特許第6262746号(P6262746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262746アズラクトン官能基を有する多官能性カップリング試薬
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  • 特許6262746-アズラクトン官能基を有する多官能性カップリング試薬 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262746
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】アズラクトン官能基を有する多官能性カップリング試薬
(51)【国際特許分類】
   C07D 263/42 20060101AFI20180104BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C07D263/42CSP
   A61K49/00
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-537211(P2015-537211)
(86)(22)【出願日】2013年10月14日
(65)【公表番号】特表2016-505506(P2016-505506A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2013071430
(87)【国際公開番号】WO2014060357
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】1259941
(32)【優先日】2012年10月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】515106170
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ マン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DU MANS
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ホ テ ハイン
(72)【発明者】
【氏名】パスクアル サグラリオ
(72)【発明者】
【氏名】モンテンボー ヴェロニク
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 Maia, H. L. et al.,Journal of The Chemical Society Perkin Transactions I,1973年,no.1,p.98-105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
[R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
は、水素原子を表し、、(−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは:
(i)N基、又は
(ii)(C−C10)アルキル−N基、又は
(iii)アリール−N基、又は
(iv)アリール(C−C10)アルキル−N基、又は
(v)(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(vi)アリール−C≡C−R基、又は
(vii)アリール(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(viii)−O−C(O)−(CH−C≡CR{ここで、nは1〜10の間に
含まれる整数であり、特に−O−C(O)−(CH−C≡CH基では、nは1〜5の間に含まれる整数である}を表し、
は、
(a)水素原子、
(b)又は、(C−C10)アルキル基、
(c)又は、アリール基
(d)又は、アリール(C−C10)アルキル基、
ここで、これらの全ての基は、共役二重結合の2つを、場合により環内に、含有することができるものとし、
(e)又は、三重結合の保護基
のいずれかを示すものとする]
で表される化合物。
【請求項2】
及びRが、それぞれ、(C−C10)アルキル基を表し、Rが水素原子を表し、Rがメチル基を表し、そしてYが、N基又は−O−C(O)−(CH−C≡CH基のいずれかを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R、及びRが、それぞれ、メチル基を表し、Rが水素原子を表し、そしてYがN基を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
、R、及びRが、それぞれ、メチル基を示し、Rが水素原子を示し、そしてYが−O−C(O)−(CH−C≡CH基を示す、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
生体分子と、生物学的に関心のある分子、天然の又は合成のポリマー、及び反応性表面を含む群から選択される標的分子とのインビトロにおけるカップリング方法であって、前記方法が、式(I)
{R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
は、水素原子であり、、(−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンを含む群から選択される、クリックケミストリーにより活性化されることができる反応性官能基を表す}で表される化合物を利用すること、そして、以下の工程:
前記化合物を生体分子に接触させる工程、
前記生体分子に結合した前記化合物を標的分子に接触させる工程、そして、必要により、カップリング生成物を単離する工程、
を含むこと
を特徴とする前記方法。
【請求項6】
前記カップリング方法に関与する生体分子が、タンパク質、ペプチド、DNA、生物学的マーカー、ホルモン、ビタミン、抗体、ポリアミン、単糖、オリゴ糖及び多糖類、並びに生物学的に関心のある医薬又は標識タイプの分子を含む群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のインビトロにおけるカップリング方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1つを利用することを特徴とする、診断試薬。
【請求項8】
式(I)
(R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
は、水素原子であり、、(−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンを含む群から選択される、クリックケミストリーにより活性化されることができる反応性官能基を表す)
で表される化合物を含む診断試
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5及び6のいずれか一項に記載のカップリング及びバイオコンジュゲーションの実施用キット。
【請求項10】
請求項9に記載のキットを利用する工程の少なくとも1つ又は式(I)
(R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
は、水素原子であり、、(−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンを含む群から選択される、クリックケミストリーにより活性化されることができる反応性官能基を表す)で表される化合物を利用する工程の少なくとも1つを含むことを特徴とする、媒体中に潜在的に存在する関心のある分子の少なくとも1つのインビトロにおける分離、検出、及び/又は特徴付け方法。
【請求項11】
水性又は有機媒体と結合した請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、新規な多官能性化合物であり、生体分子と標的分子とのカップリング方法における、クリックケミストリー(chimie click)におけるそれらの使用に関する。
【0002】
本発明の分野は、第一級アミン基を含有する生体分子、例えばタンパク質、核酸、又は特定の多糖類の間の「クリック」反応と呼ばれる化学反応を実施することを可能にする、異なる反応性化学官能基の少なくとも2つを有する分子の設計及び合成である。
【0003】
現在、生物学、生化学、バイオテクノロジー、及びナノメディシンにおけるバイオコンジュゲート(bioconjugues)のような潜在的な用途のために、生体分子と天然又は合成ポリマーとのライゲーション(ligation)又はバイオコンジュゲーション(bioconjugaison)の分野において非常に高い需要が存在する。
【0004】
生命の果てしない複雑さと多様性は、その化学的基盤を発見しようとしている科学者のための巨大な挑戦を示している。コードするタンパク質の機能の知識を伴わない場合、異なる生物の遺伝子組成(composition genetique)の解読は、全く有用ではない。共有結合による生体分子の2つのカップリングから成るバイオコンジュゲーションは、この目標を達成するための手段である。
【0005】
具体的には、バイオコンジュゲーションは、特定のタンパク質及び特定の生体高分子の調節及び生物学的機能をリガンドの結合により理解するのに有用なアプローチである。このアプローチは、生物学的に関心のある分子に対して、プローブのように機能することができリガンドの結合を監視する小型の合成又は天然の分子を付着させることから成る。このようなプローブには、例えば蛍光分子、ビオチン、及び核磁気共鳴(NMR)プローブが含まれる。この技術は、潜在的リガンドの多数を迅速に試験する可能性を提供している。別のアプローチは、生体分子上に合成官能基を導入することから成り、このステップは、化学選択的反応による表面上でのそれらの固定化に続く。固定化された生体分子は、別の分子に曝露され、そのリガンドを同定することができる。DNAチップやプロテインチップは、前記アプローチの一般的な例である。
【0006】
バイオコンジュゲーションはまた、生化学的試験、臨床サンプル中の分析物の質的及び量的検出による診断用途、例えば抗体にコンジュゲートされる造影剤の結合による、インビボのイメージング分野における用途、並びに工業用触媒として使用される固定化酵素の使用が許容される。バイオコンジュゲーションで使用される他のあまり一般的ではない分子は、オリゴ糖、合成ポリマー例えばポリエチレングリコール(PEG)、及びカーボンナノチューブである。
【0007】
バイオコンジュゲーション反応において克服すべき困難は、修飾(modification)が生じる部位の不十分な制御による標的分子の生物学的機能の喪失である。最近開発されたバイオコンジュゲーション法は、部位により特異的であり、生体分子の活性型に対する最小限の障害を含んでいる。また、特定の固定化生体分子は、リガンド結合能の増大を示すことができる。
【0008】
最も一般的な化学的バイオコンジュゲーション法は、システイン又はリジン残基に基づいている。より最近の方法はまた、合成の官能基例えばオレフィンを使用する。
【0009】
チオレートは水溶液中における潜在的な求核試薬であるので、システイン残基のチオレート基によるタンパク質の誘導体化は、バイオコンジュゲーションの一般的な方法である。チオール反応性官能基は、ヨードアセトアミド、マレイミド、及びジスルフィドを含む。一例として、ヨードアセトアミドは、タンパク質中の遊離システインの存在を決定するための試験において、極めて標準的な方法で使用されている。より最近では、ヨードアセトアミド基は、フルオロフォアを有するタンパク質を標識するために、又はタンパク質を固定するために使用されている。
【0010】
アミド結合は、高い安定性を有するので、バイオコンジュゲーション用の最適な標的である。例えば、タンパク質は、活性化されたエステル結合を有する小分子又は表面で処理されることができ、リジンのアミン基とN末端とでアミド結合を形成する。天然の化学的なライゲーション及びシュタウディンガーライゲーション(ligation Staudinger)は、特定のタンパク質の特定の部位にアミド結合を生成するための最近の2つのアプローチである。
【0011】
バイオコンジュゲーション用の他の標的は、中性pH水溶液中でのアルデヒド又はケトンを用いた窒素含有塩基の縮合による炭素−窒素二重結合の容易な合成である。このように、オキシム(C=N−O)及びヒドラゾン(C=N−N)を、単純なイミン(C=N)よりも安定に合成することができる。したがって、糖質は、そのヒドロキシル基がアルデヒドに容易に酸化されることができるので、炭素−窒素二重結合により修飾されることが可能である。あるいは、ケトンを細胞の表面に存在する糖上に生合成により導入することができる。オキシム結合によって固定化された糖は、糖チップを製造するために使用されている。オキシム又はヒドラゾン結合によりコンジュゲートさせたオリゴヌクレオチドの多数の例が、従来技術に記載されている。用途としては、血液サンプル中の抗体を検出することが可能なペプチドの固定化によるペプチドチップの使用が挙げられる。
【0012】
銅のCu(I)触媒の存在下でのヒュスゲン付加環化反応(reaction de cycloaddition de Huisgen)は、ほとんどのバイオコンジュゲーションにおいて使用されるものである。これは、1,4−二置換トリアゾールを生成する、末端アルキンとアジドとの反応から成る。この反応は、非常に多くの用途、具体的には、小分子、タンパク質、及びペプチドによる標識、タンパク質及びペプチドの固定化、プロテオミクスにおける用途、糖の固定化、DNAの機能付与、並びにウイルス及び生物活性ポリマーへの蛍光分子の結合に使用されている。
【0013】
ここ数年では、機能性材料開発用のアズラクトン(又はオキサゾロン)官能基を有する官能基化ポリマーの使用が増加している。アズラクトンが、幅広い求核化学種例えば第一級アミン、ヒドロキシル基、及びチオール官能基による開環反応により反応することができるという事実のために、アズラクトン官能基により官能基化された材料は、水溶性ポリマー、不溶性支持体、及び表面への広範囲の化学的官能基の合成後(post-synthese)又は生産後(post-fabrication)の導入用の反応性プラットフォームとしての役割を果たすことができる。この求電子環の反応性は、あまり反応しない官能性リンカー形成に導く開環反応をもたらすようなものである。実際には、求核試薬が第一級アミンである場合は、アミド結合2つ、求核試薬がアルコールである場合は、アミド結合1つ及びエステル結合1つ、又は求核試薬がチオールである場合は、アミド結合1つ及びチオエステル結合1つ、のいずれかにより構成されている。それらは非常に妨げられた四置換中心(centre tetrasubstitue tres encombre)を構成し、リンカーを構成する全体的な部位は、したがって、あまり反応的ではない。
【0014】
最近の10年間では、特性を利用する用途の数及び種類並びに前記官能化ポリマーの反応性の両方が増加している。様々な研究が、アズラクトン官能基を有する支持体例えば可溶性支持体、フィルム、モノリス、及びビーズ形態の不溶性支持体の有用性を示している。支持体の組成や形態に関連するこれらの支持体の用途は、しかしながら、限定されたままであり、酵素、触媒、リガンドの固定化又はアミンの捕捉(piegeage d'amines)を主に意味していた。例えば、モノリスについては、実行できる用途2つは、それらの構造に関連して、ハイライトされる:親水性モノリスは、水媒体中で使用され、酵素例えばトリプシン又はウシ血清アルブミン(BSA)を固定化し、そして疎水性モノリスは、有機媒体中で使用されアミンを捕捉する。モノリスの場合と同様に、アズラクトン官能性を有するビーズの形態の不溶性架橋支持体は、2つの主要な用途:酵素の捕捉とアミンの捕捉とを有する。このように、SOLA Jら(Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 6836-6839)は、アミノイソ酪酸(Aib)に基づいたペプチド模倣オリゴマーのらせん構造への修飾の研究用に使用されるアジドを開示している。国際公開第2004/081538号は、異なる活性剤とコンジュゲート可能であるポリ(オキサゾロン)ホモポリマー合成用の中間体として使用されるアズラクトン基を開示しており、そして国際公開第93/25594号は、支持体上に固定されそして活性剤固定用に使用されるアズラクトン基を開示している。
【0015】
現在の治療研究においては、新規な方法は、幅広いより迅速な化合物に到達するために開発されてきた。具体的には、「クリック」ケミストリーによる化学的ライゲーションが、2001年にSharplessによって提案されており(H.C. Kolb, M.G. Finn and K.B. Sharpless (2001). "Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions". Angewandte Chemie International Edition 40 (11): 2004-2021)、標準活性基(pharmacophores classiques)の異なる元の構造を生成している。以下の基準:
−モジュール性(modularite)
−立体選択性(stereoselectivite)
−酸素及び水に対する非感受性(insensitivity to oxygen and to water)
−高い純度及び収率(high purity and yield)
に該当する場合に、反応を「クリック」反応とみなすことができる。
【0016】
「クリック」ケミストリーは、副生成物を形成することなく、面倒な精製を行うことなく、穏やかな条件下で実行することができる明確でモジュール式の反応のセットの開発を可能とし、前記反応は、生理学的に安定である基材の広いスペクトルを有し、及び/又は生物学的媒体に適合し、そして高い収率の原子経済に導く。主な「クリック」反応は、非常にエネルギー効率の高い炭素−ヘテロ原子結合、具体的には求核開環反応又は付加環化反応を形成することから成る。「クリック」ケミストリーにおいて広く示される反応のタイプは、Cu(I)により触媒される前記のアルキンーアジド付加環化である。「クリック」反応は化学的機能及び生物学的媒体と適合する場合には、インビトロ又はインビボのいずれであっても、これらの反応は、バイオ直交型(bio-orthogonales)と呼ばれている。
【0017】
これらのクリックケミストリー反応に用いることができる多数の試薬が存在するが、水媒体中において、除去するのが困難であり及び/又は毒性である副産物を形成することがなく効率的でかつ迅速な反応を可能にする新規な試薬についての必要性が依然残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、したがって、生体分子例えばタンパク質、ペプチド、DNA、特定の多糖類と、他の生体分子の1つ又はそれ以上、天然の若しくは合成のポリマー、又は反応性表面との共有結合による結合に使用可能な新規な多官能性反応性カップリング剤のファミリーを提案することである。これらの新規化合物は、生物学及び化学合成に適用される「クリック」ケミストリーのために非常に関心のあるものである。
【0019】
本発明の別の目的は、新規なカップリング試薬を提案することにより、最新技術の欠点を克服する:
−インビトロ及びインビボの両方でのバイオ直交法による組み合わせが可能、
−その反応性官能基が、それら自身の間でも直交している、
−その高い反応性は、生物学的媒体と適合する、
−水媒体中で加水分解に対する耐性を有する、
−除去するのが困難である又は毒性である副産物の形成なし、
−生物学的又は合成高分子の広い範囲に適用可能であり、
−生物学的媒体及び生命体と同様に、インビトロ及びインビボで、強固であり化学的官能基の広い範囲と適合する化学結合に導く、
ことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一般式(I):
{R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンを含む群から選択される、クリックケミストリーにより活性化されることができる反応性官能基を表す}
で表される特定の化合物は、前記のように公知であるが、多官能性カップリング反応性剤としては開示されていない(前に引用されているSOLA J参照)。
【0021】
本発明によれば、用語「(C−C10)アルキル」は、炭素原子の1〜10個、有利には炭素原子の1〜5個を有する、直鎖状又は分枝状の飽和炭化水素含有基を表す。例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、テルチオブチル(tertiobutyle)、ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル基が挙げられる。
【0022】
用語「アリール」は、炭素原子の6〜10個を含む、単環式又は二環式の芳香族炭化水素含有基を表す。例として、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0023】
用語「アリール(C−C10)アルキル」は、先に定義したように炭素原子の1〜10個、有利には炭素原子の1〜5個を有しそして前記で定義したようなアリール基を含有するアルキル基を意味する。
【0024】
用語「複素環基」は、炭素原子の3〜7個を含み、酸素、窒素、又は硫黄によって構成される群から選択されるヘテロ原子の1〜3個を含有する、飽和又は不飽和の任意の複素環を表す。例として、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピリジル、ピリジニル、イミダゾリル、フリル、モルホリニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル、及びチアゾリル基が挙げられる。
【0025】
用語「アジド」は、アジ化水素酸HNの塩、及び窒素原子の1つが共有結合性有機化合物の炭素原子に結合している有機アジドを表す。例としてはメチルアジド及びフェニルアジドが挙げられる。
【0026】
用語「アルキン」は、炭素−炭素三重結合が存在することを特徴とする、不飽和を有する炭化水素を表す。例として、エチン、プロピン、but−1−yne、及びbut−2−yneが挙げられる。
【0027】
「シクロアルキン」により、三重結合の1つ又はそれ以上を含有する任意の炭素原子の環、例えばシクロオクチンが意味される。
【0028】
用語「共役ジエン」は、単結合の1つによって分離された二重結合の2つを有する炭化水素を表す。例として、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、及びフランを挙げることができる。
【0029】
本発明により使用される式(I)で表される化合物に共通する第1の化学的官能基は、アズラクトン(2−オキサゾリン−5−オン)タイプのものである。このグループは、第一級アミン官能基による開環により触媒を必要とせずに反応し、穏やかな条件下、具体的には水溶液中で、強固なアミド結合の形成を有し、したがって、生物学的媒体と適合することが知られている。前記システムと比較したこの化学的官能基の主な用途は、加水分解に対するその耐性から水媒体中で迅速かつ効率的な反応を引き起こすその固有の反応性に加えて、アミンとの反応により、おそらく毒性がありそして反応媒体から除去することが困難である反応副生成物の形成が導かれないという事実において、その存在を記載されている。第一級アミン官能基は、本発明の試薬のための用途の非常に広い分野を確保する、ほとんどの生物学的分子(具体的には、タンパク質、核酸)及び生物学的に関心のある分子において広く及んでいる。コストの面では、アズラクトン基との反応によって生成される副生成物の不在により、原子経済が導かれる。また、水媒体中における働きの可能性は、環境の観点から有利である。
【0030】
本発明により使用される式(I)で表される化合物中に存在する他の一般的な官能基は、付加環化反応に関与することができる群、具体的には、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンに該当する。付加環化反応は、クリックケミストリーの最も広範な例、具体的には、前記のヒュスゲン反応、[4+2]付加環化(ディールス・アルダー反応(reaction de Diels-Alder))、及び複素環付加(l'heterocycloaddition)を構成する。これらの反応は、バイオ直交している、すなわち、生物学的媒体中に存在する種に適合する。実際には、それらは、一般的に存在しておらず生体分子内に存在する群により反応可能でもない官能基を利用する。
【0031】
本発明による化合物において存在する化学的官能基の2つは、それらの間でさらに直行している、すなわち、それらは異なる条件下でお互いに独立して反応する。したがって、これらの2つの群のうちの1つの反応を、他方を変形せずにトリガーすることが可能であり、したがって、これにより、連続する化学選択的反応が可能となる。
【0032】
本発明の主題は、一般式(I):
[R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは:
(i)N基、又は
(ii)(C−C10)アルキル−N基、又は
(iii)アリール−N基、又は
(iv)アリール(C−C10)アルキル−N基、又は
(v)(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(vi)アリール−C≡C−R基、又は
(vii)アリール(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(viii)−O−C(O)−(CH−C≡CR{nは1〜10の間に含まれる整数であり、特に−O−C(O)−(CH−C≡CH基では、nは1〜5の間に含まれる整数である}を表し、
は、
(a)水素原子、
(b)又は、(C−C10)アルキル基、
(c)又は、アリール基
(d)又は、アリール(C−C10)アルキル基、
ここで、これらの全ての基は、共役二重結合の2つを、場合により環内に、含有することができるものとし、
(e)又は、三重結合の保護基
のいずれかを示すものとする]
で表される化合物である。
【0033】
前記定義(i)〜(viii)において、用語の(C−C10)アルキル、アリール、及びアリール(C−C10)アルキルは、以前に与えられた定義を意味する。
【0034】
共役二重結合の2つを、場合により環内に、含有することができる、(C−C10)アルキル、アリール、又はアリール(C−C10)アルキル基の例としては、具体的には、1,3−ブタジエニル、シクロペンタジエニル、ピロリル、及びフリルが挙げられる。
【0035】
言及した全てのグループは、[3+2]双極性環状付加若しくは環状付加、又は[4+2]複素環付加反応を生成する能力を共通して有している。
【0036】
三重結合の保護基は、当業者に周知である。例としては、トリアルキルシリル、具体的には、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、及びベンジルジメチルシリルを挙げることができる。
【0037】
本発明の別の有利な実施態様によれば、式(I)で表される化合物は、R及びRが、それぞれ、(C−C10)アルキル基を表し、Rが水素原子を表し、Rがメチル基を表し、そしてYが、N基又は−O−C(O)−(CH−C≡CH基のいずれかを表す。
【0038】
有利には、R、R、及びR基が、それぞれ、メチル基を表し、Rが水素原子を表し、そしてYがN基を表す。
【0039】
本発明の別の有利な実施態様によると、R、R、及びRが、それぞれ、メチル基を表し、Rが水素原子を表し、そしてYが−O−C(O)−(CH−C≡CH基を表す。
【0040】
本発明の別の主題は、生体分子と、生物学的に関心のある分子、天然の又は合成のポリマー、及び反応性表面を含む群から選択される標的分子とのカップリング方法であって、前記方法が、式(I){R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンを含む群から選択される、クリックケミストリーにより活性化されることができる反応性官能基を表す}で表される化合物を利用しており、そして、以下の工程:
前記式(I)で表される化合物を生体分子に接触させる工程の工程、
前記生体分子に結合した前記式(I)で表される化合物を標的分子に接触させる工程、そして、必要により、
カップリング生成物を単離する工程、
を含む。
【0041】
本発明の有利な実施態様においては、前記カップリング方法は式(I)[R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは:
(i)N基、又は
(ii)(C−C10)アルキル−N基、又は
(iii)アリール−N基、又は
(iv)アリール(C−C10)アルキル−N基、又は
(v)(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(vi)アリール−C≡C−R基、又は
(vii)アリール(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(viii)−O−C(O)−(CH−C≡CR{nは1〜10の間に含まれる整数であり、特に−O−C(O)−(CH−C≡CH基では、nは1〜5の間に含まれる整数である}を表し、
は、
(a)水素原子、
(b)又は、(C−C10)アルキル基、
(c)又は、アリール基
(d)又は、アリール(C−C10)アルキル基、
ここで、これらの全ての基は、共役二重結合の2つを、場合により環内に、含有することができるものとし、
(e)又は、三重結合の保護基
のいずれかを示すものとする]
で表される化合物を利用する。
【0042】
「反応性表面」により、本発明の分子と反応することができるその表面上に化学的官能基を有する有機又は無機材料が意味される。例えば、表面上にアミン官能基を有する、ポリプロピレン又はポリエチレンの面(フィルム、布など)を挙げることができる。
【0043】
本発明による方法の有利な実施態様によると、前記カップリング方法に関与する生体分子は、タンパク質、ペプチド、DNA、生物学的マーカー、ホルモン、ビタミン、抗体、ポリアミン、単糖、オリゴ糖及び多糖類、並びに生物学的に関心のある医薬タイプの分子、例えば、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、標識例えば蛍光又は放射性標識を含む群から選択される。
【0044】
本発明の他の主題は、具体的には、式(I)[R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは:
(i)N基、又は
(ii)(C−C10)アルキル−N基、又は
(iii)アリール−N基、又は
(iv)アリール(C−C10)アルキル−N基、又は
(v)(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(vi)アリール−C≡C−R基、又は
(vii)アリール(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(viii)−O−C(O)−(CH−C≡CR{nは1〜10の間に含まれる整数であり、特に−O−C(O)−(CH−C≡CH基では、nは1〜5の間に含まれる整数である}を表し、
は、
(a)水素原子、
(b)又は、(C−C10)アルキル基、
(c)又は、アリール基
(d)又は、アリール(C−C10)アルキル基、
ここで、これらの全ての基は、共役二重結合の2つを、場合により環内に、含有することができるものとし、
(e)又は、三重結合の保護基
のいずれかを示すものとする]
で表される化合物の少なくとも1つを利用する診断試薬である。
【0045】
本発明の主題はまた、式(I){R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンを含む群から選択される、クリックケミストリーにより活性化されることができる反応性官能基を表す}で表される化合物の診断試薬としての使用、及び式(I)で表される前記化合物のセットを利用する診断方法である。
【0046】
実際には、前記カップリング剤は、生物学的に関心のある分子例えば抗原を開発分子(molecule dite de revelation)と呼ばれる分子例えば酵素に結合させるものであることから、前記カップリング剤は、診断試薬分野、具体的にはリガンド−抗リガンドタイプの例えば抗原−抗体の又はタンパク質−タンパク質の反応の検出の分野における使用のものである。関心のある生体分子の別の分子例えば抗体への結合は、前記開発分子により実証される。また、それは、機能的イメージングによる検出用の生物学的に関心のある分子に蛍光プローブを結合するために有用である可能性がある。
【0047】
本発明の他の主題は、具体的には、式(I)[R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは:
(i)N基、又は
(ii)(C−C10)アルキル−N基、又は
(iii)アリール−N基、又は
(iv)アリール(C−C10)アルキル−N基、又は
(v)(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(vi)アリール−C≡C−R基、又は
(vii)アリール(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(viii)−O−C(O)−(CH−C≡CR{nは1〜10の間に含まれる整数であり、特に−O−C(O)−(CH−C≡CH基では、nは1〜5の間に含まれる整数である}を表し、
は、
(a)水素原子、
(b)又は、(C−C10)アルキル基、
(c)又は、アリール基
(d)又は、アリール(C−C10)アルキル基、
ここで、これらの全ての基は、共役二重結合の2つを、場合により環内に、含有することができるものとし、
(e)又は、三重結合の保護基
のいずれかを示すものとする]で表される化合物の少なくとも1つを含む、カップリング及びバイオコンジュゲーションの実施用のキットである。
【0048】
本発明の別の主題は、媒体中に潜在的に存在する関心のある分子の少なくとも1つの分離、検出、及び/又は特徴付け方法であって、前記方法は、本発明によるキット又は式(I){R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは、アジド、アルキン、シクロアルキン、及び共役ジエンを含む群から選択される、クリックケミストリーにより活性化されることができる反応性官能基を表す}で表される化合物を利用する工程の少なくとも1つを含む。
【0049】
本発明の別の主題は、水媒体又は有機媒体と組み合わせた式(I)[R及びRは、互いに独立して、それぞれ、(C−C10)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、アリール基、アリール(C−C10)アルキル基、又は複素環基を表し、
及びRは、互いに独立して、それぞれ、水素原子、(C−C10)アルキル基、アリール基、又はアリール(C−C10)アルキル基を表し、そして
Yは:
(i)N基、又は
(ii)(C−C10)アルキル−N基、又は
(iii)アリール−N基、又は
(iv)アリール(C−C10)アルキル−N基、又は
(v)(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(vi)アリール−C≡C−R基、又は
(vii)アリール(C−C10)アルキル−C≡C−R基、又は
(viii)−O−C(O)−(CH−C≡CR{nは1〜10の間に含まれる整数であり、特に−O−C(O)−(CH−C≡CH基では、nは1〜5の間に含まれる整数である}を表し、
は、
(a)水素原子、
(b)又は、(C−C10)アルキル基、
(c)又は、アリール基
(d)又は、アリール(C−C10)アルキル基、
ここで、これらの全ての基は、共役二重結合の2つを、場合により環内に、含有することができるものとし、
(e)又は、三重結合の保護基
のいずれかを示すものとする]で表される化合物を含む組成物である。
【0050】
有機媒体としては、例えば、細胞培養物に適合するジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。
【0051】
本発明は以下の実施例1〜6及び図1に示されている。
【0052】
実施例1、2及び4、5は、本発明による化合物の合成を示し、そして実施例3及び6は、本発明の化合物と生体分子:リゾチーム(lysozyme)とを結合するための方法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】実施例3に記載のカップリング方法により得られたリゾチーム−2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オンコンジュゲートのMALDI−TOF分析のスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
実施例1:2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン
2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オンを以下の略図1に従って調製する。
【0055】
1.1. 2−(1−ブロモエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン:
この合成中間物をK.M. Lewandowskiらが記載した米国特許6762257B1号明細書中の手順(略図1の工程1及び2)に従って調製する。
【0056】
1.2. 2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン:
次に、2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オンを以下のプロトコルに従って得る(工程3)。
【0057】
マグネティックスターラーを備えた25mLのフラスコにおいて、アルゴン雰囲気下で、無水ジメチルホルムアミド(DMF)4mL中アジ化ナトリウム0.65g(0.01モル)溶液を調製し、氷浴を用いて冷却する。無水DMF2mL中に工程1.1で調製した2−(1−ブロモエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン2.20g(0.01モル)を含む溶液をこの混合物に滴下して注入し、0℃で撹拌しながら2時間放置する。混合物を周囲温度に戻るまで撹拌しながら24時間放置する。溶媒を減圧下で蒸発させ、そして残存物を酢酸エチル中に取り、次いで溶液を濾過し臭化ナトリウムを除去する。濾液を分液漏斗に注ぎ、溶液を希HCl(5%)、次いで飽和NaHCO水溶液で洗浄する。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し、冷却したときに結晶化する油を生成する。
【0058】
2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オンを、プロトン核磁気共鳴(H NMR)により、及び炭素13核磁気共鳴(13C NMR)により特徴付ける。
H NMR (400MHz,CDCl,δppm):1.46ppm(s,6H,−C(CH),1.56ppm(d,3H,−CH(CH)N),4.27ppm(t,1H,CH(CH)N)。
13CNMR(400MHz,CDCl,δppm):16.32ppm(−C(CH)N),24.46ppm(C(CH),53.76ppm(−C(CH3)N),65.59ppm(−C(CH),161.56ppm(C=N),180.11ppm(C=O)。
【0059】
実施例2:1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエート
1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエートを以下の略図2に従って調製する。
2−(1−ブロモエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オンを実施例1.1に従い調製する。
【0060】
2.2 1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエート
2.2.1 5−ヘキシン酸のセシウム塩。
5−ヘキシン酸をDMF(6.0mL)中溶液中の5−ヘキシン酸(4.6グラム、0.0411モル)と炭酸セシウム(4.10グラム、0.0126モル)との周囲温度での16時間の反応によって調製する。反応混合物を濾過し、溶媒を減圧下で除去し、そして残存物をジエチルエーテル中に取る。濾過後、5−ヘキシン酸のセシウム塩(4.82グラム、収率78%)を40℃の真空下で乾燥させる。
【0061】
2.2.2 1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエート。
DMF(2mL)中2−(1−ブロモエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン(0.448グラム、2.03ミリモル)溶液を、氷浴で冷却中のフラスコ内の無水DMF(3mL)中5−ヘキシン酸のセシウム塩(0.490グラム、2ミリモル)溶液に滴下する。添加終了後、反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次に24時間にわたり放置して周囲温度に戻す。溶媒を減圧下で除去し、次いで、残存物を酢酸エチル中に取り、濾過し、真空下で濃縮する。得られた黄色油状物を、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製し1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエート0.310グラム(61%)を生成する。
【0062】
1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエートを、プロトン核磁気共鳴(H NMR)により、及び炭素13核磁気共鳴(13C NMR)により特徴付ける。
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):1.46ppm(s,6H,−C(CH),1.56ppm(d,3H,−CH(CH)OCO),1.85ppm(quinquet,2H,HC≡C−CHCHCH−O−CO−),2.00ppm(HC≡C−),2.29ppm(triplet−doublet,HC≡C−CHCHCH−O−CO−),2.54ppm (HCoC−CHCHCH−O−CO−),5.57ppm(quadruplet,1H,−CH−COOCH(CH)−)。
13CNMR(400MHz,CDCl,δppm):17.01ppm(−CH−COOCH(CH)),17.75ppm(HC≡C−CH−),23.50ppm(HC≡C−CHCHCH−),24.42ppm(C(CH),32.62ppm(−CHCHCO)−),65.04ppm(C(CH),65.45ppm(HCoC―CH―),69.50ppm(−COO−CH(CH)−),83.24ppm(HC≡C−CH−),162.06ppm(c=N),172.26ppm(−CH−COO−CH(CH) −),180.52ppm(c=O)ring
【0063】
実施例3:2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オンとリゾチームとのカップリングのプロセス
2−(1−アジドエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オンとモデルタンパク質であるリゾチームとのカップリングを以下に記載する:
【0064】
3.1 手順
マグネチックスターラーを備えたフラスコにおいて、ジメチルスルホキシド(DMSO、10.00mL)中リゾチーム溶液(114.2ミリグラム、8.0X10−6モル)を調製し、トリエチルアミン(TEA、0.20ミリリットル、1.49X10−3モル)を添加する。周囲温度で15分間撹拌した後、DMSO(1.00mL)中で実施例1に従って調製した2−(1−ブロモエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン(0.252グラム、1.38X10−3モル)溶液を加え、反応混合物を周囲温度で24時間撹拌する。24時間後、塩酸水溶液(塩酸、37%、30.0ミリリットル当たり1.0mLの溶液)を添加し、そして溶液をメタノール水溶液(体積において、水:メタノール=8:2)に対して透析膜(カットオフ閾値=MWCO=3500)で24時間透析する。次に、生成物を凍結乾燥により回収する。最終生成物(0.012グラム)を、赤外線(FTIR)分光法及びフーリエ変換による分析のために、DMSO(0.10mL)に溶解する。飛行時間質量分析(MALDI−TOF MS)による分析も実施する。
【0065】
3.2 結果
サンプルのFTIRスペクトルは、タンパク質上に導入されたアジド基の特徴である2110cm−1に新しい吸収バンドの存在を示す。
【0066】
反応はまた、反応後にm/z=14357の最初のリゾチームピークが消滅して代わりのm/z=15812を中心とする新しい信号(図1)を示している飛行質量分析法(MALDI−TOF MS)によって証明される。
【0067】
《実施例4:1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−2,4−ジエノエートの合成》
1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−2,4−ジエノエートを以下の略図に従って調製する。
【0068】
4.1. 2−(1−ブロモエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン
これをK.M. Lewandowskiらにより記載されている米国特許6762257B1号明細書(2004)中の手順に従って調製する。
【0069】
4.2. 1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−2,4−ジエノエート
ソルビン酸カリウム(1.12グラム、7.5X10−3モル)、2−(1−ブロモエチル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン(1.68グラム、7.6X10−3モル)、及び無水DMF(20.0mL)をマグネチックスターラーを備えたフラスコに導入する。次いで、反応混合物を撹拌し、アルゴン下で60℃で17時間加熱する。溶媒(DMF)を減圧下で除去する。次いで、残存物をフリットで濾過し、アセトン中に取る。得られた濾液を真空下で濃縮する。最終生成物を、95%収率(1.90グラム)の冷却したときに結晶化する暗黄色の油の形態で得る。
H NMR(400MHz,アセトンD,δppm):1.40ppm(6H,−C(CH),1.59ppm(d,3H,−COOCH(CH)),1.90ppm(d,3H,HC−CH=CH−),5.63 ppm(q,1H,−CH(CH)OCO),5.91(d,1H,CH−CH=CH−CH=CH−),6.34ppm(CH−CH=CH−CH=CH−),7.34ppm(1H,CH−CH=CH−CH=CH−)。
13CNMR(400MHz,アセトンD,δppm):17.01ppm(−COOCH(CH)−),18.51ppm(HC−CH=CH−),24.21ppm及び24.31ppm(C(CH),65.04ppm(C(CH),65.85ppm(−COO−CH(CH)−),118.47(CH−CH=CH−CH=CH−),130.31(CH−CH=CH−CH=CH−),141.03ppm(CH−CH=CH−CH=CH−),146.88ppm(CH−CH=CH−CH=CH−),162.21ppm(C=N),165.92ppm(−COO−CH(CH)−),181.16ppm(c=O)ring
HR−MS:C1317NOm/z=[M+H]exp=252.1239([M+H]cal=252.1236).
FT−IR:ν(CH)=2985−2939,ν(C=O)アズラクトン=1826cm―1,ν(C=O)エステル=1720cm―1,ν(c=N)=1683cm―1
【0070】
《実施例5:2−(2−アジドプロパン−2−イル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)オンの合成》
2−(2−アジドプロパン−2−イル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)オンを以下の略図に従って調製する。
【0071】
5.1. 2−(2−ブロモプロパン−2−イル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン
この中間合成物をK.M. Lewandowskiらにより記載されている米国特許6894133号明細書(工程1及び2)中の手順に従って調製する。
【0072】
5.2. 2−(2−アジドプロパン−2−イル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン
以下の手順に従って得た(工程3):
マグネティックスターラーを備えた25mLのフラスコで、アルゴン雰囲気下で、無水DMF5ml中アジ化ナトリウム0.65グラム(0.01モル)の溶液を調製し、氷浴により冷却する。この混合物に、無水DMF2mL中2−(2−ブロモプロパン−2−イル)−4,4−ジメチルオキサゾル−5(4H)−オン2.34グラム(0.01モル)を含む溶液を滴下する。反応混合物を0℃で2時間、次いで周囲温度で16時間撹拌する。溶媒を減圧下で蒸発させる。残存物を酢酸エチルに取り、次いで溶液を濾過し臭化ナトリウムを除去する。得られた濾液を真空下で濃縮する。得られた黄色油状物を、n−ヘキサン次いでn−ヘキサン:酢酸エチルの6:4v/v混合物を用いたシリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色の油状物(0.84グラム、43%)を生成する。
H NMR(200MHz,CDCl,δppm):1.44ppm(s,6H,−C(CH),1.56ppm(s,6H,NC(CH)。
13C NMR(400MHz,CDCl,δppm):24.01Ppm(NC(CH),24.58ppm(−C(CH),59.26ppm(NC(CH),65.83ppm(−C(CH),163.88ppm(c=N),180.41ppm(C=O)。
【0073】
《実施例6:1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエートとリゾチームとのカップリングのプロセス》
マグネチックスターラーを備えたフラスコにおいて、ジメチルスルホキシド(DMSO、20.00mL)中リゾチーム溶液(228.4ミリグラム、16.0X10−6モル)を調製し、トリエチルアミン(TEA、0.30g、3.0X10−3モル)を添加する。周囲温度で30分間撹拌した後、DMSO(4.00mL)中1−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロオキサゾル−2−イル)エチルヘキサ−5−イノエート(0.695グラム、3.0X10−3モル)溶液を加え、反応混合物を周囲温度で24時間撹拌する。24時間後、濃塩酸(塩酸、37%、2ミリリットル)の混合物及び純水90mLを添加し、次に溶液をメタノール水溶液(体積において、水:メタノール= 8:2)に対して透析膜(カットオフ閾値=MWCO=3500)で24時間透析する。次に、生成物を凍結乾燥により回収する。
【0074】
最終生成物を、飛行時間質量分析(MALDI−TOF MS)により分析する。飛行時間質量分析結果は、反応はまた、反応後にm/z=17819を中心とする新しい信号の代わりにm/z=14357の最初のリゾチームピークが消滅していることを示す。
図1