(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262767
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】インバータを駆動する方法、及びスイッチング損失を低減するように構成されたインバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20180104BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
H02M7/48 P
H02M7/48 E
H02M3/28 Q
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-548874(P2015-548874)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-502396(P2016-502396A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】IB2013061221
(87)【国際公開番号】WO2014097261
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月9日
(31)【優先権主張番号】TO2012A001112
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515168798
【氏名又は名称】アンサルドブレダ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ ブサット
(72)【発明者】
【氏名】ルイージ フラテッリ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ イアヌッツォ
(72)【発明者】
【氏名】カルミネ アバーテ
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−174563(JP,A)
【文献】
特開平07−322634(JP,A)
【文献】
米国特許第5963436(US,A)
【文献】
特開平11−069838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ(1)のスイッチングを制御する方法であって、ブリッジ(2)は、チョッピングされた電圧を変圧器(5)の一次側(L1)に供給するため、直流電圧源(4)からの電圧をチョッピングするように構成され;前記インバータ(1)は、負荷(M)に給電するチョッパ(7)に対して供給される電圧を実現するために、前記変圧器(5)の二次側(L2)から入力電圧を受け取るダイオード整流回路(6)を備え;
前記ブリッジ(2)は、少なくとも第1ブランチ(8)と第2ブランチ(9)とを備え、各ブランチは、互いに直列に配置された一対の電子スイッチ(8A、8B及び9A、9B)で形成され;前記電子スイッチ(8A、8B及び9A、9B)の共通端子は、前記一次側(L1)の端子に接続され;各電子スイッチ(8A、8B及び9A、9B)には、並列に配置された再循環ダイオード(10A、10B及び11A、11B)が提供され、
前記方法は、
−前記電力供給源(4)が前記一次側(L1)から切断して、前記一次側の端子が前記電子スイッチ及び前記再循環ダイオードの少なくとも2つにより相互に接続し、前記変圧器の前記二次側(L2)に存在する電圧がヌルとなるように、前記ブリッジ(2)の前記スイッチを駆動するステップと;
−前記チョッパの前記電子スイッチの開閉によるスイッチング損失を最小化するために、前記第1/第2ブランチ(8、9)の2つの部品により端末が互いに短絡接続している前記一次側(L1)には前記電圧(4)が印加されないという理由で前記二次側の前記電圧が実質的にヌルである時に、前記チョッパのブランチの少なくとも1つの電子スイッチをスイッチングすることと
の実行を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
第1端子を有するコンデンサ(43)は、前記整流回路(6)からの第1線(16)と接続し、第2端子は前記整流回路(6)からの第2線(17)とダイオード(46)を介して接続し、これにより、前記コンデンサ(43)は低力率条件において負荷Mからの電流で充電することが可能になり、それによって第1線と第2線(16と17)に対する過電圧が防止され;前記方法は、蓄積されたエネルギーを回収するために、前記コンデンサ(43)から前記負荷(M)に向けて放電することにより、前記ダイオード(46)と並列に配置されたスイッチ(47)を閉じるステップを含み、それによって回路効率を高める、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チョッパのブランチの前記電子スイッチが一旦閉じて、前記チョッパ自体の前のパターンが修正されると、前記チョッパの給電線(16、17)間に前記コンデンサ(43)を配置するために、前記スイッチ(47)が閉じ、それによってパターン変化に起因する誘導効果に起因する電圧変化を防止する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
インバータ(1)であって、
前記インバータのブリッジ(2)は、チョッピングされた電圧を変圧器(5)の一次側(L1)に供給するために源(4)からの直流電圧をチョッピングするように構成され;前記インバータ(1)は、負荷(M)に給電するチョッパ(7)に供給される電圧を実現するため、前記変圧器(5)の二次側(L2)から入力電圧を受け取るダイオード整流回路(6)を備え;前記ブリッジ(2)は、少なくとも第1ブランチ(8)と第2ブランチ(9)を備え、各ブランチは、互いに直列に配置された一対の電子スイッチ(8A、8B及び9A、9B)からなり;前記電子スイッチ(8A、8B及び9A、9B)の共通端子は前記一次側(L1)の端子と接続し;各電子スイッチ(8A、8B及び9A、9B)には、並列に配置された再循環ダイオード(10A、10B及び11A、11B)が提供され、
前記インバータは、前記電力供給源(4)が前記一次側(L1)から切断するステップ(ステップ4)において前記ブリッジ(2)の前記スイッチを駆動するように構成された、前記ブリッジ及び前記チョッパの電子制御手段を備えることを特徴とし、前記ステップにおいて、前記変圧器の二次側(L2)に存在する電圧がヌルとなるように、前記一次側の端子が前記電子スイッチ及び前記再循環ダイオードの少なくとも2つにより相互に接続し、
前記電子制御手段は、前記チョッパの前記電子スイッチの開閉に起因するスイッチング損失を最小化するために、前記第1/第2ブランチ(8、9)の2つの部品により端末が互いに短絡接続している前記一次側(L1)には前記電圧(4)が印加されないという理由で前記二次側の前記電圧が実質的にヌルである時に、前記負荷(M)に給電するための前記チョッパのブランチの少なくとも1つの電子スイッチをスイッチングするように構成されている、
インバータ(1)。
【請求項5】
前記インバータにコンデンサ(43)が含まれ、前記コンデンサは、前記整流回路(6)からの第1線に接続する第1端子と、ダイオード(46)を介して前記整流回路(6)からの第2線に接続する第2端子とを有し、これにより、前記コンデンサ(43)は低力率条件において負荷Mからの電流で充電することが可能になり、それによって第1線と第2線(16と17)に対する過電圧が防止され;前記電子制御手段は、蓄積されたエネルギーを回収するために、前記コンデンサ(43)から前記負荷(M)に向けて放電することにより、前記ダイオード(46)と並列に配置されたスイッチ(47)を閉じるように構成され、それによって回路効率を高める、請求項4に記載のインバータ。
【請求項6】
前記インバータにスナバコンデンサ(50)が含まれ、前記スナバコンデンサは、前記整流回路(6)からの第1線(16)に接続する第1端子と、前記整流回路(6)からの第2線(17)に接続する第2端子とを有し、これにより、前記負荷(M)に向かって負の電流が存在していても、前記チョッパ(5)の前記スイッチをゼロ電圧(ZV)にスイッチングすることを可能にする、請求項4に記載のインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータを駆動する方法、及びスイッチング損失を低減するように構成されたインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のインバータとして、変圧器の一次側に交流電圧を供給するために、直流電圧源からの電圧をチョッピングするように構成されたブリッジ(例えばHブリッジ)を備え;更に、平準化された電圧をチョッパに供給して、このチョッパから負荷に給電することを実現するために、変圧器の二次側から入力交流電圧を受け取るダイオード整流−平準化回路を備えたインバータが知られている。チョッパは一般に、複数の並列ブランチを備え(2段階、3段階、又は4段階以上の異なるチョッパ構造が可能)、その各々は一対の電子半導体スイッチからなり、各一対の半導体スイッチは、直列に配置され、整流−平準化回路からの正電源線と負電源線の間に置かれる。チョッパの電子スイッチ群の共通端子は負荷の電源線と連通し、チョッパの各電子スイッチには、並列に配置された再循環ダイオードも供給される。
【0003】
チョッパの電子スイッチのスイッチングは、ある特定の負荷給電プログラムを操作する電子ユニットにより制御される(例えば、負荷が電気モータである場合、モータの回転速度及びモータ自体が供給する電力を設定し調整することができる)。
【0004】
既知の電子ユニットは、多くの動作条件下において、チョッパスイッチ自体の両端に電圧が存在する状態で、チョッパスイッチのスイッチングを制御するが、このような動作の結果、半導体の物理的性質から知られているように、スイッチング損失のかなりの部分に寄与する電力損失が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インバータを制御する方法、及び上記スイッチング損失が最小化されるインバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、インバータのスイッチングを制御する方法に関する本発明により達成され、この方法において、チョッピングされた電圧を変圧器の一次側に供給するため、直流電圧源からの電圧をチョッピングするようにブリッジが構成され;上記インバータは、負荷に給電するチョッパに対して供給される電圧を実現するために、変圧器の二次側から入力電圧を受け取るダイオード整流回路を備え、上記ブリッジは、少なくとも第1ブランチと第2ブランチとを備え、各ブランチは、直列に配置された一対の電子スイッチからなり;電子スイッチの共通端子は、上記一次側の端子に接続され;各電子スイッチには、並列に配置された再循環ダイオードが提供され、上記方法は、電力供給源が上記一次側から切断して、上記一次側の端子が上記電子スイッチ及び上記再循環ダイオードの少なくとも2つにより相互に接続し、上記変圧器の二次側に存在する電圧がヌルとなるように、上記ブリッジのスイッチを駆動するステップと;上記チョッパの上記電子スイッチの開閉によるスイッチング損失を最小化するために、二次側の電圧が実質的にヌルである時に、上記チョッパのブランチの少なくとも1つの電子スイッチをスイッチングすることと、の実行を含むことを特徴とする。
【0007】
特に、第1端子を有するコンデンサが整流器からの第1線と接続し、第2端子は整流器からの第2線とダイオードを介して接続し、これにより、コンデンサは低力率条件において負荷Mからの電流で充電することが可能になり、ゆえに第1線と第2線に対する過電圧が防止され;上記方法は、蓄積されたエネルギーを回収するために、ダイオードと並列に配置されたスイッチを閉じることにより、コンデンサを負荷に向けて放電するステップを含み、ゆえに回路効率が高まる。
【0008】
更に、スナバコンデンサが提供され、スナバコンデンサの第1端子が整流器からの第1線に接続し、第2端子が整流器からの第2端子に接続し、これにより、負荷に向かって負の電流が存在していても、上記チョッパの全てのスイッチをゼロ電圧にスイッチングすることができる。
【0009】
次に、本発明の好適な実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の方法に従って動作するインバータを示す図である。
【
図2】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【
図3】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【
図4】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【
図5】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【
図6】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【
図7】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【
図8】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【
図9】本発明の方法により操作される連続的ステップの一ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、参照数字1は、本発明の駆動方法が適用される本発明のインバータ1全体を指す。
【0012】
具体的には、インバータ1はHブリッジ2を備え、Hブリッジ2は、チョッピングされた電圧を変圧器5の一次側L1に供給するため、直流電圧源4からの電圧(例えばV=1500ボルト)をチョッピングするように構成されている。インバータ1は更に、ダイオード整流回路6を備え、ダイオード整流回路6は、三相チョッパ7に供給する電圧を実現するため、変圧器5の二次側L2から入力交流電圧を受け取り、この例では、三相チョッパ7は三相負荷M(例えば電機モータ)に給電する。
【0013】
より詳細には、Hブリッジ2は第1ブランチ8と第2ブランチ9とを備え、それぞれ、直列に配置された一対の電子スイッチ8A、8B及び9A、9B(例えばMOS)からなる。電子スイッチ8A、8B及び9A、9Bの共通端子は一次側L1の端子に接続し、他方、ブランチ8、9の反対側は直流電圧源4の正端子/負端子に接続している。
【0014】
各電子スイッチ8A、8B及び9A、9Bには、並列に配置され既知の方法で動作する再循環ダイオード10A、10B及び11A、11Bが設けられている。
【0015】
整流回路6は第1ブランチ12と第2ブランチ13とを備え、それぞれ、直列に配置された一対のダイオード14A、14B及び15A及び15Bからなる。ダイオード14A、14B及び15A、15Bの共通端子は二次側L2の端子に接続し、他方、ブランチ12、13の反対側は、それぞれ正電源線16と負電源線17に接続している。
【0016】
線16と線17の間にスナバコンデンサ50が配置されている。
【0017】
三相チョッパ7は、線16と線17の間に置かれた第1ブランチ、第2ブランチ、及び第3ブランチ21、22、23を備える。
【0018】
各ブランチ21、22、23は、直列に配置された一対の電子スイッチ25A、25B−26A、26B−27A、27B(例えばMOS)を備え;負荷Mに給電するための第1線、第2線、第3線31、32、33は、スイッチ25A、25B−26A、26B−27A、27Bの共通端子から分岐している。
【0019】
三相チョッパ7は、スイッチ25A、25B−26A、26B−27A、27Bの各々に対して、並列に配置され既知の方法で動作する再循環ダイオード35A、35B−36A、36B−37A、37Bを備える。
【0020】
Hブリッジ2のスイッチ8A、8B及び9A、9Bのスイッチング、並びにスイッチ25A、25B−26A、26B−27A、27Bのスイッチングは、本発明の方法に従って動作する制御ユニット40により制御される。
【0021】
大容量を有するコンデンサ43は、第1線(例では負の線17)に接続する第1端子と、クランプダイオード46を通じて第2線(正の線16)に接続する第2端子とを有し、これによりコンデンサ43は、負荷Mが誘導性タイプである場合に、負荷Mからの電流で充電することができる(この場合について下記で例示する)。
【0022】
電子スイッチ47(例えばMOS)がダイオード46と並列に配置されており、前に蓄積されたエネルギーを効率よく回収するために、電子スイッチ47を閉じることにより、コンデンサ43は負荷Mに向かって放電することができる。
図2〜9は、本発明の方法によるスイッチング動作の実現可能な順序を示したものであり、これらの図を活用して本発明の方法の動作を例示する。
【0023】
ステップ1(
図2)。(スイッチ8Bと9Aは開いたまま)スイッチ8Aと9Bが閉じて、電源4の電圧Vが一次巻線L1に印加される。
【0024】
二次巻線L2に電圧kV(kは変圧器5の変圧比)が誘導されて、ダイオード14A、15Bが導通している回路6により電圧kVが整流される。スイッチ25B、26A、27Aの閉鎖(その他のスイッチは開いている)により、線16と線17に存在する電圧がモータMに印加される。図示されている開閉スイッチは単純化したものであり、図示以外の開閉スイッチでよいことは明らかである。
【0025】
ステップ2(
図3)。(スイッチ8Bと9Aが開いた状態で)スイッチ8Aは閉じたまま、スイッチ9Bが開く。巻線L1における電流を持続させるため、スイッチ8A及び導通する再循環ダイオード11Aで形成されるメッシュ内で一次側L1の電流が閉鎖する。したがって、変圧器の二次側L2の電圧はゼロになり、線16と線17に存在する電圧もゼロになる。スナバコンデンサ50が、線16、17及びスイッチ25B、26A、27Aを通じて負荷に対して放電する。三相チョッパ7のスイッチの配置は、ステップ1の配置と同等のままである。
【0026】
ステップ3(
図4)。スイッチ9Aを閉じる操作が開始し(点線で表示)、再循環ダイオード11Aが導通しているので、電圧がゼロに等しい状態でスイッチ9Aが閉じる。ダイオード15A、15Bを通じて線16、17の電圧が消滅する。三相チョッパ7のスイッチの配置は、ステップ1の配置と同等のままである。
【0027】
ステップ4(
図5)。Hブリッジ2の配置に変化はない。本発明によれば、線16と線17の間の電圧がゼロに近くなると、三相チョッパの少なくとも1つのブランチが制御され(この例では、前に閉じていたスイッチ26Aが開制御され、前に開いていたスイッチ26Bが閉制御されるが、他のスイッチング動作も可能であることは明らかである)、その理由は、Hブリッジにおいて、直流電圧源4が変圧器5の一次側に印加されず、変圧器5の両端がブリッジ2の2つの部品(この例では、スイッチ8Aと、再循環ダイオード11A又はスイッチ9A)で互いに接続しているからである。線32の電流が負荷に向かって正である場合、ダイオード36Bが導通し、ゆえに電圧がゼロの間にスイッチ26Bが始動できる。この例において線32の電流が負荷に向かって負である場合、線16、17の電圧がまだ低い間に、スナバコンデンサ50により、スイッチ26Bにおける電流のゼロイングが可能になる。したがって、電圧がゼロ又はほぼゼロの時に、いかなる場合もブランチのスイッチングが発生するので、損失が非常に少ない。
【0028】
ステップ5(
図6)。ステップ4に記載の前のパターン変化の発生時に、漏れインダクタンスに起因して、且つ巻線L2の初期電流に基づいて、クランプダイオード46を直接極性化するまで線16の電圧が上昇することがあり得る。この場合は、線16と線17の間の電圧を制限する(大容量値の)コンデンサ43が過剰電荷を吸収する。特に、コンデンサ43の両端の電圧が調整され、出力正弦曲線のピーク値で一定に保たれる。
【0029】
この場合、スイッチ47を閉じることと、線16と線17の間にコンデンサ43を配置することにより、後に再開されるように、コンデンサ43に蓄積した過剰電荷が回収され、次のサイクルにおいて、コンデンサ43のエネルギーが再び負荷Mに戻るので、高いエネルギー効率が得られる。
【0030】
ステップ6(
図7)。一次巻線L1に流れる電流の方向を逆にするため、Hブリッジ2のスイッチ8Aを開きスイッチ8Bを閉じる。
【0031】
ステップ7(
図8)。最初に、一次側L1の以前の磁化を前提として、ダイオード10B、11Aに電流が流れる。しかし、L1が初期電流に対して反対方向の電圧を受けるため、L1は消磁し、L1を通じて流れる電流は、スイッチ9Aと8Bによりステップ1の方向と逆になり、結果として、二次側L2の両端の電圧もステップ1の電圧に対して逆になる。ステップ1と同様のステップから上記サイクルが繰り返されるが、Hブリッジ2のスイッチ群の構成に従い、対称形のサイクルとなる。次の反復サイクルでは、スイッチ8Bとダイオード11B(又はスイッチ9B)により一次側の端子が閉じて、線16と線17の間の電圧がゼロに等しくなった時、ブランチ21、22、23のスイッチ群のいずれかが操作される。
【0032】
このように、上記の方法により、コンバータ1全体のスイッチング損失を著しく減少させることができる。実際、従来のトポロジーであるいわゆるハードスイッチングと比較して、チョッパ5の全てのスイッチについてZV(ヌル電圧)にスイッチングすることから、チョッパ5のスイッチングは損失なしに発生する。(既知のタイプの)位相シフト手法で駆動されるHブリッジ2のスイッチにも同じことが当てはまるので、本質的にZV(ヌル電圧)にスイッチングすることが可能になる。
【0033】
図4のステップ4の説明は、単に性質が抵抗性の負荷Mに関するものである。これに対して、誘導性負荷Mが存在する場合、例えば力率が0.866未満の誘導性負荷の存在下では、ステップ4の間、負荷Mからコンバータ1に向かって線31、32、33に沿って電力潮流が生じることがあり、このような現象が発生すれば、線16、17上に誘導過電圧が生じることになる。したがって、ステップ4において、公称電圧より潜在的に高い電圧でブランチのスイッチングが発生することとなり、結果としてチョッパスイッチが崩壊することがあり得る。このような欠点はダイオード46の存在で解決され、ステップ4において、容量値の大きいコンデンサ43と共に線16と線17の間の電圧を制限する。次のステップでスイッチ47が閉じると、コンデンサ43が負荷Mに向けて放電する(
図9)。