【実施例1】
【0012】
以下に、本発明の実施例1に係る発光装置10について、
図1〜4を参照しつつ説明する。
【0013】
図1(a)は実施例1の発光装置10を光放射面側から見た平面図である。
図1(b)は
図1(a)におけるA−A線に沿う概略断面図、
図1(c)は
図1(a)におけるB−B線に沿う概略断面図である。
図1(e)実施例1の発光装置10の内部構造を示す部分斜視図である。
図1(a)および(e)においては、説明の明瞭化のため、封止樹脂部5を省略して示している。
図2は、実施例1の発光装置10の(a)平面図(b)正面図(c)底面図(d)右側面図である。
図3は、実施例1の発光装置10のリードの(a)平面図である(b)透視平面図、(c−1)および(c−2)は、下面溝を示す透視下面図、である。(b)、(c−1)、および(c−2)においては、成形樹脂部3を点線で示している。
【0014】
発光装置10は、凹部1Aの設けられた略直方体状のパッケージと、凹部1A内に配置された発光素子4と、凹部1A内に充填されて発光素子4を覆う透光性の封止樹脂部5とを有する。
【0015】
パッケージは、成形樹脂部3、成形樹脂部3に保持されたリード2(第一リード21および第二リード22)、とから構成される。
パッケージは、外形が略直方体形状に形成されており、本実施例では、長手方向と短手方向を有する直方体形状に形成されている。
【0016】
成形樹脂部3は、酸化チタンや酸化亜鉛などの光散乱性粒子を分散した樹脂から構成される。樹脂材料としては、PPA(ポリフタルアミド)などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂などが用いられる。また成形樹脂部3には、強度や熱膨張率を調整するためにガラスフィラーなどの機能性粒子を混合することができる。
本実施例においては、酸化チタン粒子とガラスフィラーとをシリコーン樹脂に対して70〜90wt%混合した樹脂により成形樹脂部3を構成し、可視光反射率が90%以上、、リードを構成する銅と熱膨張率が比較的近似した成形樹脂とすることができた(銅の熱膨張係数:17.7ppm/K、成形樹脂部の熱膨張率:14〜18ppm/K)。
【0017】
成形樹脂部3は、凹部1Aを画成する枠部31を有し、枠部31の内周面は反射面として機能する。
成形樹脂部3は、第一リード21および第二リード22とを一体的に保持する。成形樹脂部3は、凹部1Aの外側において、第一リード21および第二リード22を挟み込むように形成される。
【0018】
第一リード21および第二リード22は、鉄、リン青銅、銅などの平板状の金属材料から構成される。また、適宜、めっき処理を施すことができる。
本実施例では、平板状のCuを
図3(a)に示すように所定形状に加工したものに、Ni、Pd、Auを順にめっき処理して構成した。
第一リード21および第二リード22は、電極対をなし、
図1(a)および
図3(a)に示すようにそれぞれのリードの一端部が離間して対向配置されている。
第一リード21および第二リード22の他端部は、
図1(b)〜(e)に示すように、それぞれパッケージの対向する側面まで導出されている。
第一リード21および第二リード22の下面21aおよび22aの一部は、
図1(b)〜(d)、および
図2(c)に示すようにパッケージ底面1Bに露出しており、発光装置10の実装面となる。
【0019】
第一リード21は、発光素子搭載部201を有し、該発光素子搭載部201に発光素子4が搭載されている。本実施例では、第一リード21上に導電性接着剤を介して発光素子4が接合されており、発光素子4と電気的に接続されている。
第二リード22上には、一端部が発光素子4と電気的に接続された導電ワイヤ7の他端部が接続されている。
第一リード21は、第二リード22よりも大きいサイズで形成されている。第一リード21側に発光素子搭載部201を形成したためである。
【0020】
第一リード21と第二リード22は、隣接する発光装置10の第一リード21と第二リード22と一体化して、製造工程における多面取り状態を形成するための連結部202を有している。そのため、連結部202は、パッケージの4つの側面にそれぞれ到達するように、つまり、
図1(e)に示すように連結部202の断面が露出するように形成されている。
連結部202は、隣接する発光装置10の第一リード21どうしおよび第二リード22どうしを連結する第一連結部202aと、隣接する発光装置10の第一リード21と第二リード22とを連結する第二連結部202bとから構成される。連結部202は、製造工程における個片化する際の切断線11上にあるため、個片化後においては、その断面が、発光装置10の切断面であるパッケージ側面1Cまたは1Dに露出する。第一連結部202aは、長手側のパッケージ側面1Dにその断面が露出し、第二連結部202bは、短手側のパッケージ側面1Cにその断面が露出する。
また、第一の連結部202aは、上面および下面が成形樹脂部3により覆われて保持され、第二の連結部202bは、上面が成形樹脂部3により覆われて下面が成形樹脂部3より露出している。
【0021】
第一リード21および第二リード22は、下面に形成された下面溝220、上面に形成された上面溝210を有する。
下面溝220は、樹脂が充填される第一下面溝221と、樹脂が充填されずに空間を保持する第二下面溝222から構成される。
上面溝210には、樹脂が充填され、該上面溝210に充填された樹脂(上面溝充填部32)は成形樹脂部3の一部を構成する。
【0022】
第一下面溝221は、樹脂が充填されて成形樹脂部3の一部(外周溝充填部33および内部溝充填部34)を構成する。
第一下面溝221は、第一リード21および第二リード22の外周部(パッケージ側面近傍を除く、
図3(c−2)において右上がり斜線部で示す)、および、第一リード21における発光素子搭載部201と第二下面溝222との間(
図3(c−2)において格子部で示す)に形成されている。
【0023】
第一下面溝221のうち、第一リード21および第二リード22の外周部に形成された外周溝221aには、樹脂が充填されて成形樹脂部3の一部である外周溝充填部33を構成し、第一リード21および第二リード22がパッケージの底面から脱落するのを防止している。外周溝221aは、第一連結部全体にも形成されている。
【0024】
第一下面溝221のうち、第一リード21における発光素子搭載部201と第二下面溝222との間に形成された内部溝221bは、外周溝221aと同様、樹脂が充填されて成形樹脂部3の一部である内部溝充填部34を構成し、第一リード21および第二リード22がパッケージから脱落するのを防止する。
さらに、内部溝221bは、内部溝充填部34を備えることにより、外部からの衝撃でリードフレームが振動するのを効率よく抑制して、リードフレームが成形樹脂部3や封止樹脂部5から剥離するのを抑制する。
内部溝221bは、パッケージ底面における第二下面溝222が接する辺に平行に形成されている。そのため、内部溝221bに充填された成形樹脂部3(すなわち内部溝充填部34)により、ダイシング時に発生する衝撃によりリードフレームを効率よく制振することができる。特に第二下面溝222の接する辺は、個片化工程における切断線上に存在しているが、第二下面溝222は、溝内部が成形樹脂部3から露出しているため、残りの二辺を切断する際と比較してダイシング時のリードフレームへの衝撃が大きいためである。
また、内部溝221bは、第一リード21における発光素子搭載部201と切断面との間に位置している。特に内部溝221bは、第一リード21における発光素子搭載部201近傍であって、発光素子搭載部201に重ならないように形成されている。そのため、内部溝221bに充填された成形樹脂部3(すなわち内部溝充填部34)により、発光素子搭載部201におけるリードフレームの振動を効率よく制振することができる。
そして、内部溝221bは、後述する上面溝210と、第一リード21を厚み方向で挟み込む関係で配置されている。そのため、内部溝221bと上面溝210に充填された成形樹脂部3(すなわち内部溝充填部34と上面溝充填部32と)により、リードフレームの振動を効率よく制振することができる。
【0025】
本実施例では、面積の小さい方の第二リード22には内部溝221bを形成する空間的余裕がないため、内部溝221bが形成されていない。しかし、本実施例の発光装置10は、少なくとも発光素子4が搭載される側の面積の大きい方のリード(すなわち第一リード21)に内部溝221bを形成することにより、発光装置10が大型化するのを抑制しつつ効率よく剥離を抑制している。
【0026】
第二下面溝222は、樹脂が充填されず、空間が保持される。この空間は、
図1(d)に示すように、発光装置10を実装する際に、はんだなどの接合材料が充填されて接合材フィレットを形成するのに利用される。
図1(d)に、実装パターンの形成された実装基板8上に、はんだなどの接合材料9を用いて発光装置10を実装した状態を示している。つまり、実装時において、第二下面溝222により形成した空間に接合材フィレットを形成することにより発光装置10の実装強度を向上し、実装安定性を向上することができる。
第二下面溝222は、第二連結部に形成されている。第二下面溝222は、
図1(e)に示すように第二連結部に溝内壁222aが残るように形成される。そのため、第二連結部の下面の一部は、パッケージ底面1Bに露出する。溝内壁222aが形成されることにより、上記はんだフィレットを安定的に形成して実装安定性を向上することができる。
【0027】
第二下面溝222は、パッケージ底面1Bにおいて対向する二つの辺のそれぞれに重なるように形成する。一方、第二下面溝222は、パッケージ底面1Bにおいて残りの二つの辺には重ならないように形成する。
つまり、第二下面溝222は、対向する二つのパッケージ側面1Cに露出する。第二下面溝222は、パッケージ側面1Cまで達するように(パッケージ側面1Cまで延在するように)形成されて、接合材フィレット形成領域を形成している。一方、第二下面溝22は、パッケージ側面1Cに直交するパッケージ側面1Dからは離間して形成される。
本実施例では、パッケージ底面1Bにおけるそれぞれの短辺に対し、二つの第二下面溝222(合計で四つの第二下面溝222)を形成した。
すなわち、第二下面溝222は、パッケージの相互に対向する二つの側面1Cおよび底面1Bに露出している。
従って、第一リード21および第二リード22は、下面における下面溝220の形成されていない領域と第二下面溝222とで実装端子を構成している。
【0028】
上面溝210は、第一リード21および第二リード22のそれぞれに、成形樹脂部3の枠部31の直下に位置するように形成されている。
上面溝210は、第一リード21および第二リード22において、第二下面溝222が露出するパッケージの側面と平行に直線状に形成されている。つまり、本実施例において、上面溝210は、第一リード21および第二リード22において、パッケージ底面の短辺に平行に直線状に形成されている。
上面溝210は、パッケージの側面に露出しないようにパッケージの側面から離間して設けられている。
上面溝210には、樹脂が充填されて成形樹脂の一部を構成する。
上面溝210に樹脂が充填されることにより、リードフレームと成形樹脂部3との間に剥離が発生した場合にも、該剥離が凹部1A内へ延伸することを抑制することができる。上面溝210を形成しない場合と比較して、パッケージ側面から凹部1A内までのリードと成形樹脂界面を経由しての経路を長くすることができるためである。特に、発光装置10の製造工程における個片化の際に生じやすい、パッケージの外側側面からの剥離が発生した場合に、リードフレームと成形樹脂部3との剥離が凹部1A内へ到達するのを抑制することが有効なためである。
第一下面溝221における内部溝221bと上面溝210とは、平行に形成されている。
第一下面溝221における内部溝221bは、上面溝210と発光素子搭載部201との間に位置する。
第一下面溝221における内部溝221bは、第二下面溝222と発光素子搭載部201との間に位置する。
【0029】
凹部1A内の底面には、第一リード21と第二リード22の表面が露出している。
凹部1A内に露出した第一リード21の発光素子搭載部201上には、発光素子4が接着剤6を介して配置されている。
また凹部1A内において、第一リード21および第二リード22と発光素子4とは電気的に接続されている。
発光素子4は、所望の発光色の半導体レーザ素子、LED素子、などを用いることができる。
接着剤6としては、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、などを用いることができる。
本実施例では、発光素子4として青色発光のLED素子を用い、LED素子を導電性の樹脂接着剤を用いて第一リード21上に搭載して第一リード21と電気的に接続した。また、半導体発光素子4と第二リード22とをAuからなる導電ワイヤ7を介して電気的に接続した。
尚、発光素子搭載部201の下面側は、
図2(c)に示すように、成形樹脂部3で覆われずに露出して、下面21aを形成する。
【0030】
凹部1A内には、発光素子4を覆う封止樹脂部5が形成されている。
封止樹脂部5は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などから構成することができる。
封止樹脂部5には、蛍光体粒子を分散することができる。蛍光体粒子は、発光素子4からの発光の一部または全部を吸収して異なる波長へ変換する。
本実施例においては、青色発光LED素子からの発光の一部を吸収して黄色へ波長変換するEuを付活したオルトシリケートからなる蛍光体粒子を分散した。そのため、本実施例の発光装置10は、封止樹脂部5を透過する青色光と蛍光体粒子により波長変換された黄色光の合成光である白色光を放出する。
【0031】
[本発明の実施例1の製造方法]
次に、本発明の実施例1の半導体発光装置10の製造方法について、
図4を参照して説明する。
本発明の実施例1の半導体発光装置10の製造方法は、(a)リード形成工程、(b)成形樹脂部形成工程、(c)発光素子配置工程、(d)封止樹脂部形成工程、(e)個片化工程とを有する。以下、各工程について説明する。尚、
図4においては、個片化工程における切断線を点線で示している。
【0032】
(a)リード形成工程
本工程において、第一リード21および第二リード22をパターン形成して備えた多面取り状態のリードフレームを準備する(
図4(a)参照)。
本実施例では、銅からなる平板状のリードフレームを、エッチングにより所定形状に形成した。このエッチングにおいて、上面溝210および下面溝220を形成した。エッチングにより形成された上面溝210および下面溝220には、丸みが形成されている。
その後、Ni、Pd、Auのめっき処理を順次行った。
なお、リードフレームの加工は、切削、圧延、打ち抜き、押し出し等を併用してもよく、これら方法で加工後にエッチングにより上面溝210および下面溝220を形成してもよい。
【0033】
(b)成形樹脂部形成工程
本工程において、インサート成形、トランスファ成形などの成形により成形樹脂部3を形成する。金型のキャビティ内にリードフレームを配置して、樹脂を流し込んで成形樹脂部3を形成する(
図4(b)参照)。
本工程において、枠部31が形成されている。
本工程において、上面溝210および第一下面溝221にも樹脂が充填される。
本工程において、リードフレームの下面、おおび凹部1A内におけるリードフレームの上面は金型に接しているため樹脂により覆われることがない。
本実施例では、酸化チタン粒子とガラスフィラーを含有したシリコーン樹脂によりインサート成形した。
【0034】
(c)発光素子配置工程
本工程において、第一リード21上に接着剤6等を介して発光素子4を実装する(
図4(c)参照)。
本実施例では、Agの粒子を含有したエポキシ樹脂接着剤6を介して、青色発光LED素子を実装した。その後、LED素子の上部電極と第二リード22をAuワイヤ7で接続して、電気的接続を得た。
【0035】
(d)封止樹脂部形成工程
本工程において、凹部1A内に発光素子4を覆うように、透光性樹脂からなる封止樹脂部5を形成する(
図4(d)参照)。
本実施例では、Ceを不活したYAGからなる蛍光体粒子を含有するシリコーン樹脂を充填後、加熱炉へ投入し、シリコーン樹脂を熱硬化して封止樹脂部5を形成した。
【0036】
(e)個片化工程
本工程において、多面取り状態で形成された多数の発光装置10を個片化する(
図4(e−1)および(e−2)参照)。
枠部31上面を保護テープに貼り付け、パッケージの底面側からダイシングブレードを切断線上に掃引することで個片化した。ダイシングは、パッケージの底面側からブレードを当てて行った。パッケージの底面側からダイシングすることにより、発光面上にダイシング時に発生するごみの付着を低減することができる、ダイシング時に発生するリードのバリが第二下面溝222の空間を埋めてしまうことがない、という利点がある。
本工程により、本工程による切断面であるパッケージ側面1Cおよび1Dが形成される。パッケージの対向する二つの側面には、第二下面溝222が露出する。残りの二つの側面には、隣接する発光装置10と多面取り状態を形成するための第一リード21と第二リード22の連結部202が露出し、第二下面溝222は露出しないものとなっている。
【0037】
リードに内部溝221bと上面溝210とを併せて備える本実施例の発光装置10によれば、パッケージの凹部1A内におけるリードと樹脂部との剥離を効率よく抑制することができる。内部溝221bと上面溝210には成形樹脂部3の一部である樹脂が充填されることにより、ダイシングなどの外部からの衝撃でリードが振動するのをリードを挟み込む位置で効率よく抑制する。併せて、上面溝210を枠部31直下に配置することにより、個片化による切断面となるパッケージの外側側面から剥離が生じた場合にも凹部1A内への進展を抑制することができる。
特に、個片化による切断面であって第二下面溝222が露出して端子形成側面となるパッケージ側面に対し平行な直線状に形成することにより、個片化工程に起因するリードと樹脂部(成形樹脂部3および/または封止樹脂部5)との剥離を効果的に抑制することができる。第二下面溝222の形成された第二連結部202bは、第一連結部202aとは異なりその下面が成形樹脂部3から露出されているため、第二連結部202bを通る切断線上を切断する際においては、第一連結部202aを通る切断線上を切断するのと比較して、リード2と樹脂部との剥離の要因となりなる衝撃が大きいためである。