【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン−α−オレフィン共重合体、軟化点が80〜100℃であるポリプロピレン、軟化点が110〜150℃である粘着付与剤、及びワックスを含むことを特徴とする。
【0008】
(エチレン−α−オレフィン共重合体)
本発明のホットメルト接着剤はエチレン−α−オレフィン共重合体を含んでいる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの炭素数は、3〜20が好ましく、6〜8がより好ましい。α−オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテン等が挙げられる。なかでも、ホットメルト接着剤の耐寒接着性の向上の観点から、1−オクテンが好ましい。エチレン−1−オクテン共重合体によれば、ホットメルト接着剤の硬化物に適度な柔軟性を付与することができ、これにより低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力の低下を抑制することができる。
【0009】
エチレン−α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィン成分の含有量は、20〜40モル%が好ましく、30〜40モル%がより好ましく、35〜40モル%が特に好ましく、35〜37モル%が最も好ましい。α−オレフィン成分の含有量が少な過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、ホットメルト接着剤の硬化物の柔軟性を低下させ、そのため低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。また、α−オレフィン成分の含有量が多過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、結晶化度が低く、そのためホットメルト接着剤の耐熱接着性を低下させる虞れがある。
【0010】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、5〜2500g/10分が好ましく、150〜2500g/10分がより好ましく、500〜1500g/10分が特に好ましく、850〜1200g/10分が最も好ましい。メルトフローレートが低過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、溶融状態のホットメルト接着剤の流動性や被着体への濡れ性を低下させ、そのためホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。また、メルトフローレートが高過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、ホットメルト接着剤の硬化物の凝集力や接着力を低下させる虞れがある。
【0011】
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠して190℃、荷重21.18Nの条件下にて測定された値を意味する。
【0012】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、チーグラー触媒や、メタロセン触媒、クロム系触媒などのシングルサイト系触媒を用いて製造されることが好ましい。なかでも、メタロセン触媒がより好ましい。
【0013】
エチレン−1−オクテンとの共重合体としては、市販されている製品を用いることができる。例えば、ダウケミカル社から販売されている以下の製品が挙げられる。
商品名「アフィニティ EG8185」(MFR=30g/10分)
商品名「アフィニティ EG8200」(MFR=5g/10分)
商品名「アフィニティ GA1900」(MFR=1000g/10分)
商品名「アフィニティ GA1950」(MFR=500g/10分)
商品名「アフィニティ GA1875」(MFR=1250g/10分)及び
商品名「アフィニティ GA1000R」(MFR=1000g/10分)
【0014】
(ポリプロピレン)
本発明のホットメルト接着剤は、軟化点が80〜100℃であるポリプロピレンを含んでいる。このようなポリプロピレンを上述したエチレン−α−オレフィン共重合体と組み合わせて用いることにより、耐熱接着性及び耐寒接着性の双方に優れているホットメルト接着剤を得ることができる。
【0015】
ポリプロピレンの軟化点は、80〜100℃とされるが、82〜98℃が好ましく、85〜95℃がより好ましい。軟化点が低過ぎるポリプロピレンでは、ホットメルト接着剤の耐熱接着性を低下させる虞れがある。また、軟化点が高過ぎるポリプロピレンではホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させる虞れがある。
【0016】
なお、ポリプロピレンの軟化点は、JIS K6863で規定されているホットメルト接着剤の軟化点試験方法に準拠して測定された値を意味する。
【0017】
ホットメルト接着剤中におけるポリプロピレンの含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体100重量部に対して、25〜400重量部が好ましく、30〜350重量部がより好ましく、80〜120重量部が特に好ましい。ホットメルト接着剤におけるポリプロピレンの含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の耐熱クリープ性を低下させる虞れがある。また、ホットメルト接着剤におけるポリプロピレンの含有量が多過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化物の柔軟性を低下させ、そのため低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。
【0018】
ポリプロピレンは、チーグラー触媒や、メタロセン触媒、クロム系触媒などのシングルサイト系触媒を用いて製造されることが好ましい。なかでも、メタロセン触媒がより好ましい。シングルサイト系触媒を用いて製造されたポリプロピレンによれば、ホットメルト接着剤の耐熱接着性及び耐寒接着性を向上させることができる。
【0019】
ポリプロピレンとしては、市販品を用いることができる。例えば、出光興産株式会社から販売されている商品名「L−MODU S400」(軟化点90℃)などが挙げられる。
【0020】
(粘着付与剤)
本発明のホットメルト接着剤は粘着付与剤を含んでいる。粘着付与剤としては、例えば、スチレン系ブロック共重合体、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレン−フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。粘着付与剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0021】
なかでも、粘着付与剤としては、石油樹脂及びその水素添加物が好ましく、石油樹脂の水素添加物がより好ましく、石油樹脂の水素添加物のみが特に好ましい。石油樹脂としては、脂肪族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂、及び環状脂肪族石油炭化水素樹脂などが挙げられる。石油樹脂及びその水素添加物は、エチレン−α−オレフィン共重合体やポリプロピレンとの相溶性に優れ、これによりホットメルト接着剤の接着性を向上させることができる。
【0022】
粘着付与剤の軟化点は、110〜150℃とされ、115〜145℃が好ましく、120〜140℃がより好ましく、120〜135℃が特に好ましく、120〜129℃が最も好ましい。粘着付与剤の軟化点を上記範囲とすることによって、粘着付与剤と、エチレン−α−オレフィン共重合体及びワックスとは優れた相溶性を有している。従って、夏場の倉庫内などのような高温環境下においてホットメルト接着剤の凝集力を向上させることができ、ホットメルト接着剤は優れた耐熱接着性を有している。又、冷蔵保管若しくは冷凍保管、冬季又は寒冷地などのような低温環境下においても、ホットメルト接着剤が固くなることが抑制されており、ホットメルト接着剤は優れた耐寒接着性を有している。よって、ホットメルト接着剤は、広い温度範囲において優れた接着性を発揮する。更に、ホットメルト接着剤は、上述のように、粘着付与剤、エチレン−α−オレフィン共重合体及びワックス同士が優れた相溶性を有していることから、塗布時において適度な粘度を有しており、フック現象を抑制し優れた塗工性を有している。
【0023】
特に、紙製包装用資材の組み立てに用いた場合、紙製包装用資材の組立後においても、段ボールなどの紙は元の状態に戻ろうとする復元力を有し、紙同士にはこれらが剥離する方向に応力が加わっている。ホットメルト接着剤によれば、耐熱接着性及び耐寒接着性に優れていることから、紙製包装用資材が広い温度範囲において用いられても、貼り合わせ部分が剥離するようなことはなく、長期間に亘って広い温度範囲にて使用可能な紙製包装用資材を形成することができる。
【0024】
なお、粘着付与剤の軟化点は、JIS K6863で規定されているホットメルト接着剤の軟化点試験方法に準拠して測定された値を意味する。
【0025】
ホットメルト接着剤における粘着付与剤の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリプロピレンの合計100重量部に対して、50〜150重量部が好ましく、50〜120重量部がより好ましく、60〜100重量部が特に好ましい。ホットメルト接着剤中における粘着付与剤の含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり、そのためホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。また、ホットメルト接着剤中における粘着付与剤の含有量が多過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化物の柔軟性を低下させ、そのため低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。
【0026】
(ワックス)
本発明のホットメルト接着剤はワックスを含んでいる。ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、及びポリエチレンワックスなどの合成ワックス;パラフィンワックス、及びマイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;木ロウ、カルバナワックス、蜜ロウ、及び植物ワックスなどの天然系ワックスが挙げられる。植物ワックスとしては、例えば、ひまわりやコメなどの植物に由来するワックスなどが挙げられる。ワックスは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
なかでも、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスが好ましく、フィッシャートロプシュワックスがより好ましい。これらのワックスによれば、ホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させることなく、塗工性を向上させることができる。
【0028】
ワックスの融点は、60〜120℃が好ましく、70〜115℃がより好ましく、90〜110℃が特に好ましい。融点が上記範囲内であるワックスによれば、ホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させることなく、塗工性を向上させることができる。
【0029】
なお、ワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。具体的には、DSC装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、ワックス10mgを、空気雰囲気下において、30℃から150℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、25℃まで冷却した後、30℃から150℃まで昇温速度5℃/分で再度加熱し、この再度の加熱過程におけるDSC曲線の最も高い吸熱ピーク温度を、ワックスの融点とする。
【0030】
ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリプロピレンの合計100重量部に対して、25〜75重量部が好ましく、30〜70重量部がより好ましく、35〜65重量部が特に好ましい。ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり、そのためホットメルト接着剤の塗工性が低下する。具体的には、ホットメルト接着剤を被着体に塗工する際に、フック現象や脈動が生じるなどしてホットメルト接着剤を被着体に安定的に塗布することができず、ホットメルト接着剤の塗布不良が原因となってホットメルト接着剤の接着力が不安定になる虞れがある。また、ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化速度の遅延を招く虞れがあり、例えば、段ボールやカートンケースなどの紙製包装箱の組立てに用いた場合、紙製包装箱の組立て直後に、紙が元の状態に戻ろうとする復元力によって貼り合わせ部分に剥離が生じる虞れがある。また、ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量が多過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化物が硬くなり過ぎて接着力を低下させる虞れがある。
【0031】
(酸化防止剤)
本発明のホットメルト接着剤は、酸化防止剤をさらに含んでいるのが好ましい。酸化防止剤を用いることにより、ホットメルト接着剤の熱安定性を向上させることができる。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0033】
ホットメルト接着剤中における酸化防止剤の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリプロピレンの合計100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。
【0034】
本発明のホットメルト接着剤は、糸曳きの発生を低減するために、エチレン−酢酸ビニル共重合体、又はエチレン−アクリル酸エステル共重合体をさらに含んでいてもよい。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、特開2007−51235号公報に開示されている。エチレン−アクリル酸エステル共重合体は、特開2006−188580号公報に開示されている。
【0035】
本発明のホットメルト接着剤は、充填剤、増量剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、軟化剤(可塑剤)、プロセスオイル、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、及び帯電防止剤などの他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0036】
本発明のホットメルト接着剤は、樹脂成分としてエチレン−α−オレフィン共重合体及び軟化点が80〜100℃であるポリプロピレンを必須とするが、その他のポリオレフィン系樹脂、スチレン系ブロック共重合体などを含んでいてもよい。
【0037】
ホットメルト接着剤の製造方法としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、粘着付与剤、及びワックスを、120〜190℃で加熱溶融し、均一に攪拌混練させる方法などが挙げられる。
【0038】
本発明のホットメルト接着剤は、包装、製本、木工、繊維加工、金属工業、電気、電子工業など広い範囲の用途に使用することができ、種々の被着体を接着することができる。本発明のホットメルト接着剤は、段ボール箱、紙製箱、段ボール製容器、紙製容器などの紙製包装用資材を形成するために好適に用いることができる。被着体を構成する材料としては、例えば、鉄、アルミニウムなどの金属及びその合金;ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリメタクリレート、及びポリカーボネートなどの合成樹脂;セルロース系材料;皮革などが挙げられる。セルロース系材料からなる被着体としては、例えば、紙、ボード、段ボール、及びセロハンなどが挙げられる。
【0039】
また、ホットメルト接着剤によって被着体を接着する方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を用いて行えばよい。例えば、まず、ホットメルト接着剤を加熱して溶融させた後、溶融状態のホットメルト接着剤を少なくとも一方の被着体に塗工する。次に、一方の被着体を他方の被着体に積層した後、ホットメルト接着剤を冷却硬化させる。これにより、2枚の被着体を貼り合わせることができる。
【0040】
ホットメルト接着剤の加熱溶融温度は、135〜180℃が好ましい。本発明のホットメルト接着剤は、上述したホモポリプロピレンの添加による溶融粘度の上昇が高く低減されている。したがって、ホットメルト接着剤を135〜165℃と低い温度で加熱溶融させた場合であっても、ホットメルト接着剤の溶融粘度が低く、これによりホットメルト接着剤の糸曳きの発生が高く低減されている。このようなホットメルト接着剤は、塗工装置や被着体を汚染することなく、精度よく塗工することができる。
【0041】
さらに、本発明のホットメルト接着剤は、上述したホモポリプロピレンの添加による熱安定性の低下も高く低減されている。したがって、溶融状態のホットメルト接着剤を長時間に亘って保存することもでき、このような場合であっても溶融状態のホットメルト接着剤のゲル化や炭化の発生が高く低減されている。