特許第6262585号(P6262585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262585
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤及び紙製包装用資材
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/08 20060101AFI20180104BHJP
   C09J 123/12 20060101ALI20180104BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180104BHJP
   C09J 191/06 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C09J123/08
   C09J123/12
   C09J11/06
   C09J191/06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-65456(P2014-65456)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-208812(P2014-208812A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-74435(P2013-74435)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】本多 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 啓司
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/039261(WO,A1)
【文献】 特開2012−246375(JP,A)
【文献】 特開平11−181386(JP,A)
【文献】 特開2001−059078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−α−オレフィン共重合体と、軟化点が80〜100℃であるポリプロピレンとを含み且つ上記エチレン−α−オレフィン共重合体及び上記ポリプロピレンの合計100重量部に対して、軟化点が110〜130℃である粘着付与剤50〜120重量部、及びワックス25〜75重量部を含むことを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項2】
エチレン−α−オレフィン共重合体が、エチレン−1−オクテン共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
ポリプロピレンを、エチレン−α−オレフィン共重合体100重量部に対して、25〜400重量部含むことを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1〜の何れか1項に記載のホットメルト接着剤を用いて形成されてなることを特徴とする紙製包装用資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱接着性及び耐寒接着性に優れているホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、様々な被着体を接着できることから、包装、製本、及び木工などの広い分野に用いられている。ホットメルト接着剤を用いた被着体の接着は、ホットメルト接着剤を加熱溶融させ、溶融状態のホットメルト接着剤を被着体に塗工した後、冷却硬化させることにより行われる。
【0003】
このようなホットメルト接着剤は、エチレン系共重合体などの熱可塑性樹脂を主成分として含有している。例えば、特許文献1には、エチレン−α−オレフィン共重合体、粘着付与剤及びワックスを含むホットメルト接着剤が開示されている。このように熱可塑性樹脂の他に粘着付与剤及びワックスをさらに用いることにより、ホットメルト接着剤の接着性、溶融粘度や硬化速度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−51235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のホットメルト接着剤によって接着された被着体を夏期の倉庫内など高温環境下に放置すると、ホットメルト接着剤の硬化物が軟化して接着力が低下し、これにより被着体が剥離する場合がある。したがって、ホットメルト接着剤の耐熱接着性の向上が必要とされている。高温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の軟化は、ホットメルト接着剤に含まれているエチレン−α−オレフィン共重合体などの熱可塑性樹脂が要因の一つとして挙げられる。そこで、ホットメルト接着剤中における熱可塑性樹脂の含有量を減らすことにより、ホットメルト接着剤の耐熱接着性を向上させることができる。しかしながら、熱可塑性樹脂の含有量の低減はホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させる場合がある。耐寒接着性が低いホットメルト接着剤によって接着した被着体を冷凍庫や冬期の倉庫内などの低温環境下に放置すると、ホットメルト接着剤の硬化物が固くなって接着力が低下し、これにより被着体の剥離が生じる。したがって、ホットメルト接着剤には、広い温度環境下であっても優れた接着性を発揮できることが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、耐熱接着性及び耐寒接着性の双方に優れているホットメルト接着剤及びこれを用いて形成された紙製包装用資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン−α−オレフィン共重合体、軟化点が80〜100℃であるポリプロピレン、軟化点が110〜150℃である粘着付与剤、及びワックスを含むことを特徴とする。
【0008】
(エチレン−α−オレフィン共重合体)
本発明のホットメルト接着剤はエチレン−α−オレフィン共重合体を含んでいる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの炭素数は、3〜20が好ましく、6〜8がより好ましい。α−オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテン等が挙げられる。なかでも、ホットメルト接着剤の耐寒接着性の向上の観点から、1−オクテンが好ましい。エチレン−1−オクテン共重合体によれば、ホットメルト接着剤の硬化物に適度な柔軟性を付与することができ、これにより低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力の低下を抑制することができる。
【0009】
エチレン−α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィン成分の含有量は、20〜40モル%が好ましく、30〜40モル%がより好ましく、35〜40モル%が特に好ましく、35〜37モル%が最も好ましい。α−オレフィン成分の含有量が少な過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、ホットメルト接着剤の硬化物の柔軟性を低下させ、そのため低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。また、α−オレフィン成分の含有量が多過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、結晶化度が低く、そのためホットメルト接着剤の耐熱接着性を低下させる虞れがある。
【0010】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、5〜2500g/10分が好ましく、150〜2500g/10分がより好ましく、500〜1500g/10分が特に好ましく、850〜1200g/10分が最も好ましい。メルトフローレートが低過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、溶融状態のホットメルト接着剤の流動性や被着体への濡れ性を低下させ、そのためホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。また、メルトフローレートが高過ぎるエチレン−α−オレフィン共重合体では、ホットメルト接着剤の硬化物の凝集力や接着力を低下させる虞れがある。
【0011】
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠して190℃、荷重21.18Nの条件下にて測定された値を意味する。
【0012】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、チーグラー触媒や、メタロセン触媒、クロム系触媒などのシングルサイト系触媒を用いて製造されることが好ましい。なかでも、メタロセン触媒がより好ましい。
【0013】
エチレン−1−オクテンとの共重合体としては、市販されている製品を用いることができる。例えば、ダウケミカル社から販売されている以下の製品が挙げられる。
商品名「アフィニティ EG8185」(MFR=30g/10分)
商品名「アフィニティ EG8200」(MFR=5g/10分)
商品名「アフィニティ GA1900」(MFR=1000g/10分)
商品名「アフィニティ GA1950」(MFR=500g/10分)
商品名「アフィニティ GA1875」(MFR=1250g/10分)及び
商品名「アフィニティ GA1000R」(MFR=1000g/10分)
【0014】
(ポリプロピレン)
本発明のホットメルト接着剤は、軟化点が80〜100℃であるポリプロピレンを含んでいる。このようなポリプロピレンを上述したエチレン−α−オレフィン共重合体と組み合わせて用いることにより、耐熱接着性及び耐寒接着性の双方に優れているホットメルト接着剤を得ることができる。
【0015】
ポリプロピレンの軟化点は、80〜100℃とされるが、82〜98℃が好ましく、85〜95℃がより好ましい。軟化点が低過ぎるポリプロピレンでは、ホットメルト接着剤の耐熱接着性を低下させる虞れがある。また、軟化点が高過ぎるポリプロピレンではホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させる虞れがある。
【0016】
なお、ポリプロピレンの軟化点は、JIS K6863で規定されているホットメルト接着剤の軟化点試験方法に準拠して測定された値を意味する。
【0017】
ホットメルト接着剤中におけるポリプロピレンの含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体100重量部に対して、25〜400重量部が好ましく、30〜350重量部がより好ましく、80〜120重量部が特に好ましい。ホットメルト接着剤におけるポリプロピレンの含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の耐熱クリープ性を低下させる虞れがある。また、ホットメルト接着剤におけるポリプロピレンの含有量が多過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化物の柔軟性を低下させ、そのため低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。
【0018】
ポリプロピレンは、チーグラー触媒や、メタロセン触媒、クロム系触媒などのシングルサイト系触媒を用いて製造されることが好ましい。なかでも、メタロセン触媒がより好ましい。シングルサイト系触媒を用いて製造されたポリプロピレンによれば、ホットメルト接着剤の耐熱接着性及び耐寒接着性を向上させることができる。
【0019】
ポリプロピレンとしては、市販品を用いることができる。例えば、出光興産株式会社から販売されている商品名「L−MODU S400」(軟化点90℃)などが挙げられる。
【0020】
(粘着付与剤)
本発明のホットメルト接着剤は粘着付与剤を含んでいる。粘着付与剤としては、例えば、スチレン系ブロック共重合体、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレン−フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。粘着付与剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0021】
なかでも、粘着付与剤としては、石油樹脂及びその水素添加物が好ましく、石油樹脂の水素添加物がより好ましく、石油樹脂の水素添加物のみが特に好ましい。石油樹脂としては、脂肪族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂、及び環状脂肪族石油炭化水素樹脂などが挙げられる。石油樹脂及びその水素添加物は、エチレン−α−オレフィン共重合体やポリプロピレンとの相溶性に優れ、これによりホットメルト接着剤の接着性を向上させることができる。
【0022】
粘着付与剤の軟化点は、110〜150℃とされ、115〜145℃が好ましく、120〜140℃がより好ましく、120〜135℃が特に好ましく、120〜129℃が最も好ましい。粘着付与剤の軟化点を上記範囲とすることによって、粘着付与剤と、エチレン−α−オレフィン共重合体及びワックスとは優れた相溶性を有している。従って、夏場の倉庫内などのような高温環境下においてホットメルト接着剤の凝集力を向上させることができ、ホットメルト接着剤は優れた耐熱接着性を有している。又、冷蔵保管若しくは冷凍保管、冬季又は寒冷地などのような低温環境下においても、ホットメルト接着剤が固くなることが抑制されており、ホットメルト接着剤は優れた耐寒接着性を有している。よって、ホットメルト接着剤は、広い温度範囲において優れた接着性を発揮する。更に、ホットメルト接着剤は、上述のように、粘着付与剤、エチレン−α−オレフィン共重合体及びワックス同士が優れた相溶性を有していることから、塗布時において適度な粘度を有しており、フック現象を抑制し優れた塗工性を有している。
【0023】
特に、紙製包装用資材の組み立てに用いた場合、紙製包装用資材の組立後においても、段ボールなどの紙は元の状態に戻ろうとする復元力を有し、紙同士にはこれらが剥離する方向に応力が加わっている。ホットメルト接着剤によれば、耐熱接着性及び耐寒接着性に優れていることから、紙製包装用資材が広い温度範囲において用いられても、貼り合わせ部分が剥離するようなことはなく、長期間に亘って広い温度範囲にて使用可能な紙製包装用資材を形成することができる。
【0024】
なお、粘着付与剤の軟化点は、JIS K6863で規定されているホットメルト接着剤の軟化点試験方法に準拠して測定された値を意味する。
【0025】
ホットメルト接着剤における粘着付与剤の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリプロピレンの合計100重量部に対して、50〜150重量部が好ましく、50〜120重量部がより好ましく、60〜100重量部が特に好ましい。ホットメルト接着剤中における粘着付与剤の含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり、そのためホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。また、ホットメルト接着剤中における粘着付与剤の含有量が多過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化物の柔軟性を低下させ、そのため低温環境下におけるホットメルト接着剤の硬化物の接着力を低下させる虞れがある。
【0026】
(ワックス)
本発明のホットメルト接着剤はワックスを含んでいる。ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、及びポリエチレンワックスなどの合成ワックス;パラフィンワックス、及びマイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;木ロウ、カルバナワックス、蜜ロウ、及び植物ワックスなどの天然系ワックスが挙げられる。植物ワックスとしては、例えば、ひまわりやコメなどの植物に由来するワックスなどが挙げられる。ワックスは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
なかでも、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスが好ましく、フィッシャートロプシュワックスがより好ましい。これらのワックスによれば、ホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させることなく、塗工性を向上させることができる。
【0028】
ワックスの融点は、60〜120℃が好ましく、70〜115℃がより好ましく、90〜110℃が特に好ましい。融点が上記範囲内であるワックスによれば、ホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させることなく、塗工性を向上させることができる。
【0029】
なお、ワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。具体的には、DSC装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、ワックス10mgを、空気雰囲気下において、30℃から150℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、25℃まで冷却した後、30℃から150℃まで昇温速度5℃/分で再度加熱し、この再度の加熱過程におけるDSC曲線の最も高い吸熱ピーク温度を、ワックスの融点とする。
【0030】
ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリプロピレンの合計100重量部に対して、25〜75重量部が好ましく、30〜70重量部がより好ましく、35〜65重量部が特に好ましい。ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり、そのためホットメルト接着剤の塗工性が低下する。具体的には、ホットメルト接着剤を被着体に塗工する際に、フック現象や脈動が生じるなどしてホットメルト接着剤を被着体に安定的に塗布することができず、ホットメルト接着剤の塗布不良が原因となってホットメルト接着剤の接着力が不安定になる虞れがある。また、ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量が少な過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化速度の遅延を招く虞れがあり、例えば、段ボールやカートンケースなどの紙製包装箱の組立てに用いた場合、紙製包装箱の組立て直後に、紙が元の状態に戻ろうとする復元力によって貼り合わせ部分に剥離が生じる虞れがある。また、ホットメルト接着剤中におけるワックスの含有量が多過ぎると、ホットメルト接着剤の硬化物が硬くなり過ぎて接着力を低下させる虞れがある。
【0031】
(酸化防止剤)
本発明のホットメルト接着剤は、酸化防止剤をさらに含んでいるのが好ましい。酸化防止剤を用いることにより、ホットメルト接着剤の熱安定性を向上させることができる。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0033】
ホットメルト接着剤中における酸化防止剤の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリプロピレンの合計100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。
【0034】
本発明のホットメルト接着剤は、糸曳きの発生を低減するために、エチレン−酢酸ビニル共重合体、又はエチレン−アクリル酸エステル共重合体をさらに含んでいてもよい。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、特開2007−51235号公報に開示されている。エチレン−アクリル酸エステル共重合体は、特開2006−188580号公報に開示されている。
【0035】
本発明のホットメルト接着剤は、充填剤、増量剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、軟化剤(可塑剤)、プロセスオイル、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、及び帯電防止剤などの他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0036】
本発明のホットメルト接着剤は、樹脂成分としてエチレン−α−オレフィン共重合体及び軟化点が80〜100℃であるポリプロピレンを必須とするが、その他のポリオレフィン系樹脂、スチレン系ブロック共重合体などを含んでいてもよい。
【0037】
ホットメルト接着剤の製造方法としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、粘着付与剤、及びワックスを、120〜190℃で加熱溶融し、均一に攪拌混練させる方法などが挙げられる。
【0038】
本発明のホットメルト接着剤は、包装、製本、木工、繊維加工、金属工業、電気、電子工業など広い範囲の用途に使用することができ、種々の被着体を接着することができる。本発明のホットメルト接着剤は、段ボール箱、紙製箱、段ボール製容器、紙製容器などの紙製包装用資材を形成するために好適に用いることができる。被着体を構成する材料としては、例えば、鉄、アルミニウムなどの金属及びその合金;ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリメタクリレート、及びポリカーボネートなどの合成樹脂;セルロース系材料;皮革などが挙げられる。セルロース系材料からなる被着体としては、例えば、紙、ボード、段ボール、及びセロハンなどが挙げられる。
【0039】
また、ホットメルト接着剤によって被着体を接着する方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を用いて行えばよい。例えば、まず、ホットメルト接着剤を加熱して溶融させた後、溶融状態のホットメルト接着剤を少なくとも一方の被着体に塗工する。次に、一方の被着体を他方の被着体に積層した後、ホットメルト接着剤を冷却硬化させる。これにより、2枚の被着体を貼り合わせることができる。
【0040】
ホットメルト接着剤の加熱溶融温度は、135〜180℃が好ましい。本発明のホットメルト接着剤は、上述したホモポリプロピレンの添加による溶融粘度の上昇が高く低減されている。したがって、ホットメルト接着剤を135〜165℃と低い温度で加熱溶融させた場合であっても、ホットメルト接着剤の溶融粘度が低く、これによりホットメルト接着剤の糸曳きの発生が高く低減されている。このようなホットメルト接着剤は、塗工装置や被着体を汚染することなく、精度よく塗工することができる。
【0041】
さらに、本発明のホットメルト接着剤は、上述したホモポリプロピレンの添加による熱安定性の低下も高く低減されている。したがって、溶融状態のホットメルト接着剤を長時間に亘って保存することもでき、このような場合であっても溶融状態のホットメルト接着剤のゲル化や炭化の発生が高く低減されている。
【発明の効果】
【0042】
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン−α−オレフィン共重合体、軟化点が80〜100℃であるポリプロピレン、粘着付与剤、及びワックスを含んでおり、このようなホットメルト接着剤は耐熱接着性及び耐寒接着性の双方に優れている。したがって、本発明のホットメルト接着剤は、−20〜55℃と広い範囲の温度環境下であっても優れた接着性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0044】
(実施例1〜10及び比較例1〜
エチレン−1−オクテン共重合体、ポリプロピレンA〜C、粘着付与剤A〜F、ワックス、及び酸化防止剤を、それぞれ表1に示す配合量で、撹拌混練機中に投入した後、180℃で60分間、溶融混練することによりホットメルト接着剤を得た。
【0045】
実施例及び比較例で使用したエチレン−1−オクテン共重合体、ポリプロピレンA〜C、粘着付与剤A〜F、ワックス、及び酸化防止剤の詳細を以下に記載する。
エチレン−1−オクテン共重合体(1−オクテン成分含有量:35〜37モル%、MFR:1000g/10分、ダウケミカル社製 製品名「アフィニティGA1900」)
ポリプロピレンA(軟化点Sp:90℃、出光興産株式会社製 製品名「L−MODU S400」)
ポリプロピレンB(軟化点Sp:120℃、千葉ファインケミカル株式会社製 製品名「サンアタックM」)
ポリプロピレンC(軟化点Sp:157℃、レクスタック社製 製品名「RT2180」)
粘着付与剤A(軟化点Sp:125℃、石油樹脂の水素添加物、出光興産株式会社製 製品名「アイマーブP−125])
粘着付与剤B(軟化点Sp:130℃、石油樹脂の水素添加物、イーストマンケミカル社製 製品名「イーストタックH130W])
粘着付与剤C(軟化点Sp:115℃、石油樹脂の水素添加物、荒川化学工業株式会社製 製品名「アルコンP115])
粘着付与剤D(軟化点Sp:140℃、石油樹脂の水素添加物、出光興産株式会社製 製品名「アイマーブP−140])
粘着付与剤E(軟化点Sp:100℃、石油樹脂の水素添加物、出光興産株式会社製 製品名「アイマーブP−100])
粘着付与剤F(軟化点Sp:110℃、C5系石油樹脂(未水素添加物)、日本ゼオン株式会社製 製品名「クイントンRX110])
ワックス(フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃、サゾール社製 製品名「サゾールH1」)
酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製 製品名「IRGANOX 1010」)
【0046】
なお、表1におけるポリプロピレンA〜Cの欄において、エチレン−1−オクテン共重合体100重量部に対するポリプロピレンA〜Cの配合量をそれぞれ角括弧書きで記載した。また、表1における粘着付与剤A〜F、ワックス、及び酸化防止剤の配合量の欄では、エチレン−1−オクテン共重合体及びポリプロピレンの合計100重量部に対する粘着付与剤、ワックス、及び系酸化防止剤の配合量をそれぞれ記載した。
【0047】
(評価)
実施例1〜10及び比較例1〜で作製したホットメルト接着剤について、耐熱接着性、耐寒接着性、低温塗工性、及び熱安定性を、下記の要領に従ってそれぞれ評価した。結果を表1に示した。
【0048】
(耐熱接着性1)
まず、縦50mm×横50mmの平面正方形状の段ボール(坪量170g/m2、クラフトライナー Bフルート)を2枚用意した。次に、ホットメルト接着剤を180℃で60分間加熱することにより溶融させ、この溶融状態のホットメルト接着剤を、塗工装置(JTトーシ(株)製、製品名「ASM−15N」)により、一方の段ボールの一面にビード状(塗工量3g/m)に塗工した。塗工してから2秒後に、他方の段ボールを一方の段ボール上に積層し、これらを2kgfの荷重で2秒間プレスして積層体を得た。その後、この積層体を、温度20℃、相対湿度50%の雰囲気下で1時間保管することによりホットメルト接着剤を冷却硬化させて、試験片を得た。
【0049】
そして、試験片についてT型剥離試験を行った。具体的には、試験片の一方の端部において2枚の段ボールをそれぞれ反対側の方向に引き剥がすことにより、T字状の試験片を得た。T字状の試験片を内部の温度が60℃である恒温槽中に入れ、一方の段ボールの引き剥がした端部を恒温槽の天井に固定し、他方の段ボールの引き剥がした端部に600mgfの錘を吊り下げた後、錘を吊り下げてから落下するまでの時間(時間)を計測した。
【0050】
(耐熱接着性2)
耐熱接着性1の測定において、恒温槽の内部の温度を55℃としたこと以外は耐熱接着性と同様の要領で時間(時間)を計測した。
【0051】
(耐熱接着性3)
上述した耐熱接着性1と同様の要領に従って試験片を作製した。次に、試験片を、内部の温度が55℃である恒温槽中に12時間放置した。そして、上記恒温槽中で試験片中の一方の段ボールを他方の段ボールから引き剥がした後、段ボールの破壊率(%)を算出した。なお、段ボールの破壊率とは、2枚の段ボール同士が接着している面全体の面積に対する、段ボールが破壊した部分の面積の比率(百分率)とした。段ボールの破壊率が高いほど、ホットメルト接着剤の接着性が高いことを意味する。
【0052】
(耐寒接着性)
上述した耐熱性試験1と同様の要領に従って試験片を作製した。次に、試験片を、内部の温度が−20℃である恒温槽中に12時間設置した。そして、上記恒温槽中で試験片中の一方の段ボールを他方の段ボールから引き剥がした後、上述した耐熱接着性2と同様の要領に従って段ボールの破壊率(%)を算出した。
【0053】
(低温塗工性)
ホットメルト接着剤を、ホットメルト塗工装置(ノードソン(株)社製 製品名「3400」)のタンク内で160℃で60分間加熱することにより、溶融させた。次に、ホットメルトガン(ノズル径16/1000インチ、ノードソン(株)社製 製品名「H−200」)の下方にベルトコンベヤを設置した。ホットメルトガンの先端とベルトコンベヤとの間隔は10cmとした。また、タンクとホットメルトガンとを接続するホース及びホットメルトガンを加熱して、これらの内部を通過するホットメルト接着剤の温度が160℃となるようにした。そして、ベルトコンベヤを20m/分の速度で走行させ、溶融状態のホットメルト接着剤をホットメルトガンからベルトコンベヤ上に、吐出圧力2.5kgf/cm2、100ms間隔で10ショット間欠塗工して10個の塗工物を得、これらの塗工物におけるフック現象の発生を目視により確認した。下記基準に基づいて評価した。
◎・・・全ての塗工物にフック現象の発生が無かった。
○・・・1〜3個の塗工物にフック現象の発生があった。
×・・・4個以上の塗工物にフック現象の発生があった。
【0054】
なお、フック現象とは、ホットメルト接着剤の塗工時にホットメルトガンとベルトコンベヤとの間でホットメルト接着剤が伸びて糸状物となり、この糸状物が塗工物の表面に落下する現象を意味する。
【0055】
(熱安定性)
ホットメルト接着剤50gをガラス瓶(内容積140cc)に投入し、ガラス瓶の開口部をアルミ箔によって蓋をした後、ガラス瓶を180℃の雰囲気下に1週間放置した。その後、ガラス瓶内部のホットメルト接着剤表面における炭化物の発生の有無を目視により確認した。表1において、炭化物の発生が全く無かったものを「○」とし、炭化物の発生が有ったものを「×」とした。
【0056】
【表1】