特許第6262581号(P6262581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262581
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】成形型及び成形型システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20180104BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20180104BHJP
   B29C 70/34 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B29C43/36
   B29C43/02
   B29C70/34
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-62166(P2014-62166)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-182371(P2015-182371A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 崇史
(72)【発明者】
【氏名】横溝 穂高
(72)【発明者】
【氏名】石坪 隆一
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−088626(JP,A)
【文献】 特開平02−098443(JP,A)
【文献】 特開平10−076542(JP,A)
【文献】 特開昭62−220303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/36
B29C 43/02
B29C 70/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とを備え、前記上型と前記下型とを嵌合させることで、樹脂材料を含んだ成形用素材を圧縮成形するための成形空間を内部に形成すると共に前記成形空間の端部でシャーエッジが構成される成形型において、
前記樹脂材料は強化繊維を含み、
前記シャーエッジの高さHは、成形後の成形体における前記成形空間の端部に相当する部分の厚みをtとし、当該厚みを基準にしたスプリングバック量Sbとすると、
1.0×(t+Sb) < H ≦ 2.0×(t+Sb)
の関係を満たし、
前記下型における前記成形空間の外部には、前記成形空間に向かう下り勾配の傾斜面が設けられ、
前記傾斜面の角度θは、垂直方向に対して、
0° < θ < 60°
であることを特徴とする成形型。
【請求項2】
前記成形用素材は、シート状をし、
前記傾斜面は、前記上型と前記下型とが嵌合する際に、前記成形空間が形成される領域へと引き込まれる前記成形用素材を下方から支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記下型は雌型であり、前記上型は雄型であり、
前記傾斜面における前記成形空間側の端は、前記下型において前記上型の雄型部分の外面と対向する内面の上端と一致している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形型。
【請求項4】
上型と下型とを備え、前記上型と前記下型とを近づけることで、樹脂材料を含んだ成形用素材を圧縮成形するための空間を内部に形成する成形型部と、
前記下型の外側に配され且つ前記空間に向かう下り勾配の傾斜面を有する補助部と、
前記上型と前記下型とを近づけた際に前記空間が形成される領域から張り出した前記成形用素材をシャー切断する切断部と
を備え、
前記樹脂材料は強化繊維を含み、
前記シャーエッジの高さHは、成形後の成形体におけるシャー切断された部分の厚みをtとし、当該厚みを基準にしたスプリングバック量Sbとすると、
1.0×(t+Sb) < H ≦ 2.0×(t+Sb)
の関係を満たし、
前記傾斜面の角度θは、垂直方向に対して、
0° < θ < 60°
であることを特徴とする成形型システム。
【請求項5】
前記成形体が凹凸状である、請求項4に記載の成形型システム。
【請求項6】
前記成形体が縦断面において凹凸状である、請求項4に記載の成形型システム。
【請求項7】
前記上型は下方に突出する雄型部分を有し、前記下型は下方に凹入する雌型部分を有し、成形用素材は雄型部分の下面と雌型部分の上面の形状に沿うように、成形型の内部に引き込まれた後、シャー切断する、請求項5又は6いずれか1項に記載の成形型システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料を含むシート状の成形用素材を圧縮成形するための成形型及び成形型システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮成形用の成形型は雄型と雌型とを備える。成形用素材は、上下に配された雄型と雌型との間にセットされた状態で圧縮(プレス)されることで、成形型内の成形空間に対応した所望形状の成形品となる。成形空間は、雄型と雌型とが嵌合して内部に生じる密閉状態の空間をいい、嵌合していない雄型及び雌型において、成形空間に面する領域を成形予定領域とする。
【0003】
近年、雄型と雌型とが嵌合する際のシャーエッジを利用して、生産性を向上させる成形型が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この成形型では、雄型と雌型との間にセットされた成形用素材が、型締め時に圧縮されて成形予定領域に沿って拡がり、雄型と雌型とが嵌合する際に成形予定領域から張り出した材料(例えば、バリに相当する部分である。)がシャーエッジによりシャー(切断)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−267344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の成形型は、供給される成形用素材がバルク状をしており、型締めに合わせて素材が圧縮されて成形予定領域や成形空間内に拡がるような、圧縮成形を前提としたものである。このため、成形用素材として、成形型の投影面積より大きな表面積のシート状の成形用素材が供給される場合には適用できないことがある。
本発明は、上記した課題に鑑み、投影面積より大きい表面積のシート状の成形用素材が供給された場合でも適用できる成形型や成形型システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、強化繊維と熱可塑性樹脂材料とからなるシート状の成形用素材(以下、単に、「シート材」とする。)を利用して、生産効率の高い成形技術について検討している。ここで検討している成形品は、例えば、厚みが略一定であり、凸部を有するような形状のものである(図1参照)。この成形型は、一方に凸部があり他方に凹部があるような、一対の雌型と雄型とから構成される。
【0007】
図17及び図18は、検討中の成形型901,911を利用した型締め時の様子を示す図である。
図17の成形型901は上型903と下型905とを有し、下型905が雄型となっている。図18の成形型911は上型913と下型915とを有し、下型915は、雌型であり、中央に雌型部分917を、その周辺に周辺部分919をそれぞれ有する。周辺部分919の上面は、シート材を支持する平坦面919aとなっている。なお、成形型901,911でシート材Xを成形すると、図1に示す成形品Yのような形状の成形品が得られる。
【0008】
成形型901,911の投影面積よりも表面積が大きいシート材Xが上記成形型901,911に供給されると、当該シート材は、上型903,913と下型905,915との型締めに合わせて成形予定領域にシート材が引き込まれ、成形型901,911の形状に合わせて賦形されていく。
そして、上型903,913と下型905,915とが嵌合する直前に、上型903,913と下型905,915とで構成されるシャーエッジにより成形予定空間外のシート材Xがシャーされる。つまり、大きめのシート材Xを供給し、シート材Xの賦形と切断とを成形型901,911の型締めで行うことで、生産性向上を図っている。
【0009】
ところが、上記技術では、生産性向上を図ることができるものの、良好な成形品が得られないことが判明した。つまり、上記成形型901,911では、シート材Xの成形予定領域への引き込みがスムーズに行えないことが判明した。
発明者は鋭意調査検討した結果、成形型901では、図17の(c)に示すように、シート材Xを引き込む際に、下型905の角部分907にシート材Xが引っ掛かることが判明した。成形型911では、図18の(c)に示すように、シート材Xを引き込む際に、下型915の平坦面919aとの摩擦によりシート材Xが動かないことが判明した。
【0010】
本発明の一態様では、シート状の成形用素材を引き込みながら賦形し、成形予定領域外のシート状の成形用素材がシャーエッジによりシャーされるような圧縮成形において、良好な成形品を得ることができる成形型及び成形型システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る成形型は、上型と下型とを備え、前記上型と前記下型とを嵌合させることで、樹脂材料を含んだ成形用素材を圧縮成形するための成形空間を内部に形成すると共に前記成形空間の端部でシャーエッジが構成される成形型において、前記シャーエッジの高さHは、成形後の成形体における前記成形空間の端部に相当する部分の厚みをtとし、当該厚みを基準にしたスプリングバック量Sbとすると、 1.0×(t+Sb) < H ≦ 2.0×(t+Sb) の関係を満たし、前記下型における前記成形空間の外部には、前記成形空間に向かう下り勾配の傾斜面が設けられ、前記傾斜面の角度θは、垂直方向に対して、 0° < θ < 60° であることを特徴としている。
【0011】
また、前記成形用素材は、シート状をし、前記傾斜面は、前記上型と前記下型とが嵌合する際に、前記成形空間が形成される領域へと引き込まれる前記成形用素材を下方から支持することを特徴としている。
また、前記下型は雌型であり、前記上型は雄型であり、前記傾斜面における前記成形空間側の端は、前記下型において前記上型の雄型部分の外面と対向する内面の上端と一致していることを特徴としている。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る成形型システムは、上型と下型とを備え、前記上型と前記下型とを近づけることで、樹脂材料を含んだ成形用素材を圧縮成形するための空間を内部に形成する成形型部と、前記下型の外側に配され且つ前記空間に向かう下り勾配の傾斜面を有する補助部と、前記上型と前記下型とを近づけた際に前記空間が形成される領域から張り出した前記成形用素材をシャー切断する切断部とを備え、前記シャーエッジの高さHは、成形後の成形体におけるシャー切断された部分の厚みをtとし、当該厚みを基準にしたスプリングバック量Sbとすると、 1.0×(t+Sb) < H ≦ 2.0×(t+Sb) の関係を満たし、前記傾斜面の角度θは、垂直方向に対して、 0° < θ < 60° であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る成形型及び成形型システムは、傾斜面を有している。このため、例えば、シート状の成形用素材を用いた場合でも、成形用素材が傾斜面上に載置されると、当該成形用素材に傾斜面を滑り落ちる力が作用し、成形用素材の引き込みがスムーズに行われる。
また、スプリングバックを考慮して、シャーエッジの高さHを規定の範囲としているので、切断後の成形空間内での成形用素材の移動を少なくでき、成形用素材のチャージ不足を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る成形型から得られる成形品を示す概略図である。
図2】第1実施形態に係る成形型の構成を説明する概略斜視図である。
図3】第1実施形態に係る成形型の断面図である。
図4】第1実施形態に係る成形工程を説明する概略図である。
図5】第2実施形態に係る成形型システムの断面図である。
図6】第2実施形態に係る支持部を示す斜視図である。
図7】第2実施形態に係る成形工程を説明する概略図である。
図8】第3実施形態に係る成形型システムの断面図である。
図9】第3実施形態に係る成形工程を説明する概略図である。
図10】変形例1に係る成形型の断面図である。
図11】変形例2に係る成形型の断面図である。
図12】変形例3に係る成形型システムの支持部を示す斜視図である。
図13】変形例4に係る成形型の断面図である。
図14】変形例5に係る成形品の斜視図である。
図15】変形例6に係る成形品の斜視図である。
図16】変形例7に係る成形品の斜視図である。
図17】検討中の成形型を利用した型締め時の様子を示す図である。
図18】検討中の成形型を利用した型締め時の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
1.構成
図1は第1実施形態に係る成形型1から得られる成形品Yを示す概略図であり、図2は第1実施形態に係る成形型1の構成を説明する概略斜視図である。図3は、第1実施形態に係る成形型1の断面図である。
【0016】
成形型1は、図1に示すように、樹脂材料を含んだ(ここでは、強化繊維も含む。)シート状の成形用素材(以下、単に「シート材」とする。)Xから、例えば波状(凹凸状)の成形品Yに圧縮成形するのに利用される。成形型1は、図2に示すように、上型3と下型5とを備える。
上型3と下型5は両者が上下方向に遠近可能な状態で支持される。成形時に上下に支持された上型3と下型5の間にシート材Xが配される(供給される)。なお、上型3や下型5を支持する手段として、例えば、プレス機(圧縮機)等がある。
【0017】
成形型1は上型3と下型5とが嵌合する構成を有する。上型3と下型5とが嵌合した状態では、図3に示すように、成形型1の内部に成形品Yに対応する密閉状の成形空間7が生じる(形成される)。
上型3は、下方に突出する、所謂、雄型であり、中央の雄型部分11とその周辺の周辺部分9とを有する。下型5は、下方に凹入する、所謂、雌型であり、中央の雌型部分15とその周辺の周辺部分13とを有する。
【0018】
雄型部分11の下面21は嵌合時(型締め時)にシート材Xの上面に接触する。雌型部分15の上面23は嵌合時(型締め時)にシート材Xの下面に接触する。雄型部分11の下面21と雌型部分15の上面23は、両者の上下方向の間隔が小さくなると、その間に配されたシート材Xが成形型1の内部(成形予定領域)に引き込まれるような、形状をしている。
【0019】
具体的には、成形品Yが、図1に示すように、縦断面において波状(凹凸状)をし、雄型部分11の下面21と雌型部分15の上面23が成形品Yの形状に対応して波状(凹凸状)している。このため、下型5にシート材Xを載置した状態で、上型3と下型5とを近づけると、シート材Xが、雄型部分11の下面21や雌型部分15の上面23の形状に沿うようになり、成形型1の内部に引き込まれる。
【0020】
このようなシート材Xの引き込みは、換言すると、成形品Yの上面の表面積が成形品Yの上方からの投影面積よりも大きいときに生じる。つまり、雄型部分又は雌型部分においてシート材Xと接触する面の表面積が、当該面を上方から見た投影面線よりも大きい構造をしている。なお、いうまでもないが、成形用のシート材Xは、上方からみた雄型部分11や雌型部分15よりも大きい面積で、成形型1に供給される。
【0021】
上型3(雄型部分11)と下型5(雌型部分15)とが嵌合する際に、成形空間7の端部7aでシャーエッジが構成される。具体的には、図3に示すように、雄型部分11の外面11aと雌型部分15の内面15aとが嵌合する嵌合部分25により構成される。図3に示すように、嵌合部分25の間隔D2は、0.05mm〜0.1mm程度であり、嵌合時に成形予定領域の外部に存するシート材Xbがシャー(切断)される(図4の(d)参照)。
【0022】
また、下型におけるシャーエッジの高さHは、成形後の成形体における前記成形空間の端部に相当する部分の厚みをtとすると、
1.0t < H ≦ 2.0t ・・・(1)
の関係を満たす。
シャーエッジの高さHは、ここでは、シャーエッジが離間していたシート材Xに当接する時、つまり、シャー開始時に、下型5(雌型部分15)における成形空間7の端部7aに対応する下面から下型5におけるシャーエッジ上端までの高さである。
【0023】
換言すると、シャーエッジの高さHは、シート材Xが配される側の型において、成形予定領域の端部に位置するシート材Xの主面と接触する面から、前記シート材Xが配される側の型におけるシャーエッジを構成するエッジまでの距離である。
シャーエッジの高さHは、厚みtに対して、1.1倍以上、1.7倍以下が好ましく、1.2倍以上1.5倍以下がより好ましい。これは、成形用のシート材Xに厚みムラがあっても、シャーされた成形用のシート材Xaの大きさを成形空間7と略一致させることができるためである。
【0024】
上型3の周辺部分9は、図3に示すように、略水平な平坦面27をしている。なお、周辺部分9の平坦面27と雄型部分11の外面11aとは直交する。
下型5の周辺部分13は、雌型部分15に隣接して雌型部分15の内面上端に向かう下り勾配の傾斜面を有している。この傾斜面は、シート材Xを成形する際に、下型5の上面に配されたシート材Xを下方から支持する傾斜支持面29である。
【0025】
傾斜支持面29は、下型5において雌型部分15の側面上端(シャーエッジ上端)と傾斜支持面29の成形空間7に近い端とが一致すように、雌型部分15の側面に連続して設けられている。この傾斜支持面29は、図3に示すように、垂直面との間の角度θが、
0° < θ < 60°
の範囲内にある。この範囲内にある傾斜支持面29により、シート材Xに成形空間へ向かう力が作用させることができ、成形空間7への引き込みをスムーズにさせる。
【0026】
傾斜支持面29の好ましい角度θは、
15°< θ <50°
であり、さらにより一層好ましい角度θは、
40°< θ <50°
である。
【0027】
下型5の周辺部分13は、傾斜支持面29の外側に位置する上面が、上型3の周辺部分9と対向した水平な平坦面31となっている。
上型3の周辺部分9と下型5の周辺部分13との間には、嵌合時の切断されたシート材Xbが残存可能な空間が確保されている。つまり、この空間は、シート材Xbが型締め時に上型3と下型5とに挟まって型締めできないというような不具合が生じないように、設けられている。具体的には、図3に示すように、上型3の平坦面27と下型5の平坦面31との嵌合時の間隔D1は、
2t ≦ D1 ≦ 5t ・・・(2)
の関係を満たす。
2.成形
図4は、第1実施形態に係る成形工程を説明する概略図である。
【0028】
成形型1を用いてシート材Xから成形品Yを成形する場合について図4を用いて説明する。ここでは、下型5が固定され、上型3が上下に移動可能に保持され、上型3が下型5に近づく例を説明する。
まず、図4の(a)に示すように、下型5の上面に所定幅のシート材Xを載置する。この後、図4の(b)に示すように上型3を下降させ、さらに図4の(c)に示すように上型3を下降させて下型5に近づける。これにより、下型5に載置されたシート材Xが下型5の雌型部分15の上面23及び上型3の雄型部分11の下面21に沿うように賦形される。
【0029】
このとき、シート材Xは、成形型1の内部の成形予定領域に引き込まれる。下型5の周辺部分13の成形空間7側の上面が下り勾配の傾斜支持面29となっている。このため、傾斜支持面29上のシート材Xには斜面に沿って斜め下方に向かう力が作用し、シート材Xは、成形予定領域にスムーズに引き込まれる。
上型3がさらに下降し、図4の(d)に示すように、雄型部分11と雌型部分15との間にシート材Xが挟まれて、シャーエッジによりシャー(切断)される。
【0030】
このとき、シャーエッジの高さHをシート材Xの成形後の厚み(成形後の成形体における成形型1内の成形空間7の端部に相当する部分の厚みtである。)の1.0倍超、2倍以下としているため、成形型1内が密閉される直前にシート材Xが切断され、成形空間7の体積に略等しいシート材Xaが供給される。
なお、成形空間7に対して供給されるシート材Xaが少ないと、成形品Yの厚みが予定の厚みより薄くなったり、一部で充填不足による欠けが生じたりする。逆に、成形空間7に対して供給されるシート材Xaが多いと、成形品Yの厚みが予定の厚みよりも厚くなったり、厚みムラが大きくなったりする。
【0031】
シート材Xが切断された後、上型3を下型5に対して所定位置まで下降させる。これにより、シート材Xaの賦形が完了するとともに、シート材Xaに圧縮力が作用する。
シート材Xの樹脂材料が熱硬化性樹脂の場合は、加熱を行うことで成形型1内の成形空間7に対応した成形品Yを得ることができる。なお、加熱にあわせて必要に応じて加圧しても良い。また、シート材Xの樹脂材料が熱可塑性樹脂の場合は、供給時にシート材Xが変形可能な程度にまで加熱しておき、賦形後にシート材Xの温度が下がって熱可塑性樹脂が固化すると、成形型1内の成形空間7に対応した成形品Yが得られる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る成形型システムについて、図5図7を用いて説明する。
1.構成
図5は、第2実施形態に係る成形型システム101の断面図である。
【0032】
成形型システム101は、図5に示すように、上型103と下型105とを備える型部107と、支持部109とを備える。
上型103と下型105は両者が上下方向に遠近可能な状態で支持される。成形に際して、上型103と下型105の間に、図7に示すように、シート材X1が配される(供給される)。なお、上型103や下型105を支持する手段として、例えば、プレス機(圧縮機)等があり、上型103はスライド111に、下型105はボルスタ113に、それぞれ着脱自在に装着される。
【0033】
上型103と下型105は互いに嵌合する構成を有し、嵌合状態では、型部107の内部に成形空間が形成される。
上型103は、上方へ凹入する、所謂、雌型であり、雌型部分123とその周辺の周辺部分121とを有する。下型105は、上型103の雌型部分123と嵌合する雄型部分125を有する。
【0034】
雌型部分123の下面127と雄型部分125の上面129は、上型103と下型105との間隔が小さくなると、型部107の内部にシート材X1が引き込まれるような、形状をしている。
上型103(雌型部分123)と下型105(雄型部分125)とが嵌合する際に、成形空間の端部でシャーエッジが構成される。具体的には、雄型部分125の外面125aと雌型部分123の内面123aとで構成される嵌合部分によりシャーエッジが構成される。なお、第2実施形態におけるシャーエッジの高さも、第1実施形態におけるシャーエッジの高さと同じ範囲で規定される。
【0035】
上型103の周辺部分121は、図5に示すように、雌型部分123における引き込む方向(図5では、左右方向である。)の端部の下端から外方に移るに従って(雌型部分123か離れるに従って)、上方へ向かう登り勾配の傾斜面131と、傾斜支持面の上端からさらに外方へと拡がる水平な平坦面133とを有する。
図6は、第2実施形態に係る支持部109を示す斜視図である。
【0036】
支持部109は、図5及び図6に示すように、支持体141を備える。支持体141は、上型103又は下型105に連動して移動する。ここでは、上型103に連動する。具体的には、支持部109は、支持体141を上下動自在に支持する支持手段143と、支持体141を上型103の下降に合わせて下降させる下降手段145とを有する。
支持体141は、図6に示すように、2つあり、シート材X1において、当該シート材X1が型部107内への引き込まれる方向と直交する方向の両側に配される。支持体141のシート材X1と接触する部分は、下型105に近づくに従って下降する下り勾配の傾斜面141aとなっている。なお接触する傾斜面141aは、シート材X1を下方から支持する傾斜支持面(この傾斜支持面も符号「141a」とする。)である。
【0037】
2つの支持体141は、図6に示すように、連結体147により連結されている。
支持手段143は、ここでは、弾性体、具体的には、コイルバネにより構成される。支持体141は、その下面に下方に延伸する棒体149が取着されている。図5に示すように、コイルバネの中央の穴を棒体149が挿通する状態で、棒体149の下部側がボルスタ113の穴に挿入されている。これにより、支持体141が安定した軌道で上下動できる。
【0038】
下降手段145は、支持体141の上面に設けられ且つ上面から上方へと突出する突出片により構成される。この突出片が、上型103が下降してきたときに、上型103の周辺部分121の平坦面133と当接する。これにより、上型103の下降に合わせて支持体141が下降する。なお、突出片は下面からネジ部が突出し、支持体141の上面に存在するネジ穴に螺合する。ネジ部のねじ込み量の調整により、突出片の突出高さを調整できる。
2.成形
図7は、第2実施形態に係る成形工程を説明する概略図である。
【0039】
成形型システム101を用いてシート材X1から成形品Yを成形する場合について図7を用いて説明する。ここでも、下型105が固定され、上型103が下型105に近づく。
まず、図7の(a)に示すように、下型105の上面と支持体141の上面とに亘って所定幅のシート材X1を載置する。この後、図7の(b)に示すように上型103を下降させる。これにより、シート材X1が、成形予定領域内に引き込まれ、上型103の雌型部分123の下面127や下型105の雄型部分125の上面129に沿うように賦形される。このとき、上型103に合わせて下降する支持体141の上面が下り勾配の傾斜支持面141aとなっているため、シート材X1がスムーズに引き込まれる。
【0040】
上型103がさらに下降し、図7の(c)に示すように、上型103と下型105とが嵌合する際に、シャーエッジにより、成形予定領域外に存するシート材X1bがシャー(切断)される。このとき、シャーエッジの高さHをシート材X1の成形後の厚み(成形後の成形体における成形型1内の成形空間7の端部に相当する部分の厚みtである。)の1.0倍超、2倍以下としているため、型部107が密閉される直前にシート材X1が切断され、成形空間の体積に略等しいシート材X1aが供給される。
【0041】
シート材X1が切断された後も上型103を下型105に対して所定位置まで下降させる。これにより、上型103及び下型105に対してシート材X1aの賦形が完了する。このあと、シート材X1の樹脂材料が熱可塑性樹脂の場合はシート材X1aの温度が下がることにより、シート材X1の樹脂材料が熱硬化性樹脂の場合はシート材X1aを加熱する(必要があれば加圧も)ことにより、成形品Yが得られる。
<第3実施形態>
第3実施形態に係る賦形型システムについて、図8図9を用いて説明する。
1.構成
図8は、第3実施形態に係る賦形型システム201の断面図である。
【0042】
賦形型システム201は、図8に示すように、上型203と下型205とを備える型部207と、支持部109と、シャー部209とを備える。支持部は、第2実施形態で説明した支持部109と同じ構成であり、ここでの説明は省略する。
上型203と下型205は両者が上下方向に遠近可能な状態で支持される。上下に支持された上型203と下型205の間には、図9に示すように、シート材X2が供給される。なお、上型203や下型205を支持する手段として、例えば、プレス機(圧縮機)等があり、上型203はスライド221に、下型205はボルスタ223に、それぞれ着脱自在に装着される。
【0043】
上型203と下型205とが互いに上下方向に近接してシート材X2に接触することで、シート材X2を上型203及び下型205に対応した形状に賦形できる。
上型203は、中央にシート材X2を賦形する上賦形部分225と、上賦形部分225の周囲に位置する周辺部分227とを有する。ここでは、上賦形部分225の下面は、周辺部分227の下面を基準にして複数個所で凹入している。周辺部分227は、シャー部209を格納する格納穴229を有している。
【0044】
上型203は、図8に示すように上型203と下型205とが離れている状態ではスライド221から離れ、図9の(d)に示すように上型203と下型と205とが接触している状態ではスライド221に接触するように、弾性体235等を介してスライド221に取り付けられている。なお、弾性体235として、例えば、コイルスプリング、ガススプリング、エアスプリング等を利用できる。また、弾性体に換えて、例えば、ダンパーやシリンダー等も利用できる場合がある。
【0045】
下型205は、上型の203の上賦形部分225の下方に配される下賦形部分231を有している。下賦形部分231の上面は、上賦形部分225の下面の凹入部分に対応して突出している。なお、上賦形部分225の下面及び下賦形部分231の上面の凹凸形状により、上型203と下型205の近接(当接)時に、型部207の内部にシート材X2を引き込む構造となる。また、上賦形部分225と下賦形部分231との間であってシート材X2が賦形される空間を賦形空間とする。
【0046】
シャー部209は、図8に示すように上型203と下型205とが離れている状態では上型203の格納穴229の内部に格納され、図9の(d)に示すように上型203と下型と205とが接触している状態では格納穴229から張り出しているように、構成されている。
シャー部209は、ここでは、軸方向の中央に段部を有する柱状体により構成されている。シャー部209の全長は、図8に示すように上型203と下型205とが離間した状態において、スライド221の下面と上型203の下面との距離に相当する。
【0047】
シャー部209の上端はスライド221の下面と当接しており、図9の(d)に示すように上型203と下型と205との間隔が狭くなるに従って、シャー部209の下部が格納穴229から張り出すようになっている。なお、シャー部209は、図8に示すように、支持部109により下方から支持され、落下しないようになっている。
シャー部209は、図9の(d)に示すように、上型203と下型205との当接に合わせて、下型205の側面に沿って移動する。これにより、上型203の上賦形部分225と下型205の下賦形部分231との間から張り出した(「下型205から張り出した」も同意語である。)シート材X2に接した後、張り出したシート材X2がシャーされる。
【0048】
なお、図9の(e)のように、上型203と下型205との境界部分(シート材X2の側面でもある。)をシャー部209が覆う状態で留まるようにしておけば、シャー部209と上賦形部分225と下賦形部分231とにより密閉状態の成形空間を形成することができる。この場合、この賦形型システム201を成形型システムにも利用できる。
2.賦形
図9は、第3実施形態に係る賦形工程を説明する概略図である。
【0049】
賦形型システム201を用いてシート材X2を賦形する場合について図9を用いて説明する。ここでも、上型203が下型205に近づく。
まず、図9の(a)に示すように、下型205の上面と支持部109の上面に亘って所定幅のシート材X2を載置する。この後、図9の(b)及び(c)に示すように上型103を下降させる。これにより、シート材X2が、型部207内の賦形空間に引き込まれて、上型203の上賦形部分225の下面や下型205の下賦形部分231の上面に沿うように賦形される。このとき、シート材X2は、上型203に合わせて下降する支持部109の傾斜支持面(141a)により、賦形空間にスムーズに引き込まれる。
【0050】
上型203がさらに下降し、図9の(d)に示すように、上型203と下型205とが当接し、スライド221と上型203との間隔が狭くなるに従って、シャー部209が下方へと張り出し始める。そして、図9の(e)に示すように、上型203と下型205とからはみ出したシート材X2を切断する。これにより、上型203及び下型205に対してシート材X2の賦形が完了する。
3.その他
第3実施形態では、シート材を所定形状に賦形する賦形型システム201について説明している。しかしながら、シート材X2の樹脂材料が熱可塑性樹脂の場合、型部207に供給されるシート材は、変形可能な状態に加熱されており、賦形型システムで所定形状に賦形された後、シート材X2の温度が降下すると、熱可塑性樹脂が固化して、所定形状に成形されたことにもなる。
【0051】
このように、熱可塑性樹脂を利用したシート材が加熱されて変形可能な状態で供給された場合は、賦形型システムは成形型システムとしても機能することとなる。
<変形例>
以上、発明に係る実施形態に基づいて説明したが、発明の内容が、上記の実施形態に示された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を実施することができる。なお、ここでいう変形例は、以下で説明する例であり、図面を参照しながらする変形例1等に限定するものではない。
【0052】
また、上記の実施形態の構成同士を適宜組み合わせても良いし、以下で説明する複数の変形例の構成同士を適宜組み合わせても良いし、上記実施形態の構成と変形例の構成とを適宜組み合わせてもよい。
1.上型と下型
(1)雄・雌関係
第1実施形態では、上型3が雄型で、下型5が雌型である。第2実施形態では、上型103が雌型で、下型105が雄型である。成形空間を内部に有する成形型においては、上述のように、上型及び下型の雄・雌の関係は特に限定されるものではない。
(2)嵌合時の移動型
第1〜第3実施形態では、上型3,103,203が、下型5,105,205に対して移動するように保持できるプレス機を利用している。しかしながら、下型を上型に対して移動させることができる装置を利用しても良いし、上型と下型とが上下方向にそれぞれ独立して移動させることができる装置を利用しても良い。
(3)型数
実施形態では、上型及び下型をそれぞれ1つの型で構成しているが、例えば、上型又は/及び下型を複数の型部材を利用して構成しても良い。
(4)型部分の上下面の形状
第1実施形態では、図3に示すように、成形空間7の端部7aにおける雌型部分15の上面23を基準にした場合、上面23は1つ以上の箇所で上方に突出するような形状をし、雄型部分11の下面21は1つ以上の箇所で上方に凹入するような形状をしている。
【0053】
しかしながら、雄型部分11の下面21及び雌型部分15の上面23の凹凸形状は、図3と逆であっても良く、この例を変形例1として以下説明する。
図10は、変形例1に係る成形型301の断面図である。
変形例1に係る成形型301は、上型303と下型305を有している。ここでは、上型303は、雄型であり、雄型部分307と周辺部分309とを有する。下型305は、雌型であり、雌型部分313と周辺部分315とを有している。
【0054】
雄型部分307の下面321は、成形空間317の端部317aを構成する面を基準すると、下方(雌型部分313)に向けて突出する形状をしている。雌型部分313の上面323は、成形空間317の端部317aを構成する面を基準すると、雄型部分307の下方へと突出位置に対応した位置で下方に凹入する形状をしている。
なお、ここでの雄型部分307の下面321と雌型部分313の上面323と凹凸形状は、図3で示された下面21と上面23の凹凸形状と逆であるが、雄型部分と雌型部分との凹凸形状は、図3で示された下面21や上面23の凹凸形状と、図10で示された下面321や上面323の凹凸形状とを組み合わせた形状であっても良い。
【0055】
なお、図10においても、下型305の周辺部分315における成形空間317側には、当該成形空間317に向かう下り勾配の斜面325を有している。当然、図3図10で示された形状の以外の下面や上面であってもよい。
2.傾斜支持面(傾斜面)
(1)位置
第1実施形態では、傾斜支持面29は、図3の拡大部分に示すように、下型5の雌型部分15を構成する内面15aの上端に連続しても設けられている。つまり、傾斜支持面29は、成形空間7に近接して設けられている。
【0056】
しかしながら、傾斜支持面は、成形予定領域に向けた下り勾配であれば良く、成形予定領域に近接して設ける必要はなく、成形空間から少し離れている例を変形例2として以下説明する。
図11は、変形例2に係る成形型401の断面図である。
変形例2に係る成形型401は、上型403と下型405とを有している。ここでは、上型403は、雌型であり、雌型部分407と周辺部分409とを有する。下型405は、雄型であり、雄型部分413と周辺部分415とを有している。
【0057】
上型403は、周辺部分409の下面が成形予定領域(雌型部分407)から離れるに従って(図11では左側に移るに従って)、上方へ昇る段差面409aとなっている。下型405は、周辺部分415に、成形予定領域に近接して溝417を有しており、当該溝417の外側(図11では左側である。)に傾斜支持面419を有している。
上型403と下型405とが嵌合する際に、上型403における周辺部分409の最下面409bを有する部分421が、下型405の溝417に嵌る。これにより、シャーエッジが構成される。なお、溝417は、嵌合時に切断したシート材が上型403と下型405とにより挟まれないような深さと幅とを有している。
(2)形状
第1実施形態や第2実施形態等では、成形型1や型部107の内部に引き込まれるシート材は、引き込まれる方向と直交する方向(図3図5では紙面に対して直交する方向)に傾斜していない状態で、傾斜支持面29,141aに支持されている。
【0058】
しかしながら、傾斜支持面は、成形型や型部の内部に引き込まれるシート材を下側から支持できればよく、シート材の引き込まれる方向と直交する方向に高低差がある状態で、シート材を支持するようにしてもよい。
引き込まれる方向と直交する方向に高低差を有する状態でシート材を支持する例を変形例3として以下説明する。
【0059】
図12は、変形例3に係る成形型システムの支持部を示す斜視図である。
変形例3に係る成形型システムは、第2実施形態に係る型部107と同様の構成の型部と、支持部501とを備える。型部の説明・図示は省略する。
支持部501は、図12に示すように、支持本体503を備える。支持本体503は、第2実施形態での支持体141と同様に、下型(成形空間)に近づくに従って下降する下り勾配の斜面503aを有している。
【0060】
支持本体503は第2実施形態と同様に上型に連動して移動する。具体的には、第2実施形態で説明した支持手段143と下降手段145と同様の構成の支持手段と下降手段を利用できる。なお、支持手段と下降手段の説明は第2実施形態の記載の通りである。
支持本体503は、図12に示すように、例えば、2つあり、シート材の引き込まれる方向と直交する方向の両側に配される。2つの支持本体503は、図12に示すように、シート材の引き込まれる方向と直交する方向に高低差を有する状態で連結体505により連結されている。
【0061】
なお、ここでは、支持本体503が2つであったが、シート材の引き込まれる方向に間隔をおいて3つ以上設けられてもよい。また、ここでは、成形型システムとして説明したが、第3実施形態のように賦形型システムとしても適用できる。
(3)構造
第1実施形態の傾斜支持面29や第2実施形態の支持体141の傾斜支持面141a等では、成形空間に向かう実存する傾斜面を有していたが、支持するシート材が成形空間に対して傾斜する状態で型部の内部に引き込まれれば良く、傾斜面が実存しなくても良い。
【0062】
傾斜面が実存しない例を変形例4として以下説明する。
図13は、変形例4に係る成形型601の断面図である。
変形例4に係る成形型601は、上型603と下型605とを有している。ここでは、上型603は、第1実施形態に係る上型3と同じ構成であり、ここでの説明は省略する。下型605は、第1実施形態に係る下型5の雌型部分15と同様の雌型部分607を有している。下型605は、雌型部分607の外側に周辺部分609を有している。
【0063】
周辺部分609は、成形予定領域(雌型部分607)に近い部分に傾斜支持面611を有している。傾斜支持面611は、成形予備領域に向かう下り勾配の段差状をしている。つまり、傾斜支持面611は、段差の出張り部分の角(換言すると、段差を構成する水平面における成形予備領域側の端と垂直面における上端との交点P1〜P5)を結んだ仮想線Iが、成形空間に向かう下り勾配に傾斜している。なお、交点P1〜P4の角は、面取り加工やR加工されていても良い。
(4)成形用素材
第1実施形態で説明した成形型1、第2実施形態で説明した成形型システム101及び第3実施形態で説明した賦形型システム201で説明した傾斜支持面29,141aは、成形用素材としてのシート状が型締めに時に引き込まれる場合に、当該シート材を支持するものである。
【0064】
しかしながら、第1実施形態で説明した成形型1、第2実施形態で説明した成形型システム101及び第3実施形態で説明した賦形型システム201は、成形用素材がバルク状であっても利用できる。
この場合、第1実施形態の成形型1、第2実施形態の成形型システム及び第3実施形態の賦形型システムにおける傾斜支持面29,141aは、単なる傾斜面となる。
3.引き込まれる方向の数
実施形態及び変形例では、成形後の成形品又は賦形後のシート材は、図1にしめすように、厚みが略一定であり、シート材の主面を基準して、当該主面と直交する方向に凹入する凹入部(基準を変わると同方向に突出する突出部となる。)を引き込む方向に複数有するような形状をしている。つまり、引き込まれる方向が1つであるような形状をしている。
【0065】
しかしながら、引き込まれる方向が複数あっても良く、複数ある例を変形例5として説明する。変形例5では、変形例に係る成形型や成形型システムにより成形された成形品について説明する。
変形例5では、成形品を利用して説明するが、賦形型や賦形型システムについても同様のことが言える。なお、実施形態等や以下で説明する形状は、一例であり、当然他の形状であっても構わない。
【0066】
図14図16は、変形例5〜7に係る成形品の斜視図である。
図14に示す変形例5の成形品701は、厚みが略一定であり、成形品701の周辺部分の上面を基準して、上方へと四角錐台状に突出する突出部703を2方向に間隔をおいてマトリクス状に有している。この場合、シート材の引き込まれる方向の数は、マトリクスを構成する列方向と行方向の2つである。そして、傾斜支持面は、四角形をした型部分の4辺の外側に存する。
【0067】
図15に示す変形例6の成形品711は、厚みが略一定であり、成形品711の周辺部分の上面を基準して、上方へと四角錐台状に突出する突出部713を中央に1つ有している。この場合、シート材の引き込みは、成形空間の周りの全周から成形空間の中心に向かって行われる。傾斜支持面は、四角形をした型部分の4辺の外側に存する。
図16に示す変形例7の成形品721は、厚みが略一定であり、成形品721の周辺部分を基準して、上方へと円錐台状に突出する突出部723を中央に1つ有している。この場合、シート材の引き込みは、成形空間の周りの全周から成形空間の中心に向かって行われる。傾斜支持面は、平面視円形状をした型部分の外側に全周に亘って存する。
4.成形用素材
実施形態等では、シート状の成形用素材を使用している。このような成形用材料は樹脂材料を含んでおればよい。樹脂材料として、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂やこれらを混合したもの等がある。
【0068】
さらに、成形用素材として、樹脂材料に強化繊維が含まれていても良い。強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維やこれらを組み合わせたもの等がある。強化繊維の長さは、限定するものでなく、長繊維(目安として、3mm以上である。)、短繊維(目安として、3mm以下である。)であってもよい。強化繊維の形態は、単糸状であってもよいし、束状であってもよい。
【0069】
なお、シート材の具体例としては、プリプレグ(単層、積層したもの)、SMCシート、スタンパブルシート等がある。バルク状の成形用素材の具体例としては、BMC等がある。
但し、シート材は、雄型部分と雌型部分の間(あるいは、上型と下型の間)に配され、型締めに伴って成形型の内部に引き込まれるような機械的特性を有する必要がある。例えば、型締めに、型内のシート材が伸びて雌型部分の上面に沿うような素材(弾性率の低い材料)では、型締めに伴って材料が引き込まれることがなく、本発明に係る金型等の効果は得られ難い。
【0070】
換言すると、型締めに伴って成形型の内部に引き込まれるような弾性率や強度等の特性を有する成形用素材にとって上記で説明した成形型、成形システム、賦形型、賦形型システムは有用と言える。
5.スプリングバック
成形用素材として、例えばマトリクスとして熱可塑性樹脂を用いさらに圧縮成形された複合材料を利用する場合、加熱時に成形用素材の厚みが膨張するという性質を有する。つまり、成形用素材中の熱可塑性樹脂が加熱により溶融することで、強化繊維の拘束力が弱まり、圧縮成形前の厚みに回復しようとする(所謂、スプリングバックである。)。
【0071】
このように、スプリングバックする成形用素材を成形する場合には、スプリングバックを考慮した成形型、具体的には、シャーエッジの高さHが必要となる。なお、上記実施形態等、変形例等で説明したシャーエッジの高さHは、スプリングバックについて考慮されていない。
スプリングバックを考慮にしたシャーエッジの高さHは、成形後の成形体において成形空間の端部に相当する部分の厚みをtとし、当該厚みを基準にしたスプリングバック量をSbとすると、
1.0×(t+Sb) < H ≦ 2.0×(t+Sb) ・・・(3)
の関係を満たすことが好ましい。
【0072】
スプリングバック量Sbは、以下の式により算出できる。
Sb=ts−t ・・・(4)
ここで、tsは、厚みtの成形用素材に対して圧縮負荷を作用させずに加熱のみを行った際に、スプリングバックにより膨張した成形用素材の厚みである。
また、スプリングバック率Sr(%)は、
Sr=(Sb/t)×100 ・・・(5)
により算出できる。従って、成形用素材の成形前の厚みtとスプリングバック率Srとが分かっている場合には、式(5)からスプリングバック量Sbを算出できる。
【0073】
ここで、例えば、成形用素材としてスプリングバックを考慮する必要がない場合、シャーエッジの高さHは、スプリングバック量Sbを「0」として、上記式(3)により算出した以下の関係を満たせばよい。
1.0×t < H ≦ 2.0×t ・・・(6)
なお、式(6)は、上記した式(1)と同じになる。
【符号の説明】
【0074】
X 成形用素材
Y 成形品
1 成形型
3 上型
5 下型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18