(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262688
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】熱交換システム
(51)【国際特許分類】
F24T 10/00 20180101AFI20180104BHJP
【FI】
F24J3/08
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-96253(P2015-96253)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-211790(P2016-211790A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】515126097
【氏名又は名称】株式会社 日東
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 肇
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−292030(JP,A)
【文献】
実開昭63−141205(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0198054(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0038052(US,A1)
【文献】
特開2009−002595(JP,A)
【文献】
特開2008−075994(JP,A)
【文献】
特開平06−228928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を利用する機器に連結し、地表から地中に向けて配置した流体を循環させるための循環管と、
地表から地中に向けて配置し、下端が地中の帯水層よりも深い位置にあるケーシングと、
前記循環管とケーシングとの間であって、且つ、当該循環管及びケーシングとの間にそれぞれ所定の間隔を形成させて配置した導水管と、を備え、
前記ケーシングは前記地中の帯水層の位置に対応して地下水の連通部を有し、
前記導水管は前記循環管の前記帯水層より深い位置に有する下端部の近傍まで配置されるとともに下部側に導水口を有し、
前記導水管の上部側の内部から水をくみ上げるための揚水手段を有することで地中の帯水層の深さに関係なく熱交換可能なことを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
前記導水管又は/及びケーシングの内部に注水手段を有することを特徴とする請求項1記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記循環管は流入部と流出部とを同心円状に配置した二重管構造になっていることを特徴とする請求項1または2記載の熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を利用した熱交換システムに関し、特に地下水の帯水層の深さに関係なく設置可能な熱交換システムに係る。
【背景技術】
【0002】
地下水の有する比較的安定した温度を利用して、使用する機器との相対的な温度関係にて温熱源として、又は冷熱源として利用することが行われている。
例えば、特許文献1に地中の帯水層から水を浸入させた筒体内にU字形状の循環管を配設した技術を開示する。
しかし、地中に存在する地下水の流出源となる帯水層は地層構造により相違し、深さが50〜100m等、地域によって深さが異なる。
従って、特許文献1に開示するように筒体の開口下端部を帯水層の深さに合せるとしたら、設置場所によって筒体の長さ(深さ)を変えざるを得ない。
また、
図4に示すように帯水層111aを横切るように深く筒体111を設けた場合に、この筒体にU字形状の循環管113を配置し、制御部110にて制御されたポンプ114により揚水することになる。
すると、水の流れは帯水層111aと揚水口114aとの間H
0だけになることになり地下水の熱利用が不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5067956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、地下水に有する熱エネルギーを有効に活用できる熱交換システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る熱交換システムは、熱を利用する機器に連結し、地表から地中に向けて配置した流体を循環させるための循環管と、地表から地中に向けて配置し、
下端が地中の帯水層よりも深い位置にあるケーシングと、前記循環管とケーシングとの間であって、且つ、当該循環管及びケーシングとの間にそれぞれ所定の間隔を形成させて配置した導水管と、を備え、
前記ケーシングは前記地中の帯水層の位置に対応して地下水の連通部を有し、前記導水管は前記循環管の
前記帯水層より深い位置に有する下端部の近傍まで配置されるとともに下部側に導水口を有し、前記導水管の
上部側の内部から水をくみ上げるための揚水手段を有する
ことで地中の帯水層の深さに関係なく熱交換可能なことを特徴とする。
ここで熱を利用する機器とは循環管と直接連結し、又は熱交換器を介して間接的に連結して使用する各種機器をいう。
例えば、空調機等の室外機に連結して地下水を冷熱又は温熱として利用する形態が例として挙げられる。
このように導水管の内部の、例えば上部から水をポンプ等にて汲み上げると、地中の帯水層から流出してくる地下水は、導水管の下部の導水口を経由して上方に流れることになるため、帯水層の深さに影響を受けることなく地下水の熱を利用することができる。
【0006】
また、本発明にてケーシングは既存の井戸を利用してもよく、新たにケーシングを地中に設置してもよい。
ケーシングの外周部には地中の帯水層と連通可能になっていれば、どのような構造でもよい。
例えば、ケーシングの外周部にスリットや孔を設けたり、網目構造にしたりする例が挙げられる。
【0007】
帯水層から湧き出る水量が不充分であったり、冬季等の渇水期の場合には既存の他の井戸から地下水を汲み上げ、導水管の上部又は/及びケーシングの上部から注水する注水手段を有するようにしてもよい。
【0008】
本発明において循環管は従来のU字形状のチューブ管を用いてもよく、また、前記循環管は流入部と流出部とを同心円状に配置した二重管構造になっていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る熱交換システムにおいては、地中の帯水層と連通した、即ち地下水が溜まるケーシング部と熱交換する循環管との間に導水管を設けたので、地下水は導水管の下部に設けた導水口からこの導水管内に水が流れ込む、あるいは流れ出すように水の流れが形成される。
これにより、地中の帯水層の深さに関係なく熱交換可能なシステムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る熱交換システムの構成例を示す。(a)は導水管の上部より水を汲み上げる場合を示し、(b)は水を注水する場合を示す。
【
図2】循環管を同心円状の二重構造にした例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る熱交換システムの構成例を以下、図面に基づいて説明するが本発明はこれに限定されない。
【0012】
図1(a)に基本的な構成を示す。
地中1に例えば鉄管からなるケーシング11を埋設する。
ケーシング11には地中の帯水層の位置に対応して、スリット状の連通部からなる帯水層部11aを形成してある。
その内側に内周壁との間に所定の間隔を設け、且つ、底面から少し浮かした状態で樹脂製の導水管12を配置してある。
導水管12は下部が開口した導水口12aとなっており、上部からU字形状の循環管13を挿入、配置してある。
循環管13は、例えば空調機の室外機と接続され、一方が熱媒体の流入口13a、他方が流出口13bとなっている。
揚水ポンプ14のサクション14a側を導水管12の内部の上部に配置し、吐出14b側に汲み出すと、帯水層部11aから浸入した地下水は導水管12の下部の導水口12aを経由して汲み上げられることになるため、導水管12の概ね全長にわたって循環管と熱交換される。
この場合に帯水層から湧き出る水量が少ない場合には既存の井戸等から地下水を汲み上げケーシング11の上部から注水管15にて注水してもよい。
注水管15には流量計15b及びバルブ15aが取り付けられている。
なお、図示を省略したがケーシング内部や導水管内部等に温度センサーを設け、それらのデータに基づいて、バルブ、ポンプ等の稼働制御する制御部が設けられている。
なお、
図1(a)に示した導水管12を取り外した状態で連続採熱量を計測したら15kWレベルであった環境下で導入管12を取り付けると、約2倍の30kWレベルまで向上した。
【0013】
図1(b)は渇水期の場合に、他の既存の井戸から地下水を汲み上げ導水管12の上部から注水する例である。
【0014】
図2に示した例は、循環管として二重管23を用いた例であり、
図2(b)に下端部の拡大図を示す。
二重管23はSUS等にて製作され、内管23bの外周部に所定の間隔を設けて同心円状に配置した外管23aとの二重構造になっている。
外管23aの下端部は塞がれ、内管23bの下端部は開口されているので、この部分を介して、内管23bと外管23aとが連通している。
図3は、この連通部に温度センサーT3を設けた例を示す。
なお、
図3に示した例は注水系の流量計Q1、及びバルブ系統、揚水系の流量計Q2、及びバルブ系統を模式的に示し、計測データD1,D2等に基づいて制御する制御部Sが設けられている。
また、注水管15をケーシング部15cと、導水管部15dとに分岐した例となっている。
【符号の説明】
【0015】
1 地中
11 ケーシング
11a 帯水層部
12 導水管
12a 導水口
13 循環管
14 揚水ポンプ
15 注水管