(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の発光素子、及びその発光素子の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
[発光素子]
本実施形態の発光素子100の概略上面図を
図1(a)に、概略断面図を
図1(b)にそれぞれ示す。発光素子100は、板状の基材40と、基材40の一表面と対向して基材40との間に空間105を隔てて配置される封止部材101と、凹凸構造層142と、第1電極92と、有機層94と、第2電極98と、接着剤層103を含み、空間105内において、基材40上に凹凸構造層142、第1電極92、有機層94、及び第2電極98がこの順序で形成されている。
図1(a)、(b)に示した通り、基材40の中心を0とし、面内方向をXY方向、それに垂直な方向、すなわち、発光素子100の高さ方向をZ方向と定める。この実施形態において接着剤層103は、中央に開口を有する四角い枠体であり、その高さ方向(Z方向)において、基材40と封止部材101の間に挟まれて位置する。この構造により、枠体をなす接着剤層103の内周面103siにより空間105が規定され、枠体をなす接着剤層103の外周面103soは、発光素子100の高さ方向において外部空間との境界をなす。
【0023】
基材40上に形成された凹凸構造層142は、この実施形態では、その平面構造が基材40より一回り小さい矩形であり、凹凸構造層142の外縁142cが、基材40の平面内に収まる。接着剤層103は、前述のように枠体であり、その外周面103soが基材40またはその上に形成された層と接する箇所を接着剤層103の外縁103bと呼び、その内周面103siが基材40またはその上に形成された層と接する箇所を接着剤層103の内縁103aと呼ぶこととする(
図1(b)参照)。後述するように、凹凸構造層142は、XY面内において凹凸構造層142の外縁142cが接着剤層103の内縁103aと接着剤層の外縁103bの間に位置するように配置されている。なお、
図1(a)の概略上面図において、凹凸構造層142と接着剤層103の平面的な位置関係が分かるように、封止部材101を省略し、また、凹凸構造層142の外縁142cを一点鎖線で表している。この配置において、凹凸構造層142は、接着剤層103の外周面103so、基材40及び封止部材101で閉鎖された空間105内に収容され、接着剤層103の外側(大気)に露出していないため、水分や酸素が凹凸構造層142を透過して封止空間105内に侵入することが防止される。これにより、有機層94等の劣化が抑制され、発光素子の寿命が向上する。また、接着剤層の内縁103aは、凹凸構造層の凹凸表面、または凹凸構造層の凹凸を反映した第1電極、有機層又は第2電極の凹凸表面と接着し得る。接着剤層の内縁103aが凹凸表面に接着していることにより、接着剤層103と基材40は高い密着力で密着され、封止後も長期的に高い密着力が維持され剥がれが生じないため、発光素子の寿命が向上する。
【0024】
<基材>
基材40としては特に制限されず、発光素子に用いることが可能な公知の透明基板を適宜利用することができる。例えば、ガラス等の透明無機材料からなる基板;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(ABS樹脂等)、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリイミド系樹脂(ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂等)、シクロオレフィンポリマー等の樹脂からなる基板;これらの樹脂からなる基板の表面に、SiN、SiO
2、SiC、SiO
XN
Y、TiO
2、Al
2O
3等の無機物からなるガスバリア層及び/又は樹脂材料からなるガスバリア層を形成してなる積層基板;これらの樹脂からなる基板及びこれらのガスバリア層を交互に積層してなる積層基板などを利用することができる。発光素子の用途からすれば、基材40は耐熱性、UV光等に対する耐候性を備える基材が望ましい。これらの点で、ガラスや石英基板等の無機材料からなる基材がより好ましい。特に、凹凸構造層142がゾルゲル材料などの無機材料から形成される場合には、基材40を無機材料から形成すると、基材40と凹凸構造層との間で屈折率の差が少なく、発光素子100内での意図しない屈折や反射を防止することができるので好ましい。基材40上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよい。また、基材の凹凸構造層を形成する面とは反対の面に、レンズ機能や光拡散等の機能を有する凹凸構造を形成してもよいし、同様の機能を有するフィルム等を貼りつけてもよい。また、基材40の厚みは、1〜2000μmの範囲であることが好ましい。
【0025】
<凹凸構造層>
凹凸構造層142は、微細な凹凸パターン142pが表面に形成された層である。微細な凹凸パターン142pは、マイクロレンズアレイ構造や光拡散や回折等の機能を有する構造など、任意のパターンにし得る。
図12(a)に、本実施形態の凹凸構造層142の凹凸パターン142pの概略平面図の例を示し、
図12(b)に
図12(a)の概略平面図中の切断線における断面プロファイルを示す。凹凸構造層142の断面形状は、
図12(b)に示すように、比較的なだらかな傾斜面からなり、基材40から上方に向かって波形(本願では適宜「波形構造」と称する)をなしてよい。すなわち、凹凸パターン142pの凸部は、その基材40側の底部から頂部に向かって狭くなるような断面形状を有してよい。凹凸構造層142の凹凸パターン142pは、平面視上、
図12(a)に概略平面図の例を示すように、複数の凸部(白色部分)及び複数の凹部(黒色部分)がうねって(蛇行して)延在する細長い形状を有し、その延在方向、うねりの方向(屈曲方向)及び延在長さが不規則であるという特徴を有してよい。このような凹凸パターンは、ストライプ、波形ストライプ、ジグザグのような規則正しく配向したパターンやドット状のパターン等とは明らかに異なり、この点で規則性や直線を多く含む回路パターンのようなものと区別できる。上記のような特徴を有する凹凸構造層142は、基材40の表面と直交するいずれの方向で切断しても凹凸断面が繰り返し現れることになる。また、凹凸パターンの複数の凸部及び凹部は、平面視で、一部または全部が途中で分岐していてもよい(
図12(a)参照)。なお、
図12(a)では、凸部のピッチは、全体として均一のように見える。また、凹凸パターンの凹部は、凸部によって区画され、凸部に沿って延在してよい。
【0026】
凹凸構造層142は、上記のような不規則な凹凸パターンのほか、ドット構造、プリズム構造、ライン&スペースからなるストライプ構造、円柱状、円錐状、円錐台状、三角柱状、三角錐状、三角錐台状、四角柱状、四角錐状、四角錐台状、多角柱状、多角錐状、多角錐台状などのピラー構造、またはホール構造など、任意のパターンにしてもよい。また、サンドブラスト法で形成されるような不規則な微細凹凸パターンにしてもよい。
【0027】
凹凸構造層142が回折格子として働くために、凹凸の平均ピッチは、100〜1500nmの範囲にあることが好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、凹凸による光の回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折角が小さくなり、回折格子としての機能が失われてしまう傾向にある。凹凸の平均ピッチは200〜1200nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の深さ分布の平均値は、20〜200nmの範囲であることが好ましい。凹凸の深さ分布の平均値が前記下限未満では、可視光の波長に対して深さが小さすぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折光強度にむらが生じ、この結果、例えば、発光素子100の有機層94内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリークが生じ易くなったり、寿命が短くなったりする傾向にある。凹凸の深さ分布の平均値は30〜150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の深さの標準偏差は、10〜100nmの範囲であることが好ましい。凹凸の深さの標準偏差が前記下限未満では、可視光の波長に対して深さが小さすぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折光強度にむらが生じ、この結果、例えば、発光素子100の有機層94内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリークが生じ易くなったり、寿命が短くなったりする傾向にある。
【0028】
本願において、凹凸の平均ピッチとは、凹凸が形成されている表面における凹凸のピッチ(隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔)を測定した場合において、凹凸のピッチの平均値のことをいう。このような凹凸のピッチの平均値は、走査型プローブ顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」等)を用いて、下記条件:
測定方式:カンチレバー断続的接触方式
カンチレバーの材質:シリコン
カンチレバーのレバー幅:40μm
カンチレバーのチップ先端の直径:10nm
により、表面の凹凸を解析して凹凸解析画像を測定した後、かかる凹凸解析画像中における、任意の隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔を100点以上測定し、その算術平均を求めることにより算出できる。
【0029】
また、本願において、凹凸の深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差は以下のようにして算出できる。表面の凹凸の形状を、走査型プローブ顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定する。凹凸解析の際、前述の条件で任意の3μm角(縦3μm、横3μm)または10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して凹凸解析画像を求める。その際に測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点における凹凸高さのデータをナノメートルスケールでそれぞれ求める。なお、このような測定点の数は、用いる測定装置の種類や設定によっても異なるものではあるが、例えば、測定装置として上述の株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」を用いた場合には、3μm角の測定領域内において65536点(縦256点×横256点)の測定(256×256ピクセルの解像度での測定)を行うことができる。そして、このようにして測定される凹凸高さ(単位:nm)に関して、先ず、全測定点のうち、基板の表面からの高さが最も高い測定点Pを求める。そして、かかる測定点Pを含み且つ基板の表面と平行な面を基準面(水平面)として、その基準面からの深さの値(測定点Pにおける基板からの高さの値から各測定点における基板からの高さを差し引いた差分)を凹凸深さのデータとして求める。なお、このような凹凸深さデータは、測定装置(例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」)によっては測定装置中のソフト等により自動的に計算して求めることができ、このような自動的に計算して求められた値を凹凸深さのデータとして利用できる。このようにして、各測定点における凹凸深さのデータを求めた後、その算術平均及び標準偏差を求めることにより算出できる値をそれぞれ凹凸の深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差として採用する。本明細書において、凹凸の平均ピッチ及び凹凸の深さ分布の平均値は、凹凸が形成されている表面の材料に関わらず、上記のような測定方法を通じて求めることができる。
【0030】
但し、「不規則な凹凸パターン」には、表面の凹凸の形状を解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施して得られるフーリエ変換像が円もしくは円環状の模様を示すような、すなわち、上記凹凸の向きの指向性はないものの凹凸のピッチの分布は有するような疑似周期構造を含む。それゆえ、このような疑似周期構造を有する基板は、その凹凸ピッチの分布が可視光線を回折する限り、有機EL素子のような面発光素子に使用される回折基板に好適である。
【0031】
凹凸構造層142の材料として無機材料が使用でき、特に、シリカ、Ti系の材料(TiO
2等)やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZrO
2、Al
2O
3、ZnS、BaTiO
3、SrTiO
2等のゾルゲル材料を使用し得る。このうち、成膜性や屈折率の関係からシリカまたはTiO
2が好ましい。また、凹凸構造層142の材料として、樹脂組成物の硬化物を使用してもよい。樹脂組成物として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーなどの反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂および熱硬化型樹脂、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型樹脂、エポキシ系樹脂などの熱および化学硬化(二液混合)型樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどのホットメルト型樹脂、並びにカチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂などを挙げることができる。樹脂組成物は、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂でもよい。また、凹凸構造層142の材料としてポリシラザン溶液を原料として形成されるSiO
X、SiN
X、SiO
XN
Y等を用いてもよい。
【0032】
凹凸構造層142は、無機材料または硬化性樹脂材料に紫外線吸収材料を含有させたものであってもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、膜の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
【0033】
凹凸構造層142の厚みは、100nm〜10μmが好ましい。凹凸構造層142の厚みが100nm未満になると、後述のインプリントによる凹凸形状の転写が難しくなる。凹凸構造層の厚みが10μmを超えると、クラックが入るなどの構造的な欠陥が生じやすくなる。なお、ここでは凹凸構造層142の厚みとは、凹凸構造層142の底面から凹凸パターン142pが形成された表面までの距離の平均値を意味する。
【0034】
図2に示すように、凹凸構造層142の外縁(側面)142cと基材40の表面がなす角度(以後、適宜「凹凸構造層のテーパー角」と呼ぶ)をθとすると、凹凸構造層の外縁(側面)142cは、θ≦80°となるような傾斜面であることが好ましい。凹凸構造層のテーパー角θが垂直に近い(θ>80°)場合、スパッタ法や蒸着法により第1電極92または第2電極98を成膜するときに、凹凸構造層の外縁(側面)142c及びその近傍の基材表面に成膜材料が回り込みにくいため、成膜される膜厚が小さくなる。このような膜厚のムラは、電極の断線などの不良につながることがある。一方、凹凸構造層のテーパー角θがθ≦80°であるように凹凸構造層142の外縁(側面)142cが傾斜している場合、凹凸構造層の外縁(側面)142c及びその近傍の基材表面に成膜材料が回り込むようになり、凹凸構造層の外縁(側面)142c及びその近傍において第1電極92及び第2電極98の膜厚が小さくなることを抑制することができる。そのため、凹凸構造層のテーパー角θが垂直に近い(θ>80°)場合と比べて、第1電極92及び第2電極98を均一な膜厚で成膜することが可能となる。
【0035】
基材40と凹凸構造層142の間の密着力が弱い場合は、基材40と凹凸構造層142の間に接着層を設けてもよい。接着層はシランカップリング剤等でよく、シランカップリング剤としては、アクリルまたはメタクリル基を持つものを使用することができ、例えば、KBM−5103(信越化学製)、KBM−503(信越化学製)などを用いることができる。
【0036】
また、凹凸構造層142の表面に被覆層が形成されていてもよい。被覆層は、凹凸構造層142の凹凸深さの標準偏差の25〜150%の範囲内の膜厚を有することが好ましい。それにより、凹凸構造層表面に異物や欠陥があった場合にそれらを被覆することができるため、発光素子のリーク電流を有効に抑制できる。また、上記範囲内の膜厚を有する被覆層が凹凸構造層上に形成された発光素子は良好な光取り出し効率を有する。
【0037】
被覆層の材料(被覆材料)としては、凹凸構造層142の材料として用いることができる材料として上記で例示したSiO
X、TiO
X、ZnO、ZrO
2、Al
2O
3、ZnS、BaTiO
3、SrTiO
2、ITO(インジウム・スズ・オキサイド)等のゾルゲル材料、樹脂組成物の硬化物、ポリシラザン溶液を原料として形成されるSiO
X、SiN
X、SiO
XN
Y等、これらに公知の微粒子、フィラー、紫外線吸収材等を含有させたもの等を用いることができる。特に凹凸構造層の材料として用いた材料と同じ材料が望ましい。被覆材料と凹凸構造層材料が同じ材料であることにより、被覆層と凹凸構造層の間の界面における光の反射を抑制することができる。被覆層の形成に用いるゾルゲル材料溶液は、凹凸構造層の形成に用いるゾルゲル材料溶液よりも溶媒でさらに希釈したものを用いることが望ましい。それにより、凹凸構造層よりも薄い所望の膜厚で被覆層を形成することが容易になる。
【0038】
また、被覆材料としてシランカップリング剤を用いてもよい。それにより、被覆層とその上に形成される電極などの層との間の密着性を向上させることができ、光学素子の製造工程における洗浄工程や高温処理工程での耐性が向上する。被覆層に用いられるシランカップリング剤は、その種類が特に制限されるものではないが、例えばRSiX
3(Rは、ビニル基、グリシドキシ基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種を含む有機官能基であり、Xは、ハロゲン元素またはアルコキシル基である)で示される有機化合物を用いることができる。
【0039】
また、水分や酸素
等の気体の侵入を防ぐ目的で、凹凸構造層142の表面または被覆層の表面にガスバリア層が設けられていてもよい。
【0040】
<第1電極>
第1電極92は、その上に形成される有機層94からの光を基材40側に透過させるために透過性を有する透明電極にし得る。また、凹凸構造層142の表面に形成されている凹凸構造が第1電極92の表面に維持されるようにして積層されることが望ましい。なお、
図1(a)において第1電極92は、後述する第2電極98の引き出し配線部が形成される領域及びその近傍を除いて、凹凸構造層142を覆うように形成されているが、必ずしも凹凸構造層142を覆う必要はなく、第1電極92の配置及び形状は特に限定されない。
【0041】
第1電極の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、金、白金、銀、銅が用いられる。これらの中でも、透明性と導電性の観点から、ITOが好ましい。第1電極92の厚みは20〜500nmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、導電性が不十分となり易く、前記上限を超えると、透明性が不十分となり発光したEL光を十分に外部に取り出せなくなる可能性があり、また、凹凸構造層142の凹凸の深さにもよるが、凹凸構造層142の表面に形成されている凹凸構造が第1電極92の表面に維持されなくなるおそれがある。
【0042】
<有機層>
有機層94は、
図1(a)及び(b)に示すように、第1電極92上に、凹凸構造層142より狭い範囲に形成される。つまり、有機層の外縁94cは凹凸構造層の外縁142cよりも内側に位置する。こうすることで有機層94を接着剤層103及び封止部材101によって封止することができる。有機層94は、有機EL素子の有機層に用いることが可能なものであれば特に制限されず、公知の有機層を適宜利用することができる。また、有機層94の表面は、凹凸構造層142の形状が維持されるようにしてもよいし、形状を維持せずに平坦であってもよい。このような有機層94は、種々の有機薄膜の積層体であってもよく、例えば、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層からなる積層体であってもよい。ここで、正孔輸送層の材料としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N’−ビス(3ーメチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、発光層は、第1電極92から注入された正孔と第2電極98から注入された電子とを再結合させて発光させるために設けられている。発光層に使用できる材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、アルミニウムキノリノール錯体(Alq3)などの有機金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体及び各種蛍光色素等を用いることができる。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。なお、前記燐光発光材料はイリジウムなどの重金属を含むことが好ましい。上述した発光材料をキャリア移動度の高いホスト材料中にゲスト材料としてドーピングして、双極子−双極子相互作用(フェルスター機構)、電子交換相互作用(デクスター機構)を利用して発光させても良い。また、電子輸送層の材料としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルミニウムキノリノール錯体(Alq3)などの有機金属錯体などが挙げられる。さらに上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。なお、正孔輸送層もしくは電子輸送層が発光層の役割を兼ねていてもよい。
【0043】
さらに、第2電極98からの電子注入を容易にするという観点から、有機層94と第2電極98の間に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)、Li
2O
3等の金属フッ化物や金属酸化物、Ca、Ba、Cs等の活性の高いアルカリ土類金属、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。また、第1電極92からの正孔注入を容易にするという観点から、有機層94と第1電極92の間に正孔注入層として、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどからなる層を設けても良い。
【0044】
また、有機層94が正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層からなる積層体である場合、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層の厚みは、それぞれ1〜200nmの範囲、5〜100nmの範囲、及び5〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0045】
<第2電極>
第2電極98として、仕事関数の小さな物質を適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、MgAg、MgIn、AlLi等の金属電極にし得る。また、第2電極98の厚みは50〜500nmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、導電性が低下し易く、前記上限を超えると、電極間の短絡が発生した際に、修復が困難となる可能性がある。また、第2電極98は、凹凸構造層142の表面に形成されている凹凸構造が維持されるようにして積層されてもよい。
【0046】
<接着剤層>
接着剤層103は、基材40と後述の封止部材101の間で、凹凸構造層の外縁(側面)142cに重なるように形成され、それによって、凹凸構造層の外縁(側面)142cが、接着剤層の内縁103aと接着剤層の外縁103bの間に位置する。なお、「凹凸構造層の外縁(側面)142cが、接着剤層の内縁103aと接着剤層の外縁103bの間に位置する」とは、凹凸構造層の外縁(側面)142cの一部分が接着剤層の内縁103aより内側(内縁103aから基材の中心に近い側)に存在してもよく、凹凸構造層の外縁(側面)142cは全周に渡って接着剤層の内縁103aと接着剤層の外縁103bの間に位置する必要はない。すなわち、凹凸構造層の外縁(側面)142cの一部分が封止空間105内に位置している場合も含む。この配置において、凹凸構造層142が接着剤層103の外側(大気)に露出していないため、水分や酸素が凹凸構造層142を透過して封止空間105内に侵入することが防止される。これにより、有機層94等の劣化が抑制され、発光素子の寿命が向上する。また、この配置において、接着剤層の内縁103aは、凹凸構造層142の凹凸表面、または凹凸構造層142の凹凸を反映した第1電極92、有機層94または第2電極98の凹凸表面と接着している。なお、
図2に示したような凹凸構造層142の外縁(側面)142cが傾斜している場合においても、接着剤層の内縁103aが凹凸構造層142の凹凸表面、または凹凸構造層142の凹凸を反映した第1電極92、有機層94または第2電極98の凹凸表面と接着している。接着剤層103が凹凸表面に接着していることにより、接着剤による化学的接着に加えて、凹凸に基づく「ひっかかり」などにより機械的な離れにくさが増すこと、凹凸により界面の面積が増加することなどの効果により、接着剤層103と基材40の接着が強固となり、有機層94の封止がより確実になる。また、封止後も長期的に高い密着力が維持され剥がれが生じない。さらに、このように高い密着力を有することにより、接着剤層103の線幅を狭めることが可能となり、有機層(発光部)の面積を広げることもできる。有機層94から発光した光を有効に取り出すために、接着剤層103は有機層94に接触しておらず、接着剤層103は有機層94から所定の間隔Dを隔てて形成されることが好ましい。間隔Dは例えば1μm以上であることが好ましい。また、接着強度と封止性を両立するために、凹凸構造層の外縁(側面)142cは、接着剤層103の内縁103aと外縁103bのほぼ中間に位置するのが好ましい。
【0047】
接着剤層103の材料としては、ガラス、また、プラスチック基板等に対して一般に使用されている任意の接着剤を制限なく用いることができ、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマー等反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型のアクリル系接着剤、エポキシ樹脂接着剤、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型等の接着剤、エチレン共重合体系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノ−ル樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、ゴム系接着剤等を挙げることができるが、特に好ましい接着剤として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等を挙げることができる。中でも硬化時の収縮の小さいエポキシ系接着剤が好ましい。
【0048】
エポキシ系接着剤として、エポキシ基を含有する化合物とアミン類や酸無水物を含有する硬化剤とを混ぜ合わせ硬化反応によって接着する、エポキシ樹脂及び硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を挙げることができる。
【0049】
本発明で用いることができるエポキシ系接着剤としては、具体的には、例えば、セメダイン株式会社製、セメダインEP−001、株式会社スリーボンド社製、3950シリーズ、3950、3951、3952、2080シリーズ、2083、2086、2087、また、2230シリーズ、2230、2230B、3124C、コニシ株式会社製ボンドMOSシリーズ、MOS07、MOS10、東邦化成工業株式会社ウルタイト1500シリーズ、ウルタイト1540等、また、ナガセケムテックス(株)製XNR5576/5576LV、XNR5516/5516HV/5516Z、XNR5570、T470/UR7116、T470/UR7134、T470/UR7132、T470/UR7124E−LV等がある。
【0050】
アクリル系接着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤成分と、エネルギー線硬化性成分と、熱硬化型接着成分とからなる接着剤をあげることができる。これらの具体例としては、株式会社スリーボンド社製、3003、3027B、3033B、3042B等、また、セメダイン株式会社製、セメダインY600、Y600H等が挙げられる。
【0051】
その他、ゴム系接着剤としては、例えば、シス−1,4−ポリイソプレンを主成分とする天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソブチレン、ブチルゴム等を主成分とする合成ゴム、又は、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合ゴム(SIS)等を主成分とするブロックゴム等から少なくとも一種選択される接着性エラストマーに、常温で液体又は固体で分子量が数百から約1万までの無定形オリゴマー(2量体以上の中分子量重合体)の熱可塑性樹脂であるロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クロマン・インデン樹脂等の接着付与剤、及び、鉱油、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレン、液状ポリアクリル酸エステル等の軟化剤等を配合したものが挙げられる。
【0052】
ビニルエーテル系接着剤としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のホモポリマー又はアクリレートとのコポリマー(接着性エラストマー)などからなる接着剤を用いることができ、それらに、場合によっては上記接着付与剤、軟化剤等を配合してもよい。
【0053】
また、シリコーン系接着剤としては、例えば、高分子量のポリジメチルシロキサン又はポリジメチルジフェニルシロキサンで代表されるポリマー連鎖の末端に残存シラノール基(SiOH)を持つポリマー(又は接着性エラストマー)とに上記接着付与剤、軟化剤等を配合したものが挙げられる。
【0054】
<封止部材>
封止部材101は基材40と対向して、基材との間に空間(封止空間)105を隔てて配置される。空間105は、基材40、封止部材101及び接着剤層103によって封止されており、凹凸構造層142、第1電極92、有機層94、及び第2電極98は、この封止空間105内に位置する。
【0055】
封止部材101としては、ガスバリア性の高い材料であればよく、例えば包装材等に使用される公知のガスバリア性フィルム、例えば酸化珪素又は酸化アルミニウムを蒸着したプラスチックフィルム、セラミック層と衝撃緩和ポリマー層の積層物、ポリマーフィルムをラミネートした金属箔、ガラス製又は金属製の封止缶、掘り込みガラス等を使用することができる。
【0056】
封止空間105は、不活性ガスなどによって満たされる。不活性ガスとしては、N
2の他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は、90〜100体積%であることが好ましい。また、封止空間105は、固形状又は液体状の樹脂、ガラス、フッ素系などの不活性オイル又はゲル材などの充填剤が充填されてもよい。これらの充填剤は透明または白濁していることが望ましい。さらに、封止空間105内に吸水性の物質を配置してもよい。吸水性の物質として例えば酸化バリウムなどを用いることができる。具体的には例えば、アルドリッチ社製の高純度酸化バリウム粉末を、粘着剤付きのフッ素樹脂系半透過膜(ミクロテックスS−NTF8031Q日東電工製)等を用いて封止部材101に貼り付けることにより、封止空間105内に配置することができる。その他、ジャパン
ゴアテックス(株)、双葉電子(株)などで市販されている吸水性物質も好ましく使用できる。
【0057】
[発光素子の第1変形形態]
上記の発光素子100の変形形態を説明する。
図13に示すように、変形形態の発光素子100aにおいて、凹凸構造層142は上述したような回折格子として機能する凹凸パターン(第1凹凸パターン)142pとは異なる凹凸パターン(第2凹凸パターン)142qをさらに有している。発光素子100aにおいて、回折格子として働く第1凹凸パターン142p上には、第1電極92、有機層94及び第2電極98がこの順に形成され、第2凹凸パターン142q上には、接着剤層103または電極の引出部が形成されている。なお、発光素子100aにおいても、発光素子100と同様に、凹凸構造層142の外縁(側面)142cが傾斜していてもよい。
【0058】
第2凹凸パターン142qとしては、上述したような不規則な凹凸パターンのほか、ドット構造、プリズム構造、ライン&スペースからなるストライプ構造、円柱状、円錐状、円錐台状、三角柱状、三角錐状、三角錐台状、四角柱状、四角錐状、四角錐台状、多角柱状、多角錐状、多角錐台状などのピラー構造、またはホール構造など、任意のパターンにしてもよい。また、サンドブラスト法で形成されるような不規則な微細凹凸パターンにしてもよい。なお、本願において、第2凹凸パターン142qと第1凹凸パターン142pが同様の形状のパターン、例えば上述の不規則なパターンであっても、凹凸のピッチや高さ(深さ)が異なっていれば、「第2凹凸パターンが第1凹凸パターンと異なる」場合に含まれるものとする。第2凹凸パターン142qは接着が主目的であるので、
図13に示すように、第1凹凸パターン14
2pよりも凹凸のピッチを小さくすることができる。
図13に示した形態とは異なる形態として第2凹凸パターン142qが、第1凹凸パターンと同一の凹凸ピッチや凹凸深さ(高さ)を有する凹凸パターンの表面にさらに微細な凹凸を設けたパターンであってもよい。接着剤層103が上述のような第2凹凸パターン142qが形成された表面に接着していることにより、「ひっかかり」などにより機械的な離れにくさが増すこと、凹凸により界面の面積が増加することなどの効果により、接着剤層103と基材40の接着が強固となり、有機層94の封止がより確実になる。また、封止後も長期的に高い密着力が維持され剥がれが生じない。さらに、このように高い密着力を有することにより、接着剤層103の線幅を狭めることが可能となり、有機層(発光部)の面積を広げることもできる。
【0059】
[発光素子の第2変形形態]
さらに、別の実施形態の発光素子100bについて説明する。
図14に示すように、発光素子100bは、上述した発光素子100と同様に、板状の基材40と、基材40の一表面と対向して基材40との間に空間105を隔てて配置される封止部材101と、第1電極92と、有機層94と、第2電極98と、接着剤層103を備え、さらに、第1凹凸パターン242pが表面に形成された第1凹凸構造層242と、第2凹凸パターン342pが表面に形成された第2凹凸構造層342を備える。
図14に示した通り、基材40の面内方向をXY方向、それに垂直な方向、すなわち、発光素子100bの高さ方向をZ方向と定める。
【0060】
発光素子100bの基材40、封止部材101、第1電極92、有機層94、第2電極98、及び接着剤層103は、上記実施例の発光素子100と同様の材料で構成される。第1凹凸構造層242及び第2凹凸構造層342は、上記実施形態の発光素子100の凹凸構造層142と同様の材料で構成される。製造の容易さの観点からは、第1凹凸構造層242と第2凹凸構造層342は同じ材料で構成されていることが好ましい。
【0061】
第1凹凸構造層242は、基材40上に形成され、その平面構造(XY面内の構造)が基材40より一回り小さい矩形であり、第1凹凸構造層242の外縁242cは、基材40の平面内に収まる。空間105内において、基材40上に第1凹凸構造層242、第1電極92、有機層94、及び第2電極98がこの順序で形成されている。第2凹凸構造層342は、基材40上において第1凹凸構造層242の周囲に、第1凹凸構造層の外縁242cから所定の距離Gを隔てて形成されている。
【0062】
発光素子100bの接着剤層103は、上述した実施形態の発光素子100と同様に、XY平面において中央に開口を有する四角い枠体であり、その高さ方向(Z方向)において、基材40と封止部材101の間に挟まれて位置する。この構造により、枠体をなす接着剤層103の内周面103siにより空間105が規定され、枠体をなす接着剤層103の外周面103soは、発光素子100の高さ方向において外部空間との境界をなす。接着剤層103の外周面103soが基材40またはその上に形成された層と接する箇所を接着剤層103の外縁103bと呼び、接着剤層103の内周面103siが基材40またはその上に形成された層と接する箇所を接着剤層103の内縁103aと呼ぶこととする(
図14参照)。
【0063】
発光素子100bにおいて、第1凹凸構造層242の外縁242cは、XY面内において、接着剤層103の外縁103bより内側(封止空間105側)のみに配置され、外側には配置されない。
図14では、第1凹凸構造層242の外縁242cは、接着剤層103の内縁103aより内側(封止空間105側)に配置されているが、接着剤層103の内縁103aと外縁103bの間に配置されていてもよい。
【0064】
第2凹凸構造層342は、接着剤層103を貫通しないように、より詳細には、第2凹凸構造層342は、XY面内において、接着剤層103の外縁103bと内縁103aとの間(距離)を貫通(または横断)することがないように配置される。つまり、第2凹凸構造層の側面342cが接着剤層103の内側(封止空間105側)と外側の両方にはみ出さないように配置されている。例えば、
図14の右側に示されるように、第2凹凸構造層342が接着剤層103の内縁103aと外縁103bの間に形成されていてもよいし、
図14の左側に示されるように、第2凹凸構造層342が接着剤層103の内縁103aと外縁103bの間から接着剤層103の外縁103bの外側(封止空間105の外側)にかけて形成されていてもよい。また、
図14に示した形態とは異なる形態として、第2凹凸構造層342が接着剤層103の内縁103aと外縁103bの間から接着剤層103の内縁103aの内側(封止空間105側)にかけて形成されていてもよい。なお、第2凹凸構造層342は、各々が連続していない独立した複数の凹凸層の集合体であってもよく、その場合、XY面内において接着剤層103の外縁103bと内縁103aとの間(距離)を貫通(または横断)することがないように配置されていればよい。そのような条件を満す限りは、接着剤層103の内縁103aと外縁103bの間のみに配置された凹凸層、接着剤層103の内縁103aと外縁103bの間から外縁103bの外側にかけて配置された凹凸層、及び/または接着剤層103の内縁103aと外縁103bの間から内縁103aの内側にかけて配置された凹凸層のいずれか、または全てから第2凹凸構造層が構成されていてよい。
【0065】
上記のような配置において、第1凹凸構造層242及び第2凹凸構造層342は、接着剤層103を貫通することがないため、水分や酸素が第1凹凸構造層242及び/または第2凹凸構造層342を透過して封止空間105内に侵入することが防止される。そのため、有機層94等の劣化が抑制され、発光素子100bの寿命が向上する。また、接着剤層103は第2凹凸構造層342の凹凸表面(第2凹凸パターン)342p、または第2凹凸パターン342pを反映した第1電極92、有機層94又は第2電極98の凹凸表面と接着し得る。接着剤層103がこのような凹凸表面に接着していることにより、接着剤層103と基材40は高い密着力で密着され、封止後も長期的に高い密着力が維持され剥がれが生じないため、発光素子100bの寿命が向上する。また、本変形形態では、接着剤層103の塗布位置が多少ずれても、第1凹凸構造層242及び第2凹凸構造層342が接着剤層103を貫通することがなければよいため、接着剤層の塗布位置の制御が容易であり、信頼性の高い発光素子を高い歩留りで製造できるという利点もある。
【0066】
なお、発光素子100bにおいて、第1凹凸構造層242の外縁(側面)242c及び/または第2凹凸構造層342の側面342cは、それぞれ基材40の表面に対してなす角度θ、θ’が80度以下になるような傾斜面であってもよい。それにより、第1凹凸構造層242の外縁(側面)242c、第2凹凸構造層342の側面、及びそれらの近傍において、第1電極92及び第2電極98を均一な膜厚で成膜することが可能となり、電極の断線などの不良を抑制できる。
【0067】
第1凹凸パターン242p及び第2凹凸パターン342
pは、上述したような不規則な凹凸パターンのほか、ドット構造、プリズム構造、ライン&スペースからなるストライプ構造、円柱状、円錐状、円錐台状、三角柱状、三角錐状、三角錐台状、四角柱状、四角錐状、四角錐台状、多角柱状、多角錐状、多角錐台状などのピラー構造、またはホール構造など、任意のパターンにしてもよい。また、サンドブラスト法で形成されるような不規則な微細凹凸パターンにしてもよい。第2凹凸パターン342pは、
図14に示すように第1凹凸パターン242pと異なっていてよく、特に第1凹凸パターン242pは回折格子として働く不規則な構造(パターン)であることが好ましく、第2凹凸パターン342pは接着剤層103と強固に接着することが可能なパターン、例えば凹凸ピッチの小さいパターン等の表面積が大きいパターンが好ましい。第2凹凸パターン342pは回折格子としての機能を有さなくてもよい。なお、
図13に示した形態とは異なる形態として、第2凹凸パターン342pが、第1凹凸パターン242pと同一の凹凸ピッチや凹凸深さ(高さ)を有する凹凸パターンの表面にさらに微細な凹凸を設けたパターンであってもよい。接着剤層103が上述のような第2凹凸パターン342pが形成された表面に接着していることにより、「ひっかかり」などにより機械的な離れにくさが増すこと、凹凸により界面の面積が増加することなどの効果により、接着剤層103と基材40の接着が強固となり、有機層94の封止がより確実になる。また、封止後も長期的に高い密着力が維持され剥がれが生じない。さらに、このように高い密着力を有することにより、接着剤層103の線幅を狭めることが可能となり、有機層(発光部)の面積を広げることもできる。なお、
図14に示した形態とは異なる形態として、第2凹凸パターン342pは第1凹凸パターン242pと同様のパターンであってもよい。
【0068】
[発光素子の製造方法]
次に上記実施形態の発光素子100の製造方法について説明する。この製造方法は、概ね、発光素子の発光部を含む積層体を作製する工程と、それを封止部材及び接着剤層で封止する封止工程を含む。まず基材上に凹凸構造層を形成する。凹凸構造層は、例えば、以下に説明するようなリフトオフ法又はUV硬化法によって形成することができる。
【0069】
リフトオフ法は、ゾルゲル材料、熱硬化樹脂等の熱硬化材料または光硬化材料で凹凸構造層を形成する場合に適用可能な方法である。以下に、凹凸構造層をゾルゲル材料から形成する場合を例に挙げて説明する。リフトオフ法は主に、基材上にレジストパターンを形成する工程、ゾルゲル材料の溶液を調製する工程、ゾルゲル材料の溶液を基材に塗布する工程、所定時間乾燥した塗膜に転写パターンが形成されたモールドを押し付ける工程、モールドが押し付けられた塗膜を仮焼成する工程、モールドを塗膜から剥離する工程、及び塗膜を本焼成する工程、基材からレジストを除去する工程を有する。以下、各工程について、
図3を参照して説明する。
【0070】
<レジストパターン形成工程>
図3(a)に示すように、洗浄した基材40上に、レジスト20を塗布する。基材40上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよいし、水分や酸素等の気体の浸入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けるなどしてもよい。レジスト20としては任意のフォトレジストを用いることができる。レジスト20の塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基材にレジストを均一に塗布可能であること、素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。
【0071】
基材40上に塗布したレジスト20を乾燥させた後、
図3(a)に示すように、マスク501を用いてレジスト20を露光する。現像液で現像することにより、
図3(b)に示すように、凹凸構造層を形成する部分のレジストを除去する。また、例えば特許第2989064号公報に記載されるような方法によって、残存するレジスト20の断面形状が、基材との界面からレジスト表面に向かって太くなる逆テーパー形状になるようにパターニングすることが好ましい。これによりレジスト20の端部が傾斜面となるため、凹凸構造層の外縁142cを傾斜面にすることができる。
【0072】
<ゾルゲル材料調製工程>
凹凸構造層の材料となるゾルゲル材料(ゾル溶液)を調製する。例えば、基材上に、シリカをゾルゲル法で合成する場合は、金属アルコキシド(シリカ前駆体)のゾルゲル材料を調製する。シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランに代表されるテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、パーフルオロデシルトリエトキシシラン、4−トリフルオロメチルフェニルトリエトキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランに代表されるトリアルコキシドモノマー、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−t−ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−i−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−t−ブトキシシラン等のジアルコキシシランに代表されるジアルコキシドモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するモノマー、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するモノマー、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するモノマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を有するモノマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を有するモノマー、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するモノマー、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するモノマー、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシ/ラン等のメルカプト基を有するモノマー、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するモノマー、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するモノマー、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料などの金属アルコキシドが挙げられる。また、これらのアルキル基やフェニル基の一部、あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。また、金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、Inなどや、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。また、これらの表面に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法は知られている方法を用いればよく、例えば、シリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理することもできるし、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルで疎水化処理する方法を用いてもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。さらに、シリカの前駆体として、分子中にシリカと親和性、反応性を有する加水分解基および撥水性を有する有機官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。例えば、n−オクチルトリエトキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、これらモノマーを重合したポリマー等が挙げられる。
【0073】
これらのゾルゲル材料は、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカを生成する。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸またはアンモニア等のアルカリを添加する。また、紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料(光酸発生剤または光塩基発生剤)を添加してもよい。pHは4以下もしくは10以上が好ましい。また、加水分解を行うために水を加えてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。ゾルゲル材料としてシリカ以外の材料を用いることができ、例えばTi系の材料やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、Al
2O
3、ZrO
2、ZnO、TiO
2、ZnS、ZrO、BaTiO
3、SrTiO
2等を使用し得る。
【0074】
ゾルゲル材料の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、二硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、またそれらに水を混合したものも好ましい。
【0075】
ゾルゲル材料の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルアセトンなどのβジケトン、βケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどを用いることが出来る。
【0076】
<ゾルゲル材料塗布工程>
図3(c)に示すように、調製したゾルゲル材料を基材40上に塗布して塗膜142aを形成する。塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基材にゾルゲル材料を均一に塗布可能であること、ゾルゲル材料が硬化(ゲル化)する前に素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。
【0077】
ゾルゲル材料の塗布後、塗膜142a中の溶媒を蒸発させるために基材を大気中もしくは減圧下で保持する。また、ゾルゲル材料を塗布後、溶媒の蒸発の進行とともに前駆体の重合反応も進行し、ゾルゲル材料の粘度などの物性も短時間で変化する。凹凸パターン形成の安定性の観点から、パターン転写が良好にできる乾燥時間範囲が十分広いことが望ましく、これは乾燥温度(保持温度)、乾燥圧力、ゾルゲル材料種、ゾルゲル材料種の混合比、ゾルゲル材料調製時に使用する溶媒量(ゾルゲル材料の濃度)等によって調整することができる。保持温度は、10〜100℃の範囲内で一定温度であることが望ましく、10〜30℃の範囲内で一定温度であることがより望ましい。保持温度がこの範囲より高いと、押圧工程前に塗膜142aのゲル化反応が急速に進行するために好ましくなく、保持温度がこの範囲より低いと、押圧工程前の塗膜142aのゲル化反応が遅く、生産性が低下するため好ましくない。
【0078】
<押圧工程>
乾燥工程後、
図3(d)に示すように、所定の微細凹凸パターンが形成されたモールド80を塗膜142aに押し付ける。押圧は、従来のプレス式、及び押圧ロールを用いたロール式で行うことができる。
【0079】
<押圧工程で用いるモールドとその製造方法>
本実施形態で用いるモールド80として、可撓性があり、表面に凹凸の転写パターンを有するフィルム状モールドを用いることができる。モールド80は、例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレートのような有機材料や、ニッケル、銅、アルミニウムのような金属材料や、ガラスのような無機材料などで形成されるが、材料は限定されず、任意の材料のものを使用できる。また、凹凸パターンは、上記材料に直接形成されていてもよいし、上記材料を基材としてさらに別の材料で形成してもよい。別の材料としては、光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用できる。基材と別の材料の間には、密着性を高めるために表面処理や易接着処理を施してもよい。また、必要に応じて、それら凹凸パターン面上に離型処理を施してもよい。
【0080】
モールド80の凹凸パターンは任意の方法で形成し得る。例えば、マイクロレンズアレイ構造や光拡散や回折等の機能を有する構造など、任意のパターンにし得るが、例えば、凹凸のピッチが均一ではなく、凹凸の向きに指向性がないような不規則な凹凸パターンにしてよい。モールド80の凹凸パターンが転写された凹凸構造層が回折格子として働くために、モールド80の凹凸の平均ピッチとしては、100〜1500nmの範囲にあることが好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、モールド80の凹凸パターンが転写された凹凸構造層の凹凸による光の回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折角が小さくなり、回折格子としての機能が失われてしまう傾向にある。凹凸の平均ピッチは200〜1200nmの範囲であることがより好ましい。モールド80の凹凸の深さ分布の平均値は、20〜200nmの範囲であることが好ましい。凹凸の深さ分布の平均値が前記下限未満では、可視光の波長に対して高さが低すぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折光強度にむらが生じ、この結果、得られる発光素子の発光層内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリークが生じ易くなったり、寿命が短くなったりする傾向にある。凹凸の深さ分布の平均値は30〜150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の深さの標準偏差は、10〜100nmの範囲であることが好ましい。凹凸の深さの標準偏差が前記下限未満では、可視光の波長に対して高さが低すぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折光強度にむらが生じ、この結果、得られる発光素子の発光層内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリークが生じ易くなったり、寿命が短くなったりする傾向にある。凹凸の深さの標準偏差は、15〜75nmの範囲内であることがより好ましい。
【0081】
本実施形態に用いるモールド80の製造方法の一例について説明する。最初にモールドの凹凸パターンを形成するための母型パターンの作製を行う。母型の凹凸パターンは、例えば、本出願人らによるWO2012/096368号に記載されたブロック共重合体の加熱による自己組織化(ミクロ相分離)を利用する方法(以下、適宜「BCP(Block Copolymer)熱アニール法」という)や、本出願人らによるWO2011/007878A1に開示されたポリマー膜上の蒸着膜を加熱・冷却することでポリマー表面の皺による凹凸を形成する方法(以下、適宜「BKL(Buckling)法」という)、又は以下に説明する、ブロック共重合体の溶媒雰囲気下における自己組織化を利用する方法(以下、適宜「BCP溶媒アニール法」という)を用いて形成することが好適である。BCP熱アニール法、BKL法及びBCP溶媒アニール法に代えて、フォトリソグラフィ法で形成してもよい。そのほか、例えば、切削加工法、電子線直接描画法、粒子線ビーム加工法及び操作プローブ加工法等の微細加工法、微粒子の自己組織化を使用した微細加工法、またはサンドブラスト法等によっても、母型の凹凸パターンを作製することができる。BCP熱アニール法又はBCP溶媒アニール法でパターンを形成する場合、パターンを形成する材料は任意の材料を使用することができるが、ポリスチレンのようなスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートのようなポリアルキルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、及びポリ乳酸からなる群から選択される2種の組合せからなるブロック共重合体が好適である。
【0082】
BCP溶媒アニール法は、WO2012/096368号に記載されるBCP熱アニール法において、第1加熱工程、エッチング工程及び第2加熱工程を行う代わりに、基板上に塗布し乾燥させたブロック共重合体の薄膜を有機溶媒蒸気の雰囲気下で溶媒アニール(溶媒相分離)処理して、ブロック共重合体の相分離構造を薄膜内に形成させる方法である。この溶媒アニール処理によってブロック共重合体の自己組織化が進行し、ブロック共重合体がミクロ相分離して凹凸構造を形成することができる。
【0083】
溶媒アニール処理は、例えば、デシケータのような密閉可能な容器内部に有機溶媒の蒸気雰囲気をもたらし、この雰囲気下に対象物であるブロック共重合体の薄膜を曝すことにより実施することができる。有機溶媒蒸気の濃度は、ブロック共重合体の相分離を促進する上で高い方が好ましく、飽和蒸気圧であることが望ましく、濃度管理も比較的容易である。例えば、有機溶媒がクロロホルムの場合、飽和蒸気量は室温(0℃〜45℃)にて0.4g/l〜2.5g/lであることが知られている。なお、クロロホルム等の有機溶媒アニール処理時間が長くなりすぎると、塗膜の表面にポリエチレンオキシドが析出したり、相分離した凹凸形状(パターン)が崩れたりする(なまる)傾向にある。溶媒アニール処理の処理時間は6時間〜168時間、好ましくは12時間〜48時間、さらに好ましくは12時間〜36時間にすることができる。処理時間が長すぎると凹凸形状が崩れ、短すぎると凹凸構造の溝が浅くなり、作製されたモールドの凹凸パターンを転写して製造される部材の光の回折効果が不十分となる。
【0084】
溶媒アニール処理に用いる有機溶媒としては、沸点が20℃〜120℃の有機溶媒が好ましく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、二硫化炭素、それらの混合溶媒などを用いることができる。このうち、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトン/二硫化炭素の混合溶媒が好ましい。溶媒アニールの雰囲気温度は、0℃〜45℃の範囲内で行うことが好ましい。溶媒アニールの雰囲気温度が45℃より高いと、薄膜に形成される凹凸構造がなまって崩れ易くなる。0℃より低い環境では、有機溶媒が蒸発しにくくなり、ブロック共重合体の相分離が起こり難くなる。
【0085】
上記溶媒アニール処理により得られた薄膜の凹凸構造に加熱処理を施してもよい。前記溶媒アニール処理で凹凸構造が既に形成されているため、この加熱処理は形成された凹凸構造を滑らかにするが、必ずしも必要ではない。何らかの原因で、前記溶媒アニール処理後の凹凸構造の表面の一部に突起が生じている場合や、凹凸構造の周期や高さを調整する目的のために有効となる場合がある。加熱温度は、例えば、ブロック共重合体を構成するポリマーセグメントのガラス転移温度以上にすることができ、例えば、それらのホモポリマーのガラス転移温度以上で且つガラス転移温度より70℃高い温度以下にすることができる。加熱処理は、オーブン等を用いて大気雰囲気下で行うことができる。また、上記溶媒アニール処理により得られた薄膜の凹凸構造に、UVやエキシマUVなどのエネルギー線照射によるエッチングや、RIE(反応性イオンエッチング)のようなドライエッチング法によるエッチングを行ってもよい。そのようなエッチングを行った薄膜の凹凸構造に加熱処理を施してもよい。
【0086】
パターンの母型をBCP熱アニール法、BKL法又はBCP溶媒アニール法により形成した後、以下のようにして電鋳法などにより、パターンをさらに転写したモールドを形成することができる。最初に、電鋳処理のための導電層となるシード層を、無電解めっき、スパッタまたは蒸着等によりパターンを有する母型上に形成することができる。シード層は、後続の電鋳工程における電流密度を均一にして後続の電鋳工程により堆積される金属層の厚みを一定にするために10nm以上が好ましい。シード層の材料として、例えば、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金・ニッケル合金、ホウ素・ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・リン合金、またはそれらの合金などを用いることができる。次に、シード層上に電鋳(電界めっき)により金属層を堆積させる。金属層の厚みは、例えば、シード層の厚みを含めて全体で10〜3000μmの厚さにすることができる。電鋳により堆積させる金属層の材料として、シード層として用いることができる上記金属種のいずれかを用いることができる。金属基板のモールドとしての耐摩耗性や、剥離性などの観点からは、ニッケルが好ましく、この場合、シード層についてもニッケルを用いることが好ましい。形成した金属層は、後続のモールドの形成のための樹脂層の押し付け、剥離及び洗浄などの処理の容易性からすれば、適度な硬度及び厚みを有することが望ましい。
【0087】
上記のようにして得られたシード層を含む金属層を、凹凸構造を有する母型から剥離して金属基板を得る。剥離方法は物理的に剥がしても構わないし、パターンを形成する材料を、それらを溶解する有機溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどを用いて溶解して除去してもよい。金属基板を母型から剥離するときに、残留している材料成分を洗浄にて除去することができる。洗浄方法としては、界面活性剤などを用いた湿式洗浄や紫外線やプラズマを使用した乾式洗浄を用いることができる。また、例えば、粘着剤や接着剤を用いて残留している材料成分を付着除去するなどしてもよい。こうして母型からパターンが転写された金属基板が得られる。
【0088】
この金属基板を用いて、金属基板の凹凸構造(パターン)をフィルム状の支持基板に転写することでフィルム状モールドのように可撓性のあるモールドを作製することができる。例えば、硬化性樹脂を支持基板に塗布した後、金属基板の凹凸構造を樹脂層に押し付けつつ樹脂層を硬化させる。支持基板として、例えば、ガラス等の無機材料からなる基材;シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の有機材料からなる基材、ニッケル、銅、アルミ等の金属材料が挙げられる。また、支持基板の厚みは、1〜500μmの範囲にし得る。
【0089】
硬化性樹脂としては、例えば、光硬化および熱硬化、湿気硬化型、化学硬化型(二液混合)等の樹脂を用いることができる。具体的には、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。硬化性樹脂の厚みは0.5〜500μmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが不十分となり易く、前記上限を超えると、硬化時に生じる樹脂の体積変化の影響が大きくなり凹凸形状が良好に形成できなくなる可能性がある。
【0090】
硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm
2〜5J/cm
2の範囲であることが好ましい。
【0091】
次いで、硬化後の硬化樹脂層から金属基板を取り外す。金属基板を取り外す方法としては、機械的な剥離法に限定されず、公知の方法を採用することができる。こうして支持基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層を有する樹脂フィルムからなるモールド80を得ることができる。
【0092】
<仮焼成工程>
ゾルゲル材料の塗膜142aにモールド80を押し付けた後、
図3(e)に示すように、ヒータ32を用いて塗膜142aを仮焼成してもよい。仮焼成することにより塗膜142aのゲル化を進め、パターンを固化し、剥離の際に崩れにくくする。仮焼成を行う場合は、大気中で40〜150℃の温度で加熱することが好ましい。ヒータ32として例えば、赤外線ヒータ、温風加熱、ホットプレート等を使用することができる。なお、仮焼成は必ずしも行う必要はない。
【0093】
<剥離工程>
押圧工程または仮焼成工程後のゾルゲル材料の塗膜142aからモールド80を剥離する。モールド80の剥離方法として公知の剥離方法を採用することができる。加熱しながら剥離してもよく、それにより塗膜から発生するガスを逃がし、膜内に気泡が発生することを防ぐことができる。
【0094】
<本焼成工程>
基材40の塗膜142aからモールド80を剥離した後、
図3(f)に示すように、例えばオーブン34内で塗膜142aを本焼成する。本焼成により塗膜142aに含まれている水酸基などが脱離して塗膜がより強固となる。本焼成は、200〜1200℃の温度で、5分〜6時間程度行うのが良い。こうして塗膜142aは硬化して、モールドの凹凸パターンに対応する凹凸パターン142pを有する凹凸構造層142が形成できる。この時、塗膜142は、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質または結晶質、または非晶質と結晶質の混合状態となる。また、紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料をゾルゲル材料に添加した場合には、凹凸パターンの転写の際にゾルゲル材料の塗膜142aに例えば紫外線やエキシマUV等のエネルギー線を照射することによって塗膜を硬化させる工程を含んでもよい。
【0095】
<レジスト除去工程>
塗膜142aを硬化させて凹凸構造層142を形成した後、
図3(g)に示すように、レジスト20を剥離し、レジスト20及びレジスト20上の凹凸構造層142を除去する。レジスト20の剥離は、任意のレジスト剥離液を使用して行うことができる。以上のようにしてリフトオフ法により、所望の凹凸パターン142pを有する凹凸構造層142が基材40上に形成される。
【0096】
リフトオフ法の代わりにUV硬化法によっても基材40上に凹凸構造層142を形成することができる。UV硬化法は、UV硬化樹脂及び光酸発生剤を用いたゾルゲル材料などから凹凸構造層を形成する場合に適用可能な方法である。以下に、UV硬化樹脂を用いる場合を例に挙げて
図4を参照しながら説明するが、UV硬化樹脂の代わりに例えば、光によって酸を発生する6フッ化リン系芳香族スルホニウム塩などの光酸発生剤を加えたゾルゲル材料、又は光照射によって外すことができる化学修飾(キレート)を形成するアセチルアセトンに代表されるβジケトンを添加したゾルゲル材料等を用いてもよい。また、UV光以外の活性エネルギー線硬化樹脂を用い、UV光を照射する代わりにUV光以外の活性エネルギー線を照射する方法も同様に適用可能である。
【0097】
まず、
図4(a)に示すように、洗浄した基材40上にUV硬化樹脂142bを塗布する。基材40上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けてもよいし、水分や酸素等の気体の浸入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けてもよい。UV硬化樹脂の塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基材にUV硬化樹脂を均一に塗布可能であること、素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。
【0098】
UV硬化樹脂142bの塗布後、
図4(b)に示すように、所定の微細凹凸パターンが形成されたモールド80をUV硬化樹脂の塗膜142bに押し付ける。押圧は、従来のプレス式、及び押圧ロールを用いたロール式で行うことができる。モールド80としては、リフトオフ法で説明したモールドと同様のものを使用することができる。モールド80の押圧後、
図4(c)に示すように、凹凸構造層用露光マスク501を用いて、UV硬化樹脂の塗膜142bに部分的にUV光を照射する。塗膜142bのUV光が露光された部分が硬化する。硬化した塗膜142には、モールド80の凹凸パターンに対応する凹凸パターンが転写される。なお、UV光照射時に露光マスク501とモールド80の距離を離して設置することにより、UV光が露光マスク501の遮光箇所の下に回り込み、UV硬化樹脂をテーパー状に硬化させることができる。これにより、後述の未硬化の塗膜142bの除去後に、基材上に残存する硬化した塗膜の外縁142cが傾斜面となり、外縁142cが傾斜面となった凹凸構造層142を形成することができる。
【0099】
フィルム型のフォトマスクを支持基板とするフィルム状モールドを用意し、これを用いてUV硬化樹脂142bへの押圧及び露光を行うこともできる。
【0100】
次いで、
図4(d)に示すように、塗膜142b、142からモールド80を剥離する。モールド剥離後に、未硬化の塗膜142bを除去する。未硬化の塗膜142bの除去は、例えばイソプロピルアルコール(IPA)などの溶媒によって未硬化の塗膜を溶解させて行うことができる。このように未硬化の塗膜142bを除去すると、
図4(e)に示すように、硬化した塗膜142のみが基材上に残存し、モールドの凹凸パターンに対応する凹凸パターン142pを有する凹凸構造層142が形成できる。
【0101】
上記のUV硬化法においては、モールドによって凹凸構造層の凹凸パターンを形成し、マスク露光による硬化及び溶解によって不要な部分のUV硬化材料の塗膜の除去を行ったが、
図4(b)に示すモールド80の代わりに
図5(b)に示すような凹凸構造層の形状の凹部を有するモールド80aを用いることで、マスクを用いた露光及び未硬化のUV硬化性樹脂の溶解を行うことなく凹凸構造層142を形成することができる。まず、
図5(a)に示すように、基材40上にUV硬化樹脂142bを塗布する。その後、
図5(b)に示すように、モールド80aを塗膜142bに押し付ける。モールド80
aの押圧後、塗膜142bにUV光を照射して塗膜142bを硬化させる。次いで塗膜142からモールド80aを剥離すると、
図5(c)に示すようにモールド80aの形状に対応する形状の凹凸構造層142が形成される。この場合、モールド80aの、凹凸構造層の外縁142cに対応する部分を傾斜面にすることにより、外縁142cが傾斜面である凹凸構造層142を形成することができる。また、凹凸構造層はUV硬化材料に限定されず、ゾルゲル材料などの熱硬化材料などでもよい。凹凸構造層としてゾルゲル材料を用いる場合は、UV光を照射する代わりにヒータによる加熱を行い、モールド80a剥離後に本焼成を行うことが望ましい。
【0102】
<第1電極形成工程>
上記のようにして基材上にリフトオフ法又はUV硬化法により凹凸構造層を形成した後、基材及び凹凸構造層に付着している異物などを除去するために、ブラシで洗浄し、次いで、水系溶媒を用いたアルカリ性洗浄剤および有機溶剤で有機物等を除去する。次いで、
図1(b)に示すように凹凸構造層142上に、第1電極92を、凹凸構造層142の表面に形成されている凹凸構造が第1電極92上にも維持されるようにして積層する(
図1(b)参照)。こうして凹凸パターンを有する第1電極92が形成される。第1電極92を積層する方法としては、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法等の公知の方法を適宜採用することができる。これらの方法の中でも、密着性を上げるという観点から、スパッタ法が好ましい。なお、スパッタ時には基材が300℃程度の高温に曝されることもある。成膜された第1電極上にフォトレジストを塗布して第1電極用マスクパターンで露光した後、現像液で現像し、次いで第1電極をエッチング液でエッチングすることで所定のパターンの第1電極92を得ることができる。得られた第1電極92をブラシで洗浄し、水系溶媒を用いたアルカリ性洗浄剤および有機溶剤で有機物等を除去した後、UVオゾン処理することが望ましい。
【0103】
<有機層形成工程>
次に、第1電極92上に、有機層94を積層する(
図1(b)参照)。有機層94を積層する方法としては、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、ダイコート法等の公知の方法を適宜採用することができる。有機層94のパターニングは、マスクを使ってパターニングするなどの公知の方法で行うことができる。なお、有機層94は、
図1(a)及び(b)に示すように、有機層94の外縁と凹凸構造層142の外縁との間の所定の距離を隔てるように、凹凸構造層142より狭い範囲に形成する。この結果、有機層94で覆われていない凹凸構造層142及び/又は凹凸構造層142の凹凸が維持された第1電極92の一部(外周部)は、有機層94が形成されずに露出している。
【0104】
<第2電極形成工程>
次いで、有機層94上に第2電極(金属電極)98を積層する。金属電極98は、蒸着法、スパッタ法等の公知の方法を採用して積層することができる。金属電極98は有機層94の全体を覆うように形成するのが好ましい。金属電極98のパターニングは、マスクを使ってパターニングするなどの公知の方法で行うことができる。
【0105】
<封止工程>
次いで、接着剤層103を形成し、封止部材101を取り付けて封止空間105を形成する(
図1(a)及び(b)参照)。まず、接着剤層103を、微細凹凸層の外縁142cに重なるように形成する。接着剤層103は、有機層94に接触せず、有機層94から所定間隔Dを隔てるように形成することが好ましい。間隔Dは例えば1μm以上であることが好ましい。走査可能なディスペンサ及び/または移動可能なステージ等を用いて接着剤を塗布することで、所望の位置に接着剤層103を形成することができる。また、ディスペンサの走査速度及び吐出量を制御することにより、所望の線幅で接着剤層103を形成できる。次いで、封止部材101を基材40に対向して、凹凸構造層142、第1電極92、有機層94及び金属電極98の上方に設置し、接着剤層103を介して基材40と接着させ、基材40と封止部材101の間の空間105を封止する。接着剤層103がエネルギー線照射によって硬化する材料で形成されている場合、次いでエネルギー線を接着剤層103に照射して接着剤層103を硬化させる。例えば光硬化型接着剤の場合、高圧水銀灯やハロゲンランプにより得られる紫外領域から可視領域の光を封止部材側または基材側から照射することで、接着剤層103を硬化させることができる。また、接着剤層103が熱硬化性の場合は、接着剤層103を例えば50〜150℃の範囲で加熱することによって硬化させることができる。これによって、基材40と封止部材101が一体化し、封止空間105内に有機層94が配置された発光素子100が形成される。
【0106】
なお、有機層94を形成した後は、これらを大気に接触させることなく、例えば、窒素雰囲気下(例えば、純度99.999%以上の高純度窒素ガスで置換したグローブボックスを用いる)で封止することが好ましい。また、封止工程において、上記の説明では接着剤層103を基材40上に形成した後に封止部材101を設置したが、基材40に対向させて基材40との間に空間を隔てて封止部材101を設置した後に、その空間に接着剤を注入して接着剤層103を形成してもよい。
【0107】
なお、上記のゾルゲル材料塗布工程において、TiO
2、ZnO、ZnS、ZrO、BaTiO
3、SrTiO
2等の微粒子分散液を塗布してもよい。このうち、成膜性や屈折率の関係からTiO
2が好ましい。液相堆積法(LPD:Liquid Phase Deposition)などを用いて無機材料の塗膜を形成してもよい。
【0108】
また、ゾルゲル材料塗布工程において、ポリシラザン溶液を塗布してもよい。この場合、これを本焼成工程においてセラミックス化(シリカ改質)してシリカからなる凹凸構造層を形成してもよい。なお、「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO
2、Si
3N
4及び両方の中間固溶体SiO
XN
Y等のセラミック前駆体無機ポリマーである。特開平8−112879号公報に記載されている下記の一般式(1)で表されるような比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物がより好ましい。
【0109】
一般式(1):
−Si(R1)(R2)−N(R3)−
式中、R1、R2、R3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
【0110】
上記一般式(1)で表される化合物の中で、R1、R2及びR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)や、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンが特に好ましい。
【0111】
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等を用いることもできる。
【0112】
ポリシラザン溶液の溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。酸化珪素化合物への改質を促進するために、アミンや金属の触媒を添加してもよい。
【0113】
ポリシラザンの硬化は加熱で促進してもよいし、エキシマなどのエネルギー線の照射により促進してもよい。
【0114】
凹凸構造層142の上に被覆層を形成してもよい。被覆層は凹凸構造層142の形成に用いることのできる方法と同様の方法で形成することができ、例えば、上述のようなゾルゲル法、無機材料の微粒子の分散液を用いる方法、液相堆積法(LPD)、ポリシラザンを硬化させる方法等により形成することができる。また、被覆層の材料としてシランカップリング剤を用いる場合には、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法により被覆材料を塗布した後、各材料に応じて適正な条件で乾燥させて硬化させることにより被覆層を形成することができる。例えば、100〜150℃で15〜90分間加熱乾燥してもよい。
【実施例】
【0115】
以下に、本発明を具体的に記載するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例では発光素子を作製し、接着剤層の密着性の評価及び高湿度環境下での劣化評価を行った。
【0116】
実施例1
凹凸表面を有するモールドを以下のようにして製造した。まず、下記のようなポリスチレン(以下、適宜「PS」と略する)とポリメチルメタクリレート(以下、適宜「PMMA」と略する)とからなるPolymer Source社製のブロック共重合体を用意した。
PSセグメントのMn=868,000、
PMMAセグメントのMn=857,000、
ブロック共重合体のMn=1,725,000、
PSセグメントとPMMAセグメントの体積比(PS:PMMA)=53:47、
分子量分布(Mw/Mn)=1.30、PSセグメントのTg=96℃、
PMMAセグメントのTg=110℃
【0117】
ブロック共重合体における第1及び第2のポリマーセグメントの体積比(第1のポリマーセグメント:第2のポリマーセグメント)は、ポリスチレンの密度が1.05g/cm
3であり、ポリメチルメタクリレートの密度が1.19g/cm
3であるものとして算出した。ポリマーセグメント又はポリマーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー(株)製、型番「GPC−8020」、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000及びSuperH4000を直列に接続したもの)を用いて測定した。ポリマーセグメントのガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(Perkin−Elmer社製、製品名「DSC7」)を用いて、0〜200℃の温度範囲について20℃/minの昇温速度にて昇温しつつ測定した。ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートの溶解度パラメータはそれぞれ9.0及び9.3である(化学便覧 応用編 改定2版参照)。
【0118】
このブロック共重合体150mgとポリエチレンオキシドとして38mgの東京化成製ポリエチレングリコール4,000(Mw=3000、Mw/Mn=1.10)に、トルエンを、総量が10gになるように加えて溶解させた。この溶液を孔径0.5μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体溶液を、基材としてのポリフェニレンスルフィドフィルム(東レ(株)製トレリナ)上に、スピンコート法により200〜250nmの膜厚で塗布した。スピンコートは、回転速度500rpmで10秒間行った後、引き続いて800rpmで30秒間行った。スピンコート法で塗布された薄膜を室温で10分間放置して乾燥した。
【0119】
次いで、薄膜が形成された基材を、予めクロロホルムの蒸気を充満したデシケータ中に24時間、室温にて静置することで溶媒アニール処理を施した。デシケータ(容量5L)内には、クロロホルムを100g充填したスクリュー瓶が設置されており、デシケータ内の雰囲気は飽和蒸気圧のクロロホルムで満たされていた。溶媒アニール処理後の薄膜の表面には、凹凸が観察されて、薄膜を構成するブロック共重合体がミクロ層分離していることが分かった。
【0120】
上記溶媒アニール処理により波形化された薄膜の表面に、スパッタにより、電流シード層として20nm程度の薄いニッケル層を形成した。次いで、この薄膜付き基材をスルファミン酸ニッケル浴中に入れ、温度50℃で、電鋳(最大電流密度0.05A/cm
2)処理してニッケルを厚み250μmになるまで析出させた。こうして得られたニッケル電鋳体から薄膜付き基材を機械的に剥離した。次に、ニッケル電鋳体をテトラヒドロフラン溶媒中に2時間浸け置き、その後、アクリル系UV硬化樹脂を塗布して硬化し、剥離することを3回繰り返すことで、電鋳体の表面に一部付着していたポリマー成分を除去した。その後、日本シービーケミカル製ケミゾール2303中に浸漬し、50℃にて2時間攪拌しながら洗浄した。その後、UVオゾン処理を10分間ニッケル電鋳体に施した。
【0121】
次いで、ニッケル電鋳体をダイキン工業(株)社製オプツールHD−2100THに約1分浸し、乾燥した後、一晩静置した。翌日、ニッケル電鋳体を、ダイキン社製オプツールHD−TH中に浸漬して約1分間超音波処理洗浄を行った。こうして離型処理されたニッケルモールド(ニッケル基板)を得た。
【0122】
次に、PET基板(東洋紡績(株)社製易接着PETフィルム、コスモシャインA−4100)上にフッ素系UV硬化性樹脂を塗布し、ニッケルモールドを押し付けながら、紫外線を600mJ/cm
2で照射することでフッ素系UV硬化性樹脂を硬化させた。樹脂が硬化後、ニッケルモールドを硬化した樹脂から剥離した。こうしてニッケルモールドの表面形状が転写された樹脂膜付きPET基板からなる回折格子モールドを得た。
【0123】
得られたモールドを用いて発光素子を製造した。発光素子の基材として、30mm×30mm×0.7(厚み)mmの無アルカリガラス(日本電気硝子製)を用意した。この基材を洗剤(純正化学製、RBS−25)とスポンジを用いてよくこすり洗いした後、リフトオフ法にて以下のように凹凸構造層を形成した。まず、基材上にポジレジスト(東京応化社製、OFPR−800)を約1μm厚となるようにスピンコートし、前乾燥を80℃で30分間行った。
図6(a)に示すマスク501を用い、UV光(λ=365nm)にて16秒間露光した。なお、
図6(a)において、白抜きの部分が光透過部であり、その寸法が分かるように目盛りと長さを数値で表している。次いで、有機系現像液(
シプレイ社製、MFCD−26)を用いて現像し、流水洗浄を3分間行なった後、100℃で10分間の乾燥を行なった。基材上のマスク501の遮光部(黒塗り部)に対応する部分にレジストが残った。
【0124】
次に凹凸構造層の材料となるゾルゲル材料を、エタノール24.3g、水2.16g及び濃塩酸0.0094gを混合した液に、テトラエトキシシラン(TEOS)2.5gとメチルトリエトキシシラン(MTES)2.1gを滴下して加え、23℃、湿度45%で2時間攪拌することによって調製した。
【0125】
透明基板上の、パターニングされたレジストのついた面にゾルゲル材料をスピンコートにより塗布した。スピンコートは最初に500rpmで8秒間行った後、1000rpmで3秒間行った。
【0126】
ゾルゲル材料をスピンコート塗布した60秒後に、上記記載のモールドを、80℃に加熱した押圧ロールを用いて基材上のゾルゲル材料の塗膜に押し付けながら回転移動した。基材の一端から他端に向かって80℃に加熱した押圧ロールを回転させながら、モールドの微細凹凸パターンが形成された面を基材上の塗膜に押し付けた。モールドの押圧終了後、モールドを前記一端から他端に向かって剥離角度が約30°になるように手で剥離した。なお、押圧ロールは、内部にヒータを備え、外周が4mm厚の耐熱シリコーンで被覆したロールであり、ロール径φが50mm、軸方向長さが350mmのものを用いた。
【0127】
次いでオーブンを用いて300℃で60分加熱して凹凸構造層の本焼成を行った。
【0128】
次いで、剥離液(ナガセ産業社製、レジストストリップN−320)を用い、レジストを剥離した。レジストとレジスト上のゾルゲル膜が除去され、
図6(a)に図示したマスク501の白抜き部(光透過部)に対応する部分にゾルゲル膜が残った。すなわち、基材の向かい合う2つの辺(以後、適宜「左右の辺」と称する)から4mmの距離だけ離れ、且つ残りの2辺の一方(以後、適宜「上辺」と称する)から3mmの距離だけ離れ、且つ残りの1辺(以後、適宜「下辺」と称する)から7mmの距離だけ離れた22mm×20mmの長方形の内側の領域に、ゾルゲル材料からなる凹凸構造層が形成された。
【0129】
上記のようにして得られた凹凸構造層よりなるパターンが形成された基材について、付着している異物などを除去するために、ブラシで洗浄したのち、次いで、アルカリ性洗浄剤および有機溶剤で有機物等を除去した。こうして洗浄した基材上に、ITOをスパッタ法で300℃にて厚み120nmに成膜し、フォトレジスト塗布して透明電極(第1電極)用マスクパターンで露光した後、現像液でレジストを現像し、次いでITOをエッチング液でエッチングして、
図7の概略上面図に示したようなパターンの透明電極を得た。得られた透明電極をブラシで洗浄し、アルカリ性洗浄剤および有機溶剤で有機物等を除去した後、UVオゾン処理した。このように処理された透明電極上に、正孔輸送層(4,4’,4’’トリス(9−カルバゾール)トリフェニルアミン、厚み:35nm)、有機層(トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)錯体をドープした4,4’,4’’トリス(9−カルバゾール)トリフェニルアミン、厚み15nm、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)錯体をドープした1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン、厚み15nm)、電子輸送層(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン、厚み:65nm)、フッ化リチウム層(厚み:1.5nm)を蒸着法で積層し、さらに金属電極(第2電極)(アルミニウム、厚み:50nm)を蒸着法により形成した。
【0130】
凹凸構造層、透明電極、有機層及び金属電極が形成された基材を、真空装置からN
2雰囲気下のグローブボックスに搬送し、接着剤(ナガセケムテックス製、UV RESIN XNR 5516Z)を塗布した。ディスペンスロボット(武蔵エンジニアリング製、SHOTMASTER300)を用いて接着剤の塗布位置、走査速度及び塗布量の制御を行い、基材の左右の辺から4mm、上辺から3mm下辺から7mmの距離だけ離れた22mm×20mmの長方形の周(すなわち凹凸構造層の外縁)を中心とする幅4mmの帯状になるように接着剤層を形成した。
【0131】
18mm×16mmの凹部を形成した、26mm×30mmの掘り込みガラス(N
SGプレシジョン製、無アルカリガラス)をUV−O
3で3分間処理した。掘り込みガラスを、掘り込みガラスの凹部を基材に対向させ、掘り込みガラスの凸部幅の中心と接着剤の塗布ラインが重なるようにして基材に載せた。基材と掘り込みガラスをクリップ(ライオン製、バインダークリップ小)で挟んで押し付けた後、クリップをはずし、UV照射光源装置(浜松ホトニクス製、LIGHTNING CURE LC8)を用いて積算光量600mJ/cm
2でUV光を照射し、接着剤層を硬化させた。なお、掘り込みガラスは、このように基材と重ねられたときに、掘り込みガラスが基材の上辺から5mmはみ出して突出部を形成するように設計されている。
【0132】
以上の手順により封止した発光素子を得た。作製した発光素子の平面及び断面構造を模式的に表すと
図1(a)及び
図1(b)のようになる。
【0133】
実施例2
実施例1では、ポジレジストを用いたフォトリソグラフィにより凹凸構造層をパターニングするためのレジストパターン形成を行ったが、本実施例では以下に記載するようにレジストパターン形成方法を変更し、それに伴ってレジスト剥離方法も変更した。それ以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。なお、実施例2で作製された発光素子の断面構造を模式的に表すと
図2のようになる。
【0134】
レジストとして、メタクリル酸:メタアクリル酸メチルの組成比が20:80モルで、重量平均分子量3万のメタクリル酸−メタアクリル酸メチル共重合体100部、ペンタエリスリトールテトラアクリル酸エステル6部、ミヒラーケトン2部、および4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)−フェノール2部をエチルセロソルブアセテート/エチルセロソルブ=60/40の混合溶媒330部に溶解し、0.22μmのメンブランフィルターで濾過して調製したネガ型レジストを使用した。基材上にネガレジストを、約1μm厚となるようにスピンコートし、前乾燥を90℃60秒間行った。
図6(b)に示すマスク503を用い、g線/i線の照度比を7/5(mW/cm
2)としたコンタクト露光装置(キヤノン製、PLA501F)により、130mJ/cm
2の強度で露光した。なお、
図6(b)において、白抜きの部分が光透過部であり、その寸法が分かるように目盛りと長さを数値で表している。次いで、0.5%NaOH水溶液で60秒間パドル現像した。さらに、高圧水銀灯でUV光(波長254nm、照度1.2mW/cm
2)を200秒間照射してレジストパターンを焼き固めた。マスク503で遮光されていた部分のレジストが除去された。
【0135】
実施例1と同様に凹凸構造層の材料となるゾルゲル材料の調製、塗布、モールドの押圧、本焼成を行った後、レジスト剥離液として50℃に加温したジメチルスルホキサイドを用い、剥離液中で基材を揺り動かし、さらにイソプロピルアルコールで洗浄乾燥することでレジストパターン部分を剥離した。さらに流水洗浄し、基材を乾燥させた。レジストとレジスト上のゾルゲル膜が除去され、
図6(b)に示したマスク503の黒塗り部(遮光部)にのみ、ゾルゲル材料からなる凹凸構造層が形成された。凹凸構造層を形成した基材をSEM(日立ハイテクノロジー社製、SU1510)で観察したところ、基材表面と微細凹凸層の外縁(側面)のなす角θが、θ=70°となっていた(
図2参照)。
【0136】
実施例3
リフトオフ法の代わりにUV硬化樹脂を用いたUV硬化法によって以下のように凹凸構造層を形成した以外は実施例1と同様にして、発光素子を作製した。作製された発光素子の平面及び断面構造を模式的に表すと
図1(a)及び
図1(b)のようになる。
【0137】
水1g、IPA19g及び酢酸0.1mLを撹拌しながら、シランカップリング剤(信越化学製、KBM−5103)1gを滴下し、その後1hrさらに撹拌して、シランカップリング剤溶液を調製した。実施例1と同様にして基材を洗浄した後、基材をスピンコート乾燥により表面の水分を除き、この上にシランカップリング剤溶液をスピンコートした。スピンコートは1000rpmで30秒間行った。その後130℃のオーブンで15分間基材を焼成して易接着処理済み基材を得た。易接着処理済み基材の易接着処理面に、UV硬化樹脂(東洋合成工業製、PAK−02)をスピンコートした。スピンコートは1000rpmで30秒間行った。塗布したUV硬化樹脂上に、実施例1と同様の回折格子モールドをハンドローラーで押圧した。さらに、
図6(a)に示したマスク501をモールド上に重ね、マスク側から600mJ/cm2のUV光を照射し、マスク501の透過部に位置するUV硬化樹脂を硬化させた。マスクとモールドを基材から剥離したあと、未硬化の樹脂をIPAでよく洗い流し、窒素ブローで基材を乾燥させた。これにより、実施例1のゾルゲル材料からなる凹凸構造層と同様の構造の、UV硬化性樹脂からなる凹凸構造層が形成された。
【0138】
実施例4
基材としてガスバリアフィルムを用い、リフトオフ法の代わりにUV硬化樹脂を用いたUV硬化法によって以下のように凹凸構造層を形成した以外は実施例1と同様にして、発光素子を作製した。作製された発光素子の平面及び断面構造を模式的に表すと
図1(a)及び
図1(b)のようになる。
【0139】
水1g、IPA19g及び酢酸0.1mLを撹拌しながら、シランカップリング剤(信越化学製、KBM−5103)1gを滴下し、その後1hrさらに撹拌して、シランカップリング剤溶液を調製した。基材として、厚み200μmのPEN基材(帝人デュポン社製、テオネックスQ65F)上に、有機成分と無機成分からなる有機無機ハイブリッド材料であるSiOxNy(x,y=0〜2)膜をバリア膜として形成することによって得られたガスバリアフィルムを用いた。このガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、1×10
−3g/m
2/day以下であった。ガスバリアフィルムのバリア膜上に、シランカップリング剤溶液をスピンコートした。スピンコートは1000rpmで30秒間行った。その後130℃のオーブンで15分間基材を焼成して易接着処理済みガスバリアフィルム基材を得た。易接着処理済みガスバリアフィルムの易接着処理面にUV硬化樹脂(東洋合成工業製、PAK−02)をスピンコートした。スピンコートは1000rpmで30秒間行った。塗布したUV硬化樹脂上に、実施例1と同様の回折格子モールドをハンドローラーで押圧した。さらに、
図6(a)に示したマスク501をモールド上に重ね、マスク側から600mJ/cm
2のUV光を照射し、マスク501の透過部に位置するUV硬化樹脂を硬化させた。マスクとモールドを基材から剥離したあと、未硬化の樹脂をIPAでよく洗い流し、窒素ブローで基材を乾燥させた。これにより、ガスバリアフィルム基材上に実施例1のゾルゲル材料からなる凹凸構造層と同様の構造の、UV硬化性樹脂からなる凹凸構造層が形成された。
【0140】
比較例1
実施例1ではポジレジストを用いたフォトリソグラフィにより凹凸構造層のパターニングを行ったが、本
比較例では、ポジレジストを用いたフォトリソグラフィを行わずそれ以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。比較例1で作製された発光素子は基材上の全面に凹凸構造層が形成され、接着剤層の外側に凹凸構造層が露出した構造となった。その断面構造を模式的に表すと
図8のようになる。
【0141】
比較例2
実施例1では
図6(a)に示すマスク501を用いたフォトリソグラフィにより凹凸構造層のパターニングを行ったが、本比較例ではそれに代えて、
図6(c)に示すマスク505を用いてフォトリソグラフィを行った。なお、
図6(c)において、白抜きの部分が光透過部であり、その寸法が分かるように目盛りと長さを数値で表している。それ以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。作製された発光素子は、凹凸構造層の外縁が接着剤層の内周端よりも内側に位置する。その断面構造を模式的に表すと
図9のようになる。
【0142】
比較例3
実施例4では、
図6(a)に示すマスク501を用いたUV光の照射を行ったが、本比較例では、マスク501を用いずにUV光の照射を行った。また、実施例4では、UV光の照射に続いてIPAによる未硬化樹脂の洗浄、及び窒素ブローによる基材の乾燥を行ったが、本比較例ではこれらを行わなかった。それ以外は実施例4と同様にして発光素子を作製した。作製された発光素子は、基材上の全面に凹凸構造層が形成され、接着剤層の外側に凹凸構造層が露出した構造となった。その断面構造を模式的に表すと
図8のようになる。
【0143】
<密着性評価>
実施例1〜3及び比較例1、2で作製した発光素子について、接着剤層の密着性を以下のように評価した。
図10に示すように、発光素子を台550に固定し、掘り込みガラス101の突出部101aの下に、断面がL字型(短辺560a長さ7mm、長辺560b長さ15mm)の板状(奥行20mm)のL字型治具560を差し込み、L字型治具560の頂点をてこの作用点としてL字型治具の長辺560bを矢印の方向に押し下げることで、掘り込みガラス101の突出部101aを押し上げた。このときに、掘り込みガラス101が接着剤層103と一体となって、接着剤層103の下面から剥離した場合を不合格とし、掘り込みガラス101が破損して接着剤層103が基材40側に残った場合は合格とした。実施例1〜3及び比較例1、2の発光素子についてそれぞれ10個ずつ試験を行い不合格となった数を
図11の表中に示す。実施例1〜3及び比較例1では10個の素子全てが合格であったが、比較例2では10個中5個の素子が不合格であった。このことから、実施例1〜3及び比較例1の発光素子は比較例2の発光素子と比べて、接着剤層下面の密着性がよいことがわかる。これは、比較例2では接着剤層の下面は平坦面のみと接しているが、実施例1〜3及び比較例1では接着剤層の下面が凹凸表面と接しており、凹凸に基づく「ひっかかり」などにより機械的な離れにくさが増すこと、凹凸により界面の面積が増加することなどの効果により、密着力が向上するためと考えられる。
【0144】
<劣化評価>
実施例1〜4及び比較例1〜3で作製した発光素子について、高湿度環境下での劣化試験を以下のように行った。初期状態の発光素子に4Vの電圧を印加し、14mm×14mmの発光エリア中のダークスポット数をカウントした。次いで、発光素子を温度40℃、湿度90%の恒温恒湿槽中に保管した。恒温恒湿槽投入から10日後及び20日後に、発光素子に4Vの電圧を印加し、14mm×14mmの発光エリア中のダークスポット数をカウントした。結果を
図11の表中に示す。実施例1〜4及び比較例2ではダークスポット数は0個のまま増加しなかったが、比較例1の発光素子はダークスポット数が10日後に3個、20日後に
15個と増加し、比較例3の発光素子はダークスポット数が10日後に5個、20日後に20個と増加した。このことから、実施例1〜4及び比較例2の発光素子は比較例1、3の発光素子と比べて、劣化が抑制されていることがわかる。これは、比較例1、3の発光素子は、凹凸構造層が接着剤層の外側(大気)に露出しており、凹凸構造層を介して水分や酸素が封止空間に侵入するが、実施例1〜4及び比較例2の発光素子は、凹凸構造層が接着剤層の外側(大気)に露出していないため、水分や酸素が凹凸構造層を透過して封止空間に侵入することが防止されるためと考えられる。
【0145】
以上、本発明を実施例により説明してきたが、本発明の発光素子、及び発光素子の製造方法は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術思想の範囲内で適宜改変することができる。例えば、上記実施形態及び実施例では、透明電極(第1電極)が凹凸構造層をほぼ覆うように第1電極を形成したが、第1電極の配置及び形状は特に限定されない。接着剤層が第1電極ではなく、凹凸構造層の一部に接着されてもよく、接着剤層が第1電極と凹凸構造層の一部に跨って接着されてもよい。いずれにしても、接着剤層が凹凸構造層の凹凸構造またはそれを反映した第1電極の凹凸表面に接着されているので、接着剤層の基材への接着強度は向上する。