特許第6262570号(P6262570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262570
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】回路遮断器の電磁引き外し装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/36 20060101AFI20180104BHJP
   H01H 71/24 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01H73/36 E
   H01H71/24
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-41855(P2014-41855)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-170383(P2015-170383A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 啓幸
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−68007(JP,A)
【文献】 特開2010−135306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 71/00−83/22
H01H 69/00−69/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向へ延びる帯状の導電部の前面に、熱応動素子が上下方向に起立する姿勢で固着された電路に対して組み付けられ、前記導電部に所定値を超える電流が流れると作動する回路遮断器の電磁引き外し装置であって、
前記導電部及び前記熱応動素子を後側から収容した状態で前記導電部に固定される固定電磁片と、
下側に前記固定電磁片に対して前側から接触/解離する板状部が、上側に前記電路を遮断する動作を引き起こすための操作部が夫々設けられているとともに、前記板状部と前記操作部との間となる位置で、前記固定電磁片に対し左右方向を軸として回動可能に軸着される可動電磁片とを有し、
前記導電部に所定値を超える電流が流れると、前記板状部が前記固定電磁片に接触する側へ前記可動電磁片が回動するとともに、
前記固定電磁片と前記可動電磁片の前記板状部とに、少なくとも一部が前記熱応動素子よりも後側まで突出する一対の腕部を夫々設け、各前記腕部における前記熱応動素子よりも後側となる箇所で前記固定電磁片と前記可動電磁片とを軸着したことを特徴とする回路遮断器の電磁引き外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電路に短絡電流等の過大電流が流れた場合に、それを検知して電路を遮断させるための回路遮断器の電磁引き外し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な回路遮断器の電磁引き外し装置としては、たとえば特許文献1に記載されているように、電路を囲むように略コ字状に折り曲げ形成された固定電磁片と、下側に板状部が、上側に電路を遮断する動作を引き起こすための操作部が夫々設けられているとともに、固定電磁片に対して板状部と操作部との間となる位置で回動可能に取り付けられており、回動によって板状部が固定電磁片の開放側に接触/解離する可動電磁片と、板状部を解離状態で保持する付勢手段とを有するものがある。そして、電路に短絡電流等の過大な電流が流れると、電路の周囲に発生する渦電流により可動電磁片の板状部に固定電磁片側への電磁力(吸着力)がかかり、当該吸着力により板状部が付勢手段の保持力に抗して回動することで操作部も回動し、結果として電路を遮断する動作を引き起こすようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−50754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電磁引き外し装置では、電路に固着された熱応動素子を左右から挟むような位置に可動電磁片を回動させるための軸部を設けている。したがって、可動電磁片の一端側と固定電磁片との距離が遠くなるため、電路に過大な電流が流れた際に可動電磁片の板状部にかかる吸着力が弱いという問題がある。また、吸着力が最もかかる箇所は、可動電磁片の板状部にある可動電磁片の重心であるが、重心と可動電磁片の回動軸との距離が近いため、可動電磁片が回動した際に可動電磁片の操作部に発生する力、すなわち電路を遮断する動作を引き起こすための力が弱いという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、可動電磁片の板状部にかかる吸着力が強い上、可動電磁片が回動した際に可動電磁片の操作部に大きな力を発生させることができる回路遮断器の電磁引き外し装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、上下方向へ延びる帯状の導電部の前面に、熱応動素子が上下方向に起立する姿勢で固着された電路に対して組み付けられ、前記導電部に所定値を超える電流が流れると作動する回路遮断器の電磁引き外し装置であって、前記導電部及び前記熱応動素子を後側から収容した状態で前記導電部に固定される固定電磁片と、下側に前記固定電磁片に対して前側から接触/解離する板状部が、上側に前記電路を遮断する動作を引き起こすための操作部が夫々設けられているとともに、前記板状部と前記操作部との間となる位置で、前記固定電磁片に対し左右方向を軸として回動可能に軸着される可動電磁片とを有し、前記導電部に所定値を超える電流が流れると、前記板状部が前記固定電磁片に接触する側へ前記可動電磁片が回動するとともに、前記固定電磁片と前記可動電磁片の前記板状部とに、少なくとも一部が前記熱応動素子よりも後側まで突出する一対の腕部を夫々設け、各前記腕部における前記熱応動素子よりも後側となる箇所で前記固定電磁片と前記可動電磁片とを軸着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固定電磁片と可動電磁片の板状部とに、少なくとも一部が熱応動素子よりも後側まで突出する一対の腕部を夫々設け、各腕部における熱応動素子よりも後側となる箇所で固定電磁片と可動電磁片とを軸着している。すなわち、熱応動素子の後側に可動電磁片の回動軸を設けている。したがって、解離状態にある固定電磁片と可動電磁片の板状部との前後方向での距離を従来よりも近づけることができ、短絡電流等の所定値を超える過大な電流が流れた際に、板状部に従来よりも大きな電磁力を作用させることができる。
また、回動軸と可動電磁片の板状部にある重心との位置を従来よりも離すことができるため、回動した際に操作部に従来よりも大きな力を発生させることができ、電路を遮断する動作を確実に引き起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】回路遮断器の一部を示した斜視説明図である。
図2図1に示す回路遮断器から本体ケースを取り外した状態を示した斜視説明図である。
図3】電路に組み付けられた電磁引き外し装置を前側から示した斜視説明図である。
図4】電路に組み付けられた電磁引き外し装置を後側から示した斜視説明図である。
図5】(a)は、電路に組み付けられた電磁引き外し装置の後面側を示した説明図であり、(b)は、(a)中のA−A線断面を示した説明図である。
図6】電路を含めて分解状態にある電磁引き外し装置を前側から示した斜視説明図である。
図7】電路を含めて分解状態にある電磁引き外し装置を後側から示した斜視説明図である。
図8】通常状態にある電磁引き外し装置を側方から示した説明図である。
図9】短絡電流が流れる等して作動した状態にある電磁引き外し装置を側方から示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる回路遮断器の電磁引き外し装置について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、回路遮断器1の一部を示した斜視説明図である。図2は、図1に示す回路遮断器1から本体ケース5を取り外した状態を示した斜視説明図である。
回路遮断器1は、合成樹脂製の本体ケース5の前部に電源側端子2を、後部に負荷側端子3を夫々備えてなるものであって、本体ケース5内には、電源側端子2と負荷側端子3とを電気的に接続すべく、3つの電路4、4・・が左右方向に並設されている。また、各電路4毎に、電路4を開閉する固定接点6と可動接点7とからなる接点部、接点部を開操作するための遮断機構部(図示せず)、電路4に短絡電流等の過大な電流が流れると遮断機構部を動作させるべく作動する電磁引き外し装置10、電磁引き外し装置10の作動をうけて遮断機構部を直接動作させる操作部材8等が設けられている。なお、9は、電路4をオン/オフ操作するための操作レバーである。
【0011】
ここで、本発明の要部となる電磁引き外し装置10について、図3図9をもとに詳細に説明する。
図3は、電路4に組み付けられた電磁引き外し装置10を前側から示した斜視説明図である。図4は、電路4に組み付けられた電磁引き外し装置10を後側から示した説明図である。図5(a)は、電路4に組み付けられた電磁引き外し装置10の後面側を示した説明図であり、図5(b)は、図5(a)中のA−A線断面を示した説明図である。図6は、電路4を含めて分解状態にある電磁引き外し装置10を前側から示した斜視説明図である。図7は、電路4を含めて分解状態にある電磁引き外し装置10を後側から示した斜視説明図である。図8は、通常状態にある電磁引き外し装置10を側方から示した説明図である。図9は、短絡電流が流れる等して作動した状態にある電磁引き外し装置10を側方から示した説明図である。
【0012】
まず、電磁引き外し装置10が組み付けられる箇所の電路4の構成について説明すると、当該箇所での電路4は、負荷側端子3を構成する負荷座32を有する第1電路部材31と、第1電路部材31と一体化され、更に前方(電源側端子2側)へ延びる第2電路部材33と、第2電路部材33に固定される熱応動素子34とから構成されている。第1電路部材31は、上述したように負荷座32を有しているとともに、該負荷座32から前方へ延びる帯状の導電部35を有している。そして、導電部35の前端部は、上方へ折り曲げられており、第2電路部材33と一体化するための一体化部として機能するようになっている。第2電路部材33は、所謂ヒーターとして機能するものであって、連結孔を有する板状の連結部36と、連結部36の後端から上方へ立ち上げられた固定部37と、固定部37の上端から更に折り曲げられてなる一体化部38とを有する。そして、第1電路部材31の導電部35の前端と第2電路部材33の一体化部38とを一体化するとともに、熱応動素子34を、その下部が固定部37の前面に当接し、その上部が固定部37の上端を越えて大きく上方へ突出するような起立姿勢として固定部37に固定することにより、電路4は形成されている。なお、39は、熱応動素子34の上端部に取り付けられ、電路4に過大な電流が流れて熱応動素子34が変形した際に遮断機構部を作動させるための作動部材である。また、40は、熱応動素子34と固定部37、更には後述する固定電磁片11を一体化するためのリベットである。
【0013】
上述したような電路4に対して組み付けられる電磁引き外し装置10は、第2電路部材33の固定部37に固定される固定電磁片11と、固定電磁片11に対して回動可能に取り付けられ、回動により所定部位(後述する板状部12a)が固定電磁片11に対して接触/解離する可動電磁片12と、所定部位と固定電磁片11との解離状態を保持するコイルバネ13と、可動電磁片12の回動軸となる軸部材14とを備えてなる。固定電磁片11は、鉄等の常磁性材料で形成され、略コ字状に折り曲げて形成された背面部11a及び左右側面部11b、11bを有している。そして、折り曲げることで形成された内部空間を、第2電路部材33の固定部37を収容する電路収容空間15としている。また、各側面部11bの上部には、背面部11aの上端を越えて上方へ突出する腕部11cが設けられている。腕部11cは、側面部11bの前部から後斜め上方へ突出しており、先端部には第1軸孔16が穿設されている。なお、17は、固定部37の後面側で、熱応動素子34と共に固定電磁片11を固定部37と一体化するための固定孔である。
【0014】
一方、可動電磁片12は、固定電磁片11と同様に鉄等の常磁性材料で形成され、固定電磁片11と略同じ左右幅を有する平坦な板状部12aと、板状部12aの左右側部の上端から更に上方へ突出する左腕部18及び右腕部19とを設けてなるもので、重心が板状部12aの略中央上寄りに位置するように成形されている。左腕部18は、固定電磁片11の腕部11cの如く板状部12aから後斜め上方へ延びる第1腕部18aと、第1腕部18aの先端から屈曲して前斜め上方へ延びる第2腕部18bとを有しており、第2腕部18bの先端に前方へ突出する凸部が設けられ、該凸部が、操作部材8を操作するための操作部22として機能するようになっている。また、第1腕部18aの先端(左腕部18の屈曲部で、板状部12aと操作部22との間となる位置)に、第2軸孔20が穿設されている。さらに、第1腕部18aの板状部12a寄りとなる位置には、下方へ延びる舌状の係止片21が設けられており、固定電磁片11の腕部11cに係止することで、当該係止位置を越えて可動電磁片12の板状部12aが固定電磁片11からの解離方向へ回動することを規制可能としている。一方、右腕部19は、左腕部18の第1腕部18aと対向状に設けられており、右腕部19の先端部で、左腕部18の第2軸孔20と対向する位置に第2軸孔20が穿設されている。なお、左腕部18と右腕部19との左右方向での距離は、固定電磁片11の腕部11c、11c間の距離と略同じとなっている。
【0015】
そして、電磁引き外し装置10は、以下のようにして電路4に組み付けられる。まず、固定電磁片11を固定部37の後方から密着させることで、電路収容空間15内に固定部37を収容し、リベット40、40を用いて熱応動素子34、固定部37、及び固定電磁片11を一体化する。このとき、固定電磁片11の腕部11c、11cの先端部(特に第1軸孔16、16の穿設箇所)が熱応動素子34よりも後側まで突出した状態となる。次に、可動電磁片12の板状部12aを熱応動素子34の前側に位置させた状態で、左側の腕部11cの外面に左腕部18の内面を、右側の腕部11cの内面に右腕部19の外面を夫々当接させて(左から、左腕部18、左側の腕部11c、右腕部19、右側の腕部11cの順となるように腕部同士を当接させて)第1軸孔16、16と第2軸孔20、20とを一致させる。最後に、両軸孔16、20を貫通するように軸部材14を挿通させて固定電磁片11と可動電磁片12とを軸着すればよい。すると、可動電磁片12の板状部12aと固定電磁片11とにより固定部37及び熱応動素子34の下部を囲った状態で、可動電磁片12が固定電磁片11に対し左右方向を軸として回動可能に取り付けられることになり、電磁引き外し装置10の電路4への組み付けは完了となる。なお、この組み付け状態における固定電磁片11と可動電磁片12との軸着位置は、当然ながら熱応動素子34の後側となる。
【0016】
なお、コイルバネ13は、左側の腕部11cと右腕部19との間にわたり、軸部材14に巻回するような格好で取り付けられる。このとき、コイルバネ13は、左右方向(軸方向)で縮ませた状態で左側の腕部11cと右腕部19との間に収容されており、左側の腕部11c及び右腕部19を夫々外側へ(すなわち、左側の腕部11cについては左腕部18との当接側へ、右腕部19については右側の腕部11cとの当接側へ)押圧するようになっている。さらに、コイルバネ13の一端は可動電磁片12の左腕部18の第2腕部18bの前縁に、他端は固定電磁片11の右側の腕部11cの前縁に夫々掛止しており、可動電磁片12の板状部12aを固定電磁片11から解離する方向へ付勢し、板状部12aと固定電磁片11との解離状態を保持することになる。
【0017】
上述の如くして電路4に組み付けられた電磁引き外し装置10は、通常、コイルバネ13の付勢力によって可動電磁片12の板状部12aと固定電磁片11の開放された前面とが解離した状態にある(図8)。ここで電路4に短絡電流等の所定値を超える過大な電流が流れると、第2電路部材33の周囲に発生する渦電流の作用で、可動電磁片12の板状部12aが固定電磁片11に接触する方向へ電磁力(すなわち吸着力)が発生する。その結果、コイルバネ13の付勢力に抗して可動電磁片12が軸部材14を軸として回動し、可動電磁片12の板状部12aが固定電磁片11(特に左右側面部11bの前端面)に密着する。したがって、可動電磁片12の操作部8は前方へ移動することになり、操作部材9が操作され(図9)、遮断機構部により引き外し動作が行われ、接点部が解離動作して電路4が遮断される。
【0018】
以上のような構成を有する電磁引き外し装置10によれば、固定電磁片11に後側へ突出する一対の腕部11c、11cを設けるとともに、可動電磁片12の板状部12aにも後側へ突出する一対の腕部18、19を設け、各腕部11c、18、19の熱応動素子34よりも後側となる箇所で固定電磁片11と可動電磁片12とを軸着することにより、熱応動素子34よりも後側に可動電磁片12の回動軸を設けている。したがって、通常時(すなわち、板状部12aと固定電磁片11とが解離した状態)における固定電磁片11と可動電磁片12の板状部12aとの前後方向での距離を従来よりも近づけることができ、電路4に短絡電流等の過大な電流が流れた際に、板状部12aに従来よりも大きな吸着力を作用させることができる。
【0019】
また、上述の如く固定電磁片11と可動電磁片12とを軸着したことにより、可動電磁片12が回動する際の回動軸と可動電磁片12の重心との距離を従来よりも離すことができる。ここで、重心に同じ大きさの吸着力がかかるとすると、作用点となる操作部8に発生する力は、重心の回動軸からの距離が離れていればいるほど、強くなる。したがって、上述したように回動軸と可動電磁片12の重心との距離を従来よりも離した電磁引き外し装置10によれば、可動電磁片12が回動する際に、操作部8に従来よりも大きな力を発生させることができ、遮断機構部を確実に作動させることができる。
【0020】
さらに、固定電磁片11と可動電磁片12との軸着部において、左側の腕部11cの外面に左腕部18の内面を、右側の腕部11cの内面に右腕部19の外面を夫々当接させるとともに、コイルバネ13を、左右方向で縮ませた状態で左側の腕部11cと右腕部19との間に収容している。そして、コイルバネ13により、内側に位置する左側の腕部11c及び右腕部19を夫々外側、すなわち左腕部18や右側の腕部11c側へ押圧している。したがって、可動電磁片12が回動するほどの電流が流れていないもの拘わらず、可動電磁片12が軸方向でガタ付くといった事態の発生を防止することができる上、可動電磁片12の回動時に発生するビリツキ音や唸り音を抑制することもできる。
加えて、左から左腕部18、左側の腕部11c、右腕部19、右側の腕部11cの順となるように腕部同士を当接させているため、コイルバネ13の軸方向への付勢力を固定電磁片11と可動電磁片12との両方に直接作用させることができ、ガタ付き防止やビリツキ音や唸り音の抑制といった効果を一層顕著なものとすることができる。
【0021】
なお、本発明に係る回路遮断器の電磁引き外し装置は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、回路遮断器の全体的な構成は勿論、固定電磁片や可動電磁片等の構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0022】
たとえば、上記実施形態では、電磁引き外し装置の組み付け箇所の電路を第1電路部材と第2電路部材とから構成しているが、第1電路部材の代わりに負荷座と熱応動素子とを電線等により接続するような電路、すなわち熱応動素子を電路の一部として構成するような電路としても何ら問題はない。
また、上記実施形態では、可動電磁片の左腕部に操作部を設けているが、右腕部に操作部を設けても何ら問題はないし、同様に係止片を右腕部に設けることも当然可能である。
さらに、上記実施形態では、左から左腕部、左側の腕部、右腕部、右側の腕部の順となるように腕部同士を当接させているが、左から左側の腕部、左腕部、右側の腕部、右腕部の順となるように腕部同士を当接させる、すなわち内外の関係を逆にしてもよく、固定電磁片における一つの腕部と可動電磁片における一つの腕部とで一組とすると、一方の組において、固定電磁片の腕部の外側に可動電磁片の腕部を位置させ、他方の組において、固定電磁片の腕部の内側に可動電磁片の腕部を位置させてもよい。一方、両組において固定電磁片の腕部の外側に可動電磁片の腕部を位置させたり、反対に可動電磁片の腕部の外側に固定電磁片の腕部を位置させることも可能である。
【0023】
さらに、可動電磁片の板状部を固定電磁片から解離する方向へ付勢する付勢手段についても、上記実施形態のコイルバネに限定されることはなく、板状部の後面と熱応動素子の前面との間に板バネを介在させる等の別の構成を採用してもよい。
加えて、上記実施形態では、可動電磁片と固定電磁片との両方に軸孔を設け、全ての軸孔を貫通するように軸部材を取り付けることにより、可動電磁片を固定電磁片に対して回動可能に取り付けているが、たとえば可動電磁片と固定電磁片との何れか一方に軸となる突起を、他方に突起を挿通可能な軸孔を夫々設けるといった構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1・・回路遮断器、4・・電路、8・・操作部材、10・・電磁引き外し装置、11・・固定電磁片、11a・・背面部、11b・・側面部、11c・・腕部、12・・可動電磁片、12a・・板状部、13・・コイルバネ、14・・軸部材、15・・電路収容空間、16・・第1軸孔、18・・左腕部(腕部)、18a・・第1腕部、18b・・第2腕部、19・・右腕部(腕部)、20・・第2軸孔、21・・係止片、22・・操作部、31・・第1電路部材(電路)、33・・第2電路部材(電路)、34・・熱応動素子、37・・固定部(導電部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9