特許第6262721号(P6262721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262721
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】敗血症の予防用または治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/10 20060101AFI20180104BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180104BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20180104BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   A61K38/10
   A61P31/04
   !C07K7/08ZNA
   !C12N15/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-511371(P2015-511371)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公表番号】特表2015-518818(P2015-518818A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】KR2013004145
(87)【国際公開番号】WO2013169060
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0050529
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0050533
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0071989
(32)【優先日】2012年7月2日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0104207
(32)【優先日】2012年9月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514286826
【氏名又は名称】ジェムバックス アンド カエル カンパニー,リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】514286848
【氏名又は名称】キム サン チェ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】キム サン チェ
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−521039(JP,A)
【文献】 特表2002−520293(JP,A)
【文献】 Expert Opin. Investig. Drugs, 2009, vol.18, No.5, p.687-694
【文献】 Clin. Cancer Res., 2011, vol.17, No.21, p.6847-6857
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを含む、敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項2】
敗血症性ショックを予防または治療するための組成物である、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項3】
注射剤である、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項4】
静脈内注射剤である、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項5】
前記組成物は溶液であり、前記溶液のペプチドの濃度は、0.5〜1.0mg/mLである、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項6】
前記ペプチドは、0.5〜5.0mg/kgの1回投与量で投与される、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドは、単回投与される、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項8】
医薬組成物である、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【請求項9】
食品組成物である、請求項1に記載の敗血症の予防用または治療用の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敗血症の予防用または治療用の組成物、敗血症の予防方法または治療方法、敗血症の予防用ペプチドまたは治療用ペプチド、及びペプチドの敗血症の予防用途または治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症(sepsis)は、細菌が血液中に入って繁殖しながら、その生産した毒素によって中毒症状を示したり、全身に感染症を起こしたりする病気である。原因病巣としては、中耳炎、皮膚化膿症、褥瘡(pressure sore)、肺疾患、虫歯、胆嚢炎、腎盂炎、骨髄炎、感染子宮などを挙げることができる。しかし、化膿菌の侵入場所がはっきりしていないものもある。病源菌としては、連鎖状球菌、ブドウ状球菌、大腸菌、肺炎菌、緑膿菌、真菌などがある。症状は、急に悪寒戦慄を伴った高熱が出る。関節痛、頭痛、倦怠感なども見られる。脈拍は、頻数が微弱になり、呼吸が早くなり、重度の場合は、意識が混濁する。
【0003】
深刻な敗血症は、敗血症が、肺機能障害、血液凝固または他の血液障害、尿生産減少、または精神状態変形のような器官機能障害をもたらすときに発生する。深刻な敗血症の器官機能障害は、血圧(低血圧)または乳酸血症のような疾患を誘発する一つ以上の器官への不十分な血流(低貫流)と関連しているが、これがまさに敗血症性ショックである。
【0004】
韓国特許公開第10−2004−0045400号などに、敗血症治療用組成物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一側面において、本発明の目的は、敗血症を予防または治療することである。
【0006】
一側面において、本発明の目的は、敗血症による症状を改善することである。
【0007】
一側面において、本発明の目的は、敗血症性ショックをあらかじめ予防したり治療したりすることである。
【0008】
一側面において、本発明の目的は、敗血症と係わるサイトカインの濃度を低くすることである。
【0009】
一側面において、本発明の目的は、敗血症を誘発する炎症、または敗血症の結果として現れる炎症を予防または治療することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面において、本発明は、組成物に係わり、前記組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを含んでもよい。
【0011】
一側面において、本発明は、方法に係わり、前記方法は、有効量の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを、敗血症の予防または治療を必要とする対象に投与することを含む敗血症の予防方法または治療方法である。
【0012】
一側面において、本発明は、使用に係わり、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドの敗血症の予防または治療への使用である。
【0013】
一側面において、本発明は、ペプチドに係わり、前記ペプチドは、敗血症の予防または治療のための配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドである。
【0014】
一側面において、本発明は、キットに係わり、前記キットは、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチド;及びペプチドの投与量、投与経路、投与回数及び適応症のうち一つ以上を開示した指示書;を含んでもよい。
【0015】
一側面において、前記断片は、3個以上のアミノ酸から構成された断片でもある。
【0016】
一側面において、前記ペプチドは、ヒトテロメラーゼに由来したものでもある。
【0017】
一側面において、前記敗血症の予防または治療は、敗血症性ショックを予防または治療することでもある。
【0018】
一側面において、前記ペプチドは、注射剤の形態で投与されるものでもある。
【0019】
一側面において、前記注射剤は、静脈内注射剤でもある。
【0020】
一側面において、前記注射剤は、凍結乾燥ペプチドが食塩水に溶解されている溶液でもある。
【0021】
一側面において、前記溶液のペプチド濃度は、0.5〜1.0mg/mLでもある。
【0022】
一側面において、前記ペプチドは、0.5〜5.0mg/kgの1回投与量で投与されるものでもある。
【0023】
一側面において、前記ペプチドは、1回投与されるものでもある。
【発明の効果】
【0024】
一側面において、本発明は、敗血症と係わるサイトカインの濃度を顕著に低くすることができる。
【0025】
一側面において、本発明は、敗血症を効果的に予防または治療することができる。
【0026】
一側面において、本発明は、敗血症による症状を効果的に改善することができる。
【0027】
一側面において、本発明は、敗血症性ショックをあらかじめ予防したり治療したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】表1によって、それぞれPEP 1、LPS及びLPS+PEP 1をラットに投与した後、血液を採取し、血液内TNF−αの濃度を測定した結果である。
図2】表2によって、それぞれPEP 1、LPS及びLPS+PEP 1をラットに投与した後、血液を採取し、血液内IL6の濃度を測定した結果である。
図3】表2によって、それぞれPEP 1、LPS及びLPS+PEP 1をラットに投与した後、血液を採取し、血液内IL1bの濃度を測定した結果である。
図4】HeLa細胞で遂行したPEP 1の毒性試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
敗血症性ショック(septic shock)は、深刻な感染及び敗血症の結果を意味するものであり、多様な器官機能障害症侯群(MODS:multiple organ dysfunction syndrome)及び死亡を引き起こす。
【0030】
深刻な敗血症は、敗血症が、肺機能障害、血液凝固または他の血液障害、尿生産減少、あるいは精神状態変形のような器官機能障害をもたらすときに発生する。深刻な敗血症の器官機能障害は、血圧(低血圧)または乳酸血症のような疾患を誘発する一つ以上の器官での不十分な血流(低貫流)と係わっているが、これがまさに敗血症性ショックである。
【0031】
敗血症では、器官の機能障害は、血流の局所的変化、敗血症誘導低血圧(<90mmHg、またはベースラインから≧40mmHgの低下)、拡散された血管内凝集から引き起こされる。MODSの発達を促進すると見られる因子のうち一つは、敗血症患者での微細血管性血栓症(thrombosis)として観察されてきた微細循環のサイトカイン誘導障害である。
【0032】
バクテリアから生産されたエンドトキシン及びサイトカイン、特にTNF、IL−1及びIL−6は、内皮で前凝集(procoagulation)因子を活性化させ、内皮損傷を引き起こす。そのような損傷された内皮表面は、抗凝集特性を阻害するだけではなく、抗線維素溶解(antifibrinolysis)を増大させることにより、血管内凝固、微細血管性血栓症及び多重器官不全を引き起こす。
【0033】
従って、TNF、IL−1及びIL−6のようなサイトカインを抑制することができる薬物は、敗血症患者の症状を改善させたり、あるいは敗血症を治療または予防したりするのに効果的である。
【0034】
テロメア(telomere)は、染色体の末端に反復的に存在する遺伝物質であって、当該染色体の損傷や、他の染色体との結合を防止すると知られている。細胞が分裂するたびに、テロメアの長さは少しずつ短くなるが、一定回数以上の細胞分裂があれば、テロメアは非常に短くなり、その細胞は、分裂を止めて死ぬ。一方、テロメアを長くすれば、細胞の寿命が延長されると知られており、その例として、癌細胞では、テロメラーゼ(telomerase)という酵素が分泌され、テロメアが短くなることを防ぐために、癌細胞が死なずに、続けて増殖すると知られている。
【0035】
一側面において、本発明は、組成物に係わり、前記組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを含んでもよい。
【0036】
一側面において、本発明は、方法に係わり、前記方法は、有効量の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを、敗血症の予防または治療を必要とする対象に投与することを含む敗血症の予防方法または治療方法である。
【0037】
一側面において、本発明は、用途に係わり、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドの敗血症の予防または治療への用途である。
【0038】
一側面において、本発明は、ペプチドに係わり、前記ペプチドは、敗血症の予防または治療のための配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドである。
【0039】
一側面で本発明は、キットに係わり、前記キットは、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチド;及びペプチドの投与量、投与経路、投与回数及び適応症のうち一つ以上を開示した指示書;を含んでもよい。
【0040】
一側面において、前記断片は、3個以上のアミノ酸から構成された断片でもある。他の側面において、前記断片は、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上または15個以上のアミノ酸から構成された断片でもある。
【0041】
一側面において、前記ペプチドは、ヒトテロメラーゼに由来したものでもある。具体的には、配列番号1のペプチドは、ヒトテロメラーゼ全体配列(1,132個のアミノ酸、配列番号2)のうち、611位置〜626位置のペプチドを意味する。
【0042】
一側面において、前記敗血症の予防または治療は、敗血症性ショックを予防または治療するものでもある。
【0043】
一側面において、前記ペプチドは、注射剤の形態で投与されるものでもあるが、それに限定されるものではない。一側面において、前記注射剤は、静脈内注射剤でもある。一側面において、前記注射剤は、凍結乾燥ペプチドが食塩水に溶解されている溶液でもある。
【0044】
一側面において、前記溶液のペプチド濃度は、0.5〜1.0mg/mLでもある。他の側面において、前記溶液のペプチド濃度は、0.6mg/mL以上または0.7mg/mL以上でもある。他の側面において、前記溶液のペプチド濃度は、0.9mg/mL以下または0.8mg/mL以下でもある。例えば、0.75mg/mLである。
【0045】
一側面において、前記ペプチドは、0.5〜5.0mg/kgの1回投与量で投与されるものでもある。一側面において、前記1回投与量は、0.6mg/kg以上、0.7mg/kg以上、0.8mg/kg以上、0.9mg/kg以上、1.0mg/kg以上、1.1mg/kg以上、1.2mg/kg以上、1.3mg/kg以上、1.4mg/kg以上でもある。前記投与量は、4.5mg/kg以下、4.0mg/kg以下、3.5mg/kg以下、3.0mg/kg以下、2.5mg/kg以下、2.0mg/kg以下、1.8mg/kg以下でもある。
【0046】
一側面において、前記ペプチドは、単回投与されもする。敗血症は、急性炎症であるので、比較的高用量を短い間隔で投与することが必要である。配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドまたはその断片は、0.5〜5.0mg/kgの投与量であるとき、投与回数が単回である場合でも、その効果が非常に優秀である。しかし、必ずしも単回に限定されるものではない。必要によっては、0.5〜5.0mg/kgの投与量を2回以上投与することもできる。また、場合によっては、投与量を少なくし、投与回数を増やすこともできる。例えば、投与量を0.1〜1.0mg/kgに少なくし、代わりに投与回数を、2回以上、3回以上または4回以上、投与間隔を、30分以上、1時間以上、2時間以上または3時間以上にして投与することもできる。
【0047】
一側面において、前記組成物は、医薬組成物でもある。他の側面において、前記組成物を、食品組成物でもある。
【0048】
本明細書で使用される敗血症と係わる症状を「実質的に除去する」ということは、少なくとも96%その症状の発生を低下させるということを意味する。
【0049】
本明細書で使用される「治療する」ということは、例えば、障害の抑剤、退歩または停滞を誘発させ、または障害の重度度を低下させ、抑え、抑制して低下させ、または障害の症状を除去するか改善させるということを含む。
【0050】
本明細書で使用される、被験者での疾病進行または疾病合併症の「抑制」ということは、被験者において、疾病進行及び/または疾病合併症を防止したり、あるいは低下させたりするということを意味する。
【0051】
本明細書で使用される敗血症と係わる「症状」は、関節炎と係わる任意の臨床的または検査の兆候を含み、被験者が感じたり観察したりすることができるものに制限されるものではない。炎症は、敗血症の症状でもある。
【0052】
本発明の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドをコーディングするポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドを利用して、配列番号1を含むペプチド、またはその断片であるペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドを量産することができる。例えば、ペプチドをコーディングするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞に入れて培養することによって、当該ペプチドを量産することができる。
【0053】
本明細書に開示されたペプチドは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列相同性を有するペプチドも含む。また、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1を含むペプチドまたはその断片と、1個以上のアミノ酸、2個以上のアミノ酸、3個以上のアミノ酸、4個以上のアミノ酸、5個以上のアミノ酸、6個以上のアミノ酸または7個以上のアミノ酸が変化したペプチドと、を含んでもよい。
【0054】
本発明の一側面において、アミノ酸変化は、ペプチドの物理化学的特性を変更させる性質に属する。例えば、ペプチドの熱安定性を向上させ、基質特異性を変更させ、最適のpHを変化させるようなアミノ酸変化が行われる。
【0055】
本明細書において「アミノ酸」というのは、自然にペプチドに統合される22個の標準アミノ酸だけではなく、D−アイソマー及び変形されたアミノ酸を含む。それにより、本発明の一側面においてペプチドは、D−アミノ酸を含むペプチドでもある。一方、本発明の他の側面においてペプチドは、翻訳後の変形(post-translational modification)が行われた非標準アミノ酸なども含む。翻訳後の変形例は、リン酸化(phosphorylation)、糖化(glycosylation)、アシル化(acylation)(例えば、アセチル化(acetylation)、ミリストイル化(myristoylation)及びパルミトイル化(palmitoylation)を含む)、アルキル化(alkylation)、カルボキシル化(carboxylation)、ヒドロキシル化(hydroxylation)、糖化反応(glycation)、ビオチニル化(biotinylation)、ユビキチニル化(ubiquitinylation)、化学的性質の変化(例えば、ベータ除去脱イミド化、脱アミド化)及び構造的変化(例えば、二硫化物ブリッジの形成)を含む。また、ペプチドコンジュゲートを形成するための架橋剤(crosslinker)との結合過程で起こる化学反応によって生ずるアミノ酸の変化、例えば、アミノ基、カルボン酸基、または側鎖での変化のようなアミノ酸の変化を含む。
【0056】
本明細書に開示されたペプチドは、自然そのままの供給源から同定されて分離された野生型ペプチドでもある。一方、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1の断片であるペプチドと比較し、一つ以上のアミノ酸が置換、欠失及び/または挿入されたアミノ酸配列を含む、人工変異体でもある。人工変異体だけではなく、野生型ポリペプチドでのアミノ酸変化は、タンパク質のフォールディング(folding)及び/または活性に、有意の影響を及ぼさない保存性アミノ酸置換を含む。保存性置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ルシン、イソロイシン及びメチオニン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン及びトレオニン)の群の範囲内にある。一般的に、特異的活性を変更させないアミノ酸置換が、本分野に公知されている。最も一般的に発生する交換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu及びAsp/Gly、並びにそれらと反対のものである。保存的置換の他の例は、次の表1の通りである。
【0057】
【表1】
【0058】
ペプチドの生物学的特性における実在的な変形は、(a)置換領域内のポリペプチド骨格の構造、例えば、シートまたは螺旋立体構造の維持におけるそれらの効果、(b)標的部位での前記分子の電荷または疎水性の維持におけるそれらの効果、または(c)側鎖のバルク維持におけるそれらの効果がかなり異なる置換部を選択することによって行われる。天然残基は、通常の側鎖特性に基づいて、次のグループに区分される:
【0059】
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0060】
非保存的置換は、それら部類のうち1つの構成員を他の部類に交換することによって行われる。ペプチドの適する立体構造の維持と関連性のないいかなるシステイン残基も、一般的にセリンで置換され、前記分子の酸化的安定性を向上させ、異常な架橋結合を防止することができる。逆に言えば、システイン結合を前記ペプチドに加え、その安定性を向上させることができる。
【0061】
ペプチドの他類型のアミノ酸変異体は、抗体のグリコシル化パターンが変化したものである。変化という意味は、ペプチドで発見された一つ以上の炭水化物残基の欠失、及び(または)ペプチド内に存在しない一つ以上のグリコシル化部位の付加を示す。
【0062】
ペプチドのグリコシル化は、典型的にN連結されるか、あるいはO連結されたものである。N連結されているということは、炭水化物残基が、アスパラギン残基の側鎖に付着したことをいう。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−トレオニン(ここで、Xは、プロリンを除いた任意のアミノ酸)は、炭水化物残基をアスパラギン側鎖に酵素的に付着させるための認識配列である。従って、それらトリペプチド配列のうち一つがポリペプチドに存在することによって、潜在的なグリコシル化部位が生成される。O連結されたグリコシル化は、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち一つを、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的には、セリンまたはトレオニンに付着させることを意味するが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを使用することもできる。
【0063】
ペプチドへのグリコシル化部位の付加は、一つ以上の前述のトリペプチド配列を含むように、アミノ酸配列を変化させることによって便利に行われる(N連結されたグリコシル化部位の場合)。そのような変化は、一つ以上のセリン残基またはトレオニン残基を、最初の抗体の配列に付加するか、それら残基で置換することによって行われる(O連結されたグリコシル化部位の場合)。
【0064】
他の様態で本明細書は、前記ポリペプチドをコーディングする、核酸分子を提供し、その塩基配列は、例えば、GAA GCG CGC CCG GCG CTG CTG ACC AGC CGC CTG CGC TTT ATT CCG AAA配列(配列番号3)を有する。核酸分子は、当業者に公知の技法によって、宿主細胞内に導入される。例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム、エレクトロポレーション、ウイルスと細胞とを接触させることによる形質転換、または直接細胞内にマイクロ注射する方法などがある。宿主細胞は、高等真核細胞、例えば、哺乳類細胞、あるいは下級真核細胞、例えば、酵母細胞であるか、または原核細胞、例えば、バクテリア細胞でもある。形質転換に適する原核宿主としては、大腸菌属、枯草菌属、ネズミチフス菌属、プセウドモナス属、ストレプトマイセス属、マイクバクテリア属に属する種を例として挙げることができる。
【0065】
前記核酸分子を含むベクターは、一般的に組み換え発現ベクターであり、宿主細胞の形質転換を可能にする複製起源、選択可能なマーカー(例えば、真核細胞培養のためのジヒドロフォレート還元酵素またはネオマイシン耐性;イー・コライでのテトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性;あるいはS.cerevisiae TRP1遺伝子)、及びタンパク質コーティング配列の転写を調節するプローモーターを含んでもよい。使用される有用な発現ベクターは、例えば、SV40及びpcDNAの誘導体、colE1、pCR1、pBR322、pMal−C2、pET、pGEX(Smith,et al.,Gene 67:31−40(1988))のような公知のバクテリアプラスミド、pMB9及びその誘導体RP4のようなプラスミド、NM989のようなファージIの数多くの誘導体のようなファージDNA、並びにM13及びフィラメント型一本鎖ファージDNAのようなファージDNA;酵母プラスミド、例えば、ファージDNA、または発現制御配列を使用するために変形された、プラスミドとファージDNAとの組み合わせから誘導されたベクターなどがある。哺乳類発現ベクターは、複製起源、適するプローモーター及びインハンサーを含む。また、必須リボゾーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体及びスプライス受容体の部位、転写終結配列、及び5’プランキング非転写配列を含んでもよい。哺乳類発現ベクターは、誘導性プローモーター、例えば、ジヒドロフォレート還元酵素プローモーターを含むベクター、DHFR発現カセットを含むあらゆる発現ベクター、またはpEDのようなDHFR/メトトレキサート共増幅ベクター(Randal J.Kaufman,1991;Randal J.Kaufman,Current Protocols in Molecular Biology,16,12(1991))を含む。または、グルタミン合成酵素/メチオニンスルホキシイミン共増幅ベクター、例えば、pEE14(Celltech)、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)または核抗原(EBNA)の制御下に、エピソーム性を発現を指示するベクター、例えば、pREP4(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pMEP4(Invitrogen)、pREP8(Invitrogen)、pREP9(Invitrogen)及びpEBVHis(Invitrogen)が使用される。選択性哺乳類発現ベクターとしては、Rc/CMV(Invitrogen)、pRc/RSV(Invitrogen)などがある。本発明に使用されるワクシニアウイルス哺乳類発現ベクターは、pSC11、pMJ601、pTKgptF1Sなどがある。
【0066】
本発明に使用される酵母発現システムとしては、非融合pYES2ベクター(Invitrogen)、融合pYESHisA,B,C(Invitrogen),pRSベクターなどがある。
【0067】
前記ベクターは、多様な細胞哺乳類、特にヒト由来の細胞;バクテリア、酵母、真菌;並びに昆虫、線虫類及び植物の細胞に導入することができる。適する細胞の例としては、VERO細胞、HELA細胞、例えば、ATCC No.CCL2;CHO細胞株、例えば、ATCC No.CCL61;COS細胞、例えば、COS−7細胞及びATCC No.CRL1650細胞;W138、BHK、HepG2、3T3、例えば、ATCC No.CRL6361;A549、PC12、K562細胞、293細胞、Sf9細胞、例えば、ATCC No.CRL1711;及びCv1細胞、例えば、ATCC No.CCL70などがある。
【0068】
本発明に使用される他の適する細胞としては、原核宿主細胞菌株、例えば、大腸菌(例えば、DH5−α菌株);枯草菌属、ネズミチフス菌属、プセウドモナス属、ストレプトマイセス属及びスタフィロコッカス属に属する菌株がある。
【0069】
本発明の一側面による組成物は、配列番号1を含むペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列同一性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを0.1μg/mg〜1mg/mg、具体的には、1μg/mg〜0.5mg/mg、さらに具体的には、10μg/mg〜0.1mg/mgの含量で含んでもよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図した効果を示すのに適するだけではなく、組成物の安定性及び安全性をいずれも満足することができ、コスト対比の効果の側面でも、前記範囲で含むことが適する。
【0070】
本発明の一側面による組成物は、ヒト、犬、ニワトリ、豚、牛、羊、ギニアピッグまたは猿を含む全ての動物に適用される。
【0071】
本発明の一側面による医薬組成物は、経口、直腸、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、骨髄内、硬膜内または皮下などに投与される。
【0072】
経口投与のための剤形は、錠剤、丸剤、軟質または硬質のカプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤または乳濁剤でもあるが、それらに制限されるものではない。非経口投与のための剤形は、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁液剤、乳剤、坐剤、パッチまたは噴霧剤でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0073】
本発明の一側面による医薬組成物は、必要によっては、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、分散剤、界面活性剤、着色剤、香料または甘味剤などの添加剤も含む。本発明の一側面による医薬組成物は、当業界の一般的な方法によって製造される。
【0074】
本発明の一側面による医薬組成物の有効成分は、投与される対象の年齢、性別、体重、病理状態及びその深刻度、投与経路または処方者の判断によって異なる。そのような因子に基づいた適用量決定は、当業者のレベル内にあり、その1日投与用量は、例えば、0.1μg/kg/日〜1g/kg/日、具体的には、1μg/kg/日〜100mg/kg/日、さらに具体的には、10μg/kg/日〜10mg/kg/日、一層具体的には、50μg/kg/日〜5mg/kg/日にもなるが、それに制限されるものではない。本発明の一側面による医薬組成物は、1日1回〜3回投与されるが、それに制限されるものではない。
【0075】
本発明の一側面による化粧品組成物は、局所適用に適する全ての剤形でもって提供される。例えば、溶液、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、油相に水相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、固体、ゲル、粉末、ペースト、泡沫(foam)またはエアロゾルの剤形でも提供される。そのような剤形は、当該分野の一般的な方法によって製造される。
【0076】
本発明の一側面による化粧品組成物は、主効果を損傷させない範囲内で、望ましくは、主効果に相乗効果を与えることができる他の成分も含む。また、本発明の一側面による化粧品組成物は、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機または無機の顔料、香料、冷感剤または制汗剤をさらに含んでもよい。前記成分の配合量は、本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内で、当業者が容易に選定可能であり、その配合量は、化粧品組成物全体重量を基準に、0.01〜5重量%、具体的には、0.01〜3重量%でもある。
【0077】
本発明の一側面による食品組成物の剤形は、特別に限定されるものではないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤、固形製剤などに剤形化される。各剤形は、有効成分以外に、当該分野で一般的に使用される成分を、剤形目的または使用目的によって、当業者が困難さなしに、適宜選定して配合することができ、他の原料と同時に適用する場合、相乗効果が起こることが可能である。
【0078】
前記有効成分の投与量決定は、当業者のレベル内にあり、その1日投与用量は、例えば、具体的には、1μg/kg/日〜10mg/kg/日、さらに具体的には、10μg/kg/日〜1mg/kg/日、一層具体的には、50μg/kg/日〜100μg/kg/日にもなるが、それらに制限されるものではなく、投与する対象の年齢、健康状態、合併症など多様な要因によって異なる。
【0079】
経口投与のための剤形は、固形または液状の用量単位、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁液剤、液剤、シロップ剤、ドロップ剤、舌下錠やそれ以外の剤形によってなる。
【0080】
末剤は、本発明のペプチドを適切な粒度に粉砕することによって製造される。散剤は、本発明のペプチドを適切な粒度に粉砕した後、同様に適切な粒度に粉砕した医薬用担体、例えば、澱粉、マンニトールのような食用炭水化物、それ以外のものと混合することによって製造する。必要によっては、風味剤、保存剤、分散剤、着色剤、香料、それ以外のものを混合することもできる。
【0081】
カプセル剤は、まず上述のようにして粉末状になった末剤、散剤または錠剤の項で説明したように、顆粒化したものを、例えば、ゼラチンカプセルのようなカプセル外皮中に充填することによって製造される。滑沢剤や流動化剤、例えば、コロイド型シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、固形のポリエチレングリコールのようなものを粉末状であるものに混合し、その後、充填操作を行う。崩壊剤や可溶化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムを添加すれば、カプセル剤を摂取したときの医薬の有効性を改善させることができる。
【0082】
また、本発明のペプチドの微細粉末を、植物油、ポリエチレングリコール、グリセリン、界面活性剤の中に懸濁分散させ、それをゼラチンシートで覆い包んで軟質カプセル剤にすることができる。
【0083】
錠剤は、賦形剤を加えて粉末混合物を作り、顆粒化またはスラッグ化し、続いて、崩壊剤または滑沢剤を加えた後、打錠することによって製造される。
【0084】
必要であるならば、経口投与のための用量単位処方は、マイクロカプセル化することもできる。その処方は、さらに被覆を行うか、あるいは高分子・ワックスなどの中に埋め込むことによって、作用時間の延長や持続放出を起こすこともできる。
【0085】
非経口投与として、注射剤、坐剤などを利用することができる。皮下・筋肉または静脈内の注射用にした液状用量単位形態、例えば、溶液や懸濁液剤の形態を使用することによって行うことができる。それらは、本発明のペプチドの一定量を、注射目的に適する非毒性の液状担体、例えば、水性や油性の媒体に懸濁したり溶解させたりし、続いて、その懸濁液または溶液を滅菌させることによって製造される。注射液を等張にするために、非毒性の塩や塩溶液を添加することもできる。また、安定剤、保存剤、乳化剤などを併用することもできる。
【0086】
直腸投与は、本発明のペプチドを低融点の、水に可溶または不溶の固体、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、半合成の油脂、高級エステル類(例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル)、及びそれらの混合物に溶解または懸濁させて製造した坐剤などを使用することによって行うことができる。
【0087】
本明細書において使用された用語は、特定具体例について説明するための目的だけに意図されたものであり、本発明を限定する意図ではない。名詞の前に個数が省略された用語は、数量を制限するものではなく、言及された名詞物品が一つ以上存在するということを示すのである。用語「含む」、「有する」及び「含有する」というのは、開かれた用語として解釈される(すなわち、「含むが、それに限定されるものではない」という意味)。
【0088】
数値範囲の言及は、単にその範囲内に属するそれぞれの別個の数値を個別的に言及することの代わりをする容易な方法であるために、そうではないということが明示されていない限り、各別個の数値は、まさしく個別的に明細書に言及されているように、本明細書に統合される。全範囲の終値は、その範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。
【0089】
本明細書に言及された全ての方法は、取り立てて明示されているか、あるいは文脈によって明白に矛盾しない限り、適切な手順によって遂行される。ある一実施例及び全ての実施例、または例示的言語(例えば、「〜のような」)の使用は、特許請求の範囲に含まれていない限り、単に本発明をさらに良好に記述するためものであり、本発明の範囲を制限するものではない。明細書のいかなる言語も、いかなる非請求構成要素を、本発明の実施に必須なものであると解釈されることがあってはならない。取り立てての定義がない限り、本明細書に使用される技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野で当業者によって、一般的に理解されるような意味を有する。
【0090】
本発明の望ましい具体例は、本発明を実施するために発明者に知られた最適のモードを含む。望ましい具体例の変動は、先行する記載に触れれば、当業者に明白になるであろう。本発明者らは、当業者がかような変動を適切に利用するということを期待し、本発明者らは、本明細書の記載と異なる方式で本発明が実施されるということを期待する。従って、本発明は、特許法によって許容されているように、特許請求の範囲で言及された発明の要旨の均等物及び全ての変形を含む。さらに、全ての可能な変動内で、前述の構成要素のいかなる組み合わせも、ここで異なって明示されるか、あるいは文脈上明白に矛盾しない限り、本発明に含まれるものである。本発明は、例示的な具体例を参照して具体的に示されて記述されたが、当業者は、特許請求の範囲によって定義される発明の精神及び範囲を外れずとも、形態及びディテールにおいて、多様な変化が行われるということを十分に理解するであろう。
【実施例】
【0091】
実施例1:ペプチドの合成
配列番号1のペプチド(以下「PEP 1」とする)を従来に知られた固相ペプチド合成法(SPPS:solid phase peptide synthesis)によって製造した。具体的には、ペプチドは、ASP48S(Peptron、Inc.,大韓民国・大田)を利用して、Fmoc固相合成法を介して、C末端からアミノ酸一つずつカップリングすることによって合成した。次のように、ペプチドのC末端の最初のアミノ酸が樹脂に付着されたものを使用した。例えば、次の通りである:
【0092】
NH2−Lys(Boc)−2−chloro−Trityl Resin
NH2−Ala−2−chloro−Trityl Resin
NH2−Arg(Pbf)−2−chloro−Trityl Resin
【0093】
ペプチド合成に使用した全てのアミノ酸原料は、N−termがFmocで保護(protection)され、残基はいずれも酸で除去される、Trt、Boc、t−Bu(t−butyl ester)、Pbf(2,2,4,6,7−pentamethyl dihydro−benzofuran−5−sulfonyl)などで保護されたものを使用した。例えば、次の通りである:
【0094】
Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−Thr(tBu)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Trp(Boc)−OH、Fmoc−Met−OH、Fmoc−Asn(Trt)−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Ahx−OH、Trt−Mercaptoacetic acid。
【0095】
カップリング試薬(Coupling reagent)としては、HBTU[2−(1H−Benzotriazole−1−yl)−1,1,3,3−tetamethylaminium hexafluorophosphate]/HOBt[N−Hydroxybenzotriazole]/NMM[4−Methylmorpholine]を使用した。Fmoc除去は、20%のDMF内で、ピペリジン(piperidine in DMF)を利用した。合成されたペプチドをResinから分離し、残基の保護基除去には、切断カクテル(Cleavage Cocktail)[TFA(trifluoroacetic acid)/TIS(triisopropylsilane)/EDT(ethanedithiol)/H2O=92.5/2.5/2.5/2.5]を使用した。
【0096】
アミノ酸保護基が結合された出発アミノ酸が固相支持体に結合されている状態を利用して、ここに当該アミノ酸をそれぞれ反応させ、溶媒で洗浄した後、脱保護する過程を反復することにより、各ペプチドを合成した。合成されたペプチドを樹脂から切り取った後、HPLCで精製し、合成いかんをMSで確認して凍結乾燥させた。
【0097】
本実施例に使用されたペプチドに対して、高性能液体クロマトグラフィ結果、全てのペプチドの純度は、95%以上であった。
【0098】
PEP 1製造に係わる具体的な過程について説明すれば、次の通りである。
1)カップリング
NH2−Lys(Boc)−2−chloro−Trityl Resinで保護されたアミノ酸(8当量)と、カップリング試薬HBTU(8当量)/HOBt(8当量)/NMM(16当量)とをDMFに溶解させて添加した後、常温で2時間反応させ、DMF、MeOH、DMFの順に洗浄した。
【0099】
2)Fmoc脱保護
20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を加え、常温で5分間2回反応させ、DMF、MeOH、DMFの順に洗浄した。
【0100】
3)1及び2の反応を反復して行い、ペプチド基本骨格NH2−E(OtBu)−A−R(Pbf)−P−A−L−L−T(tBu)−S(tBu)−R(Pbf)L−R(Pbf)−F−I−P−K(Boc)−2−chloro−Trityl Resin)を作った。
【0101】
4)切断(Cleavage):合成が完了したペプチドResinに、切断カクテル(Cleavage Cocktail)を加え、ペプチドをResinから分離した。
【0102】
5)得られた混合物に、Cooling diethyl etherを加えた後、遠心分離して得られたペプチドを沈澱させる。
【0103】
6)Prep−HPLCで精製した後、LC/MSで分子量を確認して凍結させ、パウダーに製造した。
【0104】
実施例2:剤形の調剤
1.PEP 1の静脈注射剤の調剤
前記実施例1によって得られた凍結乾燥パウダー状のPEP 1を0.9%食塩水に溶解させて使用した。PEP 1の純度に対する補正(純度:97.3%、含量:85.3%)を実施し、投与直前に0.9%食塩水を賦形剤にし、0.75mg/mLの濃度で注射用溶液を調剤した。
【0105】
2.LPSの静脈注射剤の調剤
リポ多糖(LPS:lipopolysaccharide)としては、イー・コライ(E.coli)O127:B8(ATCC 12740)(Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO,USA,L3129)のLPSを使用した。LPSも、投与直前0.9%食塩水を利用して、0.25mg/mL用量に溶解して調剤した。
【0106】
実施例3:動物実験
本実験は、株式会社韓国動物医科学研究所の動物実験倫理規定を守って実施した。また、本実験は、Non GLP試験として、食品医薬品安全庁公示第2009−183号(2009年12月22日)「非臨床試験管理基準」及びOECD Principles of Good Laboratory Practice(1997)を参照して行った。
【0107】
本実験では、Sprague Dawleyラットに敗血症と係わる炎症反応を誘発させた後、試験物質であるPEP 1を投与した後、血中酸化窒素(NO)及びサイトカインを測定した。
【0108】
使用されたSprague Dawleyラットは、オリエントバイオ(大韓民国京畿道加平郡北面沐洞里)から入手した特定病原体のいないSPFラット(Crlj:CD(SD))であった。8.5週齢、250g±20%以内の体重を有するオスラット100匹のうち、7日間の観察結果、健康状態が良好なオス96匹(平均9.5週齢、平均体重(g)の±20%以内)を対象に実験を行った。飼育条件は、温度23±3℃、相対湿度55±15%、換気回数10〜20回/hr、照明時間12時間(午前8時点灯〜午後8時消灯)及び照度150〜300Luxであった。
【0109】
前記48匹ラットを全4グループに分けて、各グループに対して、PEP 1及び/またはLPSを投与した。
【0110】
投与経路は、いずれも静脈投与を行った。具体的には、前記実施例2で製造されたPEP 1剤形及び/またはLPS剤形を、静脈内注射で投与した。投与回数は、いずれも1回であった。投与量は、投与前に最も近い時期に測定された体重を基に、2mL/kgを計算して投与した。各グループの投与は、下記表2のように行われた。
【0111】
【表2】
【0112】
まず、全ての動物に対して、PEP 1及び/またはLPSを投与する前日に、0.8mLずつ前採血した。前採血の翌日、まずLPS投与対象群に対して、前記表によって投与し、LPS投与時点から30分経過後、PEP 1投与対象群に対して投与を実施した。投与量は、前記表2に示されている通りであった。全ての投与が完了した後、LPS投与時点から、75分及び255分(すなわち、PEP 1投与時点から、それぞれ45分及び195分)で、それぞれ0.8mLずつ採血した。採血された血液に対して、サイトカインを分析した。サイトカイン中における敗血症の主要指標であるTNF−α、IL−1b及びIL−6の濃度を測定した。表1のG1〜G4に対して、TNF−α、IL−1、IL−6濃度を測定した。その結果は、図1図3に示されている。図1図3に表示された「*」は、p<0.05を意味する。
【0113】
図1は、表1によって、それぞれPEP 1、LPS及びLPS+PEP 1を投与した後で血液を採取し、血液内TNF−αの濃度を測定した結果である。図1に示されているように、LPSで敗血症を誘導したラットの血液には、TNF−αが高濃度で存在するが、LPS投与後、PEP 1を処理した結果、わずか195分でラットの血液内TNF−αの濃度が顕著に低下したということが分かる。
【0114】
図2は、表2によって、それぞれPEP 1、LPS及びLPS+PEP 1を投与した後、血液を採取し、血液内IL6の濃度を測定した結果である。図2に示されているように、LPSで敗血症を誘導したラットの血液にはIL6が高濃度で存在するが、LPS投与後、PEP 1を処理した結果、わずか195分で、ラットの血液内IL6の濃度が顕著に低下したということが分かる。
【0115】
図3は、表2によって、それぞれPEP 1、LPS及びLPS+PEP 1を投与した後、血液を採取し、血液内IL1bの濃度を測定した結果である。図3に示されているように、LPSで敗血症を誘導したラットの血液には、IL1bが高濃度で存在するが、LPS投与後、PEP 1を処理した結果、わずか195分で、ラットの血液内IL1bの濃度が顕著に低下したということが分かる。
【0116】
一方、1.5mg/kgの1回投与量でも、全てのラットは、生存するということが分かった。
【0117】
実施例4:毒性実験
(1)細胞の準備
ATCCから得たHeLa細胞株を、MEM(Minimum Essential Medium)に10%ウシ胎児血清(Invitrogen,USA)、Earle’s salts、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、100μg/mlペニシリン及び100units/mlストレプトマイシン(streptomycin)を添加し、37℃、5%CO2培養器で培養した。
【0118】
(2)細胞生存率及び毒性分析
一方、前記培養された細胞株を、96ウェルプレートに分周し、培地に10%ウシ胎児血清(Invitrogen,USA)と、100μg/mlペニシリンと100units/mlストレプトマイシンとを添加し、37℃、5%CO2培養器で12時間培養した。PBS洗浄後、MEM(Minimum Essential Medium)で1時間の飢餓(starvation)を行った。各PEP 1 20uMで処理し、37℃で24時間培養した後、MTTアッセイ方法を利用して、細胞生存率及び毒性を分析した。その結果は、図4に示した通りである。
【配列表フリーテキスト】
【0119】
配列番号1(PEP 1): EARPALLTSRLRFIPK
【0120】
配列番号2(ヒトテトメラーゼ): MPRAPRCRAVRSLLRSHYREVLPLATFVRR LGPQGWRLVQRGDPAAFRALVAQCLVCVPWDARPPPAAPSFRQVSCLKELVARVLQRLCERGAKNVLAFGFALLDGARGGPPEAFTTSVRSYLPNTVTDALRGSGAWGLLLRRVGDDVLVHLLARCALFVLVAPSCAYQVCGPPLYQLGAATQARPPPHASGPRRRLGCERAWNHSVREAGVPLGLPAPGARRRGGSASRSLPLPKRPRRGAAPEPERTPVGQGSWAHPGRTRGPSDRGFCVVSPARPAEEATSLEGALSGTRHSHPSVGRQHHAGPPSTSRPPRPWDTPCPPVYAETKHFLYSSGDKEQLRPSFLLSSLRPSLTGARRLVETIFLGSRPWMPGTPRRLPRLPQRYWQMRPLFLELLGNHAQCPYGVLLKTHCPLRAAVTPAAGVCAREKPQGSVAAPEEEDTDPRRLVQLLRQHSSPWQVYGFVRACLRRLVPPGLWGSRHNERRFLRNTKKFISLGKHAKLSLQELTWKMSVRDCAWLRRSPGVGCVPAAEHRLREEILAKFLHWLMSVYVVELLRSFFYVTETTFQKNRLFFYRKSVWSKLQSIGIRQHLKRVQLRELSEAEVRQHREARPALLTSRLRFIPKPDGLRPIVNMDYVVGARTFRREKRAERLTSRVKALFSVLNYERARRPGLLGASVLGLDDIHRAWRTFVLRVRAQDPPPELYFVKVDVTGAYDTIPQDRLTEVIASIIKPQNTYCVRRYAVVQKAAHGHVRKAFKSHVSTLTDLQPYMRQFVAHLQETSPLRDAVVIEQSSSLNEASSGLFDVFLRFMCHHAVRIRGKSYVQCQGIPQGSILSTLLCSLCYGDMENKLFAGIRRDGLLLRLVDDFLLVTPHLTHAKTFLRTLVRGVPEYGCVVNLRKTVVNFPVEDEALGGTAFVQMPAHGLFPWCGLLLDTRTLEVQSDYSSYARTSIRASLTFNRGFKAGRNMRRKLFGVLRLKCHSLFLDLQVNSLQTVCTNIYKILLLQAYRFHACVLQLPFHQQVWKNPTFFLRVISDTASLCYSILKAKNAGMSLGAKGAAGPLPSEAVQWLCHQAFLLKLTRHRVTYVPLLGSLRTAQTQLSRKLPGTTLTALEAAANPALPSDFKTILD
【0121】
配列番号3(PEP 1を暗号化するヌクレトチド): GAA GCG CGC CCG GCG CTG CTG ACC AGC CGC CTG CGC TTT ATT CCG AAA配列
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]