特許第6262753号(P6262753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーリコン・トレイディング・アーゲー・トリューバッハの特許一覧

<>
  • 特許6262753-定形逐次電力分配用の電力分配器 図000002
  • 特許6262753-定形逐次電力分配用の電力分配器 図000003
  • 特許6262753-定形逐次電力分配用の電力分配器 図000004
  • 特許6262753-定形逐次電力分配用の電力分配器 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262753
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】定形逐次電力分配用の電力分配器
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20180104BHJP
   H01J 37/34 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C23C14/34 T
   H01J37/34
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-540067(P2015-540067)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公表番号】特表2015-536386(P2015-536386A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2013003251
(87)【国際公開番号】WO2014067650
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】102012021346.8
(32)【優先日】2012年11月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507269681
【氏名又は名称】エーリコン・サーフェス・ソリューションズ・アーゲー・プフェフィコン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・レンディ
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−129234(JP,A)
【文献】 特開平08−311647(JP,A)
【文献】 特開2010−065240(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/001723(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0262156(US,A1)
【文献】 特開2002−091576(JP,A)
【文献】 特開2009−232542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01J 37/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上のターゲットA、B、C、…、Xへ逐次、電力送出の中断なしに、DC発電機の実質的に一定の電力を分配することに適した電力分配器において、
前記電力分配器が、前記DC発電機の一方の出力端を前記3つ以上のターゲットA、B、C、…、Xの全てに接続する回路を備え、
前記DC発電機の他方の出力端が、オーム抵抗器RTを通った後、前記ターゲットの数に従って分枝し、各ターゲットA、B、C、...、Xが、前記分枝の1つに接続され、
前記分枝が、前記ターゲットにそれぞれ割り当てられたスイッチSA、SB、SC、…、SXを備え、前記スイッチによって、前記割り当てられたターゲットへのラインを遮断することができ
前記DC発電機が接続されるときは必ず、RC要素の回路が設けられ、前記要素が、スイッチSRCを介して前記DC発電機の両出力端に接続されることを特徴とする電力分配器。
【請求項2】
前記DC発電機の前記他方の出力端と前記オーム抵抗器RTとの間に、スイッチSTが設けられることを特徴とする、請求項1に記載の電力分配器。
【請求項3】
前記DC発電機の前記一方の出力端と前記他方の出力端との間に直接接続部を備え、前記直接接続部がスイッチSSCによって遮断されることを特徴とする、請求項2に記載の電力分配器。
【請求項4】
前記DC発電機が接続されるときは必ず、スイッチSDを介して前記DC発電機の両出力端に接続されるオーム抵抗器RDが設けられることを特徴とする、請求項3に記載の電力分配器。
【請求項5】
前記DC発電機が接続されるときは必ず、着火を支援する回路が設けられ、前記回路が、スイッチSIと、抵抗器RIと、コンデンサCIとを備え、前記抵抗器RIとコンデンサCIとが互いに並列に接続され、着火を支援する前記回路が、前記DC発電機の両出力端に接続されていることを特徴とする、請求項1又は4に記載の電力分配器。
【請求項6】
前記DC発電機が接続されるときは必ず、前記DC発電機の両出力端に接続される保護ダイオードTVS1が設けられることを特徴とする、請求項5に記載の電力分配器。
【請求項7】
前記スイッチの少なくとも1つ、好ましくは前記スイッチの2つ以上、特に好ましくは全ての前記スイッチが、IGBTとして整えられることを特徴とする、請求項6に記載の電力分配器。
【請求項8】
DC発電機と、2つ以上の、スパッタリングカソードとしてのターゲットとを備えるコーティング装置において、前記ターゲットが、請求項6に記載の電力分配器を介して前記DC発電機に接続できることを特徴とするコーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC発電機によって供給されるDC電力を、発電機の送電を中断する必要なしに、3つ以上の負荷に逐次的に分配することができるスイッチを対象とする。
【背景技術】
【0002】
発電機は、様々な用途に使用される。発電機の1つの適用分野は、いわゆるマグネトロンスパッタリングである。これは、マグネトロンの支援を受けて、イオンの衝突によって物質がターゲットからスパッタされるPVDコーティング方法である。そのとき、スパッタされた物質が、コーティングする基板に付着することができる。この従来のスパッタリング技術の欠点は、スパッタされた物質のイオン化度が低いことである。それがより高く、すなわちイオン化度がより有効であれば、基板のバイアスを利用して、スパッタされた物質を基板に向けてさらに加速することができる。極めて高い電流密度で初めて、スパッタリングにおいてスパッタされた物質に顕著なイオン化が生じる。高い電流密度を達成するのに必要な条件は、やはり大電力の供給であるが、それはターゲットの厳しい熱負荷を来す。これが、いわゆるHIPIMS法において、電力がターゲットにパルス状に加えられる理由である。これら高電力に関して、それぞれのパルス発生器を実現することは、やはり技術的に難しい。
【0003】
新規の方法によれば、ターゲットに必要な電力は、もはやパルス発生器によって供給されるのではなく、実質的に一定の電力を送出するDC発電機によって供給される。この方法によれば、3つ以上のターゲットが、そのDC発電機の電力を実質的に供給される。原理的に、これは、1つのターゲットから次のターゲットへ単純にスイッチを切り換えることによって実現することができる。しかしながら、この単純なスイッチの切換えではターゲットに重い負荷をかけ、その結果、作動時間の繰返し数が多くなり過ぎてしまうと、ターゲットの損傷が生じることが実際に明らかになっている。これは、殊に、スイッチ切換えによって生じる電力のピークに起因すると推測される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、DC発電機の高電力の送出を、高信頼度で、ターゲットに過剰に負荷することなく、DC発電機からの送出電力が実質的に一定になるように、逐次的に様々なターゲットに分配することができるスイッチ切換えの可能性を実現することが望ましい。
【0005】
これは、本発明の目的と一致する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、その目的は、請求項1に記載の電力分配器によって解決される。それによる電力分配器では、電力を、確実かつとりわけ穏やかに、様々なターゲットに逐次分配することができることが明らかになっている。
【0007】
本発明が、次いで、例を用い図面の助けを得て詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による電力分配器の一般的な概略回路図である。
図2】6つのターゲットに電力を分配することができる、本発明による電力分配器の概略回路図である。
図3】本発明による電力分配器を簡単な形で実現した概略回路図である。
図4】本発明による電力分配器のさらに別の実施形態による概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2の例では、AE Pinnacle(登録商標)がDC発電機として使用され、その発電機は、60kWのDC電力を送出する。最大で800Vを設定することができる。最大で150Aを流すことができる。図2による電力分配器は、DC発電機の出力端に接続されている。電力分配器の出力端にはそれぞれ別々の6つのターゲットが接続されている。図2に示される記号は、当業者には既知であり、したがって、さらに説明の必要はない。この電力分配器は、簡単な方式で、第1に、DC発電機の全電力を第1のターゲットに加え、所定の第1の時間間隔後、それを第2のターゲットに切り換え、所定の第2の時間間隔後、第3のターゲットに切り換え、次々に、第6のターゲットに電力を加えるまでそれを行うことが可能である。特に好ましいのは、本発明による電力分配器を用いて、第6のターゲットに給電した後、第1のターゲットに給電することを再開し、それによって新たなスイッチ切換えサイクルを再開することが可能になることである。それぞれの手順を複数回繰り返すことができる。
【0010】
大部分のDC発電機は、始動後即時には全電力を送出しない。電力確立間隔が生じる。本発明による電力分配器によって、電力確立間隔の間、電力を電力シンクに送出することができる。そのような電力シンクは、たとえば、単なるオーム抵抗器でよい。1つのスイッチ切換えサイクル後、すなわち最後のターゲットに給電した後、電力は、最初に電力シンクに導かれる必要はなく、スイッチ切換えサイクルは、直接第1のターゲットに電力を供給することができる。
【0011】
本発明による電力分配器は、さらに、いわゆるアーク放電の場合に、アーク放電が収まるまで電力を電力シンクへ逸らすために、役立てることができる。この場合にも、DC発電機による電力の送出は中断されず、さらに別の電力確立間隔が生じることになる。
【0012】
図3は、本発明の第1の実施形態の概略図を示す。それによれば、DC発電機は、点線の3角形によって示されている。本例では、DC発電機の正出力は、個々の接続部によって全てのターゲットA〜Xと直接接続されている。DC発電機の負出力は、同様に、スイッチSTを介して全てのターゲットに電気接続され、スイッチSTの下流にはオーム抵抗器RTが設けられている。ただし、ターゲットAへの接続は、スイッチSAによって遮断することができる。ターゲットBへの接続は、スイッチSBによって遮断することができる。それぞれのスイッチSC〜SXが、さらに他のターゲットにも設けられている。
【0013】
使用中、スイッチSTは閉じられる。続いて、さらにたとえばSAが閉じられる。それによって、DC発電機の電圧がターゲットAに加わる。電力が送出される結果になる。たとえば、ターゲットA上にプラズマを着火することができ、その結果スパッタリングプロセスがターゲットAで発生する。ターゲットAに送電することによって、そのターゲットが極めて急速に加熱される。ターゲットAが加熱され過ぎる前に、たとえばターゲットBをスイッチSBによって接続することができる。同時または好ましくは直後に、スイッチSAが開かれると、プラズマが、ターゲットAからターゲットBへ移り、全電力の送出がターゲットBへ行われる。ターゲットBが加熱され過ぎる前に、スイッチSCによってターゲットCを作動に加えることができ、ターゲットBはスイッチSBによって切り離される。同様に、それが、残りのターゲットについて最後のターゲットXまで続く。ターゲットXが加熱され過ぎる前に、スイッチSAが再び閉じられ、同時にまたは好ましくは直後に、スイッチSXが開かれる。それによって、新たなスイッチ切換えサイクルが開始される。所望の数だけのスイッチ切換えサイクルが、次々と実施される。このように、ターゲットは、周期的にかつ短時間だけ電力を負荷され、他のターゲットに電力が順次負荷されている間、より長い冷却時間を有する。DC発電機による電力送出は、その間、実質的に一定のままである。冷却時間が、所望の温度までターゲットを冷却するのに十分でない場合、1つまたは複数のスイッチ切換えサイクル後、電力送出は、たとえばスイッチSTによって完全に中断することができる。
【0014】
図3には、スイッチSSCがさらに示されている。このスイッチが閉じられると、DC発電機の2つの出力端間に短絡が成立する。この種のDC発電機は、通例、短絡の場合のためにそれぞれ安全装置を有し、その安全装置が、それぞれ作動して停止に至らせる。スイッチSSCは、不具合の場合のためにそれぞれ設けられる。それによって、迅速な停止が可能になる。
【0015】
好ましくは一部の、そして特に好ましくは全てのスイッチが、絶縁ゲート電極を有するバイポーラトランジスタ(IGBT)として実現される。これが、図4に示されている。
【0016】
さらに、図4には、保護ダイオードTVS1が示されており、そのダイオードはDC発電機の両出力端に直接接続されている。それによって、他の構成要素が、過度に高い電圧ピークから保護される。
【0017】
図4には、DC発電機の両出力端にスイッチSDを介して接続されているオーム抵抗器RDが、さらに示されている。そのスイッチがIGBTによって実現されている場合、ダイオードの極性に注意を払うべきであり、その極性は、他のスイッチのダイオードの極性と同じではない。このいわゆる疑似負荷が、電力シンクの、上記で既に言及した2つの機能を果たす。それについて、抵抗器RDは、たとえば並列のオーム抵抗器など、様々なオーム抵抗器によって実現することができる。
【0018】
図4には、RC要素の回路がさらに示されており、そこでは、オーム抵抗器RRC、コンデンサCRC、およびスイッチSRCが直列に接続されている。このRC要素は、DC発電機の両出力端に接続され、電力変動を平滑化することができる。この場合にも、抵抗器RRCおよび/またはコンデンサCRCは、2つ以上の別々の要素によって実現することができる。
【0019】
さらに、図4には、スイッチSI、抵抗器RI、およびコンデンサCIを備える着火支援回路が示されており、そこでは、抵抗器RIとコンデンサCIとは互いに並列に接続されている。回路のこの部分は、極めて高い電圧を短時間発生させることを可能にし、それによって、プラズマを着火することができる。
【0020】
図4には、一方の側でDC発電機の正出力端に直接接続され、他方の側で抵抗器RTとターゲットスイッチSA〜SXとの接続部に接続される別の保護ダイオードTVSSがさらに示されている。この接続部は、図4に示されるように、スイッチSSを介してDC発電機の負出力端に接続することができる。
【0021】
抵抗器およびコンデンサの値の例は、
RD:9オーム
RRC:9オーム
RI:2kオーム
RT:2kオーム
CRC:1μF
CI:3μF
である。
【0022】
再度、以下の点が言及されるべきであり、それらの1つ、2つ以上、または全てが、本発明を達成するために実現される。
【0023】
a) 3つ以上のターゲットA、B、C、…、Xへ逐次、電力送出の中断なしに、DC発電機の実質的に一定の電力を分配することに適した電力分配器において、電力分配器が、DC発電機の一方の出力端を3つ以上のターゲットA、B、C、…、Xの全てに接続する回路を備え、DC発電機の他方の出力端が、オーム抵抗器RTを通った後、ターゲットの数に従って分枝し、各ターゲットA、B、C、...、Xが、それら分枝の1つに接続され、それら分枝がそれぞれ、1つのターゲットにそれぞれ割り当てられたスイッチSA、SB、SC、…、SXを備え、それらスイッチによって、割り当てられたターゲットへのラインを遮断することができることを特徴とする電力分配器が、説明された。
【0024】
b) a)項で言及の電力分配器は、DC発電機の他方の出力端とオーム抵抗器RTとの間に、スイッチSTを備え得る。
【0025】
c) a)項またはb)項に言及の電力分配器は、DC発電機の一方の出力端と他方の出力端との間に直接接続部を有し得、その直接接続部はスイッチSSCによって遮断される。
【0026】
d) a)、b)またはc)項で言及の電力分配器は、オーム抵抗器RDを備え得、そのオーム抵抗器は、DC発電機が接続されるときは必ず、スイッチSDを介してDC発電機の両出力端に接続される。
【0027】
e) a)、b)、c)またはd)項で言及の電力分配器は、RC要素の回路を設けることができ、その要素は、DC発電機が接続されるときは必ず、スイッチSRCを介してDC発電機の両出力端に接続される。
【0028】
f) a)、b)、c)、d)またはe)項で言及の電力分配器は、着火を支援する回路を設けることができ、その回路は、スイッチSIと、抵抗器RIと、コンデンサCIとを備え、抵抗器RIとコンデンサCIとが互いに並列に接続され、着火を支援するその回路は、DC発電機が接続されるときは必ず、DC発電機の両出力端に接続される。
【0029】
g) a)、b)、c)、d)、e)またはf)項で言及の電力分配器は、DC発電機が接続されるときは必ず、DC発電機の両出力端に接続される保護ダイオードTVS1を設けることができる。
【0030】
h) a)、b)、c)、d)、e)、f)またはg)項で言及の電力分配器では、スイッチの少なくとも1つ、好ましくはスイッチの2つ以上、特に好ましくは全てのスイッチが、IGBTとして実現される。
【0031】
i) a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)またはh)で言及の電力分配器はコーティング装置の一部になり得、そのコーティング装置は、DC発電機と、スパッタリングカソードとして実現された2つ以上のターゲットとを備え、ターゲットは、その電力分配器を介してDC発電機に接続できる。
【符号の説明】
【0032】
1〜n ターゲット
A〜X ターゲット
CI コンデンサ
CRC コンデンサ
RD オーム抵抗器
RI 抵抗器
RRC オーム抵抗器
RT オーム抵抗器
SA〜SX ターゲットスイッチ
SD スイッチ
SI スイッチ
SRC スイッチ
SS スイッチ
SSC スイッチ
ST スイッチ
TVS1 保護ダイオード
TVSS 保護ダイオード
図1
図2
図3
図4