特許第6262779号(P6262779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262779サルアデノウイルスの核酸配列及びアミノ酸配列、それを含有するベクター、並びにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262779
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】サルアデノウイルスの核酸配列及びアミノ酸配列、それを含有するベクター、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180104BHJP
   C07K 14/075 20060101ALI20180104BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20180104BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180104BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180104BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180104BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20180104BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 39/235 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/075
   C12N7/01
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K38/16
   A61K48/00
   A61K35/761
   A61K39/39
   A61K39/235
   A61P31/12
【請求項の数】22
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2016-19877(P2016-19877)
(22)【出願日】2016年2月4日
(62)【分割の表示】特願2011-546719(P2011-546719)の分割
【原出願日】2010年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-152801(P2016-152801A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年3月7日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2009/000672
(32)【優先日】2009年2月2日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/172,624
(32)【優先日】2009年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/174,852
(32)【優先日】2009年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/266,342
(32)【優先日】2009年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100176083
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 祐子
(72)【発明者】
【氏名】コロカ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ニコシア,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】コルテーゼ,リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】アメンドラ,ヴィルジニア
(72)【発明者】
【氏名】アンブロシオ,マリア
【審査官】 伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−511035(JP,A)
【文献】 特表2007−518414(JP,A)
【文献】 特表2004−537300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アデノウイルスファイバータンパク質をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチド:
(a)配列番号16に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(b)配列番号16のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド、
(ii)アデノウイルスヘキソンタンパク質をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチド:
(c)配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(d)配列番号22に記載のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド、ならびに(iii)アデノウイルスペントンタンパク質をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチド:
(e)配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(f)配列番号28のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド
を含んでなる、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
以下のものをさらに少なくとも1つ含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド:
(a)アデノウイルス5’末端;
(b)アデノウイルスE1a領域、又は13S領域、12S領域及び9S領域の中から選択されるその断片;
(c)アデノウイルスE1b領域、又はスモールT領域、ラージT領域及びIX領域からなる群の中から選択されるその断片;
(d)アデノウイルスE2b領域、又はスモールpTP領域、ポリメラーゼ領域及びIVa2領域からなる群の中から選択されるその断片;
(e)アデノウイルスL1領域、又は28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノタンパク質、52/55kDaタンパク質及びIIIaタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(f)アデノウイルスL2領域、又はVIIタンパク質、Vタンパク質及びMuタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片; (g)アデノウイルスL3領域、又はVIタンパク質およびエンドプロテアーゼからなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(h)アデノウイルスE2a領域;
(i)アデノウイルスL4領域、又は100kDタンパク質、33kDホモログ及びVIIIタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(j)アデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及びE3 ORF9からなる群から選択されるその断片;
(k)アデノウイルスL5領域;
(l)アデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群から選択されるその断片;及び/又は
(m)アデノウイルス3’末端。
【請求項3】
(a)のアデノウイルス5’末端がアデノウイルス5’逆方向末端反復である、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
(m)のアデノウイルス3’末端がアデノウイルス3’逆方向末端反復である、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号65からなる配列と、又は配列番号65からなるが、配列番号65のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1に記載の単離ポリヌクレオチドによってコードされる単離アデノウイルスカプシドポリペプチド。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項8】
ベクターがE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4からなるゲノム領域の群から選択されるゲノム領域に遺伝子を含まないか、及び/又はE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4の群から選択されるゲノム領域の少なくとも1つの遺伝子を含み、前記少なくとも1つの遺伝子が、該少なくとも1つの遺伝子を非機能的にする欠失及び/又は突然変異を含む、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、及び/又は請求項1の単離ポリヌクレオチド(i)、(ii)または(iii)のいずれかに記載の少なくとも1つのアデノウイルスカプシドポリペプチドを含む組換えアデノウイルスであって、
組換えアデノウイルスが標的細胞への送達のための分子を含む、組換えアデノウイルス。
【請求項10】
組換えアデノウイルスが複製不全アデノウイルスである、請求項9に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項11】
ヒト被験体における血清陽性率が5%未満であり、および/または、哺乳動物細胞に感染することが可能である、請求項9又は10に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項12】
アデノウイルスがヒト被験体において血清陽性率を有しない、請求項11に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項13】
標的細胞への送達のための分子が、抗原タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドである、請求項9〜12のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項14】
アジュバント及び以下の(i)〜(iv)の少なくとも1つを含む組成物:
(i)請求項6に記載のアデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;
(iii)請求項7又は8に記載のベクター;
(iv)請求項9〜13のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項15】
薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含んでなる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
アジュバントが、I型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、TNF受容体、転写因子として作用するビタミンD受容体、並びにToll様受容体1(TLR1)、TLR−2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR−6、TLR7及びTLR9からなる群から選択される受容体の作動薬である、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
アジュバントがToll様受容体4又は9の作動薬である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
以下のものの少なくとも1つを含む細胞:
(i)請求項6に記載のアデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;
(iii)請求項7又は8に記載のベクター;
(iv)請求9〜13のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項19】
E1a、E1b、E2a、E2b、E4、L1、L2、L3、L4及びL5からなる群から選択されるアデノウイルス遺伝子を少なくとも1つ発現する宿主細胞である、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
疾患の治療又は予防に用いるための、請求項6に記載の単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;請求項7又は8に記載のベクター;請求項9〜13のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス;及び/又は請求項15もしくは16に記載の組成物を含んでなる、医薬組成物。
【請求項21】
疾患の治療又は予防がワクチン接種である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
疾患の治療が遺伝子療法である、請求項21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清陽性率が改善された新規のアデノウイルス株に関する。一態様では、本
発明はヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質等のアデノウ
イルスカプシドタンパク質の単離ポリペプチド、並びにその断片、並びにそれをコードす
るポリヌクレオチドに関する。本発明による単離ポリヌクレオチドを含むベクター、並び
に本発明による単離ポリヌクレオチド又は単離ポリペプチドを含むアデノウイルス、並び
に上記ベクター、アデノウイルス、ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含む医薬
組成物も提供される。本発明は、疾患の療法又は予防法への単離ポリヌクレオチド、単離
ポリペプチド、ベクター、アデノウイルス及び/又は医薬組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アデノウイルス(Ad)は、非エンベロープ正20面体カプシド構造を有する、両生類
、鳥類及び哺乳類に見られる二重鎖DNAウイルスの大きなファミリーを構成している(
非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。レトロウイルスとは対照
的に、アデノウイルスは宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく、幾つかの哺乳動物種
の多数の細胞型(分裂細胞及び非分裂細胞の両方を含む)に形質導入することができる。
【0003】
概して、アデノウイルスDNAは典型的には非常に安定であり、形質転換又は腫瘍形成
が起こらない限り、エピソーム性(例えば染色体外性)であり続ける。加えて、アデノウ
イルスベクターは、臨床グレードの組成物の製薬規模の生産に容易に適用可能である、明
確に定義された生産システムにおいて高収率で増殖させることができる。これらの特性及
びよく特徴付けられたその分子遺伝学のために、組換えアデノウイルスベクターはワクチ
ン担体としての使用に対する有力な候補である。組換えアデノウイルスベクターの生産は
、機能しないように欠失させた又は改変したアデノウイルス遺伝子産物の機能を補完する
ことが可能なパッケージング細胞株の使用に依存し得る。
【0004】
現在、よく特徴付けられた2つのヒト亜群Cアデノウイルス血清型(すなわち、hAd
2及びhAd5)が、遺伝子療法に使用される大半のアデノウイルスベクターのウイルス
骨格の供給源として広く使用されている。複製欠損ヒトアデノウイルスベクターも、様々
な感染因子に由来する様々な免疫原の送達のためのワクチン担体として試験されている。
実験動物(例えば齧歯類、イヌ及び非ヒト霊長類)において行われた研究から、免疫原及
び他の抗原をコードする導入遺伝子を運搬する組換え複製欠損ヒトアデノウイルスベクタ
ーが、導入遺伝子産物に対する体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方を引き起こすこ
とが示される。概して、研究者らは、免疫応答を引き起こすことが予想される組換えアデ
ノウイルスベクターを高用量で利用する免疫化プロトコルを用いるか、又は異なる血清型
に由来するが、同じ導入遺伝子産物を運搬するアデノウイルスベクターの連続投与をブー
スト免疫化として採用する免疫化プロトコルを用いることにより、非ヒト実験系において
ヒトアデノウイルスベクターをワクチン担体として使用することの成功を報告している(
非特許文献5)。
【0005】
ヒトアデノウイルス5型(Ad5)ベースのウイルスベクターが、種々の遺伝子療法及
びワクチン適用に対して開発されている。Ad5ベースのベクターは動物モデルにおいて
は極めて効率的であるが、ヒトにおいてAd5野生型ウイルスに対する既存の免疫が存在
することが、遺伝子形質導入の効率を低下させることが臨床試験において実証されている
。特に、Ad5ベクターに基づくワクチン臨床試験に参加する被験体において、200を
超える中和抗体力価で、免疫化効率の明らかな低下が実証された。Ad5ベクターワクチ
ン(vectored vaccine)の最も広範な特性化は、Merckによって行われたHIVワクチン
のSTEP試験において得られた(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Straus, Adenovirus infections in humans; The Adenoviruses, 451-498,1984
【非特許文献2】Hierholzer et al.,J. Infect. Dis., 158: 804-813, 1988
【非特許文献3】Schnurr and Dondero, Intervirology., 36:79-83, 1993
【非特許文献4】Jong et al., J. Clin. Microbiol., 37: 3940-3945: 1999
【非特許文献5】Mastrangeli, et.al., Human Gene Therapy, 7: 79-87 (1996)
【非特許文献6】Moore JP et al. Science. 2008 May 9; 320(5877): 753-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このワクチン研究は、HIV感染リスクの高い被験体における概念研究を証明するもの
として、異なるHIV抗原を発現する3つのAd5ベクターの同時注入に基づいていた。
このデータによって驚くべきことに、予防効果ではなく、ワクチン接種した被験体(Ad
5に対する既存の免疫を有する)におけるHIV感染率の増加が明らかとなった。この矛
盾した観察結果についての機構は未だ明らかではないが、この結果から、健常な被験体に
おけるワクチン適用に対して、ヒト起源のアデノウイルスをベースとするベクターの安全
性及び効率に関するさらなる問題が提起された。種々のワクチン療法及び遺伝子療法にお
いてこれまでに得られた全ての結果を総合すると、Ad5ベクターを用いた試験等の臨床
試験において、ヒトにおける既存の免疫が非常に低いか、又は存在しないことを特徴とす
るアデノウイルスの必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、アデノウイルスファイバータンパク質又はその機能的誘導
体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドを提供す
る:
(a)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれかに記載
のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれかに記載
のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導
体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド
;並びに
(c)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれかのアミ
ノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘
導体をコードするポリヌクレオチド。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、アデノウイルスヘキソンタンパク質又はその機能的誘導
体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドに関する

(a)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれかに記載
のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれかに記載
のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導
体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド
;並びに
(c)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれかのアミ
ノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘
導体をコードするポリヌクレオチド。
【0010】
本発明によりアデノウイルスペントンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、か
つ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドも提供される:
(a)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれかに記載
のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれかに記載
のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導
体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド
;並びに
(c)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれかのアミ
ノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘
導体をコードするポリヌクレオチド。
【0011】
本発明はまた、上で概説した本発明による単離ポリヌクレオチドを少なくとも1つ含む
ポリヌクレオチドにも関する。本発明はさらに、本発明による単離ポリヌクレオチド、又
はその機能的誘導体によってコードされる単離アデノウイルスカプシドポリペプチドを提
供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、本発明による単離ポリヌクレオチドを含むベクターを提
供する。
【0013】
本発明による単離ポリヌクレオチド、及び/又は少なくとも1つの本発明による単離ア
デノウイルスカプシドポリペプチドを含む組換えアデノウイルス、好ましくは複製不全ア
デノウイルスも提供される。
【0014】
本発明のさらなる態様は、アジュバント及び以下の(i)〜(iv)の少なくとも1つ
を含む組成物である:
(i)1つ又は複数の本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)本発明による単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス;及び、
任意で、薬学的に許容可能な賦形剤。
【0015】
本発明はさらに、以下のものの少なくとも1つを含む細胞に関する:
(i)1つ又は複数の本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)本発明によるの単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス。
【0016】
本発明のさらなる態様は、疾患の療法又は予防法への、本発明による単離アデノウイル
スカプシドポリペプチド;本発明による単離ポリヌクレオチド;本発明によるベクター;
本発明による組換えアデノウイルス;及び/又は本発明による組成物の使用に関する。
【0017】
以下の図面は本発明の一例にすぎず、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の
範囲を限定するとは決して解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1-1】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
図1-2】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
図1-3】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
図1-4】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
図2-1】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のファイバータンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
図2-2】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のファイバータンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
図2-3】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のファイバータンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
図3-1】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のペントンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
図3-2】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のペントンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
図3-3】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のペントンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
図4】野生型ウイルスゲノム及び対応するシャトルプラスミドとの相同組換えによる複製欠損アデノウイルスベクターの構成図である。実施例2も参照されたい。
図5-1】HIV gagタンパク質の発現のための発現カセット(配列番号1)を含む、組換えアデノウイルスをワクチン接種したマウスにおける細胞性免疫応答を示す図である。組換えヒトAd5及びチンパンジーChAd55のワクチン接種効力を比較した。免疫応答は、Balb/CマウスにおいてマッピングされたCD8 HIV gagエピトープを有する細胞をインキュベートすることによる、インターフェロン−γ ELIspotアッセイによって測定した。結果は、脾細胞10個当たりのスポット形成細胞の数として報告した。
図5-2】HIV gagタンパク質の発現のための発現カセット(配列番号1)を含む、組換えアデノウイルスをワクチン接種したマウスにおける細胞性免疫応答を示す図である。組換えヒトAd5並びにボノボPanAd1、PanAd2及びPanAd3アデノウイルスのワクチン接種効力を比較した。免疫応答は、Balb/CマウスにおいてマッピングされたCD8 HIV gagエピトープを有する細胞をインキュベートすることによる、インターフェロン−γ ELIspotアッセイによって測定した。結果は、脾細胞10個当たりのスポット形成細胞の数として報告した。
図6】ヨーロッパ人起源のヒト血清のパネルに対し、新規のアデノウイルスベクターの血清陽性率を評価した結果を示す図である。ヒトアデノウイルス5型(Ad5)及びチンパンジーアデノウイルスChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2、PanAd3及びCV−68の血清陽性率を、同じパネルに対し並行して評価した。データは免疫発生(immunoprevalence)を示す被験体の%として表す。中和抗体はAd5及びCV−68アデノウイルスについてのみ検出され、本発明の新規のアデノウイルスのいずれについても検出されなかった。
図7-1】BALB/cマウスのPanAd HSV免疫化を示す図である。
図7-2】BALB/cマウスのPanAd癌Ag免疫化を示す図である。
図8】プライミング/ブーストワクチン接種実験における、カニクイザル(Macacafascicularis)のPanAd HIV gag免疫化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を下記で詳細に説明する前に、本明細書中に記載される特定の方法論、プロトコ
ル及び試薬は変わることがあるため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい
。本明細書中で使用される専門用語が、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、
添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するも
のではないことも理解されたい。特に規定のない限り、本明細書中で使用される全ての技
術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
好ましくは、本明細書中で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechn
ological terms: (IUPACRecommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B.and Klbl,
H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel,Switzerland)に記載されるよ
うに、"Pharmaceutical Substances:Syntheses, Patents, Applications" Axel Kleemann
and Jurgen Engelによる, Thieme Medical Publishing, 1999、"MerckIndex: An Encyclo
pedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals",Susan Budavari et al.編, CRCPress, 1
996、及びUnited States Pharmacopeia-25/NationalFormulary-20, the United States P
harmcopeialConvention, Inc., Rockville Md.により出版, 2001に記載されるように定義
される。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を
除き、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(compr
ising)」等の変化形は、記載の特徴、整数若しくは工程、又は特徴、整数若しくは工程
の群を含むが、任意の他の特徴、整数若しくは工程、又は特徴、整数若しくは工程の群を
排除することを意味しないことが理解されよう。以下の節では、本発明の種々の態様がよ
り詳細に定義される。そのように定義される各々の態様は、そうではないことが明らかに
示されない限り、任意の他の態様(単数又は複数)と組み合わせてもよい。特に、好まし
い又は有利であると示される任意の特徴を、好ましい又は有利であると示される任意の他
の特徴(単数又は複数)と組み合わせてもよい。
【0022】
幾つかの文献が本明細書の本文全体を通して引用される。上記又は下記を問わず本明細
書中に引用される各々の文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、
取扱説明書等を含む)は、その全体が参照により本明細書中に援用される。本明細書中の
記載のいずれも、本発明が先行発明に基づいてかかる開示に先行する権利がないことを認
めるものと解釈されるものではない。
【0023】
以下で、本明細書中で頻繁に使用される用語の定義を幾つか提示する。これらの用語は
、その使用の各々の例において、本明細書の残りの部分で、それぞれ定義される意味及び
好ましい意味を有するものとする。
【0024】
概して、アデノウイルスゲノムはよく特徴付けられている。同様に位置した特異的オー
プンリーディングフレーム、例えば各々のウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、
E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5遺伝子の位置に関して、アデノウイルスゲ
ノムの全体構成の全体的保存が見られる。アデノウイルスゲノムの各々の末端(extremit
y)は、ウイルス複製に必要とされる逆方向末端反復(ITR)として知られる配列を含
む。ウイルスは、感染性ビリオンを産生するのに必要とされる一部の構造タンパク質のプ
ロセシングに必要とされるウイルスコードプロテアーゼも含んでいる。アデノウイルスゲ
ノムの構造は、宿主細胞への形質導入に続いてウイルス遺伝子が発現される順序に基づい
て記載される。より具体的には、ウイルス遺伝子は、転写がDNA複製の開始の前に起こ
るか、又は後に起こるかに応じて初期(E)遺伝子又は後期(L)遺伝子と称される。形
質導入の初期段階では、アデノウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE
4遺伝子がウイルス複製に向けた宿主細胞の準備をするために発現される。感染の後期に
おいては、ウイルス粒子の構造成分をコードする後期遺伝子L1〜L5の発現が活性化さ
れる。
【0025】
以下の表1は、本明細書中で言及される配列の概要を提示するものである:
【0026】
【表1】
【0027】
本明細書中で使用される場合、「単離(isolated)」分子という用語は、それが天然に
関連する他の分子を実質的に含まない分子を指す。単離した分子はしたがって、天然で、
すなわち実験的状況の外部で生きている動物においてそれが接近又は接触し得る他の分子
を含まない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「
ペプチド(peptides)」及び「ポリペプチド(polypeptides)」という用語は、全体を通
して区別なく使用される。これらの用語は天然ペプチド、例えば天然タンパク質、及び天
然アミノ酸又は非天然アミノ酸を含み得る合成ペプチドの両方を指す。ペプチドは、天然
アミノ酸又は非天然アミノ酸の側鎖又は遊離アミノ末端若しくはカルボキシ末端を修飾す
ることによって化学修飾されていてもよい。この化学修飾には、さらなる化学的部分の付
加及びアミノ酸の側鎖中の官能基の修飾(グリコシル化等)が含まれる。ペプチドは、好
ましくは少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20
個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70
個、75個、80個、85個、90個、95個又は少なくとも100個のアミノ酸、最も
好ましくは少なくとも8個又は少なくとも30個のアミノ酸を有する重合体である。本明
細書中で開示されるポリペプチド及びタンパク質はアデノウイルスに由来するため、本明
細書中で使用される単離ポリペプチド又は単離タンパク質の分子量は200kDaを超え
ないことが好ましい。
【0029】
「ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、プラスミドベクター、コス
ミドベクター、ラムダファージ等のファージベクター、アデノウイルス(Ad)ベクター
(例えば、従来技術、例えば国際公開第2005/071093号から知られる非複製A
d5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5
、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、
ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd2
6、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChA
d63及びChAd82ベクター又は複製可能Ad4及びAd7ベクター)、アデノ随伴
ウイルス(AAV)ベクター(例えばAAV5型)、αウイルスベクター(例えば、ベネ
ズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林熱ウ
イルス(SFV)及びVEE−SINキメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイル
スベクター、ポックスウイルスベクター(例えばワクシニアウイルス、改変ワクシニアウ
イルスアンカラ(MVA)、NYVAC(ワクシニアウイルスコペンハーゲン株に由来す
る)、並びにアビポックスウイルスベクター:カナリア痘ウイルス(ALVAC)ベクタ
ー及び鶏痘ウイルス(FPV)ベクター)及び水疱性口内炎ウイルスベクター等のウイル
スベクター、ウイルス様粒子又は細菌胞子を含む当業者に既知の任意のベクターを含む。
ベクターには、発現ベクター、クローニングベクター、及び宿主細胞において組換えアデ
ノウイルスを生成するのに有用なベクターも含まれる。
【0030】
「発現カセット」という用語は、その転写調節配列及び翻訳調節配列と共に発現される
少なくとも1つの核酸配列を含む核酸分子を指す。発現カセットを変更することによって
、それが組み込まれるベクターに別の配列又は配列の組み合わせの発現を指示させる。制
限部位(5’末端及び3’末端に存在するように改変することが好ましい)のために、カ
セットは容易に挿入、除去するか、又は別のカセットと置き換えることができる。好まし
くは、発現カセットは、下記でさらに記載されるプロモーター、開始部位及び/又はポリ
アデニル化部位等の所与の遺伝子の効率的な発現のためのcis調節要素を含む。
【0031】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の両方、すなわち
、抗原又はハプテンに結合することが可能な任意の免疫グロブリンタンパク質又はその一
部分を指す。抗原結合部分は組換えDNA技法、又は無傷抗体の酵素的切断若しくは化学
的切断によって作製することができる。幾つかの実施形態では、抗原結合部分はFab、
Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAb、及び相補性決定領域(CDR)変異体
、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体(diabodies)、
及びポリペプチドに特異的抗原結合をもたらすのに十分な抗体の少なくとも一部分を含有
するポリペプチドを含む。
【0032】
本発明の文脈内で哺乳動物において免疫応答を誘発する/発生させるための免疫原/抗
原の投与は「プライミング」と称され、哺乳動物において上記免疫原/抗原に対する免疫
応答を増強するための免疫原/抗原、例えば特定の病原体(ビリオン又はウイルス病原体
、病原性細菌の抗原又は腫瘍抗原等)の投与は「ブースト」と称される。「異種プライム
−ブースト」という表現は、哺乳動物において免疫応答を誘発する/発生させる(プライ
ミング)ためのベクターと、哺乳動物において免疫応答を増強する(ブースト)ためのベ
クターとが異なることを意味する。「異種プライム−ブースト」は被験体、例えば患者が
第1のベクターに対する抗体を既に生じており、ブーストが必要とされる場合に有用であ
る。したがって、異種プライム−ブーストの好ましい実施形態では、例えばワクチン接種
及び/又は遺伝子療法のために2つの異なるアデノウイルスが使用され得る。この文脈に
おいては、第1のアデノウイルスによるプライミングにおいて誘発される抗体応答によっ
て、ブーストのために投与される第2のアデノウイルス粒子の70%超、又は好ましくは
80%超が、プライミング及びブーストを受けた動物の細胞の核内に侵入することが妨げ
られない場合、第1及び第2のアデノウイルスは十分に異なるとされる。
【0033】
「複製可能」組換えアデノウイルス(AdV)という用語は、細胞中に含まれる任意の
組換えヘルパータンパク質の非存在下で、宿主細胞において複製することのできるアデノ
ウイルスを指す。好ましくは、「複製可能」アデノウイルスは、以下の無傷の又は機能的
に必須の(functional essential)初期遺伝子を含む:E1A、E1B、E2A、E2B
、E3及びE4。特定の動物から単離した野生型アデノウイルスは、その動物において複
製可能である。
【0034】
「複製欠損」組換えAdVという用語は、少なくとも機能的欠失、すなわち遺伝子を完
全に除去することなくその遺伝子の機能を損なう欠失、例えば人工停止コドンの導入、活
性部位若しくは相互作用ドメインの欠失若しくは突然変異、遺伝子の調節配列の突然変異
若しくは欠失等、又はウイルス複製に必須の遺伝子産物をコードする遺伝子(E1、E2
、E3及びE4から選択されるアデノウイルス遺伝子の1つ又は複数等)の完全除去を含
むように改変されたために複製不能となったアデノウイルスを指す。本発明の組換えチン
パンジーアデノウイルスベクターは好ましくは複製欠損である。
【0035】
「同一性」又は「同一な」という用語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はタンパ
ク質の配列との関連では、最大一致でアラインメントした場合に2つの配列中の残基数が
同一であることを指す。具体的には、2つの配列の配列同一度(percent sequence ident
ity)は、核酸配列であるか又はアミノ酸配列であるかを問わず、アラインメントした2
つの配列間の完全な一致の数を短い方の配列の長さで除し、100を乗じたものである。
2つの配列をアラインメントするために使用することのできるアラインメントツールは当
業者に既知であり、例えばワールドワイドウェブ、例えばClustalW(www.ebi.ac
.uk/clustalw)又はAlign(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.html)上で
得ることができる。2つの配列間のアラインメントは標準的な設定、Alignについて
はEMBOSS::needle、好ましくはMatrix:Blosum62、Gap
Open 10.0、Gap Extend 0.5を用いて実行することができる。
満足のいくアラインメントを得るには、いずれかの配列にギャップを挿入する必要があり
得ることが、当業者には理解される。2つのポリペプチド間の「最良の配列アラインメン
ト」は、最大数のアラインメントした同一残基をもたらすアラインメントとして定義され
る。
【0036】
アデノウイルス
アデノウイルス(Ad)は、幾つかの鳥類及び哺乳類の宿主において同定された非エン
ベロープ正20面体ウイルスである。ヒトアデノウイルス(hAd)は、既知の全てのヒ
トAd及び動物(例えばウシ、ブタ、イヌ、マウス、ウマ、サル及びヒツジ)起源の多く
のAdを含むマストアデノウイルス属に属する。ヒトアデノウイルスは概して、ラット赤
血球及びアカゲザル赤血球の血球凝集特性、DNA相同性、制限酵素切断パターン、G+
C含有率並びに発癌性を含む多数の生物学的、化学的、免疫学的及び構造的基準に基づい
て、6つの亜群(A〜F)に分けられる(Straus, 1984, The Adenoviruses中, ed. H.Gi
nsberg, pps. 451-498, New York: PlenusPress、及びHorwitz, 1990; Virology中, eds.
B. N. Fields and D.M. Knipe, pps. 1679-1721)。
【0037】
アデノウイルスビリオンは正20面体対称性を有し、その直径は血清型に応じて60n
m〜90nmである。正20面体カプシドは、ヘキソン(II)、ペントンベース(II
I)及び突出した(knobbed)ファイバー(IV)タンパク質という3つの主要タンパク
質から構成される(W.C. Russel, J. Gen.Virol.,81: 2573-2604 (2000))。ヒトにおい
て観察される既存の免疫の一態様は体液性免疫であり、アデノウイルスタンパク質に特異
的な抗体の産生及び存続をもたらし得る。アデノウイルスによって引き起こされる体液性
応答は、主に3つの主要構造タンパク質:ヘキソン、ペントン及びファイバーに向けられ
る。
【0038】
これまでに51個の異なるヒトアデノウイルス血清型が認識され、それらの血球凝集特
性、並びに生物物理学的及び生化学的基準に基づいて亜群に分類されている。公表された
報告によって、複数の血清型に対する抗体を含む力価が一般的であり(Dambrosio, E.(19
82) J. Hyg. (London) 89: 209-219)、力価の大部分が中和活性を有することが確立され
ている。
【0039】
先述のように、組換えアデノウイルスは遺伝子療法において、また、ワクチンとして有
用である。チンパンジーアデノウイルスベースのウイルスベクターは、遺伝子ワクチンの
開発のためのヒト由来Adベクターの使用に代わるものである(Farina SF, J Virol. 20
01 Dec; 75(23): 11603-13.、Fattori E, Gene Ther. 2006 Jul; 13(14): 1088-96)。チ
ンパンジーから単離したアデノウイルスは、ヒト起源の細胞におけるそれらの効率的な増
殖によって実証されるように、ヒトから単離したアデノウイルスと近縁関係にある。しか
しながら、ヒト及びチンパンジーのアデノウイルスは近縁であるために、この2つのウイ
ルス種間の血清学的交差反応性が予想され得る。
【0040】
この仮説はチンパンジーアデノウイルスを単離し、特性化することで確認された。それ
でもなお、チンパンジーに由来するアデノウイルス分離株は、共通するヒトアデノウイル
スエピトープの血清型との交差反応性の低減を示した。したがって、チンパンジーアデノ
ウイルス(本明細書中でナミチンパンジー(common chimpanzee)アデノウイルスについ
ては「ChAd」、ボノボチンパンジーアデノウイルスについては「PanAd」とも略
記される)は、共通するヒトアデノウイルスの血清型に対するヒトの既存の免疫に関連し
た有害作用を低減することの基礎をもたらす。しかしながら、これまでに単離されたチン
パンジーアデノウイルスに対して、低度から中程度の中和力価がヒト血清サブセットにお
いて検出され、したがってチンパンジーアデノウイルスの既知の全ての血清型は、依存と
してヒト血清によって或る程度中和される。
【0041】
本発明は、新規のチンパンジーアデノウイルス株、すなわちナミチンパンジー(Pan tr
oglodytes)から単離されるChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd14
6、ChAd147、並びにボノボ(Pan paniscus)から単離されるPanAd1、Pa
nAd2及びPanAd3を単離することができたという予想外の発見を含む。これら新
規の株は全て、ヒトにおいて測定可能な血清陽性率を示さない。すなわち、これらのアデ
ノウイルス株は、試験した全てのヒト血清が中和抗体の存在について完全に陰性であった
という点で、これまでに記載されたチンパンジーアデノウイルスの中で例外的なものであ
る。この文脈で中和抗体とは、アデノウイルスのエピトープに結合し、それが宿主細胞に
おいて増殖感染を生じるのを防ぐか、又は形質導入遺伝子を発現する複製欠損ベクターに
よる標的細胞への形質導入を防ぐ(例えば、アデノウイルスDNAは宿主細胞に侵入する
ことが可能である)抗体を指す。従来技術の全てのチンパンジー由来アデノウイルスにつ
いて中和抗体が観察されたが、新規のアデノウイルス型ChAd55、ChAd73、C
hAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2及びPan
Ad3は、ヒトにおいてこれらのアデノウイルス型に対する既存の中和抗体が完全に存在
しないことを特徴とする。したがって、これらのアデノウイルスによって、例えば免疫化
及び/又は遺伝子療法に使用することのできる有益な医学的ツールが提供される。
【0042】
下記でさらに詳述するように、本発明は一態様において、最も表面露出したアデノウイ
ルスエピトープを示すアデノウイルスカプシドタンパク質、すなわちヘキソンタンパク質
、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質の新規の配列を提供する。既に述べたよ
うに、本発明によるウイルスに特異的な中和抗体はヒト血清中に含まれない。したがって
、上述した新規のチンパンジーヘキソン、ペントン及びファイバータンパク質配列の利点
の1つは、これらのタンパク質の配列を、例えば医療目的で改変された従来技術のアデノ
ウイルスを増強するために使用することができるということである。例えば、本発明のカ
プシドタンパク質又はその機能的断片は、例えば主要構造カプシドタンパク質又はその機
能的断片の1つ又は複数を、それぞれ異なるアデノウイルス、例えば従来技術のアデノウ
イルスのものに置き換え/置換して、ヒトにおける血清陽性率が低減した、改良された組
換えアデノウイルスを得るために使用することができる。本発明の新規のアデノウイルス
は(記載のように再設計したアデノウイルスも)、投与した場合にヒトにおいて有意な抑
制性免疫応答を生じることがなく、それらの全体的な導入効率及び感染性は増強される。
そのため、このように改良されたアデノウイルスは、宿主細胞への侵入及び抗原カセット
の発現が中和抗体の任意の有意な力価によって妨げられないため、例えばより効果的なワ
クチンであることが予想される。加えて、実施例において示されるように、HIV ga
gに対する強力な免疫応答がChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd14
6、ChAd147、PanAd1、PanAd2又はPanAd3分離株のヘキソンタ
ンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質を含む組換えHIV−gagコ
ードアデノウイルスをワクチン接種した未処置(naive)マウスにおいても引き起こされ
た。ChAd55−gag、ChAd73−gag、ChAd83−gag、ChAd1
46−gag、ChAd147−gag、PanAd1−gag、PanAd2−gag
及びPanAd3−gagアデノウイルスによって引き起こされた免疫応答は、HIV
gagタンパク質を発現する従来技術の組換えヒトAd5ベクターをベースとしてこれま
でに開発された最も強力なベクターを用いて観察された応答に匹敵する(図5A図5B
図5C中のELIspotアッセイのデータを参照されたい)。
【0043】
先に述べたように、アデノウイルスによって引き起こされる体液性応答は、主に3つの
主要アデノウイルス構造タンパク質:ヘキソン、ペントン及びファイバー(これらは全て
アデノウイルスカプシドの一部であり、ウイルス粒子の外部に露出したポリペプチド配列
を含む)に向けられる(Madisch I, et al.,J. Virol. 2005 Dec; 79(24): 15265-76、及
びMadisch I, et al.,J Virol. 2007 Aug; 81(15): 8270-81、及びPichla-Gollon SL,et
al., J. Virol. 2007 Feb; 81(4): 1680-9も参照されたい)。
【0044】
図1に示した多重配列アラインメントにおいて示されるように、本発明のPanAd1
、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd
146及びChAd147群の新規のアデノウイルス分離株は、非常によく似たヘキソン
タンパク質配列を有する。このアラインメントにおいては、ビリオンの外側に位置し、そ
の表面の大部分を覆うヘキソン分子の最上部にあるループ中に生じる超可変領域(HVR
)も標識される(Jophn J. Rux et. Al, J. of Virology, Sept 2003, vol. 77, no.17を
参照されたい)。新規のチンパンジーアデノウイルスのさらなるカプシドタンパク質ファ
イバー及びペントンの配列関連性が、それぞれ図2及び図3中に提示される。3つ全ての
構造カプシドタンパク質が低い血清陽性率に寄与することが予想され、したがってアデノ
ウイルスと既存の中和抗体との親和性を抑制するため、例えば血清陽性率の低減した組換
えキメラアデノウイルスを製造するために相互に独立して、又は組み合わせて使用するこ
とができる。
【0045】
それゆえ、第1の態様では、本発明は、アデノウイルスファイバータンパク質又はその
機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチ
ドを提供する:
(a)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれか、すな
わち、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列
番号19、配列番号50、又は配列番号53に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド
をコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれか、すな
わち、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列
番号19、配列番号50、又は配列番号53に記載のポリペプチドの機能的誘導体をコー
ドするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠
失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれか、すな
わち、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列
番号19、配列番号50、又は配列番号53のアミノ酸配列と、その全長にわたって少な
くとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%、より好ましくは少なくと
も85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体を
コードするポリヌクレオチド。
【0046】
「アデノウイルスファイバータンパク質」とは、アデノウイルス中に含まれる突出した
ファイバー(IV)タンパク質を意味する。好ましい実施形態では、本発明の第1の態様
及び下記に記載されるその好ましい実施形態に含まれる単離ポリヌクレオチドは、ファイ
バータンパク質、又は感染性アデノウイルスビリオンにおいてファイバータンパク質若し
くはその断片と同じ機能を有するその機能的誘導体をコードする。したがって、上記ファ
イバー又は機能的ファイバー誘導体を好ましくはカプシドタンパク質として含む組換えア
デノウイルスは、宿主細胞に侵入することが可能である。組換えアデノウイルスが宿主細
胞に侵入することができるか否かは、容易に決定することができる。例えば、宿主細胞を
アデノウイルスと接触させた後、組換え宿主細胞を洗浄して溶解し、例えばアデノウイル
スRNA及び/又はDNAに特異的な適切なハイブリダイゼーションプローブを用いて、
アデノウイルスRNA及び/又はDNAが宿主細胞中に見られるか否かを決定することが
できる。代替的又は付加的には、宿主細胞を組換えアデノウイルスと接触させた後、洗浄
して溶解し、例えばウエスタンブロットを用いてアデノウイルス特異的抗体によって調べ
てもよい。さらに別の代替形態では、例えばin vivoで、宿主細胞において遺伝子
産物を発現するのに好適な発現カセットを含む組換えアデノウイルスを感染させた際に、
宿主細胞が遺伝子産物、例えば蛍光タンパク質を発現するか否かを観察する。
【0047】
ファイバータンパク質及びその機能的誘導体が、アデノウイルスペントンタンパク質(
配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び/又は配列番号55等)に対して親和性
を有することがさらに好ましい。タンパク質間親和性を試験する方法は当業者には十分理
解される。第1のタンパク質が第2のタンパク質(チンパンジー由来アデノウイルスのペ
ントンタンパク質等)に結合することが可能であるか否かを決定するためには、例えば遺
伝学的な酵母ツーハイブリッド法、又はプルダウン法、酵素結合免疫吸着法(ELISA
)、蛍光活性化細胞選別(FACS)ベースのアッセイ若しくはプラズモン共鳴アッセイ
等の生化学的アッセイを使用することができる。プルダウン法又はプラズモン共鳴アッセ
イを用いる場合、生化学の技術分野でよく知られているように、タンパク質の少なくとも
1つをHISタグ、GSTタグ等のアフィニティータグと融合させることが有用である。
そのグリコシル化形態のアデノウイルスファイバータンパク質は、さらに三量化すること
が可能である。したがって、本発明の第1の態様によるポリヌクレオチドによってコード
されるファイバータンパク質又はその断片が、グリコシル化する及び/又は三量体を形成
することが可能であることも好ましい。
【0048】
本願全体を通して使用される場合、タンパク質又はポリペプチドの「機能的誘導体」と
いう表現は概して、修飾型のタンパク質又はポリペプチド(例えばタンパク質又はポリペ
プチドの1つ又は複数のアミノ酸が欠失、挿入、修飾及び/又は置換され得る)を指す。
誘導体は、上記でも言及したように、そのカプシド中にこの誘導体を含むキメラアデノウ
イルスが宿主細胞に感染することが可能な場合、機能的である。さらに、「機能的誘導体
」との関連では、挿入とは元のポリペプチド又はタンパク質への1つ又は複数のアミノ酸
の挿入を指す。機能的誘導体が1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個
、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個
、70個、80個、90個又は100個を超えるアミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修
飾及び/又は置換されたアミノ酸)を含まないことが好ましい。別の実施形態では、タン
パク質又はポリペプチドの全アミノ酸の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8
%、9%、10%、15%又は20%以下(最も好ましくは5%以下)しか変化しない(
すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸である)ことが好ましい。タン
パク質又はポリペプチドのアミノ酸は、修飾、例えば化学修飾されていてもよい。例えば
、タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸の側鎖又は遊離アミノ末端若しくはカルボキシ
末端は、例えばグリコシル化、アミド化、リン酸化、ユビキチン化等によって修飾されて
いてもよい。当該技術分野でよく知られているように、化学修飾をin vivo、例え
ば宿主細胞中で行ってもよい。例えば、タンパク質のアミノ酸配列中に存在する好適な化
学修飾モチーフ、例えばグリコシル化配列モチーフによってタンパク質をグリコシル化す
る。誘導体における置換は保存的置換であっても又は非保存的置換であってもよいが、保
存的置換が好ましい。幾つかの実施形態では、天然アミノ酸と非天然アミノ酸との交換も
置換に含まれる。保存的置換には、アミノ酸を置換されるアミノ酸によく似た化学的性質
を有する別のアミノ酸に置換することが含まれる。好ましくは、保存的置換は以下のもの
からなる群から選択される置換である:
(i)別の異なる塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換;
(ii)別の異なる酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換;
(iii)別の異なる芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換;
(iv)別の異なる非極性脂肪族アミノ酸による非極性脂肪族アミノ酸の置換;及び
(v)別の異なる極性非荷電アミノ酸による極性非荷電アミノ酸の置換。
【0049】
塩基性アミノ酸は好ましくはアルギニン、ヒスチジン及びリシンからなる群から選択さ
れる。酸性アミノ酸は好ましくはアスパラギン酸又はグルタミン酸である。芳香族アミノ
酸は好ましくはフェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択され
る。非極性脂肪族アミノ酸は好ましくはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、メチオ
ニン及びイソロイシンからなる群から選択される。極性非荷電アミノ酸は好ましくはセリ
ン、トレオニン、システイン、プロリン、アスパラギン及びグルタミンからなる群から選
択される。保存的アミノ酸置換に対して、非保存的アミノ酸置換は、上記で概説される保
存的置換(i)〜(v)に該当しない或るアミノ酸と任意のアミノ酸との交換である。
【0050】
機能的誘導体が欠失を含む場合には、誘導体において、参照ポリペプチド又はタンパク
質配列中に存在する1つ又は幾つかのアミノ酸が除去されている。しかしながら、欠失は
、誘導体が含むアミノ酸が全体で200個未満になるほど広範囲ではない。
【0051】
配列同一性を決定する手段は既に上記に記載している。加えて、2つの配列間の同一度
は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877の数学ア
ルゴリズムを用いることによっても決定することができる。このようなアルゴリズムは、
Altschul et al.(1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410のBLASTNプログラム及びBL
ASTPプログラムにも組み込まれている。BLASTN及びBLASTPを利用する場
合、これらのプログラムのデフォルトのパラメータを使用することが好ましい。
【0052】
先に述べたように、アデノウイルスヘキソンタンパク質の超可変ドメインはアデノウイ
ルスの外部に露出している。そのため中和抗体は、アデノウイルスカプシドのこれらの領
域を認識し、結合することができる。したがって、本発明の新規のアデノウイルス分離株
の1つに由来するヘキソンタンパク質を含むカプシドを有するアデノウイルスは、ヒトに
おける血清陽性率が改善されている、すなわちより低くなっている。それゆえ、第2の態
様では、本発明は、アデノウイルスヘキソンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし
、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれか、すな
わち、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列
番号25、配列番号51、又は配列番号54に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド
をコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれか、すな
わち、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列
番号25、配列番号51、又は配列番号54に記載のポリペプチドの機能的誘導体をコー
ドするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠
失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれか、すな
わち、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列
番号25、配列番号51、又は配列番号54のアミノ酸配列と、その全長にわたって少な
くとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%又は少なくとも99.95%、
より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99.95%同一なアミノ
酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明の第2の態様及び下記に記載されるその好ましい実施形
態に含まれる単離ポリヌクレオチドは、ヘキソンタンパク質、又は感染性アデノウイルス
ビリオンにおいてヘキソンタンパク質若しくはその断片と同じ機能を有するその機能的誘
導体をコードする。したがって、上記ヘキソン又は機能的ヘキソンー誘導体を好ましくは
カプシドタンパク質として含む組換えアデノウイルスは、宿主細胞に侵入することが可能
である。ヘキソンタンパク質の機能的誘導体を生成するのに好適な方法の1つが、米国特
許第5,922,315号(参照により援用される)に記載されている。この方法では、
アデノウイルスヘキソンの少なくとも1つのループ領域を、別のアデノウイルス血清型の
少なくとも1つのループ領域に変更する。例えば、本発明のヘキソンタンパク質のループ
領域を用いて、従来技術のアデノウイルスの対応するヘキソンループを置換して、改良さ
れたハイブリッドアデノウイルスを生成することができる。同様に(Analogously)、本
発明のペントンタンパク質及びファイバータンパク質の誘導体も生成することができる。
【0054】
第3の態様では、本発明は、アデノウイルスペントンタンパク質又はその機能的誘導体
をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドを提供する

(a)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれか、すな
わち、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列
番号31、配列番号52、又は配列番号55に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド
をコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれか、すな
わち、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列
番号31、配列番号52、又は配列番号55に記載のポリペプチドの機能的誘導体をコー
ドするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠
失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれか、すな
わち、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列
番号31、配列番号52、又は配列番号55のアミノ酸配列と、その全長にわたって少な
くとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%、より好ましくは少なく
とも85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体
をコードするポリヌクレオチド。
【0055】
ペントンタンパク質及びその機能的誘導体が、アデノウイルスファイバータンパク質(
配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び/又は配列番号53等)に対する親和性
を有することが好ましい。上記に記載されるように、タンパク質間親和性を試験する方法
は当業者には十分理解される。「アデノウイルスペントンタンパク質」とは、アデノウイ
ルス中に含まれるペントンベース(III)タンパク質を意味する。アデノウイルスペン
トンタンパク質は、正20面体対称のカプシドの角に局在することを特徴とする。先述の
ように、本発明の第1、第2及び/又は第3の態様並びに本明細書中で下記に記載される
その好ましい実施形態のポリヌクレオチドの好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは
1つ又は複数のポリペプチドをコードし、上記1つ又は複数のポリペプチドを好ましくは
カプシドタンパク質(複数可)として含む組換えアデノウイルスは、宿主細胞に感染する
、すなわち侵入することが可能である。
【0056】
以下で、本発明の第1、第2及び第3の態様の好ましい実施形態を、本明細書中で開示
される新規のチンパンジーアデノウイルス分離株の各々について明記する。
【0057】
アデノウイルスChAd55
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号14
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
14のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくと
も99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0058】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号20
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
0のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一
なアミノ酸配列を有する。
【0059】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号26
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
6のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99
.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好まし
くは少なくとも99.9%同一なアミノ酸配列を有する。
【0060】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参
照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイ
バー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むこと
が好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケー
ジングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0061】
アデノウイルスChAd73
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号15
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
15のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%若しくは少なくと
も99.9%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.9%
同一なアミノ酸配列を有する。
【0062】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号21
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
1のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一
なアミノ酸配列を有する。
【0063】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号27
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
7のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99
.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好まし
くは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0064】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参
照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイ
バー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むこと
が好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケー
ジングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0065】
アデノウイルスChAd83
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号16
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
16のアミノ酸配列を有する。
【0066】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号22
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
2のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一
なアミノ酸配列を有する。
【0067】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号28
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
8のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99
.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好まし
くは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0068】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号65からなる配列
、又は配列番号65からなるが、配列番号65のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E
2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号65のゲノ
ム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好まし
くは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含
む。
【0069】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号65に示
されるChAd83ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペント
ン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセ
グメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌク
レオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0070】
アデノウイルスChAd146
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号17
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
17のアミノ酸配列を有する。
【0071】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号23
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
3のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一
なアミノ酸配列を有する。
【0072】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号29
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
9のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99
.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好まし
くは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0073】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参
照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイ
バー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むこと
が好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケー
ジングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0074】
アデノウイルスChAd147
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号18
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
18のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくと
も90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0075】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号24
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
4のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一
なアミノ酸配列を有する。
【0076】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号30
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号3
0のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくと98%、99%、99.5%、99.
9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましく
は少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0077】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参
照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイ
バー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むこと
が好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケー
ジングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0078】
アデノウイルスPanAd1
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号19
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
19のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくと
も99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0079】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号25
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号2
5のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最
も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0080】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号31
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号3
1のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、
89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若
しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも
90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0081】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号13からなる配列
、又は配列番号13からなるが、配列番号13のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E
2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号13のゲノ
ム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好まし
くは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含
む。
【0082】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号13に示
されるPanAd1ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペント
ン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセ
グメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌク
レオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0083】
アデノウイルスPanAd2
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号50
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
50のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくと
も99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0084】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号51
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号5
1のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最
も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0085】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号52
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号5
2のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、
89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若
しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも
90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0086】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号62からなる配列
、又は配列番号62からなるが、配列番号62のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E
2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号62のゲノ
ム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好まし
くは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含
む。
【0087】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号62に示
されるPanAd1ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペント
ン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセ
グメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌク
レオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0088】
アデノウイルスPanAd3
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号53
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘
導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8
個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個
、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超え
る欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号
53のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくと
も99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0089】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号54
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号5
4のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5
%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最
も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0090】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号55
に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導
体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、
60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える
欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号5
5のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、
89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若
しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも
90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0091】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号63からなる配列
、又は配列番号63からなるが、配列番号63のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E
2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号63のゲノ
ム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好まし
くは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含
む。
【0092】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3
の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。
この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号63に示
されるPanAd1ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペント
ン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセ
グメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌク
レオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0093】
組換えアデノウイルスでは、本発明の第1、第2及び第3の態様、及び本明細書中に開
示されるそれぞれの好ましい実施形態によるファイバータンパク質、ヘキソンタンパク質
及びペントンタンパク質は各々、個々に上記組換えアデノウイルスと、ヒト及び/又は齧
歯類の中和抗体との相互作用の低減に寄与する。したがって、上記本発明のファイバータ
ンパク質、ヘキソンタンパク質及び/又はペントンタンパク質をコードするポリヌクレオ
チドは、増強された組換えアデノウイルスを構築するのに有用である。したがって、さら
なる第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、本発明の第2の態様及び本発明の
第3の態様によるポリヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの群から選択される、少な
くとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは3つの単離ポリヌクレオチドを
含むポリヌクレオチドを提供する。したがって、最も好ましくは第4の態様は、本発明の
第1、第2及び第3の態様を含む単離ポリヌクレオチドである。好ましい実施形態では、
本発明の第4の態様によるポリヌクレオチドは:
(i)本発明の第1、第2又は第3の態様による1つのポリヌクレオチドを含むポリヌ
クレオチド;
(ii)本発明の第1の態様によるポリヌクレオチド及び本発明の第2の態様によるポ
リヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(iii)本発明の第1の態様によるポリヌクレオチド及び本発明の第3の態様による
ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(iv)本発明の第2の態様によるポリヌクレオチド及び本発明の第3の態様によるポ
リヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;並びに
(v)本発明の第1、第2及び第3の態様によるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオ
チドからなる群から選択されるポリヌクレオチドであり、
(i)〜(v)によるポリヌクレオチド中に含まれる上記ポリヌクレオチドが、同じアデ
ノウイルス分離株から選択される、例えばファイバータンパク質、ヘキソンタンパク質及
びペントンタンパク質又はその機能的誘導体をそれぞれコードする3つ全てのポリヌクレ
オチドが、以下のアデノウイルスのうち1つのみに由来することが好ましい:ChAd5
5、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、P
anAd2又はPanAd3。さらに、本発明の第4の態様又はその好ましい実施形態に
おいて、例えば上記に概説されるように、各々の「機能的誘導体」が、10個、5個又は
3個を超えるアミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸)
を含まないことが好ましい。
【0094】
下記表2では、上記で概説される本発明の第4の態様のポリヌクレオチドの多数の特に
好ましい実施形態を挙げている。表2中に示されるポリヌクレオチドA1〜AF1から選
択されるポリヌクレオチドが好ましく、この場合、ポリヌクレオチドは本発明の第1、第
2及び第3の態様の代替形態(c)による3つのポリヌクレオチドを含み、その各々がア
デノウイルスファイバー、ヘキソン及びペントンタンパク質又はその機能的誘導体をそれ
ぞれコードする。下記表2に、上記3つのコードされるタンパク質の各々が、その全長に
わたって、同様に表2中に示される配列番号に記載のアミノ酸配列に対して有する必要の
ある最小配列同一性(すなわち、少なくとも表示の配列同一性)を示す:
【0095】
【表2】
【0096】
例えば、上記表1中に示されるような好ましいポリヌクレオチドA1は以下のものを含
む:
(i)配列番号14と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有
するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(ii)配列番号20と、その全長にわたって少なくとも95%同一なアミノ酸配列を
有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(iii)配列番号26と、その全長にわたって少なくとも98%同一なアミノ酸配列
を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0097】
上記で言及したように、表2に挙げられるポリヌクレオチドの上記「機能的誘導体」が
、10個を超えるアミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ
酸)を含まないことが最も好ましい。
【0098】
下記表3には、本発明の第4の態様のポリヌクレオチドのさらに好ましい実施形態を挙
げている。表3から選択されるポリヌクレオチドA2〜J2から選択されるポリヌクレオ
チドが好ましく、この場合、ポリヌクレオチドは「ポリヌクレオチド1」、「ポリヌクレ
オチド2」及び「ポリヌクレオチド3」と表される3つのポリヌクレオチドを含み、それ
ぞれのポリヌクレオチドは各々、その全長にわたって、表3中に示される配列番号に記載
の対応するポリヌクレオチドに対して少なくとも表示の配列同一性を有する:
【0099】
【表3】
【0100】
したがって、例としては、上記表3の好ましい実施形態A2(「A2−ChAd55」
)は以下のものを含むポリヌクレオチドである:
(i)配列番号32と、その全長にわたって少なくとも98%同一なポリヌクレオチド

(ii)配列番号38と、その全長にわたって少なくとも98%同一なポリヌクレオチ
ド;及び
(iii)配列番号44と、その全長にわたって少なくとも98%同一なポリヌクレオ
チド。
【0101】
下記表4には、上記で概説される本発明の第4の態様のポリヌクレオチドの多数のさら
なる特に好ましい実施形態を挙げている。表4中に示されるポリヌクレオチドA3〜H3
から選択されるポリヌクレオチドが好ましく、この場合、ポリヌクレオチドは表示の配列
番号に記載のアデノウイルスファイバー、ヘキソン及びペントンタンパク質又はその機能
的誘導体をコードし、3つ全てのタンパク質及び/又はコードされる機能的誘導体は合計
して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個
、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個
以下、又は100個を超える、好ましくは20個以下の欠失、挿入、修飾及び/又は置換
されたアミノ酸を含む:
【0102】
【表4】
【0103】
本発明の第4の態様のポリヌクレオチドの別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、表
4中に示されるそれぞれの配列番号に記載の同じ株のアデノウイルスファイバー及びヘキ
ソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードする。本発明の第4の態様のポリヌクレ
オチドのさらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、表4中に示されるそれぞれの配列
番号に記載の同じ株のアデノウイルスファイバー及びペントンタンパク質、又はその機能
的誘導体をコードする。本発明の第4の態様のポリヌクレオチドのさらなる実施形態では
、ポリヌクレオチドは、表4中に示されるそれぞれの配列番号に記載の同じ株のアデノウ
イルスヘキソン及びペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードする。この文脈
では、上記機能的誘導体は各々の場合において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、
7個、8個、9個又は10個未満、最も好ましくは3個未満の欠失、挿入、修飾及び/又
は置換されたアミノ酸を含む。
【0104】
本発明の第4の態様のさらに好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、(i)配列
番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つからなる配
列、又は(ii)ゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3 ORF1、E3
ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3
ORF7、E3 ORF8、E3 ORF9、E4 ORF7、E4 ORF6、E4
ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及び/又はE4 ORF1
の1つ又は複数を欠いている配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号6
5のいずれか1つからなる配列と、その全長にわたって少なくとも90%、91%、92
%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%又は100%、好ま
しくは98%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む。したがって、上述
した1つ又は複数のゲノム領域は、好ましくはアラインメントにおいて同一度を決定する
際に考慮されない。本発明の単離ポリヌクレオチドの別の好ましい実施形態では、ポリヌ
クレオチドは配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65を含むか、又
はそれらからなり、この場合、ゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3 OR
F1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 OR
F6、E3 ORF7、E3 ORF8、E3 ORF9、E4 ORF7、E4 OR
F6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 O
RF1の1つ又は複数が、配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号
65のそれぞれから欠失しているか、又は本明細書中で記載されるような異種タンパク質
をコードする形質導入遺伝子若しくは発現カセットで置換されている。最も好ましい実施
形態では、アデノウイルス領域E1、E3及び/又はE4は、実施例2においても例示さ
れるように欠失している。表示のゲノム領域の1つ又は複数を欠いている上述の好ましい
ポリヌクレオチドは、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、又は異種タン
パク質をコードするかかるポリヌクレオチド配列を含む発現カセットをさらに含んでいて
もよい。異種タンパク質をコードする上記ポリヌクレオチド配列、及び異種タンパク質を
コードするかかるポリヌクレオチド配列を含む上記発現カセットは、当該技術分野でよく
知られ、下記実施例においても記載されるように、例えば本発明のポリヌクレオチドの欠
失領域に挿入されていてもよい。上記異種タンパク質は、本明細書中で記載されるような
標的細胞への送達のための分子、例えば抗原タンパク質若しくはその断片、好ましくはH
IV gagタンパク質等の病原体の抗原タンパク質若しくは断片、腫瘍抗原、又は実施
例で記載されるように単純ヘルペスウイルスのタンパク質をコードするポリヌクレオチド
であり得る。したがって、好ましい実施形態では、本発明による単離ポリヌクレオチドは
、ウイルス抗原、病原性細菌の抗原及び腫瘍抗原からなる群から選択される抗原をコード
するポリヌクレオチドをさらに含む。一実施形態では、上記異種タンパク質はしたがって
、RNAウイルス抗原、病原性細菌の抗原及び腫瘍抗原からなる群から選択される抗原で
あってもよい。抗原とは、哺乳動物において免疫応答を引き起こすことが可能な任意のタ
ンパク質又はペプチドを指す。抗原は、好ましくは少なくとも8個のアミノ酸、最も好ま
しくは8個〜12個のアミノ酸を含む。したがって、配列同一性を決定する際には、ゲノ
ム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4は好ましくはアラインメン
トにおいて考慮されない。すなわち、アラインメントは、配列番号13、配列番号62、
配列番号63又は配列番号65の全配列からなるが、ゲノム領域E1A、E1B、E2A
、E2B、E3、E4、及び/又は異種ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチ
ド、若しくはかかるポリヌクレオチドを含む発現カセットを除外した配列を用いて行われ
る。上記でも言及されるように、本発明の第4の態様及びその全ての好ましい実施形態に
よるポリヌクレオチドは、機能的ヘキソン、ペントン及び/又はファイバーカプシドタン
パク質、又はその機能的誘導体をコードする(例えば、コードされるタンパク質が、感染
性アデノウイルスビリオンにおいてそれぞれのカプシドタンパク質又はその断片と同じ機
能を有する)ことが好ましい。したがって、そのカプシド内に上記コードされる組換えペ
ントン、ヘキソン及び/又はファイバータンパク質、又はその機能的誘導体を含む組換え
アデノウイルスは、宿主細胞に侵入することが可能である。本発明による、又は本発明の
ポリヌクレオチドによってコードされるカプシドタンパク質又はその機能的誘導体は、ヒ
トにおいて血清陽性率を有しないことがさらに好ましい。
【0105】
本発明は、本発明による単離ポリヌクレオチドによって単離タンパク質、すなわち本発
明の第1、第2及び/又は第3の態様による単離ポリヌクレオチド又はその機能的誘導体
によってコードされる単離アデノウイルスカプシドポリペプチドをさらに提供する。この
文脈においては、「機能的誘導体」は一実施形態では、5個、10個又は25個以下のア
ミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸)を含む。
【0106】
本発明は、本発明による単離ポリヌクレオチドを含むベクターにさらに関する。
【0107】
好ましくは、ベクターはE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4からなるゲノ
ム領域の群から選択されるゲノム領域に遺伝子を含まない、及び/又はE1A、E1B、
E2A、E2B、E3及びE4の群から選択されるゲノム領域の少なくとも1つの遺伝子
を含み、この場合、上記少なくとも1つの遺伝子は、少なくとも1つの遺伝子を非機能的
にする欠失及び/又は突然変異を含む。これらの遺伝子産物の1つを非機能的にする可能
性の1つは、1つ又は複数の人工停止コドン(例えばTAA)をこれらの遺伝子内のオー
プンリーディングフレームに導入することである。ウイルスを複製欠損にする方法は、当
該技術分野で既知である(例えば、Brody et al, 1994 Ann NY Acad Sci., 716:90-101を
参照されたい)。
【0108】
幾つかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のヘキソンタンパク質;
ペントンタンパク質;ファイバータンパク質;ヘキソンタンパク質及びペントンタンパク
質;ヘキソンタンパク質及びファイバータンパク質;ペントンタンパク質及びファイバー
タンパク質;又はヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質を
コードするポリヌクレオチドを含み、さらなるアデノウイルスポリヌクレオチドをさらに
含む。このため、好ましい一実施形態では、本発明による単離ポリヌクレオチドは、以下
のものの少なくとも1つを含む:
(a)アデノウイルス5’逆方向末端反復(ITR);
(b)アデノウイルスE1a領域、又は13S領域、12S領域及び9S領域の中から
選択されるその断片;
(c)アデノウイルスE1b領域、又はスモールT領域、ラージT領域及びIX領域か
らなる群の中から選択されるその断片;
(d)アデノウイルスE2b領域、又はスモールpTP領域、ポリメラーゼ領域及びI
Va2領域からなる群の中から選択されるその断片;
(e)アデノウイルスL1領域、又は28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノ
タンパク質、52/55kDaタンパク質及びIIIaタンパク質からなる群から選択さ
れるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(f)アデノウイルスL2領域、又は本発明のペントンタンパク質をコードするポリヌ
クレオチドを含むL2領域、又はペントンタンパク質若しくは本発明のペントンタンパク
質、VIIタンパク質、Vタンパク質及びMuタンパク質からなる群から選択されるアデ
ノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(g)アデノウイルスL3領域、又は本発明のヘキソンタンパク質をコードするポリヌ
クレオチドを含むL3領域、又はVIタンパク質、ヘキソンタンパク質若しくは本発明の
ヘキソンタンパク質、及びエンドプロテアーゼからなる群から選択されるアデノウイルス
タンパク質をコードするその断片;
(h)アデノウイルスE2a領域;
(i)アデノウイルスL4領域、又は100kDタンパク質、33kDホモログ及びV
IIIタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその
断片;
(j)アデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF
3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF
8及びE3 ORF9からなる群から選択されるその断片;
(k)アデノウイルスL5領域、又は本発明のファイバータンパク質をコードするポリ
ヌクレオチドを含むL5領域、ファイバータンパク質又は本発明のファイバータンパク質
をコードするその断片;
(l)アデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF
5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群か
ら選択されるその断片;特に、上記E4領域のORF6、及び/又は
(m)アデノウイルス3’−ITR。
【0109】
上述したポリヌクレオチドの幾つかの実施形態では、上記でも記載したように、好まし
くはポリヌクレオチドが上記に概説されるゲノム領域のORF(例えば、実施例2におい
て規定されるような領域E3及び/又はE4等)を含まない、及び/又は少なくとも1つ
の遺伝子を非機能的にする欠失及び/又は突然変異を含むアデノウイルス遺伝子を含むこ
とが望ましい場合がある。これらの好ましい実施形態では、好適なアデノウイルス領域は
上述した遺伝子(複数可)を含まないように、又は選択された遺伝子(複数可)を非機能
的にするように修飾される。任意のアデノウイルス遺伝子の欠失は、本明細書中で記載さ
れるようなミニ遺伝子カセット等の形質導入遺伝子を挿入する空間を作り出す。さらに、
当該技術分野でよく知られているように、遺伝子の欠失を用いて、パッケージング細胞株
又はヘルパーウイルスを使用しない限り複製することが不可能なアデノウイルスベクター
を生成することができる。したがって、特定の遺伝子/領域の欠失又は機能喪失突然変異
の1つ又は複数を含む、上記に概説されるポリヌクレオチドを含む最終的な組換えアデノ
ウイルスは、例えば遺伝子療法又はワクチン接種に対してより安全な組換えアデノウイル
スを提供することができる。
【0110】
特に好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは以下のものの少なくとも1つ
を含む:
(a)配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65のいずれか1つの
5’−逆方向末端反復(ITR)領域;
(b)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスE1a領域、又は13S領域、12S領域及び9S領域の中から選択
されるその断片;
(c)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスE1b領域、又はスモールT領域、ラージT領域及びIX領域からな
る群の中から選択されるその断片;
(d)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスE2b領域、又はスモールpTP領域、ポリメラーゼ領域及びIVa
2領域からなる群の中から選択されるその断片;
(e)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスL1領域、又は28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノタン
パク質、52/55kDaタンパク質及びIIIaタンパク質からなる群から選択される
アデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(f)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスL2領域、又は配列番号31、配列番号52若しくは配列番号55の
アミノ酸配列を有するペントンタンパク質、VIIタンパク質、Vタンパク質及びMuタ
ンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(g)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスL3領域、又はVIタンパク質、配列番号25、配列番号51若しく
は配列番号54のアミノ酸配列を有するヘキソンタンパク質、及びエンドプロテアーゼか
らなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(h)配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65のいずれか1つの
アデノウイルスE2a領域;
(i)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスL4領域、又は100kDタンパク質、33kDホモログ及びVII
Iタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片

(j)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、
E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及
びE3 ORF9からなる群から選択されるその断片;
(k)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスL5領域、又は配列番号19、配列番号50若しくは配列番号53の
アミノ酸配列を有するファイバータンパク質をコードするその断片;
(l)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1
つのアデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF5、
E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群から選
択されるその断片、又はAd5 E4領域のORF6(配列番号64);並びに
(m)配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65のいずれか1つの
3’−ITR。
【0111】
一実施形態では、本発明の単離ポリヌクレオチドは、以下のアデノウイルスタンパク質
の1つ又は複数、好ましくは全てをさらにコードする:VIタンパク質、VIIIタンパ
ク質、IXタンパク質、IIIaタンパク質及びIVa2タンパク質。好ましくは、これ
らのタンパク質は、本明細書中で開示されるPanAd1、PanAd2又はPanAd
3ゲノム配列のそれぞれのオープンリーディングフレームによって(by from)コードさ
れる。上記で明記したアデノウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレ
ームを決定する方法は、組換えアデノウイルスの技術分野の当業者には十分理解される。
当業者はアデノウイルスゲノムの構造も知っており、過度の負担なく、本明細書中で概説
される個々のアデノウイルス領域及びORFを、例えば本発明の新規のアデノウイルスゲ
ノムPanAd1、PanAd2又はPanAd3のいずれかにマッピングすることがで
きる。
【0112】
本発明の1つ又は複数のアデノウイルスタンパク質をコードするポリヌクレオチド、好
ましくはcDNAを発現させるために、上記ポリヌクレオチドを、転写を指示する強いプ
ロモーター、転写/翻訳ターミネーター、及び翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含
有する発現ベクターにサブクローニングすることができる。好適な細菌プロモーターは当
該技術分野で既知であり(例えば大腸菌、バシラス属及びサルモネラ)、かかる発現系の
ためのキットは市販されている。同様に、哺乳動物細胞、酵母及び昆虫細胞用の真核細胞
発現系が当該技術分野で既知であり、これも市販されている。
【0113】
プロモーターに加えて、発現ベクターは典型的には、宿主細胞におけるアデノウイルス
タンパク質をコードする核酸の発現に必要とされるさらなる要素の全てを含有する転写ユ
ニット又は発現カセットを含有する。典型的な発現カセットはしたがって、アデノウイル
スタンパク質/ポリペプチドをコードする核酸配列に操作可能に連結したプロモーター、
及び転写産物の効率的なポリアデニル化に必要とされるシグナル、リボソーム結合部位、
及び翻訳終止コドンを含有する。カセットのさらなる要素としては、例えばエンハンサー
を挙げることができる。発現カセットは、効率的な終結をもたらすために構造遺伝子の下
流に転写終結領域も含有しなくてはならない。終結領域はプロモーター配列と同じ遺伝子
から得ても、又は異なる遺伝子から得てもよい。
【0114】
遺伝子情報を細胞へと輸送するのに使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではな
い。真核細胞又は原核細胞における発現に使用される従来のベクターをいずれも使用する
ことができる。標準的な細菌発現ベクターとしては、pBR322ベースのプラスミド、
pSKF、pET23D等のプラスミド、並びにGST及びLacZ等の融合発現系が挙
げられるが、効果的に採用することのできる、当該技術分野で当業者に既知のさらに多く
の細菌発現ベクターが存在する。
【0115】
真核細胞ウイルスに由来する調節要素を含有する発現ベクターは、典型的には真核細胞
発現ベクター、例えばSV40ベクター、乳頭腫ウイルスベクター、及びエプスタインバ
ーウイルスに由来するベクター中で使用される。他の例示的な真核細胞ベクターとしては
、pMSG、pAV009/A、pMTO10/A、pMAMneo−5、バキュロ
ウイルスpDSVE、pcDNA3.1、pIRES、及び例えばHCMV前初期プロモ
ーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロ
モーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘ
ドリンプロモーター、又は真核細胞における発現に効果的であることが示される他のプロ
モーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0116】
幾つかの発現系は、チミジンキナーゼ、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、
及びジヒドロ葉酸レダクターゼ等の遺伝子増幅をもたらすマーカーを有する。代替的には
、遺伝子増幅を伴わない高収率発現系も好適である。
【0117】
同様に発現ベクター中に含まれ得る要素としては、大腸菌において機能するレプリコン
、組換えプラスミドを保有する細菌の選択を可能にする薬剤耐性マーカーをコードする遺
伝子、及び真核細胞配列の挿入を可能にするプラスミドの非必須領域中の特有の制限部位
が挙げられる。選択される特定の薬剤耐性遺伝子は重要ではなく、当該技術分野で既知の
多くの薬剤耐性遺伝子のいずれも好適である。必要に応じて、原核細胞配列が任意で、真
核細胞におけるDNAの複製を干渉しないよう選択される。
【0118】
標準的なトランスフェクション方法を、細菌細胞株、哺乳動物細胞株、酵母細胞株又は
昆虫細胞株を作製するために使用することができる。外来ポリヌクレオチド配列を宿主細
胞に導入する既知の手順をいずれも使用することができる。例えば、市販のリポソームベ
ースのトランスフェクションキット(Lipofectamine(商標)(Invitrogen
)等)、市販の脂質ベースのトランスフェクションキット(Fugene(Roche Diagno
stics)等)、ポリエチレングリコールベースのトランスフェクションキット、リン酸カ
ルシウム沈殿、遺伝子銃(バイオリスティック)、エレクトロポレーション又はウイルス
感染、及びクローニングしたゲノムDNA、cDNA、合成DNA若しくは他の外来遺伝
子物質を宿主細胞に導入する他の既知の方法のいずれかが使用され得る。使用される特定
の遺伝子工学手順は、少なくとも1つの遺伝子を、受容体を発現することが可能な宿主細
胞に首尾よく導入することが可能であればよい。
【0119】
発現されたアデノウイルスタンパク質を、任意で標準的な技法を用いて精製することが
できる。例えば、沈殿工程及びクロマトグラフィー工程(その内容及び順序は回収される
特定の組換え物質によって異なる)を行う前に、細胞を機械的に又は浸透圧衝撃によって
溶解してもよい。代替的には、タンパク質発現の技術分野で既知のように、組換えタンパ
ク質を分泌させて、組換え細胞を培養した培養培地から回収してもよい。
【0120】
好ましい一実施形態では、本発明のベクターはプラスミドベクター、例えば発現ベクタ
ーである。本発明によるプラスミドベクターも、組換えアデノウイルスの作製に使用する
ことができる。
【0121】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による単離ポリヌクレオチド及び/又は
少なくとも1つの本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチドを含む組換えア
デノウイルス、好ましくは複製不全アデノウイルスである。好ましくは、本発明の組換え
アデノウイルスは、本発明のヘキソンタンパク質、ファイバータンパク質及びペントンタ
ンパク質、例えば上記表2中で概説されるような組み合わせを含む。好ましい実施形態で
は、組換えアデノウイルスはヒト細胞に感染することが可能であること、好ましくは先に
チンパンジーアデノウイルスに曝露していないヒトに由来するヒト血清中で、上記アデノ
ウイルスを1時間インキュベートした後にヒト細胞に感染することが可能であることを特
徴とする。
【0122】
本発明の新規のヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質の
配列情報を提示するが、上記組換えアデノウイルスは、例えば通常のアデノウイルスタン
パク質から構成されるが、少なくとも1つの本発明による単離アデノウイルスカプシドポ
リペプチド又はその機能的誘導体を含むカプシドを有する組換えアデノウイルスを構築す
ることによって得ることができる。この点で、組換えアデノウイルスが、本発明のペント
ンタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むL2領域、本発明のヘキソンタン
パク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むL3領域、及び/又は本発明のファイバ
ータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むL5領域を含むことが好ましい。
最も好ましくは、上記組換えアデノウイルスは、少なくとも本発明のペントンタンパク質
、ヘキソンタンパク質及びファイバータンパク質をそれぞれコードするL2領域、L3領
域及びL5領域を含む。
【0123】
組換えアデノウイルスを構築する方法は当該技術分野で既知である。組換えアデノウイ
ルスの作製に有用な技法は、例えばGraham & Prevec, 1991 Methods inMolecular Biolog
y: Gene Transfer and Expression Protocols, (Ed. Murray, EJ.),p. 109、及びHitt et
al., 1997 "Human Adenovirus Vectors for Gene Transfer intoMammalian Cells" Adva
nces in Pharmacology 40: 137-206に概説されている。さらなる方法は国際公開第200
6/086284号に記載されている。複製欠損アデノウイルスの作製については、E1
A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4遺伝子産物の1つ又は幾つかを、それらのウ
イルスは、例えば上述した遺伝子産物のうち1つを欠いているため、複製不全である組換
えアデノウイルスの増殖及びレスキューに使用することのできる補完細胞株において発現
させてもよい。かかる細胞株の使用は上記で概説される参照文献にも記載されている。
【0124】
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチド(又は本明細書中に記載される上記本発明
のポリヌクレオチドを含むベクター)は、組換えアデノウイルス粒子を作製するために使
用される。組換えアデノウイルスは好ましくは、例えばE1a領域又はE1b領域等の1
つ又は複数のアデノウイルス領域において上記で言及したように機能的に欠失しており、
任意で他の突然変異、例えば他のアデノウイルス遺伝子での温度感受性突然変異又は欠失
を有する。他の実施形態では、組換えアデノウイルスにおいて無傷のE1a領域及び/又
はE1b領域を保持することが望ましい。このような無傷E1領域は、アデノウイルスゲ
ノムにおけるその固有の位置に位置していても、又は固有のアデノウイルスゲノムの欠失
部位(例えばE3領域)に置かれてもよい。
【0125】
宿主、例えばヒト(又は他の哺乳動物)細胞への遺伝子の送達のためのアデノウイルス
ベクターの構築においては、様々なアデノウイルス核酸配列を本発明のベクターにおいて
採用することができる。例えば、アデノウイルス後初期(delayed early)遺伝子E3の
全部又は一部を、組換えウイルスの一部を形成するアデノウイルス配列から取り除いても
よい。サルE3の機能は、組換えウイルス粒子の機能及び作製とは無関係であると考えら
れる。幾つかの実施形態では、少なくともE4遺伝子のORF6領域、より望ましくはこ
の領域の機能が余分であることから、全E4領域の欠失を有するアデノウイルスベクター
も構築することができる。本発明のさらに別のベクターは、後初期遺伝子E2aにおいて
欠失を有する。欠失は、サルアデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1〜L5のいずれにお
いても作り出すことができる。同様に、中期遺伝子IX及びIVa2における欠失は幾つ
かの目的にとって有用であり得る。他の欠失を他の構造又は非構造アデノウイルス遺伝子
において作り出してもよい。上記で論考した欠失は個々に使用することができる。すなわ
ち、本発明に使用されるアデノウイルス配列は単一の領域にのみ欠失を含有し得る。代替
的には、それらの生物活性を破壊するのに効果的な全遺伝子又はその一部分の欠失を任意
の組み合わせで使用してもよい。例えば、本発明によるベクターの一例においては、アデ
ノウイルス配列はE1領域及びE4領域、又はE1領域、E2a領域及びE3領域、又は
E1領域及びE3領域、又はE3の欠失の有無を問わず、E1領域、E2a領域及びE4
領域の欠失等を有し得る。上記で論考したように、かかる欠失を温度感受性突然変異等の
他のアデノウイルス遺伝子突然変異と組み合わせて用いて、所望の結果を達成することが
できる。
【0126】
任意の必須アデノウイルス配列(例えばE1a、E1b、E2a、E2b、E4 OR
F6、L1又はL4から選択される領域)を欠いているアデノウイルスベクターを、アデ
ノウイルス粒子のウイルス感染及び増殖に必要とされる失われたアデノウイルス遺伝子の
産物の存在下で培養することができる。これらのヘルパー機能は、アデノウイルスベクタ
ーを、1つ又は複数のヘルパー構築物(例えば、プラスミド又はウイルス)又はパッケー
ジング宿主細胞(上記でも記載した補完細胞株)の存在下で培養することによってもたら
され得る。例えば、本明細書中に含まれる実施例、及び1996年5月9日付けで公開さ
れた国際公開第96/13597号(参照により本明細書中に援用される)において「最
小の」ヒトアデノウイルスベクターの作製について記載された技法を参照されたい。
【0127】
有用なヘルパーウイルスは、本発明のアデノウイルスベクターの好ましい実施形態にお
いて欠失した、及び/又はベクターをトランスフェクトするパッケージング細胞株によっ
て発現されないそれぞれの遺伝子を補完する、選択されたアデノウイルス遺伝子配列を含
有する。一実施形態では、ヘルパーウイルスは複製欠損であり、上記で記載した配列に加
えて様々なアデノウイルス遺伝子を含有する。
【0128】
ヘルパーウイルスは、Wu et al, J. Biol. Chem., 264: 16985-16987 (1989)、K. J. F
isher and J. M. Wilson, Biochem.J., 299: 49 (April 1, 1994)に記載されるように、
ポリカチオン複合体に形成してもよい。ヘルパーウイルスは任意で第2のレポーターミニ
遺伝子を含有し得る。多くのかかるレポーター遺伝子が当該技術分野で既知である。ヘル
パーウイルス上のレポーター遺伝子(アデノウイルスベクター上の形質導入遺伝子とは異
なる)の存在によって、Adベクター及びヘルパーウイルスの両方を独立してモニタリン
グすることが可能となる。この第2のレポーターは、得られる組換えウイルスとヘルパー
ウイルスとを精製の際に分離することを容易にするために使用され得る。
【0129】
本明細書中の好ましい実施形態との関連で記載される遺伝子のいずれかにおいて欠失し
た組換えアデノウイルス(Ad)を生成するには、欠失した遺伝子領域の機能を、ウイル
スの複製及び感染性に必須である場合に、ヘルパーウイルス又は細胞株、すなわち補完細
胞株又はパッケージング細胞株によって組換えウイルスに与えることが好ましい。多くの
場合、ヒトE1を発現する細胞株を用いて、組換えアデノウイルスを生成するのに使用さ
れるベクターをトランス補完する(transcomplement)ことができる。このことは、本発
明のポリヌクレオチド配列及び現在利用可能なパッケージング細胞に見られるヒトアデノ
ウイルスE1配列の間の多様性のために、現在のヒトE1含有細胞の使用によって、複製
及び産生プロセスにおいて複製可能アデノウイルスの生成が妨げられるため、特に有利で
ある。しかしながら、或る特定の状況では、E1を欠失した組換えアデノウイルスの作製
のためにE1遺伝子産物を発現する細胞株を利用することが望ましい。
【0130】
所望に応じて、本明細書中で提示される配列を、選択された親細胞株(例えばHeLa
細胞等)における発現のためのプロモーターの転写調節下で、最低でもChAd55、C
hAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanA
d2又はPanAd3アデノウイルスに由来するアデノウイルスE1遺伝子を発現するパ
ッケージング細胞又は細胞株を生成するために利用してもよい。誘導性プロモーター又は
構成的プロモーターをこの目的で採用することができる。プロモーターの例は、例えば本
明細書中に記載される実施例において提示される。かかるE1発現細胞株は、組換えアデ
ノウイルスE1欠失ベクターの生成において有用である。付加的又は代替的には、本発明
は、組換えアデノウイルスベクターの生成に使用されるものと基本的に同じ手順を用いて
構築することのできる、1つ又は複数のアデノウイルス遺伝子産物、例えばE1a、E1
b、E2a及び/又はE4 ORF6、好ましくはAd5 E4 ORF6(下記実施例
も参照されたい)を発現する細胞株を提供する。かかる細胞株は、これらの産物をコード
する必須遺伝子において欠失したアデノウイルスベクターをトランス補完するか、又はヘ
ルパー依存ウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)のパッケージングに必要とされるヘル
パー機能をもたらすために利用することができる。
【0131】
概して、例えばミニ遺伝子を含む本発明のベクターをトランスフェクションによって送
達する場合、ベクターは、約1×10個〜約1×10個の細胞、好ましくは約1×1
個の細胞につき約0.1μg〜約100μgのDNA、好ましくは約10μg〜約5
0μgのDNAという量で送達される。しかしながら、宿主細胞に対するベクターDNA
の相対量は、選択されたベクター、送達方法及び選択された宿主細胞といった因子を考慮
して調整され得る。宿主細胞へのベクターの導入は、トランスフェクション及び感染を含
む当該技術分野で既知であるか、又は本明細書中で開示される任意の手段によって、例え
ばCaPOトランスフェクション又はエレクトロポレーションを用いて達成することが
できる。
【0132】
所望のミニ遺伝子含有組換えアデノウイルスの構築及び組み立てについては、一例では
当該技術分野でよく知られているように、ベクターをヘルパーウイルスの存在下で、パッ
ケージング細胞株にin vitroでトランスフェクトして、ヘルパー配列とベクター
配列との間で相同組換えを起こし、それによりベクターにおいてアデノウイルス−導入遺
伝子配列を複製させ、ビリオンカプシド内にパッケージングさせて、組換えウイルスベク
ター粒子を得ることができる。本発明の組換えアデノウイルスは、例えば選択された形質
導入遺伝子を選択された宿主細胞内に移入するのに有用である。
【0133】
本発明のアデノウイルスの好ましい実施形態では、アデノウイルスはヒト被験体におい
て5%未満の血清陽性率を有し、好ましくはヒト被験体において血清陽性率を有さず、最
も好ましくは先にチンパンジーアデノウイルスと接触させていないヒト被験体において血
清陽性率を有しない。この文脈では、ヒト被験体はヨーロッパ人、アフリカの先住民、ア
ジア人、アメリカの先住民及びオセアニアの先住民から選択される民族集団に属すること
が好ましい。ヒト被験体の民族起源を特定する方法は、当該技術分野に含まれる(例えば
、国際公開第2003/102236号を参照されたい)。
【0134】
本発明による組換えアデノウイルスのさらに好ましい実施形態では、アデノウイルスD
NAは、哺乳動物標的細胞に侵入することが可能である、すなわち感染性である。本発明
の感染性組換えアデノウイルスは、下記でも記載されるように、ワクチンとして、また、
遺伝子療法に使用することができる。したがって、別の実施形態では、組換えアデノウイ
ルスが標的細胞への送達のための分子を含むことが好ましい。好ましくは、標的細胞は哺
乳動物細胞、例えばチンパンジー細胞、齧歯類細胞又はヒト細胞である。例えば、標的細
胞への送達のための分子は、本明細書中で定義される発現カセットであり得る。発現カセ
ットをアデノウイルスのゲノムに導入する方法は、当該技術分野で既知である(例えば、
上記で提示される文献引用を参照されたい)。一例では、例えばミニ遺伝子又はアンチジ
ーンをコードする発現カセットを含む本発明の組換えアデノウイルスは、E1A、E1B
、E2A、E2B、E3及びE4から選択されるアデノウイルスのゲノム領域を上記発現
カセットに置き換えることによって生成することができる。本発明のアデノウイルスのゲ
ノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4は、ヒトAd5に由来するもの
のような既知のアデノウイルスゲノム及び注釈されたアデノウイルスゲノムとのアライン
メントによって容易に同定することができる(Birgitt Tauber and Thomas Dobner, Onco
gene (2001) 20, p. 7847-7854、及び同様にAndrew J. Davison, et al., "Genetic cont
ent and evolution ofadenoviruses", Journal of General Virology (2003), 84, p. 28
95-2908を参照されたい)。標的細胞への送達のための分子を含む改変アデノウイルスを
生成する方法の非限定的な例は、下記の実施例1及び実施例2並びに図4にも提示される
【0135】
標的細胞への送達のための分子は好ましくはポリヌクレオチドであるが、好ましくは治
療活性又は診断活性を有するポリペプチド又は小分子化合物(small chemical compound
)であってもよい。特に好ましい一実施形態では、標的細胞への送達のための分子は、ア
デノウイルス5’逆方向末端反復配列(ITR)、遺伝子(例えば配列番号1)及び3’
ITRを含むポリヌクレオチドである。組換えアデノウイルスが、例えばパッケージング
細胞株内で産生された場合に、カプシドが分子を取り囲み、パッケージングすることがで
きるような分子の分子サイズを選択する必要があることは当業者には明らかである。した
がって、遺伝子は、例えば7000個まで、最大で8000個までの塩基対を有し得るミ
ニ遺伝子であるのが好ましい。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明による組換えアデノウイルスに含まれる標的細胞への送
達のための分子は、抗原タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドである。
抗原タンパク質又はその断片は、哺乳動物において免疫応答を引き起こすことが可能であ
り、特に好ましい実施形態では、実施例に示されるように、配列番号1に記載のポリヌク
レオチドによってコードされるHIVのgagタンパク質であり得る。
【0137】
特に好ましい実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、ECACC(European
Collection of Cell Culture,Porton Down,Salisbury,SP4 OJG,UK)に寄託された、
08110601(ChAd83)、08110602(ChAd73)、081106
03(ChAd55)、08110604(ChAd147)及び08110605(C
hAd146)からなる群から選択される受託番号を有するアデノウイルスである。上述
したアデノウイルス株(ラテン名:Mastadenovirus, Adenoviridae)の寄託は、2008
年11月6日付けでOkairos AG(Elisabethenstr. 3,4051 Basel,Switzerland)によっ
て行われた。
【0138】
これらの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条
項に従って維持される。これらの寄託は、単に当業者の便宜を図るために行ったものであ
り、米国特許法第112条に基づいて寄託が必要とされることを認めるものではない。米
国特許法施行規則1.808条(b)項に明記される要件を除いて、寄託されている材料
の公衆への提供可能性に関する制限は全て、特許が付与されたとき、取消不能の条件で撤
回される。
【0139】
本発明の組換えアデノウイルスの別の好ましい実施形態は、08110601(ChA
d83)、08110602(ChAd73)、08110603(ChAd55)、0
8110604(ChAd147)及び08110605(ChAd146)からなる群
から選択されるアデノウイルスに由来するアデノウイルスである。好ましくは、上述の寄
託されたアデノウイルスの1つに由来するアデノウイルスは、そのゲノムに機能的欠失、
欠失又は修飾を導入することによって、例えば複製不全アデノウイルス及び/又は宿主細
胞において形質導入遺伝子を発現することが可能なアデノウイルスが得られるように変更
されている。例えば、E1A遺伝子、E1B遺伝子、E2A遺伝子、E2B遺伝子、E3
遺伝子及びE4遺伝子からなる群から選択される1つ又は複数の遺伝子は欠失させる、非
機能的にする、及び/又は上記に概説される発現カセットと置き換えることができる。さ
らに、別のアデノウイルスの1つ又は複数の遺伝子を、好ましくは欠失した遺伝子に導入
してもよい。寄託された株にこれらのゲノム変化を導入する方法は、当業者には十分理解
される。この点において、寄託された株の好ましい修飾形態である、標的細胞への送達の
ための分子を含む修飾アデノウイルスを生成する方法は上記で記載した。
【0140】
さらなる態様では、免疫学的アジュバント及び以下の(i)〜(iv)の少なくとも1
つを含む組成物が提供される:
(i)本発明による単離タンパク質;
(ii)本発明による単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス;及び、
任意で、薬学的に許容可能な賦形剤。
【0141】
アジュバントを含む本発明による組成物は、例えばヒト被験体に対するワクチンとして
使用することができる。本明細書中で簡潔に「アジュバント」とも称される免疫学的アジ
ュバントは、抗原単独での投与と比較して、抗原/免疫原に対する免疫応答を加速し、延
長し、及び/又はその質及び/又は強度を増強し、したがって、所与の任意のワクチンに
必要とされる抗原/免疫原の量、及び/又は対象の抗原/免疫原に対する適切な免疫応答
を生じさせるのに必要とされる注射の頻度を低減する。
【0142】
本発明による組成物との関連で使用され得るアジュバントの例は、水酸化アルミニウム
のゲル状沈殿(水酸化アルミニウムゲル(alum));AlPO;アルハイドロゲル;グ
ラム陰性菌の外膜に由来する細菌産物、特にモノホスホリルリピドA(MPLA)、リポ
多糖類(LPS)、ムラミルジペプチド及びその誘導体;フロイント不完全アジュバント
;リポソーム、特に中性リポソーム、組成物及び任意でサイトカインを含有するリポソー
ム;非イオン性ブロック共重合体;ISCOMATRIXアジュバント(Drane et al.,
2007);CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)、特にホスホロチオエート(PTO)
骨格(CpG PTO ODN)又はホスホジエステル(PO)骨格(CpG PO O
DN)を有するCpG ODNを含む非メチル化DNA;合成リポペプチド誘導体、特に
PamCys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタ
ンパク質(HSP)、特にHSP 70;二本鎖RNA及びその合成誘導体、特にPol
y I:poly C;ポリカチオン性ペプチド、特にポリ−L−アルギニン;タキソー
ル;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサ
イトカイン、特にGM−CSF、インターロイキン−(IL−)2、IL−6、IL−7
、IL−18、I型及びII型インターフェロン、特にインターフェロン−γ、TNF−
α;25−ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);及び合成オリゴペプチド、
特にMHCII提示ペプチドである。POE−POP−POEブロック共重合体等といっ
たポリオキシエチレン(POE)及びポリオキシプロピレン(POP)を含有する非イオ
ン性ブロック共重合体を、アジュバントとして使用することができる(Newman et al., 1
998)。このタイプのアジュバントは活性成分として核酸を含む組成物に特に有用である
【0143】
任意で、様々な薬学的に許容可能な賦形剤を使用してもよい。好ましい薬学的に許容可
能な賦形剤は、本発明による使用を論考する際に下記で言及される。
【0144】
特異的受容体の活性化は免疫応答を刺激し得る。かかる受容体は当業者に既知であり、
例えばサイトカイン受容体、特にI型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、
TNF受容体;並びに転写因子として作用するビタミンD受容体;並びにToll様受容
体1(TLR1)、TLR−2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR−6、TLR7
及びTLR9が挙げられる。かかる受容体に対する作動薬はアジュバント活性を有する、
すなわち免疫賦活性である。好ましい実施形態では、本発明の組成物のアジュバントは、
1つ又は複数のToll様受容体作動薬であり得る。より好ましい実施形態では、アジュ
バントはToll様受容体4作動薬である。特定の好ましい実施形態では、アジュバント
はToll様受容体9作動薬であり、好ましくはヌクレオチドtccatgacgttcctgacgtt(配
列番号2)によってコードされる。
【0145】
さらなる態様では、本発明は、以下のものの少なくとも1つを含む細胞、好ましくは非
サル細胞を提供する:
(i)本発明による単離タンパク質;
(ii)本発明による単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス。
【0146】
細胞は、大腸菌細胞等の細菌細胞、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces
cerevisiae)若しくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母細胞、植物細胞
、SF9細胞若しくはHi5細胞等の昆虫細胞、又は哺乳動物細胞から選択され得る。哺
乳動物細胞の好ましい例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓
(HEK293)細胞、HELA細胞、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHuh7.5)、He
p G2ヒト肝細胞癌細胞、Hep 3Bヒト肝細胞癌細胞等である。
【0147】
細胞が、(ii)に記載の単離ポリヌクレオチドを含む場合、このポリヌクレオチドは
、(i)それ自体が自由に分散するか、又は(ii)宿主細胞ゲノム又はミトコンドリア
DNAに組み込まれて細胞中に存在し得る。
【0148】
さらなる好ましい実施形態では、細胞は好ましくは293細胞、又はPER.C6(商
標)である、E1a、E1b、E2a、E2b、E4、L1、L2、L3、L4及びL5
からなる群から選択されるアデノウイルス遺伝子を少なくとも1つ発現する宿主細胞であ
る。
【0149】
疾患の療法又は予防法への、本発明による単離ポリペプチド、本発明による単離タンパ
ク質、本発明によるベクター、本発明による組換えアデノウイルス、及び/又は本発明に
よる組成物の使用も提供される。
【0150】
アデノウイルスベクターはワクチンベクターとしての大きな可能性が実証されている。
前臨床研究及び臨床研究から、ベクター設計、確実な抗原発現及びこの系を用いた予防免
疫の実現可能性が実証されている。したがって、好ましい実施形態は、療法又は予防法が
、例えばヒト被験体に対するワクチン接種である本発明による使用である。アデノウイル
スをワクチン接種に対して使用及び作製する方法の詳細な指示は、当該技術分野に含まれ
、当業者に既知の十分な文献に提示されている。
【0151】
使用がワクチン接種である場合、本発明の組換えアデノウイルスは、好ましくは1×1
個〜1×1011個のウイルス粒子(すなわち1×10個、5×10個、1×1
個、5×10個、1×1010個、2.5×1010個又は5×1010個の粒子
)という免疫学的及び/又は予防的に効果的な用量で投与することができる。さらに、ブ
ーストを必要とするワクチン接種については、上記で定義される「異種プライム−ブース
ト」方法を適用することが好ましい。さらに、本発明による単離ポリヌクレオチド、本発
明による単離タンパク質、本発明によるベクター、本発明による組換えアデノウイルス及
び/又は本発明による医薬組成物をワクチン中で用いる場合、ワクチンがアジュバントを
含むことが好ましい。好ましい免疫学的アジュバントは本明細書中で言及されており、か
かるワクチン中で使用することができる。
【0152】
本発明によるポリヌクレオチド又は組換えアデノウイルスタンパク質又はそれらの断片
を用いて作製される組換えアデノウイルスは、ポリヌクレオチド、例えばDNAを宿主細
胞に形質導入するために使用することができる。したがって、好ましくは感染性、すなわ
ち宿主細胞に侵入することが可能ではあるが複製欠損のアデノウイルスを、任意の特別な
タンパク質又はポリペプチドを宿主細胞において発現させるために作製することができる
。したがって、好ましい実施形態では、本発明による使用において挙げられる療法は遺伝
子療法である。本発明による単離ポリヌクレオチド、単離タンパク質、ベクター、組換え
アデノウイルス及び/又は医薬組成物を遺伝子療法に使用し、治療を受ける被験体に投与
する場合、治療によって患者の1つ又は複数の細胞がトランスフェクトされる、すなわち
形質導入されるように十分に大きな用量で投与することが好ましい。本発明による組換え
アデノウイルス及び/又は医薬組成物は、本明細書中で開示される好ましい投与手段のい
ずれかによって投与される場合、好ましくは1×10個〜5×1011個のウイルス粒
子(すなわち1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×1010
個、2.5×1010個、5×1010個、1×1011個、又は最も好ましくは5×1
11個の粒子)という効果的な用量で投与することが好ましい。好ましい実施形態では
、本発明の組換えアデノウイルス中に含まれる好ましくは異種のポリヌクレオチドは、被
験体の宿主細胞においてタンパク質又はポリペプチドを発現させることが可能であり、こ
の場合、タンパク質又はポリペプチドが、上記宿主細胞からのタンパク質又はポリペプチ
ドの分泌をもたらすシグナルペプチドを含む。例えば、或る特定のタンパク質を必要とす
る患者は、分泌可能な形態のそのタンパク質をコードするcDNAを含む本発明のアデノ
ウイルスを用いて治療することができる。
【0153】
本発明の使用のさらなる実施形態では、本発明による単離ポリヌクレオチド、単離タン
パク質、ベクター、アデノウイルス及び/又は医薬組成物(以下で本発明による医薬品と
称される)は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な希釈剤;担体;増量剤、結合剤、滑剤
、流動促進剤、崩壊剤及び吸着剤を含む賦形剤;及び/又は防腐剤をさらに含むように配
合される。
【0154】
本発明による医薬品は、経口投与、直腸投与、胃内(intragastrical)投与、及び非経
口投与、例えば静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、皮内投与、皮下投与、及び同様の
投与経路を含む既知の様々な経路によって投与することができる。非経口投与、筋肉内投
与及び静脈内投与が好ましい。好ましくは、本発明による医薬品はシロップ剤、注入液又
は注射液、錠剤、カプセル、キャプレット、舐剤、リポソーム、坐薬、硬膏、バンドエイ
ド、徐放性カプセル、粉末剤又は徐放製剤として調剤される。好ましくは、希釈剤は水、
緩衝液、緩衝塩溶液又は塩溶液であり、担体は好ましくはカカオバター及びビテベソール
からなる群から選択される。
【0155】
本発明の使用における本発明による医薬品の投与に特に好ましい医薬品形態は、注射用
途(injectable use)に好適な形態であり、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射液又は
分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。典型的には、かかる溶液又は分散液は
、例えば水緩衝水溶液、例えば生体適合性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレ
ングリコール、ポリエチレングリコール等のポリオール、それらの好適な混合物、界面活
性剤又は植物油を含有する溶媒又は分散媒を含む。
【0156】
注入液又は注射液の調製は、抗菌剤又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール
、フェノール、ソルビン酸又はチメロサールのような防腐剤の添加が挙げられるが、これ
に限定されない、当該技術分野において承認されている様々な技法によって達成すること
ができる。さらに、糖又は塩、特に塩化ナトリウム等の等張剤を注入液又は注射液に加え
てもよい。
【0157】
本発明の好ましい希釈剤は、水、生理学的に(physiological)許容可能な緩衝液、生
理学的に許容可能な緩衝塩溶液又は塩溶液である。好ましい担体はカカオバター及びビテ
ベソールである。様々な医薬品形態の本発明による医薬品と共に使用することのできる賦
形剤は、以下の非限定的なリストから選択することができる:
a)ラクトース、マンニトール、結晶性ソルビトール、リン酸水素二カリウム(dibasi
c phosphates)、リン酸カルシウム、糖類、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセル
ロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤;
b)ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛
、ステアリン酸、硬化植物油、ロイシン、グリセリド及びフマル酸ステアリルナトリウム
等の滑剤;
c)デンプン、クロスカルメロースナトリウム、メチルセルロース、寒天、ベントナイ
ト、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の崩壊剤。
【0158】
他の好適な賦形剤は、米国薬剤師会により出版された医薬品添加物ハンドブック(Hand
book of Pharmaceutical Excipients)(参照により本明細書中に援用される)に見るこ
とができる。
【0159】
一定量の本発明による医薬品が疾患の療法又は予防法に好ましい。しかしながら、疾患
の重症度、疾患の種類、及び治療を受けるそれぞれの患者(例えば患者の全身健康状態等
)に応じて、異なる用量の本発明による医薬品が治療効果又は予防効果を引き起こすのに
必要とされることが理解される。適切な用量の決定は主治医の裁量による。
【0160】
本発明による医薬品が予防的に使用される場合、ワクチンとして調剤することができる
。この場合、本発明による医薬品は、上記で概説される好ましい用量及び特に好ましい用
量で投与するのが好ましい。好ましくは、ワクチンの投与は、ワクチン接種した被験体が
、十分な抗体を本発明による医薬品に対して生成するまで、規定の期間にわたって少なく
とも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は少なくとも10回繰り返し、
それぞれの疾患を発症するリスクを減少させる。この場合の期間は通常、ワクチンの抗原
性に応じて変化する。この期間は4週間、3ヶ月、6ヶ月又は3年間を超えないのが好ま
しい。一実施形態では、本発明によるアデノウイルスがワクチン接種を目的として使用さ
れる場合、ヘキソンタンパク質の超可変ドメインの少なくとも1つを、ワクチン接種が対
象とするそれぞれの病因物質の免疫原性エピトープによって置き換えることができる。ワ
クチンは典型的には、上記に概説される1つ又は複数のアジュバントを含有する。ワクチ
ン接種及びそれに関する方法の使用についての詳細な概要は、Bangari DS and Mittal SK
(2006) Vaccine, 24(7), p. 849-862(Zhou D, et al., Expert Opin Biol Ther. 2006
Jan;6(1):63-72も参照されたい)、及びFolgori A, et al.,Nat Med. 2006 Feb;12(2):19
0-7(Draper SJ, et al., NatMed. 2008 Aug;14(8):819-21. Epub 2008 Jul 27も参照さ
れたい)に提示されている。
【0161】
本発明の様々な変更形態及び変形形態が、本発明の範囲を逸脱することなく当業者に明
らかである。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、クレームされる本
発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されるものではないことが理解されよう。
実際に、関連分野の当業者に明らかな本発明を実施する記載の形態の様々な変更形態は、
本発明に包含されることが意図される。
【実施例】
【0162】
実施例1:アデノウイルスの単離及び特性化
ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147は、欧
州及び米国の様々な施設に収容された健常な動物から得られたチンパンジーアデノウイル
スの群である。ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd
147には、ヒト血清との検出可能な反応性を有しないという性質がある。PanAd1
、PanAd2及びPanAd3は、欧州及び米国の様々な施設に収容された健常なボノ
ボ(Pan Paniscus)から単離した新たなアデノウイルスである。PanAd1、PanA
d2及びPanAd3には、ヒト血清との検出可能な反応性を有しないという性質がある
【0163】
ナミチンパンジー及びボノボのアデノウイルスストックを、最初の継代増幅の後に、9
6ウェルプレートに播種した293細胞に感染させることによってクローニングした。こ
のウイルスクローニングは、最初の継代ウイルス増幅の後に得られる細胞溶解物の限界希
釈によって行った。5つの単離したクローンを取り、連続的に増殖させた。3回〜4回の
連続継代増幅の後、アデノウイルスの大規模調製を、5つの二層セルファクトリー(cell
-facties)(NUNC)上に播種した(planted)細胞(1つのセルファクトリーにつき2億
個の細胞)について行った。2回の塩化セシウム密度勾配超遠心分離工程によって、細胞
溶解物から精製ウイルス粒子を得た。
【0164】
ゲノムDNAを、3×1012ppの精製ウイルス調製物から、1%SDS−TEN中
でのプロテイナーゼK(0.5mg/ml)を用いた消化(55℃で2時間)によって単
離した。フェノール・クロロホルム抽出及びエタノール沈殿の後、ゲノムDNAを水中に
再懸濁し、ゲノムシークエンシングを行った。
【0165】
この新たな分離株の初期分類は、ヘキソン遺伝子の超可変領域7(HVR7)の配列分
析によって得られた。この目的で、HVR7に隣接する高度に保存された領域について2
つのプライマーを設計した:TGTCCTACCARCTCTTGCTTGA(配列番号3)及びGTGGAARGGCACGT
AGCG(配列番号4)。HVR7を精製ウイルスDNA又は粗293溶解物を鋳型として用
いたPCRによって増幅した後、シークエンシングした。分離株に関するより詳細な情報
は、超可変領域1〜6をシークエンシングすることによって得た。HVR1〜HVR6を
含有するDNA領域を、オリゴヌクレオチドHVR1−6fd、CAYGATGTGACCACCGACCG(
配列番号5)及びHVR1-6rev、GTGTTYCTGTCYTGCAAGTC(配列番号6)を用いたP
CRによって増幅した。HVRの配列分析に基づくと、新たな単離ウイルスは、ヒトAd
ウイルス分類(Horowitz, MS (1990), Adenoviridae and theirreplication. In Virolog
y B.N. Fields and D.M. Knipe, eds (raven Press, New York) pp.1679-1740)の亜群E
(ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147)と、
亜群C(PanAd1、PanAd2及びPanAd3)とに分類された。
【0166】
ヒト及びチンパンジーのアデノウイルスヘキソンアミノ酸配列のアラインメントによっ
て系統樹を得た。この結果は、Align Xプログラム(Informax, Inc)を用いるこ
とによる、ヘキソンHVR1〜HVR6及びHVR7に限局したヌクレオチド配列アライ
ンメントに基づく初期分類と一致しており、ChAd55、ChAd73、ChAd83
、ChAd146、ChAd147分離株と、ヒトAd4(亜群E)との緊密な系統発生
的関係が実証され、ボノボアデノウイルス分離株PanAd1、PanAd2及びPan
Ad3はヒトAd1、Ad2、Ad5、Ad6(亜群C)に関連している。
【0167】
実施例2:ベクター構築
PanAd1、PanAd2及びPanAd3、並びにChAd55、ChAd73、
ChAd83、ChAd146、ChAd147ウイルスゲノムを、下記に詳述する戦略
に従ってプラスミドベクターにクローニングした。ベクターゲノムの全ての操作は、標準
的な技法に従って大腸菌において行った。ベクター系は、ChAd及びPanAdの骨格
からE1領域及びE3領域を欠失させることによって開発した。E1領域を、動物モデル
における免疫学的効力の評価のために、ヒトCMV IEプロモーター及びBGHpAシ
グナル含有HCV非構造領域(HCV NS)及びHIV gag(配列番号1)遺伝子
に基づく発現カセットに置換した。加えて、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子(S
EAP)を発現するChAdベクター及びPanAdベクターを、中和アッセイのために
構築した。ベクターを293細胞中で増殖させて、標準的なプロトコルに従ったCsCl
勾配によって精製した。
【0168】
PanAd1、PanAd2及びPanAd3 ΔE1ベクターの構築は、下記に示す
工程によって行った。
【0169】
I.PanAdシャトルベクターの構築
PanAd1ゲノムを使用して、PanAd1、PanAd2及びPanAd3の全ゲ
ノムの相同組換えによるクローニングのためのシャトルベクターを構築した。簡潔に述べ
ると、ボノボアデノウイルス1のクローニングに使用されるシャトルベクター(本明細書
中でpBAd1RLD_EGFPと称される)を以下のように構築した:
PanAd1左端(nt 1〜nt 450)を、SpeI及びEcoRIで消化したオ
リゴヌクレオチド5’−ATCTGGAATTCGTTTAAACCATCATCAATAATATACCTTATTTTG−3’(配列
番号7)及び5’−TCAGGAACTAGTTCCGTATACCTATAATAATAAAACGGAGACTTTG−3’(配列番号
8)を用いたPCRによって増幅した後、pBAd1−Lを生成することによってHCM
V−EGFP−bgh polyAカセットを既に含有するプラスミドベクターにライゲ
ーションした。次いで、PanAd1右端(nt 37362〜nt 37772)を、
オリゴヌクレオチド5’−TCCAGCGGCGCGCCAGACCCGAGTCTTACCAGGA−3’(配列番号9)及
び5’−ATTCAGGATCCGAATTCGTTTAAACCATCATCAATAATATACCTTATTTTG−3’(配列番号10
)を用いたPCRによって増幅し、pBAd1−Lにクローニングすることにより、プラ
スミドpBAd1−RLを作製した。
【0170】
続いて、pIXコード領域を含有するPanAd1 DNA断片(nt 3498〜n
t 4039)を、オリゴヌクレオチド5’−TATTCTGCGATCGCTGAGGTGGGTGAGTGGGCG−3
’(配列番号11)及び5’−TTACTGGCGCGCCTGCCTCGAGTAAACGGCATTTGCAGGAGAAG−3’(
配列番号12)を用いたPCRによって増幅した後、pBAd1−RLにクローニングし
て、プラスミドpBAd1RLD EGFPシャトルを得た。分泌型アルカリフォスファ
ターゼ(SEAP)に対する発現カセット、HIV gag、HCV非構造領域(NS)
遺伝子を含有するシャトルプラスミドも、pBAd1RLD EGFPシャトル中のEG
FP遺伝子を置換することによって構築した。
【0171】
HIV gag HCV NS領域、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモー
ター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(Bgh polyA)をベースとす
るSEAP及びEGFP発現カセットを、Emini et al.の国際公開第03/031588
号に記載されるように構築した。ウイルスDNAカセットは、両方のITRの末端のみに
存在する制限酵素部位(PmeI)を含有し、プラスミドDNAからのウイルスDNAの
放出が可能となるように設計した。
【0172】
II.ΔE1 PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクターの構築
PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクターを、大腸菌株BJ5183にお
ける相同組換えによって構築した。BJ5183細胞を、PanAd1、PanAd2及
びPanAd3の精製ウイルスDNA及びpBAd1RLD−EGFP又はpBAd1R
LD−Gagによって同時形質転換させた。pIX遺伝子、線状化pBAd1RLD−E
GFP又はpBAd1RLD−Gagの末端に存在する右側のITR DNA配列、及び
ウイルスゲノムDNAの間の相同組換えでは、発現カセットにより置換されたE1領域を
同時に欠失させることによってプラスミドベクターへのその挿入が可能となった。この戦
略によって、EGFP又はHIV gag形質導入遺伝子を発現するプレアデノプラスミ
ドpPanAd1、pPanAd2及びpPanAd3の構築が可能となった。次いで、
SEAP又はHCV−NS発現カセットを、EGFP又はGag発現カセットを置き換え
ることによってpPanAd1、pPanAd2及びpPanAd3ベクターにクローニ
ングした。
【0173】
III.E3領域の欠失
E3領域の欠失を、大腸菌におけるクローニング及び相同組換えの幾つかの工程を含む
戦略を用いることによって、PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクター骨格
に導入した。PanAd1 E3欠失は、ゲノムPanAd1配列のヌクレオチド286
36からヌクレオチド32596までにわたり(配列番号13)、PanAd2 E3欠
失は、ゲノムPanAd2配列のヌクレオチド28653からヌクレオチド32599ま
でにわたり(配列番号62)、PanAd3 E3欠失は、ゲノムPanAd3配列のヌ
クレオチド28684からヌクレオチド32640までにわたる(配列番号63)。
【0174】
IV.E4領域の欠失
PanAd1、PanAd2及びPanAd3の固有のE4領域を欠失させ、Ad5
E4 ORF6コード配列(配列番号64)と置き換えた。PanAd1、PanAd2
及びPanAd3骨格中に導入されたE4欠失の座標は以下である:
PanAd1 E4欠失は、ヌクレオチド34690から37369までにわたり(配列
番号13);
PanAd2 E4欠失は、ヌクレオチド34696から37400までにわたり(配列
番号62);
PanAd3 E4欠失は、ヌクレオチド34690から37369までにわたる(配列
番号63)。
【0175】
欠失領域は全てのPanAd E4 orfを含有する一方で、E4固有のプロモータ
ー及びポリアデニル化シグナルは欠失していなかった。
【0176】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニ
ル化シグナル(Bgh polyA)をベースとするHIV gag及びHCV NS領
域発現カセットを、Emini et al.の国際公開第03/031588号に記載されるように
構築し、HCMV及びBgh polyAのDNA配列間の相同性を利用した大腸菌株B
J5183における相同組換えによってPanAd1、PanAd2及びPanAd3
ΔE1 EGFPベクターに挿入した。
【0177】
V.ChAd55 DE1発現ベクターの構築及びレスキュー
ChAd55のクローニングのためのシャトルベクターの構築
ChAd55シャトルを、PanAdベクターについて上記で記載したものと同じ戦略
に従うことによって構築した後、ChAd55ウイルスゲノムのクローニングに使用した
。この目的で、ウイルスゲノムの右端及び左端を含有するシャトルベクターpARS C
hAd55(ITR遺伝子からpIX遺伝子までの左端からE1領域を欠失させ、発現カ
セットで置換した)を、AscI制限酵素で線状化し、ChAd55精製ウイルスDNA
と共に大腸菌株BJ5183に同時形質転換した。pIX遺伝子から、線状化pARS
ChAd55及びChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びCh
Ad147精製ウイルスゲノムDNAの末端に存在する右側のITRまでのDNA配列間
の相同組換えによって、E1領域を同時に欠失させることによるプラスミドベクターへの
それらの挿入が可能となった。チンパンジーアデノウイルス55(ChAd55)ゲノム
のクローニング戦略の図を図4に提示する。
【0178】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニ
ル化シグナル(Bgh polyA)をベースとする発現カセットを、分泌型アルカリフ
ォスファターゼ(SEAP)遺伝子、EGFP遺伝子、HIV gag遺伝子、HCV
NS遺伝子を発現するように構築した。全ての発現カセットを、相同組換えによってΔE
1アデノウイルスプレプラスミドに移動するようにpARS ChAd55ベクターの単
一のSnaBI部位に挿入した。
【0179】
実施例3:免疫化実験
ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、Pa
nAd1、PanAd2及びPanAd3ベクターの潜在的組換えワクチンとしての有効
性を、マウスにおいてHIV gag形質導入遺伝子を発現するベクターを用いて評価し
た。ChAd55 gagのベクター効力を、並行して行った免疫化実験においてヒトA
d5 gagと比較した。10匹の動物の群について、大腿四頭筋に10vp/マウス
のベクター用量でAd5 gag又はChAd55 gagを注射した(図5A)。別個
の実験においては、5匹の動物の群に、10vp/マウスのベクター用量でAd5 g
ag又はPanAd1 gag、PanAd2 gag及びPanAd3 gagを注射
した(図5B)。ChAd73 gag、ChAd83 gag、ChAd146 ga
g及びChad147 gagの効力を、ChAd55 gagと並行して、5匹のマウ
スの群を10vp/マウスのベクター用量で免疫化することによって同様に決定した(
図5C)。HIV gagに対して引き起こされる免疫応答を、脾細胞に対するインター
フェロン−γ Elispotアッセイによって測定した。ヒトAd5 gagベクター
と比較した、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd1
47、並びにPanAd1、PanAd2及びPanAd3を用いた免疫化実験の結果か
ら、本発明の新規のアデノウイルスが、特異的免疫応答を引き起こす上で、従来技術の組
換えアデノウイルスAd5と少なくとも同程度効果的であることが示される。
【0180】
実施例4:中和研究
ヒト血清におけるナミチンパンジーアデノウイルス55、73、83、146、147
並びにボノボアデノウイルス1型、2型及び3型に対する中和抗体の陽性率を評価するた
めに中和アッセイを行った。このアッセイによって、分泌型アルカリフォスファターゼ(
SEAP)遺伝子を運搬して、ヒト293細胞に形質導入するChAd55、ChAd7
3、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2及び
PanAd3の能力に対する血清プレインキュベーションの影響を評価した。中和力価は
、血清の非存在下でウイルスを有する陽性対照において観察される、SEAP活性の50
%の低減をもたらす血清の希釈率として定義される。各々の血清試料を様々な希釈率(1
8倍希釈から始め、4倍ずつ増加させて4608倍までの5つ)で試験した。試料を37
℃で1時間プレインキュベートした後、96ウェルプレートに播種した293細胞(3×
10細胞/ウェル)に添加した。ヒト血清パネルを中和活性について試験した。並行し
て、同じパネルをAd5、並びにチンパンジー及びボノボAd SEAPベクターについ
て試験した。結果を図6に提示する。この結果から、チンパンジーアデノウイルスに対す
る血清陽性率が、ヒトアデノウイルスAd5よりも低いことが示される。しかしながら、
概して、既に記載されたChAd(CV−68)に対する中和抗体の存在を、被験体のサ
ブセットにおいて検出することができる。対照的に、これまでに試験された全てのヒト血
清は、ChAd55、並びにPanAd1、PanAd2及びPanAd3を非常に低い
力価であっても中和することができなかった。同じことがChAd73、ChAd83、
ChAd146及びChAd147についても観察された。したがって、新規のアデノウ
イルス分離株ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd1
47、並びにPanAd1、PanAd2及びPanAd3は、一般的なヒトAd血清型
(Ad5等)ベースのウイルスベクターの投与を制限する、既存の抗ヒトAd免疫の問題
に対する理想的な解決策を示す。
【0181】
実施例5:Ad5ベクターと比較したPanAd1ベクター及びPanAd3ベクターの
免疫化効率
PanAd1ベクター及びPanAd3ベクターの潜在的な組換えワクチンとしての有
効性を、BALB/cマウスにおいて単純ヘルペスウイルス(HSV)抗原を発現するベ
クター及び癌抗原を発現するベクターを用いて評価した。HSV Ag及び癌Agを発現
するPanAd1及びPanAd3のベクター効力を、ヒトAd5ベースの対応するベク
ターと比較した。
【0182】
抗ウイルス効力を評価するために、9つのBALB/cマウス群について、漸増用量(
10vp/マウスから始めて10vp/マウスまで)のベクターを、PanAd1−
HSV、PanAd3−HSV及びAd5−HSVと並行して大腿四頭筋に注射した(図
7Aを参照されたい)。HSV抗原に対して引き起こされる免疫応答を、抗原の全アミノ
酸配列を含むペプチドプールと共にインキュベートしたマウス脾細胞に対するインターフ
ェロン−γ Elispotアッセイによって測定した。ヒトAd5ベクターと比較した
、PanAd1、PanAd2及びPanAd3を用いた免疫化実験の結果を図7に報告
するが、本発明の新規のアデノウイルスが試験した各々の濃度で、特異的免疫応答を引き
起こす上で従来技術の組換えアデノウイルスAd5よりも効果的であることが示された。
このことは、PanAd1ベクター及びPanAd3ベクターで免疫化したマウスにおい
て観察される抗原特異的T細胞が、より高頻度であることによって明らかに実証される。
【0183】
PanAdベクターが抗腫瘍T細胞応答を引き起こす効率を、漸増用量(10vp/
マウスから始めて10vp/マウスまで)のベクターを大腿四頭筋に注射することによ
ってBALB/cマウスの群を免疫化することで評価した。2つのBALB/Cマウス群
に、10vp/マウス及び10vp/マウスで腫瘍抗原を発現するAd5ベクターを
注射した。並行して、3つのBALB/cマウス群を、同じ腫瘍抗原を運搬する10
p、10vp、10vpのPanAd1ベクター又はPanAd3ベクターで免疫化
した。T細胞応答を、マッピングされたCD8エピトープを示す単一のペプチドを用いて
、脾細胞に対するインターフェロン−γ Elispotアッセイによって測定した。図
7Bに示される結果から、PanAdベクターで免疫化した動物群において、Ad5ベク
ターで免疫化した動物群と比較して、最も低いワクチン用量で応答する動物の頻度がより
高く、抗原特異的T細胞の頻度がより高いことが実証される。
【0184】
実施例6:PanAdベクターでのカニクイザルの免疫化
3匹のカニクイザルの2つの群を、異種プライム/ブースト計画でCsCl精製Pan
Ad1及びPanAd3を筋肉内注射することによって免疫化した。群1の各々の動物に
は10vpの用量、群2の動物には1010vpの用量のPanAd3 Gagベクタ
ーを、0週目に三角筋に注射した。次いで、13週目に両群の全ての動物を、1010
pのPanAd1 Gagの単回投与によってブーストした。
【0185】
IFN−γ ELISPOTアッセイによって種々の時点でCMIを測定した。このア
ッセイによって、HIV抗原特異的CD8+及びCD4+Tリンパ球応答が測定される。
HIV Gagタンパク質のアミノ酸配列に基づくペプチドを、これらのアッセイに使用
するために調製し、アデノウイルスベクターをワクチン接種したサルにおける免疫応答を
測定した。個々のペプチドは、10個のアミノ酸によって相殺される重複する20mer
である。
【0186】
IFNγ−ELISPOTアッセイによって、抗原特異的Tリンパ球応答の定量的決定
がもたらされる。PBMCを段階希釈し、抗アカゲザルIFN−γ抗体(MD−1,U-Cy
tech)をコーティングしたマイクロプレートのウェルに入れた。これをHIV Gagペ
プチドプールと共に20時間培養すると、前駆細胞の再刺激及びIFN−γの分泌が得ら
れる。細胞を洗い流して、細胞が位置する集中領域において抗体コーティングウェルに結
合した分泌IFNを残した。捕捉されたIFNは、ビオチン化抗アカゲザルIFN抗体(
検出Ab、U-Cytech)、続いてアルカリフォスファターゼ結合ストレプトアビジン(Phar
mingen,13043E)を用いて検出される。不溶性アルカリフォスファターゼ基質の添
加によって、細胞が位置していた部位のウェルに暗いスポットが生じ、IFN−γを分泌
したT細胞と同じ数のスポットが残る。
【0187】
ウェル当たりのスポットの数は、抗原特異的T細胞の前駆体頻度と直接関係する。γイ
ンターフェロンは最も一般的であり、活性化Tリンパ球によって合成及び分泌される最も
豊富なサイトカインの1つであるため、このアッセイにおいて(特異的抗γインターフェ
ロンモノクローナル抗体を用いて)可視化するサイトカインとして選択した。このアッセ
イについては、PBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)の数を、ペプチ
ド抗原の存在下及び非存在下(媒体対照)で試料について決定する。1回目の投与後及び
2回目の投与後の種々の時点で得られる、PBMCに対するカニクイザルによるデータを
図8に示す。両方の投与の時点でPanAd3によってプライミングした全ての動物が、
HIV Gagに対するT細胞応答を示し、2回目のPanAd1の注射によって効率的
にブーストされ、ヘキソン、ペントン及びファイバーの配列アラインメントによって既に
示唆されているように、PanAd1及びPanAd3が、異種プライム−ブースト免疫
化計画において組み合わせることのできる異なる血清型であることが実証される。したが
って、本発明の別の態様では、異種プライム−ブースト免疫化への本発明の2つの組換え
アデノウイルスの使用が提供され、この場合、本発明の2つの組換えアデノウイルスは異
なるアデノウイルス血清型、最も好ましくは本明細書中で記載されるPanAd1及びP
anAd3である。
【0188】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]