【実施例】
【0020】
本発明を実施するための形態を、
図1〜
図9を用いて詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施例)
図1は本発明の浮体式フラップゲートの概略構成を示した図である。
【0022】
図1において、1は、例えば防潮壁又は防波堤の、開口部の路面に掘った格納空間Sの内部に、常時は倒伏した状態で設置される本発明の浮体式フラップゲートである。この浮体式フラップゲート1は、公共空間に流入する水の水圧を利用して、基端部2aに設けた回転軸2cを支点として扉体2の先端部2bを、無動力でかつオペレータが操作しなくても自然に起立揺動させて開口部を水密状態に遮断するものである。
【0023】
本発明の浮体式フラップゲート1は、例えば
図1に示すように、扉体2の先端部2bの両側面に取り付けたピン3にワイヤロープ4の一端を取付けている。このピン3は、側部戸当り5の内側面に設けたスリット5aを貫通して側部戸当り5の内部に達する長さを有している。
【0024】
前記スリット5aは、扉体2の浮上に伴ってピン3が沿うために設けられるだけでなく、側部戸当り5の内部へ水が流入するための切欠きとして設けられている。
【0025】
前記側部戸当り5の内部には、例えば、2個の定滑車6a,6bからなる滑車群を配置し、これら定滑車6a,6bに案内された前記ワイヤロープ4の他端に、扉体2の起立を補助するカウンタウエイト7を取付けている。このカウンタウエイト7は、水の流入時に、カウンタウエイト7による作用力と扉体2に発生した浮力の合力よりも扉体2の重量が大きくなるように、その重量を決定する。
【0026】
本発明では、ワイヤロープ4の、前記滑車群のうちの扉体2の先端部2bに取り付けたワイヤロープ4を最初に案内する定滑車6aと扉体2の間に位置する箇所にストッパ8を固定している。
【0027】
加えて、前記ストッパ8と扉体2の間に位置するワイヤロープ4に、ワイヤロープ4に対して相対移動が自在なように中空形状の第1の浮力体9を通している。この第1の浮力体9は、水の流入時に、側部戸当り5の内部の水位上昇に伴って、第1の浮力体9がワイヤロープ4に沿って上昇してストッパ8に当接した時に、第1の浮力体9の浮力がワイヤロープ4に伝達されて扉体2を起立できるような浮力を有するようにする。
【0028】
上記構成の本発明の浮体式フラップゲート1では、水が流入してきた時には、以下に説明するような段階を経て起立する。
【0029】
・水の流入前(
図1参照)
扉体2はカウンタウエイト7によって起立を補助された状態で格納空間Sの内部に倒伏している。
【0030】
・中途水位時(
図2参照)
格納空間Sの内部に倒伏している扉体2に向かって水が流入して扉体2が水没すると、扉体自身に浮力F1が発生する。しかしながら、扉体2の重量がカウンタウエイト7による作用力F2と扉体2に発生した浮力F1の合力よりも大きいので、扉体2は起立せず、倒伏状態を維持する。この状態では、開口部内で水位が上昇するとともに、スリット5aを介して側部戸当り5の内部に水が流入し、側部戸当り5の内部の水位上昇に伴って第1の浮力体9がワイヤロープ4に沿って上昇する。
【0031】
・作動開始時(
図3参照)
開口部内及び側部戸当り5の内部で水位がさらに上昇して、第1の浮力体9がストッパ8に当接すると、第1の浮力体9の浮力F3がワイヤロープ4に伝達される。このワイヤロープ4への第1の浮力体9の浮力F3の伝達により、カウンタウエイト7による作用力F2と扉体2に発生した浮力F1と第1の浮力体9の浮力F3の合力が扉体2の重量より大きくなって、扉体2が起立を開始する。
【0032】
・作動開始後(
図4参照)
扉体2が起立を開始すると、扉体2を格納していた格納空間Sに水が流入してその水圧が扉体2に作用し、扉体2の起立動作を継続させる。
【0033】
・作動完了(
図5参照)
扉体2が完全に起立した後は、扉体2の上流側と下流側の静水圧差により起立状態を維持して水の流入を阻止する。
【0034】
(第2の実施例)
図6〜
図9は本発明の浮体式フラップゲートの第2の実施例に水が流入してきた時に、起立するまでの段階を説明する概略図である。
【0035】
この
図6〜
図9に示した第2の実施例は、前記第1の実施例のストッパ8及び第1の浮力体9に代えて、扉体2に第2の浮力体10を設置した構成である。この第2の浮力体10は、扉体2の先端部2bの両側面におけるピン3よりも若干基端部2a側に設置したピン11を支点として、水が流入する方向に高さ方向の平面内で回転が自在なように、レバー12を介してピン11に設置されている。
【0036】
・水の流入前
第2の実施例も、扉体2はカウンタウエイト7によって起立を補助された状態で格納空間Sの内部に倒伏している。
【0037】
・中途水位時(
図6参照)
格納空間Sの内部に倒伏している扉体2に向かって水が流入して扉体2が水没すると、扉体自身に浮力F1が発生するが、扉体2の重量がカウンタウエイト7による作用力F2と扉体2に発生した浮力F1の合力よりも大きいので、倒伏状態を維持する。この状態では、開口部内で水位が上昇するとともに、スリット5aを介して側部戸当り5の内部に水が流入し、側部戸当り5の内部の水位上昇に伴って第2の浮力体10がピン11を支点として回転し、起立する。
【0038】
・作動開始時(
図7参照)
開口部内及び側部戸当り5の内部で水位がさらに上昇して、第2の浮力体10が完全に起立すると、第2の浮力体10の浮力F4が扉体2に伝達される。この扉体2への第2の浮力体10の浮力F4の伝達により、カウンタウエイト7による作用力F2と扉体2に発生した浮力F1と第2の浮力体10の浮力F4の合力が扉体2の重量より大きくなって、扉体2が起立を開始する。
【0039】
・作動開始後(
図8参照)
扉体2が起立を開始すると、扉体2を格納していた格納空間Sに水が流入してその水圧が扉体2に作用し、扉体2の起立動作を継続する。
【0040】
・作動完了(
図9参照)
扉体2が完全に起立した後は、扉体2の上流側と下流側の静水圧差により起立状態を維持して水の流入を阻止する。
【0041】
上記本発明の浮体式フラップゲート1は、第1の実施例ではストッパ8のワイヤロープ4への固定位置を、また、第2の実施例ではレバー12の長さを、適宜設定することで、扉体2の起立開始水位を任意に設定することができる。従って、自動車等が走行可能な水位では扉体の倒伏状態を維持できることになって、自動車等の通行や避難が可能になる。
【0042】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0043】
例えば、前記実施例では、ワイヤロープ4を使用しているが、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、アラミド系、ポリアリレート系、超高密度ポリエチレンなどの繊維ロープを使用しても良い。
【0044】
また、上記の例では本発明の浮体式フラップゲート1を防潮壁又は防波堤の開口部に設置する場合について説明したが、本発明の浮体式フラップゲート1の設置場所は防潮壁又は防波堤の開口部に限らず、施設や地下通路の入口等に設置することもできる。