特許第6262569号(P6262569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262569レスベラトロール誘導体及びチロシナーゼ活性阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262569
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】レスベラトロール誘導体及びチロシナーゼ活性阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/203 20060101AFI20180104BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20180104BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C07H15/203CSP
   A61K31/7034
   A61P43/00 111
   A61P17/00
   A61K8/60
   A61Q19/02
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-40124(P2014-40124)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-164903(P2015-164903A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大出 知里
(72)【発明者】
【氏名】島田 亙
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 CHEN Y. et al,New bibenzyl glycosides from leaves of Camellia oleifera Abel. with cytotoxic activities,Fitoterapia,2011年,vol.82,p.481-484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 1/00 − 99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−レゾルシノール骨格を少なくとも有した式1で示される化合物(式1中、Rは水素又はキシロシルである。)であることを特徴とするレスベラトロール誘導体。
【化1】
【請求項2】
5−レゾルシノール骨格を少なくとも有した式2で示される化合物(式2中、Rはキシロシルである。)であることを特徴とするレスベラトロール誘導体。
【化2】
【請求項3】
式1又は式2で示されるレスベラトロール誘導体からなる(式1中、Rは水素又はキシロシルであり、式2中、Rはキシロシル又はグルコシルである。)ことを特徴とするチロシナーゼ活性阻害剤。
【化3】

【化4】
【請求項4】
請求項1又は2に記載のレスベラトロール誘導体を配合することを特徴とする皮膚外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レスベラトロール誘導体及びチロシナーゼ活性阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化還元酵素のポリフェノールオキシダーゼ(チロシナーゼを含む。)は、動植物の細胞構成組織に含まれるフェノール類の化学反応を促進させる作用がある。こうしたポリフェノールオキシダーゼは、人の皮膚では褐色化(日焼け)を引き起こしたり、青果類や魚介類等の食品では褐変により商品価値を低下させたり、食品に含まれて有益な抗酸化活性のあるポリフェノール類を分解したりする、酸化還元酵素として知られている。
【0003】
特に、動植物における色素形成反応の初期段階には、チロシナーゼ(ポリフェノールオキシダーゼ)が深く関与している。チロシナーゼは、銅原子を活性中心に含む酸化還元酵素であり、自然界で観察される様々な褐変現象の初期反応を触媒する。例えば、皮膚が紫外線を浴びた場合には、皮膚のメラノサイトではメラニン生合成の第一段階を司るチロシナーゼの働きが活性化し、その結果、メラニンが過剰に蓄積してシミやそばかす等の皮膚褐変を引き起こす。このメラニン生合成を効果的に抑制するために、チロシナーゼの働きを阻害又は抑制できる化合物(以下「チロシナーゼ活性阻害剤」ともいう。)の研究が行われている。
【0004】
チロシナーゼ活性阻害剤は、機能性化粧品への添加剤として、果実や野菜の褐変防止剤として、また、医薬品として、広い応用が期待されている。現在までに開発されてきたチロシナーゼ活性阻害剤は、構造及び酵素化学的な性質に基づき、基質類似体と銅キレーターの二種類に大別される。特にレゾルシノール骨格を持つ基質類似体は、チロシナーゼの働きを阻害する活性性能(「チロシナーゼ阻害活性」ともいう。)が強いことが知られている。レゾルシノール骨格を持つ基質類似体として、例えば、コウジ酸、アルブチン、4位置換アルキルレゾルシノール(例えば、4−ブチルレゾルシノール)等がある。
【0005】
このうち、コウジ酸は、日焼けや褐変を防ぐものとして古くから化粧品や食品に添加されてきたが、2003年に医薬部外品(薬用化粧品)への使用が一旦禁止された。アルブチンは、コケモモやナシ等の植物に含まれる天然フェノール配糖体であるが、チロシナーゼ阻害活性はそれほど高くない。しかし、このアルブチンは、水溶性かつ低毒性のために、美白効果のある化粧品の成分に使用されている。また、脂溶性の4位置換アルキルレゾルシノールである4−ブチルレゾルシノールは、レゾルシノール骨格を持つために強い阻害活性を示すことが知られている。
【0006】
なお、本発明者は、ビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤(特許文献1)、レゾルシノール誘導体及びチロシナーゼ活性阻害剤(特許文献2)、及び、ロデシンドール誘導体及び生理活性剤(特許文献3)を既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−56651号公報
【特許文献2】特開2012−197269号公報
【特許文献3】特開2013−213024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新規なレスベラトロール誘導体を提供するとともに、そのレスベラトロール誘導体からなるチロシナーゼ活性阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、チロシナーゼ阻害活性を示す新規な化合物の研究開発を行っている過程で、特定のレスベラトロール誘導体が良好なチロシナーゼ阻害活性を示すことを見出した。本発明は、こうした知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る第1のレスベラトロール誘導体は、5−レゾルシノール骨格を少なくとも有した式1で示されるレスベラトロール誘導体である(式1中、Rは水素又はキシロシルである。)。
【0011】
【化1】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る第2のレスベラトロール誘導体は、5−レゾルシノール骨格を少なくとも有した式2で示されるレスベラトロール誘導体である(式2中、Rはキシロシル又はグルコシルである。)。
【0013】
【化2】
【0014】
第1及び第2の新規なレスベラトロール誘導体は、各種の使用に適したチロシナーゼ阻害活性剤として利用可能である。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係るチロシナーゼ活性阻害剤は、上記した本発明に係る式1又は式2で示されるレスベラトロール誘導体からなる(式1中、Rは水素又はキシロシルであり、式2中、Rはキシロシル又はグルコシルである。)。
【0016】
この発明によれば、第1及び第2の新規なレスベラトロール誘導体はそれぞれチロシナーゼ阻害活性を有するので、使用目的に応じたチロシナーゼ阻害活性剤として利用可能である。
【0017】
本発明に係るレスベラトロール誘導体を配合することによって、新しい皮膚外用剤組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、新規なレスベラトロール誘導体を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、チロシナーゼ阻害活性を示す新規なレスベラトロール誘導体を用いたチロシナーゼ活性阻害剤を提供することができる。こうして得られたチロシナーゼ活性阻害剤は、皮膚褐色化防止機能をもつ化粧品(すなわち皮膚の美白化粧品等)や、野菜等の植物カット食材の鮮度保持を目的とする褐変防止機能をもつ添加剤として、使用目的に応じたチロシナーゼ阻害活性剤として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る第1のレスベラトロール誘導体の合成経路の模式図である。
図2】本発明に係る第2のレスベラトロール誘導体の合成経路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るレスベラトロール誘導体及びチロシナーゼ活性阻害剤について詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下に記載の事項及び実施例に記載の事項に限定されない。
【0022】
[レスベラトロール誘導体]
本発明に係るレスベラトロール誘導体は、いずれもレスベラトロールの誘導体であり、5−レゾルシノール骨格を少なくとも有している。本発明者は、5−レゾルシノール骨格を少なくとも有するレスベラトロール誘導体について研究し、図1及び図2に示すように、各種用途に使用するために必要な安定化処理と親水化処理とを行っている過程で、本発明で提供する第1のレスベラトロール誘導体と第2のレスベラトロール誘導体とが有効なチロシナーゼ活性阻害性能を示すことを見出して本発明を完成させた。
【0023】
第1のレスベラトロール誘導体は、5−レゾルシノール骨格(図1中の「5RE」)を有し、さらに4−レゾルシノール骨格(図1中の「4RE」)を有するレスベラトロールの誘導体である。このレスベラトロール誘導体は、図1に示すように、5−レゾルシノール骨格のみを配糖体化し、4−レゾルシノール骨格はそのまま残した親水性の新規レスベラトロール誘導体である。詳しくは、式1で示されるレスベラトロール誘導体である。式1中、Rは水素又はキシロシルである。なお、図1及び式1中の「Xyl」はキシロシルの略である。
【0024】
【化3】
【0025】
第2のレスベラトロール誘導体は、5−レゾルシノール骨格を有するレスベラトロールの誘導体である。このレスベラトロール誘導体は、5−レゾルシノール骨格をそのまま残した状態で配糖体化した親水性の新規レスベラトロール誘導体である。詳しくは、式2で示されるレスベラトロール誘導体である。式2中、Rはキシロシル又はグルコシルである。なお、図2及び式2中の「Xyl」はキシロシルの略であり、「Glc」はグルコシルの略である。
【0026】
【化4】
【0027】
これらのレスベラトロール誘導体は、チロシナーゼ活性阻害剤として利用でき、皮膚褐色化防止機能をもつ化粧品(すなわち皮膚の美白化粧品等)や、野菜等の植物カット食材の鮮度保持を目的とする褐変防止機能をもつ添加剤として、使用目的に応じたチロシナーゼ阻害活性剤として利用可能である。
【0028】
以下、詳しく説明する。
【0029】
(第1のレスベラトロール誘導体)
第1のレスベラトロール誘導体は、上記の式1で示されるレスベラトロール誘導体であり、具体的には、下記の化合物3と、下記の化合物4である。化合物3は、式1中のRが水素で構成されている。化合物4は、式1中のRがキシロシル(Xyl)で構成されている。
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
図1に示すように、オキシレスベラトロール(1)は、クワ科植物のMorus alba L.から単離されたスチルベノイドである。このオキシレスベラトロール(1)は、コウジ酸の33倍の活性を示す強力なチロシナーゼ阻害剤であるが、脂溶性で用途が限られ、かつスチルベン骨格を持つため光に不安定であるという問題があった。本発明では、スチルベン骨格上の二重結合を還元してジヒドロオキシレスベラトロール(2)を得て、さらに位置選択的な配糖体化を行って親水化を図り、化学式3,4に示すレスベラトロール誘導体を合成した。合成したレスベラトロール誘導体は、チロシナーゼ阻害活性を示し、親水性かつ安定な新規化合物である。
【0033】
(第2のレスベラトロール誘導体)
第2のレスベラトロール誘導体は、上記の式2で示されるレスベラトロール誘導体であり、具体的には、下記の化合物7と、下記の化合物8である。化合物7は、式2中のRがグルコシル(Glc)で構成されている。化合物8は、式2中のRがキシロシル(Xyl)で構成されている。
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
図2に示すように、ユリ科やブドウ科等の植物に広く分布するレスベラトロール(5)は、近年、サーチュイン遺伝子を活性化させることが分かり、寿命延命作用との関連が注目されている。本発明では、このレスベラトロール(5)の二重結合を還元してジヒドロレスベラトロール(6)を得て、さらに位置選択的な配糖体化を行って親水化を図り、化学式7,8に示すレスベラトロール誘導体を合成した。合成したレスベラトロール誘導体は、弱いチロシナーゼ阻害活性を示し、親水性かつ安定な新規化合物である。
【0037】
従来、上記第1及び第2のレスベラトロール誘導体のように、チロシナーゼ阻害活性を有し且つ配糖体化された親水性のレスベラトロール誘導体は知られていない。なお、チロシナーゼ(ポリフェノールオキシダーゼ)は、日焼け、青果類や魚介類の褐変、昆虫の外皮形成等の自然界における着色・ポリマー化現象の初期反応を触媒する酸化還元酵素である。日焼けは、過剰紫外線によって皮膚基底層の色素細胞(メラノサイト)が活性化し、生成した過剰のメラニンが皮膚に沈着する現象で、シミやソバカス等の皮膚老化の主因となっている。食品の褐変は、着色や変質による商品価値の低下及び食品成分で抗酸化活性のあるポリフェノール類の分解に繋がる。また、害虫外皮は、フェノール成分がチロシナーゼの作用で重合することにより形成される。
【0038】
以上説明した本発明に係るレスベラトロール誘導体は、安定で親水性があり、いずれもチロシナーゼ活性阻害能を有する新しい化合物である。この化合物は、チロシナーゼ阻害活性を示すことからチロシナーゼ活性阻害剤として好ましく用いることができる。本発明に係るレスベラトロール誘導体をチロシナーゼの活性阻害剤として使用する場合、そのまま単独で使用してもよいが、通常は、各種用途に応じた使用形態とすることが望ましい。具体的には、得られたレスベラトロール誘導体と、医薬品、化粧品等に一般に用いられる各種成分(例えば、水性成分、油性成分、粉末成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、色剤、香料、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤又は紫外線防御剤等)の1種又は2種以上を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0039】
例えば、本発明に係るレスベラトロール誘導体又はそのレスベラトロール誘導体を含むチロシナーゼ活性阻害剤を、水やペースト剤と混合して塗布用の皮膚褐色化防止機能性化粧品、すなわち皮膚の美白化粧品(美白効果の高い皮膚外用剤や美白用皮膚外用剤)として使用できる。また、水と混合して植物カット食材の褐変防止機能性添加剤としても使用できる。また、散布剤として使用すれば野菜野鮮度保持用の散布剤としても使用できる。また、昆虫のさなぎ化抑止剤や人畜無害な殺虫剤としても使用できる。
【0040】
特に本発明に係るレスベラトロール誘導体又はそのレスベラトロール誘導体を含むチロシナーゼ活性阻害剤は、メラニン生成を抑制することから、美白剤として有用であり、皮膚外用剤(皮膚外用剤組成物)に好適に配合される。皮膚外用剤として用いる場合、通常、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば粉末成分、液体油脂、固体油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、エステル類、シリコーン、各種界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。さらに、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の他の美白剤も適宜配合することができる。
【0041】
以上、本発明によれば、チロシナーゼ阻害活性を示す新規なレスベラトロール誘導体を提供することができる。また、本発明に係るチロシナーゼ活性阻害剤によれば、美白化粧品、アンチエイジング剤、医薬品、食品添加物(酸化防止剤)、農薬等の幅広い目的に使用可能であり、食品・化学工業等の産業界が切望する生理活性物質の一つである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
<ジヒドロオキシレスベラトロール誘導体3及び4の合成>
第1のレスベラトロール誘導体である、ジヒドロオキシレスベラトロール誘導体3及び4を合成した。合成経路を下記に示す。
【0044】
【化9】
【0045】
上記の合成経路に示すように、リチウムヘキサメチルジシラシド(LiHMDS)を用いてエーテル10とWittig試薬9とをカップリングし、スチルベン11を合成した。パラジウムエチレンジアミン複合体[Pd(en)/C]を触媒とした水素添加反応により、スチルベン11をビベンジル12に還元した。p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOH・HO)を用いてビベンジル12のMOM基を除去し、フェノール13を得た。
【0046】
トリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)をルイス酸に用いて配糖体化を行い、フェノール13とイミデート15とからグリコシド14を合成した。水酸化パラジウム[Pd(OH)/C]を触媒とした加水素分解により、グリコシド14のベンジル基を除去してフェノール16を得た。ナトリウムメトキシドによるエステル交換反応により、フェノール16のすべてのアセチル基を脱保護し、キシロシドであるジヒドロオキシレスベラトロール誘導体3を合成した。配糖体化の際、イミデート15を過剰に用いることでグリコシド17を合成し、そのベンジル基を脱保護して、フェノール18に導いた。さらに、フェノール18の保護基を除去して、キシロシドであるジヒドロオキシレスベラトロール誘導体4を合成した。
【0047】
以下、合成経路中の化合物についてそれぞれ説明する。
【0048】
<2,4−O−ジベンジル−3’,5’−O−ジ(メトキシメチル)オキシレスベラトロール(11)>
ホスホニウム塩9(2.0g,3.3mmol)を真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン(10mL)に懸濁した。氷冷後、この懸濁液に1.3Mリチウムヘキサメチルジシラジド/テトラヒドロフラン溶液(2.1mL,2.7mmol)を滴下し、橙色のイリド溶液を得た。この溶液を室温で30分間撹拌した後、再び氷冷した。真空乾燥したアルデヒド10(0.38g,1.7mmol)を、アルゴン雰囲気下、脱水テトラヒドロフラン(1.0mL)に溶かし、得られた溶液を氷冷下でイリド溶液に加え、室温で3時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30mLで2回)、5%亜硫酸水素ナトリウム溶液(100mLで3回)及び飽和食塩水(30mLで1回)で洗浄した。この有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10%〜35%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、油状のスチルベン11である下記の2,4−O−ジベンジル−3’,5’−O−ジ(メトキシメチル)オキシレスベラトロールを0.39g得た(収率45%)。
【0049】
【化10】
【0050】
cis−11:H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.34(m,10H,Bn),7.15(d,J=8.5,1H,H−6),6.67(d,J=12.2,1H,H−7’),6.61(d,J=2.2,2H,H−2’,H−6’),6.57(d,J=2.4,1H,H−3),6.52(t,J=2.2,1H,H−4’),6.44(d,J=12.2,1H,H−7),6.37(dd,J=2.4,8.5,1H,H−5),5.03(s,4H,MOM),5.00(s,4H,Bn),3.38(s,6H,MOM).
【0051】
trans−11:H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.58(d,J=16.0,1H,H−7’),7.34(m,10H,Bn),7.15(d,J=8.5,1H,H−6),6.97(d,J=16.0,1H,H−7),6.61(d,J=2.2,2H,H−2’,H−6’),6.57(d,J=2.4,1H,H−3),6.52(t,J=2.2,1H,H−4’),6.37(dd,J=2.4,8.5,1H,H−5),5.03(s,4H,MOM),5.00(s,4H,Bn),3.38(s,6H,MOM).
【0052】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ159.4(C−4),157.9(2C,C−3’,C−5’),157.4(C−2),139.8(C−1’),137.0(Bn),136.9(Bn),130.7(C−6),128.64(C−7’),128.59(2C,Bn),128.49(2C,Bn),128.0(Bn),127.8(Bn),127.5(2C,Bn),127.2(2C,Bn),126.0(C−7),119.4(C−1),110.3(C−2’,C−6’),105.8(C−5),103.8(C−4’),100.6(C−3),94.5(2C,MOM),70.2(Bn),70.1(Bn),55.9(2C,MOM)
【0053】
<2,4−O−ジベンジル−3’,5’−O−ジ(メトキシメチル)ジヒドロオキシレスベラトロール(12)>
スチルベン11(0.15g,0.29mmol)のトルエン(6.0mL)溶液に、5%パラジウム/活性炭−エチレンジアミン複合体(30mg)を加え、水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。セライトを用いてパラジウム触媒をろ過し、ろ液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(15%〜20%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、白色固体のビベンジル12である下記の2,4−O−ジベンジル−3’,5’−O−ジ(メトキシメチル)ジヒドロオキシレスベラトロールを0.13g得た(収率86%)。
【0054】
【化11】
【0055】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.41(m,10H,Bn),7.00(d,J=8.2,1H,H−6),6.59(d,J=2.4,1H,H−3),6.54(t,J=2.4,1H,H−4’),6.49(d,J=2.4,2H,H−2’,H−6’),6.48(dd,J=2.4,8.2,1H,H−5),5.08(s,4H,MOM),5.03(s,2H,Bn),5.00(s,2H,Bn),3.44(s,6H,MOM),2.83(m,4H,H−7,H−7’).
【0056】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ158.4(C−4),158.1(2C,C−3’,C−5’),157.4(C−2),145.1(C−1’),137.2(Bn),137.1(Bn),130.2(C−6),128.6(2C,Bn),128.5(2C,Bn),128.0(Bn),127.8(Bn),127.5(2C,Bn),127.1(2C,Bn),123.1(C−1),109.9(C−2’,C−6’),105.2(C−5),102.4(C−4’),100.5(C−3),94.46(2C,MOM),70.2(Bn),69.8(Bn),56.0(2C,MOM),36.8(C−7’),32.0(C−7).
【0057】
<2,4−O−ジベンジルジヒドロオキシレスベラトロール(13)>
ビベンジル12(65mg,0.13mmol)をテトラヒドロフラン(2.0mL)とメタノール(2.0mL)との混合溶媒に溶かし、その溶液に、p−トルエンスルホン酸一水和物(29mg,0.16mmol)を加え、4時間リフラックスした。反応液に酢酸エチル(30mL)を加え、有機層を蒸留水(15mLで3回)及び飽和食塩水(15mLで3回)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、さらに酢酸エチル(30mLで3回)で抽出した。全ての有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(30%〜40%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、白色固体のフェノール13である下記の2,4−O−ジベンジルジヒドロオキシレスベラトロールを46mg得た(収率85%)。
【0058】
【化12】
【0059】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.39(m,10H,Bn),6.99(d,J=8.2,1H,H−6),6.61(d,J=2.4,1H,H−3),6.49(dd,J=2.4,8.2,1H,H−5),6.12(m,3H,H−2’,H−4’,H−6’),5.01(s,4H,Bn),4.72(s,2H,OH),2.76(m,4H,H−7,H−7’).
【0060】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ158.4(C−4),157.4(C−2),156.5(2C,C−3’,C−5’),145.64(C−1’),137.3(Bn),137.0(Bn),130.1(C−6),128.6(4C,Bn),128.0(Bn),127.9(Bn),127.60(2C,Bn),127.57(2C,Bn),123.1(C−1),108.2(2C,C−2’,C−6’),105.2(C−5),100.5(C−3),100.1(C−4’),70.2(Bn),69.9(Bn),36.4(C−7’),32.0(C−7).
【0061】
<3’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)−2,4,−O−ジベンジルオキシジヒドロオキシレスベラトロール(14)>
フェノール13(16mg,36μmol)とイミデート15(19mg,45μmol)を真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン(2.0mL)に溶かした。その溶液を−78℃に冷却した後、0.11Mトリメチルシリルトリフラート/ジクロロメタン溶液(2.7μL,0.30μmol)を加え、20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミンを加えて中和した後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(30−45%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して白色固体のグリコシド14である下記の3’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)−2,4,−O−ジベンジルオキシジヒドロオキシレスベラトロールを19mg得た(収率76%)。
【0062】
【化13】
【0063】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.36(m,10H,Bn),6.98(d,J=8.3,1H,H−6),6.60(d,J=2.4,1H,H−4),6.48(dd,J=2.4,8.3,1H,H−5),6.33(d,J=2.2,1H,H−2’),6.30(t,J=2.2,1H,H−4’),6.22(d,J=2.2,1H,H−6’),5.20(t,J=8.0,1H,H−3”),5.12(dd,J=6.2,8.0,1H,H−2”),5.04(d,J=6.2,1H,H−1”),5.02(s,2H,Bn),5.01(s,2H,Bn),4.99(dt,J=4.8,8.0,1H,H−4”),4.72(s,1H,OH),4.14(dd,J=4.8,12.1,1H,H−5”),3.42(dd,J=8.0,12.1,1H,H−5”),2.77(m,4H,H−7,H−7’),2.06(m,9H,Ac).
【0064】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ170.0(Ac),169.9(Ac),169.4(Ac),158.4(C−4),157.6(C−2),157.39(C−3’),156.4(C−5’),145.5(C−1’),137.2(Bn),137.0(Bn),130.2(C−6),128.59(2C,Bn),128.58(2C,Bn),127.97(Bn),127.90(Bn),127.5(2C,Bn),127.4(2C,Bn),122.93(C−1),110.2(C−2’),109.3(C−6’),105.2(C−5),101.7(C−4’),100.5(C−3),98.4(C−1”),70.8(C−3”),70.19(Bn),70.16(Bn),69.9(C−2”),68.5(C−4”),61.8(C−5”),36.5(C−7’),32.0(C−7),20.7(3C,Ac).
【0065】
<3’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロール(16)>
グリコシド14(90mg,0.13mmol)を酢酸エチル(2.0mL)とメタノール(3.0mL)との混合溶媒に溶かした。その溶液に10%水酸化パラジウム/活性炭(18mg)を加えて水素雰囲気下、20℃で30分撹拌した。セライトを用いてパラジウムをろ過し、ろ液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50%〜70%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、フェノール16である下記の3’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロールを52mg得た(収率77%)。
【0066】
【化14】
【0067】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ6.80(d,J=8.8,1H,H−6),6.35(m,1H,H−2’),6.30(m,3H,H−3,H−5,H−4’),6.29(m,1H,H−6’),5.19(t,J=8.0,1H,H−3”),5.08(dd,J=6.3,8.0,1H,H−2”),4.98(d,J=6.3,1H,H−1”),4.94(dt,J=4.8,8.0,1H,H−4”),4.12(dd,J=4.8,13.0,1H,H−5”),3.43(dd,J=8.0,13.0,1H,H−5”),2.74(m,4H,H−7,H−7’),2.02(m,9H,Ac).
【0068】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ171.3(3C,Ac),157.5(C−3’),156.7(C−5’),155.1(C−4),154.7(C−2),144.9(C−1’),131.1(C−6),118.5(C−1),110.6(C−2’),109.3(C−6’),107.5(C−5),103.0(C−3),102.1(C−4’),98.5(C−1”),70.7(C−3”),70.1(C−2”),68.5(C−4”),61.8(C−5”),36.3(C−7’),31.2(C−7),21.0(3C,Ac).
【0069】
<3’−O−(β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロール(3)>
アルゴン雰囲気下、フェノール16(32mg,63μmol)をメタノール(4.0mL)に溶解した。氷冷下、その溶液に5.2Mナトリウムメトキシド/メタノール溶液(60μL,0.31mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液にアンバーライトIR−120Hを少しずつ加え、pH試験紙で反応液が中性になったことを確認した後、アンバーライトをろ過し、ろ液を減圧濃縮して、本発明に係るジヒドロオキシレスベラトロール3である下記の3’−O−(β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロールを17mg得た(収率71%)。生理活性評価用のサンプル17mgは、分取HPLC(30%MeCN/HO,流速1.0mL/分)を用いて精製した(溶出時間4.0分)。
【0070】
【化15】
【0071】
H−NMR(400MHz,CDOD)δ6.74(d,J=8.2,1H,H−6),6.33(m,3H,H−2’,H−4’,H−6’),6.27(d,J=2.4,1H,H−3),6.16(dd,J=2.4,8.2,1H,H−5),4.73(d,J=7.1,H−1”),3.89(dd,J=5.4,11.4,1H,H−5”),3.54(dt,J=5.4,9.71H,H−4”),3.39(m,2H,H−3”,H−5”),3.28(m,1H,H−2”),2.70(m,4H,H−7,H−7’).
【0072】
13C−NMR(100MHz,CDOD)δ159.9(C−3’),159.2(C−5’),157.4(C−4),157.1(C−2),146.4(C−1’),131.6(C−6),120.6(C−1),110.8(C−2’),109.3(C−6’),107.2(C−5),103.4(C−3),102.9(C−1”),102.6(C−4’),77.7(C−3”),74.8(C−2”),71.1(C−4”),66.9(C−5”),37.7(C−7’),33.0(C−7).
【0073】
<3’,5’−O−ジ(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)−2,4,−O−ジベンジルジヒドロオキシレスベラトロール(17)>
フェノール13(0.13g,0.31mmol)とイミデート15(0.25g,0.59mmol)とを真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン(6.0mL)に溶かした。その溶液を−20℃に冷却し、0.11Mトリメチルシリルトリフラート/ジクロロメタン溶液(22μL,2.4μmol)を加え、20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミンを加えて中和した後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(35%〜55%酢酸エチル/ヘキサン)で精製してグリコシド17である下記の3’,5’−O−ジ(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)−2,4,−O−ジベンジルジヒドロオキシレスベラトロールを0.12g得た(収率43%)。
【0074】
【化16】
【0075】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.38(m,10H,Bn),6.96(d,J=8.2,1H,H−6),6.60(d,J=2.3,1H,H−3),6.48(dd,J=2.3,8.2,1H,H−5),6.45(m,3H,H−2’,H−4’,H−6’),5.20(t,J=7.9,2H,H−3”,H−3”’),5.12(dd,J=6.1,7.9,2H,H−2”,H−2”’),5.05(d,J=6.1,2H,H−1”,H−1”’),5.03(s,2H,Bn),5.01(s,2H,Bn),4.97(dt,J=4.8,7.9,2H,H−4”,H−4”’),4.13(dd,J=4.8,12.1,2H,H−5”,H−5”’),3.40(dd,J=7.9,12.1,2H,H−5”,H−5”’),2.81(m,4H,H−7,H−7’),2.06(m,18H,Ac).
【0076】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ169.9(2C,Ac),169.8(2C,Ac),169.3(2C,Ac),158.4(C−4),157.4(C−2),157.3(2C,C−3’,C−5’),145.4(C−1’),137.1(Bn),137.0(Bn),130.3(C−6),128.60(2C,Bn),128.59(Bn),128.5(2C,Bn),127.9(Bn),127.5(2C,Bn),127.1(2C,Bn),122.6(C−1),111.3(C−2’,C−6’),105.2(C−5),103.4(C−4’),100.5(C−3),98.2(2C,C−1”,C−1”’),70.8(2C,C−3”,C−3”’),70.1(2C,C−2”,C−2”’),70.1(2C,Bn),68.4(2C,C−4”,C−4”’),61.9(2C,C−5”,C−5”’),36.6(C−7’),31.9(C−7),20.7(6C,Ac).
【0077】
<3’,5’−O−ジ(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロール(18)>
グリコシド17(49mg,52μmol)を酢酸エチル(2.0mL)とメタノール(3.0mL)との混合溶媒に溶かした。その溶液に10%水酸化パラジウム/活性炭(10mg)を加えて水素雰囲気下、20℃で1時間撹拌した。セライトを用いてパラジウムをろ過した後、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50−70%酢酸エチル/ヘキサン)で精製してフェノール18である下記の3’,5’−O−ジ(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロールを38mg得た(収率96%)。
【0078】
【化17】
【0079】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ6.76(d,J=8.0,1H,H−6),6.43(m,1H,H−4’),6.40(m,2H,H−2’,H−6’),6.31(m,1H,H−3),6.30(m,1H,H−5),5.93(bs,1H,OH),5.61(bs,1H,OH),5,20(t,J=7.7,2H,H−3”,H−3”’),5.09(t,J=7.7,2H,H−2”,H−2”’),5.04(d,J=7.7,2H,H−1”,H−1”’),4.96(dt,J=4.6,7.7,2H,H−4”,H−4”’),4.16(dd,J=4.6,12.1,2H,H−5”,H−5”’),3.47(dd,J=7.7,12.1,2H,H−5”,H−5”’),2.77(m,4H,H−7,H−7’),2.06(m,18H,Ac).
【0080】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ170.3(2C,Ac),170.0(2C,Ac),169.7(2C,Ac),157.2(2C,C−3’,C−5’),155.2(C−4),154.7(C−2),144.9(C−1’),131.3(C−6),119.4(C−1),111.7(2C,C−2’,C−6’),107.5(C−5),103.7(C−4’),102.9(C−3),98.23(2C,C−1”,C−1”’),70.5(2C,C−3”,C−3”’),70.0(2C,C−2”,C−2”’),68.4(2C,C−4”,C−4”’),61.7(2C,C−5”,C−5”’),36.3(C−7’),31.2(C−7),20.7(6C,Ac).
【0081】
<3’,5’−O−ジ(β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロール(4)>
アルゴン雰囲気下、フェノール18(12mg,16μmol)をメタノール(3.0mL)に溶かした。氷冷下、その溶液に5.2Mナトリウムメトキシド/メタノール溶液(30μL,0.16mmol)を滴下し、室温に戻して1時間撹拌した。反応液にアンバーライトIR−120Hを少しずつ加え、pH試験紙で反応液が中性になったことを確認した後、アンバーライトをろ過し、ろ液を減圧濃縮して、本発明に係るジヒドロオキシレスベラトロール4である下記の3’,5’−O−ジ(β−キシロピラノシル)ジヒドロオキシレスベラトロールを7.0mg得た(収率88%)。生理活性評価用のサンプル14mgは、分取HPLC(20%MeCN/HO,流速1.0mL/分)によって精製した(溶出時間7.5分)。
【0082】
【化18】
【0083】
H−NMR(400MHz,CDOD)δ6.69(d,J=8.1,1H,H−6),6.57(t,J=2.1,1H,H−4’),6.51(d,J=2.1,2H,H−2’,H−6’),6.28(d,J=2.4,1H,H−3),6.15(dd,J=2.4,8.1,1H,H−5),4.73(d,J=6.8,2H,H−1”,H−1”’),3.89(dd,J=5.3,11.4,2H,H−5”,H−5”’),3.53(dt,J=5.3,10.4,2H,H−4”,H−4”’),3.39(m,4H,H−3”,H−3”’,H−5”,H−5”’),3.28(m,2H,H−2”,H−2”’),2.73(m,4H,H−7,H−7’).
【0084】
13C−NMR(100MHz,CDOD)δ159.6(2C,C−3’,C−5’),157.5(C−4),157.1(C−2),146.3(C−1’),131.8(C−6),120.3(C−1),112.1(2C,C−2’,C−6’),107.2(C−5),104.5(C−4’),103.4(C−3),103.0(2C,C−1”,C−1”’),77.70(2C,C−3”,C−3”’),74.7(2C,C−2”,C−2”’),71.1(2C,C−4”,C−4”’),66.9(2C,C−5”,C−5”’),37.6(C−7’),32.9(C−7).
【0085】
[実施例2]
<ジヒドロレスベラトロール誘導体7及び8の合成>
第2のレスベラトロール誘導体である、ジヒドロレスベラトロール誘導体7及び8を合成した。合成経路を下記に示す。
【0086】
【化19】
【0087】
上記の合成経路に示すように、リチウムヘキサメチルジシラシド(LiHMDS)を塩基として用い、アルデヒド20とWittig試薬19とをカップリングしてスチルベン21を合成した。水酸化パラジウム[Pd(OH)/C]を触媒とした接触水素化反応により、スチルベン21の二重結合の還元及びベンジル(Bn)基の脱保護を同時に行い、フェノール22を得た。トリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)をルイス酸に用いた配糖体化反応により、フェノール22とグルコシルイミデート23とからグリコシド24を合成した。このグリコシド24のTBS基を除去して、フェノール25に導き、さらにそのアセチル基を脱保護してグリコシドである目的のジヒドロレスベラトロール誘導体7を得た。キシロシルイミデート15を用いた配糖体化反応で、フェノール22からグリコシド26を導き、そのTBS基を除去して、フェノール27を得た。そのアセチル基を脱保護することにより、キシロシドである目的のジヒドロレスベラトロール誘導体8を合成した。
【0088】
以下、合成経路中の化合物についてそれぞれ説明する。
【0089】
<3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)−4’−O−ベンジルレスベラトロール(21)>
ホスホニウム塩19(1.3g,2.6mmol)を真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン(10mL)に懸濁した。氷冷後、この懸濁液に1.3Mリチウムヘキサメチルジシラジド/テトラヒドロフラン溶液(1.5mL,2.0mmol)を滴下し、橙色のイリド溶液を得た。この溶液を室温で30分間撹拌した後、再び氷冷した。真空乾燥したアルデヒド20(0.47g,1.3mmol)を脱水テトラヒドロフラン(2.0mL)に溶解し、氷冷下でイリド溶液に加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で抽出した。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30mLで2回)及び飽和食塩水(30mLで2回)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(30mLで3回)で抽出した。全ての有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。残渣に10%酢酸エチル/ヘキサンを加えて懸濁し、ろ過して大半のトリフェニルホスフィンオキシドを除き、ろ液を減圧濃縮した。この粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜2%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、スチルベン21である下記の3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)−4’−O−ベンジルレスベラトロールを0.70g得た(収率100%)。
【0090】
【化20】
【0091】
cis−21:H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.38(m,5H,Bn),7.16(d,J=8.6,2H,H−2’,H−6’),6.81(d,J=8.6,2H,H−3’,H−5’),6.47(d,J=12.2,1H,H−7),6.39(d,J=12.2,1H,H−7’),6.35(d,J=2.2,2H,H−2,H−6),6.18(t,J=2.2,1H,H−4),5.01(s,2H,Bn),0.92(s,18H,TBS),0.20(s,12H,TBS).
【0092】
trans−21:H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.38(m,5H,Bn),6.95(d,J=8.6,2H,H−2’,H−6’),6.94(d,J=16.0,1H,H−7),6.86(d,J=8.6,2H,H−3’,H−5’),6.33(d,J=16.0,1H,H−7’),6.59(d,J=2.2,2H,H−2,H−6),6.23(t,J=2.2,1H,H−4),5.07(s,2H,Bn),0.99(s,18H,TBS),0.09(s,12H,TBS).
【0093】
<3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)ジヒドロレスベラトロール(22)>
スチルベン21(0.71g,1.3mmol)のエーテル溶液(6.0mL)に、10%水酸化パラジウム/活性炭(71mg)を加え、水素雰囲気下、22℃で4時間撹拌した。セライトを用いてパラジウムをろ過した後、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(5−10%酢酸エチル/ヘキサン)で精製してフェノール22である下記の3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)ジヒドロレスベラトロールを0.48g得た(収率85%)。
【0094】
【化21】
【0095】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ6.99(d,J=8.6,2H,H−2’,H−6’),6.71(d,J=8.6,2H,H−3’,H−5’),6.25(d,J=2.2,2H,H−2,H−6),6.16(t,J=2.2,1H,H−4),4.79(bs,1H,OH),2.75(m,4H,H−7,H−7’),0.95(s,18H,TBS),0.15(s,12H,TBS).
【0096】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ156.3(2C,C−3,C−5),153.6(C−4’),143.7(C−1),133.9(C−1’),129.5(2C,C−2’,C−6’),115.1(2C,C−3’,C−5’),113.8(2C,C−2,C−6),109.7(C−4),38.0(C−7),36.7(C−7’),25.7(TBS),18.2(TBS),−4.3(TBS).
【0097】
<4’−O−(2”,3”,4”,6”−テトラアセチル−β−グルコピラノシル)−3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)ジヒドロレスベラトロール(24)>
フェノール22(0.20g,0.44mmol)とイミデート23(0.40g,0.81mmol)を真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン(6.0mL)を加え、−20℃に冷却した。その溶液に0.11Mトリメチルシリルトリフラート/ジクロロメタン溶液(73μL,8.0μmol)を加え、80分間撹拌した。反応液にトリエチルアミンを加えて中和した後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20−40%酢酸エチル/ヘキサン)で精製してグリコシド24である下記の4’−O−(2”,3”,4”,6”−テトラアセチル−β−グルコピラノシル)−3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)ジヒドロレスベラトロールを0.28g得た(収率82%)。
【0098】
【化22】
【0099】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.08(d,J=8.6,2H,H−2’,H−6’),6.89(d,J=8.6,2H,H−3’,H−5’),6.27(d,J=2.2,2H,H−2,H−6),6.17(t,J=2.2,1H,H−4),5.30(t,J=9.4,1H,H−3”),5.26(dd,J=7.6,9.4,1H,H−4”),5.17(dd,J=7.6,9.4,1H,H−2”),5.03(d,J=7.6,1H,H−1”),4.29(dd,J=5.3,12.2,1H,H−6”),4.17(dd,J=2.4,12.2,1H,H−6”),3.84(ddd,J=2.4,5.3,7.6,1H,H−5”),2.79(m,4H,H−7,H−7’),2.09(s,3H,Ac),2.06(s,3H,Ac),2.05(s,3H,Ac),2.04(s,3H,Ac),0.95(s,18H,TBS),0.16(s,12H,TBS).
【0100】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ170.7(Ac),170.3(Ac),169.5(Ac),169.4(Ac),156.3(2C,C−3,C−5),155.1(C−4’),143.4(C−1),136.8(C−1’),129.5(2C,C−2’,C−6’),116.9(2C,C−3’,C−5’),113.7(2C,C−2,C−6),109.8(C−4),99.3(C−1”),72.7(C−5”),71.9(C−3”),71.1(C−2”),68.3(C−4”),61.9(C−6”),37.8(C−7),36.7(C−7’),25.7(TBS),20.7(Ac),20.63(Ac),20.61(Ac),20.59(Ac),18.2(TBS),−4.4(TBS).
【0101】
<4’−O−(2”,3”,4”,6”−テトラアセチル−β−グルコピラノシル)ジヒドロレスベラトロール(25)>
グリコシド24(0.10g,0.13mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2.0mL)を氷冷し、テトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物(0.12g,0.38mmol)を加えて80分間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で抽出した。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30mLで2回)及び飽和食塩水(30mLで2回)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(30mLで3回)で抽出した。全ての有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50−70%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、フェノール25である下記の4’−O−(2”,3”,4”,6”−テトラアセチル−β−グルコピラノシル)ジヒドロレスベラトロールを37mg得た(収率51%)。
【0102】
【化23】
【0103】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.04(d,J=8.6,2H,H−2’,H−6’),6.90(d,J=8.6,2H,H−3’,H−5’),6.19(t,J=2.2,1H,H−4),6.14(d,J=2.2,2H,H−2,H−6),5.30(t,J=9.1,1H,H−3”),5.25(dd,J=7.6,9.1,1H,H−4”),5.17(dd,J=7.5,9.1,1H,H−2”),5.08(d,J=7.5,1H,H−1”),4.28(dd,J=5.1,12.2,1H,H−6”),4.19(dd,J=2.5,12.2,1H,H−6”),3.84(ddd,J=2.5,5.1,7.6,1H,H−5”),2.81(m,4H,H−7,H−7’),2.08(s,3H,Ac),2.06(s,3H,Ac),2.05(s,3H,Ac),2.04(s,3H,Ac).
【0104】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ170.8(Ac),170.3(Ac),169.6(Ac),169.5(Ac),156.7(2C,C−3,C−5),154.7(C−4’),144.4(C−1),136.6(C−1’),129.6(2C,C−2’,C−6’),117.2(2C,C−3’,C−5’),108.1(2C,C−2,C−6),100.5(C−4),99.1(C−1”),72.8(C−5”),72.0(C−3”),71.0(C−2”),68.2(C−4”),61.9(C−6”),37.8(C−7),36.6(C−7’),20.72(Ac),20.65(Ac),20.62(Ac),20.60(Ac).
【0105】
<4’−O−(β−グルコピラノシル)ジヒドロレスベラトロール(7)>
アルゴン雰囲気下、フェノール25(34mg,61μmol)をメタノール(4.0mL)に溶解した。氷冷下、この溶液に5.2Mナトリウムメトキシド/メタノール溶液(79μL,0.41mmol)を滴下し、室温に戻して1時間撹拌した。反応液にアンバーライトIR−120Hを少しずつ加え、pH試験紙で反応液が中性になったことを確認した後、アンバーライトをろ過し、ろ液を減圧濃縮して、本発明に係るジヒドロレスベラトロール7である下記の4’−O−(β−グルコピラノシル)ジヒドロレスベラトロールを17mg得た(収率71%)。生理活性評価用のサンプルは、分取HPLC(28%MeCN/HO,流速1.0mL/分)によって精製した(溶出時間5.0分)。
【0106】
【化24】
【0107】
H−NMR(400MHz,CDOD)δ7.08(d,J=8.5,2H,H−2’,H−6’),6.99(d,J=8.5,2H,H−3’,H−5’),6.11(bs,2H,H−2,H−6),6.07(bs,1H,H−4),4.85(d,J=7.3,1H,H−1”),3.89(dd,J=1.6,11.8,1H,H−6”),3.69(dd,J=5.1,11.8,1H,H−6”),3.43(m,4H,H−2”,H−3”,H−4”,H−5”),2.80(dd,J=6.4,9.2,2H,H−7’),2.70(dd,J=6.4,9.2,2H,H−7).
【0108】
13C−NMR(100MHz,CDOD)δ159.3(2C,C−3,C−5),157.4(C−4’),145.4(C−1),137.1(C−1’),130.4(2C,C−2’,C−6’),117.6(2C,C−3’,C−5’),108.1(2C,C−2,C−6),102.5(C−1”),101.2(C−4),78.1(C−3”),78.0(C−5”),74.9(C−2”),71.4(C−4”),62.5(C−5”),39.3(C−7),38.0(C−7’).
【0109】
<4’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−グルコピラノシル)−3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)ジヒドロレスベラトロール(26)>
フェノール22(0.11g,0.24mmol)とイミデート15(0.20g,0.48mmol)とを真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン(4.0mL)を加えた。その溶液を−20℃に冷却し、0.11Mトリメチルシリルトリフラート/ジクロロメタン溶液(43μL,4.7μmol)を加え、40分間撹拌した。反応液にトリエチルアミンを加えて中和した後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20%〜25%酢酸エチル/ヘキサン)で精製してグリコシド26である下記の4’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−グルコピラノシル)−3,5−O−ジ(tert−ブチルジメチルシリル)ジヒドロレスベラトロールを86mg得た(収率50%)。
【0110】
【化25】
【0111】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.08(d,J=8.6,2H,H−2’,H−6’),6.89(d,J=8.6,2H,H−3’,H−5’),6.26(d,J=2.2,2H,H−2,H−6),6.17(t,J=2.2,1H,H−4),5,23(t,J=7.9,1H,H−3”),5.17(dd,J=6.1,7.9,1H,H−2”),5.11(d,J=6.1,1H,H−1”),5.01(dt,J=4.8,7.9,1H,H−4”),4.21(dd,J=4.8,12.0,1H,H−5”),3.50(dd,J=7.9,12.0,1H,H−5”),2.78(m,4H,H−7,H−7’),2.08(m,9H,Ac),0.97(m,18H,TBS),0.16(m,12H,TBS).
【0112】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ170.0(Ac),169.9(Ac),169.4(Ac),156.3(2C,C−3,C−5),154.8(C−4’),143.5(C−1),136.5(C−1’),129.5(2C,C−2’,C−6’),116.8(2C,C−3’,C−5’),113.7(2C,C−2,C−6),109.8(C−4),98.8(C−1”),70.8(C−3”),70.2(C−2”),68.5(C−4”),61.8(C−5”),37.8(C−7),36.8(C−7’),25.7(TBS),18.2(TBS),20.8(Ac),20.73(Ac),20.69(Ac),−4.4(TBS).
【0113】
<4’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)ジヒドロレスベラトロール(27)>
グリコシド26(0.13g,0.18mmol)のテトラヒドロフラン溶液(3.0mL)を氷冷し、テトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物(0.24g,0.76mmol)を加えて30分間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で抽出した。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30mLで2回)及び飽和食塩水(30mLで2回)で洗浄した。全ての水層を合わせて、酢酸エチル(30mLで3回)で抽出した。全ての有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50−55%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、フェノール27である下記の4’−O−(2”,3”,4”−トリアセチル−β−キシロピラノシル)ジヒドロレスベラトロールを90mg得た(収率100%)。
【0114】
【化26】
【0115】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.05(d,J=8.5,2H,H−2’,H−6’),6.89(d,J=8.5,2H,H−3’,H−5’),6.20(bs,1H,H−4),6.18(bs,2H,H−2,H−6),5,24(t,J=7.7,1H,H−3”),5.17(dd,J=6.1,7.7,1H,H−2”),5.13(d,J=6.1,1H,H−1”),5.01(ddd,J=4.8,7.7,7.9,1H,H−4”),4.21(dd,J=4.8,12.1,1H,H−5”),3.50(dd,J=7.9,12.1,1H,H−5”),2.77(m,4H,H−7,H−7’),2.09(m,9H,Ac).
【0116】
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ170.4(Ac),170.1(Ac),169.9(Ac),156.8(2C,C−3,C−5),154.6(C−4’),144.5(C−1),136.5(C−1’),129.6(2C,C−2’,C−6’),116.9(2C,C−3’,C−5’),108.0(2C,C−2,C−6),100.5(C−4),98.7(C−1”),70.8(C−3”),70.1(C−2”),68.5(C−4”),61.8(C−5”),37.6(C−7),36.5(C−7’),20.8(Ac),20.74(Ac),20.71(Ac).
【0117】
<4’−O−(β−キシロピラノシル)ジヒドロレスベラトロール(8)>
アルゴン雰囲気下、フェノール27(78mg,0.16mmol)をメタノール(6.0mL)に溶解した。氷冷下、この溶液に5.2Mナトリウムメトキシド/メタノール溶液(0.15mL,0.78mmol)を滴下し、室温に戻して1時間撹拌した。反応液にアンバーライトIR−120Hを少しずつ加え、pH試験紙で反応液が中性になったことを確認した後、アンバーライトをろ過し、ろ液を減圧濃縮して、本発明に係るジヒドロレスベラトロール8である下記の4’−O−(β−キシロピラノシル)ジヒドロレスベラトロールを58mg得た(収率100%)。生理活性評価用のサンプルは、分取HPLC(30%MeCN/HO,流速1.0mL/分)によって精製した(溶出時間6.0分)。
【0118】
【化27】
【0119】
H−NMR(400MHz,CDOD)δ7.07(d,J=8.2,2H,H−2’,H−6’),6.94(d,J=8.2,2H,H−3’,H−5’),6.11(bs,2H,H−2,H−6),6.07(bs,1H,H−4),4.80(d,J=7.2,1H,H−1”),3.89(dd,J=5.4,11.4,1H,H−5”),3.55(m,1H,H−4”),3.40(m,2H,H−3”,H−5”),3.30(m,1H,H−2”),2.79(dd,J=6.9,9.5,2H,H−7’),2.69(dd,J=6.9,9.5,2H,H−7).
【0120】
13C−NMR(100MHz,CDOD)δ159.3(2C,C−3,C−5),157.2(C−4’),145.4(C−1),137.3(C−1’),130.4(2C,C−2’,C−6’),117.7(2C,C−3’,C−5’),108.1(2C,C−2,C−6),103.1(C−1”),101.2(C−4),77.8(C−3”),74.8(C−2”),71.1(C−4”),66.9(C−5”),39.4(C−7),38.0(C−7’).
【0121】
[チロシナーゼ阻害活性の評価]
DOPA49mgを精製水に溶解し、5mMのDOPA水溶液を調製した。合成した各化合物3,4,7,8をDMSOに溶解し、30mMのサンプル溶液を調製した。チロシナーゼは、マッシュルーム由来のチロシナーゼ(「E.C.1.14.18.1」、購入先:Sigma−Aldrich)を用い、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、0.67mg/mLのチロシナーゼ溶液を調製した。
【0122】
キュベット(3mL容)に、DMSOで10段階〜100段階に希釈したサンプル溶液0.1mL、250mMリン酸ナトリウム緩衝液0.6mL、5mMのDOPA水溶液0.3mL、精製水1.9mL及びチロシナーゼ溶液0.1mLを加え、よく混合し、分光光度計で475nmの吸光値の変化を計測した。各測定は30℃で30秒間行い、1秒ごとに吸光値をコンピュータに保存した。得られた吸光度を直線回帰し、ブランク測定時の傾きを100%として50%阻害濃度(IC50)を算出した。表1中のIC50に示されるデータは、50%阻害する各誘導体の濃度を示し、値が低いほどチロシナーゼに対する阻害活性が強いことを示している。
【0123】
【表1】
【0124】
表1に示すように、本発明に係るジヒドロレスベラトロール誘導体の化合物3,4は、高いチロシナーゼ阻害活性を示した。特に新規配糖体である化合物4は、極めて高いチロシナーゼ活性阻害特性を示した。また、化合物4よりも親水性のある化合物4も高い阻害活性を示した。また、化合物7及び化合物8は、化合物1,2よりもチロシナーゼ阻害活性は弱いものの、天然物由来の構造に近い化合物であるため、弱い阻害活性を活かした用途、例えば水溶性のローション等の使用に応用できる。
【0125】
なお、表1中のα−アルブチンとβ−アルブチンのIC50は、Biosci. Biotech. Biochem., 59(1)、143〜144(1995)に記載の結果であり、本発明に係る化合物3,4は、アルブチンよりも高いチロシナーゼ活性阻害性能を有し、化合物7,8は、α−アルブチンと同程度、又はβ−アルブチンよりも高いチロシナーゼ活性阻害性能を有している。
【0126】
[応用]
化粧水への応用として、以下のように配合して調製した。調製法は、A相、B相ともに50℃で加温溶解し、B相をA相に撹拌しながら徐々に加えて可溶化した。撹拌しながら冷却し、30℃で撹拌を止めた。
【0127】
A相:化合物3…0.1質量%
クエン酸…0.1質量%
クエン酸ナトリウム…0.3質量%
精製水で全量…100質量%
B相:テトラオレイン酸POE(60)ソルビトール…0.9質量%
モノオレイン酸ソルビタン…0.1質量%
オリーブ油…0.1質量%
ジプロピレングリコール…5.0質量%
エタノール…10.0質量%
【0128】
美白クリームへの応用として、以下のように配合して調製した。調製法は、A相、B相ともに80℃で加温溶解し、C相は撹拌溶解した。B相をAに撹拌しながら冷却し、50℃でC相を徐々に加え、35〜30℃で撹拌を止めた。
【0129】
A相:POE(40)ステアリン酸…2.0質量%
自己乳化型モノステアリン酸グリセリル…3.0質量%
スクワラン…8.0質量%
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル…8.0質量%
セタノール…4.5質量%
メチルポリシロキサン(300cSt)…0.2質量%
防腐剤…適量
B相:ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液)…5.0質量%
1,3−ブチレングリコール…7.0質量%
精製水で全量…適量
C相:化合物7…0.5質量%
クエン酸ナトリウム…0.5質量%
エデト酸四ナトリウム…0.2質量%
精製水で全量…100質量%
図1
図2