【実施例1】
【0012】
図1を用いて、ガスタービンプラントの構成を説明する。
図1は、本発明の実施例1によるガスタービン燃焼器(以下、単に「燃焼器」とも呼ぶ)を含むガスタービンプラントの概略構成図である。ガスタービンプラント1は、主な構成要素として、空気圧縮機2、燃焼器3、ガスタービン4、及び発電機6を備える。
図1では、燃焼器3の一部を示しており、燃焼器3の中心軸を含む面における断面図によって燃焼器3を示している。
【0013】
ガスタービンプラント1は、次のようにして発電する。空気圧縮機2は、大気より空気101を吸入して圧縮して圧縮空気102を生成し、圧縮空気102を燃焼器3に供給する。燃焼器3は、圧縮空気102とガス燃料200(201、202、203)を燃焼させ、燃焼ガス110を生成する。ガスタービン4は、燃焼器3で生成した燃焼ガス110により駆動され、排気ガス111を排出する。発電機6は、ガスタービン4の回転動力により発電する。ガスタービン4と空気圧縮機2には、ガスタービン起動用モータ7が接続される。
【0014】
燃焼器3は、外筒10、燃焼器ライナ12(主室ライナ12)、燃焼室5、及びバーナ8を備える。外筒10は、円筒状であり、円筒状の主室ライナ12を内部に備える。外筒10と主室ライナ12との間に形成された流路を、圧縮空気102が流れる。燃焼室5は、円筒状であり、主室ライナ12の内部に形成される。燃焼室5には、圧縮空気102の一部が冷却空気103として流入する。バーナ8は、空気孔プレート20と、複数の燃料ノズル22を備える。空気孔プレート20は、主室ライナ12と接合されて、燃料ノズル22と燃焼室5との間に設置され、燃焼室5に圧縮空気102を導くための空気孔21を、複数個備える。複数の燃料ノズル22は、ガス燃料200(201、202、203)を空気孔21内に向けて噴射することで、ガス燃料200(201、202、203)を燃焼室5に噴射する。複数の空気孔21と複数の燃料ノズル22は、1つの空気孔に1つの燃料ノズルを対応させて配置される。
【0015】
燃焼室5の内部において、空気孔プレート20と主室ライナ12との接合部には、燃焼室5の全周にわたって傾斜部材70が設けられる。傾斜部材70については、後述する。
【0016】
図2は、燃焼室5から見たバーナ8の正面図である。バーナ8は、複数の要素バーナから構成される。すなわち、バーナ8は、燃焼室5の中心軸の位置に1つのパイロットバーナ32を備え、パイロットバーナ32の外周部に複数(
図2では6つ)のメインバーナ33を備える。
【0017】
パイロットバーナ32は、中央(燃焼室5の中心軸の位置)にバーナ軸を有し、バーナ軸を中心とする2つの同心円上に空気孔群54、55を備え、バーナ軸の位置には油ノズル40を備える。すなわち、パイロットバーナ32は、油ノズル40を中心とする同心円上に2列の空気孔群54、55を備える。油ノズル40は、起動用燃料である油燃料を燃焼室5内に噴射する。
【0018】
メインバーナ33のそれぞれは、それぞれの中央にバーナ軸を有し、バーナ軸を中心とする3つの同心円上に空気孔群51、52、53を備える。すなわち、メインバーナ33は、それぞれのバーナ軸を中心とする同心円上に3列の空気孔群51、52、53を備える。メインバーナ33の空気孔群51、52、53のうち、最もバーナ軸に近い空気孔群を1列目空気孔群51、1列目空気孔群51の次にバーナ軸に近い空気孔群を2列目空気孔群52、最もバーナ軸から遠い空気孔群を3列目空気孔群53と称する。
【0019】
なお、メインバーナ33の1列目空気孔群51が存在する領域を「メインバーナ内周」と呼び、2列目空気孔群52と3列目空気孔群53が存在する領域を「メインバーナ外周」と呼ぶ。また、1列目空気孔群51に対応する燃料ノズル22のことを「メインバーナ内周」と呼び、2列目空気孔群52と3列目空気孔群53に対応する燃料ノズル22のことを「メインバーナ外周」と呼ぶこともある。
【0020】
図1に戻って、ガスタービンプラント1の構成の説明を続ける。
【0021】
複数の燃料ノズル22は、燃料分配器23と連結している。燃料分配器23は、燃料ノズル22に供給するガス燃料200を分配する。ガス燃料200は、ガス燃料タンク220に格納されており、ガス燃料供給系統により燃料分配器23に供給される。ガス燃料供給系統は、燃料遮断弁60と燃料制御弁61、62、63を備える。ガス燃料200は、ガス燃料タンク220から流出し、燃料遮断弁60の下流で3つの流れに分岐し、それぞれの流れが燃料制御弁61、62、63を通過して、ガス燃料201、202、203として燃料分配器23により燃料ノズル22に供給される。ガス燃料201は、パイロットバーナ32の燃料ノズル22に供給され、ガス燃料202は、メインバーナ33の1列目空気孔群51の燃料ノズル22に供給され、ガス燃料203は、2列目空気孔群52と3列目空気孔群53の燃料ノズル22に供給される。
【0022】
起動用油燃料210は、油燃料タンク230に格納されており、起動用油燃料供給系統により油ノズル40に供給される。起動用油燃料供給系統は、燃料遮断弁65と燃料制御弁66を備える。起動用油燃料210は、油燃料タンク230から流出し、燃料遮断弁65と燃料制御弁66を通過して、油ノズル40に供給される。
【0023】
本実施例のガスタービン燃焼器は、ガス燃料200として、コークス炉ガス、製油所オフガス、及び石炭ガス化ガスなどの、水素と一酸化炭素を含む燃料を使用する。また、天然ガスをはじめとする他のガス燃料を使用することもできる。本実施例のガスタービン燃焼器は、起動用油燃料210として、軽油、灯油、及びA重油などの油燃料を使用する。油燃料の代わりに、天然ガスやプロパンガスなどのガス燃料をガスタービン4の起動用燃料に使用することもできる。
【0024】
図3は、本実施例によるガスタービン燃焼器の運転方法を説明する図である。
図3には、ガスタービン4が起動してから定格負荷に達するまでの、空気流量、燃料流量、燃空比、及び局所火炎温度の変化を示しており、燃焼器3は、これらの量が
図3に示すように変化して運転される。空気流量は、燃焼器3に供給される空気の流量である。燃料流量は、燃焼器3に供給される燃料(起動用油燃料210、及びガス燃料200)の流量である。燃空比は、空気に対する燃料の質量流量の比である。局所火炎温度は、ガス燃料200の燃焼時の、バーナ8(具体的には、パイロットバーナ32とメインバーナ33の空気孔群51〜55)から出た火炎の温度である。
【0025】
また、
図3の最上部には、燃焼モードとして、燃焼器3の運転中に燃焼させる領域(油ノズル40と空気孔群51〜55の位置に対応する領域)を黒色に着色したバーナ8の図を示す。この図は、燃焼室5から見たバーナ8の正面図(
図2)に対応する図である。
【0026】
燃焼器3は、大きく分けて下記の(a)から(f)の6つのステップを経るように運転され、ガスタービン4を起動から定格負荷条件での運転へと導く。
(a)ガスタービンの起動
(b)無負荷定格回転数(Full Speed No Load:FSNL)での運転
(c)燃料の切り替え
(d)燃焼モードの切り替え
(e)燃焼器の入口での空気流量の増加
(f)定格負荷条件での運転
以下、燃焼器3の運転方法を説明する。なお、
図3において、パイロットバーナ32、メインバーナ内周、及びメインバーナ外周のことを、それぞれ「パイロット」、「メイン内周」、及び「メイン外周」と略記している。また、
図3の燃料流量を示す図では、パイロットバーナ32、メインバーナ内周、及びメインバーナ外周に供給される燃料の割合を、矢印で示している。
【0027】
[ステップ(a)〜(b):ガスタービンの起動〜無負荷定格回転数(FSNL)での運転]
まず、ステップ(a)では、ガスタービン起動用モータ7により、ガスタービン4を起動する。ガスタービン4の回転数が着火可能条件を満たせば、起動用油燃料210をパイロットバーナ32の油ノズル40に供給し、油ノズル40で起動用油燃料210を燃焼させ、燃焼器3を着火させる。
図3の最上部には、パイロットバーナ32の中央にある油ノズル40の位置に対応する領域を黒色に着色したバーナ8を示している。着火後、起動用油燃料210の流量(燃料流量)を増加させていくと、ガスタービン4の回転数は、無負荷定格回転数(FSNL)に達する。ガスタービン4の起動から負荷を取り始めるまでの領域が、昇速域である。昇速域での空気流量は、起動後は一定であり、途中から増加させていく。
【0028】
[ステップ(b)〜(c):FSNLでの運転〜燃料の切り替え]
ステップ(b)では、ガスタービン4の回転数が無負荷定格回転数(FSNL)に達した後、発電機6から負荷を取り始める。このステップでは、空気流量は一定であり、燃料流量は負荷とともに増加し、燃空比は増加する。負荷を上昇させていくと、負荷は、燃料を起動用油燃料210からガス燃料200に切り替える規定の部分負荷条件(
図3の(c))に到達する。規定の部分負荷条件として、部分負荷の値をガスタービン4に応じて予め定めることができる。発電機6から負荷を取り始め、負荷を定格まで上昇させていく領域が、負荷上昇域である。
【0029】
[ステップ(c)〜(d):燃料の切り替え〜燃焼モードの切り替え]
ステップ(c)では、燃料を起動用油燃料210からガス燃料200に切り替えて運転する。負荷が、燃料を切り替える規定の部分負荷条件に到達すると、起動用油燃料210の流量を減少させながら、ガス燃料200の流量を増加させていき、燃料を切り替える。ガス燃料200は、ガス燃料201、202に分配される。
【0030】
ガス燃料201は、パイロットバーナ32に供給され、ガス燃料202は、メインバーナ33の1列目空気孔群51の燃料ノズル22に供給される。すなわち、バーナ8は、パイロットバーナ32の空気孔群54、55が存在する領域とメインバーナ33のメインバーナ内周とで燃焼する。
図3の最上部には、パイロットバーナ32の空気孔群54、55が存在する領域とメインバーナ33のメインバーナ内周とを黒色に着色したバーナ8を示している。バーナ8で、パイロットバーナ32の空気孔群54、55が存在する領域とメインバーナ33のメインバーナ内周とが燃焼している燃焼モードを、「部分燃焼モード」と呼ぶ。
【0031】
燃料の切り替え後、負荷とともにガス燃料200の流量は増加し、燃空比も増加する。また、パイロットバーナ32とメインバーナ33のメインバーナ内周の局所火炎温度は、ともに上昇する。
【0032】
[ステップ(d)〜(e):燃焼モードの切り替え〜燃焼器の入口での空気流量の増加]
ステップ(d)では、ガス燃料200の燃焼モードを部分燃焼モードから全燃焼モードに切り替えて運転する。負荷が、燃焼モードを切り替える規定の部分負荷条件に到達すると、ガス燃料200をガス燃料201、202、及び203に分配する。
【0033】
ガス燃料201は、パイロットバーナ32に供給され、ガス燃料202は、メインバーナ33の1列目空気孔群51の燃料ノズル22に供給され、ガス燃料203は、2列目空気孔群52と3列目空気孔群53の燃料ノズル22に供給される。すなわち、バーナ8は、パイロットバーナ32の空気孔群54、55が存在する領域とメインバーナ33のメインバーナ内周とメインバーナ外周とで燃焼する。
図3の最上部には、パイロットバーナ32の空気孔群54、55が存在する領域とメインバーナ33のメインバーナ内周とメインバーナ外周とを黒色に着色したバーナ8を示している。バーナ8で、パイロットバーナ32の空気孔群54、55が存在する領域とメインバーナ33のメインバーナ内周とメインバーナ外周とが燃焼している燃焼モードを、「全燃焼モード」と呼ぶ。
【0034】
燃焼モードの切り替え後は、メインバーナ外周にも燃料を分散させて希薄燃焼の状態にするため、メインバーナ外周の燃料流量が増加する。この結果、パイロットバーナ32、及びメインバーナ内周の局所火炎温度は低下し、メインバーナ外周の局所火炎温度は上昇する。また、燃焼モードの切り替え後、負荷は、さらに上昇し、排気温度の制御設定により空気流量が増加する条件に到達する。
【0035】
[ステップ(e)〜(f):燃焼器の入口での空気流量の増加〜定格負荷条件での運転]
ステップ(e)では、燃焼器3の入口での空気流量を増加させる。負荷を上昇させ、燃焼器3の出口での燃焼ガス110の温度が増加すると、ガスタービン4の排気ガス111の温度が、予め定めた制限値を超える。そこで、負荷が、排気ガス111の温度がこの制限値を超えるような条件に到達すると、燃焼器3の入口での空気流量を増加させて、排気ガス111の温度(排気温度)を制限値以下に抑制する。
【0036】
その後、負荷をさらに上昇させ、負荷が定格負荷に達すると、ガスタービン4を定格負荷条件で運転する。定格負荷条件での運転では、パイロットバーナ32、メインバーナ内周、及びメインバーナ外周の局所火炎温度が等しくなり、バーナ8の全領域で均一希薄燃焼を実現するように、燃料流量を変化させる。例えば、メインバーナ外周への燃料流量を増加させ、パイロットバーナ32とメインバーナ内周への燃料流量を減少させる。
【0037】
なお、負荷上昇域のうち、定格負荷条件(負荷100%)を除いた領域を、部分負荷領域と呼ぶ。
【0038】
上記の方法に従って燃焼器3を運転する際、部分負荷条件から定格負荷条件に負荷を上昇させる過程で、燃焼器3の内部で圧力変動が発生することが懸念される。圧力変動の発生は、燃焼器3の構造信頼性の低下や、ガスタービン4の運転可能な負荷の範囲の限定につながる。このため、燃焼器3の内部での圧力変動の発生を防止する必要がある。
【0039】
図4Aと
図4Bを用いて、この圧力変動の発生機構を説明する。
図4Aは、メインバーナ外周に供給される燃料の比率Rに対する、メインバーナ内周の局所火炎温度Tinとメインバーナ外周の局所火炎温度Toutの変化を示すグラフである。
図4Bは、1つのメインバーナ33の拡大図であり、燃焼室5の中心軸を含む面におけるメインバーナ33の断面図である。以下では、メインバーナ外周に供給される燃料の比率Rを「外周燃料比率R」と、メインバーナ内周の局所火炎温度Tinを「内周局所火炎温度Tin」と、メインバーナ外周の局所火炎温度Toutを「外周局所火炎温度Tout」と、それぞれ記す。
【0040】
外周燃料比率R(%)は、メインバーナ外周に供給される燃料の流量(メインバーナ外周の燃料流量)とメインバーナ内周に供給される燃料の流量(メインバーナ内周の燃料流量)とを用いて、式(1)で定義される。
【0041】
【数1】
【0042】
上述の通り、負荷を部分負荷条件から定格負荷条件に上昇させる過程(ステップ(c)〜(f))では、メインバーナ外周への燃料流量が増加し、外周燃料比率Rが増加するため、
図4Aのように、比率Rの増加とともに、外周局所火炎温度Toutが増加し、内周局所火炎温度Tinが減少する。
【0043】
図4Aに示すように、外周燃料比率RがRmのときに、定格負荷条件で均一希薄燃焼となる、すなわちTout=Tin(=Tmとする)となるものとする。また、外周燃料比率Rを増加していくときに、燃焼器3の内部で圧力変動が発生し始めるときの外周局所火炎温度ToutをTic、圧力変動がなくなるときの外周局所火炎温度ToutをTcとする。さらに、外周局所火炎温度ToutがTicのときの外周燃料比率RをRic、外周局所火炎温度ToutがTcのときの外周燃料比率RをRcとする。すなわち、外周燃料比率RがRicとRcの間の範囲が、圧力変動が発生する範囲(圧力変動発生域)である。
【0044】
R=Rmになるように外周燃料比率Rを増加させ、外周局所火炎温度Toutが増加すると、メインバーナ33での燃料の不完全燃焼の状態(R≦Ric、Tout≦Tic)から完全燃焼の状態(R≧Rc、Tout≧Tc)に移行していく。
【0045】
図4Bには、不完全燃焼の状態と完全燃焼の状態でのメインバーナ33の火炎(不安定火炎91と安定火炎92)も示している。不完全燃焼の状態では、メインバーナ外周の燃料で形成される火炎は量が少なくて温度が低いので不安定であり、圧縮空気102に流されて火炎面が下流に向かって長くなる不安定火炎91が形成される。一方、完全燃焼の状態では、メインバーナ外周の燃料で形成される火炎は量が多くて温度が高いので安定化し、圧縮空気102に流されずに周囲に広がって火炎面が上流に位置する安定火炎92が形成される。
【0046】
負荷の上昇とともに外周燃料比率Rが増加すると、メインバーナ33の火炎が不安定火炎91から安定火炎92に遷移するが、その遷移領域(
図4AのRic≦R≦Rcの領域)では、不安定火炎91と安定火炎92の2つの状態が混在し、火炎が不安定な状態となる。
【0047】
さらに、空気孔プレート20と主室ライナ12の接合部には、空気孔21から噴出した空気流(圧縮空気102の流れ)により、再循環流80が形成される。再循環流80が形成された領域では、空気の流れが低速のため、火炎の伝播速度が空気流速を上回る。このため、再循環流80には、火炎が侵入して付着火炎90が形成される。
【0048】
付着火炎90の基点である再循環流80は、乱流状態の空気流により形成されたものであるため脈動しており、付着火炎90も脈動する。この結果、外周燃料比率RをRmまで増加させていくと、付着火炎90の脈動と上述の遷移領域でのメインバーナ33の火炎の挙動とが連動し、燃焼器3の内部で圧力変動が発生する。外周燃料比率RをRmまで増加させる過程で圧力変動が発生すると、圧力変動が発生したときの比率R以上に比率Rを増加させることができない。この結果、定格負荷条件での運転まで負荷を上昇させることができず、ガスタービン4の運転可能な負荷の範囲が限定される。
【0049】
このように、燃焼器3の圧力変動は、再循環流80を基に発生する付着火炎90が原因の1つである。したがって、この圧力変動を抑制するためには、再循環流80の発生を防止する必要がある。
【0050】
そこで、本実施例では、空気孔プレート20と主室ライナ12との接合部に傾斜部材70を設置することで、再循環流80の発生を防止する。傾斜部材70は、本実施例では燃焼室5の周方向の全てにわたって設置する。
【0051】
図5は、空気孔プレート20と主室ライナ12との接合部に傾斜部材70を設置した構成における、1つのメインバーナ33の拡大図であり、
図4Bと同様に、燃焼室5の中心軸を含む面におけるメインバーナ33の断面図である。傾斜部材70は、空気孔プレート20と主室ライナ12との接合部を覆う部材であり、空気孔プレート20と主室ライナ12とを接続する接続面72を有する。空気孔プレート20と主室ライナ12との接続面72の形状は、平面状または曲面状(燃焼室5の中心軸を含む断面において直線状または曲線状)である。すなわち、傾斜部材70は、空気孔プレート20と主室ライナ12とを直線状または曲線状に接続して、空気孔プレート20と主室ライナ12との接合部を覆うための部材である。
図5には、一例として、接続面72の形状が平面(燃焼室5の中心軸を含む断面において直線状)の構成を示している。
【0052】
傾斜部材70が空気孔プレート20と主室ライナ12とを曲線状に接続する構成の場合には、接続面72の形状を、空気孔プレート20と主室ライナ12とを滑らかに接続する曲面形状にすることもでき、空気孔21から噴出した空気流に沿うような形状(例えば、流線形の面)にすることもできる。
【0053】
傾斜部材70が空気孔プレート20と主室ライナ12とを直線状に接続する構成の場合における、接続面72の空気孔プレート20に対する角度や、傾斜部材70が空気孔プレート20と主室ライナ12とを曲線状に接続する構成の場合における、接続面72の形状は、事前のシミュレーションや試験により適切に定めることができる。
【0054】
図5を用いて、傾斜部材70の効果を説明する。傾斜部材70は、空気孔プレート20と主室ライナ12との接合部、すなわち、
図4Bを用いて説明した再循環流80が形成された領域に設置されている。空気孔21から噴出した空気流は、傾斜部材70の接続面72に沿って流れる。このため、傾斜部材70を設けると、
図4Bで再循環流80が形成された領域に再循環流80が形成されることはない。接続面72に沿って流れる空気流の速度は十分に速いため、付着火炎90の形成を防止でき、この結果、燃焼器3の圧力変動の発生を抑制できる。
【0055】
以上説明したように、本実施例によるガスタービン燃焼器では、部分負荷条件での運転から定格負荷条件での運転へ負荷を上昇させる過程で、圧力変動の発生を防止することができる。この結果、ガスタービン燃焼器の構造信頼性と、ガスタービンの運転可能な負荷の範囲とを十分に確保することができる。