20rを備える。車両用灯具1rには、電池2の電圧V
BATがスイッチ4を介して入力される。
【0004】
駆動装置20rは、コンバータ30およびコントローラ40rを備える。コンバータ30は、たとえば降圧コンバータであり、入力電圧V
INを降圧し、負荷である光源10に供給する。コンバータ30は、主として入力キャパシタC11、スイッチングトランジスタM11、整流ダイオードD11、インダクタL11、出力キャパシタC12を備える。
【0005】
コントローラ40rは、光源10に流れる出力電流I
OUTを検出し、出力電流I
OUTが輝度に応じた目標量に近づくように、スイッチングトランジスタM11のスイッチングのデューティ比を制御する。電流センス抵抗R11は、出力電流I
OUTに応じたコイル電流I
L11を検出するために、コイル電流I
L11の経路上に設けられる。電流センス抵抗(以下、単にセンス抵抗ともいう)R11には、コイル電流I
L11に比例した電圧降下(以下、センス電圧という)V
R11が生ずる。
【0006】
コイル電流I
L11は、スイッチングトランジスタM11のスイッチングに応じて脈流しており、出力電流I
OUTは、コイル電流I
L11を平滑化した電流となる。コントローラ40rは、いわゆるヒステリシス制御により、コイル電流I
L11を目標範囲に安定化させる。コントローラ40rは、センス電圧V
R11が、目標範囲の上側しきい値I
REFHに達すると、スイッチングトランジスタM11をオフし、センス電圧V
R11が、目標範囲の下側しきい値I
REFLまで低下すると、スイッチングトランジスタM11をオンする。
図2(a)には、コイル電流I
L11が目標範囲内に安定化される様子が示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
駆動装置20rの信頼性を高めるために、過電流保護が要求される。そこでコントローラ40rは、スイッチングトランジスタM11に流れる入力電流I
M11を所定のしきい値(電流制限値ともいう)I
PEAKと比較し、電流I
M11がしきい値I
PEAKに達すると、スイッチングトランジスタM11をオフし、入力電流を制限する。具体的にはセンス抵抗R12は、スイッチングトランジスタM11に流れる電流I
M11の経路上に設けられる。センス抵抗R12には、電流I
M11に比例した電圧降下(センス電圧)V
R12が生ずる。コントローラ40rは、センス
電圧V
R12を所定のしきい値I
PEAKに応じたしきい値電圧V
PEAKと比較し、V
R12>V
PEAKとなると、スイッチングトランジスタM11をオフする。
【0009】
本発明者は、
図1の車両用灯具1rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0010】
図2(b)には、電流制限がかかった状態における動作波形が示される。時刻t0に、コイル電流I
L11が下側しきい値I
REFLまで低下し、スイッチングトランジスタM11がオンする。その直後の時刻t1に、入力電流I
M11がピーク値I
PEAKに達すると、スイッチングトランジスタM11はオフする。このサイクルが持続すると、
図2(a)と比べてスイッチング周波数が高くなる。車両用灯具1が車両に搭載されることに鑑みると、数MHzのスイッチングノイズは、車両に搭載されるその他のデバイスに干渉する(EMI:Electro-magnetic Interference)。加えて、スイッチング周波数が増大すると、DC/DCコンバータ30におけるスイッチング損失が増大することとなり、効率が低下し、あるいは回路素子の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
この問題を解決するために、入力電流I
M11がピーク値I
PEAKに達すると、所定のオフ時間、スイッチングトランジスタM11のオフ状態を持続するといった制御も考えられる。しかしながらこの場合、専用の回路が必要となる。加えて、オフ時間を長くすると、電流制限状態でのスイッチング周波数の上昇は抑制できるが、出力電流I
OUTを目標範囲に安定化することが困難となる。
【0012】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、出力電流を安定化しつつ、電流制限が可能な車両用灯具およびその駆動装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、光源とともに使用され、車両用灯具を構成する駆動装置に関する。駆動装置は、入力電圧を受け、光源に駆動電圧を供給するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータを制御するコントローラと、を備える。DC/DCコンバータは、入力端子、出力端子および接地ラインと、入力端子と接地ラインの間に直列に設けられたスイッチングトランジスタおよび入力インダクタと、出力インダクタと、を備える。コントローラは、出力インダクタに流れる第1コイル電流を第1上側しきい値および第1下側しきい値と比較する電流コントローラと、入力インダクタに流れる第2コイル電流を第2上側しきい値および第2下側しきい値と比較する電流リミッタと、(i)第2コイル電流が第2上側しきい値を超えるより先に、第1コイル電流が第1上側しきい値を超えるサイクルにおいて、(i-a)第1コイル電流が第1上側しきい値を超えたことを契機としてスイッチングトランジスタをオフし、(i-b)第1コイル電流が第1下側しきい値を下回ったことを契機としてスイッチングトランジスタをオンし、(ii)第1コイル電流が第1上側しきい値を超えるより先に、第2コイル電流が第2上側しきい値を超えるサイクルにおいて、(ii-a)第2コイル電流が第2上側しきい値を超えたことを契機としてスイッチングトランジスタをオフし、(ii-b)第2コイル電流が第2下側しきい値を下回ったことを契機としてスイッチングトランジスタをオンするデューティコントローラと、を備える。
【0014】
この態様によると、第1コイル電流が第1上側しきい値に達してスイッチングトランジスタがオフした直後に、第2コイル電流が第2下側しきい値まで低下したとしても、直ちにスイッチングトランジスタはオンせず、第1コイル電流が第1下側しきい値に低下するまで、スイッチングトランジスタのオフを持続する。反対に、第2コイル電流が第2上側しきい値に達してスイッチングトランジスタがオフした直後に、第1コイル電流が第1下側しきい値まで低下したとしても、直ちにスイッチングトランジスタはオンせず、第2コイル電流が第2下側しきい値に低下するまで、スイッチングトランジスタのオフを持続する。これにより、スイッチング周波数の上昇を抑制することができる。
【0015】
電流コントローラは、第1コイル電流に応じた第1検出電圧を、第1上側しきい値および第1下側しきい値それぞれに応じた2つの電圧レベルで遷移する第1しきい値電圧と比較し、第1検出電圧が第1しきい値電圧より低い間アサートされる制御信号を生成する第1ヒステリシスコンパレータを含んでもよい。電流リミッタは、第2コイル電流に応じた第2検出電圧を、第2上側しきい値および第2下側しきい値それぞれに応じた2つの電圧レベルで遷移する第2しきい値電圧と比較し、第2検出電圧が第2しきい値電圧より低い間アサートされる制限信号を生成する第2ヒステリシスコンパレータを含んでもよい。デューティコントローラは、制御信号および制限信号がともにアサートされる間、アサートされ、制御信号および制限信号の少なくともひとつがネゲートされる間、ネゲートされるパルス信号を生成するロジック回路を含んでもよい。
この構成によれば、簡易な構成で、スイッチングトランジスタを好適に制御できる。
【0016】
DC/DCコンバータの出力電力をP
OUT、入力電圧をV
INとするとき、P
OUT/V
INが増大するにしたがって、第2上側しきい値および第2下側しきい値は増大してもよい。
この態様によれば、出力電流を安定化するDC/DCコンバータにおいて、電流コントローラによる制御状態と、電流リミッタによる制限状態と、を交互に頻繁に遷移する発振状態を抑制することができる。
【0017】
電流リミッタは、入力電圧V
INに応じた第1電流を生成する第1V/I(電圧/電流)変換器と、DC/DCコンバータの出力電圧V
OUTに応じた第2電流を生成する第2V/I変換器と、をさらに備えてもよい。第1電流および第2電流に応じて、第1ヒステリシスコンパレータをオフセット可能に構成されてもよい。
この場合、入力電圧V
INおよび出力電圧V
OUTに応じて、電流制御と電流制限の優先度を制御することができる。
【0018】
DC/DCコンバータは、入力端子と出力端子の間に設けられた直列キャパシタを備えてもよい。DC/DCコンバータは、Cukコンバータ、SepicコンバータまたはZetaコンバータであってもよい。
【0019】
本発明の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、直列に接続された複数の発光素子を含む光源と、光源を駆動する上述のいずれかの態様の駆動装置と、複数の発光素子の少なくともひとつに対応づけられ、それぞれが対応する発光素子と並列に設けられる、少なくともひとつのバイパススイッチと、を備えてもよい。
この場合、バイパススイッチのオン、オフに応じて、DC/DCコンバータの負荷変動が生じ、電流制限がかかる頻度が多くなる。この場合に、上述の駆動装置を用いることで、安定的な電流制御および電流制限を両立できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のある態様によれば、出力電流を安定化しつつ、電流制限をかけることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0025】
図3は、実施の形態に係る駆動装置20を備える車両用灯具1のブロック図である。駆動装置20は、
図1と同様に、光源10とともに使用され、全体として車両用灯具1を構成する。
【0026】
駆動装置20は、DC/DCコンバータ30およびコントローラ40を備える。DC/DCコンバータ30は、入力電圧V
INを受け、光源10に駆動電圧V
OUTを供給する。コントローラ40は、DC/DCコンバータ30を制御する。
【0027】
DC/DCコンバータ30は、入力電圧V
INを受ける入力端子P1、負荷である光源10が接続される出力端子P2および接地される接地ラインGNDを備える。接地ラインGNDは、入力側の接地端子と、出力側の接地端子の間を結ぶ。本発明において、DC/DCコンバータ30のトポロジーは特に限定されないが、スイッチングトランジスタM1、入力インダクタL2、出力インダクタL1を有する構成であることが条件となる。この条件を満たすトポロジーとしては、
図3に示すCukコンバータが例示される。
Cukコンバータは、スイッチングトランジスタM1、出力インダクタL1、入力インダクタL2に加えて、入力キャパシタC1、出力キャパシタC2、直列キャパシタC3、整流ダイオードD1を備える。
【0028】
入力キャパシタC1は、入力端子P1と接地ラインGNDの間に設けられ、入力電圧V
INを安定化する。入力インダクタL2およびスイッチングトランジスタM1は、入力端子P1と接地ラインGNDの間に直列に設けられる。出力キャパシタC2は、出力端子P2と接地ラインGNDの間に設けられ、出力電圧V
OUTを安定化する。入力キャパシタC1や出力キャパシタC2は省略してもよい。
【0029】
整流ダイオードD1は、そのカソードが接地ラインGNDと接続される。直列キャパシタC3の一端は、整流ダイオードD1のアノードと接続され、その他端は、スイッチングトランジスタM1と入力インダクタL2の接続ノードN1と接続される。出力インダクタL1の一端は整流ダイオードD1のアノードと接続され、その他端は出力端子P2と接続される。
【0030】
以上がDC/DCコンバータ30の構成である。続いてコントローラ40について説明する。コントローラ40は、電流コントローラ42、電流リミッタ44、デューティコントローラ46、ドライバ48を備える。
【0031】
電流コントローラ42は、出力インダクタL1に流れる第1コイル電流I
L1を、光源10の目標輝度に応じた目標範囲内に安定化するために設けられる。具体的には、電流コントローラ42は、出力インダクタL1に流れる第1コイル電流I
L1を第1上側しきい値I
REFHおよび第1下側しきい値I
REFLと比較し、比較結果を示す制御信号S1を生成する。
【0032】
電流リミッタ44は、入力インダクタL2に流れる第2コイル電流I
L2が、回路の信頼性の観点から定められる電流制限値I
PEAKを超えないよう電流制限するために設けられる。電流制限値I
PEAKは、通常状態の第2コイル電流I
L2_NORMよりも高く、第2コイル電流I
L2が流れる経路上の素子の最大定格電流I
MAXよりも低く設定される。電流リミッタ44は、入力インダクタL2に流れる第2コイル電流I
L2を第2上側しきい値I
PEAKHおよび第2下側しきい値I
PEAKLと比較し、比較結果を示す制限信号S2を生成する。
【0033】
電流コントローラ42、電流リミッタ44の電流検出方法は特に限定されないが、本実施の形態では、出力インダクタL1に流れる電流(第1コイル電流I
L1)、入力インダクタL2に流れる電流(第2コイル電流I
L2)を検出するために、検出対象のコイル電流の経路上に第1センス抵抗R1、第2センス抵抗R2が設けられる。第1センス抵抗R1、第2センス抵抗R2には、検出対象のコイル電流I
L1、I
L2に比例した電圧降下(検出電圧)V
R1、V
R2が発生する。電流コントローラ42は、第1検出電圧V
R1を、I
REFH、I
REFLに応じたしきい値電圧V
REFH、V
REFLと比較する。同様に、電流リミッタ44は、第2検出電圧V
R2を、I
PEAKH、I
PEAKLに応じたしきい値電圧V
PEAKH、V
PEAKLと比較する。
【0034】
デューティコントローラ46は、(i)第2コイル電流I
L2が第2上側しきい値I
PEAKHを超えるより先に、第1コイル電流I
L1が第1上側しきい値I
REFHを超えるサイクルにおいて、(i-a)第1コイル電流I
L1が第1上側しきい値I
REFHを超えたことを契機としてスイッチングトランジスタM1をオフし、(i-b)第1コイル電流I
L1が第1下側しきい値I
REFLを下回ったことを契機としてスイッチングトランジスタM1をオンする。
またデューティコントローラ46は、(ii)第1コイル電流I
L1が第1上側しきい値I
REFHを超えるより先に、第2コイル電流I
L2が第2上側しきい値I
PEAKHを超えるサイクルにおいて、(ii-a)第2コイル電流I
L2が第2上側しきい値I
PEAKHを超えたことを契機としてスイッチングトランジスタをオフし、(ii-b)第2コイル電流I
L2が第2下側しきい値I
PEAKLを下回ったことを契機としてスイッチングトランジスタM1をオンする。
【0035】
デューティコントローラ46は、スイッチングトランジスタM1のオン、オフを指示するパルス信号S3を出力する。ドライバ48は、パルス信号S3にもとづいてスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0036】
以上が駆動装置20の構成である。続いてその動作を説明する。
図4(a)、(b)は、
図3の駆動装置20の動作波形図である。
図4(a)を参照する。あるサイクルTsに着目すると、初期状態でスイッチングトランジスタM1がオンしており、コイル電流I
L1、I
L2は増大している。
時刻t0に、I
L2がI
PEAKHに達するよりも早く、I
L1がI
REFHに達する。したがって、時刻t0にスイッチングトランジスタM1がオフする。スイッチングトランジスタM1がオフすると、コイル電流I
L1、I
L2が減少し始める。時刻t1にI
L2がI
PEAKLまで低下し、その後、時刻t2に、I
L1がI
REFLまで低下する。この場合、スイッチングトランジスタM1は、時刻t1ではなく(一点鎖線)、時刻t2(実線)でオンする。つまり、
図4(a)では、電流コントローラ42によって、出力電流I
OUTが目標範囲に安定化される(電流制御)。
【0037】
図4(b)を参照する。あるサイクルTsに着目すると、初期状態でスイッチングトランジスタM1がオンしており、コイル電流I
L1、I
L2は増大している。
時刻t0に、I
L1がI
REFHに達するよりも早く、I
L2がI
PEAKHに達する。したがって、時刻t0にスイッチングトランジスタM1がオフする。スイッチングトランジスタM1がオフすると、コイル電流I
L1、I
L2が減少し始める。時刻t1にI
L1がI
REFLまで低下し、その後、時刻t2に、I
L2がI
PEAKLまで低下する。この場合、スイッチングトランジスタM1は、時刻t1ではなく(一点鎖線)、時刻t2(実線)でオンする。つまり、
図4(b)では、電流リミッタ44によって、入力電流I
L1が制限される。
【0039】
図3の駆動装置20によれば、第1コイル電流I
L1が第1上側しきい値I
REFHに達してスイッチングトランジスタM1がオフした直後に、第2コイル電流I
L2が第2下側しきい値I
PEAKLまで低下したとしても、直ちにスイッチングトランジスタM1はオンせず、第1コイル電流I
L1が第1下側しきい値I
REFLに低下するまで、スイッチングトランジスタM1のオフを持続する。反対に、第2コイル電流I
L2が第2上側しきい値I
PEAKHに達してスイッチングトランジスタM1がオフした直後に、第1コイル電流I
L1が第1下側しきい値I
REFLまで低下したとしても、直ちにスイッチングトランジスタM1はオンせず、第2コイル電流I
L2が第2下側しきい値I
PEAKLに低下するまで、スイッチングトランジスタM1のオフを持続する。この制御により、スイッチング周波数の上昇を抑制することができる。
【0040】
続いて、駆動装置20の具体例を説明する。
図5は、コントローラ40の構成例を示すブロック図である。電流コントローラ42は、第1ヒステリシスコンパレータ50を含む。
第1ヒステリシスコンパレータ50は、第1コイル電流I
L1に応じた第1検出電圧V
R1を、第1しきい値電圧V
TH1と比較し、第1検出電圧V
R1が第1しきい値電圧V
TH1より低い間、制御信号S1をアサート(たとえばハイレベル)する。ヒステリシスコンパレータを用いることで、第1しきい値電圧V
TH1は、第1上側しきい値I
REFHおよび第1下側しきい値I
REFLそれぞれに応じた2つの電圧レベルV
TH1H、V
TH1Lを遷移し、その遷移は、第1ヒステリシスコンパレータ50の出力である制御信号S1に応じることとなる。
【0041】
また電流リミッタ44は、第2ヒステリシスコンパレータ52を含む。第2ヒステリシスコンパレータ52は、第2コイル電流I
L2に応じた第2検出電圧V
R2を、第2しきい値電圧V
TH2と比較し、第2検出電圧V
R2が第2しきい値電圧V
TH2より低い間、制限信号S2をアサート(たとえばハイレベル)する。ヒステリシスコンパレータを用いることで、第2しきい値電圧V
TH2は、第2上側しきい値I
PEAKHおよび第2下側しきい値I
PEAKLそれぞれに応じた2つの電圧レベルV
TH2H、V
TH2Lを遷移し、その遷移は、第2ヒステリシスコンパレータ52の出力である制限信号S2に応じることとなる。
【0042】
デューティコントローラ46は、ロジック回路54を含む。
ロジック回路54は、制御信号S1および制限信号S2にもとづいてパルス信号S3を生成する。ロジック回路54は、制御信号S1および制限信号S2がともにアサート(ハイレベル)される間、パルス信号S3をアサート(ハイレベル)し、制御信号S1および制限信号S2の少なくともひとつがネゲートされる間、パルス信号S3をネゲートする。たとえばロジック回路54は、ANDゲートである。当業者であれば、インバータ、ORゲート、NORゲート、XORゲートなど、その他の論理ゲートを用いても、同等の機能を有するロジック回路54を実現しうることが理解される。
【0043】
図5のコントローラ40によれば、スイッチングトランジスタM1を好適に制御できる。
【0044】
続いて、電流リミッタ44の電流制限の上限値について説明する。
これまでは電流制限値I
PEAKが一定である場合を説明したが、それらの値は、駆動装置20の状態に応じて変化させることが好ましい。
図6(a)、(b)は、電流制限値I
PEAKを説明する図である。
【0045】
通常状態において入力インダクタL2に流れる第2コイル電流I
L2_NORMは、I
L2_NORM=P
OUT/V
INで近似することができる。
図6(a)に示すように、電流制限値を一定とした場合、P
OUT/V
INが小さくなるにしたがって、電流制限値I
PEAKと通常時の第2コイル電流I
L2_NORMの差ΔIが大きくなる。
ΔIが大きい場合、電源電圧、負荷変動によって、電流制御状態から電流制限状態に移行したときに、第2コイル電流I
L2の変動量が大きくなる。この変動量が大きいと、電流制御状態と電流制限状態を繰り返す発振状態に陥りやすくなり、また発振の度合いも大きくなる。
【0046】
この問題を解決するために、
図6(b)に一点鎖線(i)や(ii)で示すように、電流制限値I
PEAKを動的に変化させることが好ましい。より具体的には、通常時の第2コイル電流I
L2_NORMが大きくなるにしたがい、言い換えれば、P
OUT/V
INが大きくなるにしたがい、電流制限値I
PEAKを大きくすることが好ましい。これにより、
図6(a)に比べて、電流制限値I
PEAKと通常時の第2コイル電流I
L2_NORMの差ΔIを小さくでき、発振耐性を高めることができる。
【0047】
図7は、電流リミッタ44の構成例を示す回路図である。出力電流I
OUTが一定であるとすれば、出力電力P
OUTは出力電圧V
OUTに比例する。したがって電流リミッタ44は、出力電圧V
OUTが増大するにしたがって、電流制限値I
PEAKを増大させる。また、1/V
INが増大するにしたがって、言い換えればV
INが低下するにしたがって、電流制限値I
PEAKを増大させる。
【0048】
電流リミッタ44は、第2ヒステリシスコンパレータ52に加えて、第1V/I変換器60、第2V/I変換器62を備える。
第2ヒステリシスコンパレータ52は、検出電圧V
R2をしきい値電圧V
TH’と比較する。この例では、V
R2は負電圧である。電圧コンパレータ70は、V
TH’+V
R2を0Vと比較することで、V
TH’を、V
R2の絶対値と比較する。抵抗R21、R22は、電圧加算(平均)のために設けられる。
【0049】
トランジスタM21および抵抗R23は、しきい値電圧V
TH’にヒステリシスを設定するために設けられる。トランジスタM21は、電圧コンパレータ70の出力がハイレベルのときオン、ローレベルのときオフである。トランジスタM21がオフのとき、V
TH’=V
THであり、トランジスタM21がオンのとき、V
TH’=V
TH×R23/(R23+R24)となり、下側のしきい値に遷移する。なお第2ヒステリシスコンパレータ52の構成は
図7のそれには限定されず、公知のヒステリシスコンパレータを用いてもよい。
【0050】
第1V/I変換器60は、入力電圧V
INに応じた第1電流I1を生成する。第2V/I変換器は、DC/DCコンバータの出力電圧V
OUTに応じた第2電流を生成する。たとえば第1V/I変換器60および第2V/I変換器62は、カレントミラー回路を用いて構成することができる。第1電流I1は、入力電圧V
INが大きくなるほど増大する。第2電流I2は、出力電圧V
OUTが低くなるほど(絶対値が増大するほど)増大する。
【0051】
電流リミッタ44は、第1電流I1および第2電流I2に応じて、
第2ヒステリシスコンパレータ
52をオフセット可能に構成される。第1V/I変換器60および第2V/I変換器62は、第2ヒステリシスコンパレータ52の内部の適切なノードN2に電流を供給し、あるいはそのノードから電流を引き抜く。
【0052】
これによって、しきい値電圧V
TH’が、入力電圧V
IN、出力電圧V
OUTに応じてオフセットされる。より具体的には、出力電圧V
OUTが増大するほど、しきい値電圧V
TH’が高くなり、入力電圧V
INが低下するほど、しきい値電圧V
TH’が高くなる。これにより、
図6(b)に示すように、P
OUT/V
INに応じて、電流制限値I
PEAKを変化させることができる。なお、電流I1、I2を作用させるノードN2は、
図7のそれには限定されず、第2ヒステリシスコンパレータ52にオフセットを与えることができればその位置は限定されない。たとえば電流I1、I2に応じて、電圧コンパレータ70の内部のバイアス電流を変化させてもよい。
【0053】
続いて、車両用灯具1の具体的な構成例を説明する。
図8は、車両用灯具1の構成例を示す回路図である。光源10は、直列に接続された複数(N個)の発光素子12を含む。発光素子12は、たとえばLED(発光ダイオード)である。DC/DCコンバータ30は、光源10のアノードカソード間に、駆動電圧V
OUTを供給する。出力インダクタL3は、DC/DCコンバータ30の出力キャパシタC2とともに、フィルタ32を形成する。このフィルタ32によって、光源10に流れる電流I
OUTが平滑化される。
【0054】
駆動装置20は、DC/DCコンバータ30およびコントローラ40に加えて、複数のバイパススイッチSW1〜SWNを備える。複数のバイパススイッチSW1〜SWNは、複数の発光素子12_1〜12_Nに対応づけられ、それぞれが対応する発光素子と並列に設けられる。
【0055】
DC/DCコンバータ30の出力電流I
OUTは、DC/DCコンバータ30およびコントローラ40によって目標値に安定化される。すべてのバイパススイッチSW1〜SWNをオフした状態では、出力電流I
OUTは、すべての発光素子12に流れることとなり、輝度が最大とななる。任意のバイパススイッチSWiをオフすると、出力電流I
OUTは、発光素子12_iではなくスイッチSWi側を流れることとなり、発光素子12_iが消灯する。コントローラ40は、複数のバイパススイッチSW1〜SWNのオン、オフ状態を制御することで、車両用灯具1全体としての輝度あるいは配光を制御する。
【0056】
図8の車両用灯具1では、バイパススイッチSW1〜SWNのオン、オフに応じて、DC/DCコンバータ30の負荷変動が生じ、電流制限がかかる頻度が多くなる。この場合に、上述の駆動装置20を用いることで、安定的な電流制御および電流制限を両立できる。
【0057】
最後に、車両用灯具1の用途を説明する。
図9は、
図8の車両用灯具1を備えるランプユニット(ランプアッシー)500の斜視図である。ランプユニット500は、透明のカバー502、ハイビームユニット504、ロービームユニット506、筐体508を備える。上述の車両用灯具1は、たとえばハイビームユニット504に用いることができる。複数の
発光素子12は、それぞれが異なる領域を照射するように、たとえば横方向に一列に配置される。そして、車両の走行状態において、車両側のコントローラ、たとえばECU(電子制御ユニット)により、照射すべき領域が適応的に選択される。車両用灯具1には、照射すべき領域を指示するデータが入力され、車両用灯具1は、指示された領域に対応する
発光素子12を点灯させる。
【0058】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0059】
(変形例1)
実施の形態では、DC/DCコンバータ30としてCukコンバータを用いる場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。DC/DCコンバータ30は、出力インダクタL1、入力インダクタL2およびスイッチングトランジスタM1を含むトポロジーを有していればよく、その観点では、SepicコンバータまたはZetaコンバータであってもよい。
図10(a)、(b)は、Sepicコンバータ、Zetaコンバータの回路図である。
図10(a)のSepicコンバータは、Cukコンバータの整流ダイオードD1と出力インダクタL1を入れ替えた構成である。
図10(b)のZetaコンバータは、CukコンバータのスイッチングトランジスタM1と入力インダクタL2を入れ替え、整流ダイオードD1の向きを入れ替えた構成である。
【0060】
Cuk、Sepic、Zetaコンバータは、入力端子P1と出力端子P2の間に設けられた直列キャパシタC3を備える点で共通しており、直列キャパシタC3によってその他のトポロジーのコンバータと比べて発振が起こり易い。これらのコンバータの制御に、安定性に優れるコントローラ40を組み合わせることは非常に有用であるといえる。
【0061】
(変形例2)
コイル電流I
L1、I
L2を検出する方法は、実施の形態のそれには限定されない。たとえばセンス抵抗R1、R2を、別の位置に挿入してもよい。あるいは、抵抗のかわりに、既知のトランジスタのインピーダンスを利用してもよい。
【0062】
(変形例3)
図8の車両用灯具1において、複数のバイパススイッチSW1〜SWNが、すべての発光素子12_1〜12_Nに対応づけられる場合を説明したが本発明はそれには限定されない。たとえば、バイパススイッチSWが設けられず、常時点灯する発光素子12が存在してもよいし、ひとつのバイパススイッチSWと並列に、複数の発光素子の直列回路が接続されてもよい。
(変形例4)
光源10としては、LEDの他に、LD(レーザダイオード)を用いてもよい。
【0063】
(変形例5)
図9のランプユニット500では、ハイビームユニット504に
図3の車両用灯具1を使用する場合を説明したが、それに代えて、あるいはそれに加えて、ロービームユニット506に車両用灯具1を用いてもよい。
【0064】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。