特許第6262793号(P6262793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262793傾斜水路ブロック及び傾斜水路ブロックによる傾斜水路の構築方法並びに傾斜水路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262793
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】傾斜水路ブロック及び傾斜水路ブロックによる傾斜水路の構築方法並びに傾斜水路
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/02 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   E02B5/02 J
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-77860(P2016-77860)
(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公開番号】特開2017-186840(P2017-186840A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109966
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳顕
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−123034(JP,U)
【文献】 実開昭59−005636(JP,U)
【文献】 実開昭53−075927(JP,U)
【文献】 特開2002−256576(JP,A)
【文献】 特開2002−054254(JP,A)
【文献】 特開2002−322657(JP,A)
【文献】 実開昭53−008727(JP,U)
【文献】 特開昭63−277310(JP,A)
【文献】 米国特許第06059490(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00〜 8/08
E02B 9/00〜 13/02
E03F 1/00〜 11/00
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版、左右側壁部及び前方側落差壁部とより構成された上方が開放した断面略U字形状の傾斜水路ブロックにおいて、該左右側壁部は、底版両側端部より立設した壁部とし、該左右側壁部の上端部は高く形成した前方側より後方側へ漸次下方傾斜した傾斜上端部とし、前方側上縁部と後方側上縁部の高さの相違は、左右側壁部の水平方向の長さLと傾斜角度Rによって決まる寸法とし、該前方側落差壁部は、左右側壁部より落差壁部厚分突出し底版前方側先端より立設した該左右側壁部間の下方部を閉塞する横断方向の落差壁部とし、底版表面から該前方側落差壁部の上端部までの高さ、LtanRから底版厚分低く形成し、該底版の後方側の先端部裏面と該前方側落差壁部の上端部には、該底版の後方側の先端部裏面が別体の同一形状の傾斜水路ブロックの前方側落差壁部の上端部全面を覆って重なって連結できるように該先端部裏面と前方側落差壁部の上端部の対向する位置に各々ジョイントピン嵌入孔を設けてなることを特徴とする傾斜水路ブロック。
【請求項2】
後方側となる底版表面から左右側壁部間の下方部を閉塞する横断方向に抑制壁部を形成し、該抑制壁部の底版表面から上端部までの高さを、前方側落差壁部の底版表面から上端部までの高さより低く、且つ、当該位置における左右側壁部の底版表面から前方側上縁部と後方側上縁部を両縁部として形成される傾斜上端部の高さより低く立設形成してなることを特徴する請求項1記載の傾斜水路ブロック。
【請求項3】
傾斜地盤を段状に補強形成し、その表面側をモルタルやコンクリートを打設して水平面とし、該水平面上に請求項1又は2記載の傾斜水路ブロックの底版裏面が位置するようにして第1段目の傾斜水路ブロックを水平設置固定し、請求項1又は2記載の第2段目とした傾斜水路ブロックを、第2段目ブロックの底版後方側の先端部裏面に設けたジョイントピン嵌入孔の位置と第1段目の前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔の位置とを一致させて配置し、上記両ジョイントピン嵌入孔へのジョイントピンの嵌入により、第1段目の前方側落差壁部の上端部全面を第2段目の底版後方側の先端部裏面によって覆って重ね連結し、この連結により第1段目と第2段目の傾斜水路ブロックの左右側壁部の内側面を面一とし、且つ、底版側連結部からの漏水を防止できる位置に前後・縦横方向をそろえて両者を設置固定し、その後、請求項1又は2記載の第3段目とした傾斜水路ブロックを、その底版後方側の先端裏面に設けたジョイントピン嵌入孔と第2段目の前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔の位置をそろえ上記両ジョイントピン嵌入孔へのジョイントピンの嵌入により、第2段目の前方側落差壁部の上端部全面を第3段目の底版後方側の先端部裏面によって覆って重ね連結し、この連結により第2段目と第3段目の傾斜水路ブロックの前後・縦横方向をそろえて両者を設置固定し、以下同様に、第4段目の傾斜水路ブロック、…を順次繰り返し設置固定することにより傾斜地盤の傾斜方向に水路を延ばしてなることを特徴とする傾斜水路の構築方法。
【請求項4】
請求項3記載の第1段目の傾斜水路ブロックの前方側落差壁部の上端部形成したジョイントピン嵌入孔にジョイントピンの上方を突出させて挿入し、同第2段目の傾斜水路ブロックの底版後方側の先端裏面に形成したジョイントピン嵌入孔に該ジョイントピンの突出側を挿入することで第1段目及び第2段目の傾斜水路ブロックの前後縦横方向がそろうように設置固定し、以下同様に、第3段目傾斜水路ブロック、…を順次繰り返し設置固定することにより傾斜地盤の傾斜方向上方に水路を延ばしてなることを特徴とする傾斜水路の構築方法。
【請求項5】
傾斜地盤の表面側をモルタルやコンクリートにより段状に補強した水平面上に請求項1又は2記載の形状の傾斜水路ブロックを第1の傾斜水路ブロックとして設置され、その前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入されたジョイントピンの突出部を、請求項1又は2記載の形状の別途第2の傾斜水路ブロックの底版後方側の先端裏面に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入することで第1、第2の傾斜水路ブロック相互が連結されて第2の傾斜水路ブロックが水平面上に設置され、同様に、第2の傾斜水路ブロックの前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入されたジョイントピンの突出部を、請求項1又は2記載の形状の別途第3の傾斜水路ブロックの底版後方側の先端裏面に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入することで第2、第3の傾斜水路ブロック相互が連結されて第3の傾斜水路ブロックが水平面上に設置され、上記連結による傾斜水路ブロックの設置を繰り返すことで長手方向に延設してなることを特徴とする傾斜水路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地に水路として設置する傾斜水路ブロック及びその傾斜水路ブロックによる傾斜水路の構築方法並びにその構築方法によって構築された傾斜水路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
傾斜地等の勾配のある又は勾配の急な地盤では大量の雨水が流速に勢いを伴って落水し、水害を発生させているが、それを防止するために水路を構築して排水を試みているが、それら水路を設ける箇所は傾斜地等であり、現場打ちコンクリートで構築するような場合には長期間にわたり困難な作業を強いられ、また、作業には危険を伴うものであった。
【0003】
そこでプレキャストコンクリートによるブロック状に形成したものを連結することで安全な作業による工期の短縮化を図っている。また、構築した該水路には勾配が生じているため雨水は水路内を勢いよく流下しているためその水勢を抑制することも課題となっている。
【0004】
下記する特許文献1は、水路の底版にコンクリート製等の三角柱状のブロックを、その両側縁と水路内壁との間を楔を打ち込むことにより圧着固定し、階段となるような状態で敷設することで水勢抑制を図ったものである。
【0005】
また、下記する特許文献2は、底版と該底版の後縁部に立設された縦壁と縦壁の上端から前方に突設された支持壁と該底版の前縁部に立設された左右方向に延びる受止め壁とを備えることで水路内に一定の水が留まるようにしたブロックである。
【0006】
上記特許文献1にあっては、雨水の水勢を抑制させて流下させることを目的としているが、雨水の一部を段部内に留めさせ、そのオーバーフロー分を流下させることで水勢を抑制させる水路ではなく、また、水路本体を形成する個々のブロックの一部を重ねることにより段部を形成し、それを連続して連結していくことで水路を形成するものでもない。
【0007】
また、上記特許文献2にあっては、魚巣を目的とする護岸、落差工及び魚道等に使用するブロックであり、魚等の水棲生物のために底版を覆うように支持壁が大きく前方へ突出しており、また、下流方向への水勢を効率よく抑制しながら水を流下させるものではなく、横方向へ水が逃げるようにしているものであり、本発明の長手方向に対する水勢抑制を図る水路ではない。
【0008】
上記特許文献を含めプレキャストコンクリートによるブロック状の部材を連結するだけで、連結部の接合処理や防水処理を特別に行う必要がなく、且つ、連結し易い傾斜地のための傾斜水路ブロックは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平成7−310359号公報
【特許文献2】特許第2709429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、予め工場等で製造した傾斜水路ブロックを採用し、その傾斜水路ブロックを傾斜地に順次連結設置し、その設置作業により連結部を含め水路底部側から漏水の生じることのない水路の構築の短縮化を図り、且つ、水勢の抑制及び砂や礫等の土塵物を除去しながら雨水を流下させることのできる傾斜水路ブロック及びその傾斜水路ブロックによる傾斜水路並びにその構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、底版、左右側壁部及び前方側落差壁部とより構成された上方が開放した断面略U字形状の傾斜水路ブロックにおいて、該左右側壁部は、底版両側端部より立設した壁部とし、該左右側壁部の上端部は高く形成した前方側より後方側へ漸次下方傾斜した傾斜上端部とし、前方側上縁部と後方側上縁部の高さの相違は、左右側壁部の水平方向の長さLと傾斜角度Rによって決まる寸法とし、該前方側落差壁部は、左右側壁部より落差壁部厚分突出し底版前方側先端より立設した該左右側壁部間の下方部を閉塞する横断方向の落差壁部とし、底版表面から該前方側落差壁部の上端部までの高さ、LtanRから底版厚分低く形成し、該底版の後方側の先端部裏面と該前方側落差壁部の上端部には、該底版の後方側の先端部裏面が別体の同一形状の傾斜水路ブロックの前方側落差壁部の上端部全面を覆って重なって連結できるように該先端部裏面と前方側落差壁部の上端部の対向する位置に各々ジョイントピン嵌入孔を設けてなる傾斜水路ブロックを特徴とする。
【0012】
また、後方側となる底版表面から左右側壁部間の下方部を閉塞する横断方向に抑制壁部を形成し、該抑制壁部の底版表面から上端部までの高さを、前方側落差壁部の底版表面から上端部までの高さより低く、且つ、当該位置における左右側壁部の底版表面から前方側上縁部と後方側上縁部を両縁部として形成される傾斜上端部の高さより低く立設形成してなる傾斜水路ブロックを特徴とする。
【0014】
更に、傾斜地盤を段状に補強形成し、その表面側をモルタルやコンクリートを打設して水平面とし、該水平面上に請求項1又は2記載の傾斜水路ブロックの底版裏面が位置するようにして第1段目の傾斜水路ブロックを水平設置固定し、請求項1又は2記載の第2段目とした傾斜水路ブロックを、第2段目ブロックの底版後方側の先端部裏面に設けたジョイントピン嵌入孔の位置と第1段目の前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔の位置とを一致させて配置し、上記両ジョイントピン嵌入孔へのジョイントピンの嵌入により、第1段目の前方側落差壁部の上端部全面を第2段目の底版後方側の先端部裏面によって覆って重ね連結し、この連結により第1段目と第2段目の傾斜水路ブロックの左右側壁部の内側面を面一とし、且つ、底版側連結部からの漏水を防止できる位置に前後・縦横方向をそろえて両者を設置固定し、その後、請求項1又は2記載の第3段目とした傾斜水路ブロックを、その底版後方側の先端裏面に設けたジョイントピン嵌入孔と第2段目の前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔の位置をそろえ上記両ジョイントピン嵌入孔へのジョイントピンの嵌入により、第2段目の前方側落差壁部の上端部全面を第3段目の底版後方側の先端部裏面によって覆って重ね連結し、この連結により第2段目と第3段目の傾斜水路ブロックの前後・縦横方向をそろえて両者を設置固定し、以下同様に、第4段目の傾斜水路ブロック、…を順次繰り返し設置固定することにより傾斜地盤の傾斜方向に水路を延ばしてなる傾斜水路の構築方法を特徴とする。
【0015】
また、上記第1段目の傾斜水路ブロックの前方側落差壁部の上端部形成したジョイントピン嵌入孔にジョイントピンの上方を突出させて挿入し、同第2段目の傾斜水路ブロックの底版後方側の先端裏面に形成したジョイントピン嵌入孔に該ジョイントピンの突出側を挿入することで第1段目及び第2段目の傾斜水路ブロックの前後縦横方向がそろうように設置固定し、以下同様に、第3段目傾斜水路ブロック、…を順次繰り返し設置固定することにより傾斜地盤の傾斜方向上方に水路を延ばしてなる傾斜水路の構築方法を特徴とする。
【0016】
更に、傾斜地盤の表面側をモルタルやコンクリートにより段状に補強した水平面上に請求項1又は2記載の形状の傾斜水路ブロックを第1の傾斜水路ブロックとして設置され、その前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入されたジョイントピンの突出部を、請求項1又は2記載の形状の別途第2の傾斜水路ブロックの底版後方側の先端裏面に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入することで第1、第2の傾斜水路ブロック相互が連結されて第2の傾斜水路ブロックが水平面上に設置され、同様に、第2の傾斜水路ブロックの前方側落差壁部の上端部に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入されたジョイントピンの突出部を、請求項1又は2記載の形状の別途第3の傾斜水路ブロックの底版後方側の先端裏面に設けたジョイントピン嵌入孔へ嵌入することで第2、第3の傾斜水路ブロック相互が連結されて第3の傾斜水路ブロックが水平面上に設置され、上記連結による傾斜水路ブロックの設置を繰り返すことで長手方向に延設してなる傾斜水路を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の傾斜水路ブロック及びそれにより構築された傾斜水路は、前方側に落差壁部を設けているので雨水の急激な落下により流速を減速させることができ、また、底版後方側から立ち上がった抑制壁部により湛水部を形成して水を一時的に留めさせることにより流速を更に減速することができ、且つ、雨水に含まれる砂や礫等の土塵物の移動を防止して水路の底部に損傷を与えないようにすることが可能となった。
【0018】
また、傾斜水路ブロックを傾斜部の下方側から構築する際、先に設置した傾斜水路ブロックの前方側落差壁部が、後に設置する傾斜水路ブロックを支持する基礎部材としての役割を成し、且つ、傾斜地を階段状に掘削した地盤面を該傾斜水路ブロックを設置するための水平面を形成するためのモルタルやコンクリート等の未硬化基礎材の下流側への流出を防止する型枠としての役割を成すことが可能となった。
【0019】
更に、傾斜水路ブロックを下方側から一部を重ねて連続形成する際に、前方側落差壁部に設けたジョイントピンを介することにより下方側の傾斜水路ブロックに対する上方側の傾斜水路ブロックの前後、上下左右の位置関係を一致させることができ、連続構築する傾斜水路ブロック間にずれが生じることなく素早く連結一体化することが可能となった。
【0020】
また、上流側の傾斜水路ブロックの底版の先端部が下流側の傾斜水路ブロックの前方側落差壁部を覆って連結されるので、設置後において水路の底版側の連結部に別途の接合手段や防水手段を設けることなく当該箇所からの漏水を防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)本発明の傾斜水路ブロックの斜視図、(b)同平面図。
図2】本発明の傾斜水路ブロックの断面図。
図3】本発明の傾斜水路ブロックを傾斜地において連結した状態の断面図。
図4】本発明の傾斜水路ブロックを傾斜地において連結する他の施工方法の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
傾斜水路ブロック1は、図1(a)に示すように、底版2、左側壁部3、右側壁部4及び前方側落差壁部5とより構成された上方が開放した断面略U字形状を形成したプレキャストコンクリート製のブロックである。該底版2は、表面側を平滑面として形成した厚みのある板状のもので、その左右端部から該左右側壁部3、4が立設形成され、前方側端部から該前方側落差壁部5が立設形成されている。
【0024】
該左右側壁部3、4は、前方側落差壁部5の上端部6より高く形成した厚みのある傾斜壁で、その上端部7、8は傾斜地の傾斜角度に沿うように前方側左右端縁部9、10上端の左右上縁部11、12から後方側へ下向傾斜し、後方側左右端縁部13、14上端の左右下縁部15、16へ向けて漸次傾斜している。該底版2の後方側縁部面と該後方側左右端縁部13、14面とは面一となるように形成している。
【0025】
該前方側落差壁部5は、底版2の前方側端部より立設され、その底版2の裏面側からの高さは傾斜地を階段状に形成した傾斜水路ブロック1の設置部のほぼ踏み上げ高さに相当する高さを有し、流水に落差を生じさせると同時に、傾斜地を階段状に掘削した端縁部の崩壊を防止するとともに階段部の踏み面に相当する部分を平坦な水平面とするためのモルタルやコンクリート等の未硬化基礎材の先端側垂直部の型枠としての機能を果たすものである。
【0026】
該前方側落差壁部5の底版2表面から上端部6までの高さは、左右側壁部3、4の前方側左右端縁部9、10と後方側左右端縁部13、14の水平寸法Lと上端部7、8の傾斜角度Rで決定される。
【0027】
図2の断面図に示すように、左右側壁部3、4の水平方向となる長さをLとし、傾斜地の傾斜角度の沿った角度をRとした場合、前方側左右端縁部9、10での前方側落差壁部5の内側面における高さ寸法HはLtanRとなる。該前方側落差壁部5の底版2表面から上端部6までの高さYは、底版2の厚さMを減じた寸法としておくことにより、後施工する傾斜水路ブロック1の底版2の先端部裏面側が該上端部6上に位置して連結されることになる。従って、傾斜地の傾斜角度Rが測定され、左右側壁部3、4の水平方向の長さ寸法Lと底版2の厚さMが特定できれば、該前方側落差壁部5の高さを決めることができる。
【0028】
その際、底版2から左右側壁部3、4の上端部7、8までとなる水路の深さは、傾斜水路ブロック1を設置する傾斜地の状況に応じて点線で示すように適宜決めることになる。
【0029】
同様に、傾斜地の傾斜角度Rを測定し、該前方側落差壁部5の高さ寸法Hが特定されれば、左右側壁部3、4の水平方向の長さ寸法Lを決めることが可能となる。
【実施例2】
【0030】
底版2の長手方向中央部或いは後方側に水流の勢いを和らげる抑制壁部17を立設する。該抑制壁部17の底版2表面から上端部18までの高さは、前方側落差壁部5の底版2表面から上端部6までの高さより低く、且つ、当該位置における左右側壁部の底版2表面から前方側左右上縁部11、12と後方側左右上縁部15、16間の上端部7、8の高さより低く形成して立設する。
【0031】
該抑制壁部17が堰の役割をし、雨水が水路より流出することなく流水を一時的に留める湛水部を形成することができ、それにより流速を減速させることが可能となる。更に、雨水とともに流れてきた砂や礫或いは小枝等の土塵物の下流側への移動を防止して水路の底版2を損傷させないことができる。
【実施例3】
【0032】
図3に示すように、傾斜地において、上記傾斜水路ブロック1を順次、下方側より設置連結して連続した水路を形成することができる。傾斜地に段部20を形成し、該段部20の踏み面に相当する平坦な水平面上に該傾斜水路ブロック1の底版2が水平となるように設置固定する。段部20の不陸を調整して底版2設置面が水平となるようにし、且つ、段部20を形成する地盤と底版2との固定を良好とするために、該段部20表面側にモルタルやコンクリート材等の連結材21を打設し、水平面を形成する。
【0033】
該連結材21の左右側壁部側は掘削した地盤が型枠の役割を成し、段部20の先端側は先に設置した傾斜水路ブロック1の前方側落差壁部5の立ち上がり面が型枠の役割を成すことができ、且つ、該前方側落差壁部5の上端部6が段部20の水平面の位置となるので、それを基準として地盤の表面側を平坦な水平面とすることが容易となる。
【0034】
段部20が水平とされた上面に傾斜水路ブロック1の底版2を水平に設置し、その先端部を先に設置した前方側落差壁部5の上端部6全面を覆うように位置させ、左右側壁部3、4の各々の後方側左右端縁部13、14を先に設置した傾斜水路ブロック1の左右側壁部3、4の前方側左右端縁部9、10にずれることなく当接させることで傾斜水路ブロック1相互を連結することになる。この状態で必要に応じて左右端縁部9、10、13、14間に防水モルタルやコーキング等を充填して防水処理を施すことで連続一体化した水路を得ることが可能となる。
【0035】
上記連結により後に施工する傾斜水路ブロック1の底版2側は、その先端部の裏面側が先行した傾斜水路ブロック1の前方側落差壁部5の上端部6上に載って上端部全面を覆うことになり、上流側から流れてくる雨水が当該連結部から地盤側へ漏れ出すことはなく、当該連結部において特別な接合処理や防水処理を施す必要はない。
【0036】
また、傾斜水路ブロック1の沈下や不陸を防止するために連結部となる前方側落差壁部5の下方側地盤に予め杭22を打ち込んでおき、当該部分を補強しておくことができる。
【0037】
上記施工方法は、連結部の接合処理や防水処理の割愛等により現場での作業を省力化することが可能となった。また、構築された傾斜水路は雨水の流速を抑えることができ、砂や礫等の土塵物の下流側への流出を抑え、水路面の底版2表面や左右側壁部3、4の内側面等の水路内面に損傷を与えることが少なくなり、長期間にわたって水路内面における平滑面を維持することが可能となった。
【実施例4】
【0038】
図4に示すように、前方側落差壁部5の上端部6に落差壁側ジョイントピン嵌入孔23を設け、他方、底版2の裏面の先端側に底版側ジョイントピン嵌入孔24を設けておくことができる。
【0039】
上記ジョイントピン嵌入孔23、24は、各々定まった対向する位置に予め設けられ、両者の各々のジョイントピン嵌入孔23、24にジョイントピン25の下半部及び上半部が上下に位置する傾斜水路ブロック1の対向する各々の嵌入孔に嵌入されることになる。
【0040】
先行して設置された傾斜水路ブロック1の前方側落差壁部5の上端部6に形成されたジョイントピン嵌入孔23にジョイントピン25の下半分を嵌入し、その後、上端部6から突出したジョイントピン25の上半分を、後から設置する傾斜水路ブロック1の底版2裏面先端側に形成されたジョイントピン嵌入孔24に嵌入することで上下の傾斜水路ブロック1、1相互を連結することになる。
【0041】
該ジョイントピン嵌入孔23、24は、傾斜水路ブロック1、1の横方向及び縦方向の位置を予め一致する特定箇所に形成されているので、下方側の傾斜水路ブロック1の該ジョイントピン嵌入孔23に嵌入されたジョイントピン25の上半分に上方側の傾斜水路ブロック1のジョイントピン嵌入孔24に入れ込み嵌入することで傾斜水路ブロック1、1相互の横方向、縦方向及び高さの設置位置がずれることなく、前後上下左右を一致させて設置連結することが可能となる。
【0042】
また、先に設置した前方側落差壁部5の上端部6と底版2裏面の先端部との連結部は、予め接地地盤の水平面を該上端部6の面と一致させてあるので、両者間に隙間が生じることなく連結することができ、且つ、底版2の先端縁部が先に設置した前方側落差壁部5の内側壁面に位置或いは当該面より少し突出する位置に設置されることになるので、流下した雨水が当該連結部より漏出するおそれがなく、接合処理や防水処理等の手段を講じておく必要がない。
【0043】
上記実施例は、本発明の一形態を示したもので、必要に応じて他の構成のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 傾斜水路ブロック
2 底版
3 左側壁部
4 右側壁部
5 前方側落差壁部
6 落差壁部の上端部
7 左側壁部の上端部
8 右側壁部の上端部
9 前方側左端縁部
10 前方側右端縁部
11 左上縁部
12 右上縁部
13 後方側左側端縁部
14 後方側右側端縁部
15 左下縁部
16 右下縁部
17 抑制壁部
18 上端部
20 段部
21 連結材
22 杭
23 落差壁側ジョイントピン嵌入孔
24 底版側ジョイントピン嵌入孔
25 ジョイントピン
図1
図2
図3
図4