(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262641
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】熱収縮繊維からなる包装用糸条、組み物または布帛およびそれらを用いた包装方法
(51)【国際特許分類】
B65D 71/00 20060101AFI20180104BHJP
D02G 3/44 20060101ALI20180104BHJP
D02G 3/02 20060101ALI20180104BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20180104BHJP
D04C 1/02 20060101ALI20180104BHJP
D04C 1/12 20060101ALI20180104BHJP
D04B 1/22 20060101ALI20180104BHJP
D04B 21/20 20060101ALI20180104BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20180104BHJP
D03D 15/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
B65D71/00
D02G3/44
D02G3/02
D04H1/435
D04C1/02
D04C1/12
D04B1/22
D04B21/20 A
D03D1/00 Z
D03D15/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-248008(P2014-248008)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-108027(P2016-108027A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】一柳 隆治
(72)【発明者】
【氏名】末岐 和史
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−024230(JP,A)
【文献】
特開2006−225791(JP,A)
【文献】
特開平08−260276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
D02G 1/00− 3/48
D02J 1/00−13/00
D03D 1/00−27/18
D04B 1/00− 1/28
D04B 21/00−21/20
D04C 1/00− 7/00
D04G 1/00− 5/00
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮繊維からなる包装用糸条、組み物または布帛であり、該熱収縮繊維がポリエステルであり、
下記(1)〜(4)式を満足することを特徴とする包装用糸条、組み物または布帛。
(1)沸騰水収縮率SHW(%)≧40
(2)160℃×30分乾熱収縮率SHD(%)≧沸騰水収縮率SHW(%)
(3)熱応力ピーク温度(℃)=60〜95
(4)熱応力ピーク温度時応力(mg/dtex)≧50
【請求項2】
包装用糸条が紡績糸またはフィラメントである請求項1に記載の包装用糸条。
【請求項3】
包装用組み物が紐状物またはスリーブ状物である請求項1に記載の包装用組み物。
【請求項4】
包装用布帛が織布、不織布または編布である請求項1に記載の包装用布帛。
【請求項5】
請求項1に記載の包装用糸条、組み物または布帛を用いて包装対象品を包装し、次いで包装状態のまま80℃以上の熱風または熱湯で熱処理し、包装対象品表面の包装物を緊縛することを特徴とする包装方法。
【請求項6】
包装用糸条が紡績糸またはフィラメントである請求項5に記載の包装方法。
【請求項7】
包装用組み物が紐状物またはスリーブ状物である請求項5に記載の包装方法。
【請求項8】
包装用布帛が織布、不織布または編布である請求項5に記載の包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用材料およびそれらを用いた包装方法、更に詳しくは、例えば5mm以下の木材や針金等の長尺体を複数本束ねて、動かないように緊縛したり、包んだりする包装用材料およびそれらを用いた包装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の被包装物を縛る材料としては、各種の紐やビニールテープ等が用いられていた。
【0003】
また、熱収縮プラスチックフィルムを素材として形成されるチューブ状体は、例えば容器、プラスチックボトル、缶、長尺物パイプ、棒、木材等の被覆用、結束用あるいは外装用として、被包装物に密着させて包装する分野において広く使用されており、収縮性及び収縮応力を利用した用途に展開されている(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、従来の被包装物を縛る材料、例えば、紐の場合は、結んで終わりであり、振動等が加われば結び目がすぐ緩んでしまい、ビニールテープの場合はテープが伸びやすいため、硬く緊縛できるがテープに粘着剤が付与されている場合にあっては、被包装物に巻きつけた場合、粘着剤が被包装物に付着して取れないという問題があった。
【0005】
また、前記特許文献1で知られるようなプラスチックフィルムを素材とした場合にあっては、包装材料同士が擦れ合って異音が発生する場合があり、さらに包装材料自体にクッション性がないので被包装物自体に傷をつけやすいと言った問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−339991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の包装材料の問題、すなわち、被包装物に包装材料を巻きつけると、粘着剤が被包装物に付着して取れないという問題、更には包装材料同士が擦れ合って異音が発生する場合があり、さらに包装材料自体にクッション性がないので被包装物自体に傷をつけやすいと言った問題点等を全て解消することができる包装材料ならびに包装方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段、すなわち、本発明の第1の構成は、熱収縮繊維からなる包装用糸条、組み物または布帛であり、該熱収縮繊維が、下記(1)〜(4)式を満足することを特徴とする包装用糸条、組み物または布帛である。
(1)沸騰水収縮率SHW(%)≧40
(2)160℃×30分乾熱収縮率SHD(%)≧沸騰水収縮率SHW(%)
(3)熱応力ピーク温度(℃)=60〜95
(4)熱応力ピーク温度時応力(mg/dtex)≧50
【0009】
本発明の第2の構成は、上記記載の包装用糸条、組み物または布帛を用いて包装対象品を包装し、次いで包装状態のまま80℃以上の熱風または熱湯で熱処理し、包装対象品表面の包装物を緊縛することを特徴とする包装方法である。
【0010】
上記熱収縮繊維が例えばポリエステルの場合は、包装用糸条、組み物または布帛として好適に用いることができる。
【0011】
上記包装用糸条が例えば紡績糸またはフィラメントの場合は、包装用糸条として好適に用いることができる。
【0012】
上記包装用組み物が例えば紐状物またはスリーブ状物の場合は、包装用材料として好適に用いることができる。
【0013】
上記包装用布帛が例えば織布、不織布または編布の場合は、包装用布帛として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば5mm以下の木材や針金等の長尺体を複数本束ねて、動かないように緊縛したり、包んだりすることが容易であり、従来は被包装物に巻きつけた場合、粘着剤が被包装物に付着して取れないという問題、更には、包装材料同士が擦れ合って異音が発生する問題、さらに包装材料自体にクッション性がないので被包装物自体に傷をつけやすいと言った問題点を全て解消した包装材料、包装方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の構成に係る、熱収縮繊維からなる包装用糸条、組み物または布帛および本発明の第2の構成にかかる包装方法ついて、詳細に説明する。
【0016】
本発明に用いる熱収縮繊維は、下記(1)〜(4)式を満足することが重要である。(1)沸騰水収縮率SHW(%)≧40
(2)160℃×30分乾熱収縮率SHD(%)≧沸騰水収縮率SHW(%)
(3)熱応力ピーク温度(℃)=60〜95
(4)熱応力ピーク温度時応力(mg/dtex)≧50
【0017】
熱収縮繊維の沸騰水収縮率SHW(%)は、40以上、好ましくは45以上、特に50以上とするのが良い。ここで沸騰水収縮率SHW(%)が40を下回る場合にあっては、収縮力が小さくなるので、被包装体の緊縛効果が低下する。
【0018】
熱収縮繊維の160℃×30分乾熱収縮率SHD(%)の値が、沸騰水収縮率SHW(%)の値以上、とするのが良い。ここで熱収縮繊維の160℃×30分乾熱収縮率SHD(%)の値が、沸騰水収縮率SHW(%)の値を下回る場合にあっては、被包装体の緊縛効果が低下する。
【0019】
熱応力ピーク温度(℃)は、60〜95(℃)とするのが良い。ここで熱応力ピーク温度が、60℃を下回る場合にあっては、包装体が加工を行うまでに、温度環境変化の影響を受ける場合があり、包装体加工の安定性に影響が出てくる。また、95℃を上回る場合にあっては、加工温度を過大に上げる必要があり、実用性、経済性の面で問題が出てくる。
【0020】
熱応力ピーク温度時応力(mg/dtex)は、50以上とするのが好ましい。ここで熱応力ピーク温度時応力(mg/dtex)が50を下回ると、被包装体の緊縛効果が低下する。
【0021】
本発明に用いる熱収縮繊維は、合成繊維、特にポリエステル系繊維が好ましい。
【0022】
本発明に用いる、前記(1)〜(4)式を満足した特性を有する熱収縮繊維は、例えばポリエステル繊維の場合にあっては、次のようにして得ることができる。
【0023】
溶融紡糸により、ノズルからポリエステルポリマーを押し出して、ロール間で延伸することなく、紡速500〜3000m/分で引取り、未延伸糸を得る。次に得られた未延伸糸を50〜80℃の温湯中で延伸する。延伸倍率は1.2〜2.9の範囲が好ましい。ここで延伸倍率が1.2未満であると繊維の強度が低くなり、2.9を超えると沸騰水収縮率SHW(%)が40%未満になるので好ましくない。延伸倍率は1.5〜2.0程度が、強度と沸騰水収縮率SHW(%)のバランスが良いので好ましい。
【0024】
このようにして得られた繊維は、沸騰水収縮率SHWが40%以上で、160℃×30分乾熱収縮率SHDの値より小さくなり、熱応力ピーク温度は60〜95℃で、熱応力ピーク温度時応力は50mg/dtex以上を示す。
【0025】
この繊維は、染色工程を通すと熱の影響を受けて収縮するため、予め染色することは困難である。従って、予め着色を行う場合はレジン中に顔料を添加して溶融紡糸する必要がある。これらの繊維は、例えば、融点が150℃以下の低融点繊維などを混紡して紡績糸を形成することができる。これらの繊維100%使いの紡績糸と低融点繊維100%使いの紡績糸とを用いて交織あるいは交編して包装材料を作製することができる。
【0026】
これらの繊維は、短繊維使いであっても良いし、フィラメント使いであっても良い。不織布にして用いる場合にあっては、通常のニードルパンチ方式やウオータージェット方式が採用できる。
【0027】
本発明に言う包装用糸条とは、合成繊維、特にポリエステル系繊維が好ましく、短繊維にして紡績糸とするのが好ましい。もちろんフィラメントのままで用いることも可能である。紡績糸にする場合、目的とする被包装体の緊縛に影響が出ない範囲で、合成繊維以外の天然繊維を混ぜることが可能である。
【0028】
本発明に言う組み物とは、紐状の形状を有するものあるいはスリーブ状の形状を有するものが挙げられる。
【0029】
本発明に言う布帛とは、不織布、織布、編物いずれの形態であっても良い。
【0030】
次に、本発明の包装方法について説明する。
【0031】
本発明の包装方法とは、前記する糸条、組み物、または布帛を用いて包装対象品を包装し、次いで包装状態のまま80℃、好ましくは90℃以上の熱風または熱湯で熱処理し、包装対象品の包装物を緊縛することで達成できる。
【実施例】
【0032】
以下実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の主旨に適合しうる範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、何れも本発明の範囲に包含される。
【0033】
尚、本発明の評価に用いた物性の測定方法は以下のとおりである。
【0034】
(繊維の沸水収縮率SHW(%))
JIS L1095‐2010に準拠して、沸騰水中に30分間浸漬して測定した。
【0035】
(繊維の乾熱収縮率SHD(%))
JIS L1095‐2010に準拠して、160℃乾燥機中に30分間吊るして測定した。
【0036】
(繊維の熱応力:ピ−ク温度及びピーク温度時応力)
熱応力測定機(SEIKO I SSC‐5000)を用いて、総繊度が12〜35dtexになるように引き揃え、チャック間が2cmの長さになるように両端を挟み、熱応力測定機にセットする。試料に0.06g/dtexの初荷重を掛け、定長に保ちながら室温から280℃まで10℃/分の速度で昇温する。この時に発生する応力を記録装置に連続的に記録する。得られた熱応力曲線の最も高い応力をピーク値とし、そのときの温度をピーク温度とした。
【0037】
(実施例1)
テレフタル酸をカルボン酸成分とし、エチレングリコールをグリコール成分とし、リン含有化合物をリン原子含有量が6000ppmとなるように共重合させたリン含有共重合ポリエステルを用いて、孔径が0.3mmの円形オリフィスより、262℃に加熱された前記ポリマーを吐出し、2000m/分の周速で回転するゴデットローラーで引き取り、トウをケンス内に振り落とした。そのトウを60℃の温湯中1.7倍で延伸し、押し込み方式クリンパーを通してクリンプを付与した後、ロータリーカッターで76mmにカットし、60℃未満で乾燥してステープルを得た。得られたステープルは、単糸繊度3.4dtexで引張り破断強度1.1N/dtex、引張り破断伸度258%、SHD(160℃乾燥機中に30分)は63.8%、沸騰水収縮率SHW(沸騰水×30分)は59.2%であった。また、熱応力ピーク温度は77.3℃、熱応力ピーク温度時応力は78.9mg/dtexであった。このステープルを用いて、通常のリング紡績機で綿番手20/2の紡績糸を作製した。この紡績糸の引張り破断強力は290g、引張り破断伸度は9.1%、SHD(160℃乾燥機中に30分)は、65.8%、SHW(沸騰水×30分)は58.6%であった。得られた紡績糸を用いて、直径9mmの鉛筆を10本引き揃え、3回捲き回した後にコブ結びし、120℃の熱風で10秒間加熱した。加熱する前は捲き回した部分で鉛筆が動いたが、加熱後は捲き回し部と結び部が収縮して硬く緊縛され、鉛筆が動きにくくなった。評価結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1〜2)
ゴデットローラーの引き取り速度、トウの延伸温度および延伸倍率を変えた以外は実施例1と同様にして、ステープルを得て、実施例1と同様にして通常のリング精紡機で綿番手20/2の紡績糸を作製した。得られた紡績糸を用いて、直径9mmの鉛筆を10本引き揃え、3回捲き回した後にコブ結びし、120℃の熱風で10秒間加熱した後、鉛筆の緊縛状態を観察した。評価結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
実施例1で得られたステープルを用いて目付100g/m
2の不織布を作製し、筒状に形成し、筒の中に鉛筆を10本引き揃え、120℃の熱風で10秒間加熱した後、鉛筆の緊縛状態を観察した。評価結果を表1に示す。
【0040】
(比較例3)
公知の熱収縮フィルムを用いて筒状に形成し、筒の中に鉛筆を10本引き揃え、120℃の熱風で10秒間加熱した後、鉛筆の緊縛状態を観察した。評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(評価の考察)
前記実施例1の本発明例は、鉛筆が包装材によりしっかりと緊縛されており、鉛筆は動きにくく安定していた。前記比較例1、比較例2は、捲き回した包装材がほとんど収縮することなく、束ねた鉛筆も動く状態にあり、緊縛状態にはならなかった。実施例2の場合は、10本の鉛筆は緊縛されており、不織布で束ねた鉛筆の包装物は、打音の発生が無く、積み重ねても包装物自体に傷がつきにくい状態であった。比較例3の場合は、10本の鉛筆は緊縛されたが、鉛筆の包装物は、打音の発生があり、積み重ねると包装物自体に傷がつきやすい状態であった。