特許第6262571号(P6262571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262571
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20180104BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20180104BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20180104BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20180104BHJP
   H04N 5/20 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G09G3/36
   G09G3/20 621F
   G09G3/20 612U
   G09G3/20 641R
   G09G3/20 641P
   G02F1/133 505
   H04N1/40 101E
   H04N5/20
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-44839(P2014-44839)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169807(P2015-169807A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591128453
【氏名又は名称】株式会社メガチップス
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴教
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−119950(JP,A)
【文献】 特開2010−2668(JP,A)
【文献】 特開2008−281734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20−3/38
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在の画像データの画素値の最大値を超えない範囲内で、第1設定値以下の画素値を含む前記現在の画像データの第1範囲の画素値を、前記第1範囲よりも広い範囲である、現在の変換画像データの第2範囲の画素値に変換する第1画素値変換回路と、
第1ルックアップテーブルを用いて、前記現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値を出力する第1オーバドライブ処理回路と、
第2ルックアップテーブルを用いて、前記現在の変換画像データの画素値および前記過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の保存用の画像データの画素値を出力する第2オーバドライブ処理回路と、
前記保存用の画像データの画素値の最大値を超えない範囲内で、前記保存用の画像データの前記第1範囲の画素値を、保存用の変換画像データの前記第2範囲の画素値に変換する第2画素値変換回路と、
前記保存用の変換画像データを不可逆圧縮した圧縮画像データを出力する圧縮回路と、
前記圧縮画像データを記憶するメモリ回路と、
前記メモリ回路から読み出された圧縮画像データを伸張し、前記過去の変換画像データとして出力する伸張回路とを備え、
前記第1オーバドライブ処理回路および第2オーバドライブ処理回路は、それぞれ、前記現在の変換画像データの画素値および前記過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値として、前記現在の変換画像データの画素値および前記過去の変換画像データの画素値に対して前記第1画素値変換回路および前記第2画素値変換回路による変換の逆変換を行って得られる前記現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値を出力するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1ルックアップテーブルおよび前記第2ルックアップテーブルには、それぞれ、前記現在の変換画像データの画素値の代表値および前記過去の変換画像データの画素値の代表値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値として、前記現在の画像データの画素値および前記過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値が格納されている請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1画素値変換回路は、さらに、前記第1設定値よりも大きい第2設定値よりも大きく、前記第2設定値よりも大きい第3設定値以下の画素値を含む前記現在の画像データの第3範囲の画素値を、前記第2範囲の画素値よりも大きく、前記第3範囲よりも狭い範囲である、前記現在の変換画像データの第4範囲の画素値に変換するものであり、
前記第2画素値変換回路は、さらに、前記保存用の画像データの前記第3範囲の画素値を、前記保存用の変換画像データの前記第4範囲の画素値に変換するものである請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1画素値変換回路および前記第2画素値変換回路は、前記第1範囲を、第5範囲および前記第5範囲の画素値よりも大きい画素値を含む第6範囲に分割し、かつ、前記第2範囲を、第7範囲および前記第7範囲よりも大きい画素値を含む第8範囲に分割し、前記第5範囲の画素値を前記第7範囲の画素値に変換する場合の倍率を、前記第6範囲の画素値を前記第8範囲の画素値に変換する場合の倍率よりも大きくするものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の応答速度が遅いことを補う一般的な方式であるオーバドライブ方式を採用する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル用の画像処理装置において、液晶パネルの応答速度を改善するために一般的にオーバドライブ方式が用いられている。オーバドライブ方式では、現在の画像データの画素値と過去の画像データの画素値とを比較して、オーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値が決定される。一般的には、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値からルックアップテーブルを参照して、オーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値が決定される。
【0003】
画像データの画素値を比較するには、過去の画像データを保存しておく必要がある。しかし、画像データをそのまま保存するとデータが膨大となり、大容量メモリが必要となってコストが増大するため、コストダウンの観点から画像データを圧縮して保存することが一般的に行われている。画像データの圧縮方式は様々なものが提案されているが、その多くは非可逆圧縮である場合が多く、圧縮/伸張過程で発生する誤差(圧縮誤差)により画質が劣化する場合がある。これは暗部(画素値が小さい部分)で顕著に見られる。
【0004】
図4は、従来の画像処理装置の構成を表す一例のブロック図である。同図に示す画像処理装置30は、第1オーバドライブ処理回路36と、第2オーバドライブ処理回路38と、圧縮回路40と、メモリ回路42と、伸張回路44とを備えている。
【0005】
画像処理装置30では、第1オーバドライブ処理回路36および第2オーバドライブ処理回路38により、それぞれ、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値を入力とする第1ルックアップテーブル37および第2ルックアップテーブル39を用いて、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値が出力される。
【0006】
第1ルックアップテーブル37および第2ルックアップテーブル39には、現在の画像データの画素値の代表値および過去の画像データの画素値の代表値に対応するオーバドライブ処理後の保存用の画像データの画素値が格納されている。
【0007】
現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値がともに代表値である場合、第1オーバドライブ処理回路36からは、第1ルックアップテーブル37から出力される、現在の画像データの画素値の代表値および過去の画像データの画素値の代表値に対応する格子点に格納されているオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値がそのまま出力される。
【0008】
一方、現在の画像データの画素値または過去の画像データの画素値が代表値ではない場合、第1オーバドライブ処理回路36からは、例えば、第1ルックアップテーブル37から出力される、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値の近傍の複数の格子点に格納されているオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値を用いて補間演算等が行われ、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値が出力される。
【0009】
第2オーバドライブ処理回路38についても同様である。
【0010】
第1ルックアップテーブル37および第2ルックアップテーブル39としては、図5に示すように、画素値が均等に割り付けられたものや、図6に示すように、画素値が不均等に割り付けられたものが用いられる。
図5および図6は、現在の画像データが8ビットであり、その画素値が0〜255までの値の場合のルックアップテーブルの例である。図5に示すルックアップテーブルでは、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値が、それぞれ16画素毎に均等に割り付けられている。一方、図6に示すルックアップテーブルでは、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値が不均等に割り付けられている。
【0011】
続いて、圧縮回路40により、保存用の画像データが不可逆圧縮されて圧縮画像データが出力され、メモリ回路42に記憶される。メモリ回路42から読み出された圧縮画像データは、伸張回路44により伸張され、過去の画像データとして出力される。
【0012】
これ以後は、前述の動作の繰り返しとなる。
【0013】
前述のように、過去の画像データを非可逆圧縮する場合、圧縮誤差が発生する。そのため、第1オーバドライブ処理回路36および第2オーバドライブ処理回路38に入力される過去の画像データの画素値は圧縮誤差を含んだ値となる。
【0014】
この場合、明部(画素値が比較的大きい部分)と比較して暗部(画素値が比較的小さい部分)の方が、画素値に対する圧縮誤差の割合が大きくなるため、画素値の変化に対する感度が高くなる。従って、圧縮誤差による画素値の変化量が小さい場合でも、例えば、画素値が1変化した場合でも、明部よりも暗部の方が、人間の目の感覚では大きく輝度が変化したように感じられる。
【0015】
そのため、従来技術でも、暗部を細かく刻んで不均等に割り付けられたルックアップテーブルを用いて画質を向上させる手法が知られているが、圧縮誤差により十分な画質が得られていないという問題がある。また、暗部が細かく刻まれていることを考慮せずに圧縮した場合、圧縮誤差は元データの画素値によらずほぼ一定の値となるため、暗部がより圧縮誤差による影響を受けることになる。
【0016】
ここで、本発明に関連性のある先行技術文献として、特許文献1〜5がある。
【0017】
特許文献1には、符号化部により、各画素に対応する分と、画面に表示したときに画面上で該画素の周囲に存在する画素に対応する分とを、両者の平均に置き換えてフレームメモリに圧縮データを記憶し、復号化部により、フレームメモリから圧縮データを読み出し、前述の平均値を、対応する各画素用の表示データとして割り当てるデータ変換装置が記載されている。
【0018】
特許文献2には、RGB−YUV変換部により、現フレームデータをRGBフォーマットからYUVフォーマットに変換し、圧縮部により、YUVフォーマットのフレームデータを圧縮してメモリに格納し、YUV−RGB再変換部により、YUVフォーマットで保存されていたフレームデータをRGBフォーマットに再変換し、オーバードライブ量算出部により、RGBフォーマットで入力される現フレームデータと前フレームデータにもとづきオーバードライブ量を決定するオーバードライブ回路が記載されている。
【0019】
特許文献3には、圧縮回路により、前フレーム画像データを圧縮して圧縮済み前フレーム画像データをフレームメモリに記憶し、伸張回路により、フレームメモリから読み出した圧縮済み前フレーム画像データを伸張し、LUTにより、前フレームおよび現フレームの輝度値に近接する代表値の組合せに対応する複数の代表オーバードライブ値に基づいて補正値を生成し、補正回路により、補正値に基づいて現フレームの画像データを補正し、出力画像データを生成するオーバードライブ回路が記載されている。
【0020】
特許文献4には、現フレームの画像データに対応する圧縮データに対して圧縮処理及び展開処理を行って得られる現フレーム圧縮展開データと前フレームの画像データに対して圧縮処理及び展開処理を行って得られる前フレーム圧縮展開データとからオーバードライブ処理後データの生成及びオーバードライブ駆動の適正な方向の検出を行い、検出された適正な方向に応じてオーバードライブ処理後データを補正して補正ありオーバードライブ処理後データを生成する表示装置の表示装置制御回路が記載されている。
【0021】
特許文献5には、フレームメモリに格納された入力画像に基づいて、第1のオーバードライブ処理を行う第1の処理と、入力画像に基づいて、第2のオーバードライブ処理及び第2のオーバードライブ処理以外の他の処理を行う第2の処理と、を行う画像処理部を備える画像処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006−47993号公報
【特許文献2】特開2006−113359号公報
【特許文献3】特開2008−281734号公報
【特許文献4】特開2013−11769号公報
【特許文献5】特開2014−2304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、過去の画像データを非可逆圧縮した場合でも、暗部に対する圧縮誤差の影響を低減し、暗部における画質を向上させることができる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、現在の画像データの画素値の最大値を超えない範囲内で、第1設定値以下の画素値を含む前記現在の画像データの第1範囲の画素値を、前記第1範囲よりも広い範囲である、現在の変換画像データの第2範囲の画素値に変換する第1画素値変換回路と、
第1ルックアップテーブルを用いて、前記現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値を出力する第1オーバドライブ処理回路と、
第2ルックアップテーブルを用いて、前記現在の変換画像データの画素値および前記過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の保存用の画像データの画素値を出力する第2オーバドライブ処理回路と、
前記保存用の画像データの画素値の最大値を超えない範囲内で、前記保存用の画像データの前記第1範囲の画素値を、保存用の変換画像データの前記第2範囲の画素値に変換する第2画素値変換回路と、
前記保存用の変換画像データを不可逆圧縮した圧縮画像データを出力する圧縮回路と、
前記圧縮画像データを記憶するメモリ回路と、
前記メモリ回路から読み出された圧縮画像データを伸張し、前記過去の変換画像データとして出力する伸張回路とを備え、
前記第1オーバドライブ処理回路および第2オーバドライブ処理回路は、それぞれ、前記現在の変換画像データの画素値および前記過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値として、前記現在の変換画像データの画素値および前記過去の変換画像データの画素値に対して前記第1画素値変換回路および前記第2画素値変換回路による変換の逆変換を行って得られる前記現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値を出力するものであることを特徴とする画像処理装置を提供するものである。
【0025】
ここで、前記第1ルックアップテーブルおよび前記第2ルックアップテーブルには、それぞれ、前記現在の変換画像データの画素値の代表値および前記過去の変換画像データの画素値の代表値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値として、前記現在の画像データの画素値および前記過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値が格納されていることが好ましい。
【0026】
また、前記第1画素値変換回路は、さらに、前記第1設定値よりも大きい第2設定値よりも大きく、前記第2設定値よりも大きい第3設定値以下の画素値を含む前記現在の画像データの第3範囲の画素値を、前記第2範囲の画素値よりも大きく、前記第3範囲よりも狭い範囲である、前記現在の変換画像データの第4範囲の画素値に変換するものであり、
前記第2画素値変換回路は、さらに、前記保存用の画像データの前記第3範囲の画素値を、前記保存用の変換画像データの前記第4範囲の画素値に変換するものであることが好ましい。
【0027】
また、前記第1画素値変換回路および前記第2画素値変換回路は、前記第1範囲を、第5範囲および前記第5範囲の画素値よりも大きい画素値を含む第6範囲に分割し、かつ、前記第2範囲を、第7範囲および前記第7範囲よりも大きい画素値を含む第8範囲に分割し、前記第5範囲の画素値を前記第7範囲の画素値に変換する場合の倍率を、前記第6範囲の画素値を前記第8範囲の画素値に変換する場合の倍率よりも大きくするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1画素値変換回路および第2画素値変換回路により、圧縮前に暗部の画素値を大きく変換し、第1ルックアップテーブルおよび第2ルックアップテーブルにより、大きくした暗部の画素値を元に戻す。圧縮誤差は元データの画素値によらずほぼ一定の値となるため、元データの画素値が大きくなれば圧縮誤差は相対的に小さくなる。これにより、本発明によれば、暗部に対する圧縮誤差の影響を低減し、画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の画像処理装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。
図2】第1画素値変換回路による現在の画像データの画素値から現在の変換画像データの画素値への変換の一例を表す概念図である。
図3図2に示す画素値の変換に対応する第1ルックアップテーブルの構成を表す一例の概念図である。
図4】従来の画像処理装置の構成を表す一例のブロック図である。
図5】画素値が均等に割り付けられたルックアップテーブルの構成を表す一例の概念図である。
図6】画素値が不均等に割り付けられたルックアップテーブルの構成を表す一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の画像処理装置を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の画像処理装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。同図に示す画像処理装置10は、現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データを出力するものであり、第1画素値変換回路12と、第2画素値変換回路14と、第1オーバドライブ処理回路16と、第2オーバドライブ処理回路18と、圧縮回路20と、メモリ回路22と、伸張回路24とを備えている。
【0032】
第1画素値変換回路12には、外部から現在の画像データが入力される。
第1画素値変換回路12は、暗部における画素値を大きくし、かつ、明部における画素値を小さくするように、現在の画像データの画素値を現在の変換画像データの画素値に変換するものである。
具体的には、第1画素値変換回路12は、現在の画像データの画素値の最大値を超えない範囲内で、暗部に相当する、第1設定値以下の画素値を含む現在の画像データの第1範囲の画素値を、第1範囲よりも広い範囲である、現在の変換画像データの第2範囲の画素値に変換し、かつ、明部に相当する、第1設定値よりも大きい第2設定値よりも大きく、第2設定値よりも大きい第3設定値以下の画素値を含む現在の画像データの第3範囲の画素値を、第2範囲の画素値よりも大きく、第3範囲よりも狭い範囲である、現在の変換画像データの第4範囲の画素値に変換する。
【0033】
これにより、ルックアップテーブルにおける暗部の割り当てを大きくし、明部の割り当てを小さくする。これは、暗部は画素値の変化に対する感度が高い一方、明部は感度が低く、多少の圧縮誤差は人間の目では判別できないという根拠に基づく。
【0034】
図2は、第1画素値変換回路による現在の画像データの画素値から現在の変換画像データの画素値への変換の一例を表す概念図である。同図は、現在の画像データが8ビットであり、その画素値が0〜255までの値である場合の例である。
【0035】
この例の場合、同図左側に示すように、現在の画像データの画素値の最大値は255、第1設定値は32であり、第1範囲は、現在の画像データの0〜32の画素値を含む範囲である。第2範囲は、同図右側に示すように、現在の変換画像データの0〜96の画素値を含む範囲である。つまり、第1画素値変換回路12は、現在の画像データの第1範囲の0〜32の画素値を、第1範囲よりも広い範囲である、現在の変換画像データの第2範囲の0〜96の画素値に変換する。
【0036】
また、この例の場合、同図左側に示すように、第1範囲は、さらに、第5範囲と、第5範囲の画素値よりも大きい画素値を含む第6範囲に分割されている。第5範囲は、現在の画像データの0〜8の画素値を含む範囲、第6範囲は、現在の画像データの8〜32の画素値を含む範囲である。また、これに応じて、同図右側に示すように、第2範囲は、さらに、第7範囲と、第7範囲の画素値よりも大きい画素値を含む第8範囲に分割されている。第7範囲は、現在の変換画像データの0〜48の画素値を含む範囲、第8範囲は、現在の変換画像データの48〜96の画素値を含む範囲である。第1画素値変換回路12は、第5範囲の画素値を第7範囲の画素値に変換する場合の倍率を、第6範囲の画素値を第8範囲の画素値に変換する場合の倍率よりも大きくする。つまり、より暗い方(より画素値が小さい方)の画素値を変換する場合の倍率を大きくする。
【0037】
また、第2設定値は80、第3設定値は224であり、第3範囲は、同図左側に示すように、現在の画像データの80〜224の画素値を含む範囲である。第4範囲は、同図右側に示すように、現在の変換画像データの144〜224の画素値を含む範囲である。つまり、第1画素値変換回路12は、現在の画像データの第3範囲の80〜224の画素値を、第3範囲よりも狭い範囲である、現在の変換画像データの第4範囲の144〜224の画素値に変換する。
【0038】
現在の画像データの第1範囲および第3範囲を、それぞれ、現在の変換画像データの第2範囲および第4範囲に変換した場合、現在の画像データの第1範囲および第3範囲以外の範囲の画素値を変換する必要が生じる。
図2の例の場合、第1画素値変換回路12は、第1設定値よりも大きく、第2設定値以下の画素値を含む現在の画像データの第9範囲の32〜80の画素値を、これと同じ範囲である、現在の変換画像データの第10範囲の96〜144の画素値に変換する。また、第1画素値変換回路12は、第3設定値以上の画素値を含む現在の画像データの第11範囲の224〜255の画素値を、これと同じ範囲である、現在の変換画像データの第12範囲の224〜255の画素値に変換する。
【0039】
続いて、第2画素値変換回路14には、第2オーバドライブ処理回路18から保存用の画像データが入力される。
第2画素値変換回路14は、保存用の画像データの画素値の最大値、つまり、現在の画像データの画素値の最大値を超えない範囲内で、暗部に相当する、保存用の画像データの第1範囲の画素値を、保存用の変換画像データの第2範囲の画素値に変換し、かつ、明部に相当する、保存用の画像データの第3範囲の画素値を、保存用の変換画像データの第4範囲の画素値に変換するものである。
【0040】
第2画素値変換回路14は、現在の画像データの画素値を現在の変換画像データに変換する代わりに、保存用の画像データの画素値を保存用の変換画像データの画素値に変換することを除いて、第1画素値変換回路12と同様の変換を行う。
【0041】
続いて、第1オーバドライブ処理回路16には、第1画素値変換回路12から現在の変換画像データ、および、伸張回路24から過去の変換画像データが入力される。
第1オーバドライブ処理回路16は、第1ルックアップテーブル17を用いて、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値を出力するものである。
【0042】
第1ルックアップテーブル17には、現在の変換画像データの画素値の代表値および過去の変換画像データの画素値の代表値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値として、第1画素値変換回路12および第2画素値変換回路14による変換の逆変換を行って得られる、つまり、変換されていない場合の現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値が格納されている。
【0043】
現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値がともに代表値である場合、第1オーバドライブ処理回路16は、第1ルックアップテーブル17から出力される、現在の変換画像データの画素値の代表値および過去の変換画像データの画素値の代表値に対応する格子点に格納されているオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値をそのまま出力する。
【0044】
一方、現在の変換画像データの画素値または過去の変換画像データの画素値が代表値ではない場合、第1オーバドライブ処理回路16は、例えば、第1ルックアップテーブル17から出力される、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値の近傍の複数の格子点に格納されているオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値を用いて補間演算等を行って、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値を出力する。
【0045】
図3は、図2に示す画素値の変換に対応する第1ルックアップテーブルの構成を表す一例の概念図である。
同図には、現在の変換画像データの画素値の代表値および過去の変換画像データの画素値の代表値と、現在の変換画像データの画素値の代表値および過去の変換画像データの画素値の代表値に各々対応する現在の画像データの画素値の代表値および過去の画像データの画素値の代表値が示されている。
同図に示すように、第1ルックアップテーブル17は、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値が、それぞれ、16画素毎に均等に割り付けられたものである。
【0046】
ここで、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値は、それぞれ、現在の画像データおよび過去の画像データの画素値(保存用の画像データの画素値)が、第1画素値変換回路12および第2画素値変換回路14により図2に示す画素値の変換により不均等に変換されたものである。
そのため、図3に示すように、第1ルックアップテーブル17は、実質的に、現在の画像データおよび過去の画像データが、それぞれ、不均等に割り付けられたものを構成する。
【0047】
つまり、第1オーバドライブ処理回路16は、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値として、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対して第1画素値変換回路12および第2画素値変換回路14による変換の逆変換を行って得られる現在の画像データの画素値および過去の画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値を出力する。
【0048】
同様に、第2オーバドライブ処理回路18には、第1画素値変換回路12から現在の変換画像データ、および、伸張回路24から過去の変換画像データが入力される。
第2オーバドライブ処理回路18は、第2ルックアップテーブル19を用いて、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の保存用の画像データの画素値を出力するものである。
【0049】
第2オーバドライブ処理回路18は、出力用の画像データを出力する代わりに、保存用の画像データを出力することを除いて、第1オーバドライブ処理回路16と同様のオーバドライブ処理を行う。
第2ルックアップテーブル19に格納されているオーバドライブ処理後の保存用の画像データの画素値は、第1ルックアップテーブル17に格納されているオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0050】
圧縮回路20には、第2画素値変換回路14から保存用の変換画像データが入力される。
圧縮回路20は、保存用の変換画像データを不可逆圧縮した圧縮画像データを出力するものである。
【0051】
メモリ回路22には、圧縮回路20から圧縮画像データが入力される。
メモリ回路22は、圧縮画像データを記憶するものである。
【0052】
伸張回路24には、メモリ回路22から読み出された圧縮画像データが入力される。
伸張回路24は、メモリ回路22から読み出された圧縮画像データを伸張し、過去の変換画像データとして出力するものである。
【0053】
次に、画像処理装置10の動作を説明する。
【0054】
画像処理装置10では、第1画素値変換回路12により、現在の画像データの画素値が、現在の変換画像データの画素値に変換され、現在の画像データの、暗部に相当する画素値が大きくなり、明部に相当する画素値が小さくなるように変換される。
【0055】
続いて、第1オーバドライブ処理回路16および第2オーバドライブ処理回路18により、それぞれ、第1ルックアップテーブル17および第2ルックアップテーブル19を用いて、現在の変換画像データの画素値および過去の変換画像データの画素値に対応するオーバドライブ処理後の出力用の画像データの画素値および保存用の画像データの画素値が出力される。
【0056】
続いて、第2画素値変換回路14により、保存用の画像データの画素値が、保存用の変換画像データの画素値に変換され、保存用の画像データの、暗部に相当する画素値が大きくなり、明部に相当する画素値が小さくなるように変換される。
【0057】
続いて、圧縮回路20により、保存用の変換画像データが不可逆圧縮され、その圧縮画像データがメモリ回路22に記憶される。メモリ回路22から読み出された圧縮画像データは、伸張回路24により伸張され、過去の変換画像データとして出力される。
【0058】
これ以後は、前述の動作の繰り返しとなる。
【0059】
画像処理装置10においても、過去の変換画像データは、保存用の変換画像データと同一なものではなく、圧縮誤差を含んだものとなる。
しかし、画像処理装置10では、第1画素値変換回路12および第2画素値変換回路14により、圧縮前に暗部の画素値を大きく変換し、第1ルックアップテーブル17および第2ルックアップテーブル19により、大きくした暗部の画素値を元に戻す。前述の通り、圧縮誤差は元データの画素値によらずほぼ一定の値となるため、元データの画素値が大きくなれば圧縮誤差は相対的に小さくなる。これにより、暗部に対する圧縮誤差の影響を低減し、画質を向上させることができる。
【0060】
なお、第1画素値変換回路12は、少なくとも現在の画像データの第1範囲の画素値を現在の変換画像データの第2範囲の画素値に変換するものであればよく、それ以外の範囲の画素値の変換方法は何ら限定されない。例えば、現在の画像データの第3範囲の画素値を現在の変換画像データの第4範囲の画素値に変換することは必須ではない。第2画素値変換回路14についても同様である。
また、第1設定値〜第3設定値等の各設定値、および、第1範囲〜第12範囲等の各範囲は適宜決定することができる。
また、第1ルックアップテーブル17および第2ルックアップテーブル19の現在の変換画像データの画素値の代表値および過去の変換画像データの画素値の代表値の数は、図3に示すように、17個×17個のものに限定されない。
圧縮回路20および伸張回路24による圧縮/伸張の方法も何ら限定されない。
【0061】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
10、30 画像処理装置
12 第1画素値変換回路
14 第2画素値変換回路
16、36 第1オーバドライブ処理回路
17、37 第1ルックアップテーブル
18、38 第2オーバドライブ処理回路
19、39 第2ルックアップテーブル
20、40 圧縮回路
22、42 メモリ回路
24、44 伸張回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6