特許第6262803号(P6262803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262803ポリフェニレンエーテル微粒子分散体の調製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262803
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテル微粒子分散体の調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/09 20060101AFI20180104BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20180104BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20180104BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08J3/09CEZ
   C08L71/12
   C08L9/00
   C08K3/00
   C08K5/00
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-98697(P2016-98697)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2016-216715(P2016-216715A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】104115720
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】599011296
【氏名又は名称】南亜塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】廖徳超
(72)【発明者】
【氏名】莊榮仁
(72)【発明者】
【氏名】陳豪昇
(72)【発明者】
【氏名】李奕成
(72)【発明者】
【氏名】黄章鑑
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−034731(JP,A)
【文献】 特開2014−162850(JP,A)
【文献】 特開平11−021506(JP,A)
【文献】 特開2013−194137(JP,A)
【文献】 特開平09−031220(JP,A)
【文献】 特開2010−257935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル微粒子分散体の調製プロセスであり、
(a)12,000〜30,000g/モルのMnを有する高分子量ポリフェニレンエーテル(HM−PPE)、及び800〜6,000g/モルのMnを有する低分子量ポリフェニレンエーテル(LR−PPE)をそれぞれ選択する工程;
(b)HM−PPEを45〜110℃で溶解させる第1溶媒を選択すること、及びHM−PPEを溶解しない第2溶媒を選択する工程であり、
前記第1溶媒はベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、及びこれらの任意の組み合わせから選択され;かつ
前記第2溶媒はジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びこれらの任意の組み合わせから選択されることを特徴とする工程;
(c)45℃〜110℃の範囲の温度にて、前記第1溶媒中に工程(a)の前記HM−PPEを溶解させて、PPE系溶液を形成する工程;
(d)工程(a)の前記LR−PPE、及び添加剤として選択した加工助剤を共に、工程(c)の前記PPE系溶液中に加えた後で、前記LR−PPE及び前記加工助剤が前記溶液全体に均一に分散するまで、十分に攪拌を実施する工程であり、
前記加工助剤はポリブタジエン樹脂、難燃剤、充填剤、架橋剤、反応開始剤、これらの任意の組み合わせから選択されることを特徴とする工程;
(e)工程(d)の前記PPE系溶液を、42℃〜80℃の範囲の温度まで冷却し、前記第2溶媒に対する前記第1溶媒の重量比が0.10〜2.0の範囲下にて、工程(d)の前記PPE系溶液中に工程(b)の前記第2溶媒を添加することにより、前記PPEが前記加工助剤の周りを包囲して、前記PPE系溶液中に連続的に生じるPPE微粒子として形成される工程;並びに
(f)工程(e)の前記PPE系溶液を、0℃〜40℃の範囲の温度まで冷却して、40℃未満で実施する含浸プロセスに好適な前記PPE微粒子分散体を得る工程、を含む、
調整プロセス。
【請求項2】
前記第2溶媒は更にメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第2溶媒は更にジメチルホルムアミド、メチルアセトアミド、ジエチルアミド、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第2溶媒に対する前記第1溶媒の重量比は0.15〜1.5の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2溶媒に対する前記第1溶媒の重量比は0.20〜1.2の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記難燃剤は、臭素含有難燃剤、リン含有難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、ポリリン酸メラミン系難燃剤、シアヌル酸メラミン系難燃剤、ホスホニトリル系難燃剤、及び無機難燃剤から選択され、前記充填剤はSiO2、Al(OH)3、Al2O3、TiO2、Mg(OH)2及びCaCO3から選択され、前記架橋剤はTAIC、TAC、TMAIC、TMPTMA、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート及びジアリルイソシアヌレートからなる群から選択される1つ以上であり、かつ前記反応開始剤はBPO、CHP、DCP、tert−ブチルクミルペルオキシド、イミダゾール(IMZ)、トリフェニルホスフィン(TPP)、2−メチルイミダゾール(2MI)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、又は1,1−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TMCH)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記PPE微粒子分散体は、前記PPE微粒子及び非PPE微粒子で構成される固体内容物を含有し、かつ前記固体内容物は分散体全体の30〜70重量%を占めることを特徴とする、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記PPE微粒子は、前記PPE微粒子の80重量%超を占めるHM−PPEを含有することを特徴とする、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
0.5〜20μmの直径を有するこれらのPPE微粒子を含有する前記PPE微粒子分散体は、前記PPE微粒子分散体内に分散する前記PPE微粒子の合計の70重量%超を占めることを特徴とする、請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル(PPE)微粒子分散体に関し、より詳細には、40℃未満で実施する含浸プロセスに好適なPPE微粒子分散体の調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
PPEは、優れた絶縁能力、耐酸/アルカリ性、並びに優れたDk(誘電率)及びDf(誘電正接)を有する樹脂を表す。本材料はまた、低Dk及び低Dfを必要とする高周波数銅張積層板にも適しているため、高周波数通信デバイスで幅広く使用されている。
【0003】
PPE樹脂は、分子量が大きい場合に一層良好な電気的性質を有する。良好な電気的性質のためには、PPEの各分子は、0.001〜0.1の範囲の平均フェノール性水酸基(即ち、OH基の数)を有するのが好ましい。しかし、高周波数銅張積層板(以下「HF−CCL」と略述する)の製造に現在使用されているPPE樹脂は大部分が、9,000g/モル未満の数平均分子量(以下「Mn」と略述する)を有する低分子量PPE(以下「LR−PPE」と略述する)である。
LR−PPEは溶媒に高溶解性である利点を有し、40℃未満の含浸に好適である一方で、LR−PPEは、電気的性質、ガラス転移温度(Tg)及び機械的強度の観点では、12,000g/モルを超えるMnを有する高分子量PPE(「HM−PPE」と略述する)よりも相当劣っており、高周波数銅張積層板の改良に役立たない。
【0004】
高周波数銅張積層板を製造するための、PPE樹脂を使用する従来の方法においては、メチルベンゼン、ブタノン及びジメチルホルムアミドの1つを溶媒として使用してPPEを溶解させ、PPE溶液を形成する。次に、難燃剤、シリカ、結着剤、又は反応開始剤等の加工助剤を加え、十分に攪拌してワニスを形成する。ワニスを後ほど用い、ガラス繊維に40℃にて含浸する。ワニスの含浸後、プリプレグを乾燥させ、熱プレスに通して高周波数銅張積層板を作製する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
向上した電気的性質を有する高周波数銅張積層板を得るためには、HF−CCL製造で用いるPPE樹脂は、HM−PPE樹脂、即ち12,000g/モルを超えるMnを有する樹脂であることが好ましい。しかし、ワニスの調製中及び含浸中には、HM−PPE溶液は40℃を超える温度を必要とする。高温含浸の必要条件により、高周波数銅張積層板を作製するための高温含浸装置の必要性が生ずる。これは、高コスト及び加工安全性に関係する問題を引き起こす。
【0006】
これらの問題を解決するためのアプローチとして、現在では、8,000を超えるが40,000未満のMnを有するHM−PPE樹脂を摩砕、粉砕してHM−PPE粒子内に入れるか、又はHM−PPE粒子内に結晶化させる。必要な特定の加工助剤と均一に混合したこれらのHM−PPE粒子から作製したワニスを使用することにより、室温にて含浸を実施することが可能である。
しかし、かかるPPE分散体では、HM−PPE粒子が加工助剤と共存することが可能となるのみであり、その後、両方が固固接触又は固液接触のようになる原因となるため、かかるPPE分散体は、加工助剤を完全に包囲するHM−PPE微粒子を有する構造で画定される真の微粒子分散体とはならない。
【0007】
したがって、最新技術で開示されている既存のPPE分散体は、ミクロ層の観点から観察すると十分に均質化していない。HF−CCLの作製に用いるためのかかる非均質なPPE分散体は、電気的性質、機械的強度及び耐熱性の観点で、得られるHF−CCLに否定的な影響を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この観点において、本発明は、均一に分散し、特にHM−PPEにより形成されて加工助剤を完全に包囲する微粒子を有するPPE微粒子分散体の調製プロセスを開示する。
【0009】
本発明のかかるPPE微粒子分散体はワニスにした場合に、繊維状材料(ガラス繊維等)に、ワニスを40℃未満で含浸させて、高周波数銅張積層板(HF−CCL)の作製に使用するプリプレグの形成を可能にする。
【0010】
PPE微粒子分散体は、HF−CCLの電気的性質の向上、及び40℃を超える高温含浸の必要性の除去を含む多くの利点をもたらすため、本発明のPPE微粒子分散体は、HF−CCLの作製での使用に大変好適である。その結果、別様では高温含浸装置に必要なコストを節約でき、製造プロセスがより安全となる。
【0011】
以下の工程を含む、本発明に係るPPE微粒子分散体の調製プロセスを開示する。
(a)12,000g/モル〜30,000g/モルの範囲のMnを有する高分子量ポリフェニレンエーテル(HM−PPE)、及び800g/モル〜6,000g/モルの範囲のMnを有する低分子量ポリフェニレンエーテル(LR−PPE)をそれぞれ選択すること。
(b)HM−PPEを45〜110℃で溶解させる第1溶媒を選択すること、及びHM−PPEを溶解しない第2溶媒を選択すること。
(c)45℃〜110℃の範囲の温度にて、前記第1溶媒中に工程(a)の前記HM−PPEを溶解させて、PPE系溶液を形成すること。
(d)工程(a)の前記LR−PPE、及び添加剤として選択した加工助剤を共に、工程(c)の前記PPE系溶液中に加えた後で、前記LR−PPE及び前記加工助剤が前記溶液全体に均一に分散するまで、十分に攪拌を実施すること。
(e)工程(d)の前記PPE系溶液を、42℃〜80℃の範囲の温度まで冷却し、前記第2溶媒に対する前記第1溶媒の重量比が0.10〜2.0の範囲下にて、工程(d)の前記PPE系溶液中に工程(b)の前記第2溶媒を添加することにより、前記PPE系溶液中で連続的に生じる、前記PPEが前記加工助剤の周りを包囲すること。
(f)工程(e)の前記PPE系溶液を0℃〜40℃の範囲の温度まで冷却して、40℃未満で実施する含浸プロセスに好適なPPE微粒子分散体を得ること。
【0012】
本発明に係る、45〜110℃にてHM−PPEを溶解可能な第1溶媒は、ベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0013】
本発明に係る、HM−PPEを溶解不可能な第2溶媒は、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0014】
本発明に係るPPE微粒子分散体の作製での使用のために選択される加工助剤はポリブタジエン樹脂、難燃剤、充填剤、架橋剤、反応開始剤、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るPPE微粒子分散体は、以下の予期しない効果を有する。
1.PPE微粒子分散体が向上し、繊維状材料(ガラス繊維等)の40℃未満での含浸を可能にすることにより、40℃を超える操作温度下にてプリプレグの作製に使用するための高温含浸装置が必要でなくなるため、本発明のPPE微粒子分散体は安全性及び経済性に関係する利点を有する。
2.HM−PPEの各微粒子は高い均質性で混合したHM−PPE及び加工助剤の両方を有するため、高周波数銅張積層板の作製で用いた場合、PPE微粒子分散体は、得られる高周波数銅張積層板を、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)及び高ガラス転移温度(Tg)、並びに銅箔の高剥離強度及び機械的強度を含む、物理的性質が優れたものにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】走査電子顕微鏡により撮影した、実施例1で作製したPPE微粒子のSEM写真である。
図2】エネルギー分散型分光計により入手した、実施例1で作製したPPE微粒子のEDSスペクトルである。
図3】走査電子顕微鏡により撮影した、実施例5で作製したPPE微粒子のSEM写真である。
図4】エネルギー分散型分光計により入手した、実施例5で作製したPPE微粒子のEDSスペクトルである。
図5】走査電子顕微鏡により撮影した、実施例9で作製したPPE微粒子のSEM写真である。
図6】エネルギー分散型分光計により入手した、実施例9で作製したPPE微粒子のEDSスペクトルである。
図7】走査電子顕微鏡により撮影した、実施例10で作製したPPE微粒子のSEM写真である。
図8】エネルギー分散型分光計により入手した、実施例10で作製したPPE微粒子のEDSスペクトルである。
図9】走査電子顕微鏡により撮影した、実施例12で作製したPPE微粒子のSEM写真である。
図10】エネルギー分散型分光計により入手した、実施例12で作製したPPE微粒子のEDSスペクトルである。
図11】走査電子顕微鏡により撮影した、実施例14で作製したPPE微粒子のSEM写真である。及び、
図12】エネルギー分散型分光計により入手した、実施例14で作製したPPE微粒子のEDSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
微粒子がPPE微粒子分散体中に均一に分散しているだけでなく、高分子量PPE(HM−PPE)を、本発明のPPE微粒子分散体の調製用の添加剤として選択される加工助剤の周りを包囲させることにより形成されるという、特定の構造的特徴を有する新規のPPE微粒子分散体を調製するためのPPE微粒子分散体の調製プロセスを、本発明により開示する。また、明確性のため、かかるPPE微粒子分散体は以下、本発明の「PPE微粒子」と称される。
【0018】
開示された本発明のPPE微粒子は、繊維状材料又はガラス繊維を、本発明のPPE微粒子と40℃未満で含浸させることにより形成されるプリプレグの作製で使用するのに十分に好適であることにより、40℃を超える作業温度下にて高温含浸装置を使用することによりプリプレグを作製する既知のプロセスを取り除き、不必要とすることができる。
【0019】
表1に示す通り、PPEは異なる温度範囲にて異なる溶媒に異なったように溶解する。
【0020】
【表1】
【0021】
表1に見ることができるように、HM−PPEは芳香族溶媒(以下、「リッチ溶媒」又は「第1溶媒」と略述する)には45〜110℃で溶解することができるが、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒又はアミド系溶媒(以下、「リーン溶媒」又は「第2溶媒」と略述する)には0〜80℃で溶解しない。これに対して、LR−PPEは芳香族溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒又はアミド系溶媒に容易に溶解することができる。
【0022】
したがって、開示した方法はHM−PPEの特性に基づき、リッチ溶媒/リーン溶媒の重量比、開示したPPE微粒子分散体の調製のための供給時間及び反応温度の特有の組み合わせを用いる。
【0023】
特に、本発明により提供されるPPE微粒子の調製プロセスは、以下の主要技術を伴う。
1.芳香族溶媒等の、45〜110℃にてHM−PPEを溶解可能な第1溶媒(又はリッチ溶媒とも称される)の使用。
2.ケトン系溶媒、アルコール系溶媒又はアミド系溶媒等の、0〜80℃にてHM−PPEを溶解しない第2溶媒(又はリーン溶媒とも称される)の使用。
3.HM−PPEが第1溶媒に溶解し、HM−PPE溶液を形成した際に作製されるのみの、加工助剤(難燃剤、充填剤及び混合物等)の添加。
4.加工助剤をHM−PPE溶液に添加し、HM−PPE溶液を冷却してHM−PPEを分離する際に作製されるのみの、第2溶媒の添加。
5.分離したHM−PPEを均一に加工助剤と混合させる攪拌により、HM−PPEを加工助剤中の不溶性物質と混ぜ合わせて、HM−PPEが加工助剤を包囲するPPE微粒子を最終的に形成すること。
【0024】
前述の技術に基づき、開示したPPE微粒子分散体の調製プロセスは、以下の工程を含む。
a)反応物質として、12,000〜30,000g/モルのMnを有する高分子量ポリフェニレンエーテル(HM−PPE)を選択すること。
b)45〜100℃、好ましくは50〜100℃、及びより好ましくは60〜90℃の温度にて、第1溶媒中に工程(a)のPPE反応物質を溶解させてPPE系溶液を形成すること。
c)PPE系溶液中のHM−PPEが完全に溶解し流動性になった後、800〜6,000g/モルのMnを有する低分子量ポリフェニレンエーテル(LR−PPE)及び加工助剤を、工程(b)のPPE系溶液内に添加し、加工助剤が溶液全体に均一に分散するまで十分な攪拌を続け、分散相のPPE系溶液を形成すること。
d)工程(c)のPPE系溶液を42〜80℃、好ましくは45〜75℃、及びより好ましくは50〜70℃まで冷却し、第2溶媒に対する第1溶媒の重量比が0.1〜2.0の範囲内、好ましくは0.15〜1.5の範囲内、及びより好ましくは0.2〜1.2の範囲内となるように、その溶液に第2溶媒をゆっくりと添加し、この時、HM−PPEは分離して一定に、均一に加工助剤の周りを包囲してPPE微粒子を形成することにより、PPE微粒子分散体となることが開始すること。
e)第2溶媒の添加完了後、PPE微粒子分散体を0〜40℃、好ましくは0〜38℃、及びより好ましくは5〜35℃まで冷却することにより、室温での含浸プロセスに好適なPPE微粒子分散体を得ること。
【0025】
PPE微粒子の粒径は、加工助剤として選択される難燃剤及び充填剤の粒径に依存する。例えば、使用する加工助剤が、平均粒径(D50)が約2μmの難燃性充填剤である場合、PPE微粒子の平均粒径(D50)は約3.6μmである。
【0026】
開示したPPE微粒子分散体はPPE微粒子及び非PPE微粒子で構成される固体内容物を含み、これは分散体全体の30〜70重量%(以下、「重量%」は「%」と短縮する)、好ましくは35〜60%、及びより好ましくは40〜50%を占める。PPE微粒子分散体中に分散しているPPE微粒子において、PPE微粒子全体の70重量%超、好ましくは80%超、及びより好ましくは90%超の、0.5〜20μmの粒径を有する。PPE微粒子内では、HM−PPE成分はPPE微粒子の80重量%超、好ましくは85%超、及びより好ましくは90%超を占める一方で、残部は加工助剤成分である。
【0027】
開示した本発明のPPE微粒子分散体は10〜400Cps、好ましくは20〜200Cps、及びより好ましくは30〜150Cpsの粘度を有する。
【0028】
本発明で使用する通り、HM−PPEは好ましくは12,000〜30,000g/モル、及びより好ましくは14,000〜25,000g/モルのMnを有する。
【0029】
12,000g/モルを超えるMnを有するHM−PPEは、良好な電気的性質及びガラス転移温度(Tg)を有する高周波数銅張積層板をもたらす。高周波数銅張積層板の作製のために、30,000g/モル未満のMnを有するHM−PPEを使用してよい。通常の熱プレス温度及び圧力下にて、本材料は低粘度を示すことにより、所望の成形性を提供する。また、30,000g/モル未満のMnを有するHM−PPEを110℃未満の芳香族溶媒中に溶解させることにより、開示したPPE微粒子分散体を形成することができ、得られるPPE微粒子は高い均質性を有する。
【0030】
本発明では、LR−PPEは好ましくは800〜6,000g/モル、及びより好ましくは1,000−5,000g/モルのMnを有する。
【0031】
6,000g/モル未満のMnを有するLR−PPEは、良好な含浸及び成形性を有する高周波数銅張積層板をもたらす一方で、800g/モル超のMnを有するLR−PPEは、良好な電気的性質、耐熱性及び機械的特性を有する高周波数銅張積層板をもたらす。
【0032】
本発明では、使用する第1溶媒(即ちリッチ溶媒)は、ベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン及びこれらの任意の組み合わせから選択される。好ましくは、第1溶媒は、メチルベンゼンもしくはジメチルベンゼン単独、又はメチルベンゼンとジメチルベンゼンとの組み合わせから選択される。
【0033】
本発明では、使用する第2溶媒(即ちリーン溶媒)は、C3〜C8ケトン系溶媒、C1〜C8アルコール系溶媒、C3〜C8アミド系溶媒及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、第2溶媒は、そのより良好な分散能及び加工性のために、単独のC3〜C8ケトン系溶媒又はC3〜C8アミド系溶媒である。中でも、C3〜C8ケトン系溶媒は、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びこれらの混合物から選択される。C1〜C8アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びこれらの混合物から選択される。C3〜C8アミド系溶媒は、ジメチルホルムアミド、メチルアセトアミド、ジエチルアミド、及びこれらの混合物から選択される。
【0034】
加工助剤は、ポリブタジエン樹脂、難燃剤、充填剤、架橋剤、反応開始剤及びこれらの任意の組み合わせから選択される。ポリブタジエン樹脂は70重量%を超えるビニル成分を含有するため、この樹脂は硬化中及び架橋中に大いに必要な多数の不飽和ビニル基を提供して架橋密度の増加を助けてプリプレグを作製し、本発明の材料を用いて作製して得られる回路基板は良好な耐熱性を有する。ポリブタジエン樹脂は1,000〜10,000g/モルの分子量(Mw)を有する。
【0035】
難燃剤は燃焼を抑制する役割を果たし、臭素化難燃剤、リン酸エステル難燃剤、ポリリン酸アンモニウム難燃剤、ポリリン酸メラミン難燃剤、シアヌル酸メラミン難燃剤、ホスファゼン難燃剤、及び無機金属系難燃剤から選択される。
【0036】
充填剤は0.01〜20マイクロメートルの平均粒径を有し、得られる銅張積層板の寸法安定性及び機械的強度を維持する役割を果たす。充填剤はSiO、Al(OH)、Al、TiO、Mg(OH)及びCaCOから選択される。
【0037】
架橋剤は、分子内に2つ又はそれ以上の不飽和基を有するモノマーである。架橋剤は、PPEに対して一層良好な相溶性を有するため、TAICが好ましい。
【0038】
反応開始剤は架橋反応を加速させ、硬化を促進する役割を果たす。本明細書で使用する反応開始剤は、2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)であることが好ましい。
【0039】
望ましい場合、開示したPPE微粒子分散体は、適量の添加剤を添加することで調製してよい。添加剤は、熱可塑性樹脂、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、界面活性剤、平滑剤及びポリマーを含んでよい。
【0040】
開示したPPE微粒子分散体は以下の有益な効果を有し、PPE微粒子分散体を、優れた電気的性質を特徴とする高周波数銅張積層板用の完全な材料とする。
1.PPE微粒子分散体は繊維状材料又はガラス繊維の40℃未満の温度での含浸を可能にすることで、高温(40℃超)含浸装置の使用の必要性を取り除き、安全性及び経済性に関する利点を提供する。
2.HM−PPEの各微粒子は高い均質性で混合したHM−PPE及び加工助剤の両方を有するため、高周波数銅張積層板の作製で用いた場合、PPE微粒子分散体は、得られる高周波数銅張積層板を、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)及び高ガラス転移温度(Tg)、並びに銅箔の高剥離強度及び機械的強度を含む、物理的性質が優れたものにする。
【0041】
本発明の更なる説明のために、幾つかの実施例を以下に述べるが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるべきでないことが理解されなければならない。以下に与える実施例及び比較実施例に記載の通り調製したPPE微粒子分散体、及びこれらのPPE微粒子分散体を使用して作製した銅張積層板を、以下の手順に則り測定及び分析した。
【0042】
PPE微粒子分散体の調製
HM−PPE及び第1溶媒(即ちリッチ溶媒)を45〜110℃、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃で混合し溶液にした。攪拌羽根の末端における接線速度は加工助剤(ポリブタジエン樹脂、架橋剤、難燃剤、充填剤及び反応開始剤等)の添加により3m/sを超え、LR−PPEは溶液全体に均一に分散するまで攪拌した。次に、溶液を42〜80℃、好ましくは45〜75℃、より好ましくは50〜70℃まで冷却し、第2溶媒(即ちリーン溶媒)を加えた。この時、PPEは均一に分離し、加工助剤の周りを包囲して微粒子分散体が存在し始める。第2溶媒の添加の完了後、PPE微粒子分散体を0〜40℃まで冷却した。
【0043】
微粒子の分析
所与の組成物を有する、調製した分散体10gを遠心沈降により処理する。上部の透明液体を固液混合系より収集する。次に、メチルエチルケトン(MEK)50gを固相に加え、攪拌する。遠心固液分離を実施する。上部の透明液体を収集する。再び、MEK50gを固相に加え、攪拌する。遠心固液分離を実施する。収集した透明液体全てを固形物含量率及び組成物について分析し、各成分の重量(即ち、各液体成分の重量)を得る。メチルベンゼン100gを下方の固体微粒子層に加え、十分に攪拌しながら100℃まで加熱し、樹脂微粒子を溶解させる。次に、生成物を濾過して固形物含量率及び組成物について分析し、各成分の重量(即ち、各微粒子成分の重量)を得る。
【0044】
分散微粒子の分析方法及び積層体の測定方法
1.PPE微粒子の直径の分析
粒径分析器(モデル:Mastersizer 3000)を使用し、0.01〜3,500μmの平均範囲を有するPPE微粒子の粒径の、分布割合を測定する。
2.PPE微粒子の観察
分散体をケトンで50倍に希釈し、サンプリングして乾燥用ガラス上に滴下した。走査型電子顕微鏡(SEM、HITACHI S−3400N)を使用して、異なる倍率で検査サンプルを観察する。
3.PPE微粒子の元素分析
分散体をケトンで50倍に希釈し、サンプリングして乾燥用ガラス上に滴下した。エネルギー分散型分光計(EDS、HORIBA X−Max)をPPE微粒子の元素分析に使用し、HM−PPEが加工助剤の不溶性物質を緊密に包囲するかどうかを確認する。
4.粘度測定
粘度計(Schott(ドイツ)製)を使用して、PPE微粒子分散体の粘度を測定する。
5.PPE樹脂の分子量測定
所与の量のPPE樹脂をテトラヒドロフラン(THF)溶媒に溶解させて1%溶液を形成する。GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)分析のために透明となるまで溶液を加熱する。PPE樹脂の分子量を、特徴ピーク面積を計算することにより測定した。異なる分子量を有する標準ポリスチレン製品について複数の点をマークすることにより、分析用の検量線を作成する。検量線の作成後、測定する粒子の分子量を決定することができる。
6.各PPE分子の平均フェノール性水酸基(OH基の数)の測定
各分子の平均OH数は、Mnに対するヒドロキシル基の数の比率に等しい。
PPEをジクロロメタン溶液に溶解させ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを加えて検査サンプルを調製する。UVスペクトロメータを使用して、318nmの波長によりヒドロキシル基の数を測定する。
7.ガラス転移温度(Tg、℃)の測定
示差走査熱量計(DSC、モデル:TA2100)を使用して、積層体及びPPEのガラス転移温度を測定する。
8.吸水度(%)の分析
水を2atmのプレッシャークッカー内で120℃まで加熱する。検査サンプルをプレッシャークッカー内に30分配置する。吸水前後での検査サンプルの重量変化を記録する。
9.288℃のはんだ加熱耐性(秒)の分析
検査サンプルをプレッシャークッカー内で、120℃で120分間、2atmで加熱した後、288℃のはんだ炉内に入れた。検査サンプルが離層するのにかかる時間を測定する。
10.銅箔の剥離強度(ポンド/インチ)の試験
銅箔と回路基板間の剥離強度を試験する。
11.誘電率Dk(3GHz)の試験
誘電解析器(モデル:HP Agilent E4991A)を使用して、3GHzにおける誘電率Dkを試験する。
12.誘電正接Df(3GHz)の試験
誘電解析器(モデル:HP Agilent E4991A)を使用して、3GHzにおける誘電正接Dfを試験する。
【0045】
実施例
PPE−A1〜PPE−A6、及びPPE−B1〜PPE−B3のサンプル調製に関し、それぞれは表2に示す仕様を有する。
【0046】
PPE−A1の調製
反応に関し、2,6−ジメチルフェノール(2,6−DMP)1.5kg及びテトラメチルビスフェノールA(TMBPA)0.040kgを反応物質として混合した。
【0047】
使用した反応溶媒はメチルベンゼン10kgであり、Co−アミン錯体を触媒として使用した(CuBr2:2.2g、n−ブチルアミン:32g、N,N−ジメチルブチルアミン:60g、ジブチルアミン:21g、ジブチルエチレンジアミン:5.8g、界面活性剤:4g)。
【0048】
2,6−DMP及びTMBPAをメチルベンゼン溶媒中に混合及び溶解させて、反応液を形成した。反応液を、攪拌器を備えた30L反応器内に入れた。反応器内の気体酸素濃度を、反応溶媒の限界酸素濃度(LOC)未満となるように、窒素及び酸素を別々に導入し、圧力を6kg/cmで維持した。次に、反応器内の攪拌器を起動し、温度を25℃に調節した。反応中、消費された際はいずれも、酸素を補充した。反応圧力及び気体酸素濃度を、それぞれ6kg/cm及びLOC未満に維持した。反応を通して、PPEの分子量及び反応液粘度の監視を行った。PPEのMnが12,000±500g/モルに到達した際に、反応を終了した(酸素を打ち切り、窒素を代わりに供給した)。
【0049】
反応液(又は粗生成物)を室温まで冷却した後、反応液の二倍量の溶媒を加え、PPEの濃度及び粘度の両方を下げた。その後、エチレンジアミン四酢酸(CAS:60−00−4、EDTAと短縮)の0.1%水溶液をキレート化剤として使用し、銅イオンを除去して、抽出プロセスにて水層を分離した。次に溶液を75℃まで加熱した後、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.4gを相間移動触媒として加えた。その後、45重量%のNaOH水溶液8.8gを加え、(フェノール末端基をナトリウム塩に転換するために)1時間反応を行った。クロロメチルスチレン(CMS)15.2gを反応液中に滴加した。(1時間にわたる)滴加後、10時間反応を実施し、反応液を室温まで冷却した。メタノール(反応液の重量の5倍)を使用して反応液からPPEを分離し、PPEを濾過して乾燥させた。
【0050】
このようにして作製したポリフェニレンエーテル(PPE−A1)は12,063g/モルのMnをもたらし、その各分子の平均OH数は0.95であった。
【0051】
PPE−A2の調製
反応物質が代わりに2,6−DMP 1.5kg及びTMBPA 0.028kgであり、相間移動触媒がテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.5g、45重量%のNaOH水溶液が5.8g、並びにCMSが10.2gであったことを除いて、手順はPPE−A1の調製と同様であった。
【0052】
反応液中で、14,000±500g/モルのMnを有するPPEに到達した際に、反応を終了した。
【0053】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−A2)は14,324g/モルのMnを有し、その各分子の平均OH数は0.97であった。
【0054】
PPE−A3の調製
反応物質を2,6−DMP 1.5kg及びAMP 0.15kgとしたことを除いて、手順はPPE−A1の調製と同様であった。反応液中で、18,000±500g/モルのMnを有するPPEに到達した際に、反応を終了した。
【0055】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−A3)は18,491g/モルのMnを有し、その各分子の平均OH数は0.91であった。
【0056】
PPE−A4の調製
反応物質が2,6−DMP 1.5kgのみであったことを除いて、手順はPPE−A1の調製と同様であった。反応液中で23,000±500g/モルのMnを有するPPEに到達した際に、反応を終了した。
【0057】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−A4)は23,167g/モルのMnを有し、その各分子の平均OH数は0.92であった。
【0058】
PPE−A5の調製
反応液中で、28,000±500g/モルのMnを有するPPEに到達した際に反応を終了したことを除いて、手順はPPE−A4の調製と同様であった。
【0059】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−A5)は28,424g/モルのMnを有し、その各分子の平均OH数は0.96であった。
【0060】
PPE−A6の調製
32,000±500g/モルのMnを有するPPEに到達した際に反応を終了したことを除いて、手順はPPE−A4の調製と同様であった。
【0061】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−A6)は32,197g/モルのMnを有し、その各分子の平均OH数は0.94であった。
【0062】
PPE−B1の調製
2Lフラスコ内にPPE−A5(Mn=28,424g/モル)215g及びメチルベンゼン500gを入れ、90℃まで加熱した。予め調製したPPE−A5が溶解するまで攪拌を行った。ビスフェノールA(BPA)48.6g及び過酸化ベンゾイル(BPO)31,4gを導入した後、6時間反応を実施した。反応物質を50℃まで冷却し、アルカリ液及び純水を数回使用して、精製物として抽出した。この時、反応液中のPPEは2,020g/モルのMnを有し、その各分子の平均OH数は1.89であった。
【0063】
次に、反応液を75℃まで加熱した後、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.25gを相間移動触媒として導入した。その後、45重量%のNaOH水溶液39.9gを加え、(フェノール末端基をナトリウム塩に転換するために)1時間反応を行った。クロロメチルスチレン(CMS)68.6gを反応液内に滴加した。(1時間にわたる)滴加後、10時間反応を実施し、反応液を室温まで冷却した。メタノール(反応液の重量の5倍)を使用して反応液からPPEを分離し、PPEを濾過し、乾燥させた。
【0064】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−B1)は2,133g/モルのMnを有し、分子の平均OH数は0.01未満であった。
【0065】
PPE−B2の調製
ビスフェノールA(BPA)を26.9gに置き換え、45重量%のNaOH水溶液を22.2gに置き換え、CMSの重量を38.1gに変更したことを除いて、手順はPPE−B1の調製と同様であった。
【0066】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−B2)は3,860g/モルのMnを有し、分子の平均OH数は0.01未満であった。
【0067】
PPE−B3の調製
代わりにビスフェノールA(BPA)18.0g、45重量%のNaOH水溶液15.2g、及びCMS 26.1gを使用したことを除いて、手順はPPE−B1の調製と同様であった。
【0068】
最後において、反応液から分離したポリフェニレンエーテル(PPE−B3)は5,632g/モルのMnを有し、分子の平均OH数は0.01未満であった。
【0069】
【表2】
【0070】
PPE微粒子分散体の調製
[実施例1〜2]
使用した配合は表3に示す通りである。HM−PPE、及び第1溶媒(即ちリッチ溶媒)として選択したメチルベンゼン(又はジメチルベンゼン)を3つ口フラスコに入れて均一に攪拌した(プロセス全体を通じて攪拌を実施し、攪拌羽根末端での接線速度は3m/sに維持した)。次に溶液を45℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、加工助剤及びLR−PPEを加えた。
添加した加工助剤は、ポリブタジエン樹脂、架橋剤としてTAIC、難燃剤としてBT−93(又はMPP)、充填剤としてSiO2(D50=2μm)、反応開始剤としてDCPを含むように選択した。攪拌を続けて、溶液中の分散を均一にした。溶液を42℃まで冷却した際に、3つ口フラスコ内にエタノール(又はメチルエチルケトン(MEK)又はジメチルホルムアミド(DMF))を第2溶媒(即ちリーン溶媒)として加え(10g/分)ながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEを均一に分離させて加工助剤の周りを均一に包囲することにより、微粒子分散体を形成した。
【0071】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を、実施例1については25℃まで、又は実施例2については32℃までそれぞれ冷却することにより、均一な微粒子分散体を有する流動性PPE微粒子分散体を得た。
【0072】
また、実施例1のPPE微粒子についてSEM写真を撮影し、EDS分析を行って、それぞれ図1及び図2に示す。
【0073】
[実施例3〜6]
使用した配合は表3に示す通りである。HM−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を60℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、加工助剤及びLR−PPEを加えた。攪拌を続けて、溶液中の分散を均一にした。溶液を50℃まで冷却した際に、第2溶媒を3つ口フラスコに加え(10g/分)ながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEを均一に分離させて加工助剤の周りを均一に包囲することにより、微粒子分散体を形成した。
【0074】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を、実施例3については18℃まで、実施例4については12℃まで、実施例5については3℃まで、及び実施例6については40℃までそれぞれ冷却することにより、均一な微粒子分散体を有する流動性PPE微粒子分散体を得た。
【0075】
また、実施例5のPPE微粒子についてSEM写真を撮影し、EDS分析を行って、それぞれ図3及び図4に示す。
【0076】
[実施例7〜11]
使用した配合は表3に示す通りである。HM−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を75℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、加工助剤及びLR−PPEを加えた。攪拌を続けて、溶液中の分散を均一にした。溶液を60℃まで冷却した際に、第2溶媒を3つ口フラスコに加え(10g/分)ながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEを均一に分離させて加工助剤の周りを均一に包囲することにより、微粒子分散体を形成した。
【0077】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を、実施例7については25℃まで、実施例8については27℃まで、実施例9については39℃まで、実施例10については8℃まで、及び実施例11については26℃までそれぞれ冷却することにより、均一な微粒子分散体を有する流動性PPE微粒子分散体を得た。
【0078】
実施例9のPPE微粒子についてSEM写真を撮影し、EDS分析を行って、それぞれ図5及び図6に示す。また、実施例10のPPE微粒子について別のSEM写真を撮影し、別のEDS分析を行って図7及び図8に示す。
【0079】
[実施例12〜16]
使用した配合は表3に示す通りである。HM−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を110℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、加工助剤及びLR−PPEを加えた。攪拌を続けて、溶液中の分散を均一にした。溶液を80℃まで冷却した際に、第2溶媒を3つ口フラスコに加え(10g/分)ながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEを均一に分離させて加工助剤の周りを均一に包囲することにより、微粒子分散体を形成した。
【0080】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を、実施例12については16℃まで、実施例13については38℃まで、実施例14については22℃まで、実施例15については25℃まで、及び実施例16については9℃までそれぞれ冷却することにより、均一な微粒子分散体を有する流動性PPE微粒子分散体を得た。
【0081】
実施例12のPPE微粒子についてSEM写真を撮影し、EDS分析を行って、それぞれ図9及び図10に示す。また、実施例14のPPE微粒子について別のSEM写真を撮影し、別のEDS分析を行って図11及び図12に示す。
【0082】
[比較実施例1]
使用した配合は表4に示す通りである。HM−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を45℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、溶液を40℃まで冷却した際に、第2溶媒(即ちリーン溶媒)を3つ口フラスコ内にゆっくり(10g/分)と加えながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEは均一に分離し、加工助剤を均一に包囲して、微粒子を形成した。
【0083】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を15℃まで冷却し、加工助剤及びLR−PPEを加えた。溶液中に微粒子が均一に分散するまで溶液の攪拌を続けることにより、均一な微粒子分散体を有する流動性含浸液(又はワニス)を得た。
【0084】
[比較実施例2]
使用した配合は表4に示す通りである。HM−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を60℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、溶液を50℃まで冷却した際に、第2溶媒を3つ口フラスコ内にゆっくり(10g/分)と加えながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEは均一に分離して微粒子を形成した。
【0085】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を40℃まで冷却し、加工助剤及びLR−PPEを加えた。溶液中に微粒子が均一に分散するまで溶液の攪拌を続けることにより、均一な微粒子分散体を有する流動性含浸液(又はワニス)を得た。
【0086】
[比較実施例3−4]
使用した配合は表4に示す通りである。HM−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を75℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、溶液を60℃まで冷却した際に、第2溶媒を3つ口フラスコ内にゆっくり(10g/分)と加えながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEは均一に分離して微粒子を形成した。
【0087】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を実施例3については32℃まで、実施例4については25℃まで冷却し、加工助剤及びLR−PPEを加えた。溶液中に微粒子が均一に分散するまで溶液の攪拌を続けることにより、均一な微粒子分散体を有する流動性含浸液(又はワニス)を得た。
【0088】
[比較実施例5]
使用した配合は表4に示す通りである。HM−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を90℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、溶液を70℃まで冷却した際に、第2溶媒を3つ口フラスコ内にゆっくり(10g/分)と加えながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒の滴加及び冷却中に、PPEは均一に分離して微粒子を形成した。
【0089】
第2溶媒の添加の完了後、微粒子分散体を12℃まで冷却し、加工助剤及びLR−PPEを加えた。溶液中に微粒子が均一に分散するまで溶液の攪拌を続けることにより、均一な微粒子分散体を有する流動性含浸液(又はワニス)を得た。
【0090】
[比較実施例6]
使用した配合は表4に示す通りである。HM−PPE、LR−PPE及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。次に溶液を110℃まで温めた。HM−PPEが完全に溶解したという一定の確信があれば、溶液を80℃まで冷却した際に、第2溶媒を3つ口フラスコ内にゆっくり(10g/分)と加えながら、温度は1分あたり1℃の速度で低下させた。第2溶媒を添加後、溶液を20℃まで冷却した。この時、第2溶媒に対する第1溶媒の重量比は2.37(2より大きい)に等しいため、含浸液はゲル状であり、含浸プロセスでは使用できなかった。
【0091】
[比較実施例7−8]
使用した配合は表4に示す通りである。LR−PPE、加工助剤及び第1溶媒を3つ口フラスコ内に入れた。温度は、比較実施例7については38℃、及び比較実施例8については5℃にそれぞれ調節した。溶液を2時間攪拌する(攪拌は、攪拌羽根先端での接線速度を3m/sより大きく維持しながらプロセス全体を通じて行った)ことにより、含浸液(又はワニス)を得た。
【0092】
[比較実施例9−11]
使用した配合は表4に示す通りである。HM−PPE、LR−PPE、第1溶媒、及び加工助剤を3つ口フラスコ内に入れた。温度は、比較実施例9については22℃、比較実施例10については40℃、及び比較実施例11については3℃にそれぞれ調節した。溶液を室温にて2時間攪拌した。溶液中の固形物含量率は25%未満であった。得られた含浸液は固形物含量率があまりに小さかったため、乾燥プリプレグは樹脂含有率が30%未満であり、銅張積層板作製のための熱プレスプロセスでは使用できなかった。得られた含浸液中の固形物含量率が増加した場合、含浸液(又はワニス)はゲル状であり、こちらもまた含浸プロセスには適していなかった。
【0093】
[比較実施例12]
使用した配合は表4に示す通りである。HM−PPE、LR−PPE、エタノール、及び加工助剤を3つ口フラスコ内に入れ、均一に攪拌した。溶液を75℃まで温めてもHM−PPEはエタノールに不溶のまま残留したため、含浸液は作製されなかった。
【0094】
銅張積層板の調製
1.実施例1〜16のPPE微粒子分散体を使用した。
ガラス繊維(Nan Ya Plastics Corp.より供給、繊維モデル:2116)を実施例1〜16のPPE微粒子分散体又はワニスで含浸し、オーブン内で加熱して溶媒を乾燥除去した。
【0095】
溶媒が完全に乾燥した際にプリプレグを得た。6枚のプリプレグを2枚の35μm銅箔の間に挟んだ。10kg/cmの力を積層板に加え、積層板を3.0℃/分の速度で加熱した。積層板が室温から100℃まで加熱された時、積層板に加えた力を45kg/cmに増加した。210℃まで、4.0℃/分の速度で加熱を続けた。温度を120分間維持した後、積層板をゆっくり(−3℃/分)と130℃まで冷却することで、銅張積層板を得た。
【0096】
実施例1〜16のPPE微粒子分散体の配合、及び分散体から作製した銅張積層板の測定した物理的測定値を、表3に一覧にする。
【0097】
2.比較実施例1〜12の含浸液(又はワニス)を使用した。
ガラス繊維(Nan Ya Plastics Corp.より供給、繊維モデル:2116)をPPE微粒子分散体又はワニスで含浸し、オーブン内で加熱して溶媒を乾燥除去した。
【0098】
溶媒が完全に乾燥した際にプリプレグを得た。6枚のプリプレグを2枚の35μm銅箔の間に挟んだ。10kg/cmの力を積層板に加え、積層板を3.0℃/分の速度で加熱した。積層板が室温から100℃まで加熱された時、積層板に加えた力を45kg/cmに増加した。210℃まで、4.0℃/分の速度で加熱を続けた。温度を120分間維持した後、積層板をゆっくり(−3℃/分)と130℃まで冷却することで、銅張積層板を得た。
【0099】
比較実施例1〜12で使用した含浸液(又はワニス)の配合、及び溶液から作製した銅張積層板の、測定した物理的性質を表4に一覧にする。
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
[結果]
1.実施例1〜16のPPE微粒子分散体は、均一に分散し、加工助剤の周りを緊密に包囲するHM−PPEにより構成されたPPE微粒子を含有する。PPE及び加工助剤は十分に混合していたため、優れた誘電特性が得られた。
2.実施例1〜16のPPE微粒子分散体は室温に良好な流動性を示したことにより、ガラス繊維の40℃未満での含浸を可能にした。これは高温含浸装置の使用の必要性を取り除き、安全性及び経済性に関係する利点を提供する。
3.実施例1〜16のPPE微粒子分散体を使用して銅張積層板を作製した際、HM−PPE及び加工助剤が十分混合されていたため、得られた銅張積層板は、高Tg、低Dk、低Df、及び銅箔の高剥離強度等の優れた物理的性質を得た。
4.比較実施例1〜5のそれぞれにおいて、PPE粒子をまず形成した後に加工助剤を添加することにより、含浸液(又はワニス)を作製した。しかし、かかる含浸液(又はワニス)においては、PPE及び加工助剤は、いかなるPPE微粒子を生成することなく単に混合しただけであるため、PPE及び加工助剤は十分に混合しなかった。かかる含浸液(又はワニス)を使用して作製した銅張積層板は、低Tg、高Dk、高Df及び銅箔の低剥離強度を含む不十分な物理的性質を示した。
5.比較実施例6では、リッチ溶媒とリーン溶媒との重量比は2.37(>2)であったため、得られた含浸液はゲル状であり、含浸プロセスにて使用できなかった。
6.比較実施例7〜8はHM−PPE(Mn>12,000g/モル)を使用しなかった。代わりに、LR−PPE(Mn<6,000g/モル)を40℃未満で溶解させ、加工助剤を添加して含浸液(又はワニス)を作製した。しかし、かかる含浸液(又はワニス)を使用して作製した銅張積層板は、低Tg、高Dk、高Df及び銅箔の低剥離強度を含む不十分な物理的性質を示した。
7.比較実施例9〜11では、室温にてPPEを溶解させるためにリッチ溶媒を使用した後、加工助剤を加えることにより含浸液(又はワニス)を作製した。このように調製した含浸液(又はワニス)は25%未満の固形物含量率を有した。したがって、乾燥プリプレグは30%未満のみの樹脂を含有し、銅張積層板の製造のための加熱プレスでは使用できなかった。得られた含浸液中の固形物含量率が増加した場合、含浸液(又はワニス)はゲル状であり、こちらもまた含浸プロセスには適していなかった。
8.比較実施例12の含浸液(又はワニス)により証明されたように、HM−PPEは(リーン溶媒としての)エタノールに溶解せず、この方法では含浸液(又はワニス)は作製されなかった。
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