特許第6262726号(P6262726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262726
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20180104BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20180104BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20180104BHJP
   A23P 10/30 20160101ALI20180104BHJP
   A23L 27/12 20160101ALI20180104BHJP
   A23G 4/00 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L27/10 C
   A23L5/00 C
   A23L5/00 D
   A23P10/30
   A23L27/12
   !A23G4/00
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-514465(P2015-514465)
(86)(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公表番号】特表2015-517815(P2015-517815A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】EP2013060983
(87)【国際公開番号】WO2013178638
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】1209597.2
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッテフェーン,フランス
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−024336(JP,A)
【文献】 特表2009−501076(JP,A)
【文献】 実開昭56−173094(JP,U)
【文献】 特表2012−531217(JP,A)
【文献】 特表2011−516055(JP,A)
【文献】 米国特許第06056949(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0253612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物質粒子状コアならびにフレーバーおよび熱可逆性ジャガイモデンプンの噴霧乳化物を含むフレーバー被覆を含むカプセル化フレーバー粒子であって、熱可逆性ジャガイモデンプンが少なくとも80重量%のアミロマルターゼ酵素で修飾されたアミロペクチンを含む、前記カプセル化フレーバー粒子。
【請求項2】
植物質コアが、80〜750ミクロンのサイズを有する、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
コアが、タピオカ、米、小麦、トウモロコシ、ソルガム、サゴおよび豆から選択される、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
フレーバーが、ミントフレーバーである、請求項1に記載の粒子。
【請求項5】
フレーバーが、メントール、ペパーミントおよびスペアミントから選択される、請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
フレーバーが、フルーツフレーバーである、請求項1に記載の粒子。
【請求項7】
フレーバーが、ベリー、アップル、洋ナシ、ストロベリー、チェリー、レモンおよびベルガモットから選択される、請求項6に記載の粒子。
【請求項8】
(i) 熱可逆性ジャガイモデンプンをその溶解に適した高い温度の水に溶解し、最低限60℃まで冷却すること、
(ii) 温度を維持しながら、この溶液にフレーバーを乳化すること、
(iii) 流動床に懸濁させた植物質のコア粒子に当該乳化物を噴霧すること、
の工程を含む、カプセル化フレーバーの製造方法。
【請求項9】
消費製品ベースおよび請求項1に記載のカプセル化フレーバーを含む、消費製品。
【請求項10】
消費製品ベースを提供すること、およびこれに請求項1に記載のカプセル化フレーバーを添加することを含む、消費製品にフレーバーを付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゼラチンを置き換える方法、およびこれにより製造される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは長い間、フレーバーのカプセル化において必需品であり、安価であることおよび可食性であることの両方が主な理由である。しかしながら、特にBSE(狂牛病)の数々の発生の影響を受けての、その起源に関する心配、および、動物性製品にさらされることを望まないベジタリアン人口の増加が、より許容される代替物によるゼラチンの代替物への要求をもたらしている。
【0003】
かかる代替物の1つはデンプンであり、これは植物由来であり、比較的安価である。デンプンカプセル化への多くの取り組みがなされており、典型的な例は、米国公開公報2005/163833および2011/319503を含む。これらの出願は両方とも、カプセルの形成のための特定の方法に関する。
【発明の概要】
【0004】
特定のデンプンを利用して、簡単な方法でカプセル化フレーバーを製造することができることが今見出された。したがって、植物質粒子状コアならびにフレーバーおよび熱可逆性ジャガイモデンプンの噴霧乳化物を含むフレーバー被覆を含むカプセル化フレーバー粒子であって、熱可逆性ジャガイモデンプンが少なくとも80重量%のアミロマルターゼ酵素で修飾されたアミロペクチンを含む、前記カプセル化フレーバー粒子を提供する。
【0005】
(i) 熱可逆性ジャガイモデンプンをその溶解に適した高い温度の水に溶解し、最低限60℃まで冷却すること、
(ii) 温度を維持しながら、この溶液にフレーバーを乳化すること、
(iii) 流動床に懸濁させた植物質のコア粒子に当該乳化物を噴霧すること、
の工程を含み、
熱可逆性ジャガイモデンプンが少なくとも80重量%のアミロマルターゼ酵素で修飾されたアミロペクチンを含む、カプセル化フレーバーを製造する方法をさらに提供する。
【0006】
「熱可逆性」ジャガイモデンプンとは、固形(ゲル)状態から、液体状態へ変化することのできるデンプンを意味する。この特性を示し、少なくとも80重量%のアミロマルターゼ酵素で修飾されたアミロペクチンも含む、あらゆるジャガイモデンプンがこのプロセスにおける使用のために適している。熱可逆性は天然のデンプンの性質ではなく、加工デンプンのみの性質であり、これらは市販されている。かかるデンプンの典型的な例は、EteniaTM QS (AVEBEから)である。
【0007】
植物質コアは十分に細かい度合まで粉末状にすることのできるあらゆる植物質であってもよい。これは典型的には80〜750ミクロン、特に200〜250ミクロンである。特定の例は、タピオカであり、他は、米、小麦、トウモロコシ、ソルガム、サゴおよび豆を含む。典型的な有用な市販材料は、Beneo RemyfloTM R 500-TT(米)およびTapiocalineTM CR521(タピオカ)を含む。
【0008】
フレーバーは、あらゆる所望のフレーバーであってもよい。非限定例は、メントール、ペパーミントおよびスペアミントフレーバーなどのミントフレーバーならびにベリー、アップル、洋ナシ、ストロベリー、チェリー、レモンおよびベルガモットなどのフルーツフレーバーを含む。
【0009】
当該プロセスにおいて、コア材料を流動床に懸濁させ、熱可逆性ジャガイモデンプンおよびフレーバーの乳化物を噴霧する。
【0010】
典型的なプロセスにおいて、熱可逆性ジャガイモデンプンをまず少なくとも70℃の水に溶解する。この溶液に、その他の所望の粉末状成分を添加する。典型的なかかる成分は、乳化剤を含み、これらの典型的な非限定例は、デキストリン化ワキシートウモロコシ、オクテニルコハク酸デンプン(Capsulの商品名で入手可能)およびアラビアガムである。他は、マルトデキストリンおよび糖などの充填剤を含み、後者は特に、チューインガムなどの糖含有用途における使用のための材料である場合である。可塑剤、典型的には、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトールなどのポリオールも添加され得る。
【0011】
この溶液に、フレーバーの乳化物を添加する。これは、典型的には1〜3ミクロンの粒径を有し、従来の手段により、ホモジナイザーにおいて製造される。
【0012】
得られたブレンドを、流動床に懸濁された植物質粒子の懸濁液に噴霧する。これは、流動化および加熱の条件下において行われる。装置の典型例は、粒子に十分なコーディングを提供することのできる流動床(Wurster またはトップ噴霧システム)であり得る。乳化物の噴霧は、粒子が所望の大きさに達するまで継続し、達した時点で噴霧を停止し、粒子を取り除き、篩にかける。
【0013】
流動床装置は、通常の慣行にしたがって、当該技術分野において認識されたパラメーター内で操作する。典型的な操作条件は以下のとおりである:
入口温度 60〜110℃、特に約95℃
生成物の温度 35〜90℃、特に約65℃
気流速度 20〜140M/h、特に約60M/h
ノズル空気圧 0.5〜6bar、特に約4bar
【0014】
用語「約」の使用は、本明細書において、これらの数値に絶対的な精度が求められないことを単に示すものである。さらに、あるときには、与えられた範囲外で実施することが可能であり、適切でもあり得る。当業者は、それぞれの場合に適切なときを判断することができるであろう。
【0015】
さらなる態様において、粒子にさらなる被覆を噴霧してもよい。これは、有利な制御された放出特性を、特にチューインガムのために、与えることができる。さらなる被覆は、典型的には、メチルセルロースの水溶液であるが、例えば(これらに限定されないが)加工デンプン、アラビアガム、エチルセルロースなどの他の周知の被覆材料を用いてもよい。
【0016】
得られる生成物は、カプセル化フレーバーであって、既知のゼラチンベースのカプセルと同様に働くが、ゼラチンベースでない。したがって、フレーバーおよび多糖を含むカプセル化フレーバーが提供される。さらに、上述の方法により調製可能な、カプセル化フレーバーも提供される。
【0017】
カプセル化フレーバーは、かかるカプセル化物が通常用いられるあらゆる用途、例えば、全てのタイプの消費製品おいて用いることができる。「消費製品」とは、消化のために口に入れられる製品(食料品、飲料および菓子など)または口内での短い維持および排出のために口に入れられる製品(歯磨きペースト、歯磨きジェル、およびマウスウォッシュおよびリンスなど)を意味する。1つの特定の使用はチューインガムである。したがって、消費製品ベースおよび上述のカプセル化フレーバーを含む、消費製品が提供される。消費製品ベースの提供およびこれへの上述のカプセル化フレーバーの添加を含む、消費製品にフレーバーを付与する方法も提供される。
【0018】
本開示は、特定の態様を説明する、以下の非限定例に限定してさらに説明する。
例1
粒子の調製
成分は以下に示すとおりである:
【0019】
【表1】
【0020】
材料Aを混合し、温水に溶解し、1〜3ミクロンの粒子径のフレーバー乳化物を形成するために均質化する。この均質化した材料Aを噴霧し、以下のプロセスパラメーターにしたがって駆動するGlatt からのGPCG01流動床に懸濁させた材料Bに被覆する:
入口温度 95℃
生成物の温度 65℃
気流速度 30M/h
ノズル空気圧 4bar
【0021】
ライスグリッツを流動床に流動させ、乳化物を流動させたライスグリッツに噴霧し、全ての乳化物が噴霧されるまで噴霧を続ける(乳化物の量は、完全なコーディングが達成される量である)。
【0022】
材料Cを混合し溶液を得て、この溶液を流動床内の粒子に噴霧する。噴霧を粒子径が500ミクロンになるまで継続する。
結果物は、カプセル化フレーバーの微粒子(1400ミクロンと125ミクロンの間(D50〜500ミクロン))である。メチルセルロース被覆は、これらをチューインガムにおける使用に特に適したものとする。
【0023】
例2
チューインガムにおける試験
チューインガムサンプルを以下の処方にしたがって調製した:
【0024】
【表2】
【0025】
ミックス1および2を個々に調製し、そしてZ-bladeミキサーにおいて一緒に混合した。かかる2つのミックスの1つに、2つのカプセル化フレーバー製品の1つを添加し、これらがしっかりと組み込まれるまで混合を続ける。2つのカプセル化フレーバー製品は
― 例1の製品
― ウシのゼラチン bloom 250
である。
【0026】
このように製造した2つのチューインガムを、5名の専門テスターのパネルに提出し、味、持続性およびフレーバーの強さについて判断される。テスターは(例1の組成物が、定着した市販のゼラチンベースの製品のそれと同様な質を提供するかを確かめるために)、味およびフレーバーバランスを評価した。探し求められた質は:
― 味およびフレーバー(純粋に質的 ― 味の質、望ましくない後味の存在);
― フレーバー強度(かむことで、どれだけ早く(秒単位)フレーバーが現れるか);
― フレーバーの強さ(このフレーバーがどれだけ強いか、1〜8のスケールで測定し、8が望ましい最大の基準を示す)
である。
【0027】
以下の見解が得られ得る:
1. ゼラチンベースのフレーバーを有するガムは、最も高い強さを有すると評価され、7.5まで上がる。しかし、例に基づくガムは、この点でわずかに劣るだけであり、5.5まで上がる。この違いは、専門テスターにのみ知覚されるものであり、一般消費者のパネルは違いを見出さなかった。
2. ガムは全てフレーバーを非常に類似の速度で放ち、約15秒で開始し、80〜130秒で最高となり、約300秒で最初の味レベルに戻る。
【0028】
したがって、デンプンベースガムは、市販のゼラチンベース製品の許容される代替物であり、ゼラチンフリーという利点を有する。