(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、識別のシステム2を表している。システム2は、認識される磁性物体4と、磁性物体の自動認識のための装置6と、を有している。
物体4は、装置6内においていかなる自由度も有さずに固定されたX、Y、Zの直交関係フレーム内で自由に移動できる。ここで、X及びY方向は水平であり、Z方向は垂直である。
【0007】
典型的には、物体4は、X、Y、Z関係フレーム内にある人の手によって直接的に自由に移動可能である。この目的のために、物体4は、一般的に、10kgよりも軽い、好ましくは、1kg又は250gよりも軽い重さである。例えば、物体4の寸法は、十分に小さく、ユーザによって片手で握って移動させることができる。
物体4は、1つ又はそれ以上の計測可能な磁気双極子を有している。各磁気双極子は、地球の磁界の線を変更する強磁性体又はフェリ磁性体からなる構成要素に対応している。好ましくは、この構成要素は、永久磁石である。永久磁石は、たとえ外部の磁界が無い場合でも、0でない磁気モーメントを示す。例えば、永久磁石は、磁気材料からなり、その抗磁界は100A.m
−1または500A.m
−1よりも大きい。この永久磁石の力は、0.01A.m
2又は0.1A.m
2よりも大きいのが好ましい。また、永久磁石の力間、夫々、物体の最強及び最弱、の比は、10又は5より小さいことが好ましく、有利には、2又は1.5よりも小さく又は1に等しいのが好ましい。事実、これが、物体4の認識を容易化することが発見された。また、物体4に含まれる磁気双極子の数は、認識できる物体の数を増加させるために、2又は4以上であるのが好ましい。しかし、物体につき単一極子であってもよく、この場合、磁気モーメントの大きさを計測する精度が認識の信頼性を増加させる最大値となっている。
物体4の磁気双極子は、物体4内において相互に関して移動不可能である。例えば、それらは、物体4のフレームに対し、いかなる自由度も無く固定されている。例えば、このフレームは、非磁性材料からなる。非磁性材料は、装置6によって計測可能ないかなる磁気特性も示さない。磁気双極子が物体4に固定されると、これら双極子間の相対距離、および、これら双極子の磁気モーメント間の角度は一定となる。同様に、この実施例では、物体4内部における磁気双極子の大きさ及び数は、一定と仮定される。
【0008】
図1を簡略化するために、2つの磁気双極子10及び12だけが物体4内に表されている。
物体4は、例えば、複数の永久磁石が設けられた、携帯電話、携帯コンピュータ、ペンシル、あるいは、1つ又はそれ以上の磁気双極子を有する任意の物体である。携帯電話の場合、2つの磁気双極子は、夫々、電話のマイクロフォン及び拡声器によって形成されている。事実、これらの構成要素は、永久磁石を有している。
装置6は、XYZ関係フレームにおいて、物体4の磁気双極子の位置を特定するために用いることができる。位置は、ここで、XYZ関係フレームの各双極子の位置x
k、y
k、z
kを決定するために引用し、また、XYZ関係フレームのX、Y、及びZ軸に関して磁気双極子の夫々の磁気モーメントの方向を決定するために引用する。ここで、添え字kは、物体4の全磁気双極子間の磁気双極子を識別している。例えば、球座標に表現された、磁気双極子kの方向は、この双極子の磁気モーメントの角度θ
k及びφ
kによって表される。
【0009】
装置6は、Nの3軸の磁石計M
ijの配列を有している。
図1において、垂直波線が、装置6の部分が表されていないことを示している。
典型的には、Nは、5よりも大きく、16又は32よりも大きいのが好ましい。ここで、Nは64以上である。
この実施例では、磁石計M
ijは、行及び列に合わせられており、マトリックスを形成している。ここでは、このマトリックスは8行及び8列を有している。添え字i及びjは、夫々、磁石計M
ijが位置する交点でのこのマトリックスの行及び列を示している。
図1において、1行の磁石計M
i1、M
i2、M
i3、M
i4、及びM
i8のみを見ることが出来る。相互に関して磁石計M
ijの位置は、
図2を参照して、より詳細に記載されている。
【0010】
各磁石計M
ijは、他の磁石計に対していかなる自由度も無く固定されている。この目的のために、磁石計M
ijは、剛体プレート20の裏面22上にいかなる自由度も無く固定されている。この剛体プレートは、物体4に向いた表面24をを有している。プレート20は、剛性の非磁性材料からなる。例えば、プレート20は、ガラスからなる。
各磁石計M
ijは、物体4によって変えられる磁界の方向及び大きさを計測する。このために、各磁石計M
ijは、この磁石計の3つの計測軸上におけるこの磁石計M
ijでの磁界の正投影のノルムを計測する。ここで、3つの計測軸は、相互に直交している。例えば、磁石計M
ijの夫々の計測軸は、関係フレームのX、Y、Z軸に夫々平行である。磁石計M
ijの感度は、例えば、4
*10
−7Tである。
【0011】
各磁石計M
ijは、情報を送信するために、バス28を介して処理装置30に接続されている。
処理装置30は、
図5の方法を実行できる。特に、それは、磁石計M
ijの計測から、XYZ関係フレームにおける物体4の複数の双極子の位置及び方向を決定できる。例えば、装置30は、情報記憶媒体に記録された指令を実行できるプログラム可能な電子コンピュータ32を有している。装置30は、したがって、
図5の方法のコンピュータ32によって実行するための必要な指令を含むメモリ34も有している。特に、同一の磁性物体に含まれるであろう磁気双極子の各数Pのために、装置30は、磁石計M
ijの各計測と、XYZ関係フレームにおけるPの磁気双極子の磁気モーメントの位置、方向及び大きさと、が関係する数学モデルM
pを実行する。各モデルM
pは、第1のセットの変数がPの磁気双極子の位置及び方向、および、これら双極子の磁気モーメントの大きさを表している、方程式のシステムの形式となっている。第2のセットの変数は、磁石計M
ijの計測を表している。Pの磁気双極子の磁気モーメントの位置、方向及び大きさを得るために、第1のセットの変数は、未知であり、第2セットの変数の値は既知である。このモデルは、典型的に、電磁気の物理の方程式から構成される。このモデルのパラメータは、磁石計M
ij間の既知の距離によって設定される。このモデルを構成するために、各永久磁石は、磁気双極子によって近似されている。仮に、永久磁石と磁石計Mijとの距離が2Lよりも大きい、好ましくは、3Lよりも大きい、Lは20cmよりも小さく、好ましくは10又は5cmよりも小さい、場合、この近似は、ほんの少しだけの誤差しか生じない。
【0012】
ここで、モデルM
pは非線形である。この装置30は、解を推定するためにあるアルゴリズムを実行することで、その解を解く。例えば、使用されるアルゴリズムは、“unscented Kalman Filter”として知られているカルマンフィルタである。
各磁気双極子が、その位置を決定するための3つの変数、その方向を決定するための2つの変数、および、その磁気モーメントの大きさを決定するための1つの変数、によって特徴付けられる場合、Nの磁石計の配列によって同時に配置され得る磁気双極子の最大数は、N/2よりも小さい。従がって、数Pの値は、N/2以下であり、かつ、好ましくは、冗長な計測を有するために、N/5又はN/10又はN/20である。計測の冗長は、双極子を配置する精度を改善するために使用できる。
【0013】
この実施例で、3つの数学モデルM
1、M
2、M
3のみが装置30内で実行されている。
装置30は、既知の物体の磁気特性のデータベース36と比較することで、装置6の前に出された磁性物体を認識することもできる。このデータベース36は、
図3を参照してより詳細に記載されている。
図2は、装置6の磁石計M
ijの部分を表している。これら磁石計M
ijは、X方向に平行に、行iで並べられている。これら磁石計は、Y方向に平行に列jでも並べられており、マトリックスを形成している。行i及び列jは添え字が増加する順で配列されている。
磁石計配列によって占められる領域は、典型的に、100m
2より小さく、好ましくは、5m
2又は1m
2又は50cm
2よりも小さい。
磁石計M
ijの中心は、行i及び列jの交点に位置する。磁石計の中心は、磁界がこの磁石計によって計測される点である。ここで、添え字i及びjはインターバル[1;8]にある。行iに沿った2つの隣接し連続した磁石計M
ij及びM
i、J+1の中心は、既知の距離d
i、j、j+1で分離されている。同様に、同一の列jに沿った2つの隣接し連続した磁石計M
ij及びM
i+1、jの中心は、既知の距離d
j、i、i+1で分離されている。
【0014】
ここで述べられている特別なケースでは、行iに無関係に、距離d
i、j、j+1が同一である。この距離は、このように、d
jによって表されている。同様に、列jに無関係で、2つの磁石計間の距離d
j、i、i+1は同一である。この距離は、このように、d
jによって表されている。
ここで、距離d
i及びd
jは両方ともdに等しい。
Pの磁気双極子の夫々を形成する各永久磁石の力が2A.m
2又は1A.m
2又は0.5A.m
2よりも小さく、及び、好ましくは0.1A.m
2又は0.2A.m
2よりも大きく、磁石計の感度が4
*10
−7Tであり、かつ、磁石計M
ijの数が64である場合、典型的に、距離dは、1及び4cmの間である。
図3は、より詳細に、データベース36を表している。このデータベース36は、複数の既知の磁性物体の磁気特性を含んでいる。ここで、それは、テーブルの形式で表されている。
【0015】
各既知の物体のために、データベース36は、列40において、この既知の物体の識別子“m”を有している。識別子“m”は、データベース36に記録されたセットの既知の物体間で、この既知の物体を、特有に識別する。各識別子“m”は、データベース36とこの既知の物体の磁気特性とによって関連付けられている。
物体の磁気特性は、データベース36にリストされたセットの既知の物体間で、この物体を識別するための弁別的特徴を、有している。
ここで、各既知の物体“m”は、グループから選択される1つまたはそれ以上の弁別的特徴と関連している。そのグループは、既知の物体“m”に含まれる磁気双極子の数Ns
mと、既知の物体“m”の異なる磁気双極子間の相対距離Ds
mと、既知の物体“m”の異なる磁気双極子の磁気モーメントの大きさAs
mと、相互に関して、既知の物体“m”の異なる磁気双極子の磁気モーメントの相対方向Os
mと、からなる。
【0016】
上表記において、添え字“m”は、既知の物体の識別子である。
磁気モーメントの大きさ、磁気双極子の数、相対距離、および相対方向は、夫々、データベース36の列50、44、46及び48に記録されている。
図3において、波線はデータベース36の部分だけが表されていることを示している。
図4は、既知の磁性物体の異なる弁別的特徴を示している。ここで、既知の磁性物体は、物体4と同一であり、かつ、それは、識別子“m”の数値“1”によって識別されてると、仮定する。
【0017】
この
図4において、次の表記が用いられる。
O
1、O
2は、磁気双極子10及び12の夫々中心である。
m
1及びm
2は、磁気双極子10及び12の夫々磁気モーメントに対応するベクトルである。
ここで、磁気双極子の中心は、磁気双極子に対応する永久磁石の慣性の中心又は重心と一致する、と仮定する。ベクトルm
1及びm
2の方向は、磁気双極子10及び12の夫々の磁気モーメントと平行である。これらベクトルm
1及びm
2の長さは、磁気双極子10及び12の夫々の磁気モーメントの大きさに等しい。
【0018】
ここで、弁別的特徴Ds
1は、対の距離d
10及びd
12によって形成される。d
10は、中心O
1と、ベクトルm
1に垂直でかつ中心O
2を通り抜ける平面と、の間の最短距離に等しい。距離d
12は、中心O
2と、ベクトルm
2に垂直でかつ中心O
1を通り抜ける平面と、の間の最短距離に等しい。
相対方向Os
1は、ベクトルm
1及びm
2の間の角度である。
大きさAs
1は、双極子10及び12の夫々の磁気モーメントの対の大きさA
1及びA
2によって形成される。
物体4の場合において、磁気双極子の数は、2に等しい。
磁性物体が2つの磁気双極子だけを有する特別な場合で丁度説明されているものは、3つ又はそれ以上の磁気双極子を有する磁性物体の場合にも容易に適用可能である。
【0019】
磁性物体が単一の磁気双極子を有する場合において、列46及び48は空となり、かつ、磁性物体は、この磁気双極子の双極子の数Ns
mおよび大きさAs
mからのみ識別され得る。
システム2の動作は、
図5の方法を参照して、今、説明されるであろう。
この方法は、データベース36で複数の既知の磁性物体の磁気特性を記録し、既知の物体の識別子とこれら特性の夫々とを関連付ける、フェーズ70で始まる。
これに対し、例えば、ステップ72において、既知の物体は面24の前に配置される。このステップでは、位置または所定方向に従って、この既知の物体を位置および方向付ける必要はない。反対に、物体の位置及び方向は、全くいずれでもよい。
そして、ステップ74では、磁石計M
ijは、同時に、既知の物体が存在する中で、磁界を計測する。
次に、ステップ76では、装置30は、磁石計M
ijの計測から、既知の物体の磁気双極子の夫々の磁気モーメントの位置、方向及び大きさと、この既知の物体の磁気双極子の数と、を決定する。
【0020】
このために、動作78では、装置30は、1つの磁気双極子に対し、モデルM
1の方程式のシステムを解く。それは、この既知の物体に含まれる磁気双極子に対する、1セットの座標x
1、y
1、z
1、θ
1及びφ
1及び大きさA
1を得ることとなる。
それから、動作80において、装置30は、―磁石計によって計測され、方程式M
1のシステムから及び動作78の結論で得られる位置、方向及び大きさから計算された値の推定値と、―ステップ74で取得された磁石計の計測の値と、の間の差異を表す誤差E
1を計算する。
モデルを解くために使用されるアルゴリズムが拡張したカルマンフィルタである場合において、動作78における方程式のこのシステムの解は、誤差E
1の推定も与える。
ステップ78及び80は、P=1からP=3に対して行われる。好ましくは、ステップ78及び80は、Pの各値に対して、平行に行われる。
【0021】
それから、動作88では、装置30は、最小誤差E
pを与えるモデルM
pで得られた結果を選択する。このように、既知の物体が単一の永久磁石を有する場合、装置30は自動的にモデルM
1を選択する。既知の物体が2つ、3つの永久磁石を夫々有する場合、装置30は、そのとき、自動的に、モデルM
2、モデルM
3を夫々選択する。
このステップ76の結論で、磁性物体の磁気双極子の数、これら磁性双極子の夫々の位置、方向及び大きさは、決定される。
ステップ90において、装置30は、動作88で選択された位置、方向、及び大きさから既知の物体の弁別的特徴を計算する。これら弁別的特徴の計算は、
図4を参照して与えられる説明から導き出される。
【0022】
最後に、ステップ92において、装置30は、データベース36に、ステップ90で計算された異なる弁別的特徴と関連する識別子“m”の値を、記録する。異なる記録された弁別的特徴は、そのとき、この既知の物体の磁気特性を構成する。
ステップ72から92は、既知物体が含む磁気双極子の位置、方向、及び大きさが異なる多数のその既知の物体に対して、繰り返される。
データベース36は、既知の物体の複数の磁気特性によって、その中が占められると、未知の物体の自動認識のフェーズ100が実行される。以降、説明を簡略化するために、この未知の物体は、物体4であると仮定する。
【0023】
フェーズ100は、ステップ92がステップ102から108で置き換わる以外は、フェース70と同一である。結果として、これらステップ102から108のみが、今、詳細に説明されるであろう。
ステップ102では、装置30は、物体4のために計算された弁別的特徴と、データベース36に夫々予め記録された磁気特性に含まれる弁別的特徴と、を比較する。例えば、計測された弁別的特徴と、データベース36の予め記録された弁別的特徴と、が誤差ε以内で等しい場合、これら弁別的特徴は一致している、と考えられる。例えば、誤差εのマージンは、±1%又は±5%又は±10%に等しい。
【0024】
ステップ102で、物体4がデータベース36に予め記録された磁気特性の1つに対応することが確立された場合、そのとき、ステップ104で、この特性に対応する既知の物体の識別子が記録される。ここで、認識される物体の識別子は、大きさQの列で記録される。逆に、ステップ102で、物体4がデータベース36に記録された磁気特性のいずれにも対応しないことが確立された場合、そのとき、ステップ106で、装置30は、物体4が認識されていないことに従った情報を記録する。ここで、値0が列に記録され、識別子“m”は記録されない。
ステップ72から106は、Q回繰り返される。例えば、Qは、10、20又は30以上である。
【0025】
そして、同一物体が ステップ72から106のQ繰返しの50%、75%又は95%よりも多くで、認識された場合、ステップ108で、装置30は、物体4が認識されたことを示し、かつ、典型的に、既知の物体の識別子を供給する。そうでなければ、ステップ108で、装置30は、物体4が認識されなかったことを示す。例えば、認識された物体の識別子は、マン−マシーンインタフェースを介して、ユーザに伝達される。
面24の前で、フェーズ70又は100の過程の磁性物体の存在において、磁性物体は移動不可能である必要はない。それは、フェーズ70又は100のスッテップの2つの連続的な繰返し間で移動するかもしれない。磁性物体は、また、全くいかなる位置及び方向で存在してもよい。これは、明確な特量は、磁性物体の位置及び方向に従って変化しないという事実によるものである。物体は、センサ配列の近くにとどまるのが好ましい。
多くの他の実施例が可能である。例えば、磁石計の計測は、初期に記録されてもよい。そして、ステップ76から108は、磁性物体が磁石計配列の面24の前にもはや存在しないときに、後に行われる。同様に、
図5の方法は、複数の電子コンピュータに広げられてもよい。例えば、ステップ90から108は、ステップ76のみを実行するコンピュータ32から分離した、プログラム可能な電子コンピュータによって行われてもよい。
【0026】
記録することのフェーズ70は、異なって行われてもよい。例えば、弁別的特徴は、装置6以外の装置によって供給される測定値から計算される。例えば、磁気双極子の相対距離は、データベース36にそのとき記録されたルーラを用いて計測され得る。既知の物体の磁気双極子の磁気モーメントの方向及び大きさは、磁石計M
ijの配列のそれら以外の磁石計を用いて、計測されてもよい。
磁性物体の認識は、弁別的特徴のうちの1つのみを用いて、あるいは、前記した弁別的特徴のうちの一部のみを用いて、実行されてもよい。例えば、大きさAs
m、あるいは、相対距離Ds
mのみが、用いられる。
弁別的特徴は、説明されたもと異なっていてもよい。例えば、この弁別的特徴は、磁気双極子間の相対的な大きさであってもよい。事実、他の弁別的特徴のように、この弁別的特徴は、磁性物体の位置及び方向に依存していない。
【0027】
相対距離、相対方向、及び磁気モーメントの大きさ、又は磁気双極子の数は、全て、時間に渡って一定である、必要はない。磁性物体の弁別的特徴の1つが時間に渡って変化する場合、この物体の特性は、時間に渡って変化しない物体4の弁別的特徴と、時間に渡って変化できず、この物体の認識のために使用される、唯一のこれらの弁別的特徴と、を有するのみである。例えば、磁気モーメントの1つの大きさは、物体4に動力が与えられ或いは物体4のスイッチがオンにされた状態と、物体4のスイッチをオフにされ或いは物体4に動力が与えられない状態と、の間の時間に渡って、変化してもよい。この場合、この磁性物体を認識するために、磁気双極子の磁気モーメントの相対距離又は相対方向のみが用いられる。後の場合で、他の解決は、データベース36に、物体のスイッチがオンにされたときのその物体の第1磁気特性と、物体のスイッチがオフにされたときの第2特性と、を記録することにある。このように、物体を認識することに加えて、これは、また、スイッチがオフにされ、あるいは、オンにされるかのいずれかを示してもよい。
弁別的特徴は、前に説明されたものとは異なって、計算されてもよい。例えば、2つの磁気双極子間の相対距離は、距離d
10及びd
12ではなく、これら2つの磁気双極子の中心間の最短距離の値によって表されてもよい。
【0028】
動作88では、誤差E
pが所定閾値より小さくなるために使用された第1モデルM
pで得られた結果が選択されてもよい。
磁石計の計測値を磁性物体の双極子の位置、方向、及び大きさに結び付ける、方程式のシステムを解くために使用される推定アルゴリズムは、拡張されたカルマンフィルタ以外であってもよい。例えば、それは、LMAアルゴリズム(“レーベンバーク-マーカート アルゴリズム”)を含んでいてもよい。カルマンフィルタ以外の推定アルゴリズムの場合、誤差E
pは異なって計算されてもよい。この場合、動作80は、動作80又は84によって置き換えられる(
図5において点線によって表される)。
動作82において、装置30は、動作78で使用されるモデルM
pの直接的なモデルを解く。換言すると、この動作で、その値が既知である方程式の変数は、磁気双極子の位置及び大きさを表す変数であり、その値が未知である変数は、磁石計M
ijの夫々の計測値を表す変数である。
【0029】
動作84において、装置30は、動作82で推定された計測値とステップ74で取得された計測値との差を計算する。この差の絶対値は、誤差E
pを構成する。
計測された弁別的特徴と予め記録された磁気特性とを比較する多くの他の方法は、可能である。例えば、装置30は、各磁気特性に対して、計測された弁別的特徴と予め記録された弁別的特徴との差を計算し、そして、認識される物体は、この差が最小となるための既知の物体である、と考えられる。
ステップ108において、物体に対応する既知の物体を識別することから得た結果は、説明されたあるいは省略されたものとは異なって、取り除かれてもよい。取り除かれることが省略される場合、列が省略され、そして、繰返しの数Qは、例えば1に等しい。これにより、特に、認識方法は高速化される。例えば、磁石計の精度がステップ80の各繰返しで正確な認識を可能とするのに十分である場合、後の実施例が好ましい。
【0030】
最小誤差E
pを示すモデルの選択は、また、省略されてもよい。例えば、1つの特別な実施例において、単一のモデルMpは、体系的に用いられる。これは、予め認識される全ての物体が磁気双極子の一定の数Pを有しているということが既知の場合に、認識装置を簡略化するために使用され得る。
磁気双極子は、永久磁石以外の何かで生成されてもよい。例えば、磁気双極子は、地球の磁界と、柔らかい磁性材料からなる認識される物体の構成要素と、の間の相互作用によって生成されてもよい。磁性材料の抗磁界が10又は1A.m
−1よりも小さい場合、その磁性材料は、柔らかいと考えられる。
認識される物体の永久磁石は、この物体の動作に関与してもよい。これは、例えば、永久磁石が拡声器及びマイクロフォンの永久磁石である場合である。しかし、変形として、永久磁石は、装置6によってその認識を可能にするために、認識される物体に加えられてもよい。例えば、永久磁石は、装置6が鉛筆と消しゴムとを識別できるように、これら用具の夫々の上で異なる位置で鉛筆及び消しゴムに対して、加えてもよい。