(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記架橋ポリマーが、前記エチレン・極性モノマー共重合体と、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体からなる群より選択される少なくとも一種と、を含むポリマーの架橋体である、請求項1に記載の接着組成物。
前記シリコーン化合物が、ガム状又は固形状の第一のシリコーン化合物と、オイル状の第二のシリコーン化合物と、を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態について以下に説明する。
【0017】
本実施形態に係る接着組成物は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体、架橋ポリマー及びシリコーン化合物を含有する組成物であって、エチレン・α−オレフィン共重合体を含むマトリックスと、マトリックス中に分散した架橋ポリマーを含むドメイン(架橋体ドメイン)とを有する。
【0018】
本実施形態において、上記エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、エチレンモノマー単位を95質量%以上含むハードブロックと、α−オレフィンモノマー単位を5質量%を超えて含むソフトブロックとを有する。また、上記エチレン・α−オレフィンブロック共重合体のメルトフローレート(ASTM D−1238、温度190℃、荷重2.16kg)は、3g/10分以上である。
【0019】
本実施形態において、上記架橋ポリマーは、エチレン・極性モノマー共重合体を含む一種又は2種以上のポリマーを架橋して得られる架橋体である。
【0020】
上記接着組成物中のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で60〜95質量%である。
【0021】
上記接着組成物中のプロピレン系重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で1.5〜15質量%である。
【0022】
上記接着組成物中の架橋ポリマーの含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で3.5〜32質量%である。
【0023】
上記接着組成物中のシリコーン化合物の含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量100質量部に対して1〜10質量部である。
【0024】
本実施形態に係る接着組成物は、上記構成を有するため、加硫ゴム、熱可塑性樹脂等の多様な樹脂材料からなる成形体に対する良好な接着性を有する接合部材を、容易に形成することができる。また、上記接着組成物は、良好な接着性とともに、良好な摺動性能をも有する。このため、上記接着組成物は、ウェザーストリップのコーナ部及び嵌合部等、接着性及び摺動性能の両方が要求される用途に好適に用いることができる。
【0025】
従来、ウェザーストリップのコーナ部(又は嵌合部)を熱可塑性樹脂で成形することが行われている。この場合、コーナ部における摺動性を確保するためには、シリコーン系、ウレタン系等の塗料を塗布・硬化させて、摺動性を有する塗膜を形成する必要があった。しかし、このような塗膜は、物理的な摩擦や引掻に弱く、一度剥離されるとその部分の摺動性能が著しく低下するという課題がある。
【0026】
これに対して、上記接着組成物により形成される接合部材は、接合部材自体が良好な摺動性能を有するため、物理的な摩擦や引掻に強く、仮に表面が損傷しても良好な摺動性能が維持される。このため、上記接着組成物により形成される接合部材は、耐久性及び摩擦寿命に優れる。
【0027】
また、従来、接合部材自体に摺動性を与えるためにシリコーン化合物を添加することが試みられている。しかし、従来の接合部材では、射出成形時に多層分離が発生して、外観が損なわれる、使用時の破壊の原因となる等の問題が生じる場合があった。また、従来の接合部材では、シリコーン化合物が表面へ滲み出すことで、埃、土等が付着しやすくなり、摺動するガラス、塗膜等に傷を与える原因となる場合もあった。さらに、シリコーン化合物の添加によって接着性が悪化して、製品耐久性が低下する場合もあった。
【0028】
これに対して、上記接着組成物から形成される接合部材では、上述のマトリックス中に分散した架橋体ドメインの存在により、シリコーン化合物の偏在による多層分離、シリコーン化合物の部材表面への滲み出し等が抑制される。このため、上記接合部材では、優れた接着性を維持しつつ、良好な外観、高い耐久性、ガラス等への傷付きの防止といった優れた効果を得ることができる。
【0029】
(a)エチレン・α−オレフィンブロック共重合体
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、エチレンモノマー単位を95質量%以上含むハードブロック(ハードセグメントともいう)と、α−オレフィンモノマー単位を5質量%を超えて含むソフトブロック(ソフトセグメントともいう)とを有する。
【0030】
上記接着組成物は、このようなエチレン・α−オレフィンブロック共重合体を含有することで、多様な樹脂材料との接着性に優れた接合部材を形成できる。特に、本実施形態においては、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体を含有することで、加硫ゴム(例えば、加硫EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム))を含む成形体との接着性に優れた接合部材を形成できる。
【0031】
上記ハードブロックにおけるエチレンモノマー単位の含有量は、ハードブロックの総質量に対して95質量%以上であり、好ましくは98質量%以上である。
【0032】
上記ソフトブロックにおいて、α−オレフィンモノマー単位の含有量は、5質量%を超えていればよく、例えば、5質量%を超え、70質量%以下の範囲であってよい。
【0033】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体中のハードブロックの含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の総質量を基準として、例えば40質量%以上であってよく、好ましくは45〜65質量%である。また、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体中のソフトブロックの含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の総質量を基準として、例えば10〜60質量%であってよく、好ましくは35〜55質量%である。
【0034】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、ハードブロック及びソフトブロックを各々1つ以上有していればよく、各々2以上有していてもよい。エチレン・α−オレフィンブロック共重合体としては、ハードブロック及びソフトブロックを各々2以上有するマルチブロック共重合体を好適に用いることができる。
【0035】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、エチレン及びα−オレフィンの共重合により得ることができる。エチレンモノマー単位は、エチレンから形成される構成単位であり、α−オレフィンモノマー単位は、α−オレフィンから形成される構成単位である。
【0036】
α−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜15であり、より好ましくは3〜10である。
【0037】
α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、これらのうち1−オクテンを特に好適に用いることができる。また、α−オレフィンは、一種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0038】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、例えば500〜500000であってよく、好ましくは10000〜300000である。
【0039】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体における、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、例えば1.0〜4.0であってよく、好ましくは1.7〜3.5である。
【0040】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、好ましくは110〜130℃の範囲に少なくとも1つの融点を有する。なお、融点は、JIS K7122に準拠して、DSC(示差走査熱量計)を用い、昇温レート10℃/minの条件で0℃から200℃の間のDSC曲線を測定し、当該DSC曲線に基づいて決定する。
【0041】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、23℃における密度が0.85〜0.90g/cm
3であることが好ましく、0.86〜0.89g/cm
3であることがより好ましい。なお、密度は、ASTM D792に準拠して測定される。
【0042】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、ASTM D−1238に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレートが、3g/10分以上であることが好ましい。当該メルトフローレートが3g/10分未満であると、射出成形時にジェッティングの発生、多層剥離、シルバーストリークの発生等が生じ、接合部材の外観及び強度が悪化する場合がある。すなわち、本実施形態では、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体のメルトフローレートが3g/10分以上であることで、射出成形時のジェッティングの発生、多層剥離、シルバーストリークの発生等を抑制し、外観及び強度に優れる接合部材を形成することができる。
【0043】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体のメルトフローレート(ASTM D−1238、温度190℃、荷重2.16kg)は、10g/10分以上であってよく、20g/10分以上であってもよい。また、当該メルトフローレートは、例えば50g/10分以下であってよい。
【0044】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体のデュロメータA硬度(ショアA硬度ともいう。)は、50〜85の範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、デュロメータA硬度は、ASTM D 2240に準拠して測定される値を示す。
【0045】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の最大引張伸びは、500%以上であることが好ましく、800%以上であることがより好ましい。なお、本明細書中、最大引張伸びは、ASTM D638に準拠して測定された値を示す。エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の最大引張伸びが500%以上であると、樹脂材料からなる成形体との接着性に一層優れる接合部材が得られる。
【0046】
また、加硫EPDMを含む成形体と該成形体に接合する接合部材とを備える成形品は、加硫EPDMと接着組成物とのインサート射出一体成形によって製造し得る。このとき、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の最大引張伸びが500%未満であると、収縮率の差に起因すると考えられる亀裂が、接着界面近傍の接合部材側に発生し、部材強度及び接着強度を低下させる場合がある。この点、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の最大引張伸びが500%以上であると、上述のような一体成形によって上記成形品を製造した場合でも、上記亀裂の発生が抑制され、高い部材強度及び高い接着強度を得ることができる。
【0047】
接着組成物をウェザーストリップ用接合部材の形成に用いる場合、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の圧縮永久歪は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが更に好ましい。ウェザーストリップは、動的又は静的に変形して、窓ガラス及び車体をシールする部品であり、接合部材としては、圧縮永久歪が少ないことが望まれる。エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の圧縮永久歪を上記範囲とすることで、ウェザーストリップ用接合部材として好適な圧縮永久歪を容易に実現できる。接合部材の圧縮永久歪は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体以外の成分によっても調整することができるが、含有量の多いエチレン・α−オレフィンブロック共重合体として十分に低い圧縮永久歪を有するものを採用することで、ウェザーストリップ用接合部材として好適な圧縮永久歪を容易に実現できる。なお、本明細書中、圧縮永久歪は、ASTM D395に準拠し、70℃、23時間の条件で測定された値を示す。
【0048】
接着組成物中のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で、60〜95質量%である。含有量が60質量%未満であると、接着組成物の射出成形性及び得られる接合部材の樹脂材料(特に加硫ゴム)に対する接着性が悪化する場合がある。また、含有量が95質量%を超えると、得られる接合部材の樹脂材料に対する接着性が悪化するとともに、摺動性能が得られ難くなる傾向がある。
【0049】
接着組成物中のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で、好ましくは65〜95質量%であり、より好ましくは70〜90質量%である。
【0050】
(b)架橋ポリマー
架橋ポリマーは、エチレン・極性モノマー共重合体を含む一種又は2種以上のポリマー(以下、場合により「未架橋ポリマー」という。)を架橋して得られる架橋体である。
【0051】
架橋ポリマーは、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体を含むマトリックス(海相)中に分散して、ドメイン(島相)を形成する。上記接着組成物は、架橋ポリマーを含有することで、シリコーン化合物の添加による成形性及び接着性の低下が抑制されている。すなわち、上記接着組成物は、架橋ポリマーを有することで、優れた成形性及び樹脂材料に対する接着性を維持しつつ、シリコーン化合物による摺動性能の効果を顕著に得ることができる。
【0052】
また、上記接着組成物は、架橋ポリマーを含有することで、従来の接合部材では良好な接着性が得られ難かった樹脂材料(例えば、加硫EPDM等の加硫ゴム)に対して、良好な接着性で接合する接合部材を得ることができる。この理由は、必ずしも明らかではないが、(i)架橋ポリマーが形成するドメインがシリコーン化合物の局在化を妨げて局所的な接着性の低下を抑えること、(ii)射出された接着組成物が冷却固化する際に樹脂材料との接着界面で生じる内部応力を緩和すること、(iii)極性モノマー単位に由来する化学的な接着力(樹脂材料と接着力、樹脂材料に分散されたフィラー(カーボンブラック、シリカ等との接着力など)が発現すること、等が考えられる。
【0053】
さらに、上記接着組成物は、架橋ポリマーを含むドメインが形成されているため、接着組成物から形成される接合部材の表面に微細な凹凸が形成される。当該凹凸によって、接合部材は、樹脂材料と融着させたときの接着性に優れたものとなり、表面粘着性が抑制されたものとなり、また、摺動性能に優れたものとなると考えられる。
【0054】
エチレン・極性モノマー共重合体としては、例えば、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン・メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0055】
エチレン・極性モノマー共重合体は、エチレン単位及び極性モノマー単位の総量基準で、極性モノマー単位の含有量が15〜90質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、30〜90質量%以上であることがさらに好ましい。極性モノマー単位の含有量が15質量%以上であると、樹脂材料(特に加硫EPDM等の加硫ゴム)との接着性、射出成形外観及び摺動性能が一層良好になる傾向がある。
【0056】
ここで、後述のとおり架橋ポリマーは動的架橋によって得ることができるが、極性モノマー単位の含有量が15質量%以上であると架橋ポリマーを含む動的架橋物の外観が、艶消し感の強いものとなる。また、極性モノマー単位の含有量を20質量%、30質量%と増やすと艶消し感がさらに強いものとなり、60質量%程度まで艶消し感の増加傾向が続く。60〜90質量%ではあまり艶消し感に差は無く、90質量%を超えると艶消し感が低下する。これらのことから、極性モノマー単位の含有量を上記特定の範囲とすることで、架橋ポリマーの高架橋度化及び/又は非相溶化が顕著になり、コントラストの高い海島構造(マトリックスとドメインとの分離性が高い相分離構造)が形成され、当該構造によって接着性、射出成形性、シリコーン化合物の偏在抑制効果、等が向上すると考えられる。
【0057】
架橋ポリマーは、エチレン・極性モノマー共重合体を含む未架橋ポリマーを架橋して得られたものである。未架橋ポリマーは、エチレン・極性モノマー共重合体以外のポリマーを含んでいてもよい。例えば、未架橋ポリマーは、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体からなる群より選択される一種又は二種以上を含んでいてもよい。
【0058】
未架橋ポリマーとしてのエチレン・α−オレフィンブロック共重合体としては、上記(a)に記載したエチレン・α−オレフィンブロック共重合体と同様のものが例示できる。
【0059】
未架橋ポリマーとしてのエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボリネン共重合体及びエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボリネン等が挙げられる。
【0060】
架橋ポリマーは、例えば、エチレン・極性モノマー共重合体及びエチレン・α−オレフィンブロック共重合体を含む未架橋ポリマーを架橋して得られたものであってよい。このような架橋ポリマーによれば、樹脂材料(特に加硫ゴム)との接着性に一層優れる接合部材を得ることができる。
【0061】
この態様において、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の配合量は、エチレン・極性モノマー共重合体及びエチレン・α−オレフィンブロック共重合体の総量に対して、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%である。エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の配合量を上記範囲とすることで、優れた成形性を維持しつつ、樹脂材料(特に加硫ゴム)との接着性を一層向上させることができる。
【0062】
また、架橋ポリマーは、エチレン・極性モノマー共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を含む未架橋ポリマーを架橋して得られたものであってもよい。このような架橋ポリマーを用いることで、後述する好適な平均径を有するドメインが形成され易くなる傾向がある。また、上記未架橋ポリマーは架橋反応が進行しやすく、架橋ポリマーの生産性が良好となる。さらに、このような架橋ポリマーによれば、接合部材の圧縮永久歪をより低く抑えることができる。
【0063】
この態様において、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の配合量は、エチレン・極性モノマー共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の総量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜8質量%である。
【0064】
また、架橋ポリマーは、エチレン・極性モノマー共重合体、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を含む未架橋ポリマーを架橋して得られたものであってもよい。このような架橋ポリマーによれば、好適な平均径を有するドメインが形成され易くなる。また、このような架橋ポリマーによれば、樹脂材料(特に加硫ゴム)との接着性が一層向上するとともに、接合部材の圧縮永久歪をより低く抑えることができる。
【0065】
この態様において、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の配合量は、エチレン・極性モノマー共重合体、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の総量に対して、好ましくは9.5〜49.5質量%であり、より好ましくは9〜49質量%である。
【0066】
また、この態様において、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の配合量は、エチレン・極性モノマー共重合体、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の総量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜8質量%である。
【0067】
接着組成物中の架橋ポリマーの含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で、3.5〜32質量%である。架橋ポリマーの含有量が3.5質量%未満であると、樹脂材料(特に加硫ゴム)との接着性が低下する、摺動性能が低下する、接合部材表面に粘着性が発現して埃等が付着しやすくなる、といった問題が生じる場合がある。また、架橋ポリマーの含有量が32質量%を超えると、樹脂材料(特に加硫ゴム)との接着性が低下する、射出成形性が悪化する、といった問題が生じる場合がある。
【0068】
接着組成物中の架橋ポリマーの含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で、好ましくは7〜32質量%であり、より好ましくは10〜32質量%である。架橋ポリマーの含有量が上記範囲であると、シリコーン化合物による良好な摺動性能を維持しつつ、成形性及び接着性を一層向上させることができる。
【0069】
架橋ポリマーにより形成されるドメイン(架橋体ドメイン)は、その平均径が1〜50μmであることが好ましく、2〜40μmであることがより好ましく、5〜25μmであることがさらに好ましい。架橋体ドメインの平均径が1μm以上であると、接着組成物中のシリコーン化合物の偏在がより顕著に抑制される。このため、架橋体ドメインの平均径が1μm以上とすることで、射出成形時の多層剥離、成形後のシリコーンブリードの発生、接合部材における長期摺動性の低下等の問題の発生をより顕著に抑制することができる。また、架橋体の平均径が50μmを超えると、射出成形時にジェッティング、発泡、シルバーストリーク等が発生しやすくなり、成形性が悪化する場合がある。
【0070】
架橋ドメインの平均径は、以下の方法で測定される。まず、架橋ドメインを含む測定試料(接着組成物又はその成型品)から、凍結ミクロトームを用いて薄片を切り出し、四塩化オスミウム又は四塩化ルテニウムを用いて染色する。次いで、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、×1200の倍率で、その染色物を観察する。試験片に島状に分散している架橋ドメインの輪郭を縁取り、最長径d1を測定し、次に最長径の中心を通る最短径d2を測定し、ドメイン径d=(d1+d2)/2とする。最長径が0.2μm以上のドメインを10個選択する。10個のドメイン径dの平均を、架橋ドメインの平均径とする。
【0071】
本実施形態において、架橋ポリマーは、例えば、動的架橋によって形成されたものであってよい。動的架橋によれば、好適な架橋体ドメインを形成する架橋ポリマーを容易に得ることができる。動的架橋は、せん断を与える混練と同時に架橋を行う方法であり、例えば、未架橋ポリマー、プロピレン系重合体及び架橋剤を含む樹脂組成物を混練して行うことができる。
【0072】
動的架橋に用いられる架橋剤としては有機過酸化物、硫黄加硫系の架橋剤、樹脂架橋の架橋剤、ヒドロシリル系の架橋剤等が挙げられ、これらのうち有機過酸化物が好適である。また、有機過酸化物とヒドロシリル系の架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを併用することもできる。
【0073】
有機過酸化物としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が好適である。
【0074】
有機過酸化物としては、具体的には、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)へキサン等が挙げられる。
【0075】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上含み、SiH基100個未満程度のものが挙げられる。一分子中のケイ素原子の数(または重合度)は3〜200程度のもので、直鎖状、環状、分岐状および三次元網状(レジン状)分子構造のポリシロキサンが使用できる。具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)
1SiO
1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。有機過酸化物とオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用すると、有機過酸化物単独の時よりも、架橋体ドメインの粒径が均一化して、各特性に一層優れた接合部材が得られる傾向がある。
【0076】
(c)プロピレン系重合体
プロピレン系重合体としては、プロピレンモノマー単位を60質量%以上有する重合体が挙げられる。上記接着組成物は、プロピレン系重合体を含有することで、多様な樹脂材料との接着性に優れた接合部材を形成できる。特に、本実施形態においては、プロピレン系重合体を含有することで、熱可塑性樹脂(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン等)を含む成形体との接着性に優れた接合部材を形成できる。
【0077】
プロピレン系重合体は、プロピレン及びプロピレン・α−オレフィン共重合体からなる群より選択される重合体であることが好ましい。
【0078】
上記プロピレン・αオレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては、上述のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体におけるα−オレフィンと同様のα−オレフィンが例示できる。
【0079】
プロピレン系重合体としては、結晶性の高いもの及び結晶性の低いものを広範に用いることができる。プロピレン系重合体の融点は、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは90℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。融点が70℃以上のプロピレン系重合体を用いることで、樹脂組成物から形成される接合部材の圧縮永久歪を一層改善することができる。プロピレン系重合体の融点の上限は、175℃であってもよく、165℃であってもよい。なお、融点は、JIS K7122に準拠して、DSC(示差走査熱量計)を用い、昇温レート10℃/minの条件で0℃から200℃の間のDSC曲線を測定し、当該DSC曲線に基づいて決定する。
【0080】
プロピレン系重合体は、ASTM D−1238に準拠して、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが、0.1〜300g/10分であることが好ましく、0.5〜100g/10分であることがより好ましい。この範囲にあると、プロピレン系重合体を用いて架橋ドメインの動的架橋を行う場合に、架橋ドメインの平均径を好適な範囲に制御し易くなる。
【0081】
プロピレン系重合体としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ランダムブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンより結晶性が低い非結晶性ポリプロピレン等から適宜選択して使用することができる。
【0082】
ポリプロピレン系重合体としては、例えば市販品として、プライムポリマー(株)製「プライムPP」、日本ポリプロ(株)製「ノバテック」及び「ウィンテック」、Sun Allomer Ltd.製「クオリア」等の商品名で販売されているホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンが挙げられる。
【0083】
また、非晶ポリプロピレンとしては、ポリプロピレン−エチレン共重合体であるプライムポリマー社製「プライムTPO」、ダウケミカル社製「VERSIFY」、エクソンモービルケミカル社製「Vistamaxx」等が挙げられる。プロピレン−1−ブテン共重合体としては、住友化学社製「TAFTHREN」、三井化学社製「TAFMER PN」、「TAFMER XM」等が挙げられる。またプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体としては三井化学社製「TAFMER XM」等が挙げられる。
【0084】
プロピレン系重合体としては、例えば、ウェザーストリップとして好適な柔軟性を付与する観点からは、非晶性ポリプロピレンを好適に用いることができる。
【0085】
接着組成物中のプロピレン系重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で、1.5〜15質量%である。含有量が1.5質量%未満であると、樹脂材料(特に熱可塑性樹脂)に対する接着性が悪化する傾向がある。また、含有量が15質量%を超えると、射出成形時に多層剥離、シリコーン化合物の染み出し等が生じやすくなって、接合部材の外観及び樹脂材料に対する接着性が悪化する傾向がある。
【0086】
接着組成物中のプロピレン系重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準で、好ましくは2〜15質量%であり、より好ましくは4〜14質量%である。
【0087】
本実施形態では、例えば、上記架橋ポリマーの動的架橋の際にプロピレン系重合体を用い、プロピレン系重合体のマトリックス中に架橋体ドメインが形成された前駆体組成物を形成することができる。そして、本実施形態では、この前駆体組成物を他の成分と混合することで、架橋ポリマー及びプロピレン系重合体を接着組成物に配合することができる。また、このとき、上記好適な含有量を満たすように適宜プロピレン系重合体を追加することもできる。
【0088】
(d)シリコーン化合物
シリコーン化合物は、摺動性を付与する成分である。本実施形態に係る接着組成物では、上記の各成分との組み合わせにより、シリコーン化合物による良好な摺動性と、樹脂材料に対する優れた接着性とを両立することができる。
【0089】
シリコーン化合物としては、例えば、ガム状又は固形状の第一のシリコーン化合物と、オイル状の第二のシリコーン化合物とが挙げられる。シリコーン化合物は、これらの一方を含んでいてよく、両方を含んでいてもよい。
【0090】
第一のシリコーン化合物としては、例えば、シリコーンガム、シリコーンレジン、シリコーンパウダーが挙げられる。
【0091】
シリコーンガムは、重量平均分子量が1×10
5以上であることが好ましい。また、シリコーンガムの重量平均分子量は、例えば1×10
6以下であってよい。シリコーンガムとしては、例えば、ジメチルシリコーン、メチル・フェニルシリコーン、アクリルシリコーン等が挙げられる。
【0092】
シリコーンレジンとしては、例えば、MQ樹脂が挙げられる。MQ樹脂は、例えば、R
3SiO
1/2単位(M単位)と、SiO
4/2単位(Q単位)とを有する樹脂である(Rは、炭素数1〜10の非置換又は置換の炭化水素基を示す。)。
【0093】
Rが示す炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、又はこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基等、シアノ基で置換したシアノエチル基等、エポキシ基で置換したグリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基等、(メタ)アクリル基で置換したメタクリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基等、アミノ基で置換したアミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基等、メルカプト基で置換したメルカプトプロピル基等が挙げられる。
【0094】
MQ樹脂において、M単位及びQ単位の含有割合は、それぞれ30〜50mol%であることが好ましい。また、MQ樹脂は、R
2SiO
2/2単位(D単位)、及びRSiO
3/2単位(T単位)を更に有していてもよく、これらの単位の含有割合は、20mol%以下であることが好ましい。なお、各単位の含有割合は、Si原子を一つ含む構成単位の総数を基準とした含有割合である。
【0095】
MQ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1×10
4〜1×10
6であり、より好ましくは5×10
4〜5×10
5である。
【0096】
シリコーンパウダーは、例えば、シリコーンレジンの架橋体から構成される粒子であり、好ましくは近真球の粒子である。シリコーンレジンの架橋体は、好適には、(RSiO
3/2)nで表される三次元網目状に架橋した構造を有する。また、シリコーンパウダーは、ポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粉末ということもできる。
【0097】
シリコーンパウダーとしては、市販品として、信越化学工業株式会社製「KMP−590」、「KMP−701」、「X−52−854」、「X−52−162」などが挙げられる。
【0098】
シリコーンパウダーは、例えば、アクリルシリコーンのレジン架橋球体であってもよく、このようなシリコーンパウダーとしては、日信化学工業株式会社製「シャリーヌR200」などが挙げられる。
【0099】
第二のシリコーン化合物としては、例えば、重量平均分子量1×10
5以下、動粘度1×10
5mm
2/sec以下のジメチルシリコーンオイル、メチル・フェニルシリコーンオイル及びその変性オイルが挙げられる。ここで変性物として、メチル基やフェニル基の一部が、水素で置換されたハイドロジェンポリシロキサン、アルキル基で置換されたアルキル変性シリコーンオイル、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されたフッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0100】
なお、上述の動的架橋における架橋助剤として用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも、第二のシリコーン化合物に含めることができる。
【0101】
(e)その他の成分
本実施形態に係る接着組成物は、上記以外の成分(添加剤)を更に含有していてもよい。
【0102】
接着組成物は、例えば、パラフィン系オイルをさらに含有していてもよい。パラフィン系オイルを添加することで形成される接合部材の硬度が下がるため、パラフィン系オイルの添加によって接合部材の硬度を適宜調整することができる。
【0103】
また、接着組成物は、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)の架橋体;エチレン・α−オレフィンランダム共重合体の架橋体;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はそれらの水添加物の架橋体、等をさらに含有していてもよい。また、接着組成物は、上記架橋体から形成されたドメインを、さらに有していてもよい。
【0104】
また、接着組成物には、オレフィン系熱可塑性エラストマーがさらに添加されていてもよい。オレフィン系熱可塑性エラストマーを添加することで、圧縮永久歪をより低く抑えることができる場合がある。
【0105】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、動的架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーを好適に用いることができる。
【0106】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、主成分としてエチレン・プロピレン・ジエンゴム(及びその架橋体)、ポリプロピレンを含むものであってよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、パラフィン系オイルを含むものであってよい。すなわち、本実施形態においては、オレフィン系熱可塑性エラストマーを添加することで、パラフィン系オイル、EPDMの架橋体、PP、等を含む接着組成物を得てもよい。
【0107】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、三菱化学製「サーモラン」、JSR製「エクセリンク」、住友化学製「エスポレックスTPE」、三井化学製「ミラストマー」、テクノエイペック製「サーリンク」、エクソンケミカル製「サントプレン」、リケンテクノス製「アクティマーG」などが挙げられる。
【0108】
添加剤の含有量は、特に制限されず、例えば、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量100質量部に対して、例えば10〜30質量部とすることができ、15〜25質量部としてもよい。
【0109】
本実施形態に係る接着組成物は、部材間を接合する接合部材を形成するために用いられる。接合部材の形成は、例えば、射出成形により行うことができる。
【0110】
また、本実施形態に係る接着組成物によれば、2以上の部材と、該部材間に介在して部材間を接合する接合部材と、を備える成形品を製造することができる。
【0111】
接合部材によって接合される部材は、上述の効果が顕著に奏される観点から、樹脂材料から形成される部材であることが好ましい。また、上記部材は、接合部材との接面に、ゴム材料及び/又は熱可塑性樹脂を含むものを好適に用いることができる。ゴム材料は、例えば加硫ゴムであってよく、加硫EPDMであってもよい。また、熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等であってよい。
【0112】
接合部材は、自動車のウェザーストリップのコーナ部材又は嵌合部材として好適に用いることができる。ウェザーストリップとしては、サンルーフシール、トランクリッド(ラゲジー)、ルーフサイド、ドアアウター(ドア)、ウェストシール、ドアインナーシール(オープントリム、ウェルトボディサイド)、グラスランチャンネル等が挙げられ、上記接合部材は、これらのいずれにも好適に適用できる。
【0113】
また、接合部材の用途はウェザーストリップに限定されず、良好な接着性及び摺動性が求められる用途に好適に用いることができる。接合部材は、例えば、おもちゃ、雑貨等にも好適に適用することができる。すなわち、上記成形品は、例えば、ウェザーストリップであってよく、おもちゃ、雑貨等であってもよい。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0116】
[実施例群A]
(動的架橋物MR−1、MR−2及びFC−1の作製)
表1に記載の組成で、原材料をヘンシルミキサーで混合した。混合物を、シリンダーを150〜170℃に保温した二軸押出機PCM30 L/D32(株式会社池貝製)に投入し、スクリュー回転数250rpm、押出量5kg/hrの条件で、動的な架橋を行った。ダイスは付けずに押出機ヘッドから動的架橋物を吐出させた(解放押出)。吐出物は水槽で冷却しおよそ40〜80℃にして、風乾させたのち粉砕機でφ5mmパンチ穴が通過できる大きさに粉砕した。これを動的架橋物MR−1、MR−2、及びFC−1として用いた。なお、以下の表中、原材料の組成は、質量比で示す。
【0117】
表1に記載の原材料の詳細は、以下のとおりである。
(i)エチレン・極性モノマー共重合体
・「LEVAPREN 400」
エチレン−ビニルアセテート共重合体、LANXESS(LANXESS Deutschland GmbH)製、ビニルアセテート含量:40質量%、ムーニー粘度(ML(1+4)、100℃):20。
(ii)エチレン・α−オレフィンブロック共重合体
・「INFUSE 9817」
エチレン・オクテンブロック共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):15g/10分、DSC融点:120℃、ショアA硬度(ASTM D2240):71、最大引張伸び(ASTM D638):1500%、密度(23℃、ASTM D792):0.877g/cm
3、圧縮永久歪(70℃、23時間、ASTM D395):58%。
(iii)プロピレン系重合体
・「PN−2060」
タフマー PN−2060、三井化学製、プロピレン・ブテンブロック共重合体、MFR(荷重2.16kg、230℃、ASTM D1238):6g/10分、DSC融点:161℃、ショアA硬度(ASTM D2240):84。
(iv)その他
・「SIBSTER 062M」
株式会社カネカ製、スチレン・イソブチレンブロック共重合体、ショアA硬度(ASTM D2240):20。
・「A−DCP」
反応助剤、NKエステルA−DCP、新中村化学工業株式会社製、ジアクリルジシクロペンタジエン。
・「KF−99」
反応助剤、シリコーン化合物、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、信越化学工業株式会社製。
・「パーヘキサ25B40」
有機過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンのシリカ希釈物、有機過酸化物の純度40質量%、日油株式会社製。
【0118】
【表1】
【0119】
(実施例A−1及びA−2、比較例A−1〜A−5)
表2及び表3に記載の組成で、原材料をヘンシルミキサーで混合した。混合物を、シリンダーを150〜160℃に保温した二軸押出機PCM30 L/D32(株式会社池貝製)に投入し、押出機ヘッドには、170℃に保温した穴ダイを付けて、スクリュー回転数250rpm、押出量5kg/hrの条件で混合分散を行い、ストランドを押出し、ストランドを水槽で冷却し、カッターで裁断し、約φ3長さ3mmのペレットを作製した。作製したペレットを、実施例A−1〜A−2及び比較例A−1〜A−5の樹脂組成物とした。
【0120】
表2及び表3に記載の原材料の詳細は、以下のとおりである。
(v)シリコーン化合物
・「X−22−2101」
シリコーンマスターバッチ、ポリプロピレン中にシリコーンガムを分散させたペレット、シリコーンガム含量:50質量%、信越化学工業株式会社製。
・「KF96−1000cs」
ジメチルシリコーンオイル、信越化学工業株式会社製。
・「KF96−2.7万cs」
ジメチルシリコーンオイル、信越化学工業株式会社製、KF96H−1万csとKF96H−5万csを8:6で混合したオイル。
(vi)安定剤
・「AO−60」
アデカスタブAO−60、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、株式会社ADEKA製。
・「LA−63P」
アデカスタブLA−63P、ヒンダードアミン系光安定剤、株式会社ADEKA製。
・「LA−36」
アデカスタブLA−36、ベンゾトリアゾール系UVA、株式会社ADEKA製。
・「PEP36A」
アデカスタブPEP36A、フォスファイト系酸化防止剤、株式会社ADEKA製。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
(接着性評価)
予め加硫したEPDMシート(表4及び表5中、「加硫EPDM」)又はミラストマーW700B(オレフィン系熱可塑性エラストマー、三井化学株式会社製、表4及び表5中、「TPO」)のシートを準備しておき、これらのシートを射出金型にインサートして、上述の実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を溶融射出し、インサートしたシートと型内で接合させ、冷却し、接着評価用サンプルとした。
【0124】
より具体的には、上述の実施例及び比較例で作製した樹脂組成物(ペレット)を、80ton射出成型機(日精樹脂工業株式会社製、成形機名:FS80S12ASE)のホッパーに投入した。なお、ペレットは、90℃、3時間の予備乾燥を射出成形直前に行った。射出成型機にシート型を装着した。金型には40℃の水を循環させて金型を冷却させた。シート型は厚み3mm幅103mm長さ130mmの掘り込みを持つ金型で、これに加硫EPDMシート又はTPOシートをインサートして、型締めし、上記ペレットを溶融させ射出した。シリンダーの温度設定を、ノズル、前部、中部、後部をそれぞれ220℃、220℃、210℃、180℃とし、保圧を掛けながら最大スクリュー回転数の60%でペレットを溶融させ、射出油圧50%射出速度80〜60%、保圧30〜10%、射出時間5秒で金型に射出し、加硫EPDMシート又はTPOシートへの接合と樹脂組成物の賦形を行った。冷却時間30秒を取った後、金型を開き、接合シート(接着評価用サンプル)を取り出した。
【0125】
・接着評価1(引張破断強度、引張破断伸び)
接合シートをJIS K6251の3号ダンベルに、接合面がダンベルの中心となるよう打ち抜いた。引張試験機(東洋精機製ストログラフE−L)を使って、200mm/minの引張速度でJIS K6251に基づいて、破断強度、破断伸びを測定した。
【0126】
・接着評価2(折り曲げ剥離)
接合シートを常温で48〜68時間静置した後、接合シートを30mm幅に切りだして試験シートとした。試験シートの接合線から平行に15mmの部分両側に線を引いた。接合部と標線の間に指を添え、両手の親指とひとさし指で摘まみ、試験シートを接合面で180℃に曲げ(折り重ねる)、折り重ねてから3秒保持した。完全に剥がれなければ、同じ操作で反対側に折り曲げた。完全に剥がれない場合はこの操作を繰り返した。
【0127】
180°曲げを6回行ったところで(片側1回でカウントする)、135°以内で曲げて、両側の剥離面積の合計を目視で同定した。剥離面積の評価判定は、(A)ほとんど剥げない:剥離面積/全接合面積が0〜10%未満、(B)20%未満、(C)20〜50%、(D)50〜80%、(E)ほぼ剥離:80〜100%、(F)完全剥離:100%の6段階で表現した。なお、6回行う前に完全剥離100%となった場合は、完全剥離した時の曲げ回数を記録した。6回で完全に剥げない試料は、曲げ操作を最大20回まで行うが、曲げながら、「(E)ほぼ剥離:80〜100%」又は「(F)完全剥離100%」の領域になったら、その回数を記録した(表中、「80%以上剥離回数」)。20回曲げても80%剥離しなかった場合は「20曲げ以上」とした。試験は常温で行った。
【0128】
評価結果を表4及び表5に示す。なお、表4及び表5には、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準に対する、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の含有量(表中、「(a)含量」)、架橋ポリマーの含有量(表中、「(b)含量」)、及びプロピレン系重合体の含有量(表中、「(c)含量」)も示した。また、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量100質量部に対するシリコーン化合物の含有量(表中、「シリコーン化合物含量」)も示した。
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
実施例A−1及びA−2では、加硫EPDMシート及びTPOシートに対して優れた接着性(破断強度、破断伸び、折り曲げ耐性)が示された。なお、本発明に係る接着組成物をウェザーストリップのコーナや勘合部に用いる場合、接着評価2の試験結果が、接着評価1の試験結果より重要視される。ウェザーストリップのコーナや勘合部は、ドアを閉めた時の変形、ガラスが動き出す時や入り込んでくるときに発生する変形、あるいは自動車ボディにはめ込んで組み付ける時の変形によって接合面で剥がれることがある。折り曲げて変形を接合面に与える接着評価2は、これに合致する評価方法であり、接着評価2に優れるものはウェザーストリップの用途に好適に使用できる。
【0132】
[実施例群B]
(動的架橋物MR−3、MR−4及びMR−5の作製)
表6に記載の組成で、混合物1の原材料をヘンシルミキサーで混合した。また、混合物1とは別に、表6に記載の組成で、混合物2の原材料をヘンシルミキサーで混合した。
【0133】
二軸押出機TEM41 L/D=62(東芝機械株式会社製)のバレル最上流部投入孔に混合物1が定量投下できるように重量式フーダーF1を設置した。TEM41のバレルの中位(中流)にサイドフィーダーを接続し、そのサイドフィーダー孔に混合物2が一定量で投下できるよう重量フィーダーF2を設置した。ヘッドにはウォータリングカット式ホットカットペレタイザーを取り付けた。そしてサイドフィーダより上流のバレルを160℃〜140℃に温調し、サイドフィーダーが接続されているバレルブロックとそのバレル近傍を110〜130℃に温調し、サイドフィーダー以降のバレルを130〜160℃に温調し、ヘッド200℃、ホットカットペレタイザーを170℃に温調した。スクリュー回転を350rpmとして、F1から混合物1を30kg/hrで二軸押出機にフィードし、表6に記載の組成比に従って、F2から混合物2を二軸押出機にフィードした(例えば、MR−3の場合、F1=30kg/hr、F2=1.6kg/hrをフィードした)。混合物2中の有機過酸化物(パーオキサオド)によって開始される動的な架橋物は、ホットカットペレタイザーでカットされペレットとなり、噴射される水と共に水槽に落下し冷却された。ペレットは脱水機と空気輸送によって乾燥されφ3長さ3mm程度のペレットを得た。ペレットが数珠状に繋がってしまった場合は、粉砕機で粉砕しφ3mmのパンチ穴が通過できる大きさにした。
【0134】
表6に記載の原材料の詳細は、以下のとおりである。
(i)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体
・「3092PM」
三井EPT3092PM、三井化学株式会社製、ムーニー粘度(ML(1+4)、125℃、ASTM D1646):61、エチレン含量:65重量%、ENB(ジエン成分)含量:4.6重量%、非油展のペレット。
【0135】
【表6】
【0136】
(実施例B−1〜B−3、比較例B−1〜B−2)
表7に記載の組成で、原材料をヘンシルミキサーで混合して、混合物3を作製した。二軸押出機TEM41 L/D=62の川上から、1/3のバレルブロックと2/3バレルブロックに液注弁を取り付けて、それぞれの液注弁にギアポンプを接続した。バレル最上流部投入孔に重量式フーダーF1を設置した。二軸押出機のヘッドにはストランドダイを設置した。二軸押出機のバレルを150〜160℃に温調し、ヘッドとダイスを180℃に温調した。F1から混合物3を二軸押出機にフィードし、川上から1/3位に接続したギアポンプG1からは「KF96−2.7万cs」を、川上から2/3位に接続したギアポンプG2からは「KF96−1000cs」を二軸押出機に注入ながら、スクリュー回転150rpmで混練した。混練された組成物は、ダイスからストランド状に押出され、水槽で冷却し、ファンカッターで裁断し、約φ3×3mmペレットを作製した。F1からのフィード量を35kg/hrとし、G1及びG2のフィード量は表7に従った組成量でフィードした。なお、比較例B−1及びB−2では、液注をすることなく混合物3を上記と同じ混練条件で混練し、ペレットを作製した。
【0137】
【表7】
【0138】
(接着性評価)
実施例群Aの接着評価1及び接着評価2と同様の評価を行った。評価結果は、表8及び表9に示すとおりであった。
【0139】
(摺動性評価)
・摺動評価1(摺動性抵抗係数)
実施例及び比較例の樹脂組成物について、上述の射出インサート成形と同条件で射出成形を行い、厚み3mm、幅103mm、長さ130mmのシートを作製した。なお、測定する面の数表面粗さRaが0.3〜0.6μmになるように射出金型の表面を仕上げた。作製したシートを幅26mmにカットし、試験シートとした。
【0140】
試験シートを試料固定具の長手方向中心に固定した。フリー部幅(ベロ幅)は16mmとし、その上にガラス50mm□を往復動摺動試験機に示す位置で置き、ガラスには垂直方向に荷重f1が17N掛かるよう重りを載せた。5分静置の後、モータを稼働させ、平均速度150mm/sec(ガラス中心の水平方向の稼働距離は140mm)で、ガラスを稼働させた。1番最初の極大水平方向荷重の絶対値をf2とし、ブランクの水平荷重をf0とすると、静摺動性抵抗係数=(f2−f0)/f1で計算した。その後も摺動を続け、7〜10回目の正負極大水平方向荷重の絶対値の平均(n=4)をf3とし、動摺動性抵抗係数=(f3−f0)/f1とした。
【0141】
・摺動評価2(ヘイドンによる摩擦係数)
静/動摩擦係数を、HEIDON−14(新東科学株式会社製Slipping tester商品名)を用いて測定した。測定する面の数表面粗さRaが2.0〜3.0μmになるように表面ブラスト仕上げをした射出金型を用いて、射出量を調整する以外は、上記射出インサート成形と同条件で射出成形し、約厚み1.5mm、幅60mm、長さ80mmのシートを作製した。幅を10〜11mmにカットし、ヘイドン専用に販売されている平面圧子に固定した。ガラスと設置可能な長さは約63mmであった。平面圧子上に500gの重りを乗せ(垂直荷重)、100mm/minの速度でガラスを稼動させて、静/動摩擦係数を測定した。
【0142】
評価結果を表8及び表9に示す。なお、表8及び表9には、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量基準に対する、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の含有量(表中、「(a)含量」)、架橋ポリマーの含有量(表中、「(b)含量」)、及びプロピレン系重合体の含有量(表中、「(c)含量」)も示した。また、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン系重合体及び架橋ポリマーの総量100質量部に対するシリコーン化合物の含有量(表中、「シリコーン化合物含量」)も示した。
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
[実施例群C]
(実施例C−1〜C−3、比較例C−1〜C−9)
「INFUSE 9817」を表10に記載の原材料に変更したこと以外は、実施例B−3と同様にして、各実施例及び比較例のペレットを作製した。
【0146】
また、実施例群A及びBと同様にして接着性評価及び摺動性評価を行った。また、ASTM D395に準拠して、70℃、23時間の条件で圧縮永久歪を評価した。評価結果を表11、表12、表13及び表14に示す。
【0147】
表9に記載の原材料の詳細は、以下のとおりである。
・「INFUSE 9807」
エチレン・ブテンブロック共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):15g/10分、DSC融点:118℃、ショアA硬度(ASTM D2240):55、最大引張伸び(ASTM D638):1200%、密度(23℃、ASTM D792):0.866g/cm
3、圧縮永久歪(70℃、23時間、ASTM D395):76%。
・「INFUSE 9500」
エチレン・ブテンブロック共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):5g/10分、DSC融点122℃、ショアA硬度(ASTM D2240):69、最大引張伸び(ASTM D638):1150%、密度(23℃、ASTM D792):0.877g/cm
3、圧縮永久歪(70℃、23時間、ASTM D395):55%。
・「INFUSE 9530」
エチレン・ブテンブロック共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):5g/10分、DSC融点119℃、ショアA硬度(ASTM D2240):83、最大引張伸び(ASTM D638):1000%、密度(23℃、ASTM D792):0.887g/cm
3、圧縮永久歪(70℃、23時間、ASTM D395):45%。
・「INFUSE 9010」
エチレン・ブテンブロック共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):0.5g/10分、DSC融点:122℃、ショアA硬度(ASTM D2240):77、最大引張伸び(ASTM D638):770%、密度(23℃、ASTM D792):0.877g/cm
3(ASTM D1238)、圧縮永久歪(70℃、23時間、ASTM D395):67%。
・「VERSIFY4301」
プロピレン比の高いエチレン・プロピレン共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、MFR(荷重2.16kg、230℃、ASTM D1238):25g/10分、DSC融点:55℃、ショアA硬度(ASTM D2240):86、最大引張伸び(ASTM D638):42%、密度(23℃、ASTM D792):0.868g/cm
3。
・「VERSIFY2300」
プロピレン比の高いプロピレン・エチレン共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、MFR(荷重2.16kg、230℃、ASTM D1238):2g/10分、DSC融点:66℃、ショアA硬度(ASTM D2240):86、密度(23℃、ASTM D792):0.866g/cm
3。
・「H3712D」
プロピレン比の高いプロピレン・α−オレフィン共重合体、住友化学株式会社製、商品名:タフセレンH3712D、DSC融点:133℃、密度(23℃、ASTM D792):0.87g/cm
3。
・「R110MP」
プロピレン−エチレンブロック共重合体。ハードセグメントがポリプロピレンで、ソフトセグメントがエチレン・プロピレンの共重合体。プライムポリマー株式会社製、商品名:プライムTPO R110MP、DSC融点:155℃、密度(23℃、ASTM D792):0.88〜0.90g/cm
3。
・「EG8407」
エチレン・オクテンランダム共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、商品名:ENGAGE8407、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):30g/10分、DSC融点:65℃、ショアA硬度(ASTM D2240):72、最大引張伸び(ASTM D638):650%、密度(23℃、ASTM D792):0.877g/cm
3。
・「A−4085S」
エチレン・ブテンランダム共重合体、三井化学株式会社製、商品名:タフマーA−4085S、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):3.6g/10分、DSC融点:66℃、ショアA硬度(ASTM D2240):86、最大引張伸び(ASTM D638):1100%、密度(23℃、ASTM D792):0.885g/cm
3。
・「GA1950」
エチレン・α共重合体、Dow(Dow Chemical company)製、商品名:AFFINITY GA1950、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):約500g/10分、DSC融点:70℃、ショアA硬度(ASTM D2240):70、最大引張伸び(ASTM D638):1100%、密度(23℃、ASTM D792):0.874g/cm
3。
【0148】
【表10】
【0149】
【表11】
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
【0152】
【表14】
【0153】
なお、射出成形性は、実施例C−1〜C−3では良好であった。一方、比較例C−1及び比較例C−5では、多層流剥離、大きなシルバー及び陥没の発生、ジェッティング等の問題が生じた。また、比較例C−2及びC−3では、多層剥離が見られた。また、比較例C−4では、表面付近にひび割れの発生が見られた。また、比較例C−6〜C−9では、多層流剥離が生じ、十分な成形体が得られ難かった。
【0154】
[実施例群D]
(動的架橋物MR−6の作製)
混合物1及び混合物2の組成を表15に記載の組成に変更したこと以外は、実施例群Bの動的架橋物MR−3等の作製方法と同様にして、動的架橋物MR−6を作製した。
【0155】
表15に記載の原材料の詳細は、以下のとおりである。
(i)エチレン・極性モノマー共重合体
・「NUC−6940」
エチレン・エチルアクリレート共重合体、株式会社NUC製、MFR(JIS K7210):20g/10分、DSC融点:83℃、ショアA硬度(ASTM D2240):68、最大引張伸び(JIS K7162):800%、密度(23℃、ASTM D792):0.95g/cm
3。
(ii)プロピレン系共重合体
・「E203GV」
プライムポリマー株式会社製、商品名:プライムポリプロE−203GV、MFR(230℃、JIS K7210):2g/10min、DSC融点:169℃。
・「MA3H」
日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバッテッPP MA3H、MFR(JIS K7210、230℃):2g/10分、DSC融点:167℃、密度(23℃、ASTM D792):0.95g/cm
3。
(iii)エチレン・α−オレフィン共重合体
・「A−1085S」
エチレン・ブテンランダム共重合体、三井化学株式会社製、商品名:タフマーA−1085S、MFR(荷重2.16kg、190℃、ASTM D1238):1.2g/10分、DSC融点:66℃、ショアA硬度(ASTM D2240):87、最大引張伸び(ASTM D638):1200%、密度(23℃、ASTM D792):0.885g/cm
3。
【0156】
【表15】
【0157】
(実施例D−1〜D−5、比較例D−1〜D−5)
混合物3の組成を表16及び表17に記載の組成に変更したこと以外は、実施例群Bの実施例と同様にして樹脂組成物のペレットを作製した。
【0158】
なお、原材料として、市販のオレフィン系熱可塑性エラストマーである、プロピレン系重合体15〜25質量%、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン三元共重合体25〜35質量%、パラフィン系プロセスオイル30〜50質量%からなるミラストマー5030NF及びエクセリンク1300Bを用いた。
【0159】
また、実施例群A及びBと同様にして接着性評価及び摺動性評価を行った。また、ASTM D395に準拠して、70℃、23時間の条件で圧縮永久歪を評価した。評価結果を表18、表19、表20及び表21に示す。なお、表21において、比較例D−4及びD−5の組成は、「ミラストマー5030NF」及び「エクセリンク1300B」に由来するポリマーの架橋物を(b)含量として換算したときの値を記載した。
【0160】
表16及び17に記載の原材料の詳細は、以下のとおりである。
・「ミラストマー5030NF」
市販のオレフィン系熱可塑性エラストマー。三井化学株式会社製、MFR(荷重10kg、230℃、ASTM D1238):30g/10分、DSC融点:154℃、ショアA硬度(ASTM D2240):51、最大引張伸び(ASTM D638):480%、圧縮永久歪(70℃、23時間、ASTM D395):45%。
・「エクセリンク1300B」
JSR株式会社製、MFR(荷重10kg、230℃、ASTM D1238):200g/10分、DSC融点:134℃、ショアA硬度(ASTM D2240):39、最大引張伸び(ASTM D638):670%、圧縮永久歪(70℃、23時間、ASTM D395):35%。
・「F−30940MM」
DIC株式会社製、商品名:ペオニ−ブラックF−30940MM、カーボンブラックのマスターバッチペレット(ポリエチレンにカーボンを分散したもの)。
・「HP−10」
株式会社ADEKA製、商品名:アデカスタブHP−10、フォスファイト系酸化防止剤。
【0161】
【表16】
【0162】
【表17】
【0163】
【表18】
【0164】
【表19】
【0165】
【表20】
【0166】
【表21】
【0167】
なお、実施例D1〜D5では、射出成形性が良好であった。一方、比較例D−2〜D−5では、射出成形時に多層剥離が生じた。
【0168】
[実施例群E]
(動的架橋物MR−7の作製)
混合物1及び混合物2の組成を表22に記載の組成に変更したこと以外は、実施例群Bの動的架橋物MR−3等の作製方法と同様にして、動的架橋物MR−7を作製した。
【0169】
【表22】
【0170】
(実施例E−1〜E−8、比較例E−1〜E−3)
混合物3の組成を表23、表24及び表25に記載の組成に変更したこと以外は、実施例群Bの実施例と同様にして樹脂組成物のペレットを作製した。
【0171】
また、実施例群A及びBと同様にして接着性評価及び摺動性評価を行った。また、ASTM D395に準拠して、70℃、23時間の条件で圧縮永久歪を評価した。評価結果を表26、表27及び表28に示す。
【0172】
【表23】
【0173】
【表24】
【0174】
【表25】
【0175】
【表26】
【0176】
【表27】
【0177】
【表28】
【0178】
なお、実施例E1〜E8では、射出成形性が良好であった。一方、比較例E−1では、光沢がまばらになり、外観が劣った。また、比較例E−2〜E−3では、光沢がまばらであり、かつ多重剥離も見られた。